創世記 天地の創造
1
1 初めに、神は天地を創造された。 2 地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、?~の靈が水の面を動いていた。 3 ?~は言われた。「光あれ。」こうして、光があった。 4 ?~は光を見て、良しとされた。?~は光と闇を分け、 5 光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第一の日である。6 ?~は言われた。「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。」 7 ?~は大空を造り、大空の下と大空の上に水を分けさせられた。そのようになった。 8 ?~は大空を天と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第二の日である。 9 ?~は言われた。「天の下の水は一つ所に集まれ。乾いた所が現れよ。」そのようになった。 10 神は乾いた所を地と呼び、水の集まった所を海と呼ばれた。神はこれを見て、良しとされた。 11 神は言われた。「地は草を芽生えさせよ。種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける果樹を、地に芽生えさせよ。」そのようになった。 12 地は草を芽生えさせ、それぞれの種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける木を芽生えさせた。?~はこれを見て、良しとされた。 13 夕べがあり、朝があった。第三の日である。 14 神は言われた。「天の大空に光る物があって、昼と夜を分け、季節のしるし、日や年のしるしとなれ。 15 天の大空に光る物があって、地を照らせ。」そのようになった。 16 ?~は二つの大きな光る物と星を造り、大きな方に昼を治めさせ、小さな方に夜を治めさせられた。 17 ?~はそれらを天の大空に置いて、地を照らさせ、 18 昼と夜を治めさせ、光と闇を分けさせられた。?~はこれを見て、良しとされた。 19 夕べがあり、朝があった。第四の日である。 20 ?~は言われた。「生き物が水の中に群がれ。鳥は地の上、天の大空の面を飛べ。」 21 ?~は水に群がるもの、すなわち大きな怪物、うごめく生き物をそれぞれに、また、翼ある鳥をそれぞれに創造された。?~はこれを見て、良しとされた。 22 ?~はそれらのものを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、海の水に満ちよ。鳥は地の上に増えよ。」 23 夕べがあり、朝があった。第五の日である。 24 ?~は言われた。「地は、それぞれの生き物を産み出せ。家畜、這うもの、地の獣をそれぞれに産み出せ。」そのようになった。 25 ?~はそれぞれの地の獣、それぞれの家畜、それぞれの土を這うものを造られた。?~はこれを見て、良しとされた。 26 ?~は言われた。「我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。そして海の魚、空の鳥、家畜、地の獣、地を這うものすべてを支配させよう。」 27 ?~は御自分にかたどって人を創造された。?~にかたどって創造された。男と女に創造された。28 ?~は彼らを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ。」 29 ?~は言われた。「見よ、全地に生える、種を持つ草と種を持つ実をつける木を、すべてあなたたちに与えよう。それがあなたたちの食べ物となる。 30 地の獣、空の鳥、地を這うものなど、すべて命あるものにはあらゆる青草をたべさせよう。」そのようになった。 31 ?~はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった。夕べがあり、朝があった。第六の日である。
2
1 天地万物は完成された。 2 第七の日に、?~は御自分の仕事を完成され、第七の日に、神は御自分の仕事を離れ、安息なさった。 3 この日に?~はすべての創造の仕事を離れ、安息なさったので、第七の日を?~は祝福し、聖別された。 4 これが天地創造の由来である。主なる?~が地と天を造られたとき、 5 地上には野の木も、野の草も生えていなかった。主なる?~が地上に雨をお送りにならなかったからである。また土を耕す人もいなかった。 6 しかし、水が地下から湧き出て、土の面をすべて潤した。 7 主なる?~は、土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった。 8 主なる?~は、東の方のエデンに園を設け、自ら形づくった人をそこに置かれた。 9 主なる?~は、見るからに好ましく、食べるに良いものをもたらすあらゆる木を地に生えいでさせ、また園の中央には、命の木と善悪の知識の木を生えいでさせられた。 10 エデンから一つの川が流れ出ていた。園を潤し、そこで分かれて、四つの川となっていた。 11 第一の川の名はピションで、金を産出するハビラ地方全域を巡っていた。 12 その金は良質であり、そこではまた、琥珀の類やラピス・ラズリも産出した。 13 第二の川の名はギホンで、クシュ地方全域を巡っていた。 14 第三の川の名はチグリスで、アシュルの東の方を流れており、第四の川の名はユーフラテスであった。 15 主なる?~は人を連れて来て、エデンの園に住まわせ、人がそこを耕し、守るようにされた。 16 主なる?~は人に命じて言われた。「園のすべての木から取って食べなさい。 17 ただし、善悪の知識の木からは、決して食べてはならない。食べると必ず死んでしまう。」 18 主なる?~は言われた。「人が一人でいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう。」 19 主なる?~は、野のあらゆる獣、空のあらゆる鳥を土で形づくり、人のところへ持って来て、人がそれぞれどう呼ぶか見ておられた。人が呼ぶと、それはすべて、生き物の名となった。 20 人はあらゆる家畜、空の鳥、野のあらゆる獣に名を付けたが、自分に合う助ける者は見つけることができなかった。 21 主なる?~はそこで、人を深い眠りに落とされた。人が眠り込むと、あばら骨の一部を抜き取り、その跡を肉でふさがれた。 22 そして、人から抜き取ったあばら骨で女を造り上げられた。主なる?~が彼女を人のところへ連れて来られると、 23 人は言った。「ついに、これこそわたしの骨の骨わたしの肉の肉。これこそ、女(イシャー)と呼ぼう まさに、男(イシュ)から取られたものだから。」 24 こういうわけで、男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる。 25 人と妻は二人とも裸であったが、恥ずかしがりはしなかった。
創世記 蛇の誘惑
3
1 主なる?~が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった。蛇は女に言った。「園のどの木からも食べてはいけない、などと神は言われたのか。」 2 女は蛇に答えた。「わたしたちは園の木の果実を食べてよいのです。 3 でも、園の中央に生えている木の果実だけは、食べてはいけない。触れてもいけない、死んではいけないから、と?~様はおっしゃいました。」 4 蛇は女に言った。「決して死ぬことはない。 5 それを食べると、目が開け、?~のように善悪を知るものとなることを?~はご存じなのだ。」 6 女が見ると、その木はいかにもおいしそうで、目を引き付け、賢くなるように唆していた。女は実を取って食べ、一緒にいた男にも渡したので、彼も食べた。 7 二人の目は開け、自分たちが裸であることを知り、二人はいちじくの葉をつづり合わせ、腰を覆うものとした。 8 その日、風の吹くころ、主なる?~が園の中を歩く音が聞こえてきた。アダムと女が、主なる?~の顔を避けて、園の木の間に隠れると、 9 主なる?~はアダムを呼ばれた。「どこにいるのか」 10 彼は答えた。「あなたの足音が園の中に聞こえたので、恐ろしくなり、隠れております。わたしは裸ですから。」 11 ?~は言われた。「お前が裸であることを誰が告げたのか。取って食べるなと命じた木から食べたのか。」 12 アダムは答えた。「あなたがわたしと共にいるようにしてくださった女が、木から取って与えたので、食べました。」 13 主なる?~は女に向かって言われた。「何ということをしたのか。」女は答えた。「蛇がだましたので、食べてしまいました。」 14 主なる?~は、蛇に向かって言われた。「このようなことをしたお前はあらゆる家畜、あらゆる野の獣の中で呪われるものとなった。お前は、生涯這いまわり、塵を食らう。 15 お前と女、お前の子孫と女の子孫の間にわたしは敵意を置く。彼はお前の頭を砕き お前は彼のかかとを砕く。」 16 ?~は女に向かって言われた。「お前のはらみの苦しみを大きなものにする。お前は、苦しんで子を産む。お前は男を求め 彼はお前を支配する。」 17 ?~はアダムに向かって言われた。「お前は女の声に従い 取って食べるなと命じた木から食べた。お前のゆえに、土は呪われるものとなった。お前は、生涯食べ物を得ようと苦しむ。 18 お前に対して 土は茨とあざみを生えいでさせる 野の草を食べようとするお前に。 19 お前は顔に汗を流してパンを得る 土に返るときまで。お前がそこから取られた土に。塵にすぎないお前は塵に返る。」 20 アダムは女をエバ(命)と名付けた。彼女がすべて命あるものの母となったからである。 21 主なる?~は、アダムと女に皮の衣を作って着せられた。 22 主なる?~は言われた。「人は我々の一人のように、善悪を知る者となった。今は、手を伸ばして命の木からも取って食べ、永遠に生きる者となるおそれがある。」 23 主なる?~は、彼をエデンの園から追い出し、彼に、自分がそこから取られた土を耕させることにされた。 24 こうしてアダムを追放し、命の木に至る道を守るために、エデンの園の東にケルビムと、きらめく剣の炎を置かれた。
創世記 カインとアペル
4
1 さて、アダムは妻エバを知った。彼女は身ごもってカインを産み、「わたしは主によって男子を得た」と言った。 2 彼女はまたその弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。 3 時を経て、カインは土の実りを主のもとに献げ物として持って来た。 4 アベルは羊の群れの中から肥えた初子を持って来た。主はアベルとその献げ物に目を留められたが、 5 カインとその献げ物には目を留められなかった。カインは激しく怒って顔を伏せた。 6 主はカインに言われた。「どうして怒るのか。どうして顔を伏せるのか。 7 もしお前が正しいなら、顔を上げられるはずではないか。正しくないなら、罪は戸口で待ち伏せており、お前を求める。お前はそれを支配せねばならない。」 8 カインが弟アベルに言葉をかけ、二人が野原に着いたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。 9 主はカインに言われた。「お前の弟アベルは、どこにいるのか。」カインは答えた。「知りません。わたしは弟の番人でしょうか。」 10 主は言われた。「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。 11 今、お前は呪われる者となった。お前が流した弟の血を、口を開けて飲み込んだ土よりもなお、呪われる。 12 土を耕しても、土はもはやお前のために作物を産み出すことはない。お前は地上をさまよい、さすらう者となる。」 13 カインは主に言った。「わたしの罪は重すぎて負いきれません。 14 今日、あなたがわたしをこの土地から追放なさり、わたしが御顔から隠されて、地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう。」 15 主はカインに言われた。「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。 16 カインは主の前を去り、エデンの東、ノド(さすらい)の地に住んだ。 17 カインは妻を知った。彼女は身ごもってエノクを産んだ。カインは町を建てていたが、その町を息子の名前にちなんでエノクと名付けた。 18 エノクにはイラドが生まれた。イラドはメフヤエルの父となり、メフヤエルはメトシャエルの父となり、メトシャエルはレメクの父となった。
19 レメクは二人の妻をめとった。一人はアダ、もう一人はツィラと言った。 20 アダはヤバルを産んだ。ヤバルは、家畜を飼い天幕に住む者の先祖となった。 21 その弟はユバルといい、竪琴や笛を奏でる者すべての先祖となった。 22 ツィラもまた、トバル・カインを産んだ。彼は青銅や鉄でさまざまの道具を作る者となった。トバル・カインの妹はナアマといった。 23 さて、レメクは妻に言った。「アダとツィラよ、わが声を聞け。レメクの妻たちよ、わが言葉に耳を傾けよ。わたしは傷の報いに男を殺し 打ち傷の報いに若者を殺す。 24 カインのための復讐が七倍なら レメクのためには七十七倍。」 25 再び、アダムは妻を知った。彼女は男の子を産み、セトと名付けた。カインがアベルを殺したので、?~が彼に代わる子を授け(シャト)られたからである。 26 セトにも男の子が生まれた。彼はその子をエノシュと名付けた。主の御名を呼び始めたのは、この時代のことである。
創世記 アダムの系図
5
1 これはアダムの系図の書である。?~は人を創造された日、?~に似せてこれを造られ、 2 男と女に創造された。創造の日に、彼らを祝福されて、人と名付けられた。 3 アダムは百三十歳になったとき、自分に似た、自分にかたどった男の子をもうけた。アダムはその子をセトと名付けた。 4 アダムは、セトが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 5 アダムは九百三十年生き、そして死んだ。 6 セトは百五歳になったとき、エノシュをもうけた。 7 セトはエノシュが生まれた後八百七年生きて、息子や娘をもうけた。 8 セトは九百十二年生き、そして死んだ。 9 エノシュは九十歳になったとき、ケナンをもうけた。 10 エノシュは、ケナンが生まれた後八百十五年生きて、息子や娘をもうけた。 11 エノシュは九百五年生き、そして死んだ。 12 ケナンは七十歳になったとき、マハラルエルをもうけた。 13 ケナンはマハラルエルが生まれた後八百四十年生きて、息子や娘をもうけた。 14 ケナンは九百十年生き、そして死んだ。 15 マハラルエルは六十五歳になったとき、イエレドをもうけた。 16 マハラルエルは、イエレドが生まれた後八百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 17 マハラルエルは八百九十五年生き、そして死んだ。 18 イエレドは百六十二歳になったとき、エノクをもうけた。 19 イエレドは、エノクが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 20 イエレドは九百六十二年生き、そして死んだ。 21 エノクは六十五歳になったとき、メトシェラもうけた。 22 エノクは、メトシェラが生まれた後、三百年?~と共に歩み、息子や娘をもうけた。 23 エノクは三百六十五年生きた。 24 エノクは?~と共に歩み、?~が取られたのでいなくなった。 25 メトシェラは百八十七歳になったとき、レメクをもうけた。 26 メトシェラは、レメクが生まれた後七百八十二年生きて、息子や娘をもうけた。 27 メトシェラは九百六十九年生き、そして死んだ。 28 レメクは百八十二歳になったとき、男の子をもうけた。 29 彼は、「主の呪いを受けた大地で働く我々の手の苦労を、この子は慰めてくれるだろう」と言って、その子をノア(慰め)と名付けた。 30 レメクは、ノアが生まれた後五百九十五年生きて、息子や娘をもうけた。 31 レメクは七百七十七年生き、そして死んだ。 32 ノアは五百歳になったとき、セム ハム ヤフェトをもうけた。
創世記 洪水
6
1 さて、地上に人が増え始め、娘たちが生まれた。 2 ?~の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、おのおの選んだ者を妻にした。 3 主は言われた。 「わたしの霊は人の中に永久にとどまるべきではない。人は肉にすぎないのだから。」こうして、人の一生は百二十年となった。 4 当時もその後も、地上にはネフィリムがいた。これは、?~の子らが人の娘たちのところに入って産ませた者であり、大昔の名高い英雄たちであった。 5 主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、 6 地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた。 7 主は言われた。 「わたしは人を創造したが、これを地上からぬぐい去ろう。人だけでなく、家畜も這うものも空の鳥も。わたしはこれらを造ったことを後悔する。」 8 しかし、ノアは主の好意を得た。 9 これはノアの物語である。その世代の中で、ノアは?~に従う無垢な人であった。ノアは?~と共に歩んだ。 10 ノアには三人の息子、セム ハム ヤフェトが生まれた。 11 この地は?~の前に堕落し、不法に満ちていた。 12 ?~は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。 13 ?~はノアに言われた。「すべて肉なるものを終わらせる時がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす。 14 あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟には小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。 15 次のようにしてそれを造りなさい。箱舟の長さを三百アンマ、幅を五十アンマ、高さを三十アンマにし、 16 箱舟に明かり取りを造り、上から一アンマにして、それを仕上げなさい。箱舟の側面には戸口を造りなさい。また、一階と二階と三階を造りなさい。 17 見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊をもつ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべてのものは息絶える。 18 わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。 19 また、すべて命あるもの、すべて肉なるものから、二つずつ箱舟に連れて入り、あなたと共に生き延びるようにしなさい。それらは、雄と雌でなければならない。 20 それぞれの鳥、それぞれの家畜、それぞれの地を這うものが、二つずつあなたのところへ来て、生き延びるようにしなさい。 21 更に、食べられる物はすべてあなたのところに集め、あなたと彼らの食料としなさい。」 22 ノアは、すべて?~が命じられたとおりに果たした。
7
1 主はノアに言われた。「さあ、あなたとあなたの家族は皆、箱舟に入りなさい。この世代の中であなただけはわたしに従う人だと、わたしは認めている。 2 あなたは清い動物をすべて七つがい取り、また、清くない動物をすべて一つがいずつ取りなさい 3 空の鳥も七つがい取りなさい。全地の面に子孫が生き続けるように。 4 七日の後、わたしは四十日四十夜地上に雨を降らせ、わたしが造ったすべての生き物を地の面からぬぐい去ることにした。」 5 ノアはすべて主が命じられたとおりにした。 6 ノアが六百歳のとき、洪水が地上に起こり、水が地の上にみなぎった。 7 ノアは妻子や嫁たちと共に洪水を免れようと箱舟に入った。 8 清い動物も清くない動物も、鳥も地を這うものもすべて、 9 二つずつ箱舟のノアのもとに来た。それは?~がノアに命じられたとおりに、雄と雌であった。 10 七日が過ぎて、洪水が地上起こった。 11 ノアの生涯の第六百年、第二の月の十七日、この日、大いなる深淵の源がことごとく裂け、天の窓が開かれた。 12 雨が四十日四十夜地上に降り続いたが、 13 まさにこの日、ノアも、息子のセム、ハム、ヤフェト、ノアの妻、この三人の息子の嫁たちも、箱舟に入った。 14 彼らと共にそれぞれの獣、それぞれの家畜、それぞれの地を這うもの、それぞれの鳥、小鳥や翼のあるものすべて、 15 命の霊をもつ肉なるものは、二つずつノアのもとに来て箱舟に入った。 16 ?~が命じられたとおりに、すべて肉なるものの雄と雌とが来た。主は、ノアの後ろで戸を閉ざされた。 17 洪水は四十日間地上を覆った。水は次第に増して箱舟を押し上げ、箱舟は大地を離れて浮かんだ。 18 水は勢力を増し、地の上に大いにみなぎり、箱舟は水の面を漂った。 19 水はますます勢いを加えて地上にみなぎり、およそ天の下にある高い山はすべて覆われた。 20 水は勢い増して更にその上十五アンマに達し、山々を覆った。 21 地上で動いていた肉なるものはすべて、鳥も家畜も獣も地に群がり這うものも人も、ことごとく息絶えた。 22 乾いた地のすべてのもののうち、その鼻に命の息と霊のあるものはことごとく死んだ。 23 地の面にいた生き物はすべて、人をはじめ、家畜、這うもの、空の鳥に至るまでぬぐい去られた。彼らは大地からぬぐい去られ、ノアと、彼と共に箱舟にいたものだけが残った。 24 水は百五十日の間、地上で勢いを失わなかった。
8
1 神は、ノアと彼と共に箱舟にいたすべての獣とすべての家畜を御心に留め、地の上に風を吹かせられたので、水が減り始めた。 2 また、深淵の源と天の窓が閉じられたので、天からの雨は降りやみ、 3 水は地上からひいて行った。百五十日の後には水が減って、 4 第七の月の十七日に箱舟はアララト山の上に止まった。 5 水はますます減って第十の月になり、第十の月の一日には山々の頂が現れた。 6 四十日たって、ノアは自分が造った箱舟の窓を開き、烏を放した。烏は飛び立ったが、地上の水が乾くのを待って、出たり入ったりした。 8 ノアは鳩を彼のもとから放して、地の面から水がひいたかどうかを確かめようとした。 9 しかし、鳩は止まる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰って来た。水がまだ全地の面を覆っていたからである。ノアは手を差し伸べて鳩を捕らえ、箱舟の自分のもとに戻した。 10 更に七日待って、彼は再び鳩を箱舟から放した。 11 鳩は夕方になってノアのもとに帰って来た。見よ、鳩はくちばしにオリーブの葉をくわえていた。ノアは水が地上からひいたことを知った。 12 彼は更に七日待って、鳩を放した。鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。 13 ノアが六百一歳のとき、最初の月の一日に、地上の水は乾いた。ノアは箱舟の覆いを取り外して眺めた。見よ、地の面は乾いていた。 14 第二の月の二十七日になると、地はすっかり乾いた。 15 神はノアに仰せになった。 「さあ、あなたもあなたの妻も、息子も嫁も、皆一緒に箱舟から出なさい。 17 すべて肉なるもののうちからあなたのもとに来たすべての動物、鳥も家畜も地を這うものも一緒に連れ出し、地に群がり、地上で子を産み、増えるようにしなさい。」 18 そこで、ノアは息子や妻や嫁と共に外へ出た。 19 獣、這うもの、鳥、地に群がるもの、それぞれすべて箱舟から出た。 20 ノアは主のために祭壇を築いた。そしてすべての清い家畜と清い鳥のうちから取り、焼き尽くす捧げ物として祭壇の上にささげた。 21 主は宥めの香りをかいで、御心に言われた。「人に対して大地を呪うことは二度とすまい。人が心に思うことは、幼いときから悪いのだ。わたしは、この度したように生き物をことごとく打つことは、二度とすまい。 22 地の続くかぎり、種蒔きも刈り入れも 寒さも暑さも、夏も冬も 昼も夜も、やむことはない。」
創世記 祝福と契約
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1 ?~はノアと彼の息子たちを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちよ。 2 地のすべての獣と空のすべての鳥は、地を這うすべてのものと海のすべての魚と共に、あなたたちの前に恐れおののき、あなたたちの手にゆだねられる。 3 動いている命あるものは、すべてあなたたちの食糧とするがよい。わたしはこれらすべてのものを、青草と同じようにあなたたちに与える。 4 ただし、肉は命である血を含んだまま食べてはならない。 5 また、あなたたちの命である血が流された場合、わたしは賠償を要求する。いかなる獣からも要求する。人間どうしの血については、人間から人間の命を賠償として要求する。 6 人の血を流す者は 人によって自分の血を流される。人は?~にかたどって造られたからだ。 7 あなたたちは産めよ、増えよ 地に群がり、地に増えよ。」 8 ?~はノアと彼の息子たちに言われた。 9 「わたしは、あなたたちと、そして後に続く子孫と、契約を立てる。 10 あなたたちと共にいるすべての生き物、またあなたたちと共にいる鳥や家畜や地のすべての獣など、箱舟から出たすべてのもののみならず、地のすべての獣と契約を立てる。 11 わたしがあなたたちと契約を立てたならば、二度と洪水によって肉なるものが滅ぼされることはなく、洪水が起こって地を滅ぼすことも決してない。」 12 更に?~は言われた。「あなたたちならびにあなたたちと共にいるすべての生き物と、代々(よよ)とこしえにわたしが立てる契約のしるしはこれである。 13 すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立てた契約のしるしとなる。 14 わたしが地の上に雲を湧き起こらせ、雲の中に虹が現れると、 15 わたしは、わたしとあなたたちならびにすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた契約に心を留める。水が洪水となって、肉なるものをすべて滅ぼすことは決してない。 16 雲の中に虹が現れると、わたしはそれを見て、神と地上のすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた永遠の契約に心をと留める。」 17 ?~はノアに言われた。「これが、わたしと地上のすべて肉なるものとの間にたてた契約のしるしである。」
創世記 ノアと息子たち
18 箱舟から出たノアの息子は、セム、ハム、ヤフェトであった。ハムはカナンの父である。 19 この三人がノアの息子で、全世界の人々は彼らから出て広がったのである。 20 さて、ノアは農夫となり、ぶどう畑を作った。 21 あるとき、ノアはぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。 22 カナンの父ハムは、自分の父の裸を見て、外にいた二人の兄弟に告げた。 23 セムとヤフェトは着物を取って自分たちの肩に掛け、後ろ向きに歩いて行き、父の裸を覆った。二人は顔を背けたままで、父の裸を見なかった。 24 ノアは酔いからさめると、末の息子がしたことを知り、 25 こう言った。「カナンは呪われよ 奴隷の奴隷となり、兄たちに仕えよ。」 26 また言った。「セムの神、主をたたえよ。 カナンはセムの奴隷となれ。
27 神がヤフェトの土地を広げ(ヤフェト) セムの天幕に住まわせ カナンはその奴隷となれ。」 28 ノアは、洪水の後三百五十年生きた。 29 ノアは九百五十歳になって、死んだ。
創世記 ノアの子孫
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1 ノアの息子、セム、ハム、ヤフェトの系図は次のとおりである。洪水の後、彼らに息子が生まれた。 2 ヤフェトの子孫はゴメル、マゴグ、メディア、ヤワン、トバル、メシェク、ティラスであった。 3 ゴメルの子孫は、アシュケナズ、リファト、トガルマであった。 4 ヤワンの子孫は、エリシャ、タルシシュ、キティム、ロダニムであった。 5 海沿いの国々は、彼らから出て、それぞれの地に、その言語、氏族、民族に従って住むようになった。 6 ハムの子孫は、クシュ、エジプト、プト、カナンであった。 7 クシュの子孫はセバ、ハビラ、サブタ、ラマ、サブテカであり、ラマの子孫はシェバとデダンであった。 8 クシュにはまた、ニムロドが生まれた。ニムロドは地上で最初の勇士となった。 9 彼は、主の御前に勇敢な狩人であり、「主の御前に勇敢な狩人ニムドロのようだ」という言い方がある。 10 彼の王国の主な町は、バベル、ウルク、アッカドであり、それらはすべてシンアルの地にあった。 11 彼はその地方からアッシリに進み、ニネベ、レホボト・イル、カラ、 12 レセンを建てた。レセンはニネベとカラとの間にある、非常に大きな町であった。 13 エジプトにはリディア人、アルミナ人、レハビム人、ナフトヒム人、 14 上エジプト人、カスルヒム人、カフトル人が生まれた。このカフトル人からペリシテ人が出た。
15 カナンには長男シドンとヘト、 16 また、エブス人、アモリ人、ギルガシ人、 17 ヒビ人、アルキ人、シニ人、 18 アルワド人、フェマリ人、ハマト人が生まれた。その後、カナン人の諸氏族が広がった。 19 カナン人の領土は、シドンから南下してゲラルを経てガザまでを含み、更に、ソドム、ゴモラ、アドマ、ツェボイムを経てラシャまでを含んだ。 20 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたハムの子孫である。 21 セムにもまた子供が生まれた。彼はエベルのすべての子孫の先祖であり、ヤフェトの兄であった。 22 セムの子孫はエラム、アシュル、アルパクシャド、ルド、アラムであった。 23 アラムの子孫は、ウツ、フル、ゲテル、マシュであった。 24 アルパクシャドにはシェラが生まれ、シェラにはエベルが生まれた。 25 エベルには二人の息子が生まれた。ひとりの名は、その時代に土地が分けられた(パラグ)ので、ペレグといい、その兄弟はヨクタンといった。 26 ヨクタンには、アルモダド、シェレフ、ハツァルマベト、イエラ、 27 ハドラム、ウザル、ディクラ、 28 オバル、アビマエル、シェバ、 29 オフィル、ハビラ、ヨバブが生まれた。これらは皆、ヨクタンの息子であった。 30 彼らはメシャからセファルに至る東の高原地帯に住んでいた。 31 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたセムの子孫である。 32 ノアの子孫である諸氏族を、民族ごとの系図にまとめると以上のようになる。地上の諸民族は洪水の後、彼らから分かれ出た。
創世記 バベルの塔
11
1 世界中は同じ言葉を使って、同じように話していた。 2 東の方から移動してきた人々は、シンアルの地に平野を見つけ、そこに住み着いた。 3 彼らは、「れんがを作り、それをよく焼こう」と話し合った。石の代わりにれんがを、しっくいの代わりにアスファルトを用いた。 4 彼らは、「さあ 天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。 5 主は降って来て、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、 6 言われた。「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。 7 我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」 8 主は彼らをそこから全地に散らされたので、彼らはこの町の建設をやめた。 9 こういうわけで、この町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ、また、主がそこから彼らを全地に散らされたからである。
創世記 セムの系図
10 セムの系図は次のとおりである。セムが百歳になったとき、アルバクシャドが生まれた。それは洪水の二年後のことであった。 11 セムは、アルパクシャドが生まれた後五百年生きて、息子や娘をもうけた。 12 アルパクシャドが三十五歳になったとき、シェラが生まれた。 13 アルパクシャドは、シェラが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 14 シェラが三十歳になったとき、エベルが生まれた。 15 シェラは、エベルが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 16 エベルが三十四歳になったとき、ぺレグが生まれた。 17 エベルは、ぺレグが生まれた後四百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 18 ぺレグが三十歳になったとき、レウが生まれた。 19 ぺレグは、レウが生まれた後二百九年生きて、息子や娘をもうけた。 20 レウが三十二歳になったとき、セルグが生まれた。 21 レウは、セルグが生まれた後二百七年生きて、息子や娘をもうけた。 22 セルグ三十歳なったとき、ナホルが生まれた。 23 セルグは、ナホルが生まれた後二百年生きて、息子や娘をもうけた。 24 ナホルが二十九歳になったとき、テラが生まれた。 25 ナホルは、テラが生まれた後百十九年生きて、息子や娘をもうけた。 26 テラが七十歳になったとき、アブラム、ナホル、ハランが生まれた。
創世記 テラの系図
27 テラの系図は次のとおりである。テラにはアブラム、ナホル、ハランが生まれた。ハランにはロトが生まれた。 28 ハランは父のテラより先に、故郷カルデアのウルで死んだ。 29 アブラムとナホルはそれぞれ妻をめとった。アブラムの妻の名はサライ、ナホルの妻の妻の名はミルカといった。ミルカはハランの娘である。ハランはミルカとイスカの父であった。 30 サライは不妊の女で、子供ができなかった。 31 テラは、息子アブラムと、ハランの息子で自分の孫であるロト、および息子アブラムの妻で自分の嫁であるサライを連れて、カルデアのウルを出発し、カナン地方に向った。彼らはハランまで来ると、そこにとどまった。 32 テラは二百五年の生涯を終えて、ハランで死んだ。
創世記 アブラムの召命と移住
12
1 主はアブラムに言われた。「あなたは生まれ故郷 父の家を離れて わたしが示す地に行きなさい 2 わたしはあなたを大いなる国民にし あなたを祝福し あなたに名を高める 祝福の源となるように 3 あなたを祝福する人をわたしは祝福し あなたを呪う者をわたしは呪う。 地上の氏族はすべて あなたによって祝福に入る。」 4 アブラムは 主の言葉に従って旅立った。ロトも共に行った。アブラムは、ハランを出発したとき七十五歳であった。 5 アブラムは妻のサライ、甥のロトを連れ、蓄えた財産をすべて携え、ハランで加わった人々と共にカナン地方へ向かって出発し、カナン地方入った。 6 アブラムはその地を通り、シケムの聖所、モレの樫の木まで来た。当時、その地方にはカナン人が住んでいた。 7 主はアブラムに現れて、言われた。「あなたの子孫のこの地を与える」アブラムは、彼に現れた主のために、そこに祭壇を築いた。 8 アブラムは、そこからベテルの東の山へ移り、西にベテル、東にアイを望む所に天幕を張って、そこにも主のために祭壇を築き、主の御名を呼んだ。 9 アブラムは更に旅を続け、ネゲブ地方に移った。
創世記 エジプト滞在
10 その地方に飢饉があった。 アブラムは、その地方の飢饉がひどかったので、エジプトに下り、そこに滞在することにした。 11 エジプトに入ろうしたとき、妻サライに言った。 「あなたが美しいのを、わたしはよく知っている。 12 エジプト人があなたを見たら、『この女はあの男の妻だ』と言って、わたしを殺し、あなたを生かしておくにちがいない。 13 どうか、わたしの妹だ、と言ってください。 そうすれば、わたしはあなたのゆえに幸いになり、あなたのお陰で命も助かるだろう。」 14 アブラムがエジプトに入ると、エジプト人はサライを見て、大変美しいと思った。 15 ファラオの家臣たちも彼女を見て、ファラオに彼女のことを褒めたので、サライはファラオの宮廷に召し入れられた 16 アブラムも彼女のゆえに幸いを受け、羊の群れ、牛の群れ、ろば、男女の奴隷、雌ろば、らくだなどを与えられた。 17 ところが主は、アブラムの妻サライのことで、ファラオと宮廷の人々を恐ろしい病気にかからせた。 18 ファラオはアブラムを呼び寄せて言った。 「あなたはわたしに何ということをしたのか。 なぜ、あの婦人は自分の妻だと、言わなかったのか。 19 なぜ、『わたしの妹です』などと言ったのか。 だからこそ、わたしの妻として召し入れたのだ。 さあ、あなたの妻を連れて、立ち去ってもらいたい。 20 ファラオは家来たちに命じて、アブラムを、その妻とすべての持ち物と共に送り出させた。
創世記 ロトとの別れ
13
1 アブラムは、妻と共に、すべての持ち物を携え、エジプトを出て再びネゲブ地方へ上った。ロトも一緒であった。 2 アブラムは非常に多くの家畜や金銀を持っていた。 3 ネゲブ地方から更に、ベテルに向って旅を続け、ベテルとアイとの間の、以前に天幕を張った所まで来た。 4 そこは、彼が最初に祭壇を築いて、主の御名を呼んだ場所であった。 5 アブラムと共に旅をしていたロトもまた、羊や牛の群れを飼い、たくさんの天幕を持っていた。 6 その土地は、彼らが一緒に住むには十分ではなかった。 彼らの財産が多すぎたから、一緒に住むことができなかったのである。 7 アブラムの家畜を飼う者たちと、ロトの家畜を飼うものたちとの間に争いが起きた。 そのころ、その地方にはカナン人もペリジ人も住んでいた。 8 アブラムはロトに言った。 「わたしたちは親類どうしだ。わたしとあなたの間ではもちろん、お互いの羊飼いの間でも争うのはやめよう。 9 あなたの前には幾らでも土地があるのだから、ここで別れようではないか。 あなたが左に行くなら、わたしは右に行こう。 あなたが右に行くなら、わたしは左に行こう。」 10 ロトが目を上げて眺めると、ヨルダン川流域の低地一帯は、 主がソドムとゴモラを滅ぼす前であったので、ツォアルに至るまで、主の園のように、エジプトの国のように、見渡すかぎりよく潤っていた。 11 ロトはヨルダン川流域の低地一帯を選んで、東へ移って行った。こうして彼らは、左右に別れた。 12 アブラムはカナン地方に住み、ロトは低地の町々に住んだが、彼はソドムまで天幕を移した。 13 ソドムの住民は邪悪で、主に対して多くの罪を犯していた。 14 主は、ロトが別れて行った後、アブラムに言われた。「さあ、目を上げて、あなたがいる場所から東西南北を見渡しなさい。 15 見えるかぎりの土地をすべて、わたしは永久にあなたとあなたの子孫に与える。 16 あなたの子孫を大地の砂粒のようにする。大地の砂粒が数えきれないように、あなたの子孫も数えきれないであろう。 17 さあ、この土地を縦横に歩き回るがよい。わたしはそれをあなたに与えるから。」 18 アブラムは天幕を移し、ヘブロンにあるマムレの樫の木のところに来て住み、そこに主のために祭壇を築いた。
王との戦い
14
1 シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨク、エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアルが、 2 ソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アドマの王シンアブ、ツェボイムの王シェムエベル、ベラ、すなわちツオワルの王と戦ったとき、 3 これら五人の王は皆、シディムの谷、すなわち塩の海で同盟を結んだ。 4 彼らは十二年間ケドルラオメルに支配されていたが、十三年目に背いたのである。 5 十四年目に、ケドルラオメルとその味方の王たちが来て、アシュテロト・カルナイムでレファイム人を、ハムでズジム人を、シャベ・キルヤタイムでエミル人を、 6 セイルの山地でフリ人人を撃ち、荒れ野に近いエル・バランまで進んだ。 7 彼らは転進して、エン・ミシュパト、すなわちカデシュに向かい、アマレク人の全領土とハツェツオン・タマルに住むアモリ人を撃った。 8 そこで、ソドムの王、ゴモラの王、アドマの王、ツェボイムの王、ベラすなわちツォアルの王は兵を繰り出し、シディムの谷で彼らと戦おうと陣を敷いた。 9 エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアル、シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨクの四人の王に対して、これら五人の王が戦いを挑んだのである。 10 シディムの谷には至るところに天然アスファルトの穴があった。ソドムとゴモラの王は逃げるとき、その穴に落ちた。残りの王は山へ逃れた。 11 ソドムとゴモラの財産や食糧はすべて奪い去られ、 12 ソドムに住んでいたアブラムの甥ロトも、財産もろとも連れ去られた。
創世記 契約と割礼
17
1 アブラムが九十九歳になったとき、主はアブラムに現れて言われた。「わたしは全能の神である。あなたはわたしに従って歩み、全き者となりなさい。 2 わたしは、あなたとの間にわたしの契約を立て、あなたをますます増やすであろう。」 3 アブラムはひれ伏した。神は更に、語りかけて言われた。 4 「これがあなたと結ぶわたしの契約である。あなたは多くの国民の父となる。 5 あなたは、もはやアブラムではなく、アブラハムと名乗りなさい。あなたを多くの国民の父とするからである。 6 わたしは、あなたをますます?栄させ、諸国民の父とする。王となる者たちがあなたから出るであろう。 7 わたしは、あなたとの間に、また後に続く子孫との間に契約を立て、それを永遠の契約とする。そして、あなたとあなたの子孫の神となる。 8 わたしは、あなたが滞在しているこのカナンのすべての土地を、あなたとその子孫に、永久の所有地として与える。わたしは彼らの神となる。」 9 神はまた、アブラムに言われた。「だからあなたも、わたしの契約を守りなさい、あなたも後に続く子孫も。 10 あなたたち、およびあなたの後に続く子孫と、わたしとの間で守るべき契約はこれである。すなわち、あなたたちの男子はすべて、割礼を受ける。 11 包皮の部分を切り取りなさい。これが、わたしとあなたたちとの間の契約のしるしとなる。 12 いつの時代でも、あなたたちの男子はすべて、直系の子孫はもちろんのこと、家で生まれた奴隷も、外国人から買い取った奴隷であなたの子孫でない者も皆、生れてから八日目に割礼を受けなければならない。 13 あなたのお家で生まれた奴隷も、買い取った奴隷も、必ず割礼を受けなければならない。それによって、わたしの契約はあなたの体に記されて永遠の契約となる。 14 包皮の部分を切り取らない無割礼の男がいたなら、その人は民の間から断たれる。わたしの契約を破ったからである。」 15 神はアブラムに言われた。「あなたの妻サライは、名前をサライではなく、サラと呼びなさい。 16 わたしは彼女を祝福し、彼女によってあなたに男の子を与えよう。わたしは彼女を祝福し、諸国民の母とする。諸民族の王となる者たちが彼女から出る。」 17 アブラハムひれ伏した。しかし笑って、ひそかに言った。「百歳の男に子供が生まれるだろうか。九十歳のサラに子供が産めるだろうか。」 18 アブラハムは神に言った。「どうか、イシュマエルが御前に生き永らえますように。」 19 神は言われた。「いや、あなたの妻サラがあなたとの間に男の子を産む。その子をイサク(彼は笑う)と名付けなさい。わたしは彼と契約を立て、彼の子孫のために永遠の契約とする。 20 イシュマエルについての願いも聞き入れよう。必ず、わたしは彼を祝福し、大いに子供を増やし繁栄させる。彼は十二人の首長の父となろう。わたしは彼を大いなる国民とする。 21 しかし、わたしの契約は、来年の今ごろ、サラがあなたとの間に産むイサクと立てる。」 22 神はこう語り終えると、アブラハムを離れて昇って行かれた。 23 アブラハムは、息子のイシュマエルをはじめ、家で生まれた奴隷や買い取った奴隷など、自分の家にいる人々のうち、男子を皆集めて、すぐその日に、神が命じられたとおり包皮に割礼を施した。 24 アブラハムが包皮に割礼を受けたのは、九十九歳、 25 息子イシュマエルが包皮に割礼を受けたのは、十三歳であった。 26 アブラハムと息子のイシュマエルは、すぐその日に割礼を受けた。 27 アブラハムの家の男子は、家で生まれた奴隷も外国人から買い取った奴隷も皆、共に割礼を受けた。 5 わめきたてた。 「今夜、お前のところへ来た連中はどこにいる。ここへ連れてこい。なぶりものにしてやるから。」 6 ロトは、戸口の前にたむろしている男たちのところへ出て行き、後ろの戸を閉めて、
創世記 イサクの誕生の予告
18
1 主はマムレの樫の木の所でアブラハムに現れた。暑い真昼に、アブラハムは天幕の入り口に座っていた。 2 目を上げて見ると、三人の人が彼に向って立っていた。アブラハムはすぐに天幕の入り口から走り出て迎え、地にひれ伏して、 3 言った。「お客様、よろしければ、どうか、僕のもとを通り過ぎないでください。 4 水を少々持ってこさせますから、足を洗って、木陰でどうぞひと休みなさってください。 5 何か召し上がるものを調えますので、疲れをいやしてから、お出かけください。せっかく、僕の所の近くをお通りになったのですから。」その人たちは言った。「では、お言葉どおりにしましょう。」 6 アブラハムは急いで天幕に戻り、サラのところに来て言った。「早く、上等の小麦粉を三セアほどこねて、パン菓子をこしらえなさい。」 7 アブラハムは牛の群れのところへ走って行き、柔らかくておいしそうな子牛を選び、召し使いに渡し、急いで料理をさせた。 8 アブラハムは、凝乳、乳、出来立ての子牛の料理などを選び、彼らの前に並べた。そして、彼らが木陰で食事をしている間、そばに立って給仕をした。 9 彼らはアブラハムに尋ねた。「あなたの妻のサラはどこにいますか。」「はい、天幕の中におります」とアブラハムが答えると、 10 彼らの一人が言った。「わたしは来年の今ごろ、必ずここにまた来ますが、そのころには、あなたの妻のサラに男の子が生まれているでしょう。」サラは、すぐ後ろの天幕の入り口で聞いていた。 11 アブラハムもサラも多くの日を重ねて老人になっており、しかもサラは月のものがとうになくっていた。 12 サラはひそかに笑った。自分は年をとり、もはや楽しみがあるはずもなし、主人も年老いているのに、と思ったのである。13 主はアブラハムに言われた。「なぜサラは笑ったのか。なぜ年をとった自分に子供が生まれるはずがないと思ったのだ。 14 主に不可能なことがあろうか。来年の今ごろ、わたしはここに戻ってくる。そのころ、サラには必ず男の子が生まれている。」 15 サラは恐ろしくなり、打ち消して言った。「わたしは笑いませんでした。」主は言われた。「いや、あなたは確かに笑った。」
創世記 ソドムのための執り成し
16 その人たちはそこを立って、ソドムを見下ろす所まで来た。アブラハムも、彼らを見送るために一緒に行った。 17 主は言われた。「わたしが行おうとしていることをアブラハムに隠す必要があろうか。 18 アブラハムは大きな強い国民になり、世界のすべての国民は彼によって祝福に入る。 19 わたしがアブラハムを選んだのは、彼が息子たちとその子孫に、主の道を守り、主に従って正義を行うよう命じて、主がアブラハムに約束したことを成就するためである。 20 主は言われた。「ソドムとゴモラの罪は非常に重い、と訴える叫びが実に大きい。 21 わたしは降って行き、彼らの行跡が、果たして、わたしに届いた叫びのとおりかどうか見て確かめよう。」 22 その人たちは、更にソドムの方に向かったが、アブラハムはなお、主の御前にいた。 23 アブラハムは進み出て言った。「もことにあなたは、正しい者を悪い者と一緒に滅ぼされるのですか。 24 あの町に正しい者が五十人いるとしても、それでも滅ぼし、その五十人の正しい者のために、町をお赦しにはならないのですか。 25 正しい者を悪い者と一緒に殺し、正しい者を悪い者と同じ目に遭わせるようなことを、あなたがなさるはずはございません。全くありえないことです。全世界を裁くお方は、正義を行われるべきではありませんか。」 26 主は言われた。「もしソドムの町に正しい者が五十人いるならば、その者たちのために、町を全部赦そう。」 27 アブラハムは答えた。「塵にすぎないわたしですが、あえて、わが主に申し上げます。 28 もしかすると、五十人の正しい者に五人足りないかもしれません。それでもあなたは、五人たりないために、町のすべてを滅ぼされますか。」主は言われた。「もし、四十五人いれば滅ぼさない。」 29 アブラハムは重ねて言った。「もしかすると、四十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その四十人のためにわたしはそれをしない」 30 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう少し言わせてください。もしかすると、そこには三十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「もし三十人いるならわたしはそれはしない。」 31 アブラハムは言った。「あえて、わが主に申し上げます。もしかすると、二十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その二十人のためにわたしは滅ぼさない。」 32 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう一度だけ言わせてください。もしかすると、十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その十人のためにわたしは滅ぼさない。」 33 主はアブラハムと語り終えると、去って行かれた。アブラハムも自分の住まいに帰った。
創世記 ソドムの滅亡
19
1 二人の御使いが夕方ソドムに着いたとき、ロトはソドムの門の所に座っていた。ロトは彼らを見ると、立ち上って迎え、地にひれ伏して、 2 言った。 「皆様方、どうぞ僕(しもべ)の家に立ち寄り、足を洗ってお泊りください。彼らは言った。「いや、結構です。わたしたちはこの広場で夜を過ごします。」 3 しかし、ロトがぜひにと勧めたので、彼らはロトの所に立ちよることにし、彼の家を訪ねた。ロトは、酵母を入れないパンを焼いて食事を供し、彼らをもてなした。 4 彼らがまだ床に就かないうちに、ソドムの町の男たちが、若者も年寄りもこぞって押しかけ、家を取り囲んで、 7 言った。 「どうか、皆さん、乱暴なことはしないでください。 8 実は、わたしにはまだ嫁がせていない娘が二人おります。皆さんにその娘たちを差し出しますから、好きなようにしてください。ただ、あの方々には何もしないでください。この家の屋根の下に身を寄せていただいたのですから。」 9 男たちは口々に言った。 「そこをどけ」 「こいつはよそ者のくせに、指図などして。」 「さあ、彼らより先に、お前を痛い目に遭わせてやる。」 そして、ロトに詰め寄って体を押しつけ、戸を破ろうとした。 10 二人の客はそのとき、手を伸ばして、ロトを家の中に引き入れて戸を閉め、 11 戸口の前に入る男たちに、老若を問わず、目つぶしを食わせ、戸口を分からなくした。 12 二人の客はロトに言った。 「ほかに、あなたの身内の人がこの町にいますか。あなたの婿や息子や娘などを皆連れてここから逃げなさい。
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2024年12月07日
(4) 出エジプト記 幕屋を覆う幕 36-8〜胸当て 39-21
幕屋を覆う幕
8 仕事に従事する者のうち、心に知恵のある者はすべて、幕屋に用いる十枚の幕を織った。 すなわち、亜麻のより糸、青、紫、緋色の毛糸を使って意匠家の描いたケルビムの模様を織り上げた。 9 一枚の幕は長さ二十八アンマ、幅四アンマで、すべての幕を同じ寸法にした。 10 五枚の幕をつづり合わせ、他の五枚も同じようにした。 11 青い糸の輪を作り、一方のつづり合せたものの端に当たる幕の縁と、もう一方のつづり合わせたものの最後の最後の幕の縁とにそれを並べ、 12 一方の幕について五十の輪、他方のつづり合せたものの幕にも五十の輪を作り、それぞれが合うように並べて付けた。 13 そこに、五十の金の留め金を作り、両方の幕をそれらで留め合せた。 こうして幕屋を一つに仕上げた。
14 次に、山羊の毛を使って十一枚の幕を作り、幕屋を覆う天幕とした。 15 一枚の幕は長さ三十アンマ、幅四アンマで、十一枚の幕をすべて同じ寸法にした。 16 そのうちの五枚をつづり合せたものと、残りの六枚をつづり合せたものを作った。 17 五十の輪を作り、つづり合わせたものの端に当たる幕の縁に付け、もう一方のつづり合せたものの端に当たる幕の縁にも五十の輪を付けた。 18 そこに、五十の青銅の留め金を作り、天幕をつづり合せて一つにした。 19 最後に、赤く染めた雄羊の皮で天幕の覆いを作り、更にその上をじゅごんの皮の覆いでおおった。
幕屋の壁板と横木
20 次に、幕屋の壁板をアカシヤ材で縦方向に使って作った。 21 一枚の壁板は縦十アンマ、横一・五アンマ、 22 それぞれの壁板に二つの柄を作って隣の壁板とつなぎ合わせた。 幕屋の壁板全部に同じものを作った。 23 幕屋の壁板は南側に二十枚を並べ、 24 二十枚の壁板の下にはめるために銀の台座四十個を作った。 すなわち、一枚の板の下に作る二つのほぞに合うように二個の台座を、それぞれの壁板の下に置いた。 25 幕屋の他の側面、すなわち北側にも二十枚の壁板を並べ、 26 四十個の銀の台座を作り、壁板一枚につき二個の割りでそれぞれの壁板の下に置いた。
27 幕屋の後ろ、すなわち西側には六枚の壁板を並べ、 28 更に二枚の板を作って、幕屋の両方の隅とした。 29 壁板は、下部では二つずつに分かれているが、上部は箍で一つに連ねられていた。 両方の隅は同じように作った。 30 従って、西側の壁板は八枚となり、銀の台座は壁板一枚につき二個の割り当てで計十六個であった。
31 次に、アカシヤ材で横木を作った。 幕屋の一方の側の壁板に五本、 32 もう一方の壁板に五本、また西側、つまり後ろ側の壁板に五本用いた。 33 壁板の中央の高さに位置する横木は、壁板の端から端まで渡した。 34 金箔で壁板を覆い金環に横木を通し、その横木も金箔で覆った。
至聖所の垂れ幕
35 次に、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸を使って、意匠家の描いたケルビムの模様の垂れ幕を作り、 36 金箔で覆ったアカシヤ材の四本の柱の金の鉤に掛けた。 柱のために四つの銀の台座を鋳造した。
天幕の入り口の幕
37 次に、天幕の入り口に掛ける幕を作り、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸を使ってつづれ織を作った。 38 また、五本の柱と鉤を作った。 柱の上部と桁とは金箔で覆い、五つの台座は青銅で作った。
掟の箱 37
1 ベツァルエルはアカシヤ材で箱を作った。 寸法は縦二・五アンマ、横一・五アンマ、高さ一・五アンマ。 2 純金で内側も外側も覆い、周囲に金の飾りの縁を作った。 3 次に、四つの金環を鋳造し、箱の四隅の脚に、すなわち、箱の両側に二つずつ付けた。 4 箱を担ぐために、アカシヤ材で棒を作り、それを金で覆い、 5 箱の両側に付けた環に通した。
贖いの座
6 次に、贖いの座を純金で作り、寸法は縦二・五アンマ、横一・五アンマとした。 7 打ち出し作りで、一対の金のケルビムを作り、贖いの座の両端、 8 すなわち一つを一方の端に、もう一つを他の端に付けた。 一対のケルビムを贖いの座一部としてその両端に作った。 9 一対のケルビムは向かい合い、顔を贖いの座に向け、翼を広げてこれを覆った。
机
10 次に、アカシヤ材で机を作り、寸法は縦二アンマ、横一アンマ、高さ一・五アンマとした。 11 それを純金で覆い、金の飾り縁を作った。 12 また、一トファの幅の枠で四本の脚を補強し、枠にも金の飾り縁を作った。 13 四つの金環を鋳造し、それぞれの脚の外側に付けた。 14 すなわち枠の高さに付け、机を担ぐ棒を通す環とした。 15 アカシヤ材で棒を作って金で覆い、机を担ぐ棒とした。 16 また、机で用いる祭具を作り、ぶどう酒の捧げ物をささげるのに用いる皿、柄杓、水差し、小瓶を純金で作った。
燭台
17 彼は純金で燭台を作った。 燭台は、打ち出し作りとし、台座と支柱、蕚と節と花弁があった。 18 六本の支柱が左右に出るように作り、 一方に三本、他方に三本付けた。 19 一本の支柱にはアーモンドの形をした蕚と節と花弁を付け、もう一方の支柱にも三つのアーモンドの花の形をした蕚と節と花弁を付けた。 燭台から分かれて出ている六本の支柱を同じように作った。 20 燭台の支柱には四つのアーモンドの花の形をした蕚と節と花弁を付けた。 21 節は、支柱が対になって出ている所に一つ、その次に支柱が対になっている所に一つ、またその次に支柱が対になっている所に一つと、燭台の支柱から出ている六本の支柱の付け根の所に作った。 22 これらの節と支柱は支柱と一体をなし、燭台全体は一枚の純金の打ち出し作りであった。 23 次に、七個のともし火皿、芯切り鋏、火皿を純金で作った。 24 燭台とこれらすべての祭具は重さ一キカルの純金で作った。
香をたく祭壇
25 彼はアカシヤ材で香をたく祭壇を造った。 寸法は縦一アンマ、横一アンマの正方形に、高さにアンマとした。 そして、その四隅の角を祭壇から生えるように作った。 26 祭壇の上の面と四つの側面と角を純金で覆い、金の飾り縁を作った。 27 また、二個の金環を作り、それを金の飾り縁の下の両側に相対するように取り付け、担ぐための棒を差し入れる環とした。 28 この棒もアカシヤ材で作り、金で覆った。 29 また、聖なる油と、香料師の混ぜ合わせ方に従って純粋な香草の香を作った。
祭壇 38
1 彼はアカシア材で焼き尽くす捧げ物の祭壇を造り、縦五アンマ、横五アンマの正方形、高さは三アンマとした。 2 その祭壇の四隅にそれぞれ角を作って、祭壇から生えているようにし、全体を青銅で覆った。 3 また、祭壇で使われるすべての祭具、壺、十能、鉢、肉刺し、火皿などの祭具はみな青銅で作った。 4 格子は祭壇の半ばの高さにある、張り出した棚の下の部分に付け、青銅の網目作りとした。 5 四つの環を鋳造し、青銅の格子の四隅に付け、棒を通す所とした。 6 彼はアカシヤ材で棒を作り、それを青銅で覆い、 7 棒を祭壇の両側の環に差し入れて祭壇を担ぐために用いた。 祭壇は板で造り、中を空洞にした。 8 更に、青銅の洗盤と台を作ったが、それは臨在の幕屋の入り口で務めをする婦人たちの青銅の鏡で作った。
幕屋を囲む庭
9 彼は庭を造り、庭の南側に亜麻のより糸で織った長さ百アンマの幔幕を張った。 10 そのために、二十本の柱と二十個の台座を青銅で作り、柱の鉤と桁は銀で作った。 11 北側にも、長さ百アンマの幔幕を張り、二十本の柱と二十個の台座は青銅で、柱の鉤と桁は銀で作った。 12 西側には幅五十アンマの幔幕を張り、十本の柱と十個の台座を作り、柱の鉤と桁は銀で作った。 13 東側の幅も五十アンマとし、 14 十五アンマの幔幕と三本の柱と三個の台座によって右に、 15 同じく、十五アンマの幔幕と三本の柱と三個の台座によって左に張った。 それらは、庭の門の両側に置いた。 16 庭の周囲の幔幕はすべて亜麻のより糸で織った。 17 柱の台座は青銅、柱の鉤と桁は銀、柱頭は銀で覆われ、庭の柱はすべて銀の桁でつなぎ合わされていた。 18 庭の入り口には、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸で織ったつづれ織の長さ二十アンマ、高さあるいは幅五アンマの幕を張り、庭の幔幕に合うようにした。 19 四本の柱と四個の台座は青銅で、鉤は銀、その柱頭と桁は銀で覆った。 20 幕屋と庭の周囲の杭はすべて青銅で作った。
幕屋の建設材料の記録
21 以下、掟の幕屋である幕屋建設の記録は、モーセの命令により、祭司アロンの子イタマルの監督のもとに、レビ人が担当した。 22 ユダ族のフルの孫、ウリの子ツァルエルは、主がモーセに命じられたことをことごとく行い、 23 ダン族のアヒマサクの子オホリアブは彼を助け、彫刻師、意匠を考案する者および青、紫、緋色の毛糸、および亜麻糸を使ってつづれ織をする者となった。
24 仕事、すなわち聖所のあらゆる仕事に用いられた金の総額は、奉納物の金が聖所のシェケルで二十九キカル七百三十シェケル、 25 共同体に登録された者のささげた銀が聖所のシェケルで百キカル千七百七十五シェケルであり、 26 この額は二十歳以上の登録された者の総数、六十万三千五百五十人が一人当たり一ペカ、すなわち聖所のシェケルで半シェケルをささげたものに当たる。 27 銀百キカルは聖所と垂れ幕の台座を鋳造するために使われ、台座一個につき銀一キカル、百個の台座に銀百キカルを必要とした。 28 また、銀千七百七十五シェケルは、柱の鉤を作り、柱頭を覆い、また柱を桁でつなぐために使われた。 29 また、奉納物の青銅は七十キカル二千四百シェケルであり、 30 それを使って臨在の幕屋の入り口の台座、青銅の祭壇とその青銅の格子、祭壇のためのすべての祭具、 31 庭の周囲の台座、庭の門の台座、および幕屋と庭の周囲のすべての杭を作った。
アロンの祭壇 39
1 彼らは主がモーセに命じられたとおり、青、紫、緋色の毛糸を使って、聖所で仕えるために織った衣服を作った。 すなわち、アロンの祭服を作った。
エフォド
2 エフォドは金、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸を使って作った。 3 すなわち、金を延ばし、金箔を作って細い糸にし、これを青、紫、緋色の毛糸、および亜麻糸の中に織り込んで意匠家の描いた模様を作り、 4 その両端に肩ひもを付けた。 5 付け帯は、主がモーセに命じられたとおり、エフォドと同じように、金、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸を使って作った。 6 彼らは、イスラエルの子らの名を印章に彫るように彫りつけたラピス・ラズリの回りに、金で縁取りをし、 7 それを、主がモーセに命じられたとおり、それぞれエフォドの肩ひもに付け、イスラエルの子らのための記念の石とした。
胸当て
8 次に、金、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸を使って、エフォドと同じように、意匠家の描いた模様の胸当てを織った。 9 それは、縦横それぞれ一ゼレトの真四角なものとし、二重にした。 10 それに宝石を四列に並べて付けた。
第一列 ルビー トパーズ エメラルド
11 第二列 ざくろ石 サファイア ジャストパー
12 第三列 オパール めのう 紫水晶
13 第四列 藍玉 ラピス・ラズリ 碧玉
これらの宝石を並べたものの回りに金で縁取りした。 14 これらの宝石はイスラエルの子らの名を表して十二個あり、それぞれの宝石には十二部族に従ってそれぞれの名が印章に彫るように彫りつけられた。
15 次に、組みひも状にねじった純金の鎖を作り、胸当てに付けた。 16 更に、金の縁取り細工二個と金環二個を作り、二本の金の鎖を胸当ての両端に、 17 すなわち、二本の金の鎖をそれぞれ胸当ての端の二個の金環に通し、 18 二本の鎖の両端を金の縁取り細工に結び付け、エフォドの肩ひもの外側に取り付けた。 19 また、別の二個の金環を作って、おのおのを胸当ての下の端、つまりエフォドと接するあたりの裏側に取り付けた。 20 更に、別の二個の金環を作り、それを二本のエフォドの肩ひもの下、すなわち、エフォドの付け帯のすぐ上、そのつなぎ目のあたりの外側に取り付けた。 21 胸当ては、主がモーセに命じられたとおり、その環とエフォドの環を青いねじりひもで結び、それがエフォドの付け帯の上に来るようにし、胸当てがエフォドからはずれないようにした。
(4) 出エジプト記 幕屋を覆う幕 36-8〜胸当て 39-21
8 仕事に従事する者のうち、心に知恵のある者はすべて、幕屋に用いる十枚の幕を織った。 すなわち、亜麻のより糸、青、紫、緋色の毛糸を使って意匠家の描いたケルビムの模様を織り上げた。 9 一枚の幕は長さ二十八アンマ、幅四アンマで、すべての幕を同じ寸法にした。 10 五枚の幕をつづり合わせ、他の五枚も同じようにした。 11 青い糸の輪を作り、一方のつづり合せたものの端に当たる幕の縁と、もう一方のつづり合わせたものの最後の最後の幕の縁とにそれを並べ、 12 一方の幕について五十の輪、他方のつづり合せたものの幕にも五十の輪を作り、それぞれが合うように並べて付けた。 13 そこに、五十の金の留め金を作り、両方の幕をそれらで留め合せた。 こうして幕屋を一つに仕上げた。
14 次に、山羊の毛を使って十一枚の幕を作り、幕屋を覆う天幕とした。 15 一枚の幕は長さ三十アンマ、幅四アンマで、十一枚の幕をすべて同じ寸法にした。 16 そのうちの五枚をつづり合せたものと、残りの六枚をつづり合せたものを作った。 17 五十の輪を作り、つづり合わせたものの端に当たる幕の縁に付け、もう一方のつづり合せたものの端に当たる幕の縁にも五十の輪を付けた。 18 そこに、五十の青銅の留め金を作り、天幕をつづり合せて一つにした。 19 最後に、赤く染めた雄羊の皮で天幕の覆いを作り、更にその上をじゅごんの皮の覆いでおおった。
幕屋の壁板と横木
20 次に、幕屋の壁板をアカシヤ材で縦方向に使って作った。 21 一枚の壁板は縦十アンマ、横一・五アンマ、 22 それぞれの壁板に二つの柄を作って隣の壁板とつなぎ合わせた。 幕屋の壁板全部に同じものを作った。 23 幕屋の壁板は南側に二十枚を並べ、 24 二十枚の壁板の下にはめるために銀の台座四十個を作った。 すなわち、一枚の板の下に作る二つのほぞに合うように二個の台座を、それぞれの壁板の下に置いた。 25 幕屋の他の側面、すなわち北側にも二十枚の壁板を並べ、 26 四十個の銀の台座を作り、壁板一枚につき二個の割りでそれぞれの壁板の下に置いた。
27 幕屋の後ろ、すなわち西側には六枚の壁板を並べ、 28 更に二枚の板を作って、幕屋の両方の隅とした。 29 壁板は、下部では二つずつに分かれているが、上部は箍で一つに連ねられていた。 両方の隅は同じように作った。 30 従って、西側の壁板は八枚となり、銀の台座は壁板一枚につき二個の割り当てで計十六個であった。
31 次に、アカシヤ材で横木を作った。 幕屋の一方の側の壁板に五本、 32 もう一方の壁板に五本、また西側、つまり後ろ側の壁板に五本用いた。 33 壁板の中央の高さに位置する横木は、壁板の端から端まで渡した。 34 金箔で壁板を覆い金環に横木を通し、その横木も金箔で覆った。
至聖所の垂れ幕
35 次に、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸を使って、意匠家の描いたケルビムの模様の垂れ幕を作り、 36 金箔で覆ったアカシヤ材の四本の柱の金の鉤に掛けた。 柱のために四つの銀の台座を鋳造した。
天幕の入り口の幕
37 次に、天幕の入り口に掛ける幕を作り、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸を使ってつづれ織を作った。 38 また、五本の柱と鉤を作った。 柱の上部と桁とは金箔で覆い、五つの台座は青銅で作った。
掟の箱 37
1 ベツァルエルはアカシヤ材で箱を作った。 寸法は縦二・五アンマ、横一・五アンマ、高さ一・五アンマ。 2 純金で内側も外側も覆い、周囲に金の飾りの縁を作った。 3 次に、四つの金環を鋳造し、箱の四隅の脚に、すなわち、箱の両側に二つずつ付けた。 4 箱を担ぐために、アカシヤ材で棒を作り、それを金で覆い、 5 箱の両側に付けた環に通した。
贖いの座
6 次に、贖いの座を純金で作り、寸法は縦二・五アンマ、横一・五アンマとした。 7 打ち出し作りで、一対の金のケルビムを作り、贖いの座の両端、 8 すなわち一つを一方の端に、もう一つを他の端に付けた。 一対のケルビムを贖いの座一部としてその両端に作った。 9 一対のケルビムは向かい合い、顔を贖いの座に向け、翼を広げてこれを覆った。
机
10 次に、アカシヤ材で机を作り、寸法は縦二アンマ、横一アンマ、高さ一・五アンマとした。 11 それを純金で覆い、金の飾り縁を作った。 12 また、一トファの幅の枠で四本の脚を補強し、枠にも金の飾り縁を作った。 13 四つの金環を鋳造し、それぞれの脚の外側に付けた。 14 すなわち枠の高さに付け、机を担ぐ棒を通す環とした。 15 アカシヤ材で棒を作って金で覆い、机を担ぐ棒とした。 16 また、机で用いる祭具を作り、ぶどう酒の捧げ物をささげるのに用いる皿、柄杓、水差し、小瓶を純金で作った。
燭台
17 彼は純金で燭台を作った。 燭台は、打ち出し作りとし、台座と支柱、蕚と節と花弁があった。 18 六本の支柱が左右に出るように作り、 一方に三本、他方に三本付けた。 19 一本の支柱にはアーモンドの形をした蕚と節と花弁を付け、もう一方の支柱にも三つのアーモンドの花の形をした蕚と節と花弁を付けた。 燭台から分かれて出ている六本の支柱を同じように作った。 20 燭台の支柱には四つのアーモンドの花の形をした蕚と節と花弁を付けた。 21 節は、支柱が対になって出ている所に一つ、その次に支柱が対になっている所に一つ、またその次に支柱が対になっている所に一つと、燭台の支柱から出ている六本の支柱の付け根の所に作った。 22 これらの節と支柱は支柱と一体をなし、燭台全体は一枚の純金の打ち出し作りであった。 23 次に、七個のともし火皿、芯切り鋏、火皿を純金で作った。 24 燭台とこれらすべての祭具は重さ一キカルの純金で作った。
香をたく祭壇
25 彼はアカシヤ材で香をたく祭壇を造った。 寸法は縦一アンマ、横一アンマの正方形に、高さにアンマとした。 そして、その四隅の角を祭壇から生えるように作った。 26 祭壇の上の面と四つの側面と角を純金で覆い、金の飾り縁を作った。 27 また、二個の金環を作り、それを金の飾り縁の下の両側に相対するように取り付け、担ぐための棒を差し入れる環とした。 28 この棒もアカシヤ材で作り、金で覆った。 29 また、聖なる油と、香料師の混ぜ合わせ方に従って純粋な香草の香を作った。
祭壇 38
1 彼はアカシア材で焼き尽くす捧げ物の祭壇を造り、縦五アンマ、横五アンマの正方形、高さは三アンマとした。 2 その祭壇の四隅にそれぞれ角を作って、祭壇から生えているようにし、全体を青銅で覆った。 3 また、祭壇で使われるすべての祭具、壺、十能、鉢、肉刺し、火皿などの祭具はみな青銅で作った。 4 格子は祭壇の半ばの高さにある、張り出した棚の下の部分に付け、青銅の網目作りとした。 5 四つの環を鋳造し、青銅の格子の四隅に付け、棒を通す所とした。 6 彼はアカシヤ材で棒を作り、それを青銅で覆い、 7 棒を祭壇の両側の環に差し入れて祭壇を担ぐために用いた。 祭壇は板で造り、中を空洞にした。 8 更に、青銅の洗盤と台を作ったが、それは臨在の幕屋の入り口で務めをする婦人たちの青銅の鏡で作った。
幕屋を囲む庭
9 彼は庭を造り、庭の南側に亜麻のより糸で織った長さ百アンマの幔幕を張った。 10 そのために、二十本の柱と二十個の台座を青銅で作り、柱の鉤と桁は銀で作った。 11 北側にも、長さ百アンマの幔幕を張り、二十本の柱と二十個の台座は青銅で、柱の鉤と桁は銀で作った。 12 西側には幅五十アンマの幔幕を張り、十本の柱と十個の台座を作り、柱の鉤と桁は銀で作った。 13 東側の幅も五十アンマとし、 14 十五アンマの幔幕と三本の柱と三個の台座によって右に、 15 同じく、十五アンマの幔幕と三本の柱と三個の台座によって左に張った。 それらは、庭の門の両側に置いた。 16 庭の周囲の幔幕はすべて亜麻のより糸で織った。 17 柱の台座は青銅、柱の鉤と桁は銀、柱頭は銀で覆われ、庭の柱はすべて銀の桁でつなぎ合わされていた。 18 庭の入り口には、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸で織ったつづれ織の長さ二十アンマ、高さあるいは幅五アンマの幕を張り、庭の幔幕に合うようにした。 19 四本の柱と四個の台座は青銅で、鉤は銀、その柱頭と桁は銀で覆った。 20 幕屋と庭の周囲の杭はすべて青銅で作った。
幕屋の建設材料の記録
21 以下、掟の幕屋である幕屋建設の記録は、モーセの命令により、祭司アロンの子イタマルの監督のもとに、レビ人が担当した。 22 ユダ族のフルの孫、ウリの子ツァルエルは、主がモーセに命じられたことをことごとく行い、 23 ダン族のアヒマサクの子オホリアブは彼を助け、彫刻師、意匠を考案する者および青、紫、緋色の毛糸、および亜麻糸を使ってつづれ織をする者となった。
24 仕事、すなわち聖所のあらゆる仕事に用いられた金の総額は、奉納物の金が聖所のシェケルで二十九キカル七百三十シェケル、 25 共同体に登録された者のささげた銀が聖所のシェケルで百キカル千七百七十五シェケルであり、 26 この額は二十歳以上の登録された者の総数、六十万三千五百五十人が一人当たり一ペカ、すなわち聖所のシェケルで半シェケルをささげたものに当たる。 27 銀百キカルは聖所と垂れ幕の台座を鋳造するために使われ、台座一個につき銀一キカル、百個の台座に銀百キカルを必要とした。 28 また、銀千七百七十五シェケルは、柱の鉤を作り、柱頭を覆い、また柱を桁でつなぐために使われた。 29 また、奉納物の青銅は七十キカル二千四百シェケルであり、 30 それを使って臨在の幕屋の入り口の台座、青銅の祭壇とその青銅の格子、祭壇のためのすべての祭具、 31 庭の周囲の台座、庭の門の台座、および幕屋と庭の周囲のすべての杭を作った。
アロンの祭壇 39
1 彼らは主がモーセに命じられたとおり、青、紫、緋色の毛糸を使って、聖所で仕えるために織った衣服を作った。 すなわち、アロンの祭服を作った。
エフォド
2 エフォドは金、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸を使って作った。 3 すなわち、金を延ばし、金箔を作って細い糸にし、これを青、紫、緋色の毛糸、および亜麻糸の中に織り込んで意匠家の描いた模様を作り、 4 その両端に肩ひもを付けた。 5 付け帯は、主がモーセに命じられたとおり、エフォドと同じように、金、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸を使って作った。 6 彼らは、イスラエルの子らの名を印章に彫るように彫りつけたラピス・ラズリの回りに、金で縁取りをし、 7 それを、主がモーセに命じられたとおり、それぞれエフォドの肩ひもに付け、イスラエルの子らのための記念の石とした。
胸当て
8 次に、金、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸を使って、エフォドと同じように、意匠家の描いた模様の胸当てを織った。 9 それは、縦横それぞれ一ゼレトの真四角なものとし、二重にした。 10 それに宝石を四列に並べて付けた。
第一列 ルビー トパーズ エメラルド
11 第二列 ざくろ石 サファイア ジャストパー
12 第三列 オパール めのう 紫水晶
13 第四列 藍玉 ラピス・ラズリ 碧玉
これらの宝石を並べたものの回りに金で縁取りした。 14 これらの宝石はイスラエルの子らの名を表して十二個あり、それぞれの宝石には十二部族に従ってそれぞれの名が印章に彫るように彫りつけられた。
15 次に、組みひも状にねじった純金の鎖を作り、胸当てに付けた。 16 更に、金の縁取り細工二個と金環二個を作り、二本の金の鎖を胸当ての両端に、 17 すなわち、二本の金の鎖をそれぞれ胸当ての端の二個の金環に通し、 18 二本の鎖の両端を金の縁取り細工に結び付け、エフォドの肩ひもの外側に取り付けた。 19 また、別の二個の金環を作って、おのおのを胸当ての下の端、つまりエフォドと接するあたりの裏側に取り付けた。 20 更に、別の二個の金環を作り、それを二本のエフォドの肩ひもの下、すなわち、エフォドの付け帯のすぐ上、そのつなぎ目のあたりの外側に取り付けた。 21 胸当ては、主がモーセに命じられたとおり、その環とエフォドの環を青いねじりひもで結び、それがエフォドの付け帯の上に来るようにし、胸当てがエフォドからはずれないようにした。
(4) 出エジプト記 幕屋を覆う幕 36-8〜胸当て 39-21
2023年12月09日
(3) 出エジプト記 エジプトでのイスラエル人 1-1 〜幕屋建設の準備 36-7
エジプトでのイスラエル人 1-1〜
1 ヤコブと共に一家を挙げてエジプトへ下ったイスラエルの子らの名前は次のとおりである。 2 ルベン、シメオン、レビ、ユダ、 3 イサカル、ゼブルン、ベニヤミン、 4 ダン、ナフタリ、ガド、アシェル。 5 ヤコブの腰から出た子、孫の数は全部で七十人であった。 ヨセフは既にエジプトにいた。
6 ヨセフもその兄弟たちも、その世代の人々も皆、死んだが、 7 イスラエルの人々は子を産み、おびただしく数を増し、ますます強くなって国中に溢れた。 8 そのころ、ヨセフのことを知らない新しい王が出てエジプトを支配し、 9 国民に警告した。
「イスラエル人という民は、今や、我々にとってあまりに数多く、強力になりすぎた。 10 抜かりなく取り扱い、これ以上の増加を食い止めよう。 一度戦争が起これば、敵側に付いて我々と戦い、この国を取るかもしれない。」
11エジプト人はそこで、イスラエルの人々の上に強制労働の監督を置き、重労働を課して虐待した。 イスラエルの人々はファラオの物資貯蔵の町、ピトムとラメセスを建設した。 12 しかし、虐待されればされるほど彼らは増え広がったので、エジプト人はますますイスラエルの人々を嫌悪し、 13 イスラエルの人々を酷使し、14 粘土こね、れんが焼き、あらゆる農作業などの重労働によって彼らの生活を脅かした。 彼らが従事した労働はいずれも過酷を極めた。
男児殺害の命令
15 エジプト王は二人のヘブライ人の助産婦に命じた。 一人はシフラといい、もう一人はプアといった。 16 「お前たちがヘブライ人の女の出産を助けるときには、子供の性別を確かめ、男の子ならば殺し、女の子ならば生かしておけ。」 17 助産婦はいずれも神を畏れていたので、エジプト王が命じたとおりにはせず、男の子も生かしておいた。 18 エジプト王は彼女たちを呼びつけて問いただした。 「どうしてこのようなことをしたのだ。 お前たちは男の子を生かしているではないか。」 19 助産婦はファラオに答えた。 「ヘブライ人の女はエジプト人の女性とは違います。 彼女たちは丈夫で、助産婦が行く前に産んでしまうのです。」 20 神はこの助産婦たちに恵みを与えられた。 民は数を増し、甚だ強くなった。 21 助産婦たちは神を畏れていたので、神は彼女たちにも子宝を恵まれた。
モーセの生い立ち
22 ファラオは全国民に命じた。 「生まれた男の子は、一人残らずナイル川にほうり込め。 女の子は皆、生かしておけ。」
2
1 レビの家の出のある男が同じレビ人の娘をめとった。 2 彼女は身ごもり、男の子を産んだが、その子がかわいかったのを見て、三か月の間隠しておいた。 3 しかし、もはや隠しきれなくなったので、パピルスの籠を用意し、アスファルトとピッチで防水し、その中に男の子を入れ、ナイル河畔の葦の茂みの間に置いた。
4 その子の姉が遠くに立って、どうなることかと様子を見ていると、 5 そこへ、ファラオの王女が水浴びをしようと川に下りて来た。 その間侍女たちは川岸を行き来していた。 王女は、葦の茂みの間に籠をみつけたので、仕え女をやって取って来させた。 6 開けてみると赤ん坊がおり、しかも男の子で、泣いていた。 王女はふびんに思い、「これは、きっと、ヘブライ人の子です」と言った。 7 そのとき、その子の姉がファラオの王女に申し出た。 「この子に乳を飲ませるヘブライ人の乳母を呼んで参りましょうか。」
8 「そうしておくれ」と、王女が頼んだので、娘は早速その子の母を連れて来た。 9 王女が、「この子を連れて行って、わたしに代わって乳を飲ませておやり。 手当てはわたしが出しますから」と言ったので、母親はその子を引き取って乳を飲ませ、 10その子が大きくなると、王女のもとへ連れていった。 その子はこうして、王女の子となった。 王女は彼をモーセと名付けて言った。 「水の中からわたしが引き上げた(マーシャー)のですから。」
エジプトからの逃亡
11 モーセが成人したころのこと、彼は同胞のところへ出て行き、彼らが重労働に服しているのを見た。 そして一人のエジプト人が、同胞であるヘブライ人の一人を打っているのを見た。 12 モーセは辺りを見回し、だれもいないのを確かめると、そのエジプト人を打ち殺して死体を砂に埋めた。 13 翌日、また出て行くと、今度はヘブライ人どうしが二人でけんかをしていた。 モーセが、「どうして自分の仲間を殴るのか」と悪い方をたしなめると、 14 「誰がお前を我々の監督や裁判官にしたのか。 お前はあのエジプト人を殺したように、このわたしを殺すつもりか」と言い返したので、モーセは恐れ、さてはあの事が知れたのかと思った。 15 ファラオはこの事を聞き、モーセを殺そうと尋ね求めたが、モーセはファラオの手を逃れてミディアン地方にたどりつき、とある井戸の傍らに腰を下ろした。 16 さて、ミディアンの祭司に七人の娘がいた。 彼女たちがそこへ来て水をくみ、水ぶねを満たし、父の羊の群れに飲ませようとしたところへ、 17 羊飼いの男たちが来て、娘たちを追い払った。 モーセは立ち上がって娘たちを救い、羊の群れに水を飲ませてやった。 18 娘たちが父レウエルのところに帰ると、父は、「どうして今日はこんなに早く帰れたのか」と尋ねた。 19 彼女たちは言った。
「一人のエジプト人が羊飼いの男たちからわたしたちを助け出し、わたしたちのために水をくんで、羊に飲ませてくださいました。」
20 父は娘たちに言った。 「どこにおられるのだ、その方は。 どうして、お前たちはその方をほうっておくのだ。 呼びに行って、食事を差し上げなさい。」
21 モーセがこの人のもとにとどまる決意をしたので、彼は自分の娘ツィポラをモーセと結婚させた。 22 彼女は男の子を産み、モーセは彼をゲルショムと名付けた。 彼が、「わたしは異国にいる寄留者(ゲール)だ」と言ったからである。
23 それから長い年月がたち、エジプト王は死んだ。 その間イスラエルの人々は労働のゆえにうめき、叫んだ。 労働のゆえに助けを求める彼らの叫び声は神に届いた。 24 神はその嘆きを聞き、アブラハム、イサク、ヤコブとの契約を思い起こされた。 25 神はイスラエルの人々を顧み、御心に留められた。
モーセの召命 3
1 モーセは、しゅうとでありミディアンの祭司であるエトロの羊の群れ飼っていたが、あるとき、その群れを荒れ野の奥へ追って行き、神の山ホレブに来た。 2 そのとき、柴の間に燃え上がっている炎の中に主の御使いが現れた。 彼が見ると、見よ、柴は火に燃えているのに、柴は燃え尽きない。 3 モーセは言った。 「道をそれて、この不思議な光景を見届けよう。 どうしてあの柴は燃え尽きないのだろう。」
4 主は、モーセが道をそれて見に来るのを御覧になった。 神は柴の間から声をかけられ、「モーセよ、モーセよ」と言われた。 彼が、「はい」と答えると、 5 神が言われた。 「ここに近づいてはならない。 足から履物を脱ぎなさい。 あなたの立っている場所は聖なる土地だから。」 6 神は続けて言われた。 「わたしはあなたの父の神である。 アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である。」 モーセは、神を見ることを恐れて顔を覆った。
7 主は言われた。 「わたしは、エジプトにいるわたしの民の苦しみをつぶさに見、追い使う者のゆえに叫ぶ彼らの叫び声を聞き、その痛みを知った。 8 それゆえ、わたしは降って行き、エジプト人の手から彼らを救い出し、この国から、広々としたすばらしい土地、乳と蜜の流れる土地、カナン人、ヘト人、アモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人の住む所へ彼らを導き上る。
9 見よ、イスラエルの人々の叫び声が、今、わたしのもとに届いた。 また、エジプト人が彼らを圧迫する有様を見た。 10 今、行きなさい。 わたしはあなたをファラオのもとに遣わす。 わが民イスラエルの人々をエジプトから連れ出すのだ。」
11モーセは神に言った。 「わたしは何者でしょう。 どうして、ファラオのもとに行き、しかもイスラエルの人々をエジプトから導き出さねばならないのですか。」 12 神は言われた。 「わたしは必ずあなたと共にいる。 このことこそ、わたしがあなたを遣わすしるしである。 あなたが民をエジプトから導き出したとき、あなたたちはこの山で神に仕える。」
13 モーセは神に尋ねた。
「わたしは、今、イスラエルの人々のところへ参ります。 彼らに、『あなたたちの先祖の神が、わたしをここに遣わされたのです』と言えば、彼らは、『その名は一体何か』と言うにちがいありません。 彼らに何と答えるべきでしょうか。」
14 神はモーセに、「わたしはある。 わたしはあるという者だ」と言われ、また、「イスラエルの人々にこう言うがよい。 『わたしはある』という方がわたしをあなたたちに遣わされたのだと。」 15 神は、更に続けてモーセに命じられた。
「イスラエルの人々にこう言うがよい。 あなたたちの先祖の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である主がわたしをあなたたちのもとに遣わされた。
これこそ、とこしえにわたしの名
これこそ、世々にわたしの呼び名
16 さあ、行って、イスラエルの長老を集め、言うがよい。 『あなたたちの先祖の神、アブラハム、イサク、ヤコブの神である主がわたしに現れて、こう言われた。 わたしはあなたたちを顧み、あなたたちがエジプトで受けてきた仕打ちをつぶさに見た。 17 あなたたちを苦しみのエジプトから、カナン人、ヘト人、アモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人の住む乳と蜜の流れる土地へ導き上ろうと決心した』と。 18 彼らはあなたの言葉に従うであろう。 あなたはイスラエルの長老たちを伴い、エジプト王のもとに行って彼に言いなさい。 『ヘブライ人の神、主がわたしたちに出現されました。 どうか、今、三日の道のりを荒れ野に行かせて、わたしたちの神、主に犠牲をささげさせてください。』 19 しかしわたしは、強い手を用いなければ、エジプト王が行かせないことを知っている。 20 わたしは自ら手を下しあらゆる驚くべき業をエジプトの中で行い、これを打つ。 その後初めて、王はあなたたちを去らせるであろう。
21 そのとき、わたしは、この民にエジプト人の好意を得させるようにしよう。 出国に際して、あなたたちは何も持たずに出ることはない。 22 女は皆、隣近所や同居の女たちに金銀の装身具や外套を求め、それを自分の息子、娘の身に着けさせ、エジプト人からの分捕り物としなさい。
使命に伴うしるし 4
1 モーセは逆らって、「それでは彼らは、『主がお前などに現れるはずがない』と言って、信用せず、わたしの言うことを聞かないでしょう」と言うと、 2 主は彼に、「あなたが手に持っているものは何か」と言われた。 彼が、「杖です」と答えると、 3 主は、「それを地面に投げよ」と言われた。 彼が杖を地面に投げると、それが蛇になったのでモーセは飛びのいた。
4 主はモーセに、「手を伸ばして、尾をつかめ」と言われた。 モーセが手を伸ばしてつかむと、それは手の中で杖に戻った。 5 「こうすれば、彼らは先祖の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神、主があなたに現れたことを信じる。」 6 主は更に、「あなたの手をふところに入れなさい」と言われた。 モーセは手をふところに入れ、それから出してみると、驚いたことには、手は重い皮膚病にかかり、雪のように白くなっていた。 7 主が、「手をふところに戻すがよい」と言われたので、ふところに戻し、それから出してみると、元の肌になっていた。 8 「たとえ、彼らがあなたを信用せず、最初のしるしが告げることは信じる。 9 しかし、この二つのしるしのどちらも信ぜず、またあなたの言うことも聞かないならば、ナイル川の水をくんできて乾いた地面にまくがよい。 川からくんできた水は地面で血に変わるであろう。」
10 それでもなお、モーセは主に言った。 「ああ、主よ。 わたしはもともと弁が立つ方ではありません。 あなたが僕にお言葉をかけてくださった今でもやはりそうです。 全くわたしは口が重く、舌の重い者なのです。」 11 主は彼に言われた。 「一体、誰が人間に口を与えたのか。 一体、誰が口を利けないようにし、耳を聞こえないようにし、目を見えるようにし、また見えなくするのか。 主なるわたしではないか。 12 さあ、行くがよい。 このわたしがあなたの口と共にあって、あなたが語るべきことを教えよう。 13 モーセは、なおも言った。 「ああ主よ。 どうぞ、だれかほかの人を見つけてお遣わしください。」
14 主はついに、モーセに向かって怒りを発して言われた。
「あなたにはレビ人アロンという兄弟がいるではないか。 わたしは彼が雄弁なことを知っている。 その彼が今、あなたに会おうとして、こちらに向かっている。 あなたに会ったら、心から喜ぶであろう。 15 彼によく話し、語るべき言葉を彼の口に託すがよい。 わたしはあなたの口と共にあり、また彼の口と共にあって、あなたたちのなすべきことを教えよう。 16 彼はあなたに代わって民に語る。 彼はあなたの口となり、あなたは彼に対して神の代わりとなる。 17 あなたはこの杖を手に取って、しるしを行うがよい。
モーセ、エジプトに戻る
18 モーセがしゅうとのエトロのもとに帰って、「エジプトにいる親族のもとへ帰らせてください。 まだ元気でいるかどうか見届けたいのです」と言うと、エトロは言った。 「無事で行きなさい。」
19 主は、ミディアンでモーセに言われた。
「さあ、エジプトに帰るがよい、あなたの命をねらっていた者は皆、死んでしまった。」 20 モーセは、妻子をろばに乗せ、手には神の杖を携えて、エジプトの国を指して帰って行った。 21 主はモーセに言われた。
「エジプトに帰ったら、わたしがあなたの手に授けたすべての奇跡を、心してファラオの前で行うがよい。 しかし、わたしが彼の心をかたくなにするので、王は民を去らせないであろう。 22 あなたはファラオに言うがよい。 主はこう言われた。 『イスラエルはわたしの子、わたしの長子である。 23 わたしの子を去らせてわたしに仕えさせようと命じたのに、お前はそれを断った。 それゆえ、わたしはお前の子、お前の長子を殺すであろう』と。」
24 途中、ある所に泊まったとき、主はモーセと出会い、彼を殺そうとされた。 25 ツィポラは、とっさに石刀を手にして息子の包皮を切り取り、それをモーセの両足に付け、「わたしにとって、あなたの血の花婿です」と叫んだので、 26 主は彼を放された。 彼女は、そのとき、割礼のゆえに「血の花婿」と言ったのである。 27 主はアロンに向かって、「さあ、荒れ野へ行って、モーセに会いなさい」と命じられたので、彼は出かけて行き、神の山でモーセと会い、口づけした。 28 モーセは自分を遣わされた主の言葉と、命じられたしるしをすべてアロンに告げた。 29 モーセはアロンを伴って出かけ、イスラエルの人々の長老を全員集めた。 30 アロンは主がモーセに語られた言葉をことごとく語り、民の面前でしるしを行ったので、 31 民は信じた。 また、主が親しくイスラエルの人々を顧み、彼らの苦しみを御覧になったということを聞き、ひれ伏して礼拝した。
ファラオの交渉 5
1 その後、モーセとアロンはファラオのもとに出かけて行き、言った。 「イスラエルの神、主がこう言われました。 『わたしの民を去らせて、荒れ野でわたしのために祭りを行わせなさい』と。 2 ファラオは、「主とは一体何者なのか。 どうして、その言うことをわたしが聞いて、イスラエルを去らせねばならないのか。 わたしは主など知らないし、イスラエルを去らせはしない」と答えた。 3 二人は言った。 「ヘブライ人の神がわたしたちに出現されました。 どうか、三日の道のりを荒れ野に行かせて、わたしたちの神、主に犠牲をささげさせてください。 そうしないと、神はきっと疫病か剣でわたしたちを滅ぼされるでしょう。」
4 エジプト王は彼らに命じた。 「モーセとアロン、お前たちはなぜ彼らを仕事から引き離そうとするのだ。 お前たちも自分の労働に戻るがよい。」 5 ファラオは更に、言った。 「この国にいる者の数が増えているのに、お前たちは彼らに労働をやめさせようとするのか。」 6 ファラオはその日、民を追い使う者と下役の者に命じた。 7 「これからは、今までのように、彼らにれんがを作るためのわらを与えるな。 わらは自分たちで集めさせよ。 8 しかも、今まで彼らが作ってきた同じれんがの数量を課し、減らしてはならない。 彼らは怠け者なのだ。 だから、自分たちの神に犠牲をささげに行かせてくれなどと叫ぶのだ。 9 この者たちは、仕事をきつくすれば、偽りの言葉に心を寄せることはなくなるだろう。」
10 民を追い使う者と下役の者は出て行き、民に向かって、「ファラオはこう言われる。 『今後、お前たちにわらは一切与えない。 11 お前たちはどこにでも行って、自分でわらを見つけて取って来い。 ただし、仕事の量は少しも減らさない』と言ったので、 12 民はエジプト中に散ってわらの切り株まで集めた。 13 追い使う者たちは、「わらがあったときと同じように、その日の割り当てをその日のうちに仕上げろ」と言って、せきたてた。 14 ファラオに任命された追い使う者たちは、監督として置いたイスラエルの人々の下役の者らに、「どうして、今までと同じ決められた量のれんがをその日のうちに仕上げることができないのか」と言って、彼らを打ったので、 15 イスラエルの人々の下役の者らはファラオのもとへ行って、訴えた。 「どうしてあなたは僕たちにこのようにされるのですか。 16 僕らにはわらが与えられません。 それでも、れんがを作れと言われて、僕らは打たれているのです。 間違っているのはあなたの民の方です。」 17 彼は言った。 「この怠け者めが。 お前たちは怠け者なのだ。 だから、主に犠牲をささげに行かせてくださいなどと言うのだ。 18 すぐに行って働け。 わらは与えない。 しかし、割り当てられた量のれんがは必ず仕上げよ。」 19 イスラエルの人人の下役の者たちは、「れんがの一日の割り当ては減らすな」と命じられて、自分たちが苦境に立たされたことを悟った。
20 彼らがファラオのもとから退出して来ると、待ち受けていたモーセとアロンに会った。 21 彼らは、二人に抗議した。 「どうか、主があなたたちに現れてお裁きになるように。 あなたたちのお陰で、我々はファラオとその家来たちに嫌われてしまった。 我々を殺す剣を彼らの手に渡したのと同じです。」 22 モーセは主のもとに帰って、訴えた。
「わが主よ。 あなたはなぜ、この民に災いをくだされるのですか。 わたしを遣わされたのは、一体なぜですか。 23 わたしがあなたの御名によって語るため、ファラオのもとに行ってから、彼はますますこの民を苦しめています。 それなのに、あなたは御自分の民を全く救い出そうとされません。」
6
1 主はモーセに言われた。
「今や、あなたは、わたしがファラオにすることを見るであろう。 わたしの強い手によって、ファラオはついに彼らを去らせる。 わたしの強い手によって、ついに彼らを国から追い出すようになる。」
モーセの使命
2 神はモーセに仰せになった。 「わたしは主である。 3 わたしは、アブラハム、イサク、ヤコブに全能の神として現れたが、主というわたしの名を知らせなかった。 4 わたしはまた、彼らと契約を立て、彼らが寄留していた寄留地であるカナンの土地を与えると約束した。 5 わたしはまた、エジプト人の奴隷となっているイスラエルの人々のうめき声を聞き、わたしの契約を思い起こした。 6 それゆえ、イスラエルの人々に言いなさい。 わたしは主である。 わたしはエジプトの重労働の下からあなたたちを導き出し、奴隷の身分から救い出す。 腕を伸ばし、大いなる審判によってあなたたちを贖う。 7 そして、わたしはあなたたちをわたしの民とし、わたしはあなたたちの神となる。 あなたたちはこうして、わたしがあなたたちの神、主であり、あなたたちをエジプトの重労働の下から導き出すことを知る。 8 わたしは、アブラハム、イサク、ヤコブに与えると手を上げて誓った土地にあなたたちを導き入れ、その地をあなたたちの所有として与える。 わたしは主である。」 9 モーセは、そのとおりイスラエルの人々に語ったが、彼らは厳しい重労働のため意欲を失って、モーセの言う事を聞こうとはしなかった。 10 主はモーセに仰せになった。 11 「エジプトの王ファラオのもとに行って、イスラエルの人々を国から去らせるように説得しなさい。」 12 モーセは主に訴えた。 「御覧のとおり、イスラエルの人々でさえわたしに聞こうとしないのに、どうしてファラオが唇に割礼のないわたしの言うことを聞くでしょうか。」 13 主はモーセとアロンに語って、イスラエルの人々とエジプトの王ファラオにかかわる命令を与えられた。 それは、イスラエルの人々をエジプトの国から導き出せというものであった。
モーセとアロンの系図
14 彼らの家系の長は次のとおりである。
イスラエルの長男ルベンの子らは、ハノク、パル、ヘツロン、カルミで、これらがルベンの氏族である。
15 シメオンの子らは、エムエル、ヤミン、オハド、ヤキン、ツォハルおよびカナンの女から生まれたシャウルで、これらがシメオンの氏族である。 16 レビの子らの名は家系に従うと次のとおりである。 ゲルション、ケハト、メラリ。 レビの生涯は百三十七年であった。 17 ゲルションの子らは、氏族に従うと、リブニとシムイである。 18 ケハトの子らは、アムラム、イツハル、ヘブロン、ウジエルである。 ケハトの生涯は百三十三年であった。 19 メラリの子らは、マフリとムシで、これらが家系に従ったレビの氏族である。 20 アムラムは叔母ヨケベドを妻に迎えた。 彼女の産んだ子がアランとモーセである。 アムラムの生涯は百三十七年であった。 21 イツハルの子らは、コラ、ネフェグ、ジクリである。 22 ウジエルの子らは、ミシャエル、エルツァファン、シトリである。 23 アロンは、アミナダブの娘でナフションの姉妹であるエリシャバを妻に迎えた。 彼女の産んだ子がナダブ、アビフ、エルアザル、イタマルである。 24 コラの子らは、アシル、エルカナ、アビアサフで、これらがコラ人の氏族である。 25 アロンの子エルアザルは、プティエルの娘の一人を妻に迎えた。 彼女の産んだ子がピネハスである。 以上が氏族ごとのレビ人家長である。
26 主が、「イスラエルの人々を部隊ごとにエジプトの国から導き出せ」と命じられたのは、このアロンとモーセである。 27 そして、イスラエルの人々をエジプトから導き出すよう、エジプトの王ファラオの説得に当たったのも、このモーセとアロンである。
アロンの役割
28 主がエジプトの国でモーセに語られたとき、 29 主はモーセに仰せになった。 「わたしは主である。 わたしがあなたに語ることをすべて、エジプトの王ファラオに語りなさい。 30 しかし、モーセは主に言った。 「御覧のとおり、わたしは唇に割礼のない者です。 どうしてファラオがわたしの言うことを聞き入れましょうか。」
7
1 主はモーセに言われた。
「見よ、わたしは、あなたをファラオに対しては神の代わりとし、あなたの兄アロンはあなたの預言者となる。 2 わたしが命ずるすべてのことをあなたが語れば、あなたの兄アロンが、イスラエルの人々を国から去らせるよう、ファラオに語るであろう。 3 しかし、わたしはファラオの心をかたくなにするので、わたしがエジプトの国でしるしや奇跡を繰り返したとしても、 4 ファラオはあなたたちの言うことを聞かない。 わたしはエジプトに手を下し、大いなる審判によって、わたしの部隊、わたしの民イスラエルの人々をエジプトの国から導き出す。 5 わたしがエジプトに対して手を伸ばし、イスラエルの人々をその中から導き出すとき、エジプト人は、わたしが主であることを知るようになる。
6 モーセとアロンは、主が命じられたとおりに行った。 7 ファラオに語ったとき、モーセは八十歳、アロンは八十三歳であった。
アロンの杖
8 主はモーセとアロンに言われた。 9 もし、ファラオがあなたたちに向かって、『奇跡を行ってみよ』と求めるならば、あなたはアロンに、『杖を取って、ファラオの前に投げよ』と言うと、杖は蛇になる。」 10 モーセとアロンはファラオのもとに行き、主の命じられたとおりに行った。 アロンが自分の杖をファラオとその家臣たちの前に投げると、杖は蛇になった。 11 そこでファラオも賢者や呪術師を召し出した。 エジプトの魔術師もまた、秘術を用いて同じことを行った。 12 それぞれ自分の杖を投げると、蛇になったが、アロンの杖は彼らの杖をのみ込んだ。 13 しかし、ファラオの心はかたくなになり、彼らの言うことを聞かなかった。 主が仰せになったとおりである。
血の災い
14 主はモーセに言われた。 「ファラオの心は頑迷で、民を去らせない。 15 明朝、ファラオのところへ行きなさい。 彼は水辺に下りて来る。 あなたは蛇になったあの杖を手に持ち、ナイル川の岸辺に立って、彼を待ち受け、 16 彼に言いなさい。 ヘブライ人の神、主がわたしをあなたのもとに遣わして、『わたしの民を去らせ、荒れ野でわたしに仕えさせよ』と命じられたのに、あなたは今に至るまで聞き入れない。 17 主はこう言われた。 『このことによって、あなたは、わたしが主であることを知る』と。 見よ、わたしの手にある杖でナイル川の水を打つと、水は血に変わる。 18 川の魚は死に、川は悪臭を放つ。 エジプト人はナイル川の水を飲むのを嫌がるようになる。」
19 主は更にモーセに言われた。 「アロンに言いなさい。 『杖を取り、エジプトの水という水の上、河川、水路、池、水たまりの上に手を伸ばし、血に変えなさい』 と。 エジプトの国中、木や石までも血に浸るであろう。」
20 モーセとアロンは、主の命じられたとおりにした。 彼は杖を振り上げて、ファラオとその家臣の前でナイル川の水を打った。 川の水はことごとく血に変わり、 21 川の魚は死に、川は悪臭を放ち、エジプト人はナイル川の水を飲めなくなった。 こうして、エジプト国中が血に浸った。 22 ところが、エジプトの魔術師も秘術を用いて同じことを行ったのでファラオの心はかたくなになり、二人の言うことを聞かなかった。 主が仰せになったとおりである。 23 ファラオは王宮に引き返し、このことをも心に留めなかった。 24 エジプト人は皆、飲み水を求めて、ナイル川の周りを掘った。 ナイル川の水が飲めなくなったからである。
蛙の災い
25 主がナイル川を打たれたから七日たつと、 26 主はモーセに言われた。 「ファラオのもとに行って、彼に言いなさい。 主はこう言われた。 『わたしの民を去らせ、わたしに仕えさせよ。 27 もしあなたが去らせることを拒むならば、わたしはあなたの領土全体に蛙の災いを引き起こす。 28 ナイル川に蛙が群がり、あなたの王宮を襲い、寝室に侵入し、寝台に上り、更に家臣や民の家にまで侵入し、かまど、こね鉢ににも入り込む。 29 蛙はあなたも民もすべての家臣をも襲うであろう』と。」
8
1 主は更にモーセに言われた。 「アロンにこう言いなさい。 杖を取って、河川、水路、池の上に手を伸ばし、蛙をエジプトの国に這い上がらせよ。」 2 アロンがエジプトの水の上に手を差し伸べると、蛙が這い上がってきてエジプトの国を覆った。 3 ところが、魔術師も秘術を用いて同じことをし、蛙をエジプトの国に這い上がらせた。 4 ファラオはモーセとアロンを呼んで、「主に祈願して、蛙がわたしとわたしの民のもとから退くようにしてもらいたい。 そうすれば、民を民を去らせ、主に犠牲をささげよう」と言うと、 5 モーセはファラオに答えた。
「あなたのお望みの時を言ってください。 いつでもあなたとあなたの家臣と民のために祈願して、蛙をあなたとあなたの家から絶ち、ナイル川以外には残らぬようにしましょう。」 6 ファラオが、「明日」と言うと、モーセは答えた。 「あなたの言われるとおりにしましょう。 あなたは、我々の神、主のような神がほかにいないことを知るようになります。 7 蛙はあなたとあなたの王宮、家臣や民の間から退いて、ナイル川以外には残らなくなるでしょう。」 8 モーセとアロンがファラオのもとから出て来ると、モーセはファラオを悩ました蛙のことで主に訴えた。 9 主はモーセの願いどおりにされ、蛙は家からも庭からも畑からも死に絶えた。 10 人々はその死骸を幾山にも積み上げたので、国中に悪臭が満ちた。 11 ファラオは一息つく暇ができたのを見ると、心を頑迷にして、また二人の言うことを聞き入れなくなった。 主が仰せになったとおりである。
ぶよの災い
12 主はモーセに言われた。 「アロンに言いなさい。 『杖を差し伸べて土の塵を打ち、ぶよにさせてエジプト全土に及ぼせ』と。」
13 彼らは言われたとおりにし、アロンが杖を持った手を差し伸べ土の塵を打つと、土の塵はすべてぶよとなり、エジプト全土に広がって人と家畜を襲った。
14 魔術師も秘術を用いて同じようにぶよを出そうとしたが、できなかった。 ぶよが人と家畜を襲ったので、 15 魔術師はファラオに、「これは神の指の働きでございます」と言ったが、ファラオの心はかたくなになり、彼らの言うことを聞かなかった。 主が仰せになったとおりである。
あぶの災い
16 主はモーセに言われた。 「明朝早く起きて、水辺に下りて来るファラオを出迎えて、彼に言いなさい。 主はこう言われた。 『わたしの民を去らせ、わたしに仕えさせよ。 17 もしあなたが私の民を去らせないならば、見よ、わたしはあなたとあなたの家臣とあなたの民とあなたの家のあぶを送る。 エジプトの人家にも人が働いている畑地にもあぶが満ちるであろう。 18 しかし、その日、わたしはわたしの民の住むゴシェン地方を区別し、そこにあぶを入り込ませない。 あなたはこうして、主なるわたしがこの地のただ中にいることを知るようになる。 19 わたしは、わたしの民をあなたの民から区別して贖う。 明日、このしるしが起こる』と。」 20 主がそのとおり行われたので、あぶの大群がファラオの王宮や家臣の家に入り、エジプトの全土に及んだ。 国はあぶのゆえに荒れ果てた。 21 ファラオがモーセとアロンを呼び寄せて、「行って、あなたたちの神にこの国の中で犠牲をささげるがよい」と言うと、 22 モーセは答えた。 「そうすることはできません。 我々の神、主にささげる犠牲は、エジプト人のいとうものです。 もし、彼らの前でエジプト人のいとうものをささげれば、我々は石で打ち殺すのではありませんか。 23 我々の神、主に犠牲をささげるには、神が命じられたように、三日の道のりを荒れ野に入らねばなりません。」 24 ファラオが、「よし、わたしはあなたたちを去らせる。 荒れ野であなたたちの神、主に犠牲をささげるがよい。 ただし、あまり遠くへ行ってはならない。 わたしのためにも祈願してくれ」と言うと、 25 モーセは答えた。 「では、あなたのもとから退出しましたら、早速主に祈願しましょう。 明日になれば、あぶはファラオとその家臣と民の間から飛び去るでしょう。 ただ、二度と、主に犠牲をささげるために民を去らせないなどと言って、我々を欺かないでください。」
26 モーセはファラオのもとから退出すると、主に祈願した。 27 主はモーセの願いどおりにされ、あぶはファラオと家臣と民の間からすべて飛び去り、一匹も残らなかった。 28 しかし、ファラオは今度もまた心を頑迷にして民を去らせなかった。
疫病の災い 9
1 主はモーセに言われた。 「ファラオのもとに行って彼に告げなさい。 ヘブライ人の神、主はこう言われた。 『わたしの民を去らせ、わたしに仕えさせよ』と。 2 もしあなたが去らせるのを拒み、なおも彼らをとどめておくならば、 3 見よ、主の手が甚だ恐ろしい疫病を野にいるあなたの家畜、馬、ろば、らくだ、牛、羊に臨ませる。 4 しかし主は、イスラエルの家畜とエジプトの家畜とを区別される。 イスラエルの人々の家畜は一頭たりとも死ぬことはない。 5 主はまた時を定め、明日、この地でこの事を行われる。 6 翌日、主はこの事を行われたので、エジプト人の家畜はすべて死んだが、イスラエルの人々の家畜は一頭も死ななかった。 7 ファラオが人を遣わして見させたところ、イスラエルの家畜は一頭といえども死んではいなかった。 それでも、ファラオの心は頑迷になり民を去らせなかった。
はれ物の災い
8 主はモーセとアロンに言われた。 「かまどのすすを両手いっぱい取って、モーセはそれをファラオの前で天に向かってまき散らすがよい。 9 それはエジプト全土を覆う細かい塵となって、エジプト全土の人と家畜に降りかかり、膿の出るはれ物となるであろう。」 10 二人はかまどのすすを取ってファラオの前に立ち、モーセがそれを天に向かってまき散らした。 すると、膿の出るはれ物が人と家畜に生じた。 11 魔術師もこのはれ物のためにモーセの前に立つことができなかった。 はれ物は魔術師のみならず、エジプト人すべてに生じた。 12 しかし、主がファラオの心をかたくなにされたので、彼は二人の言うことを聞かなかった。
主がモーセに仰せになったとおりである。
雹の災い
13 主はモーセに言われた。 「明朝早く起き、ファラオの前に立って、彼に言いなさい。 ヘブライ人の神、主はこう言われた。 『わたしの民を去らせ、わたしに仕えさせよ。 14 今度こそ、わたしはあなた自身とあなたの家臣とあなたの民に、あらゆる災害をくだす。 わたしのような神は、地上のどこにもいないことを、あなたに分からせるためである。 15 実際、今までにわたしは手を伸ばし、あなたとあなたの民を疫病で打ち、地上から絶やすこともできたのだ。 16 しかしわたしは、あなたにわたしの力を示してわたしの名を全地に語り告げさせるため、あなたを生かしておいた。 17 あなたはいまだに、わたしの民に対して高ぶり、彼らを去らせようとしない。 18 見よ、明日の今ごろ、エジプト始まって以来、今日までかってなかったほどの甚だ激しい雹を降らせる。 19 それゆえ、今、人を遣わして、あなたの家畜で野にいるものは皆、非難させるがよい。 野に出ていて家に連れ戻されない家畜は、人と共にすべて、雹に打たれて死ぬであろう』と。」 20 ファラオの家臣の内、主の言葉を畏れた者は、自分の僕と家畜を家に避難させたが、 21 主の言葉を心に留めなかった者は、僕と家畜を野に残しておいた。
22 主はモーセに言われた。 「あなたの手を天に向かって差し伸べ、エジプト全土に、人にも家畜にも、野のあらゆる草の上にも雹を降らせるがよい。」
23 モーセが天に向かって杖を差し伸べると、主は雷と雹を下され、稲妻が大地に向かって走った。 主はエジプトの地に雹を降らせられた。 24 雹が降り、その間を絶え間なく稲妻が走った。 それは甚だ激しく、このような雹が全土に降ったことは、エジプトの国始って以来かってなかったほどであった。 25 雹は、エジプト全土で野にいるすべてのもの、人も家畜も残らず打った。 雹はまた、野のあらゆる草を打ち、野のすべての木を打ち砕いた。 26 ただし、イスラエルの人々の住むゴシェンの地域には雹は降らなかった。 27 ファラオは人を遣わし、モーセとアロンを呼び寄せて言った。
「今度ばかりはわたしが間違っていた。 正しいのは主であり、悪いのはわたしとわたしの民である。 28 主に祈願してくれ。 恐ろしい雷と雹はもうたくさんだ。 あなたたちを去らせよう。 これ以上ここにとどまることはない。」 29 モーセは言った。 「町を出たら、早速両手を広げて主に祈りましょう。 雷はやみ、雹はもう降らないでしょう。 あなたはこうして、大地が主のものであることを知るでしょう。 30 しかし、あなたもあなたの家臣も、まだ主なる神を畏れるに至っていないことを、わたしは知っています。」
31 亜麻と大麦は壊滅した。 大麦はちょうど穂の出る時期で、亜麻はつぼみの開く時期であったからである。 32 小麦と裸麦は壊滅を免れた。 穂の出る時期が遅いからである。
33 モーセは、ファラオのもとから退出し町を出ると、両手を広げて主に祈った。 すると、雷も雹もやみ、大地に注ぐ雨もやんだ。 34 ファラオは、雨も雹も雷もやんだのを見て、またもや過ちを重ね、彼も彼の家臣もこころを頑迷にした。 35 ファラオの心はかたくなになり、イスラエルの人々を去らせなかった。 主がモーセを通して仰せになったとおりである。
いなごの災い 10
1 主はモーセに言われた。 「ファラオのもとに行きなさい。 彼とその家臣の心を頑迷にしたのは、わたし自身である。 それは、彼らのただ中でわたしがこれらのしるしを行うためであり、 2 わたしがエジプト人をどのようにあしらったか、どのようなしるしを行ったかをあなたが子孫に語り伝え、わたしが主であることをあなたたちが知るためである。」 3 モーセとアロンはファラオのところに行き、彼に言った。
「ヘブライ人の神、主はこう言われた。 『いつまで、あなたはわたしの前に身を低くするのを拒むのか。 わたしの民を去らせ、わたしに仕えさせなさい。 4 もし、あなたがわたしの民を去らせることを拒み続けるならば、明日、わたしはあなたの領土にいなごを送り込む。 5 いなごは地表を覆い尽くし、地面を見ることもできなくなる。 そして、雹の害を免れた残りのものを食い荒らし、野に生えているすべての木を食い尽くす。 6 また、あなたの王宮、家臣のすべての家、エジプト中の家にいなごが満ちる。 それは、あなたの先祖も、先祖の先祖も、この土地に住み着いたときから今日まで見たことがないものである』と。」 彼が身を翻してファラオのもとから退出すると、 7 ファラオの家臣が王に進言した。 「いつまで、この男はわたしたちを陥れる罠となるのでしょうか。 即刻あの者たちを去らせ、彼らの神、主に仕えさせてはいかがでしょう。 エジプトが滅びかかっているのが、まだお分かりになりませんか。」 8 モーセとアロンがファラオのもとに呼び戻されると、ファラオは二人に言った。 「行って、あなたたちの神、主に仕えるがよい。 誰と誰が行くのか。」 9 「若い者も年寄りも一緒に参ります。 息子も娘も羊も牛も参ります。 主の祭りは我々全員のものです」とモーセが答えると、 10 ファラオは二人に言った。 「よろしい。 わたしがお前たちを家族ともども去らせるときは、主がお前たちと共におられるように。 お前たちの前には災いが待っているのを知るがよい。 11 いや、行くならば、男たちだけで行って、主に仕えるがよい。 それがお前たちの求めていたことだ。」 ファラオは自分の前から彼らを追い出した。
12 主はモーセに言われた。 「手をエジプトの地に差し伸べ、いなごを呼び寄せなさい。 いなごはエジプトの国を襲い、地のあらゆる草、雹の害を免れたすべてのものを食い尽くすであろう。」 13 モーセがエジプトの地に杖を差し伸べると、主はまる一昼夜、東風を吹かせられた。 朝になると、東風がいなごの大群を運んで来た。 14 いなごは、エジプト全土を襲い、エジプトの領土全体にとどまった。 このようにおびただしいいなごの大群は前にも後にもなかった。 15 いなごが地の面をすべて覆ったので、地は暗くなった。 いなごは地のあらゆる草、雹の害を免れた木の実をすべて食い尽くしたので、木であれ、野の草であれ、エジプト全土のどこにも緑のものは何ひとつ残らなかった。 16 ファラオは急いでモーセとアロンを呼んで頼んだ。 「あなたたちの神、主に対し、またあなたたちに対しても、わたしは過ちを犯した。 17 どうか、もう一度だけ過ちを赦して、あなたたちの神、主に祈願してもらいたい。 こんな死に方だけはしないで済むように。」 18 モーセがファラオのもとを退出して、主に祈願すると、 19 主は風向きを変え、甚だ強い西風とし、いなごを吹き飛ばして、葦の海に追いやられたので、エジプトの領土全体にいなごは一匹も残らなかった。 20 しかし、主がファラオの心をかたくなにされたので、ファラオはイスラエルの人々を去らせなかった。
暗闇の災い
21 主はモーセに言われた。 「手を天に向かって差し伸べ、エジプトの地に闇を臨ませ、人がそれを手に感じるほどにしなさい。 22 モーセが手を天に向かって差し伸べると、三日間エジプト全体に暗闇が臨んだ。 23 人々は、三日間、互いに見ることも、自分のいる場所から立ち上がることもできなかったが、イスラエルの人々が住んでいる所にはどこでも光があった。 24 ファラオがモーセを呼び寄せて、「行って、主に主に仕えるがよい。 ただし、羊と牛は残しておけ。 妻子は連れて行ってもよい」と言うと、 25 モーセは答えた。 「いいえ、あなた御自身からも、いけにえと焼き尽くす捧げ物をいただいて、我々の神、主にささげたいと思っています。 26 我々の家畜も連れて行き、ひづめ一つ残さないでしょう。 我々の神、主に仕えるためにその中から選ばねばなりません。 そこに着くまでは、我々自身どれをもって主に仕えるべきか、分からないのですから。」 27 しかし、主がまたファラオの心をかたくなにされたので、ファラオは彼らを去らせようとはしなかった。 28 ファラオが、「引き下がれ。 二度と私の前に姿を見せないように気をつけよ。 今度会ったら、生かしてはおかない」と言うと、 29 モーセは答えた。 「よくぞ仰せになりました。 二度とお会いしようとは思いません。」
最期の災い 11
1 主はモーセに言われた。 「わたしは、なおもう一つの災いをファラオとエジプトにくだす。 その後、王はあなたたちをここから去らせる。 いや、そのときには、あなたたちを一人残らずここから追い出す。 2 あなたは、民に告げ、男も女もそれぞれ隣人から金銀の装飾品を求めさせるがよい。 3 主はこの民にエジプト人の好意を得させるようにされた。 モーセその人もエジプトの国で、ファラオの家臣や民に大いに尊敬を受けていた。
4 モーセは言った。 「主はこう言われた。 『真夜中ごろ、わたしはエジプトの中を進む。 5 そのとき、エジプトの国中の初子は皆、死ぬ。 王座に座しているファラオの初子から、石臼をひく女奴隷の初子まで。 また家畜の初子もすべて死ぬ。 6 大いなる叫びがエジプト全土に起こる。 そのような叫びはかってなかったし、再び起こることもない。』 7 しかし、イスラエルの人人に対しては、犬ですら、人に向かっても家畜に向かっても、うなり声を立てません。 あなたたちはこれによって、主がエジプトとイスラエルを区別しておられることを知るでしょう。 8 あなたの家臣はすべてわたしのもとに下って来て、『あなたもあなたに従っている民も皆、出て行ってください』とひれ伏し頼むのでしょう。 その後で、わたしは出て行きます。」 そして、モーセは憤然としてファラオのもとから退出した。
9 主はモーセに言われた。 「ファラオは、あなたたちの言うことを聞かない。 そのため、わたしはエジプトの国に大きな奇跡を行うようになる。」 10 モーセとアロンはファラオの前でこれらの奇跡をすべて行ったが、主がファラオの心をかたくなにされたため、ファラオはイスラエルの人々を国から去らせなかった。
主の過越 12
1 エジプトの国で、主はモーセとアロンに言われた。 2 「この月をあなたたちの正月とし、年の初めの月としなさい。 3 イスラエルの共同体全体に次のように告げなさい。 『今月の十日、人はそれぞれ父の家ごとに、すなわち家族ごと子羊を一匹用意しなければならない。 4 もし、家族が少人数で子羊一匹を食べきれない場合には、隣の家族と共に、人数に見合うものを用意し、めいめいの食べる量に見合う子羊を選ばねばならない。 5 その子羊は、傷のない一歳の雄でなければならない。 用意するのは羊でも山羊でもよい。 6 それは、この月の十四日まで取り分けておき、イスラエルの共同体の会衆が皆で夕暮れにそれを屠り、 7 その血を取って、子羊を食べる家に入り口の二本の柱と鴨居に塗る。 8 そしてその夜、肉を火で焼いて食べる。 また、酵母を入れないパンを苦菜を添えて食べる。 9 肉は生で食べたり、煮て食べてはならない。 必ず、頭も四肢も内臓も切り離さずに火で焼かねばならない。 10 それを翌朝まで残しておいてはならない。 翌朝まで残った場合には、焼却する。 11 それを食べるときは、腰帯を締め、靴を履き、杖を手にし、急いで食べる。 これが主の過越である。 12 その夜、わたしはエジプトの国を巡り、人であれ、家畜であれ、エジプトの国のすべての初子を撃つ。 また、エジプトのすべての神々に裁きを行う。 わたしは主である。 13 あなたたちのいる家に塗った血は、あなたたちのしるしとなる。 血を見たならば、わたしはあなたたちを過ぎ越す。
わたしがエジプトの国を撃つとき、滅ぼす者の災いはあなたたちに及ばない。 14 この日は、あなたたちにとって記念すべき日となる。 あなたたちは、この日を主の祭りとして祝い、代々にわたって守るべき不変の定めとして祝わねばならない。 15 七日の間、あなたたちは酵母を入れないパンを食べる。 まず、祭りの最初の日に家から酵母を取り除く。 この日から第七日までの間に酵母入りのパンを食べた者は、すべてイスラエルから断たれる。 16 最初の日に聖なる集会を開き、第七日にも聖なる集会を開かねばならない。 この両日にはいかなる仕事もしてはならない。 ただし、それぞれの食事の用意を除く。 これだけは行ってもよい。 17 あなたたちは除酵祭を守らねばならない。 なぜなら、まさにこの日に、わたしはあなたたちの部隊をエジプトの国から導き出したからである。 それゆえ、この日を代々にわたって守るべき不変の定めとして守らねばならない。 18 正月の十四日の夕方からその月の二十一日の夕方まで、酵母を入れないパンを食べる。 19 七日の間、家の中に酵母があってはならない。 酵母の入ったものを食べる者は、寄留者であれその土地に生まれた者であれ、すべて、イスラエルの共同体から断たれる。 20 酵母の入ったものは一切食べてはならない。 あなたたちの住む所ではどこでも、酵母を入れないパンを食べねばならない。』」
21 モーセは、イスラエルの長老をすべて呼び寄せ、彼らに命じた。
「さあ、家族ごとに羊を取り、過越の犠牲を屠りなさい。 22 そして、一束のヒソプを取り、鉢の中の血に浸し、鴨居と入り口の二本の柱に鉢の中の血を塗りなさい。 翌朝までだれも家の入り口から出てはならない。 23 主がエジプト人を撃つために巡るとき、鴨居と二本の柱に塗られた血を御覧になって、その入り口を過ぎ越される。 滅ぼす者が家に入って、あなたたちを撃つことがないためである。
24 あなたたちはこのことを、あなたと子孫のための定めとして、永遠に守らねばならない。 25 また、主が約束されたとおりあなたたちに与えられる土地に入ったとき、この儀式を守らねばならない。 26 また、あなたたちの子供が、『この儀式にはどういう意味があるのですか』と尋ねるときは、 27 こう答えなさい。 『これが主の過越の犠牲である。 主がエジプト人を撃たれたとき、エジプトにいたイスラエルの人々の家を過ぎ越し、我々の家を救われたのである』と。」
民はひれ伏して礼拝した。 28 それから、イスラエルの人々は帰って行き、主がモーセとアロンに命じられたとおりに行った。
初子の死
29 真夜中になって、主はエジプトの国ですべての初子を撃たれた。 王座に座しているファラオの初子から牢屋につながれている捕虜の初子まで、また家畜の初子もことごとく撃たれたので、 30 ファラオと家臣、またすべてのエジプト人は夜中に起き上がった。 死人が出なかった家は一軒もなかったので、大いなる叫びがエジプト中に起こった。 31 ファラオは、モーセとアロンを夜のうちに呼び出して言った。
「さあ、わたしの民の中から出て行くがよい、あなたたちもイスラエルの人々も。 あなたたちが願っていたように、行って、主に仕えるがよい。 32 羊の群れも牛の群れも、あなたたちが願っていたように、連れて行くがよい。 そして、わたしをも祝福してもらいたい。」 33 エジプト人は、民をせきたてて、急いで国から去らせようとした。 そうしないと自分たちは皆、死んでしまうと思ったのである。 34 民は、まだ酵母の入っていないパンの練り粉をこね鉢ごと外套に包み、肩に担いだ。 35 イスラエルの人々は、モーセの言葉どおりに行い、エジプト人から金銀の装飾品や衣類を求めた。 36 主は、この民にエジプト人の好意を得させるようにされたので、エジプト人は彼らの求めに応じた。 彼らはこうして、エジプト人の物を分捕り物とした。
エジプトの国を去る
37 イスラエルの人々はラメセスからスコトに向けて出発した。 一行は、妻子を別にして、壮年男子だけでおよそ六十万人であった。 38 そのほか、種々雑多な人人もこれに加わった。 羊、牛など、家畜もおびただしい数であった。 39 彼らはエジプトから持ち出した練り粉で、酵母を入れないパン菓子を焼いた。 練り粉には酵母が入っていなかった。 彼らがエジプトから追放されたとき、ぐずぐずしていることはできなかったし、道中の食糧を用意するいとまもなかったからである。
40 イスラエルの人々が、エジプトに住んでいた期間は四百三十年であった。 41 四百三十年を経たちょうどその日に、主の部隊は全軍、エジプトの国を出発した。 42 その夜、主は、彼らをエジプトの国から導き出すために寝ずの番をされた。 それゆえ、イスラエルの人々は代々にわたって、この夜、主のために寝ずの番をするのである。
過越祭の規定
43 主はモーセとアロンに言われた。 「過越祭の掟は次のとおりである。 外国人はだれも過越の犠牲を食べることはできない。 44 ただし、金で買った男奴隷の場合、割礼を施すならば、彼は食べることができる。 45 滞在している者や雇い人は食べることができない。 46 一匹の羊は一軒の家で食べ、肉の一部でも家から持ち出してはならない。 また、その骨を折ってはならない。 47 イスラエルの共同体全体がこれを祝わなければならない。 48 もし、寄留者があなたのところに寄留し、主の過越祭を祝おうとするときは、男子は皆、割礼を受けた後にそれを祝うことが許される。 彼はそうすれば、その土地に生まれた者と同様になる。 しかし、無割礼の者は、だれもこれを食べることができない。 49 この規定は、その土地に生まれた者にも、あなたたちの間に寄留している寄留者にも、同じように適用される。 50 イスラエルの人々はすべて、主がモーセとアロンに命じたとおりに行った。
51 まさのこの日に、主はイスラエルの人々を部隊ごとにエジプトの国から導き出された。
初子の奉献 13
1 主はモーセに仰せになった。 2 「すべての初子を聖別してわたしにささげよ。 イスラエルの人々の間で初めに胎を開くものはすべて、人であれ家畜であれ、わたしのものである。」
除酵祭
3モーセは民に言った。 「あなたたちは、奴隷の家、エジプトから出たこの日を記念しなさい。 主が力強い御手をもって、あなたたちをそこから導き出されたからである。 酵母入りのパンを食べてはならない。 4 あなたたちはアビブの月のこの日に出発する。
5 主が、あなたに与えると先祖に誓われた乳と蜜の流れる土地、カナン人、ヘト人、アモリ人、ヒビ人、エブス人の土地にあなたを導き入れられるとき、あなたはこの月にこの儀式を行わねばならない。 6 七日の間、酵母を入れないパンを食べねばならない。 七日目には主のための祭りをする。 7 酵母を入れないパンを七日の間食べる。 あなたのもとに酵母入りのパンがあってはならないし、あなたの領土のどこにも酵母があってはならない。
8 あなたはこの日、自分の子供に告げなければならない。 『これは、わたしがエジプトから出たとき、主がわたしのために行われたことのゆえである』と。 9 あなたは、この言葉を自分の腕と額に付いて記憶のしるしとし、主の教えを口ずさまねばならない。 主が力強い御手をもって、あなたをエジプトから導き出されたからである。 10 あなたはこの掟を毎年定められたときに守らねばならない。
初子について
11 主があなたと先祖に誓われたとおり、カナン人の土地にあなたを導き入れ、 それをあなたに与えられるとき、 12 初めに胎を開くものはすべて、主にささげなければならない。 あなたの家畜の初子にうち、雄はすべて主のものである。 13 ただし、ろばの初子の場合はすべて、子羊をもって贖わねばならない。 もし、贖わない場合は、その首を折らねばならい。 あなたの初子のうち、男の子の場合はすべて、贖わねばならない。 14 将来、あなたの子供が、『これにはどういう意味があるのですか』と尋ねるときは、こう答えなさい。 『主は、力強い御手をもって我々を奴隷の家、エジプトから導き出された。 15 ファラオがかたくなで、我々を去らせなかったため、主はエジプの国中の初子を、人の初子から家畜の初子まで、ことごとく撃たれた。 それゆえわたしは、初めに胎を開く雄をすべて主に犠牲としてささげ、また、自分の息子のうち初子は、必ず贖うのである。』 16 あなたはこの言葉を腕に付けてしるしとし、額に付けて覚えとしなさい。 主が力強い御手をもって、我々をエジプトから導き出されたからである。』
火の柱、雲の柱
17 さて、ファラオが民をさらせたとき、神は彼らをペリシテ街道には導かれなかった。 それは近道であったが、民が戦わねばならぬことを知って後悔し、エジプトに帰ろうとするかもしれない、と思われたからである。 18 神は民を、葦の海に通じる荒れ野の道に迂回させられた。 イスラエルの人々は、隊伍を整えてエジプトの国から上った。 19 モーセはヨセフの骨を携えていた。 ヨセフが「神は必ずあなたたちを顧みられる。 そのとき、わたしの骨をここから一緒に携えて上るように」と言って、イスラエルの子らに固く誓わせたからである。 20 一行はスコトから旅立って、荒れ野の端のエタムに宿営した。 21 主は彼らに先立って進み、昼は雲の柱をもって導き、夜は火の柱をもって彼らを照らされたので、彼らは昼も夜も行進することができた。 22 昼は雲の柱が、夜は火の柱が、民の先頭を離れることはなかった。
葦の海の奇跡 14
1 主はモーセに仰せになった。 2 「イスラエルの人々に、引き返してミグドルと海との間のピ・ハヒトロの手前で宿営するように命じなさい。 バアル・ツェホンの前に、それに面して、海辺に宿営するのだ。 3 するとファラオは、イスラエルの人々が慌ててあの地方で道に迷い、荒れ野が彼らの行く手をふさいだと思うであろう。 4 わたしはファラオの心をかたくなにし、彼らの後を追わせる。 しかし、わたしはファラオとその全軍を破って栄光を現すので、エジプト人は、わたしが主であることを知るようになる。」 彼らは言われたとおりにした。
5 民が逃亡したとの報告を受けると、エジプト王ファラオとその家臣は、民に対する考えを一変して言った。 「ああ、我々は何んということをしたのだろう。 イスラエル人を労役から解放して去らせてしまったとは。」 6 ファラオは戦車に馬をつなぎ、自ら軍勢を率い、 7 えり抜きの戦車六百をはじめ、エジプトの戦車すべてを動員し、それぞれに仕官を乗り込ませた。 8 主がエジプト王ファラオの心をかたくなにされたので、王はイスラエルの人々の後を追った。 イスラエルの人々は、意気揚々と出て行ったが、 9 エジプト軍は彼らの後を追い、ファラオの馬と戦車、騎兵と歩兵は、ピ・ハヒロトの傍らで、バアル・ツェホンの前の海辺に宿営している彼らに追いついた。 10 ファラオは既に間近に迫り、イスラエルの人々が目を上げて見ると、エジプト軍は既に背後に襲いかかろうとしていた。 イスラエルの人々は非常に恐れて主に向かって叫び、 11 また、モーセに言った。 「我々を連れ出したのは、エジプトに墓がないからですか。 荒れ野で死なせるためですか。 一体、何をするためにエジプトから導き出したのですか。 12 我々はエジプトで、『ほうっておいてください。 自分たちはエジプト人に仕えます。 荒れ野で死ぬよりエジプト人に仕える方がましです。』と言ったではありませんか。」 13 モーセは民に答えた。 「恐れてはならない。 落ち着いて、今日、あなたたちのために行われる主の救いを見なさい。 あなたたちは今日、エジプト人を見ているが、もう二度と、永久に彼らを見ることはない。 14 主があなたたちのために戦われる。 あなたたちは静かにしていなさい。」
15 主はモーセに言われた。 「なぜ、わたしに向かって叫ぶのか。 イスラエルの人々に命じて出発させなさい。 16 杖を高く上げ、手を海に向かって差し伸べて、海を二つに分けなさい。 そうすれば、イスラエルの民は海の中の乾いた所を通ることができる。 17 しかし、わたしはエジプト人の心をかたくなにするから、彼らはお前たちの後を追ってくる。 そのとき、わたしはファラオとその全軍、戦車と騎兵を破って栄光を現す。 18 わたしがファラオとその戦車、騎兵を破って栄光を現すとき、エジプト人は、わたしが主であることを知るようになる。
19 イスラエルの部隊に先立って進んでいた神の御使いは、移動して彼らの後を行き、彼らの前にあった雲の柱も移動して後ろに立ち、 20 エジプトの陣とイスラエルの陣との間に入った。 真っ黒な雲が立ちこめ、光が闇夜を貫いた。 両軍は、一晩中、互いに近づくことはなかった。 21 モーセが手を海に向かって差し伸べると、主は夜もすがら激しい東風をもって海を押し返されたので、海は乾いた地に変わり、水は分かれた。 22 イスラエルの人々は海の中の乾いた所を進んで行き、水は彼らの右と左に壁のようになった。 23 エジプト軍は彼らを追い、ファラオの馬、戦車、騎兵がことごとく彼らに従って海の中に入って来た。 24 朝の見張りのころ、主は火と雲の柱からエジプト軍を見下ろし、エジプト軍をかき乱された。 25 戦車の車輪をはずし、進みにくくされた。 エジプト人は言った。 「イスラエルの前から退却しよう。 主が彼らのためにエジプトと戦っておられる。
26 主はモーセに言われた。 「海に向かって手を差し伸べなさい。 水がエジプト軍の上に、戦車、騎兵の上に流れ返るであろう。 27 モーセが手を海に向かって差し伸べると、夜が明ける前に海は元の場所へ流れ返った。 エジプト軍は水の流れに逆らって逃げたが、主は彼らを海の中に投げ込まれた。 28 水は元に戻り、戦車と騎兵、彼らの後を追って海に入ったファラオの全軍を覆い、一人も残らなかった。 29 イスラエルの人人は海の中の乾いた所を進んだが、そのとき、水は彼らの右と左に壁となった。 30 主はこうして、その日、イスラエルをエジプト人の手から救われた。 イスラエルはエジプト人が海辺で死んでいるのを見た。 31 イスラエルは、主がエジプト人に行われた大いなる御業を見た。 民は主を畏れ、主とモーセを信じた。
海の歌 15
1 モーセとイスラエルの民は主を賛美してこの歌をうたった。
主に向かってわたしは歌おう。
主は大いなる威光を現し
馬と乗り手を海に投げ込まれた。
2 主はわたしの力、わたしの歌
主はわたしの救いとなってくださった。
この方こそわたしの神。 わたしは彼をたたえる。
わたしの父の神、わたしは彼をあがめる。
3 主こそいくさびと、その名は主。
4 主はファラオの戦車と軍勢を海に投げ込み
えり抜きの戦士は葦の海に沈んだ。
5 深淵が彼らを覆い
彼らは深い底に石のように沈んだ。
6 主よ、あなたの右の手は力によって輝く。
主よ、あなたの右の手は敵を打ち砕く。
7 あなたは大いなる威光をもって敵を滅ぼし
怒りを放って、彼らをわらのように焼き尽くす。
8 憤りの風によって、水はせき止められ
流れはあたかも壁のように立ち上がり
大水は海の中で固まった。
9 敵は言った。 「彼らの後を追い
捕らえられて分捕り品を分けよう。
剣を抜いて、ほしいままに奪い取ろう。」
10 あなたが息を吹きかけると
海は彼らを覆い
彼らは恐るべき水の中に鉛のように沈んだ。
11 主よ、神々の中に
あなたのような方が誰かあるでしょうか。
誰か、あなたのように聖において導き
ほむべき御業によって畏れられ
くすしき御業を行う方があるでしょうか。
12 あなたが右の手を伸べられると
大地は彼らを呑み込んだ。
13 あなたは慈しみをもって贖われた民を導き
御力をもって聖なる住まいに伴われた。
14 諸国の民はこれを聞いて震え
苦しみがペリシテの住民をとらえた。
15 そのときエドムの首長はおののき
モアブの力ある者たちはわななきにとらえられ
カナンの住民はすべて気を失った。
16 恐怖とおののきが彼らを襲い
御腕の力の前に石のように黙した
主よ、あなたの民が通り過ぎ
あなたの買い取られた民が通り過ぎるまで。
17 あなたは彼らを導き
嗣業の山に植えられる。
主よ、それはあなたの住まいとして
自ら造られた所
主よ、御手によって建てられた聖所です。
18 主は代々限りなく統べ治められる。
19 ファラオの馬が、戦車、騎兵もろとも海に入ったとき、主は海の水を彼らの上に返された。 しかし、イスラエルの人々は海の中の乾いた所を進んだ。
20 アロンの姉である女預言者ミリアムが小太鼓を手に取ると、他の女たちも小太鼓を手に持ち、踊りながら彼女の後に続いた。 21 ミリアムは彼らの音頭を取って歌った。
主に向かって歌え。
主は大いなる威光を現し
馬と乗り手を海に投げ込まれた。
マラの苦い水
22 モーセはイスラエルを、葦の海から旅立たせた。
彼らはシュルの荒れ野に向かって、荒れ野を三日の間進んだが、水を得なかった。 23 マラに着いたが、そこの水は苦くて飲むことが出来なかった。 こういうわけで、そこの名はマラ(苦い)と呼ばれた。 24 民はモーセに向かって、「何を飲んだらよいか」と不平を言った。 25 モーセが主に向かって叫ぶと、主は彼に一本の木を示された。 その木を水に投げ込むと、水は甘くなった。
その所で主は彼に掟と法とを与えられ、またその所で彼を試みて、 26 言われた。
「もしあなたが、あなたの神、主の声に必ず聞き従い、彼の目にかなう正しいことを行い、彼の命令に耳を傾け、すべての掟を守るならば、わたしがエジプト人に下した病をあなたには下さない。 わたしはあなたをいやす主である。」
27 彼らがエリムに着くと、そこには十二の泉があり、七十本のなつめやしが茂っていた。 その泉のほとりに彼らは宿営した。
マナ 16
1 イスラエルの人々の共同体全体はエリムを出発し、エリムとシナイとの間にあるシンの荒れ野に向かった。 それはエジプトの国を出た年の第二の月の十五日であった。 2 荒れ野に入ると、イスラエルの人々の共同体全体はモーセとアロンに向かって不平を述べ立てた。 3 イスラエルの人々は彼らに言った。
「我々はエジプトの国で、主の手にかかって、死んだ方がましだった。 あのときは肉のたくさん入った鍋の前に座り、パンを腹いっぱい食べられたのに。 あなたたちは我々をこの荒れ野に連れ出し、この全会衆を飢え死にさせようとしている。」
4 主はモーセに言われた。
「見よ、わたしはあなたたちのために、天からパンを降らせる。 民は出て行って、毎日必要な分だけ集める。 わたしは、彼らがわたしの指示どおりにするかどうかを試す。 5 ただし、六日目に家に持ち帰ったものを整えれば、毎日集める分の二倍になっている。
6 モーセとアロンはすべてのイスラエルの人々に向かって言った。
「夕暮れに、あなたたちは、主があなたたちをエジプトの国から導き出されたことを知り、 7 朝に、主の栄光を見る。 あなたたちが主に向かって不平を述べるのを主が聞かれたからだ。 我々が何者なので、我々に向かって不平を述べるのか。」
8 モーセは更に言った。
「主は夕暮れに、あなたたちに肉を与えて食べさせ、朝にパンを与えて満腹にさせられる。 主は、あなたたちが主に向かって述べた不平を、聞かれたからだ。 一体、我々は何者なのか。 あなたたちは我々に向かってではなく、実は、主に向かって不平を述べているのだ。」
9 モーセがアロンに、「あなたはイスラエルの人々の共同体全体に向かって、主があなたたちの不平を聞かれたから、主の前に集まれと命じなさい」と言うと、 10 アロンはイスラエルの人々の共同体全体にそのことを命じた。 彼らが荒れ野の方を見ると、見よ、主の栄光が雲の中に現れた。 11 主はモーセに仰せになった。
12 「わたしは、イスラエルの人々の不平を聞いた。 彼らに伝えるがよい。 『あなたたちは夕暮れには肉を食べ、朝にはパンを食べて満腹する。 あなたたちはこうして、わたしがあなたたちの神、主であることを知るようになる』と。」
13 夕方になると、うずらが飛んで来て、宿営を覆い、朝には宿営の周りに露が降りた。 14 この降りた露が蒸発すると、見よ、荒れ野の地表を覆って薄くて壊れやすいものが大地の霜のように薄く残っていた。
15 イスラエルの人々はそれを見て、これは一体何だろうと、口々に言った。 彼らはそれが何であるか知らなかったからである。 モーセは彼らに言った。
「これこそ、主があなたたちに食物として与えられたパンである。 16 主が命じられたことは次のことである。 『あなたたちはそれぞれ必要な分、つまり一人当たり一オメルを集めよ。 それぞれ自分の天幕にいる家族の数に応じて取るがよい。』」
17 イスラエルの人々はそのとおりにした。 ある者は多く集め、ある者は少なく集めた。 18 しかし、オメル升で量ってみると、多く集めた者も余ることなく、少なく集めた者も足りないことなく、それぞれが必要な分を集めた。 19 モーセは彼らに、「だれもそれを、翌朝まで残しておいてはならない」言ったが、 20 彼らはモーセに聞き従わず、何人かはその一部を翌朝まで残しておいた。 虫が付いて臭くなったので、モーセは彼らに向かって怒った。 21 そこで、彼らは朝ごとにそれぞれ必要な分を集めた。 日が高くなると、それは溶けてしまった。 22 六日目になると、彼らは二倍の量、一人当たり二オメルのパンを集めた。 共同体の代表者は皆でモーセのもとに来て、そのことを報告した。
23 モーセは彼らに言った。
「これは、主が仰せられたことである。 明日は休息の日、主の聖なる安息日である。 焼くものは焼き、煮るものは煮て、余った分は明日の朝まで蓄えておきなさい。」
24 彼らはモーセの命じたとおり、朝まで残しておいたが、臭くならず、虫も付かなかった。 25 モーセは言った。
「今日はそれを食べなさい。 今日は主の安息日である。 今日は何も野に見つからないであろう。 26 あなたたちは六日間集めた。 七日目は安息日だから野には何もないであろう。」
27 七日目になって、民のうちの何人かが集めに出て行ったが、何も見つからなかった。 28 主はモーセに言われた。
「あなたたちは、いつまでわたしの戒めと教えを拒み続けて、守らないのか。 29 よくわきまえなさい、主があなたたちに安息日を与えたことを。 そのために、六日目には、主はあなたたちに二日分のパンを与えている。 七日目にはそれぞれ自分の所にとどまり、その場所から出てはならない。」
30民はこうして、七日目に休んだ。 31 イスラエルの家では、それをマナと名付けた。 それは、コエンドロの種に似て白く、蜜の入ったウェファースのような味がした。 32 モーセは言った。
「主が命じられたことは次のことである。 『その中から正味一オメルを量り、代々にわたって蓄えよ。 わたしがあなたたちをエジプトの国から導き出したとき、荒れ野で食べさせたパンを彼らが見ることができるためである。』」
33 モーセがアロンに、「壺を用意し、その中に正味一オメルのマナを入れ、それを主の御前に置き、代々にわたって蓄えておきなさい」と言うと、 34 アロンは、主がモーセに命じられたとおり、それを掟の箱の前に置いて蓄えた。 35 イスラエルの人々は、人の住んでいる土地に着くまで四十年にわたってこのマナ食べた。 すなわち、カナン地方の境に到着するまで彼らはこのマナを食べた。 36 一オメルは十分の一エファである。
岩からほとばしる水 17
1 主の命令により、イスラエルの人々の共同体全体は、シンの荒れ野を出発し、旅程に従って進み、レフィディムに宿営したが、そこには民の飲み水がなかった。 2 民がモーセと争い、「我々に飲み水を与えよ」と言うと、モーセは言った。
「なぜ、わたしと争うのか。 なぜ、主を試すのか。」
3 しかし、民は喉が渇いてしかたがないので、モーセに向かって不平を述べた。
「なぜ、我々をエジプトから導き上ったのか。 わたしも子供たちも、家畜までも渇きで殺すためなのか。」 4 モーセは主に、「わたしはこの民をどうすればよいのですか。 彼らは今にも、わたしを石で打ち殺そうとしています」と叫ぶと、 5 主はモーセに言われた。 「イスラエルの長老数名を伴い、民の前を進め。 また、ナイル川を打った杖を持って行くがよい。 6 見よ、わたしはホレブの岩の上であなたの前に立つ。 あなたはその岩を打て。 そこから水が出て、民は飲むことができる。」
モーセは、イスラエルの長老たちの目の前でそのとおりにした。 7 彼は、その場所をマサ(試し)とメリバ(争い)と名付けた。 イスラエルの人々が、「果たして、主は我々の間におられるのかどうか」と言って、モーセと争い、主を試したからである。
アマレクとの戦い
8 アマレクがレフィディムに来てイスラエルと戦ったとき、 9 モーセはヨシュアに言った。
「男子を選び出し、アマレクとの戦いに出陣させるがよい。 明日、わたしは神の杖を手に持って、丘の頂に立つ。」
10 ヨシュアは、モーセの命じたとおりに実行し、アマレクと戦った。 モーセとアロン、そしてフルは丘の頂に登った。 11 モーセが手を上げている間、イスラエルは優勢になり、手を下ろすと、アマレクが優勢になった。 12 モーセの手が重くなったので、アロンとフルは石を持って来てモーセの下に置いた。 モーセはその上に座り、アロンとフルはモーセの両側に立って、彼の手を支えた。 その手は、日の沈むまで、しっかりと上げられていた。 13 ヨシュアは、アマレクとその民を剣にかけて打ち破った。 14 主はモーセに言われた。 「このことを文書に書き記して記念とし、また、ヨシュアに読み聞かせよ。 『わたしは、アマレクの記憶を天の下から完全にぬぐい去る』と。」
15 モーセは祭壇を築いて、それを「主はわが旗」と名付けて、16 言った。
「彼らは主の御座に背いて手を上げた。
主は代々アマレクと戦われる。」
エトモのモーセ訪問 18
1 モーセのしゅうとで、ミディアンの祭司であるエトロは、神がモーセとその民イスラエルのためになされたすべてのこと、すなわち、主がイスラエルをエジプトから導き出されたことを聞いた。 2 モーセのしゅうとエトロは、モーセが先に帰していた妻のツィボラと、 3 二人の息子を連れて来た。 一人は、モーセが、「わたしは異国にいる寄留者だ」と言って、ゲルショムと名付け、 4 もう一人は、「わたしの父の神はわたしの助け、ファラオの剣からわたしを救われた」と言って、エリエゼルと名付けた。 5 モーセのしゅうとエトロは、モーセの息子たちと妻を連れて荒れ野に行き、神の山に宿営しているモーセのところに行った。 6 彼はモーセに、「あなたのしゅうとであるわたし、エトロがあなたの妻と二人の子供を連れて来た」と伝えると、 7 モーセは出て来てしゅうとを迎え、身をかがめて口づけした。 彼らは互いに安否を尋ねあってから、天幕の中に入った。 8 モーセはしゅうとに、主がイスラエルのためファラオとエジプトに対してなされたすべてのこと、すなわち、彼らは途中であらゆる困難に遭遇したが、主が彼らを救い出されたことを語り聞かせると、 9 エトロは、主がイスラエルをエジプト人の手から救い出し、彼らに恵みを与えられたことを喜んで、 10 言った。
「主をたたえよ
主はあなたたちをエジプト人の手から
ファラオの手から救い出された。
主はエジプト人のもとから民を救い出された。
11今、わたしは知った
彼らがイスラエルに向かって
高慢にふるまったときにも
主はすべての神々にまさって偉大であったことを。」
12 モーセのしゅうとエトロは焼き尽くす捧げ物といけにえを神にささげた。 アロンとイスラエルの長老たちも皆来て、モーセのしゅうとと共に神の御前で食事をした。
13 翌日になって、モーセは座に着いて民を裁いたが、民は朝から晩までモーセの裁きを待って並んでいた。 14 モーセのしゅうとは、彼が民のために行っているすべてのことを見て、「あなたが民のためにしているこのやり方はどうしたことか。 なぜ、あなた一人だけが座に着いて、民は朝から晩まであなたの裁きを待って並んでいるのか」と尋ねた。 15 モーセはしゅうとに、「民は、神に問うためにわたしのところに来るのです。 16 彼らの間に何か事件が起こると、わたしのところに来ますので、わたしはそれぞれの間を裁き、また、神の掟と指示とを知らせるのです」と答えた。 17 モーセのしゅうとは言った。 「あなたのやり方は良くない。 18 あなた自身も、あなたを尋ねて来る民も、きっと疲れ果ててしまうだろう。 このやり方ではあなたの荷が重すぎて、一人では負いきれないからだ。 19 わたしの言うことを聞きなさい。 助言をしよう。 神があなたと共におられるように。 あなたが民に代わって神の前に立って事件について神に述べ、 20 彼らに掟と指示を示して、彼らの歩むべき道となすべき事を教えなさい。 21 あなたは、民全員の中から、神を畏れる有能な人で、不正な利得を憎み、信頼に値する人物を選び、千人隊長、百人隊長、五十人隊長、十人隊長として民の上に立てなさい。 22 平素は彼らに民を裁かせ、大きな事件があったときだけ、あなたのもとに持って来させる。 小さな事件は彼ら自身で裁かせ、あなたの負担を軽くし、あなたと共に彼らに分担させなさい。 23 もし、あなたがこのやり方を実行し、神があなたに命令を与えてくださるならば、あなたは任に堪えることができ、この民も皆、安心して自分の所へ帰ることができよう。 24 モーセはしゅうとの言うことを聞き入れ、その勧めのとおりにし、 25 全イスラエルの中から有能な人々を選び、彼らを民の長、すなわち、千人隊長、百人隊長、五十人隊長、十人隊長とした。 26 こうして、平素は彼らが民を裁いた。 難しい事件はモーセのもとに持って来たが、小さい事件はすべて、彼ら自身が裁いた。
27 しゅうとはモーセに送られて、自分の国に帰って行った。
シナイ山に着く 19
1 イスラエルの人々は、エジプトの国を出て三日目のその日に、シナイの荒れ野に到着した。 2 彼らはレフィディムを出発して、シナイの荒れ野に着き、荒れ野に天幕を張った。 イスラエルは、そこで、山に向かって宿営した。
3 モーセが神のもと登って行くと、山から主は彼に語りかけて言われた。
「ヤコブの家にこのように語り
イスラエルの人々に告げなさい。
4 あなたたちは見た
わたしがエジプト人にしたこと
また、あなたたちを鷲の翼に乗せて
わたしのもとに連れて来たことを。
5 今、もしわたしの声に聞き従い
わたしの契約を守るならば
あなたたちはすべて民の間にあって
わたしの宝となる。
世界はすべてわたしのものである。
6 あなたたちは、わたしにとって
祭司の王国、聖なる国民となる。
これが、イスラエルの人々に語るべき言葉である。」
7 モーセは戻って、民の長老たちを呼び集め、主が命じられた言葉をすべて彼らの前で語った。 8 民は皆、一斉に答えて、「わたしたちは、主が語られたことをすべて、行います」と言った。
モーセが民の言葉を主に取り次ぐと、 9 主はモーセに言われた。 「見よ、わたしは濃い雲の中にあってあなたに臨む。 わたしがあなたと語るのを民が聞いて、いつまでもあなたを信じるようになるためである。」
モーセは民の言葉を主に告げた。
10 主はモーセに言われた。 「民のところに行き、今日と明日、彼らを聖別し、衣服を洗わせ、 11 三日目のために準備させなさい。 三日目に、民全員の見ている前で、主はシナイ山に降られるからである。 12 民のために周囲に境を設けて、命じなさい。 『山に登らぬよう、また、その境界に触れぬよう注意せよ。 山に触れる者は必ず死刑に処せられる。 13 その人に手を触れずに、石で打ち殺すか、矢で射殺さねばならない。 獣であれ、人であれ、生かしておいてはならない。 角笛が長く吹き鳴らされるとき、ある人々は山に登ることができる。』」
14 モーセは山から民のところに下って行き、民を聖別し、衣服を洗わせ、 15 民に命じて、「三日目のために準備をしなさい。 女に近づいてはならない」と言った。 16 三日目の朝になると、雷鳴と稲妻と厚い雲が山に臨み、角笛の音が鋭く鳴り響いたので、宿営にいた民は皆、震えた。 17 しかし、モーセが民を神に会わせるために宿営から連れ出したので、彼らは山のふもとに立った。 18 シナイ山は全山煙に包まれた。 主が火の中を山の上に降られたからである。 煙は炉の煙のように立ち上り、山全体が激しく震えた。 19 角笛の音がますます鋭く鳴り響いたとき、モーセが語りかけると、神は雷鳴をもって答えられた。
20 主はシナイ山の頂に降り、モーセを山の頂に呼び寄せられたので、モーセは登って行った。 21 主はモーセに言われた。 「あなたは下って行き、民が主を見ようとして越境し、多くの者が命を失うことのないように警告しなさい。 22 また主に近づく祭司たちも身を清め、主が彼らを撃たれることがないようにしなさい。」 23 モーセは主に言った。 「民がシナイ山に登ることはできません。 山に境を設けて、それを聖別せよとあなたがわたしたちに警告されたからです。」 24 主は彼に言われた。 「さあ、下って行き、あなたはアロンと共に登って来なさい。 ただし、祭司たちと民とは越境して主のもとに登って来てはならない。 主が彼らを撃つことがないためである。 25 モーセは民のもとに下って行き、彼らに告げた。
十戒 20
1 神はこれらすべての言葉を告げられた。
2 「わたしは主、あなたの神、あなたをエジプトの国、奴隷の家から導き出した神である。
3 あなたには、わたしをおいてほかに神があってはならない。
4 あなたはいかなる像も造ってはならない。 上は天にあり、下は地にあり、また地の下の水の中にある、いかなるものの形も造ってはならない。 5 あなたはそれらに向かってひれ伏したり、それらに仕えたりしてはならない。 わたしは主、あなたの神。 わたしは熱情の神である。 わたしを否む者には、父祖の罪を子孫に三代、四代までも問うが、 6 わたしを愛し、わたしの戒めを守る者には、幾千代にも及ぶ慈しみを与える。 7 あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。 みだりにその名を唱える者を主は罰せずにはおかれない。
8 安息日を心に留め、これを聖別せよ。 9 六日の間働いて、何であれあなたの仕事をし、 10 七日目は、あなたの神、主の安息日であるから、いかなる仕事もしてはならない。 あなたも、息子も、娘も、男女の奴隷も、家畜も、あなたの町の門の中に寄留する人々も同様である。 11 六日の間に主は天と地と海とそこにあるすべてのものを造り、七日目に休まれたから、主は安息日を祝福して聖別されたのである。
12 あなたの父母を敬え。 そうすればあなたは、あなたの神、主が与えられる土地に長く生きることができる。
13 殺してはならない。
14 姦淫してはならない。
15 盗んではならない。
16 隣人に関して偽証してはならない。
17 隣人の家を欲してはならない。 隣人の妻、男女の奴隷、牛、ろばなど隣人のものを一切欲してはならない。」
18 民全員は、雷鳴がとどろき、稲妻が光り、角笛の音が鳴り響いて、山が煙に包まれる有様を見た。 民は見て恐れ、遠くから離れて立ち、 19 モーセに言った。 「あなたがわたしたちに語ってください。 わたしたちは聞きます。 神がわたしたちにお語りにならないようにしてください。 そうでないと、わたしたちは死んでしまいます。」 20 モーセは民に答えた。 「恐れることはない。 神が来られたのは、あなたたちを試すためであり、また、あなたたちの前に神を畏れる畏れをおいて、罪を犯させないようにするためである。 21 民は遠く離れて立ち、モーセだけが神のおられる密雲に近づいて行った。
契約の書
(1) 祭壇について
22 主はモーセに言われた。
イスラエルの人々にこう言いなさい。
あなたたちは、わたしが天からあなたたちと語るのを見た。 23 あなたたちはわたしについて、何も造ってはならない。 銀の神々も金の神々も造ってはならない。
24 あなたは、わたしのために土の祭壇を造り、焼き尽くす捧げ物、和解の捧げ物、羊、牛をその上にささげなさい。 わたしの名を唱えられるすべての場所において、わたしはあなたに臨み、あなたを祝福する。 25 しかし、もしわたしのために石の祭壇を造るなら、切り石で築いてはならない。 のみを当てると、石が汚されるからである。 26 あなたは、階段を用いて祭壇に登ってはならない。 あなたの隠し所があらわにならないためである。
(2)奴隷について 21
1 以下は、あなたが彼らに示すべき法である。 2 あなたがヘブライ人である奴隷を買うならば、彼は六年間奴隷として働かねばならないが、七年目には無償で自由の身になることができる。 3 もし、彼が独身で来た場合は、独身で去らねばならない。 もし、彼が妻帯者であった場合は、その妻も共に去ることができる。 4 もし、主人が彼に妻を与えて、その妻が彼との間に息子あるいは娘を産んだ場合は、その妻と子供は主人に属し、彼は独身で去らねばならない。
5 もし、その奴隷が、「わたしは主人と妻子とを愛しており、自由の身になる意思はありません」と明言する場合は、 6 主人は彼を神のもとに連れて行く。 入り口もしくは入り口の柱のところに連れて行き、彼の耳を錐で刺し通すならば、彼を生涯、奴隷とすることができる。
7 人が自分の娘を女奴隷として売るならば、彼女は、男奴隷が去るときと同じように去ることはできない。 8 もし、主人が彼女を一度自分のものと定めながら、気に入らなくなった場合は、彼女が買い戻されることを許さねばならない。 彼は彼女を裏切ったのだから、外国人に売る権利はない。 9 もし、彼女を自分の息子のものと定めた場合は、自分の娘と同じように扱わなければならない。 10 もし、彼が別の女をめとった場合も、彼女から食事、衣服、夫婦の交わりを減らしてはならない。 11 もし、彼がこの三つの事柄を実行しない場合は、彼女は金を支払わずに無償で去ることができる。
(3) 死に値する罪
12 人を打って死なせた者は必ず死刑に処せられる。 13 ただし、故意ではなく、偶然、彼の手に神が渡された場合は、わたしがあなたのために一つの場所を定める。 彼はそこに逃れることができる。 14 しかし、人が故意に隣人を殺そうとして暴力を振るうならば、あなたは彼をわたしの祭壇のもとからでも連れ出して、処刑することができる。
15 自分の父あるいは母を打つ者は、必ず死刑に処せられる。
16 人を誘拐する者は、彼を売った場合も、自分の手もとに置いていた場合も、必ず死刑に処せられる。
17 自分の父あるいは母を呪う者は、必ず死刑に処せられる。
(4) 身体の障害
18 人々が争って、一人が他の一人を石、もしくはこぶしで打った場合は、彼が死なないで、床に伏しても、 19 もし、回復して、杖を頼りに外を歩き回ることができるようになるならば、彼を打った者は罰を免れる。 ただし、仕事を休んだ分を補償し、完全に治療させねばならない。
20人が自分の男奴隷あるいは女奴隷を棒で打ち、その場で死なせた場合は、必ず罰せられる。 21 ただし、一両日でも生きていた場合は、罰せられない。 それは自分の財産だからである。
22 人々がけんかをして、妊娠している女を打ち、流産させた場合は、もしその他の損傷がなくても、その女の主人が要求する賠償を支払わねばならない。 仲裁者の裁定に従ってそれを支払わねばならない。 23 もし、その他の損傷があるならば、命には命、 24 目には目、歯には歯、手には手、足には足、 25 やけどにはやけど、生傷には生傷、打ち傷には打ち傷をもって償わなければならない。
26 人が自分の男奴隷あるいは女奴隷の目を打って、目がつぶれた場合、その目の償いとして、その者を自由にして去らせねばならない。 27 もし、自分の男奴隷あるいは女奴隷の歯を折った場合、その歯の償いとして、その者を自由に去らせねばならない。
28 牛が男あるいは女を突いて死なせた場合、その牛は必ず石で打ち殺されねばならない。 また、その肉は食べてはならない。 しかし、その牛の所有者には罪はない。 29 ただし、もし、その牛に以前から突く癖があり、所有者に警告がなされていたのに、彼がその警告を守らず、男あるいは女を死なせた場合は、牛は石で打ち殺され、所有者もまた死刑に処せられる。 30 もし、賠償金が要求された場合には、自分の命の代償として、要求されたとおりに支払わねばならない。 31 男の子あるいは女の子を突いた場合も、この規定に準じて処理されねばならない。 32 もし、牛が男奴隷あるいは女奴隷を突いた場合は、銀三十シェケルをその主人に支払い、その牛は石で打ち殺されねばならない。
(5) 財産の損傷
33 人が水溜めをあけたままにしておくか、水溜めを掘って、それに蓋をしないでおいたため、そこに牛あるいはろばが落ちた場合、 34 その水溜めの所有者はそれを償い、牛あるいはろばの所有者に銀を支払う。 ただし、死んだ家畜は彼のものとなる。
35 ある人の牛が隣人の牛を突いて死なせた場合、生きている方の牛を売って、その代金を折半し、死んだ方の牛も折半する。 36 しかし、牛に以前から突く癖のあることが分かっていながら、所有者が注意を怠った場合は、必ず、その牛の代償として牛で償わねばならない。 ただし、死んだ牛は彼のものとなる。
(6) 盗みと財産の保管
37 人が牛あるいは羊を盗んで、これを屠るか、売るかしたならば、牛一頭の代償として牛五頭、羊一匹の代償として羊四匹で償わねばならない。
22 2b 彼は必ず償わなければならない。 もし、彼が何も持っていない場合は、その盗みの代償として身売りせねばならない。 3 もし、牛であれ、ろばであれ、羊であれ、盗まれたものが生きたままで彼の手もとに見つかった場合は、二倍にして償わねばならない。
1 もし、盗人が壁に穴をあけて入るところを見つけられ、打たれて死んだ場合、殺した人に血を流した罪はない。 2a しかし、太陽が昇っているならば、殺した人に血を流した責任がある。
4 人が畑あるいはぶどう畑で家畜に草を食べさせるとき、自分の家畜を放って、他人の畑で草を食べさせたならば、自分の畑とぶどう畑の最上の産物をもって償わねばならない。
5 火が出て、茨に燃え移り、麦束、立ち穂、あるいは畑のものを焼いた場合、火を出した者が必ず償わねばならない。
6 人が銀あるいは物品の保管を隣人に託し、それが隣人の家から盗まれた場合、もし、その盗人が見つかれば、盗人は二倍にして償わねばならない。 7 もし、盗人が見つからない場合は、その家の主人が神の御もとに進み出て、自分は決して隣人の持ち物に手をかけなかったことを誓わねばならない。 8 牛、ろば、羊、あるいは衣服、その他すべての紛失物について言い争いが生じ、一方が、「それは自分の物です」と言うとき、両者の言い分は神の御もとに出され、神が有罪とした者が、隣人に二倍の償いをせねばならない。
9 人が隣人にろば、牛、羊、その他の家畜を預けたならば、それが死ぬか、傷つくか、奪われるかして、しかもそれを見た者がいない場合、 10 自分は決して隣人の持ち物に手をかけなかった、と両者の間で主に誓いがなされねばならない。 そして、所有者はこれを受け入れ、預かった人は償う必要はない。 11 ただし、彼のところから確かに盗まれた場合は、所有者に償わねばならない。 12 もし、野獣にかみ殺された場合は、証拠を持って行く。 かみ殺されたものに対しては、償う必要はない。
13 人が隣人から家畜を借りて、それが傷つくか、死んだならば、所有者が一緒にいなかったときには必ず償わねばならない。 14 もし、所有者が一緒にいたならば、償う必要はない。 ただし、それが賃借りしたものであれば、借り賃は支払わねばならない。
(7) 処女の誘惑
15 人がまだ婚約していない処女を誘惑し、彼女と寝たならば、必ず結納金を払って、自分の妻としなければならない。 16 もし、彼女の父親が彼に与えることを強く拒む場合は、彼は処女のための結納金に相当するものを銀で支払わねばならない。
(8) 死に値する罪
17 女呪術師を生かしておいてはならない。
18 すべて獣と寝る者は必ず死刑に処せられる。
19 主ひとりのほか、神々に犠牲をささげる者は絶ち滅ぼされる。
(9) 人道的律法
20 寄留者を虐待したり、圧迫したりしてはならない。 あなたたちはエジプトの国で寄留者であったからである。
21 寡婦や孤児はすべて苦しめてはならない。 22 もし、あなたが彼を苦しめ、彼がわたしに向かって叫ぶ場合は、わたしは必ずその叫びを聞く。 23 そして、わたしの怒りは燃え上がり、あなたたちを剣で殺す。 あなたたちの妻は寡婦となり、子供らは、孤児となる。 24 もし、あなたがわたしの民、あなたと共にいる貧しい者に金を貸す場合は、彼に対して高利貸しのようになってはならない。 彼から利子を取ってはならない。 25 もし、隣人の上着を質にとる場合には、日没までに返さねばならない。 26 なぜなら、それは彼の唯一の衣服、肌を覆う着物だからである。 彼は何にくるまって寝ることができるだろうか。 もし、彼がわたしに向かって叫ぶならば、わたしは聞く。 わたしは憐れみ深いからである。
(10) 祭儀的律法
27 神をののしってはならない。 あなたの民の中の代表者を呪ってはならない。
28 あなたの豊かな収穫とぶどう酒の奉献を遅らせてはならない。 あなたの初子をわたしにささげねばならない。 29 あなたの牛と羊についても同じようにせよ。 七日の間、その母と共に置き、八日目にわたしにささげなければならない。
30 あなたたちは、わたしに属する聖なる者とならねばならない。 野外でかみ殺された肉を食べてはならない。 それは犬に投げ与えるべきでる。
(11) 法廷において 23
1 あなたは根拠のないうわさを流してはならない。 悪人に加担して、不法を引き起こす証人となってはならない。
2 あなたは多数者に追随して、悪を行ってはならない。 法廷の争いにおいて多数者に追随して証言し、判決を曲げてはならない。 3 また、弱い人を訴訟において曲げてかばってはならない。
(12) 敵対する者とのかかわり
4 あなたの敵の牛あるいはろばが迷っているのに出会ったならば、必ず彼のもとに連れ戻さなければならない。 5 もし、あなたを憎む者のろばが荷物の下に倒れ伏しているのを見た場合、それを見捨てておいてはならない。 必ず彼と共に助け起こさねばならない。
(13) 訴訟において
6 あなたは訴訟において乏しい人の判決を曲げてはならない。 7 偽りの発言を避けねばならない。 罪なき人、正しい人を殺してはならない。 わたしは悪人を、正しいとすることはない。 8 あなたは賄賂を取ってはならない。 賄賂は、目のあいている者の目を見えなくし、正しい人の言い分をゆがめるからである。 9 あなたは寄留者を虐げてはならない。 あなたたちは寄留者の気持ちを知っている。 あなたたちは、エジプトの国で寄留者であったからである。
(14) 安息年
10 あなたは六年の間、自分の土地に種を蒔き、産物を取り入れなさい。 11 しかし、七年目には、それを休ませて、休閑地しなければならない。 あなたの民の乏しい者が食べ、残りを野の獣に食べさせるがよい。 ぶどう畑、オリーブ畑の場合も同じようにしなければならない。
(15)安息日
12 あなたは六日の間、あなたの仕事を行い、七日目には、仕事をやめねばならない。 それは、あなたの牛やろばが休み、女奴隷の子や寄留者が元気を回復するためである。
13 わたしが命じたことをすべて、あなたたちは守らねばならない。 他の神々の名を唱えてはならない。 それを口にしてはならない。
(16) 祭りについて
14 あなたは年に三度、わたしのために祭りを行わねばならない。 15 あなたは除酵祭を守らねばならない。 七日の間、わたしが命じたように、あなたはアビブの月の定められた時に酵母を入れないパンを食べねばならない。 あなたはその時エジプトを出たからである。 何も持たずにわたしの前に出てはならない。 16 あなたは、畑に蒔いて得た産物の初物を刈り入れる刈り入れの祭りの祭りを行い、年の終わりには、畑の産物を取り入れる時に、取入れの祭りを行わねばならない。 17 年に三度、男子はすべて、主なる神の御前に出ねばならない。 18 あなたはわたしにささげるいけにえの血を、酵母を入れたパンと共にささげてはならない。 また、祭りの捧げ物の脂肪を朝まで残しておいてはならない。 19 あなたは、土地の最上の初物をあなたの神、主の宮に携えて来なければならない。
あなたは子山羊をその母の乳で煮てはならない。
違反に対する警告
20 見よ、わたしはあなたの前に使いを遣わして、あなたを道で守らせ、わたしの備えた場所に導かせる。 21 あなたは彼に心を留め、その声に聞き従い、彼に逆らってはならない。 彼はあなたたちの背きを赦さないであろう。 彼はわたしの名を帯びているからである。 22 しかし、もしあなたが彼の声に聞き従い、わたしの語ることをすべて行うならば、わたしはあなたの敵に敵対し、仇に仇を報いる。
23 わたしの使いがあなたの前を行き、あなたをアモリ人、ヘト人、ペリジ人、カナン人、ヒビ人、エブス人のところに導くとき、わたしは彼らを絶やす。 24 あなたは彼らの神々にひれ伏し仕えてはならない。 そのならわしを行ってはならない。 あなたは彼らを滅ぼし、その石柱を打ち砕かねばならない。 25 あなたたちは、あなたたちの神、主に仕えねばならない。 主はあなたのパンと水を祝福するであろう。 わたしはあなたの中から病を取り除く。 26 あなたの国には流産する女も不妊の女もいなくなる。 わたしはあなたの天寿を全うさせる。
27 わたしは、あなたの前にわたしの畏れを送り、あなたが入って行く土地の民をすべて混乱に陥れ、あなたの敵をすべて敗退させる。 28 わたしはまた、あなたの前に恐怖を送り、あなたの前からヒビ人、カナン人、ヘト人を追い出す。 29 しかし、一年間は彼らをあなたの前から追い出さない。 さもないと、国土は荒れ果て、野獣の数が増し、あなたに向かって来る。 30 わたしは彼らをあなたの前から徐々に追い出すので、あなたは子を産み、国土を受け継ぐに至る。 31 わたしは葦の海からペリシテ人の海まで、また荒れ野から大河までをあなたの領地と定める。 わたしはその土地の住民をあなたたちの手に渡すから、あなたは彼らを自分の前から追い出す。 32 あなたは彼らおよび彼らの神々と契約を結んではならない。 33 彼らはあなたの国に住むことはできない。 彼らがあなたに、わたしに対する罪を犯させないためである。 さもないと、あなたは彼らの神々を拝み、それは、あなたにとって罠となるからである。
契約の締結 24
1 主はモーセに言われた。
「あなたは、アロン、ナダブ、アビフ、およびイスラエルの七十人の長老と一緒に主のもとに登りなさい。 あなたたちは遠く離れて、ひれ伏さねばならない。 2 しかし、モーセだけは主に近づくことができる。 その他の者は近づいてはならない。 民は彼と共に登ることはできない。」
3 モーセは戻って、主のすべての言葉とすべての法を民に読み聞かせると、民は皆、声を一つにして答え、「わたしたちは、主が語られた言葉をすべて行います」と言った。 4 モーセは主の言葉をすべて書き記し、朝早く起きて、山のふもとに祭壇を築き、十二の石の柱イスラエルの十二部族のために建てた。 5 彼はイスラエルの人々の若者を遣わし、焼き尽くす捧げものをささげさせ、更に和解の捧げ物として主に雄牛をささげさせた。 6 モーセは血の半分を取って鉢に入れて、残りの半分を祭壇に振りかけると、 7 契約の書を取り、民に読んで聞かせた。 彼らが、「わたしたちは主が語られたことをすべて行い、守ります」と言うと、 8 モーセは血を取り、民に振りかけて言った。 「見よ、これは主がこれらの言葉に基づいてあなたたちと結ばれた契約の血である。」
9 モーセはアロン、ナダブ、アビフおよびイスラエルの七十人の長老と一緒に登って行った。 10 彼らがイスラエルの神を見ると、その御足の下にはサファイアの敷石のような物があり、それはまさに大空のように澄んでいた。 11 神はイスラエルの民の代表者たちに向かって手を伸ばされなかったので、彼らは神を見て、食べ、また飲んだ。
12 主が、「わたしのもとに登りなさい。 山に来て、そこにいなさい。 わたしは、彼らを教えるために、教えと戒めを記した石の板をあなたに授ける」とモーセに言われると、 13 モーセは従者ヨシュアと共に立ち上がった。 モーセは、神の山へ登って行くとき、 14 長老たちに言った。 「わたしたちがあなたたちのもとに帰って来るまで、ここにとどまっていなさい。 見よ、アロンとフルとがあなたたちと共にいる。 何か訴えのある者は、彼らのところに行きなさい。」
15 モーセが山に登って行くと、雲は山を覆った。 16 主の栄光がシナイ山の上にとどまり、雲は六日の間、山を覆っていた。 七日目には、主は雲の中からモーセに呼びかけられた。 17 主の栄光はイスラエルの人々の目には、山の頂で燃える火のように見えた。 18 モーセは雲の中に入って行き、山に登った。 モーセは四十日四十夜山にいた。
幕屋建設の指示 25
1 主はモーセに仰せになった。
2 イスラエルの人々に命じて、わたしのもとに献納物を持って来させなさい。 あなたたちは、彼らがおのおの進んで心からささげるわたしへの献納物を受け取りなさい。 3 彼らから受け取るべき献納物は以下のとおりである。 金、銀、青銅、 4 青、紫、緋色の毛糸、亜麻糸、山羊の毛、 5 赤く染めた雄羊の毛皮、じゅごんの皮、アカシヤ材、 6 ともし火のための油、聖別の油と香草の香とに用いる種々の香料、 7 エフォドや胸当てにはめ込むラピス・ラズリやその他の宝石類である。
8 わたしのための聖なる所を彼らに造らせなさい。 わたしは彼らの中に住むであろう。 9 わたしが示す作り方に正しく従って、幕屋とそのすべての祭具を作りなさい。
箱
10 アカシヤ材で箱をつくりなさい。 寸法は縦二・五アンマ、横一・五アンマ。 11 純金で内側も外側も覆い、周囲に金の飾り縁を作る。 12 四つの金環を鋳造し、それを箱の四隅の脚に、すなわち箱の両側に二つずつ付ける。 13-14 箱を担ぐために、アカシヤ材で棒を作り、それを金で覆い、箱の両側に付けた環に通す。 15 棒はその環に通したまま抜かずに置く。 16 この箱に、わたしが与える掟の板を納めなさい。 17 次に、贖いの座を純金で作りなさい。 寸法は縦二・五アンマ、横一・五アンマとする。 18 打ち出し作りで一対のケルビムを作り、贖いの座の両端、 19 すなわち、一つを一方の端に、もう一つを他の端に付けなさい。 一対のケルビムを贖いの座の一部としてその両端に作る。 20 一対のケルビムは顔を贖いの座に向けて向かい合い、翼を広げてそれを覆う。 21 この贖いの座を箱の上に置いて蓋とし、その前にわたしが与える掟の板を納める。 22 わたしは掟の箱の上の一対のケルビムの間、すなわち贖いの座の上からあなたに臨み、わたしがイスラエルの人々に命じることをことごとくあなたに語る。
机
23 アカシア材で机を作りなさい。 寸法は縦二アンマ、横一・五アンマ。 24 純金で覆い、金の飾り?を作る。 25 一トファの幅の枠で四本の脚を補強し、枠にも金の飾り縁を作る。 26 四つの金環を作り、それぞれの脚の外側に付けるが、 27 枠の高さに付け、机を担ぐ棒を通す環とする。 28 アカシア材で棒を作って金で覆い、机を担ぐ棒とする。 29 皿、柄杓、小瓶、水差しを作り、ぶどう酒の捧げ物をささげるのに用いる。 これらは、純金で作る。 30 この机に供えのパンを、絶えずわたしの前に供えなさい。
燭台
31 純金で燭台を作りなさい。 燭台は打つ出し作りとし、台座と支柱、蕚と節と花弁は一体でなければならない。 32 六本の支柱が左右に出るように作り、一方に三本、他方に三本付ける。 33 一本の支柱には三つのアーモンドの花の形をした蕚と節と花弁を付け、もう一本の支柱にも三つのアーモンドの花の形をした蕚と節と花弁を付ける。 燭台から分かれて出ている六本の支柱を同じように作る。 34 燭台の支柱には四つのアーモンドの花と形をした蕚と節と花弁を付ける。 35 節は、支柱が対になって出ている所に一つ、その次に支柱が対になって出ている所に一つ、またその次に支柱が対になって出ている所に一つと、燭台の支柱から出ている六本の支柱の付け根の所に作る。 36 これらの節と支柱は主柱と一体でなければならず、燭台全体は一枚の純金の打ち出し作りとする。
37 次に、七個のともし灯皿を作り、それを上に載せて光が前方に届くようにする。 38 また、芯切り鋏と火皿を純金で作る。 39 燭台とこれらすべての祭具とを重さ一キカルの純金で作る。
40 あなたはこの山で示された作り方に従い、注意して作りなさい。
幕屋を覆う幕 26
1 次に、幕屋を覆う十枚の幕を織りなさい。 亜麻のより糸、青、紫、緋色の糸を使って意匠家の描いたケルビムの模様を織り上げなさい。 2 一枚の幕は長さ二十八アンマ、幅四アンマ、すべての幕を同じ寸法にする。 3 五枚の幕をつづり合わせ、他の五枚も同じようにする。 4 青い糸の輪を作り、一方のつづり合わせたものの端に当たる幕の縁と、もう一方のつづり合わせたものの最後の幕の縁とにそれを並べる。 5 一方の幕について五十の輪、他方のつづり合わせたものの幕にも五十の輪を作り、互に合うように並べて付ける。 6 そこに、五十の金の留め金を作り、両方の幕をそれらで留め合せる。 こうして幕屋を一つに仕上げる。
7 次に、山羊の毛を使って十一枚の幕を作り、幕屋を覆う天幕としなさい。 8 一枚の幕は長さ三十アンマ、幅四アンマで、十一枚の幕をすべて同じ寸法にする。 9 そのうちの五枚をつづり合わせたものと、残りの六枚をつづり合わせたものを作る。 六枚目の幕は天幕の前面で二重にする。 10 五十の輪を作り、一方のつづり合わせたものの端に当たる幕の縁に付け、もう一方のつづり合わせたものの端に当たる幕の縁に五十の輪を付ける。 11 そこに、五十の青銅の留め金を作り、それぞれの輪にはめ、天幕を留め合せて一つに仕上げる。 12 天幕の幕の長さの余る分、すなわち、余分の半幕分は幕屋の後ろに垂らす。 13 また、天幕の幕の長さは一方に一アンマ、他方に一アンマ余るが、それは南北両側面を覆うために垂らす。
14 最後に、赤く染めた雄羊の毛皮で天幕の覆いを作り、更にその上をじゅごんの皮の覆いでおおう。
幕屋の壁板と横木
15 幕屋の壁板をアカシア材で作って立てなさい。 16 一枚の壁板は縦十アンマ、横一・五アンマ、 17 それぞれの壁板に二つの柄を作って隣の壁板とつなぎ合わせる。 幕屋の壁板全部に同じものを作る。 18 幕屋の壁板は南側に二十枚並べ、 19 二十枚の壁板の下にはめるために銀の台座四十個を作る。 すなわち、一枚の板の下に作る二つのほぞに合うように二個の台座を、それぞれの壁板の下に置く。 20 幕屋の他の側面、すなわち北側にも二十枚の壁板を並べ、 21 四十個の銀の台座を作り、壁板一枚につき二個の割りで、それぞれの壁板の下に置く。
22 次に、幕屋の後ろ、すなわち西側には六枚の壁板を並べ、 23 更に二枚の板を作って両方の隅とする。 24 壁板は、下部では二つずつ分かれているが、上部は箍で一つに連ねられている。 両方の隅は同じように作る。 25 従って、西側の壁板は八枚となり、銀の台座は、壁板一枚につき二個、次の一枚にも二個と、計十六個となる。
26 次に、アカシヤ材で横木を作りなさい。 幕屋の一方の側の壁板に五本、 27 もう一方の側の壁板に五本、また西側、つまり後ろ側の壁板に五本用いる。 28 壁板の中央の高さに位置する横木は、壁板の端から端まで渡す。 29 金箔で壁板を覆い、金環に横木を通す。 その横木も金箔で覆う。
30 こうして、山で示された方式に従って幕屋を造りなさい。
至聖所の垂れ幕
31 次に、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸を使って、意匠家の描いたケルビムの模様の垂れ幕を作り、 32 金箔で覆ったアカシア材の四本の柱の鉤に掛けなさい。 鉤は金、四本の柱の台座は銀で作る。 33 その垂れ幕は留め金の下に掛け、その垂れ幕の奥に掟の箱を置く、この垂れ幕はあなたたちに対して聖所と至聖所とを分けるものとなる。 34 至聖所の掟の箱の上に贖いの座を置く、 35 垂れ幕の手前には机を置き、向かい合わせに燭台を置く、燭台は幕屋の南側に、机は北側に置く。
天幕の入り口の幕
36 次に、天幕の入り口に掛ける幕を作る。 青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸を使ってつづれ織を作りなさい。 37 また、幕を掛けるためにアカシア材で五本の柱を作り、それを金箔で覆い、鉤は金で作る。 また柱のためには五個の青銅の台座を鋳造する。
祭壇 27
1 アカシア材で祭壇を造りなさい。 縦五アンマ、横五アンマの正方形、高さは三アンマとする。 2 祭壇の四隅にそれぞれ角を作り、祭壇から生えているように作り、全体を青銅で覆う。 3 灰を取る壺、十能、鉢、肉刺し、火皿などの祭具はすべて青銅で作る。 4 祭壇の下部には青銅の網目作りの格子を付ける。 その網の四隅に青銅の環四個を取り付ける。 5 網目格子は祭壇の半ばの高さにある、張り出した棚の下の部分に付ける。 6 祭壇を担ぐためにアカシア材の棒を作り、それを青銅で覆う。 7 この棒を環に差し込み、祭壇を運ぶとき、その両側に棒があるように整えておく。 8 祭壇は板で造り、中を空洞にする。 山であなたに示されたとおりに造りなさい。
幕屋を囲む庭
9 次に、幕屋を囲む庭を造りなさい。 庭の南側に面して、その側のために亜麻のより糸で織った長さ百アンマの幔幕を張る。 10 そのために、二十本の柱と二十個の台座を青銅で作り、柱の鉤と桁は銀で作る。 11 同じようにして、北側に長さ百アンマの幔幕を張り、二十本の柱と二十個の台座を青銅で、柱の鉤と桁は銀で作る。 12 庭の西側には幅五十アンマの幔幕を張り、十本の柱と十個の台座を作る。 13 庭の東側の幅も五十アンマとし、 14 十五アンマの幔幕を三本の柱と三個の台座によって右に、 15 同じく、十五アンマの幔幕を三本の柱と三個の台座によって左に張る。 16 庭の入り口には、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸で織ったつづれ織りの二十アンマの幕を張り、四本の柱と四個の台座を作る。
17 庭を囲むすべての柱は銀の桁でつなぎ合わせる。 柱の鉤は銀、台座は青銅で作る。 18 この庭の奥行きは百アンマ、間口は五十アンマである。 幔幕は高さ五アンマで、亜麻のより糸で織る。 台座は青銅で作る。 19 また、幕屋で祭儀に用いる祭具、幕屋や庭の杭などすべては青銅で作る。
幕屋を囲む庭
9 次に、幕屋を囲む庭を造りなさい。 庭の南側に面して、その側のために亜麻のより糸で織った長さ百アンマの幔幕を張る。 10 そのために、二十本の柱と二十個の台座を青銅で作り、柱の鉤と桁は銀で作る。 11 同じようにして、北側に長さ百アンマの幔幕を張り、二十本の柱と二十個の台座を青銅で、柱の鉤と桁は銀で作る。 12 庭の西側には幅五十アンマの幔幕を張り、十本の柱と十個の台座を作る。 13 庭の東側の幅も五十アンマとし、 14 十五アンマの幔幕を三本の柱と三個の台座によって右に、 15 同じく、十五アンマの幔幕を三本の柱と三個の台座によって左に張る。 16 庭の入り口には、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸で織ったつづれ織りの二十アンマの幕を張り、四本の柱と四個の台座を作る。
17 庭を囲むすべての柱は銀の桁でつなぎ合わせる。 柱の鉤は銀、台座は青銅で作る。 18 この庭の奥行きは百アンマ、間口は五十アンマである。 幔幕は高さ五アンマで、亜麻のより糸で織る。 台座は青銅で作る。 19 また、幕屋で祭儀に用いる祭具、幕屋や庭の杭などすべては青銅で作る。
常夜灯
20 あなたはイスラエルの人々に命じて、オリーブを砕いて取った純粋の油をともし火に用いるために持って来させ、常夜灯をともさせなさい。 21 常夜灯は臨在の幕屋にある掟の箱を隔てる垂れ幕の手前に置き、アロンとその子らが、主の御前に、夕暮れから夜明けまで守る。 これはイスラエルの人々にとって、代々にわたって守るべき不変の定めである。
祭服 28
1 次に、祭司としてわたしに仕えさせるために、イスラエルの人々の中から、兄弟アロンとその子ら、すなわち、ナダブ、アビフ、エルアザルとイタマルを、アロンと共にあなたの近くに置きなさい。 2 あなたの兄弟アロンに威厳と美しさを添える聖なる祭服を作らねばならない。 3 あなたは、わたしが知恵の霊を与えたすべての知恵のある者たちに説明して、わたしの祭司として聖別されたアロンのために祭服を作らせなさい。 4 彼らが作るべき衣類は、胸当て、エフォド、上着、格子縞の長い服、ターバン、飾り帯である。 あなたの兄弟であるアロンとその子らが祭司としてわたしに仕えるときの聖なる祭服を作るために、 5 彼らは金、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻布を受け取る。
エフォド
6 彼らは金、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸を使って、意匠家の描いた模様のエフォドを織り、 7 その両端に二本の肩ひもを付ける。 8 付け帯はエフォドと同じように、金、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸を使って作る。
9 また、二個のラピス・ラズリを取り、その上にイスラエルの子らの名を彫りつける。 10 六つの名を第一の石に、残る六つの名を第二の石に、生まれた順に彫りつける。 11 印章に石の細工人が彫るように、イスラエルの子らの名をその二個の石に彫りつけ、その石を金で縁取りする。 12 その二個の石をエフォドの両肩ひもに付け、イスラエルの子らのための記念の石とする。 アロンは彼らの名を記念として両肩に付け、主の御前に立つ。
13 金の縁取りをし、 14 二本の純金の鎖を組みひものように作って、金で縁取りをしたものに付ける。
胸当て
15 次に、金、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸を使ってエフォドと同じように、意匠家の描いた模様の、裁きの胸当てを織りなさい。 16 それは、縦横それぞれ一ゼレトの真四角なものとし、二重にする。 17 それに宝石を四列に並べて付ける。
第一列 ルビー トパーズ エメラルド
18 第二列 ざくろ石 サファイア ジャスパー
19 第三列 オパール めのう 紫水晶
20 第四列 藍玉 ラピス・ラズリ 碧玉
これらの並べたものを金で縁取りする。 21 これらの宝石はイスラエルの子らの名を表して十二個あり、それぞれの宝石には十二部族に従ってそれぞれの名が印章に彫るように彫りつけられている。
22 次に、組みひも状にねじった純金の鎖を作り、胸当てに付ける。 23 更に、金環二個を作っておのおのを胸当ての上の端に付ける。 24 そして、二本の金の鎖を胸当ての端の二個の金環にそれぞれ通して、 25 二本の鎖の両端を金の縁取り細工に結び付け、エフォドの肩ひもの外側に取り付ける。 26 また別の二個の金環を作って、おのおのを胸当ての下の端、つまりエフォドと接するあたりの裏側に取り付ける。 27 更に、別の二個の金環を作り、それを二本のエフォドの肩ひもの下、すなわちエフォドの付け帯のすぐ上、そのつなぎ目のあたりの外側に取り付ける。 28 胸当ては、その環とエフォドの環を青いねじりひもで結び、それがエフォドの付け帯の上に来るようにし、胸当てがエフォドからはずれないようにする。 29 このようにして、アロンは聖所に入るとき、裁きの胸当てにあるイスラエルの子らの名を胸に帯び、常に主の御前に記念とするのである。
30 裁きの胸当てにはウリムとトンミムを入れる。 それらは、アロンが主の御前に出るときに、その胸に帯びる。 アロンはこうして、イスラエルの人々の裁きを、主の御前に常に胸に帯びるのである。
上着
31 また、エフォドと共に着る上着を青一色の布で作りなさい。 32 その上着の真ん中に頭を通す穴をあけ、そのへりは革の鎧の襟のように縁取りをして破れないようにする。 33 上着の裾の回りには、青、紫、および緋色の毛糸で作ったざくろの飾りを付け、その間に金の鈴を付ける。 34 金の鈴の次にざくろの飾り、金の鈴の次にざくろの飾りと、上着の裾の回りに付ける。 35 アロンが聖所で務めをするとき、この上着を着ける。 それは彼が中に入って、主の御前に出るときにも、立ち去るときにも、鈴の音が聞こえるようにして、死を招くことがないためである。
額当て
36 また、純金の花模様の額当てを作り、その上に印章に彫るように、「主の聖なる者」と彫りなさい。 37 次に、この額当ての両端に青いねじりひもを付け、ターバンに当てて結び、ターバンの正面にくるようにする。 38 これがアロンの額にあれば、アロンは、イスラエルの人々がささげる捧げ物、つまり、聖なる捧げ物に関して生じた罪を負うことになる。 また、彼がそれを常に額に帯びていれば、彼らは主の御前に受入れられる。
アロンとその子らの衣服
39 また、亜麻の長い服を格子縞に織り、亜麻のターバンを作り、またつづれ織りをした飾り帯を作りなさい。
40 また、アロンの子らのためにも長い服を作り、飾り帯を作り、威厳と美しさを添えるターバンを作りなさい。 41 これらの衣服を兄弟アロンとその子らに着せ、彼らに油を注いで祭司の職に就かせ、彼らを聖別してわたしに仕えさせなさい。 42 また、彼らに亜麻布のズボンを作り、腰から腿までの肌を覆い隠すようにしなさい。 43 アロンとその子らがそれを身に着けていれば、臨在の幕屋に入ったとき、あるいは聖所で務めをするために祭壇に近づいたとき、罪を負って死を招くことがない。 これは彼とその子らにとって不変の定めである。
祭司聖別の儀式 29
1 わたしに仕える祭司として、彼らを聖別するためにすべき儀式は、次のとおりである。
若い雄牛一頭と傷のない雄の子羊二匹を取る。 2 次に、酵母を入れないパン、酵母を使わずに、オリーブ油を混ぜて焼いた小麦粉の輪形のパン、オリーブ油を塗った、酵母を入れない薄焼きパンを、みな上等の小麦粉で作る。 3 それをみな一つの籠に入れ、一頭の雄牛、二匹の雄羊と共にささげる。 4 次に、アロンとその子らを臨在の幕屋の入り口に進ませ、彼らを水で清める。 5 次いで、式服一そろいを取り、アロンに長い服、エフォドと共に着る上着、エフォド、胸当てを着せ、エフォドの付け帯で締める。 6 それから、彼の頭にターバンを巻き、その上に聖別のしるしの額当てを付ける。 7 次いで、聖別の油を取り、彼の頭に注ぎかけて、聖別する。 8 次に、アロンの子らを前に進ませ、彼らに長い服を着せ、 9 飾り帯を締め、ターバンを巻く。 彼らの祭司職はこうして、不変の定めにより、彼らのものとなる。
次に、アロンとその子らの任職式を行う。 10 まず、雄牛を臨在の幕屋の前に引いて来る。 アロンとその子らは手を雄牛の頭に置く。 11 あなたはそれを主の御前、臨在の幕屋の入り口で屠る。 12 次いで雄牛の血を器に取り、その一部を指で祭壇の四隅の角に塗り、血は全部祭壇の基に流す。 13 次に、内臓を覆っているすべての脂肪と肝臓の尾状葉と二つの腎臓とそれに付着する脂肪を取って、祭壇で燃やして煙にする。 14 雄牛の肉と皮と胃の中身は宿営の外で焼き捨てる。 これが贖罪の捧げ物である。
15 また、雄羊一匹を取り、アロンとその子らが手を羊の頭に置く。 16 あなたはそれを屠り、血を取って祭壇の四つの側面に注ぎかける。 17 また、その雄羊を各部に分割し、内臓と四肢を水で洗い、分割した各部と頭と共に、 18 その雄羊全部を祭壇で燃やして煙にする。 これは主にささげる焼き尽くす捧げ物であり、主に燃やしてささげる宥めの香りである。
19 次いで、もう一匹の雄羊を取り、アロンとその子らが手を羊の頭に置く。 20 あなたはそれを屠り、血を取ってその一部をアロンとその子らの右の耳たぶと右手の親指と右足の親指に付け、血を祭壇の四つの側面に注ぎかける。 21 また、祭壇の上の血の一部を取り、更に聖別の油の一部を取って、アロンとその衣服、更にアロンの子らとその衣服に振りまく。 そうすれば、彼自身も衣服も、また彼の子ら自身も衣服も、聖なるものとなる。 22 次に、雄羊から脂肪と油尾と内臓を覆う脂肪、肝臓の尾状葉と二つの腎臓とそれに付着する脂肪と右後ろ肢を切り取る。 これは任職の雄羊だからである。 23 また、一塊のパン、オリーブ油を混ぜて焼いた輪形のパン一個、薄焼きパン一個を、主の御前に供えた酵母を入れないパンの籠から取る。 24 あなたはこれらをすべてアロンとその子らの手に載せ、奉納物として主の御前にささげさせる。 25 次いで、彼らの手からそれらを受け取って、祭壇の上の焼き尽くす捧げ物の傍らに置いて煙にし、主を宥める香りとする。 これが燃やして主にささげる捧げ物である。 26 次に、あなたはアロンの任職の雄羊の胸の肉を取り、奉納物として主の御前にささげる。 それはあなたが受けるべき分である。 27 あなたは、アロンとその子らの任職のための雄羊の捧げ物のうちから、奉納物の胸の肉と礼物の右後ろ肢とを聖別しなさい。 28 それは、不変の定めにより、イスラエルの人々からささげられた物のうちアロンとその子らの分となるべきものである。 なぜなら、それは礼物だからである。 それはイスラエルの人々が主に対する献納物として、和解の捧げ物のうちからささげる物である。
29 アロンの祭服は、彼の後を継ぐ子らが聖別の油を注がれ、祭司職に任命されたならば、彼らのものとなる。 30 アロンの子らのうち、彼の後を継いで祭司となり、臨在の幕屋に入って聖所で仕える者が、その祭服を七日の間、着用する。
31 あなたは任職の雄羊を取り、その肉を聖なる場所で煮て料理する。 32 アロンとその子らは、その肉と籠に入れてあるパンを臨在の幕屋の入り口で食べる。 33 彼らは、自分たちの任職と聖別の儀式に際して、罪の贖いとして用いられた捧げ物を食べる。 それは聖なるものであるから、一般の人は食べてはならない。 34 もし、この任職の捧げ物の肉やパンが翌朝まで残ったならば、焼き捨てる。 それは聖なるものであるから、だれも食べてはならない。
35 あなたはわたしが命じたとおり、アロンとその子らのために七日の間任職式を行いなさい。 36 罪の贖いのために毎日、贖罪の捧げ物の雄牛をささげ、祭壇のために罪の贖いの儀式を行って、それを清め、またそれに油を注いで聖別しなさい。 37 七日の間、祭壇のために罪の贖いの儀式を行って、聖別すれば、祭壇は神聖なものとなる。
日ごとの捧げ物
38 祭壇にささげるべき物は次のとおりである。 毎日絶やすことなく一歳の雄羊二匹を、 39 朝に一匹、夕暮れに他の一匹をささげる。 40 そして、朝ささげる雄羊には四分の一ヒンのオリーブを砕いて取った油を混ぜた十分の一エファの小麦粉と、四分の一ヒンのぶどう酒の捧げ物を加える。 41 また、朝と同じく夕暮れにも、雄羊に穀物の捧げ物とぶどう酒の捧げ物を加え、燃やして主にささげる宥めの香りとする。 42 これは代々にわたって、臨在の幕屋の入り口で主の御前にささぐべき日ごとの焼き尽くす捧げ物である。 わたしはその場所で、あなたたちと会い、あなたに語りかける。 43 わたしはその所でイスラエルの人々に会う。 そこは、わたしの栄光によって聖別される。 44 わたしは臨在の幕屋と祭壇を聖別し、またアロンとその子らをわたしに仕える祭司として聖別する。 45 また、わたしはイスラエルの人々のただ中に宿り、彼らの神となる。 46 彼らは、わたしが彼らの神、主であることを、すなわち彼らのただ中に宿るために、わたしが彼らをエジプトの国から導き出したものであることを知る。 わたしは彼らの神、主である。
香をたく祭壇 30
1 アカシア材で香をたく祭壇を造りなさい。 2 寸法は縦一アンマ、横一アンマの正方形に、高さ二アンマとする。 そして、四隅に角を祭壇から生えるように作る。 3 祭壇の上の面と四つの側面と角を純金で覆い、側面に金の飾り縁を作る。 4 二個の金環を作り、それを金の飾り縁の下の両側に相対するように取り付け、担ぐための棒を差し入れる環とする。 5 この棒もアカシア材で作り、金で覆う。 6 それを掟の箱を隔てる垂れ幕の手前に置く。 この掟の箱の上の贖いの座の前でわたしはあなたと会う。 7 アロンはその祭壇で香草の香をたく。 すなわち、毎朝ともし火を整えるとき、 8 また夕暮れに、ともし火をともすときに、香をたき、代々にわたって主の御前に香りの捧げ物を絶やさぬようにする。 9 あなたたちはその上で規定に反した香や焼き尽くす捧げ物、穀物の捧げ物、ぶどう酒の捧げ物などをささげてはならない。 10 アロンは年に一度、この香をたく祭壇の四隅の角に贖罪の捧げ物の血を塗って、罪の贖いの儀式を行う。 代々にわたって、年に一度、その所で罪の贖いの儀式を行う。 この祭壇は主にとって神聖なものである。
命の代償
11 主はモーセに仰せになった。
12 あなたがイスラエルの人々の人口を調査して、彼らを登録させるとき、登録に際して、各自は命に代償を主に支払わねばならない。 登録することによって彼らに災いがふりかからぬためである。 13 登録が済んだ者はすべて、聖所のシェケルで銀半シェケルを主への献納物として支払う。 一シェケルは二十ゲラに当たる。
14 登録を済ませた二十歳以上の男子は、主への献納物としてこれを支払う。 15 あなたたちの命を贖うために主への献納物として支払う銀は半シェケルである。 豊かな者がそれ以上支払うことも、貧しい者がそれ以下支払うことも禁じる。 16 あなたがイスラエルの人々から集めた命の代償金は臨在の幕屋のために用いる。 それは、イスラエルの人々が主の御前で覚えられるために、あなたたちの命を贖うためである。
手足を清める
17 主はモーセに仰せになった。
18 洗い清めるために、青銅の洗盤とその台を作り、臨在の幕屋と祭壇の間に置き、水を入れなさい。 19 アロンとその子らは、その水で手足を洗い清める。 20 すなわち、臨在の幕屋は入る際に、水で洗い清める。 死を招くことのないためである。 また、主に燃やしてささげる捧げ物を煙にする奉仕のために祭壇に近づくときにも、 21 手足を洗い清める。 死を招くこのないためである。 これは彼らにとっても、子孫にとっても、代々にわたって守るべき不変の定めである。
聖別の油
22 主はモーセに仰せになった。
23 上質の香料を取りなさい。 すなわち、ミルラの樹脂五百シェケル、シナモンをその半量の二百五十シェケル、 24 桂皮を聖所のシェケルで五百シェケル、オリーブ油一ヒンである。 25 あなたはこれらを材料にして聖なる聖別の油を作る。 すなわち、香料師の混ぜ合わせ方に従って聖なる聖別の油を作る。 26 それを以下のものに注ぐ。 すなわち、臨在の幕屋、掟の箱、 27 机とそのすべての祭具、燭台とその祭具、香をたく祭壇、 28 焼き尽くす捧げ物の祭壇とそのすべての祭具、洗盤とその台。 29 あなたがこれらを聖別すると、神聖なるものとなる。 それに触れたものは、みな聖なるものとなる。 30 アロンとその子らにこの油を注いで、彼らを聖別し、祭司としてわたしに仕えさせなさい。
31 イスラエルの人々に告げてこう言いなさい。
聖なる聖別の油は、代々にわたってわたしのために使うべきものである。 32 一般の人の体に注いだり、同じ割合のものを作ってはならない。 それは聖なるものであるからである。 聖なるものとして扱いなさない。 33 類似したものを混ぜ合わせて、一般の人に塗る者は、その民から断たれる。
香料
34 主はモーセに言われた。
以下の香料、すなわち、ナタフ香、シェヘレト香、ヘルベナ香、これらの香料と純粋な乳香をそれぞれ同量取り、 35 香を作りなさい。 すなわち、香料師の混ぜ合わせ方に従ってよく混ぜ合わせた、純粋な、聖なる香を作る。 36 その一部を細かく砕いて粉末にし、粉末の一部を、臨在の幕屋の中の掟の箱の前に置く。 わたしはそこであなたに会う。 これはあなたたちにとって神聖なものである。 37 同じ割合で作った香を私用に使ってはならない。 あなたは、それを主に対して聖なるものとしなければならない。
38 また、類似したものを作って、香りを楽しもうとする者は、すべてその民から断たれる。
技術者の任命 31
1 主はモーセにおう仰せになった。
2 見よ、わたしはユダ族のフルの孫、ウリの子ベツァルエルを名指しで呼び、 3 彼に神の霊を満たし、どのような工芸にも知恵と英知と知識をもたせ、 4 金、銀、青銅による細工に意匠をこらし、 5 宝石をはめ込み、木に彫刻するなど、すべての工芸をさせる。 6 わたしはダン族のアヒサマクの子オホリアブを、彼の助手にする。 わたしは、心に知恵あるすべての者の心に知恵を授け、わたしがあなたに命じたものをすべて作らせる。 7 すなわち、臨在の幕屋、掟の箱、その箱の上の贖いの座、幕屋のすべての祭具、 8 机とその祭具、純金の燭台とそのすべての祭具、香をたく祭壇、 9 焼き尽くす捧げ物の祭壇とそのすべての祭具、洗盤とその台、 10 祭司アロンのために織った衣服と祭服、アロンの子らが祭司として仕えるときの衣服、 11 性別の油、聖所でたく香ばしい香である。 彼らはわたしが命じたとおりに作らねばならない。
安息日を厳守せよ
12 主はモーセに言われた。
13 あなたは、イスラエルの人々に告げてこう言いなさい。
あなたたちは、わたしの安息日を守らねばならない。 それは、代々にわたってわたしとあなたたちとの間のしるしであり、わたしがあなたたちを聖別する主であることを知るためのものである。 14 安息日を守りなさい。 それは、あなたたちにとって聖なる日である。 それを汚す者は必ず死刑に処せられる。 だれでもこの日に仕事をする者は、民の中から断たれる。 15 六日の間は仕事をすることができるが、七日目は、主の聖なる、最も厳かな安息日である。 だれでも安息日に仕事をする者は必ず死刑に処せられる。 16 イスラエルの人人は安息日を守り、それを代々にわたって永遠の契約としなさい。 17 これは、永遠にわたしとイスラエルの人々との間のしるしである。 主は六日の間に天地を創造し、七日目に御業をやめて憩われたからである。
18 主はシナイ山でモーセと語り終えられたとき、二枚の掟の板、すなわち、神の指で記された石の板をモーセにお授けになった。
金の子牛 32
1 モーセが山からなかなか下りて来ないのを見て、民がアロンのもとに集まって来て、「さあ、我々に先立って進む神々を造ってください。 エジプトの国から我々を導き上った人、あのモーセがどうなってしまったのか分からないからです」と言うと、 2 アロンは彼らに言った。 「あなたたちの妻、息子、娘らが着けている金の耳輪をはずし、わたしのところに持って来なさい。」 3 民は全員、着けていた金の耳輪をはずし、アロンのところに持って来た。 4 彼はそれを受け取ると、のみで型を作り、若い雄牛の鋳造を造った。 すると彼らは、「イスラエルよ、これこそあなたをエジプトの国から導き上ったあなたの神々だ」と言った。 5 アロンはこれを見て、その前に祭壇を築き、「明日、主の祭りを行なう」と宣言した。 6 彼らは次の朝早く起き、焼き尽くす捧げ物をささげ、和解の捧げ物を供えた。 民は座って飲み食いし、立って戯れた。 7 主はモーセに仰せになった。 「直ちに下山せよ。 あなたがエジプトの国から導き上った民は堕落し、 8 早くもわたしが命じた道からそれて、若い雄牛の鋳造を造り、それにひれ伏し、いけにえをささげて、『イスラエルよ、これこそあなたをエジプトの国から導き上った神々だ』と叫んでいる。」 9 主は更に、モーセに言われた。 「わたしはこの民を見てきたが、実にかたくなな民である。 10 今は、わたしを引き止めるな。 わたしの怒りは彼らに対して燃え上がっている。 わたしは彼らを滅ぼし尽くし、あなたを大いなる民とする。」 11 モーセは主なる神をなだめて言った。 「主よ、どうして御自分の民に向かって怒りを燃やされるのですか。 あなたが大いなる御力と強い御手をもってエジプトの国から導き出された民ではありませんか。 12 どうしてエジプト人に、『あの神は、悪意をもって彼らを山で殺し、地上から滅ぼし尽くすために導き出した』と言わせてよいでしょうか。 どうか、燃える怒りをやめ、御自分の民にくだす災いを思い直してください。 13 どうか、あなたの僕であるアブラハム、イサク、イスラエルを思い起こしてください。 あなたは彼らに自ら誓って、『わたしはあなたたちの子孫を天の星のように増やし、わたしが与えると約束したこの土地をことごとくあなたたちの子孫に授け、永久にそれを継がせる』と言われたではありませんか。」 14 主は御自身の民にくだす、と告げられた災いを思い直された。
15 モーセが身を翻して山を下るとき、二枚の掟の板が彼の手にあり、板には文字が書かれていた。 その両面に、表にも裏にも文字が書かれていった。 16 その板は神御自身が作られ、筆跡も神御自身のものであり、板に彫り刻まれていた。
17ヨシュアが民のどよめく声を聞いて、モーセに、「宿営で戦いの声がします」と言うと、 18 モーセは言った。
「これは勝利の叫び声でも敗戦の叫び声でもない。
わたしが聞くのは歌をうたう声だ。」
19 宿営に近づくと、彼は若い雄牛の像と踊りを見た。 モーセは激しく怒って、手に持っていた板を投げつけ、山のふもとで砕いた。 20 そして、彼らが造った若い雄牛の像を取って火で焼き、それを粉々に砕いて水の上にまき散らし、イスラエルの人々に飲ませた。 21 モーセはアロンに、「この民があなたに一体何をしたというので、あなたはこの民にこんな大きな罪を犯させたのか」と言うと、 22 アロンは言った。 「わたしの主よ、どうか怒らないでください。 この民が悪いことはあなたもご存じです。 23 彼らはわたしに、『我々に先立って進む神々を造ってください。 我々をエジプトの国から導き上った人、あのモーセがどうなってしまったのか分からないからです』と言いましたので、 24 わたしが彼らに、『だれでも金を持っている者は、それをはずしなさい』と言うと、彼らはわたしに差し出しました。 わたしがそれを火に投げ入れると、この若い雄牛ができたのです。」
25 モーセはこの民が勝手なふるまいをしたこと、アロンが彼らに勝手なふるまいをさせて、敵対する者の嘲りの種となったことを見ると、 26 宿営の入り口に立ち、「だれでも主につく者は、わたしのもとに集まれ」と言った。 レビの子らが全員彼のもとに集まると、 27 彼らに、「イスラエルの神、主がこう言われる。 『おのおの、剣を帯び、宿営を入り口から入り口まで行き巡って、おのおの自分の兄弟、友、隣人を殺せ』」と命じた。 28 レビの子らは、モーセの命じたとおりに行った。 その日、民のうちで倒れた者はおよそ三千人であった。 29 モーセは言った。 「おのおの自分の子や兄弟に逆らったから、今日、あなたたちは主の祭司職に任命された。 あなたたちは今日、祝福を受ける。」
30 翌日になって、モーセは民に言った。 「お前たちは大きな罪を犯した。 今、わたしは主のもとに上って行く。 あるいは、お前たちの罪のために贖いができるかもしれない。 31 モーセは主のもとに戻って言った。 「ああ、この民は大きな罪を犯し、金の神を造りました。 32 今、もしもあなたが彼らの罪をお赦しくださるのであれば…。 もし、それがかなわなければ、どうかこのわたしをあなたが書き記された書の中から消し去ってください。」 33 主はモーセに言われた。 「わたしに罪を犯した者はだれでも、わたしの書から消し去る。 34 しかし今、わたしがあなたに告げた所にこの民を導いて行きなさい。 見よ、わたしの使いがあなたに先立って行く。 しかし、私の裁きの日に、わたしは彼らをその罪ゆえに罰する。」 35 主は民がアロンに若い雄牛を造らせたので、民を打たれたのである。
民の嘆き 33
1 主はモーセに仰せになった。 「さあ、あなたも、あなたがエジプトの国から導き上った民も、ここをたって、わたしがアブラハム、イサク、ヤコブに誓って、『あなたの子孫にそれを与える』と言った土地に上りなさい。 2 わたしは、使いをあなたに先立って遣わし、カナン人、アモリ人、ヘト人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人を追い出す。 3 あなたは乳と蜜の流れる土地に上りなさい。 しかし、わたしはあなたの間にあって上ることはしない。 途中であなたを滅ぼしてしまうことがないためである。 あなたはかたくなな民である。
4 民はこの悪い知らせを聞いて嘆き悲しみ、一人も飾りを身に着けなかった。 5 主がモーセに、「イスラエルの人々に告げなさい。 『あなたたちはかたくなな民である。 わたしがひとときでも、あなたの間にあって上るならば、あなたを滅ぼしてしまうかもしれない。 直ちに、身に着けている飾りを取り去りさない。 そうすれば、わたしはあなたをどのようにするか考えよう』」と言われたので、 6 イスラエルの人々は、ホレブ山をたって後、飾りをはずした。
臨在の幕屋
7 モーセは一つの天満を取って、宿営の外の、宿営から遠く離れた所に張り、それを臨在の幕屋と名付けた。 主に伺いを立てる者はだれでも、宿営の外にある臨在の幕屋に行くのであった。 8 モーセが幕屋に出て行くときには、民は全員起立し、自分の天幕の入り口に立って、モーセが幕屋に入ってしまうまで見送った。 9 モーセが幕屋に入ると、雲の柱が降りて来て幕屋の入り口に立ち、主はモーセに語られた。 10 雲の柱が幕屋の入り口に立つのを見ると、民は全員起立し、おのおの自分の天幕の入り口で礼拝した。 11 主は人がその友と語るように、顔と顔を合わせてモーセに語られた。 モーセは宿営に戻ったが、彼の従者である若者、ヌンの子ヨシュアは幕屋から離れなかった。
民と共に行かれる主
12 モーセは主に言った。 「あなたはわたしに、『この民を率いて上れ』と言われました。 しかし、わたしと共に遣わされる者をお示しになりません。 あなたは、また、『わたしはあなたを名指しで選んだ。 わたしはあなたに好意を示す』と言われました。 13 お願いです。 もしあなたがわたしに御好意を示してくださるのでしたら、どうか今、あなたの道をお示しください。 そうすれば、わたしはどのようにして、あなたがわたしに御好意を示してくださるか知りうるでしょうか。 どうか、この国民があなたの民であることも目にお留めください。 14 主が、「わたしが自ら同行し、あなたに安息を与えよう」と言われると、 15 モーセは主に言った。 「もし、あなた御自身が行ってくださらないのなら、わたしたちをここから上らせないでください。 16 一体何によって、わたしとあなたの民に御好意を示してくださることが分かるでしょうか。 あなたがわたしたちと共に行ってくださることによってではありませんか。 そうすればわたしとあなたの民は、地上のすべての民と異なる特別なものとなるでしょう。」
17 主はモーセに言われた。 「わたしは、あなたのこの願いもかなえよう。 わたしはあなたに好意を示し、あなたを名指しで選んだからである。」
主の栄光
18 モーセが、「どうか、あなたの栄光をお示しください」と言うと、 19 主は言われた。 「わたしはあなたの前にすべてのわたしの善い賜物を通らせ、あなたの前に主という名を宣言する。 わたしは恵もうとする者を恵み、憐れもうとする者を憐れむ。」 20 また言われた。 「あなたはわたしの顔を見ることはできない。 人はわたしを見て、なお生きていることはできないからである。」 21 更に、主は言われた。 「見よ、一つの場所がわたしの傍らにある。 あなたはその岩のそばに立ちなさい。 22 わが栄光が通り過ぎるとき、わたしはあなたをその岩の裂け目に入れ、わたしが通り過ぎるまで、わたしの手であなたを覆う。 23 わたしが手を離すとき、あなたはわたしの後ろを見るが、わたしの顔は見えない。」
戒めの再授与 34
1 主はモーセに言われた。 「前と同じ石の板を二枚切りなさい。 わたしは、あなたが砕いた、前の板に書かれていた言葉を、その板に記そう。 2 明日の朝までにそれを用意し、朝、シナイ山に登り、山の頂でわたしの前に立ちなさい。 3 だれもあなたと一緒に登ってならない。 山のどこにも人の姿があってはならず、山のふもとで羊や牛の放牧もしてはならない。」
4 モーセは前と同じ石の板を二枚切り、朝早く起きて、主が命じたとおりシナイ山に登った。 手には二枚の石に板を携えていた。 5 主は雲のうちにあって降り、モーセと共にそこに立ち、主の御名を宣言された。 6 主は彼の前を通り過ぎて宣言された。 「主、主、憐れみ深く恵みに富む神、忍耐強く、慈しみとまことに満ち、 7 幾千代にも及ぶ慈しみを守り、罪と背きと過ちを赦す。 しかし罰すべき者を罰せずにはおかず、父祖の罪を、子、孫に三代、四代までも問う者。」 8 モーセは急いで地にひざまずき、ひれ伏して、 9 言った。 「主よ、もし御好意を示してくださいますならば、主よ、わたしたちの中にあって進んでください。 確かにかたくなな民ですが、わたしたちの罪と過ちを赦し、わたしたちをあなたの嗣業として受け入れてください。」
10 主は言われた。 「見よ、わたしは契約を結ぶ。 わたしはあなたの民すべての前で驚くべき業を行う。 それは全地のいかなる民にもいまだかってなされたことのない業である。 あなたと共にいるこの民は皆、主の業を見るだろう。 わたしがあなたと共にあって行うことは恐るべきものである。 11 わたしが、今日命じることを守りなさい。 見よ、わたしはあなたの前から、 アモリ人、カナン人、ヘト人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人を追い出す。 12 よく注意して、あなたがこれから入って行く土地の住民と契約を結ばないようにしなさい。 それがあなたの間で罠とならないためである。 13 あなたたちは、彼らの祭壇を引き倒し、石柱を打ち砕き、アシェラ像を切り倒しなさい。 14あなたはほかの神を拝んではならない。 主はその名を熱情といい、熱情の神である。 15 その土地の住民と契約を結ばないようにしなさい。 彼らがその神々を求めて姦淫を行い、その神々にいけにえをささげるとき、あなたを招き、あなたはそのいけにえを食べるようになる。 16 あなたが彼らの娘を自分の息子にめとると、彼女たちがその神々と姦淫を行い、あなたの息子たちを誘ってその神々姦淫を行わせるようになる。
17 あなたは鋳造の神々を造ってはならない。
18 あなたは除酵祭を守りなさい。 七日の間、アビブの月の定めの日に、わたしが命じた酵母を入れないパンを食べなさい。 アビブの月に、あなたはエジプトを出たからです。 19 初めに胎を開くものはすべて、わたしのものである。 あなたの家畜である牛や羊の初子が雄であるならば、すべて別にしなければならない。 20 ただし、ろばの初子の場合は、子羊をもって贖わねばならない。 もし、贖わない場合は、その首を折りなさい。 あなたの初子のうち、男の子はすべて贖わねばならない。
何も持たず、わたしの前に出てはならない。
21 あなたは六日の間働き、七日目には仕事をやめねばならない。 耕作の時にも、収穫の時にも、仕事をやめねばならない。
22 あなたは、小麦の収穫の初穂の時に、七週祭を祝いなさい。
年の終わりに、取り入れの祭りを祝いなさい。
23 年に三度、男子はすべて、主なるイスラエルの神、主の御前に出ねばならない。 24 わたしはあなたの前から国々の民を追い出し、あなたの国境を広くするが、あなたが年に三度、あなたの神、主の御前に出るために上るとき、だれもあなたの土地を侵すことはないであろう。
25 あなたは、わたしにささげるいけにえの血を、酵母を入れたパンと共にささげてはならない。 過越祭のいけにえは翌朝まで残しておいてはならない。
26 あなたは、土地の最上の初物をあなたの神、主の宮に携えて来なければならない。
あなたは子山羊をその母の乳で煮てはならない。」
27 主はモーセに言われた。 「これらの言葉を書き記しなさい。 わたしは、これらの言葉に基づいてあなたと、またイスラエルと契約を結ぶ。
28 モーセは主と共に四十日四十夜、そこにとどまった。 彼はパンも食べず、水も飲まなかった。 そして、十の戒めからなる契約の言葉を板に書き記した。
モーセの顔の光
29 モーセがシナイ山を下ったとき、その手には二枚の掟の板があった。 モーセは、山から下ったとき、自分が神と語っている間に、自分の顔の肌が光を放っているのを知らなかった。 30 アロンとイスラエルの人々がすべてモーセを見ると、なんと、彼の顔の肌は光を放っていた。 彼らは恐れて近づけなかったが、 31 モーセが呼びかけると、アロンと共同体の代表者は全員彼のもとに戻って来たので、モーセは彼らに語った。 32 その後、イスラエルの人々が皆、近づいて来たので、彼はシナイ山で主が彼に語られたことをことごとく彼らに命じた。 33 モーセはそれを語り終わったとき、自分の顔に覆いを掛けた。
34 モーセは、主の御前に行って主と語るときはいつでも、出て来るまで覆いをはずしていた。 彼は出て来ると、命じられたことをイスラエルの人々に語った。 35 イスラエルの人々がモーセの顔を見ると、モーセの顔の肌は光を放っていた。 モーセは、再び御前に行って主と語るまで顔に覆いを掛けた。
安息日の厳守 35
1 モーセはイスラエルの人々の共同体全体を集めて言った。
「これが主が行うよう命じられた言葉である。 2 六日の間は仕事をすることができるが、第七日はあなたたちにとって聖なる日であり、主の最も厳かな安息日である。 その日に仕事をする者はすべて死刑に処せられる。 3 安息日には、あなたたちの住まいのどこででも火をたいてはならない。」
幕屋建設の準備
4 モーセはイスラエルの人々の共同体全体に告げた。
「これは主が命じられた言葉である。 5 「あなたたちの持ち物のうちから、主のもとに献納物を持って来なさい。 すべて進んで心からささげようとする者は、それを主への献納物として携えなさい。 すなわち、金、銀、青銅、 6 青、紫、緋色の毛糸、亜麻糸、山羊の毛、 7 赤く染めた雄羊の毛皮、じゅごんの皮、アカシア材、 8 ともし火のための油、聖別の油と香草の香とに用いる種々の香料、 9 エフォドや胸当てにはめ込む縞めのうの石やその他の宝石類である。
10 また、あなたたちのうちの、心に知恵のある者をすべて集めて、主が命じられた物をことごとく作らせなさい。 11 すなわち、幕屋、天幕、覆い、留め金、壁板、横木、柱、台座、 12 掟の箱とそれを担ぐ棒、贖いの座、至聖所の垂れ幕、 13 机とそれを担ぐ棒、そのすべての祭具、供えのパン、 14 燭台とその祭具、ともし火皿、灯油、 15 香をたく祭壇とそれを担ぐ棒、聖別の油、香草の香、幕屋の入り口に掛ける幕、 16 焼き尽くす捧げ物の祭壇とそれに付く青銅の格子、それを担ぐ棒、およびそのすべての祭具、洗盤と台、 17 庭の幔幕とその柱と台座、庭の入り口の幕 18 幔幕の杭と庭の杭、およびその綱、 19 聖所で仕えるための衣服、祭司アロンのための祭服、その子らが祭司として仕えるための衣服がそれである。
20 イスラエルの人々の共同体全体はモーセの前を去った。 21 心動かされ、進んで心からする者は皆、臨在の幕屋の仕事とすべての作業、および祭服などに用いるため、主への献納物を携えていた。 22 進んで心からする者は皆、男も女も次々と襟留め、耳輪、指輪、首飾り、およびすべての金の飾りを携えて来て、みな金の献納物として主にささげた。 23 青、紫、緋色の毛糸、亜麻糸、山羊の毛、赤く染めた雄羊の毛皮、およびじゅごんの皮を持っている者も皆、それを携えて来た。 24 銀や青銅を献納物としようとする者は皆、それを主への献納物として携えて来た。 また、アカシヤ材を持っている者は皆、奉仕の仕事のためにそれを携えて来た。 25 心に知恵を持つ女は皆、自分の手で紡ぎ、紡いだ青、紫、緋色の毛糸および亜麻糸を携えて来た。 26 心動かされ、知恵に満ちた女たちは皆、山羊の毛を紡いだ。 27 指導者たちはエフォドや胸当てにはめ込むラピス・ラズリやその他の宝石類、 28 香料、灯油、聖別の油、および香草の香を携えて来た。 29 モーセを通じて主が行うようお命じになったすべての仕事のために、進んで心からするイスラエルの人々は、男も女も皆、随意の捧げ物を主に携えて来た。
30 モーセはイスラエルの人々に言った。
「見よ、主は、ユダ族のフルの孫、ウリの子ベツァルエルを名指しで呼び、 31 彼に神の霊を満たし、どのような工芸にも知恵と英知と知識を持たせ、 32 金、銀、青銅による細工に意匠をこらし、 33 宝石をはめ込み、木に彫刻するなど、すべての細かい工芸に従事させ、 34 更に、人を教える力をお与えになった。 主は、彼とダン族のアヒサマクの子オホリアブに、 35 知恵の心を満たして、すべての工芸に従事させ、彫刻師、意匠を考案する者、更に、青、紫、緋色の毛糸、亜麻糸を使ってつづれ織や縁取りをする者など、あらゆる種類の工芸に従事する者とし、意匠を考案する者とされた。
36
1 ベツァルエルとオホリアブ、および知恵と英知を主から授けられ、聖所の建設のすべての仕事を行うに必要な知識を与えられた。 心に知恵のある者は、すべて主が命じられたとおり、作業に当たらねばならない。」
2 モーセは、ベツァルエルとオホリアブ、および主から心に知恵を授けられた、心に知恵のあるすべての者、すなわち、心動かされたすべての者をこの仕事に従事させるために呼び集めた。 3 彼らは、イスラエルの人々が聖所建設の仕事を行うために携えて来たすべての献納物を、モーセから受け取ったが、人々はなおも、毎朝、随意の捧げ物を彼のもとに携えて来たので、 4 聖所のあらゆる仕事に携わる知恵のある者は皆、それぞれの仕事場を離れて来て、 5 モーセに言った。 「この民は、主がお命じになった仕事のために、必要以上の物を携えて来ます。」
6 モーセが宿営に、「男も女も、聖所の献納物のためにこれ以上務める必要はない」との命令を伝えさせたので、民は携えて行くのをやめた。 7 既にささげられた物は、作業全体を仕上げるのに十分で有り余るほどあった。
(3) 出エジプト記 エジプトでのイスラエル 1-1 〜幕屋建設の準備 36-7
1 ヤコブと共に一家を挙げてエジプトへ下ったイスラエルの子らの名前は次のとおりである。 2 ルベン、シメオン、レビ、ユダ、 3 イサカル、ゼブルン、ベニヤミン、 4 ダン、ナフタリ、ガド、アシェル。 5 ヤコブの腰から出た子、孫の数は全部で七十人であった。 ヨセフは既にエジプトにいた。
6 ヨセフもその兄弟たちも、その世代の人々も皆、死んだが、 7 イスラエルの人々は子を産み、おびただしく数を増し、ますます強くなって国中に溢れた。 8 そのころ、ヨセフのことを知らない新しい王が出てエジプトを支配し、 9 国民に警告した。
「イスラエル人という民は、今や、我々にとってあまりに数多く、強力になりすぎた。 10 抜かりなく取り扱い、これ以上の増加を食い止めよう。 一度戦争が起これば、敵側に付いて我々と戦い、この国を取るかもしれない。」
11エジプト人はそこで、イスラエルの人々の上に強制労働の監督を置き、重労働を課して虐待した。 イスラエルの人々はファラオの物資貯蔵の町、ピトムとラメセスを建設した。 12 しかし、虐待されればされるほど彼らは増え広がったので、エジプト人はますますイスラエルの人々を嫌悪し、 13 イスラエルの人々を酷使し、14 粘土こね、れんが焼き、あらゆる農作業などの重労働によって彼らの生活を脅かした。 彼らが従事した労働はいずれも過酷を極めた。
男児殺害の命令
15 エジプト王は二人のヘブライ人の助産婦に命じた。 一人はシフラといい、もう一人はプアといった。 16 「お前たちがヘブライ人の女の出産を助けるときには、子供の性別を確かめ、男の子ならば殺し、女の子ならば生かしておけ。」 17 助産婦はいずれも神を畏れていたので、エジプト王が命じたとおりにはせず、男の子も生かしておいた。 18 エジプト王は彼女たちを呼びつけて問いただした。 「どうしてこのようなことをしたのだ。 お前たちは男の子を生かしているではないか。」 19 助産婦はファラオに答えた。 「ヘブライ人の女はエジプト人の女性とは違います。 彼女たちは丈夫で、助産婦が行く前に産んでしまうのです。」 20 神はこの助産婦たちに恵みを与えられた。 民は数を増し、甚だ強くなった。 21 助産婦たちは神を畏れていたので、神は彼女たちにも子宝を恵まれた。
モーセの生い立ち
22 ファラオは全国民に命じた。 「生まれた男の子は、一人残らずナイル川にほうり込め。 女の子は皆、生かしておけ。」
2
1 レビの家の出のある男が同じレビ人の娘をめとった。 2 彼女は身ごもり、男の子を産んだが、その子がかわいかったのを見て、三か月の間隠しておいた。 3 しかし、もはや隠しきれなくなったので、パピルスの籠を用意し、アスファルトとピッチで防水し、その中に男の子を入れ、ナイル河畔の葦の茂みの間に置いた。
4 その子の姉が遠くに立って、どうなることかと様子を見ていると、 5 そこへ、ファラオの王女が水浴びをしようと川に下りて来た。 その間侍女たちは川岸を行き来していた。 王女は、葦の茂みの間に籠をみつけたので、仕え女をやって取って来させた。 6 開けてみると赤ん坊がおり、しかも男の子で、泣いていた。 王女はふびんに思い、「これは、きっと、ヘブライ人の子です」と言った。 7 そのとき、その子の姉がファラオの王女に申し出た。 「この子に乳を飲ませるヘブライ人の乳母を呼んで参りましょうか。」
8 「そうしておくれ」と、王女が頼んだので、娘は早速その子の母を連れて来た。 9 王女が、「この子を連れて行って、わたしに代わって乳を飲ませておやり。 手当てはわたしが出しますから」と言ったので、母親はその子を引き取って乳を飲ませ、 10その子が大きくなると、王女のもとへ連れていった。 その子はこうして、王女の子となった。 王女は彼をモーセと名付けて言った。 「水の中からわたしが引き上げた(マーシャー)のですから。」
エジプトからの逃亡
11 モーセが成人したころのこと、彼は同胞のところへ出て行き、彼らが重労働に服しているのを見た。 そして一人のエジプト人が、同胞であるヘブライ人の一人を打っているのを見た。 12 モーセは辺りを見回し、だれもいないのを確かめると、そのエジプト人を打ち殺して死体を砂に埋めた。 13 翌日、また出て行くと、今度はヘブライ人どうしが二人でけんかをしていた。 モーセが、「どうして自分の仲間を殴るのか」と悪い方をたしなめると、 14 「誰がお前を我々の監督や裁判官にしたのか。 お前はあのエジプト人を殺したように、このわたしを殺すつもりか」と言い返したので、モーセは恐れ、さてはあの事が知れたのかと思った。 15 ファラオはこの事を聞き、モーセを殺そうと尋ね求めたが、モーセはファラオの手を逃れてミディアン地方にたどりつき、とある井戸の傍らに腰を下ろした。 16 さて、ミディアンの祭司に七人の娘がいた。 彼女たちがそこへ来て水をくみ、水ぶねを満たし、父の羊の群れに飲ませようとしたところへ、 17 羊飼いの男たちが来て、娘たちを追い払った。 モーセは立ち上がって娘たちを救い、羊の群れに水を飲ませてやった。 18 娘たちが父レウエルのところに帰ると、父は、「どうして今日はこんなに早く帰れたのか」と尋ねた。 19 彼女たちは言った。
「一人のエジプト人が羊飼いの男たちからわたしたちを助け出し、わたしたちのために水をくんで、羊に飲ませてくださいました。」
20 父は娘たちに言った。 「どこにおられるのだ、その方は。 どうして、お前たちはその方をほうっておくのだ。 呼びに行って、食事を差し上げなさい。」
21 モーセがこの人のもとにとどまる決意をしたので、彼は自分の娘ツィポラをモーセと結婚させた。 22 彼女は男の子を産み、モーセは彼をゲルショムと名付けた。 彼が、「わたしは異国にいる寄留者(ゲール)だ」と言ったからである。
23 それから長い年月がたち、エジプト王は死んだ。 その間イスラエルの人々は労働のゆえにうめき、叫んだ。 労働のゆえに助けを求める彼らの叫び声は神に届いた。 24 神はその嘆きを聞き、アブラハム、イサク、ヤコブとの契約を思い起こされた。 25 神はイスラエルの人々を顧み、御心に留められた。
モーセの召命 3
1 モーセは、しゅうとでありミディアンの祭司であるエトロの羊の群れ飼っていたが、あるとき、その群れを荒れ野の奥へ追って行き、神の山ホレブに来た。 2 そのとき、柴の間に燃え上がっている炎の中に主の御使いが現れた。 彼が見ると、見よ、柴は火に燃えているのに、柴は燃え尽きない。 3 モーセは言った。 「道をそれて、この不思議な光景を見届けよう。 どうしてあの柴は燃え尽きないのだろう。」
4 主は、モーセが道をそれて見に来るのを御覧になった。 神は柴の間から声をかけられ、「モーセよ、モーセよ」と言われた。 彼が、「はい」と答えると、 5 神が言われた。 「ここに近づいてはならない。 足から履物を脱ぎなさい。 あなたの立っている場所は聖なる土地だから。」 6 神は続けて言われた。 「わたしはあなたの父の神である。 アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である。」 モーセは、神を見ることを恐れて顔を覆った。
7 主は言われた。 「わたしは、エジプトにいるわたしの民の苦しみをつぶさに見、追い使う者のゆえに叫ぶ彼らの叫び声を聞き、その痛みを知った。 8 それゆえ、わたしは降って行き、エジプト人の手から彼らを救い出し、この国から、広々としたすばらしい土地、乳と蜜の流れる土地、カナン人、ヘト人、アモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人の住む所へ彼らを導き上る。
9 見よ、イスラエルの人々の叫び声が、今、わたしのもとに届いた。 また、エジプト人が彼らを圧迫する有様を見た。 10 今、行きなさい。 わたしはあなたをファラオのもとに遣わす。 わが民イスラエルの人々をエジプトから連れ出すのだ。」
11モーセは神に言った。 「わたしは何者でしょう。 どうして、ファラオのもとに行き、しかもイスラエルの人々をエジプトから導き出さねばならないのですか。」 12 神は言われた。 「わたしは必ずあなたと共にいる。 このことこそ、わたしがあなたを遣わすしるしである。 あなたが民をエジプトから導き出したとき、あなたたちはこの山で神に仕える。」
13 モーセは神に尋ねた。
「わたしは、今、イスラエルの人々のところへ参ります。 彼らに、『あなたたちの先祖の神が、わたしをここに遣わされたのです』と言えば、彼らは、『その名は一体何か』と言うにちがいありません。 彼らに何と答えるべきでしょうか。」
14 神はモーセに、「わたしはある。 わたしはあるという者だ」と言われ、また、「イスラエルの人々にこう言うがよい。 『わたしはある』という方がわたしをあなたたちに遣わされたのだと。」 15 神は、更に続けてモーセに命じられた。
「イスラエルの人々にこう言うがよい。 あなたたちの先祖の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である主がわたしをあなたたちのもとに遣わされた。
これこそ、とこしえにわたしの名
これこそ、世々にわたしの呼び名
16 さあ、行って、イスラエルの長老を集め、言うがよい。 『あなたたちの先祖の神、アブラハム、イサク、ヤコブの神である主がわたしに現れて、こう言われた。 わたしはあなたたちを顧み、あなたたちがエジプトで受けてきた仕打ちをつぶさに見た。 17 あなたたちを苦しみのエジプトから、カナン人、ヘト人、アモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人の住む乳と蜜の流れる土地へ導き上ろうと決心した』と。 18 彼らはあなたの言葉に従うであろう。 あなたはイスラエルの長老たちを伴い、エジプト王のもとに行って彼に言いなさい。 『ヘブライ人の神、主がわたしたちに出現されました。 どうか、今、三日の道のりを荒れ野に行かせて、わたしたちの神、主に犠牲をささげさせてください。』 19 しかしわたしは、強い手を用いなければ、エジプト王が行かせないことを知っている。 20 わたしは自ら手を下しあらゆる驚くべき業をエジプトの中で行い、これを打つ。 その後初めて、王はあなたたちを去らせるであろう。
21 そのとき、わたしは、この民にエジプト人の好意を得させるようにしよう。 出国に際して、あなたたちは何も持たずに出ることはない。 22 女は皆、隣近所や同居の女たちに金銀の装身具や外套を求め、それを自分の息子、娘の身に着けさせ、エジプト人からの分捕り物としなさい。
使命に伴うしるし 4
1 モーセは逆らって、「それでは彼らは、『主がお前などに現れるはずがない』と言って、信用せず、わたしの言うことを聞かないでしょう」と言うと、 2 主は彼に、「あなたが手に持っているものは何か」と言われた。 彼が、「杖です」と答えると、 3 主は、「それを地面に投げよ」と言われた。 彼が杖を地面に投げると、それが蛇になったのでモーセは飛びのいた。
4 主はモーセに、「手を伸ばして、尾をつかめ」と言われた。 モーセが手を伸ばしてつかむと、それは手の中で杖に戻った。 5 「こうすれば、彼らは先祖の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神、主があなたに現れたことを信じる。」 6 主は更に、「あなたの手をふところに入れなさい」と言われた。 モーセは手をふところに入れ、それから出してみると、驚いたことには、手は重い皮膚病にかかり、雪のように白くなっていた。 7 主が、「手をふところに戻すがよい」と言われたので、ふところに戻し、それから出してみると、元の肌になっていた。 8 「たとえ、彼らがあなたを信用せず、最初のしるしが告げることは信じる。 9 しかし、この二つのしるしのどちらも信ぜず、またあなたの言うことも聞かないならば、ナイル川の水をくんできて乾いた地面にまくがよい。 川からくんできた水は地面で血に変わるであろう。」
10 それでもなお、モーセは主に言った。 「ああ、主よ。 わたしはもともと弁が立つ方ではありません。 あなたが僕にお言葉をかけてくださった今でもやはりそうです。 全くわたしは口が重く、舌の重い者なのです。」 11 主は彼に言われた。 「一体、誰が人間に口を与えたのか。 一体、誰が口を利けないようにし、耳を聞こえないようにし、目を見えるようにし、また見えなくするのか。 主なるわたしではないか。 12 さあ、行くがよい。 このわたしがあなたの口と共にあって、あなたが語るべきことを教えよう。 13 モーセは、なおも言った。 「ああ主よ。 どうぞ、だれかほかの人を見つけてお遣わしください。」
14 主はついに、モーセに向かって怒りを発して言われた。
「あなたにはレビ人アロンという兄弟がいるではないか。 わたしは彼が雄弁なことを知っている。 その彼が今、あなたに会おうとして、こちらに向かっている。 あなたに会ったら、心から喜ぶであろう。 15 彼によく話し、語るべき言葉を彼の口に託すがよい。 わたしはあなたの口と共にあり、また彼の口と共にあって、あなたたちのなすべきことを教えよう。 16 彼はあなたに代わって民に語る。 彼はあなたの口となり、あなたは彼に対して神の代わりとなる。 17 あなたはこの杖を手に取って、しるしを行うがよい。
モーセ、エジプトに戻る
18 モーセがしゅうとのエトロのもとに帰って、「エジプトにいる親族のもとへ帰らせてください。 まだ元気でいるかどうか見届けたいのです」と言うと、エトロは言った。 「無事で行きなさい。」
19 主は、ミディアンでモーセに言われた。
「さあ、エジプトに帰るがよい、あなたの命をねらっていた者は皆、死んでしまった。」 20 モーセは、妻子をろばに乗せ、手には神の杖を携えて、エジプトの国を指して帰って行った。 21 主はモーセに言われた。
「エジプトに帰ったら、わたしがあなたの手に授けたすべての奇跡を、心してファラオの前で行うがよい。 しかし、わたしが彼の心をかたくなにするので、王は民を去らせないであろう。 22 あなたはファラオに言うがよい。 主はこう言われた。 『イスラエルはわたしの子、わたしの長子である。 23 わたしの子を去らせてわたしに仕えさせようと命じたのに、お前はそれを断った。 それゆえ、わたしはお前の子、お前の長子を殺すであろう』と。」
24 途中、ある所に泊まったとき、主はモーセと出会い、彼を殺そうとされた。 25 ツィポラは、とっさに石刀を手にして息子の包皮を切り取り、それをモーセの両足に付け、「わたしにとって、あなたの血の花婿です」と叫んだので、 26 主は彼を放された。 彼女は、そのとき、割礼のゆえに「血の花婿」と言ったのである。 27 主はアロンに向かって、「さあ、荒れ野へ行って、モーセに会いなさい」と命じられたので、彼は出かけて行き、神の山でモーセと会い、口づけした。 28 モーセは自分を遣わされた主の言葉と、命じられたしるしをすべてアロンに告げた。 29 モーセはアロンを伴って出かけ、イスラエルの人々の長老を全員集めた。 30 アロンは主がモーセに語られた言葉をことごとく語り、民の面前でしるしを行ったので、 31 民は信じた。 また、主が親しくイスラエルの人々を顧み、彼らの苦しみを御覧になったということを聞き、ひれ伏して礼拝した。
ファラオの交渉 5
1 その後、モーセとアロンはファラオのもとに出かけて行き、言った。 「イスラエルの神、主がこう言われました。 『わたしの民を去らせて、荒れ野でわたしのために祭りを行わせなさい』と。 2 ファラオは、「主とは一体何者なのか。 どうして、その言うことをわたしが聞いて、イスラエルを去らせねばならないのか。 わたしは主など知らないし、イスラエルを去らせはしない」と答えた。 3 二人は言った。 「ヘブライ人の神がわたしたちに出現されました。 どうか、三日の道のりを荒れ野に行かせて、わたしたちの神、主に犠牲をささげさせてください。 そうしないと、神はきっと疫病か剣でわたしたちを滅ぼされるでしょう。」
4 エジプト王は彼らに命じた。 「モーセとアロン、お前たちはなぜ彼らを仕事から引き離そうとするのだ。 お前たちも自分の労働に戻るがよい。」 5 ファラオは更に、言った。 「この国にいる者の数が増えているのに、お前たちは彼らに労働をやめさせようとするのか。」 6 ファラオはその日、民を追い使う者と下役の者に命じた。 7 「これからは、今までのように、彼らにれんがを作るためのわらを与えるな。 わらは自分たちで集めさせよ。 8 しかも、今まで彼らが作ってきた同じれんがの数量を課し、減らしてはならない。 彼らは怠け者なのだ。 だから、自分たちの神に犠牲をささげに行かせてくれなどと叫ぶのだ。 9 この者たちは、仕事をきつくすれば、偽りの言葉に心を寄せることはなくなるだろう。」
10 民を追い使う者と下役の者は出て行き、民に向かって、「ファラオはこう言われる。 『今後、お前たちにわらは一切与えない。 11 お前たちはどこにでも行って、自分でわらを見つけて取って来い。 ただし、仕事の量は少しも減らさない』と言ったので、 12 民はエジプト中に散ってわらの切り株まで集めた。 13 追い使う者たちは、「わらがあったときと同じように、その日の割り当てをその日のうちに仕上げろ」と言って、せきたてた。 14 ファラオに任命された追い使う者たちは、監督として置いたイスラエルの人々の下役の者らに、「どうして、今までと同じ決められた量のれんがをその日のうちに仕上げることができないのか」と言って、彼らを打ったので、 15 イスラエルの人々の下役の者らはファラオのもとへ行って、訴えた。 「どうしてあなたは僕たちにこのようにされるのですか。 16 僕らにはわらが与えられません。 それでも、れんがを作れと言われて、僕らは打たれているのです。 間違っているのはあなたの民の方です。」 17 彼は言った。 「この怠け者めが。 お前たちは怠け者なのだ。 だから、主に犠牲をささげに行かせてくださいなどと言うのだ。 18 すぐに行って働け。 わらは与えない。 しかし、割り当てられた量のれんがは必ず仕上げよ。」 19 イスラエルの人人の下役の者たちは、「れんがの一日の割り当ては減らすな」と命じられて、自分たちが苦境に立たされたことを悟った。
20 彼らがファラオのもとから退出して来ると、待ち受けていたモーセとアロンに会った。 21 彼らは、二人に抗議した。 「どうか、主があなたたちに現れてお裁きになるように。 あなたたちのお陰で、我々はファラオとその家来たちに嫌われてしまった。 我々を殺す剣を彼らの手に渡したのと同じです。」 22 モーセは主のもとに帰って、訴えた。
「わが主よ。 あなたはなぜ、この民に災いをくだされるのですか。 わたしを遣わされたのは、一体なぜですか。 23 わたしがあなたの御名によって語るため、ファラオのもとに行ってから、彼はますますこの民を苦しめています。 それなのに、あなたは御自分の民を全く救い出そうとされません。」
6
1 主はモーセに言われた。
「今や、あなたは、わたしがファラオにすることを見るであろう。 わたしの強い手によって、ファラオはついに彼らを去らせる。 わたしの強い手によって、ついに彼らを国から追い出すようになる。」
モーセの使命
2 神はモーセに仰せになった。 「わたしは主である。 3 わたしは、アブラハム、イサク、ヤコブに全能の神として現れたが、主というわたしの名を知らせなかった。 4 わたしはまた、彼らと契約を立て、彼らが寄留していた寄留地であるカナンの土地を与えると約束した。 5 わたしはまた、エジプト人の奴隷となっているイスラエルの人々のうめき声を聞き、わたしの契約を思い起こした。 6 それゆえ、イスラエルの人々に言いなさい。 わたしは主である。 わたしはエジプトの重労働の下からあなたたちを導き出し、奴隷の身分から救い出す。 腕を伸ばし、大いなる審判によってあなたたちを贖う。 7 そして、わたしはあなたたちをわたしの民とし、わたしはあなたたちの神となる。 あなたたちはこうして、わたしがあなたたちの神、主であり、あなたたちをエジプトの重労働の下から導き出すことを知る。 8 わたしは、アブラハム、イサク、ヤコブに与えると手を上げて誓った土地にあなたたちを導き入れ、その地をあなたたちの所有として与える。 わたしは主である。」 9 モーセは、そのとおりイスラエルの人々に語ったが、彼らは厳しい重労働のため意欲を失って、モーセの言う事を聞こうとはしなかった。 10 主はモーセに仰せになった。 11 「エジプトの王ファラオのもとに行って、イスラエルの人々を国から去らせるように説得しなさい。」 12 モーセは主に訴えた。 「御覧のとおり、イスラエルの人々でさえわたしに聞こうとしないのに、どうしてファラオが唇に割礼のないわたしの言うことを聞くでしょうか。」 13 主はモーセとアロンに語って、イスラエルの人々とエジプトの王ファラオにかかわる命令を与えられた。 それは、イスラエルの人々をエジプトの国から導き出せというものであった。
モーセとアロンの系図
14 彼らの家系の長は次のとおりである。
イスラエルの長男ルベンの子らは、ハノク、パル、ヘツロン、カルミで、これらがルベンの氏族である。
15 シメオンの子らは、エムエル、ヤミン、オハド、ヤキン、ツォハルおよびカナンの女から生まれたシャウルで、これらがシメオンの氏族である。 16 レビの子らの名は家系に従うと次のとおりである。 ゲルション、ケハト、メラリ。 レビの生涯は百三十七年であった。 17 ゲルションの子らは、氏族に従うと、リブニとシムイである。 18 ケハトの子らは、アムラム、イツハル、ヘブロン、ウジエルである。 ケハトの生涯は百三十三年であった。 19 メラリの子らは、マフリとムシで、これらが家系に従ったレビの氏族である。 20 アムラムは叔母ヨケベドを妻に迎えた。 彼女の産んだ子がアランとモーセである。 アムラムの生涯は百三十七年であった。 21 イツハルの子らは、コラ、ネフェグ、ジクリである。 22 ウジエルの子らは、ミシャエル、エルツァファン、シトリである。 23 アロンは、アミナダブの娘でナフションの姉妹であるエリシャバを妻に迎えた。 彼女の産んだ子がナダブ、アビフ、エルアザル、イタマルである。 24 コラの子らは、アシル、エルカナ、アビアサフで、これらがコラ人の氏族である。 25 アロンの子エルアザルは、プティエルの娘の一人を妻に迎えた。 彼女の産んだ子がピネハスである。 以上が氏族ごとのレビ人家長である。
26 主が、「イスラエルの人々を部隊ごとにエジプトの国から導き出せ」と命じられたのは、このアロンとモーセである。 27 そして、イスラエルの人々をエジプトから導き出すよう、エジプトの王ファラオの説得に当たったのも、このモーセとアロンである。
アロンの役割
28 主がエジプトの国でモーセに語られたとき、 29 主はモーセに仰せになった。 「わたしは主である。 わたしがあなたに語ることをすべて、エジプトの王ファラオに語りなさい。 30 しかし、モーセは主に言った。 「御覧のとおり、わたしは唇に割礼のない者です。 どうしてファラオがわたしの言うことを聞き入れましょうか。」
7
1 主はモーセに言われた。
「見よ、わたしは、あなたをファラオに対しては神の代わりとし、あなたの兄アロンはあなたの預言者となる。 2 わたしが命ずるすべてのことをあなたが語れば、あなたの兄アロンが、イスラエルの人々を国から去らせるよう、ファラオに語るであろう。 3 しかし、わたしはファラオの心をかたくなにするので、わたしがエジプトの国でしるしや奇跡を繰り返したとしても、 4 ファラオはあなたたちの言うことを聞かない。 わたしはエジプトに手を下し、大いなる審判によって、わたしの部隊、わたしの民イスラエルの人々をエジプトの国から導き出す。 5 わたしがエジプトに対して手を伸ばし、イスラエルの人々をその中から導き出すとき、エジプト人は、わたしが主であることを知るようになる。
6 モーセとアロンは、主が命じられたとおりに行った。 7 ファラオに語ったとき、モーセは八十歳、アロンは八十三歳であった。
アロンの杖
8 主はモーセとアロンに言われた。 9 もし、ファラオがあなたたちに向かって、『奇跡を行ってみよ』と求めるならば、あなたはアロンに、『杖を取って、ファラオの前に投げよ』と言うと、杖は蛇になる。」 10 モーセとアロンはファラオのもとに行き、主の命じられたとおりに行った。 アロンが自分の杖をファラオとその家臣たちの前に投げると、杖は蛇になった。 11 そこでファラオも賢者や呪術師を召し出した。 エジプトの魔術師もまた、秘術を用いて同じことを行った。 12 それぞれ自分の杖を投げると、蛇になったが、アロンの杖は彼らの杖をのみ込んだ。 13 しかし、ファラオの心はかたくなになり、彼らの言うことを聞かなかった。 主が仰せになったとおりである。
血の災い
14 主はモーセに言われた。 「ファラオの心は頑迷で、民を去らせない。 15 明朝、ファラオのところへ行きなさい。 彼は水辺に下りて来る。 あなたは蛇になったあの杖を手に持ち、ナイル川の岸辺に立って、彼を待ち受け、 16 彼に言いなさい。 ヘブライ人の神、主がわたしをあなたのもとに遣わして、『わたしの民を去らせ、荒れ野でわたしに仕えさせよ』と命じられたのに、あなたは今に至るまで聞き入れない。 17 主はこう言われた。 『このことによって、あなたは、わたしが主であることを知る』と。 見よ、わたしの手にある杖でナイル川の水を打つと、水は血に変わる。 18 川の魚は死に、川は悪臭を放つ。 エジプト人はナイル川の水を飲むのを嫌がるようになる。」
19 主は更にモーセに言われた。 「アロンに言いなさい。 『杖を取り、エジプトの水という水の上、河川、水路、池、水たまりの上に手を伸ばし、血に変えなさい』 と。 エジプトの国中、木や石までも血に浸るであろう。」
20 モーセとアロンは、主の命じられたとおりにした。 彼は杖を振り上げて、ファラオとその家臣の前でナイル川の水を打った。 川の水はことごとく血に変わり、 21 川の魚は死に、川は悪臭を放ち、エジプト人はナイル川の水を飲めなくなった。 こうして、エジプト国中が血に浸った。 22 ところが、エジプトの魔術師も秘術を用いて同じことを行ったのでファラオの心はかたくなになり、二人の言うことを聞かなかった。 主が仰せになったとおりである。 23 ファラオは王宮に引き返し、このことをも心に留めなかった。 24 エジプト人は皆、飲み水を求めて、ナイル川の周りを掘った。 ナイル川の水が飲めなくなったからである。
蛙の災い
25 主がナイル川を打たれたから七日たつと、 26 主はモーセに言われた。 「ファラオのもとに行って、彼に言いなさい。 主はこう言われた。 『わたしの民を去らせ、わたしに仕えさせよ。 27 もしあなたが去らせることを拒むならば、わたしはあなたの領土全体に蛙の災いを引き起こす。 28 ナイル川に蛙が群がり、あなたの王宮を襲い、寝室に侵入し、寝台に上り、更に家臣や民の家にまで侵入し、かまど、こね鉢ににも入り込む。 29 蛙はあなたも民もすべての家臣をも襲うであろう』と。」
8
1 主は更にモーセに言われた。 「アロンにこう言いなさい。 杖を取って、河川、水路、池の上に手を伸ばし、蛙をエジプトの国に這い上がらせよ。」 2 アロンがエジプトの水の上に手を差し伸べると、蛙が這い上がってきてエジプトの国を覆った。 3 ところが、魔術師も秘術を用いて同じことをし、蛙をエジプトの国に這い上がらせた。 4 ファラオはモーセとアロンを呼んで、「主に祈願して、蛙がわたしとわたしの民のもとから退くようにしてもらいたい。 そうすれば、民を民を去らせ、主に犠牲をささげよう」と言うと、 5 モーセはファラオに答えた。
「あなたのお望みの時を言ってください。 いつでもあなたとあなたの家臣と民のために祈願して、蛙をあなたとあなたの家から絶ち、ナイル川以外には残らぬようにしましょう。」 6 ファラオが、「明日」と言うと、モーセは答えた。 「あなたの言われるとおりにしましょう。 あなたは、我々の神、主のような神がほかにいないことを知るようになります。 7 蛙はあなたとあなたの王宮、家臣や民の間から退いて、ナイル川以外には残らなくなるでしょう。」 8 モーセとアロンがファラオのもとから出て来ると、モーセはファラオを悩ました蛙のことで主に訴えた。 9 主はモーセの願いどおりにされ、蛙は家からも庭からも畑からも死に絶えた。 10 人々はその死骸を幾山にも積み上げたので、国中に悪臭が満ちた。 11 ファラオは一息つく暇ができたのを見ると、心を頑迷にして、また二人の言うことを聞き入れなくなった。 主が仰せになったとおりである。
ぶよの災い
12 主はモーセに言われた。 「アロンに言いなさい。 『杖を差し伸べて土の塵を打ち、ぶよにさせてエジプト全土に及ぼせ』と。」
13 彼らは言われたとおりにし、アロンが杖を持った手を差し伸べ土の塵を打つと、土の塵はすべてぶよとなり、エジプト全土に広がって人と家畜を襲った。
14 魔術師も秘術を用いて同じようにぶよを出そうとしたが、できなかった。 ぶよが人と家畜を襲ったので、 15 魔術師はファラオに、「これは神の指の働きでございます」と言ったが、ファラオの心はかたくなになり、彼らの言うことを聞かなかった。 主が仰せになったとおりである。
あぶの災い
16 主はモーセに言われた。 「明朝早く起きて、水辺に下りて来るファラオを出迎えて、彼に言いなさい。 主はこう言われた。 『わたしの民を去らせ、わたしに仕えさせよ。 17 もしあなたが私の民を去らせないならば、見よ、わたしはあなたとあなたの家臣とあなたの民とあなたの家のあぶを送る。 エジプトの人家にも人が働いている畑地にもあぶが満ちるであろう。 18 しかし、その日、わたしはわたしの民の住むゴシェン地方を区別し、そこにあぶを入り込ませない。 あなたはこうして、主なるわたしがこの地のただ中にいることを知るようになる。 19 わたしは、わたしの民をあなたの民から区別して贖う。 明日、このしるしが起こる』と。」 20 主がそのとおり行われたので、あぶの大群がファラオの王宮や家臣の家に入り、エジプトの全土に及んだ。 国はあぶのゆえに荒れ果てた。 21 ファラオがモーセとアロンを呼び寄せて、「行って、あなたたちの神にこの国の中で犠牲をささげるがよい」と言うと、 22 モーセは答えた。 「そうすることはできません。 我々の神、主にささげる犠牲は、エジプト人のいとうものです。 もし、彼らの前でエジプト人のいとうものをささげれば、我々は石で打ち殺すのではありませんか。 23 我々の神、主に犠牲をささげるには、神が命じられたように、三日の道のりを荒れ野に入らねばなりません。」 24 ファラオが、「よし、わたしはあなたたちを去らせる。 荒れ野であなたたちの神、主に犠牲をささげるがよい。 ただし、あまり遠くへ行ってはならない。 わたしのためにも祈願してくれ」と言うと、 25 モーセは答えた。 「では、あなたのもとから退出しましたら、早速主に祈願しましょう。 明日になれば、あぶはファラオとその家臣と民の間から飛び去るでしょう。 ただ、二度と、主に犠牲をささげるために民を去らせないなどと言って、我々を欺かないでください。」
26 モーセはファラオのもとから退出すると、主に祈願した。 27 主はモーセの願いどおりにされ、あぶはファラオと家臣と民の間からすべて飛び去り、一匹も残らなかった。 28 しかし、ファラオは今度もまた心を頑迷にして民を去らせなかった。
疫病の災い 9
1 主はモーセに言われた。 「ファラオのもとに行って彼に告げなさい。 ヘブライ人の神、主はこう言われた。 『わたしの民を去らせ、わたしに仕えさせよ』と。 2 もしあなたが去らせるのを拒み、なおも彼らをとどめておくならば、 3 見よ、主の手が甚だ恐ろしい疫病を野にいるあなたの家畜、馬、ろば、らくだ、牛、羊に臨ませる。 4 しかし主は、イスラエルの家畜とエジプトの家畜とを区別される。 イスラエルの人々の家畜は一頭たりとも死ぬことはない。 5 主はまた時を定め、明日、この地でこの事を行われる。 6 翌日、主はこの事を行われたので、エジプト人の家畜はすべて死んだが、イスラエルの人々の家畜は一頭も死ななかった。 7 ファラオが人を遣わして見させたところ、イスラエルの家畜は一頭といえども死んではいなかった。 それでも、ファラオの心は頑迷になり民を去らせなかった。
はれ物の災い
8 主はモーセとアロンに言われた。 「かまどのすすを両手いっぱい取って、モーセはそれをファラオの前で天に向かってまき散らすがよい。 9 それはエジプト全土を覆う細かい塵となって、エジプト全土の人と家畜に降りかかり、膿の出るはれ物となるであろう。」 10 二人はかまどのすすを取ってファラオの前に立ち、モーセがそれを天に向かってまき散らした。 すると、膿の出るはれ物が人と家畜に生じた。 11 魔術師もこのはれ物のためにモーセの前に立つことができなかった。 はれ物は魔術師のみならず、エジプト人すべてに生じた。 12 しかし、主がファラオの心をかたくなにされたので、彼は二人の言うことを聞かなかった。
主がモーセに仰せになったとおりである。
雹の災い
13 主はモーセに言われた。 「明朝早く起き、ファラオの前に立って、彼に言いなさい。 ヘブライ人の神、主はこう言われた。 『わたしの民を去らせ、わたしに仕えさせよ。 14 今度こそ、わたしはあなた自身とあなたの家臣とあなたの民に、あらゆる災害をくだす。 わたしのような神は、地上のどこにもいないことを、あなたに分からせるためである。 15 実際、今までにわたしは手を伸ばし、あなたとあなたの民を疫病で打ち、地上から絶やすこともできたのだ。 16 しかしわたしは、あなたにわたしの力を示してわたしの名を全地に語り告げさせるため、あなたを生かしておいた。 17 あなたはいまだに、わたしの民に対して高ぶり、彼らを去らせようとしない。 18 見よ、明日の今ごろ、エジプト始まって以来、今日までかってなかったほどの甚だ激しい雹を降らせる。 19 それゆえ、今、人を遣わして、あなたの家畜で野にいるものは皆、非難させるがよい。 野に出ていて家に連れ戻されない家畜は、人と共にすべて、雹に打たれて死ぬであろう』と。」 20 ファラオの家臣の内、主の言葉を畏れた者は、自分の僕と家畜を家に避難させたが、 21 主の言葉を心に留めなかった者は、僕と家畜を野に残しておいた。
22 主はモーセに言われた。 「あなたの手を天に向かって差し伸べ、エジプト全土に、人にも家畜にも、野のあらゆる草の上にも雹を降らせるがよい。」
23 モーセが天に向かって杖を差し伸べると、主は雷と雹を下され、稲妻が大地に向かって走った。 主はエジプトの地に雹を降らせられた。 24 雹が降り、その間を絶え間なく稲妻が走った。 それは甚だ激しく、このような雹が全土に降ったことは、エジプトの国始って以来かってなかったほどであった。 25 雹は、エジプト全土で野にいるすべてのもの、人も家畜も残らず打った。 雹はまた、野のあらゆる草を打ち、野のすべての木を打ち砕いた。 26 ただし、イスラエルの人々の住むゴシェンの地域には雹は降らなかった。 27 ファラオは人を遣わし、モーセとアロンを呼び寄せて言った。
「今度ばかりはわたしが間違っていた。 正しいのは主であり、悪いのはわたしとわたしの民である。 28 主に祈願してくれ。 恐ろしい雷と雹はもうたくさんだ。 あなたたちを去らせよう。 これ以上ここにとどまることはない。」 29 モーセは言った。 「町を出たら、早速両手を広げて主に祈りましょう。 雷はやみ、雹はもう降らないでしょう。 あなたはこうして、大地が主のものであることを知るでしょう。 30 しかし、あなたもあなたの家臣も、まだ主なる神を畏れるに至っていないことを、わたしは知っています。」
31 亜麻と大麦は壊滅した。 大麦はちょうど穂の出る時期で、亜麻はつぼみの開く時期であったからである。 32 小麦と裸麦は壊滅を免れた。 穂の出る時期が遅いからである。
33 モーセは、ファラオのもとから退出し町を出ると、両手を広げて主に祈った。 すると、雷も雹もやみ、大地に注ぐ雨もやんだ。 34 ファラオは、雨も雹も雷もやんだのを見て、またもや過ちを重ね、彼も彼の家臣もこころを頑迷にした。 35 ファラオの心はかたくなになり、イスラエルの人々を去らせなかった。 主がモーセを通して仰せになったとおりである。
いなごの災い 10
1 主はモーセに言われた。 「ファラオのもとに行きなさい。 彼とその家臣の心を頑迷にしたのは、わたし自身である。 それは、彼らのただ中でわたしがこれらのしるしを行うためであり、 2 わたしがエジプト人をどのようにあしらったか、どのようなしるしを行ったかをあなたが子孫に語り伝え、わたしが主であることをあなたたちが知るためである。」 3 モーセとアロンはファラオのところに行き、彼に言った。
「ヘブライ人の神、主はこう言われた。 『いつまで、あなたはわたしの前に身を低くするのを拒むのか。 わたしの民を去らせ、わたしに仕えさせなさい。 4 もし、あなたがわたしの民を去らせることを拒み続けるならば、明日、わたしはあなたの領土にいなごを送り込む。 5 いなごは地表を覆い尽くし、地面を見ることもできなくなる。 そして、雹の害を免れた残りのものを食い荒らし、野に生えているすべての木を食い尽くす。 6 また、あなたの王宮、家臣のすべての家、エジプト中の家にいなごが満ちる。 それは、あなたの先祖も、先祖の先祖も、この土地に住み着いたときから今日まで見たことがないものである』と。」 彼が身を翻してファラオのもとから退出すると、 7 ファラオの家臣が王に進言した。 「いつまで、この男はわたしたちを陥れる罠となるのでしょうか。 即刻あの者たちを去らせ、彼らの神、主に仕えさせてはいかがでしょう。 エジプトが滅びかかっているのが、まだお分かりになりませんか。」 8 モーセとアロンがファラオのもとに呼び戻されると、ファラオは二人に言った。 「行って、あなたたちの神、主に仕えるがよい。 誰と誰が行くのか。」 9 「若い者も年寄りも一緒に参ります。 息子も娘も羊も牛も参ります。 主の祭りは我々全員のものです」とモーセが答えると、 10 ファラオは二人に言った。 「よろしい。 わたしがお前たちを家族ともども去らせるときは、主がお前たちと共におられるように。 お前たちの前には災いが待っているのを知るがよい。 11 いや、行くならば、男たちだけで行って、主に仕えるがよい。 それがお前たちの求めていたことだ。」 ファラオは自分の前から彼らを追い出した。
12 主はモーセに言われた。 「手をエジプトの地に差し伸べ、いなごを呼び寄せなさい。 いなごはエジプトの国を襲い、地のあらゆる草、雹の害を免れたすべてのものを食い尽くすであろう。」 13 モーセがエジプトの地に杖を差し伸べると、主はまる一昼夜、東風を吹かせられた。 朝になると、東風がいなごの大群を運んで来た。 14 いなごは、エジプト全土を襲い、エジプトの領土全体にとどまった。 このようにおびただしいいなごの大群は前にも後にもなかった。 15 いなごが地の面をすべて覆ったので、地は暗くなった。 いなごは地のあらゆる草、雹の害を免れた木の実をすべて食い尽くしたので、木であれ、野の草であれ、エジプト全土のどこにも緑のものは何ひとつ残らなかった。 16 ファラオは急いでモーセとアロンを呼んで頼んだ。 「あなたたちの神、主に対し、またあなたたちに対しても、わたしは過ちを犯した。 17 どうか、もう一度だけ過ちを赦して、あなたたちの神、主に祈願してもらいたい。 こんな死に方だけはしないで済むように。」 18 モーセがファラオのもとを退出して、主に祈願すると、 19 主は風向きを変え、甚だ強い西風とし、いなごを吹き飛ばして、葦の海に追いやられたので、エジプトの領土全体にいなごは一匹も残らなかった。 20 しかし、主がファラオの心をかたくなにされたので、ファラオはイスラエルの人々を去らせなかった。
暗闇の災い
21 主はモーセに言われた。 「手を天に向かって差し伸べ、エジプトの地に闇を臨ませ、人がそれを手に感じるほどにしなさい。 22 モーセが手を天に向かって差し伸べると、三日間エジプト全体に暗闇が臨んだ。 23 人々は、三日間、互いに見ることも、自分のいる場所から立ち上がることもできなかったが、イスラエルの人々が住んでいる所にはどこでも光があった。 24 ファラオがモーセを呼び寄せて、「行って、主に主に仕えるがよい。 ただし、羊と牛は残しておけ。 妻子は連れて行ってもよい」と言うと、 25 モーセは答えた。 「いいえ、あなた御自身からも、いけにえと焼き尽くす捧げ物をいただいて、我々の神、主にささげたいと思っています。 26 我々の家畜も連れて行き、ひづめ一つ残さないでしょう。 我々の神、主に仕えるためにその中から選ばねばなりません。 そこに着くまでは、我々自身どれをもって主に仕えるべきか、分からないのですから。」 27 しかし、主がまたファラオの心をかたくなにされたので、ファラオは彼らを去らせようとはしなかった。 28 ファラオが、「引き下がれ。 二度と私の前に姿を見せないように気をつけよ。 今度会ったら、生かしてはおかない」と言うと、 29 モーセは答えた。 「よくぞ仰せになりました。 二度とお会いしようとは思いません。」
最期の災い 11
1 主はモーセに言われた。 「わたしは、なおもう一つの災いをファラオとエジプトにくだす。 その後、王はあなたたちをここから去らせる。 いや、そのときには、あなたたちを一人残らずここから追い出す。 2 あなたは、民に告げ、男も女もそれぞれ隣人から金銀の装飾品を求めさせるがよい。 3 主はこの民にエジプト人の好意を得させるようにされた。 モーセその人もエジプトの国で、ファラオの家臣や民に大いに尊敬を受けていた。
4 モーセは言った。 「主はこう言われた。 『真夜中ごろ、わたしはエジプトの中を進む。 5 そのとき、エジプトの国中の初子は皆、死ぬ。 王座に座しているファラオの初子から、石臼をひく女奴隷の初子まで。 また家畜の初子もすべて死ぬ。 6 大いなる叫びがエジプト全土に起こる。 そのような叫びはかってなかったし、再び起こることもない。』 7 しかし、イスラエルの人人に対しては、犬ですら、人に向かっても家畜に向かっても、うなり声を立てません。 あなたたちはこれによって、主がエジプトとイスラエルを区別しておられることを知るでしょう。 8 あなたの家臣はすべてわたしのもとに下って来て、『あなたもあなたに従っている民も皆、出て行ってください』とひれ伏し頼むのでしょう。 その後で、わたしは出て行きます。」 そして、モーセは憤然としてファラオのもとから退出した。
9 主はモーセに言われた。 「ファラオは、あなたたちの言うことを聞かない。 そのため、わたしはエジプトの国に大きな奇跡を行うようになる。」 10 モーセとアロンはファラオの前でこれらの奇跡をすべて行ったが、主がファラオの心をかたくなにされたため、ファラオはイスラエルの人々を国から去らせなかった。
主の過越 12
1 エジプトの国で、主はモーセとアロンに言われた。 2 「この月をあなたたちの正月とし、年の初めの月としなさい。 3 イスラエルの共同体全体に次のように告げなさい。 『今月の十日、人はそれぞれ父の家ごとに、すなわち家族ごと子羊を一匹用意しなければならない。 4 もし、家族が少人数で子羊一匹を食べきれない場合には、隣の家族と共に、人数に見合うものを用意し、めいめいの食べる量に見合う子羊を選ばねばならない。 5 その子羊は、傷のない一歳の雄でなければならない。 用意するのは羊でも山羊でもよい。 6 それは、この月の十四日まで取り分けておき、イスラエルの共同体の会衆が皆で夕暮れにそれを屠り、 7 その血を取って、子羊を食べる家に入り口の二本の柱と鴨居に塗る。 8 そしてその夜、肉を火で焼いて食べる。 また、酵母を入れないパンを苦菜を添えて食べる。 9 肉は生で食べたり、煮て食べてはならない。 必ず、頭も四肢も内臓も切り離さずに火で焼かねばならない。 10 それを翌朝まで残しておいてはならない。 翌朝まで残った場合には、焼却する。 11 それを食べるときは、腰帯を締め、靴を履き、杖を手にし、急いで食べる。 これが主の過越である。 12 その夜、わたしはエジプトの国を巡り、人であれ、家畜であれ、エジプトの国のすべての初子を撃つ。 また、エジプトのすべての神々に裁きを行う。 わたしは主である。 13 あなたたちのいる家に塗った血は、あなたたちのしるしとなる。 血を見たならば、わたしはあなたたちを過ぎ越す。
わたしがエジプトの国を撃つとき、滅ぼす者の災いはあなたたちに及ばない。 14 この日は、あなたたちにとって記念すべき日となる。 あなたたちは、この日を主の祭りとして祝い、代々にわたって守るべき不変の定めとして祝わねばならない。 15 七日の間、あなたたちは酵母を入れないパンを食べる。 まず、祭りの最初の日に家から酵母を取り除く。 この日から第七日までの間に酵母入りのパンを食べた者は、すべてイスラエルから断たれる。 16 最初の日に聖なる集会を開き、第七日にも聖なる集会を開かねばならない。 この両日にはいかなる仕事もしてはならない。 ただし、それぞれの食事の用意を除く。 これだけは行ってもよい。 17 あなたたちは除酵祭を守らねばならない。 なぜなら、まさにこの日に、わたしはあなたたちの部隊をエジプトの国から導き出したからである。 それゆえ、この日を代々にわたって守るべき不変の定めとして守らねばならない。 18 正月の十四日の夕方からその月の二十一日の夕方まで、酵母を入れないパンを食べる。 19 七日の間、家の中に酵母があってはならない。 酵母の入ったものを食べる者は、寄留者であれその土地に生まれた者であれ、すべて、イスラエルの共同体から断たれる。 20 酵母の入ったものは一切食べてはならない。 あなたたちの住む所ではどこでも、酵母を入れないパンを食べねばならない。』」
21 モーセは、イスラエルの長老をすべて呼び寄せ、彼らに命じた。
「さあ、家族ごとに羊を取り、過越の犠牲を屠りなさい。 22 そして、一束のヒソプを取り、鉢の中の血に浸し、鴨居と入り口の二本の柱に鉢の中の血を塗りなさい。 翌朝までだれも家の入り口から出てはならない。 23 主がエジプト人を撃つために巡るとき、鴨居と二本の柱に塗られた血を御覧になって、その入り口を過ぎ越される。 滅ぼす者が家に入って、あなたたちを撃つことがないためである。
24 あなたたちはこのことを、あなたと子孫のための定めとして、永遠に守らねばならない。 25 また、主が約束されたとおりあなたたちに与えられる土地に入ったとき、この儀式を守らねばならない。 26 また、あなたたちの子供が、『この儀式にはどういう意味があるのですか』と尋ねるときは、 27 こう答えなさい。 『これが主の過越の犠牲である。 主がエジプト人を撃たれたとき、エジプトにいたイスラエルの人々の家を過ぎ越し、我々の家を救われたのである』と。」
民はひれ伏して礼拝した。 28 それから、イスラエルの人々は帰って行き、主がモーセとアロンに命じられたとおりに行った。
初子の死
29 真夜中になって、主はエジプトの国ですべての初子を撃たれた。 王座に座しているファラオの初子から牢屋につながれている捕虜の初子まで、また家畜の初子もことごとく撃たれたので、 30 ファラオと家臣、またすべてのエジプト人は夜中に起き上がった。 死人が出なかった家は一軒もなかったので、大いなる叫びがエジプト中に起こった。 31 ファラオは、モーセとアロンを夜のうちに呼び出して言った。
「さあ、わたしの民の中から出て行くがよい、あなたたちもイスラエルの人々も。 あなたたちが願っていたように、行って、主に仕えるがよい。 32 羊の群れも牛の群れも、あなたたちが願っていたように、連れて行くがよい。 そして、わたしをも祝福してもらいたい。」 33 エジプト人は、民をせきたてて、急いで国から去らせようとした。 そうしないと自分たちは皆、死んでしまうと思ったのである。 34 民は、まだ酵母の入っていないパンの練り粉をこね鉢ごと外套に包み、肩に担いだ。 35 イスラエルの人々は、モーセの言葉どおりに行い、エジプト人から金銀の装飾品や衣類を求めた。 36 主は、この民にエジプト人の好意を得させるようにされたので、エジプト人は彼らの求めに応じた。 彼らはこうして、エジプト人の物を分捕り物とした。
エジプトの国を去る
37 イスラエルの人々はラメセスからスコトに向けて出発した。 一行は、妻子を別にして、壮年男子だけでおよそ六十万人であった。 38 そのほか、種々雑多な人人もこれに加わった。 羊、牛など、家畜もおびただしい数であった。 39 彼らはエジプトから持ち出した練り粉で、酵母を入れないパン菓子を焼いた。 練り粉には酵母が入っていなかった。 彼らがエジプトから追放されたとき、ぐずぐずしていることはできなかったし、道中の食糧を用意するいとまもなかったからである。
40 イスラエルの人々が、エジプトに住んでいた期間は四百三十年であった。 41 四百三十年を経たちょうどその日に、主の部隊は全軍、エジプトの国を出発した。 42 その夜、主は、彼らをエジプトの国から導き出すために寝ずの番をされた。 それゆえ、イスラエルの人々は代々にわたって、この夜、主のために寝ずの番をするのである。
過越祭の規定
43 主はモーセとアロンに言われた。 「過越祭の掟は次のとおりである。 外国人はだれも過越の犠牲を食べることはできない。 44 ただし、金で買った男奴隷の場合、割礼を施すならば、彼は食べることができる。 45 滞在している者や雇い人は食べることができない。 46 一匹の羊は一軒の家で食べ、肉の一部でも家から持ち出してはならない。 また、その骨を折ってはならない。 47 イスラエルの共同体全体がこれを祝わなければならない。 48 もし、寄留者があなたのところに寄留し、主の過越祭を祝おうとするときは、男子は皆、割礼を受けた後にそれを祝うことが許される。 彼はそうすれば、その土地に生まれた者と同様になる。 しかし、無割礼の者は、だれもこれを食べることができない。 49 この規定は、その土地に生まれた者にも、あなたたちの間に寄留している寄留者にも、同じように適用される。 50 イスラエルの人々はすべて、主がモーセとアロンに命じたとおりに行った。
51 まさのこの日に、主はイスラエルの人々を部隊ごとにエジプトの国から導き出された。
初子の奉献 13
1 主はモーセに仰せになった。 2 「すべての初子を聖別してわたしにささげよ。 イスラエルの人々の間で初めに胎を開くものはすべて、人であれ家畜であれ、わたしのものである。」
除酵祭
3モーセは民に言った。 「あなたたちは、奴隷の家、エジプトから出たこの日を記念しなさい。 主が力強い御手をもって、あなたたちをそこから導き出されたからである。 酵母入りのパンを食べてはならない。 4 あなたたちはアビブの月のこの日に出発する。
5 主が、あなたに与えると先祖に誓われた乳と蜜の流れる土地、カナン人、ヘト人、アモリ人、ヒビ人、エブス人の土地にあなたを導き入れられるとき、あなたはこの月にこの儀式を行わねばならない。 6 七日の間、酵母を入れないパンを食べねばならない。 七日目には主のための祭りをする。 7 酵母を入れないパンを七日の間食べる。 あなたのもとに酵母入りのパンがあってはならないし、あなたの領土のどこにも酵母があってはならない。
8 あなたはこの日、自分の子供に告げなければならない。 『これは、わたしがエジプトから出たとき、主がわたしのために行われたことのゆえである』と。 9 あなたは、この言葉を自分の腕と額に付いて記憶のしるしとし、主の教えを口ずさまねばならない。 主が力強い御手をもって、あなたをエジプトから導き出されたからである。 10 あなたはこの掟を毎年定められたときに守らねばならない。
初子について
11 主があなたと先祖に誓われたとおり、カナン人の土地にあなたを導き入れ、 それをあなたに与えられるとき、 12 初めに胎を開くものはすべて、主にささげなければならない。 あなたの家畜の初子にうち、雄はすべて主のものである。 13 ただし、ろばの初子の場合はすべて、子羊をもって贖わねばならない。 もし、贖わない場合は、その首を折らねばならい。 あなたの初子のうち、男の子の場合はすべて、贖わねばならない。 14 将来、あなたの子供が、『これにはどういう意味があるのですか』と尋ねるときは、こう答えなさい。 『主は、力強い御手をもって我々を奴隷の家、エジプトから導き出された。 15 ファラオがかたくなで、我々を去らせなかったため、主はエジプの国中の初子を、人の初子から家畜の初子まで、ことごとく撃たれた。 それゆえわたしは、初めに胎を開く雄をすべて主に犠牲としてささげ、また、自分の息子のうち初子は、必ず贖うのである。』 16 あなたはこの言葉を腕に付けてしるしとし、額に付けて覚えとしなさい。 主が力強い御手をもって、我々をエジプトから導き出されたからである。』
火の柱、雲の柱
17 さて、ファラオが民をさらせたとき、神は彼らをペリシテ街道には導かれなかった。 それは近道であったが、民が戦わねばならぬことを知って後悔し、エジプトに帰ろうとするかもしれない、と思われたからである。 18 神は民を、葦の海に通じる荒れ野の道に迂回させられた。 イスラエルの人々は、隊伍を整えてエジプトの国から上った。 19 モーセはヨセフの骨を携えていた。 ヨセフが「神は必ずあなたたちを顧みられる。 そのとき、わたしの骨をここから一緒に携えて上るように」と言って、イスラエルの子らに固く誓わせたからである。 20 一行はスコトから旅立って、荒れ野の端のエタムに宿営した。 21 主は彼らに先立って進み、昼は雲の柱をもって導き、夜は火の柱をもって彼らを照らされたので、彼らは昼も夜も行進することができた。 22 昼は雲の柱が、夜は火の柱が、民の先頭を離れることはなかった。
葦の海の奇跡 14
1 主はモーセに仰せになった。 2 「イスラエルの人々に、引き返してミグドルと海との間のピ・ハヒトロの手前で宿営するように命じなさい。 バアル・ツェホンの前に、それに面して、海辺に宿営するのだ。 3 するとファラオは、イスラエルの人々が慌ててあの地方で道に迷い、荒れ野が彼らの行く手をふさいだと思うであろう。 4 わたしはファラオの心をかたくなにし、彼らの後を追わせる。 しかし、わたしはファラオとその全軍を破って栄光を現すので、エジプト人は、わたしが主であることを知るようになる。」 彼らは言われたとおりにした。
5 民が逃亡したとの報告を受けると、エジプト王ファラオとその家臣は、民に対する考えを一変して言った。 「ああ、我々は何んということをしたのだろう。 イスラエル人を労役から解放して去らせてしまったとは。」 6 ファラオは戦車に馬をつなぎ、自ら軍勢を率い、 7 えり抜きの戦車六百をはじめ、エジプトの戦車すべてを動員し、それぞれに仕官を乗り込ませた。 8 主がエジプト王ファラオの心をかたくなにされたので、王はイスラエルの人々の後を追った。 イスラエルの人々は、意気揚々と出て行ったが、 9 エジプト軍は彼らの後を追い、ファラオの馬と戦車、騎兵と歩兵は、ピ・ハヒロトの傍らで、バアル・ツェホンの前の海辺に宿営している彼らに追いついた。 10 ファラオは既に間近に迫り、イスラエルの人々が目を上げて見ると、エジプト軍は既に背後に襲いかかろうとしていた。 イスラエルの人々は非常に恐れて主に向かって叫び、 11 また、モーセに言った。 「我々を連れ出したのは、エジプトに墓がないからですか。 荒れ野で死なせるためですか。 一体、何をするためにエジプトから導き出したのですか。 12 我々はエジプトで、『ほうっておいてください。 自分たちはエジプト人に仕えます。 荒れ野で死ぬよりエジプト人に仕える方がましです。』と言ったではありませんか。」 13 モーセは民に答えた。 「恐れてはならない。 落ち着いて、今日、あなたたちのために行われる主の救いを見なさい。 あなたたちは今日、エジプト人を見ているが、もう二度と、永久に彼らを見ることはない。 14 主があなたたちのために戦われる。 あなたたちは静かにしていなさい。」
15 主はモーセに言われた。 「なぜ、わたしに向かって叫ぶのか。 イスラエルの人々に命じて出発させなさい。 16 杖を高く上げ、手を海に向かって差し伸べて、海を二つに分けなさい。 そうすれば、イスラエルの民は海の中の乾いた所を通ることができる。 17 しかし、わたしはエジプト人の心をかたくなにするから、彼らはお前たちの後を追ってくる。 そのとき、わたしはファラオとその全軍、戦車と騎兵を破って栄光を現す。 18 わたしがファラオとその戦車、騎兵を破って栄光を現すとき、エジプト人は、わたしが主であることを知るようになる。
19 イスラエルの部隊に先立って進んでいた神の御使いは、移動して彼らの後を行き、彼らの前にあった雲の柱も移動して後ろに立ち、 20 エジプトの陣とイスラエルの陣との間に入った。 真っ黒な雲が立ちこめ、光が闇夜を貫いた。 両軍は、一晩中、互いに近づくことはなかった。 21 モーセが手を海に向かって差し伸べると、主は夜もすがら激しい東風をもって海を押し返されたので、海は乾いた地に変わり、水は分かれた。 22 イスラエルの人々は海の中の乾いた所を進んで行き、水は彼らの右と左に壁のようになった。 23 エジプト軍は彼らを追い、ファラオの馬、戦車、騎兵がことごとく彼らに従って海の中に入って来た。 24 朝の見張りのころ、主は火と雲の柱からエジプト軍を見下ろし、エジプト軍をかき乱された。 25 戦車の車輪をはずし、進みにくくされた。 エジプト人は言った。 「イスラエルの前から退却しよう。 主が彼らのためにエジプトと戦っておられる。
26 主はモーセに言われた。 「海に向かって手を差し伸べなさい。 水がエジプト軍の上に、戦車、騎兵の上に流れ返るであろう。 27 モーセが手を海に向かって差し伸べると、夜が明ける前に海は元の場所へ流れ返った。 エジプト軍は水の流れに逆らって逃げたが、主は彼らを海の中に投げ込まれた。 28 水は元に戻り、戦車と騎兵、彼らの後を追って海に入ったファラオの全軍を覆い、一人も残らなかった。 29 イスラエルの人人は海の中の乾いた所を進んだが、そのとき、水は彼らの右と左に壁となった。 30 主はこうして、その日、イスラエルをエジプト人の手から救われた。 イスラエルはエジプト人が海辺で死んでいるのを見た。 31 イスラエルは、主がエジプト人に行われた大いなる御業を見た。 民は主を畏れ、主とモーセを信じた。
海の歌 15
1 モーセとイスラエルの民は主を賛美してこの歌をうたった。
主に向かってわたしは歌おう。
主は大いなる威光を現し
馬と乗り手を海に投げ込まれた。
2 主はわたしの力、わたしの歌
主はわたしの救いとなってくださった。
この方こそわたしの神。 わたしは彼をたたえる。
わたしの父の神、わたしは彼をあがめる。
3 主こそいくさびと、その名は主。
4 主はファラオの戦車と軍勢を海に投げ込み
えり抜きの戦士は葦の海に沈んだ。
5 深淵が彼らを覆い
彼らは深い底に石のように沈んだ。
6 主よ、あなたの右の手は力によって輝く。
主よ、あなたの右の手は敵を打ち砕く。
7 あなたは大いなる威光をもって敵を滅ぼし
怒りを放って、彼らをわらのように焼き尽くす。
8 憤りの風によって、水はせき止められ
流れはあたかも壁のように立ち上がり
大水は海の中で固まった。
9 敵は言った。 「彼らの後を追い
捕らえられて分捕り品を分けよう。
剣を抜いて、ほしいままに奪い取ろう。」
10 あなたが息を吹きかけると
海は彼らを覆い
彼らは恐るべき水の中に鉛のように沈んだ。
11 主よ、神々の中に
あなたのような方が誰かあるでしょうか。
誰か、あなたのように聖において導き
ほむべき御業によって畏れられ
くすしき御業を行う方があるでしょうか。
12 あなたが右の手を伸べられると
大地は彼らを呑み込んだ。
13 あなたは慈しみをもって贖われた民を導き
御力をもって聖なる住まいに伴われた。
14 諸国の民はこれを聞いて震え
苦しみがペリシテの住民をとらえた。
15 そのときエドムの首長はおののき
モアブの力ある者たちはわななきにとらえられ
カナンの住民はすべて気を失った。
16 恐怖とおののきが彼らを襲い
御腕の力の前に石のように黙した
主よ、あなたの民が通り過ぎ
あなたの買い取られた民が通り過ぎるまで。
17 あなたは彼らを導き
嗣業の山に植えられる。
主よ、それはあなたの住まいとして
自ら造られた所
主よ、御手によって建てられた聖所です。
18 主は代々限りなく統べ治められる。
19 ファラオの馬が、戦車、騎兵もろとも海に入ったとき、主は海の水を彼らの上に返された。 しかし、イスラエルの人々は海の中の乾いた所を進んだ。
20 アロンの姉である女預言者ミリアムが小太鼓を手に取ると、他の女たちも小太鼓を手に持ち、踊りながら彼女の後に続いた。 21 ミリアムは彼らの音頭を取って歌った。
主に向かって歌え。
主は大いなる威光を現し
馬と乗り手を海に投げ込まれた。
マラの苦い水
22 モーセはイスラエルを、葦の海から旅立たせた。
彼らはシュルの荒れ野に向かって、荒れ野を三日の間進んだが、水を得なかった。 23 マラに着いたが、そこの水は苦くて飲むことが出来なかった。 こういうわけで、そこの名はマラ(苦い)と呼ばれた。 24 民はモーセに向かって、「何を飲んだらよいか」と不平を言った。 25 モーセが主に向かって叫ぶと、主は彼に一本の木を示された。 その木を水に投げ込むと、水は甘くなった。
その所で主は彼に掟と法とを与えられ、またその所で彼を試みて、 26 言われた。
「もしあなたが、あなたの神、主の声に必ず聞き従い、彼の目にかなう正しいことを行い、彼の命令に耳を傾け、すべての掟を守るならば、わたしがエジプト人に下した病をあなたには下さない。 わたしはあなたをいやす主である。」
27 彼らがエリムに着くと、そこには十二の泉があり、七十本のなつめやしが茂っていた。 その泉のほとりに彼らは宿営した。
マナ 16
1 イスラエルの人々の共同体全体はエリムを出発し、エリムとシナイとの間にあるシンの荒れ野に向かった。 それはエジプトの国を出た年の第二の月の十五日であった。 2 荒れ野に入ると、イスラエルの人々の共同体全体はモーセとアロンに向かって不平を述べ立てた。 3 イスラエルの人々は彼らに言った。
「我々はエジプトの国で、主の手にかかって、死んだ方がましだった。 あのときは肉のたくさん入った鍋の前に座り、パンを腹いっぱい食べられたのに。 あなたたちは我々をこの荒れ野に連れ出し、この全会衆を飢え死にさせようとしている。」
4 主はモーセに言われた。
「見よ、わたしはあなたたちのために、天からパンを降らせる。 民は出て行って、毎日必要な分だけ集める。 わたしは、彼らがわたしの指示どおりにするかどうかを試す。 5 ただし、六日目に家に持ち帰ったものを整えれば、毎日集める分の二倍になっている。
6 モーセとアロンはすべてのイスラエルの人々に向かって言った。
「夕暮れに、あなたたちは、主があなたたちをエジプトの国から導き出されたことを知り、 7 朝に、主の栄光を見る。 あなたたちが主に向かって不平を述べるのを主が聞かれたからだ。 我々が何者なので、我々に向かって不平を述べるのか。」
8 モーセは更に言った。
「主は夕暮れに、あなたたちに肉を与えて食べさせ、朝にパンを与えて満腹にさせられる。 主は、あなたたちが主に向かって述べた不平を、聞かれたからだ。 一体、我々は何者なのか。 あなたたちは我々に向かってではなく、実は、主に向かって不平を述べているのだ。」
9 モーセがアロンに、「あなたはイスラエルの人々の共同体全体に向かって、主があなたたちの不平を聞かれたから、主の前に集まれと命じなさい」と言うと、 10 アロンはイスラエルの人々の共同体全体にそのことを命じた。 彼らが荒れ野の方を見ると、見よ、主の栄光が雲の中に現れた。 11 主はモーセに仰せになった。
12 「わたしは、イスラエルの人々の不平を聞いた。 彼らに伝えるがよい。 『あなたたちは夕暮れには肉を食べ、朝にはパンを食べて満腹する。 あなたたちはこうして、わたしがあなたたちの神、主であることを知るようになる』と。」
13 夕方になると、うずらが飛んで来て、宿営を覆い、朝には宿営の周りに露が降りた。 14 この降りた露が蒸発すると、見よ、荒れ野の地表を覆って薄くて壊れやすいものが大地の霜のように薄く残っていた。
15 イスラエルの人々はそれを見て、これは一体何だろうと、口々に言った。 彼らはそれが何であるか知らなかったからである。 モーセは彼らに言った。
「これこそ、主があなたたちに食物として与えられたパンである。 16 主が命じられたことは次のことである。 『あなたたちはそれぞれ必要な分、つまり一人当たり一オメルを集めよ。 それぞれ自分の天幕にいる家族の数に応じて取るがよい。』」
17 イスラエルの人々はそのとおりにした。 ある者は多く集め、ある者は少なく集めた。 18 しかし、オメル升で量ってみると、多く集めた者も余ることなく、少なく集めた者も足りないことなく、それぞれが必要な分を集めた。 19 モーセは彼らに、「だれもそれを、翌朝まで残しておいてはならない」言ったが、 20 彼らはモーセに聞き従わず、何人かはその一部を翌朝まで残しておいた。 虫が付いて臭くなったので、モーセは彼らに向かって怒った。 21 そこで、彼らは朝ごとにそれぞれ必要な分を集めた。 日が高くなると、それは溶けてしまった。 22 六日目になると、彼らは二倍の量、一人当たり二オメルのパンを集めた。 共同体の代表者は皆でモーセのもとに来て、そのことを報告した。
23 モーセは彼らに言った。
「これは、主が仰せられたことである。 明日は休息の日、主の聖なる安息日である。 焼くものは焼き、煮るものは煮て、余った分は明日の朝まで蓄えておきなさい。」
24 彼らはモーセの命じたとおり、朝まで残しておいたが、臭くならず、虫も付かなかった。 25 モーセは言った。
「今日はそれを食べなさい。 今日は主の安息日である。 今日は何も野に見つからないであろう。 26 あなたたちは六日間集めた。 七日目は安息日だから野には何もないであろう。」
27 七日目になって、民のうちの何人かが集めに出て行ったが、何も見つからなかった。 28 主はモーセに言われた。
「あなたたちは、いつまでわたしの戒めと教えを拒み続けて、守らないのか。 29 よくわきまえなさい、主があなたたちに安息日を与えたことを。 そのために、六日目には、主はあなたたちに二日分のパンを与えている。 七日目にはそれぞれ自分の所にとどまり、その場所から出てはならない。」
30民はこうして、七日目に休んだ。 31 イスラエルの家では、それをマナと名付けた。 それは、コエンドロの種に似て白く、蜜の入ったウェファースのような味がした。 32 モーセは言った。
「主が命じられたことは次のことである。 『その中から正味一オメルを量り、代々にわたって蓄えよ。 わたしがあなたたちをエジプトの国から導き出したとき、荒れ野で食べさせたパンを彼らが見ることができるためである。』」
33 モーセがアロンに、「壺を用意し、その中に正味一オメルのマナを入れ、それを主の御前に置き、代々にわたって蓄えておきなさい」と言うと、 34 アロンは、主がモーセに命じられたとおり、それを掟の箱の前に置いて蓄えた。 35 イスラエルの人々は、人の住んでいる土地に着くまで四十年にわたってこのマナ食べた。 すなわち、カナン地方の境に到着するまで彼らはこのマナを食べた。 36 一オメルは十分の一エファである。
岩からほとばしる水 17
1 主の命令により、イスラエルの人々の共同体全体は、シンの荒れ野を出発し、旅程に従って進み、レフィディムに宿営したが、そこには民の飲み水がなかった。 2 民がモーセと争い、「我々に飲み水を与えよ」と言うと、モーセは言った。
「なぜ、わたしと争うのか。 なぜ、主を試すのか。」
3 しかし、民は喉が渇いてしかたがないので、モーセに向かって不平を述べた。
「なぜ、我々をエジプトから導き上ったのか。 わたしも子供たちも、家畜までも渇きで殺すためなのか。」 4 モーセは主に、「わたしはこの民をどうすればよいのですか。 彼らは今にも、わたしを石で打ち殺そうとしています」と叫ぶと、 5 主はモーセに言われた。 「イスラエルの長老数名を伴い、民の前を進め。 また、ナイル川を打った杖を持って行くがよい。 6 見よ、わたしはホレブの岩の上であなたの前に立つ。 あなたはその岩を打て。 そこから水が出て、民は飲むことができる。」
モーセは、イスラエルの長老たちの目の前でそのとおりにした。 7 彼は、その場所をマサ(試し)とメリバ(争い)と名付けた。 イスラエルの人々が、「果たして、主は我々の間におられるのかどうか」と言って、モーセと争い、主を試したからである。
アマレクとの戦い
8 アマレクがレフィディムに来てイスラエルと戦ったとき、 9 モーセはヨシュアに言った。
「男子を選び出し、アマレクとの戦いに出陣させるがよい。 明日、わたしは神の杖を手に持って、丘の頂に立つ。」
10 ヨシュアは、モーセの命じたとおりに実行し、アマレクと戦った。 モーセとアロン、そしてフルは丘の頂に登った。 11 モーセが手を上げている間、イスラエルは優勢になり、手を下ろすと、アマレクが優勢になった。 12 モーセの手が重くなったので、アロンとフルは石を持って来てモーセの下に置いた。 モーセはその上に座り、アロンとフルはモーセの両側に立って、彼の手を支えた。 その手は、日の沈むまで、しっかりと上げられていた。 13 ヨシュアは、アマレクとその民を剣にかけて打ち破った。 14 主はモーセに言われた。 「このことを文書に書き記して記念とし、また、ヨシュアに読み聞かせよ。 『わたしは、アマレクの記憶を天の下から完全にぬぐい去る』と。」
15 モーセは祭壇を築いて、それを「主はわが旗」と名付けて、16 言った。
「彼らは主の御座に背いて手を上げた。
主は代々アマレクと戦われる。」
エトモのモーセ訪問 18
1 モーセのしゅうとで、ミディアンの祭司であるエトロは、神がモーセとその民イスラエルのためになされたすべてのこと、すなわち、主がイスラエルをエジプトから導き出されたことを聞いた。 2 モーセのしゅうとエトロは、モーセが先に帰していた妻のツィボラと、 3 二人の息子を連れて来た。 一人は、モーセが、「わたしは異国にいる寄留者だ」と言って、ゲルショムと名付け、 4 もう一人は、「わたしの父の神はわたしの助け、ファラオの剣からわたしを救われた」と言って、エリエゼルと名付けた。 5 モーセのしゅうとエトロは、モーセの息子たちと妻を連れて荒れ野に行き、神の山に宿営しているモーセのところに行った。 6 彼はモーセに、「あなたのしゅうとであるわたし、エトロがあなたの妻と二人の子供を連れて来た」と伝えると、 7 モーセは出て来てしゅうとを迎え、身をかがめて口づけした。 彼らは互いに安否を尋ねあってから、天幕の中に入った。 8 モーセはしゅうとに、主がイスラエルのためファラオとエジプトに対してなされたすべてのこと、すなわち、彼らは途中であらゆる困難に遭遇したが、主が彼らを救い出されたことを語り聞かせると、 9 エトロは、主がイスラエルをエジプト人の手から救い出し、彼らに恵みを与えられたことを喜んで、 10 言った。
「主をたたえよ
主はあなたたちをエジプト人の手から
ファラオの手から救い出された。
主はエジプト人のもとから民を救い出された。
11今、わたしは知った
彼らがイスラエルに向かって
高慢にふるまったときにも
主はすべての神々にまさって偉大であったことを。」
12 モーセのしゅうとエトロは焼き尽くす捧げ物といけにえを神にささげた。 アロンとイスラエルの長老たちも皆来て、モーセのしゅうとと共に神の御前で食事をした。
13 翌日になって、モーセは座に着いて民を裁いたが、民は朝から晩までモーセの裁きを待って並んでいた。 14 モーセのしゅうとは、彼が民のために行っているすべてのことを見て、「あなたが民のためにしているこのやり方はどうしたことか。 なぜ、あなた一人だけが座に着いて、民は朝から晩まであなたの裁きを待って並んでいるのか」と尋ねた。 15 モーセはしゅうとに、「民は、神に問うためにわたしのところに来るのです。 16 彼らの間に何か事件が起こると、わたしのところに来ますので、わたしはそれぞれの間を裁き、また、神の掟と指示とを知らせるのです」と答えた。 17 モーセのしゅうとは言った。 「あなたのやり方は良くない。 18 あなた自身も、あなたを尋ねて来る民も、きっと疲れ果ててしまうだろう。 このやり方ではあなたの荷が重すぎて、一人では負いきれないからだ。 19 わたしの言うことを聞きなさい。 助言をしよう。 神があなたと共におられるように。 あなたが民に代わって神の前に立って事件について神に述べ、 20 彼らに掟と指示を示して、彼らの歩むべき道となすべき事を教えなさい。 21 あなたは、民全員の中から、神を畏れる有能な人で、不正な利得を憎み、信頼に値する人物を選び、千人隊長、百人隊長、五十人隊長、十人隊長として民の上に立てなさい。 22 平素は彼らに民を裁かせ、大きな事件があったときだけ、あなたのもとに持って来させる。 小さな事件は彼ら自身で裁かせ、あなたの負担を軽くし、あなたと共に彼らに分担させなさい。 23 もし、あなたがこのやり方を実行し、神があなたに命令を与えてくださるならば、あなたは任に堪えることができ、この民も皆、安心して自分の所へ帰ることができよう。 24 モーセはしゅうとの言うことを聞き入れ、その勧めのとおりにし、 25 全イスラエルの中から有能な人々を選び、彼らを民の長、すなわち、千人隊長、百人隊長、五十人隊長、十人隊長とした。 26 こうして、平素は彼らが民を裁いた。 難しい事件はモーセのもとに持って来たが、小さい事件はすべて、彼ら自身が裁いた。
27 しゅうとはモーセに送られて、自分の国に帰って行った。
シナイ山に着く 19
1 イスラエルの人々は、エジプトの国を出て三日目のその日に、シナイの荒れ野に到着した。 2 彼らはレフィディムを出発して、シナイの荒れ野に着き、荒れ野に天幕を張った。 イスラエルは、そこで、山に向かって宿営した。
3 モーセが神のもと登って行くと、山から主は彼に語りかけて言われた。
「ヤコブの家にこのように語り
イスラエルの人々に告げなさい。
4 あなたたちは見た
わたしがエジプト人にしたこと
また、あなたたちを鷲の翼に乗せて
わたしのもとに連れて来たことを。
5 今、もしわたしの声に聞き従い
わたしの契約を守るならば
あなたたちはすべて民の間にあって
わたしの宝となる。
世界はすべてわたしのものである。
6 あなたたちは、わたしにとって
祭司の王国、聖なる国民となる。
これが、イスラエルの人々に語るべき言葉である。」
7 モーセは戻って、民の長老たちを呼び集め、主が命じられた言葉をすべて彼らの前で語った。 8 民は皆、一斉に答えて、「わたしたちは、主が語られたことをすべて、行います」と言った。
モーセが民の言葉を主に取り次ぐと、 9 主はモーセに言われた。 「見よ、わたしは濃い雲の中にあってあなたに臨む。 わたしがあなたと語るのを民が聞いて、いつまでもあなたを信じるようになるためである。」
モーセは民の言葉を主に告げた。
10 主はモーセに言われた。 「民のところに行き、今日と明日、彼らを聖別し、衣服を洗わせ、 11 三日目のために準備させなさい。 三日目に、民全員の見ている前で、主はシナイ山に降られるからである。 12 民のために周囲に境を設けて、命じなさい。 『山に登らぬよう、また、その境界に触れぬよう注意せよ。 山に触れる者は必ず死刑に処せられる。 13 その人に手を触れずに、石で打ち殺すか、矢で射殺さねばならない。 獣であれ、人であれ、生かしておいてはならない。 角笛が長く吹き鳴らされるとき、ある人々は山に登ることができる。』」
14 モーセは山から民のところに下って行き、民を聖別し、衣服を洗わせ、 15 民に命じて、「三日目のために準備をしなさい。 女に近づいてはならない」と言った。 16 三日目の朝になると、雷鳴と稲妻と厚い雲が山に臨み、角笛の音が鋭く鳴り響いたので、宿営にいた民は皆、震えた。 17 しかし、モーセが民を神に会わせるために宿営から連れ出したので、彼らは山のふもとに立った。 18 シナイ山は全山煙に包まれた。 主が火の中を山の上に降られたからである。 煙は炉の煙のように立ち上り、山全体が激しく震えた。 19 角笛の音がますます鋭く鳴り響いたとき、モーセが語りかけると、神は雷鳴をもって答えられた。
20 主はシナイ山の頂に降り、モーセを山の頂に呼び寄せられたので、モーセは登って行った。 21 主はモーセに言われた。 「あなたは下って行き、民が主を見ようとして越境し、多くの者が命を失うことのないように警告しなさい。 22 また主に近づく祭司たちも身を清め、主が彼らを撃たれることがないようにしなさい。」 23 モーセは主に言った。 「民がシナイ山に登ることはできません。 山に境を設けて、それを聖別せよとあなたがわたしたちに警告されたからです。」 24 主は彼に言われた。 「さあ、下って行き、あなたはアロンと共に登って来なさい。 ただし、祭司たちと民とは越境して主のもとに登って来てはならない。 主が彼らを撃つことがないためである。 25 モーセは民のもとに下って行き、彼らに告げた。
十戒 20
1 神はこれらすべての言葉を告げられた。
2 「わたしは主、あなたの神、あなたをエジプトの国、奴隷の家から導き出した神である。
3 あなたには、わたしをおいてほかに神があってはならない。
4 あなたはいかなる像も造ってはならない。 上は天にあり、下は地にあり、また地の下の水の中にある、いかなるものの形も造ってはならない。 5 あなたはそれらに向かってひれ伏したり、それらに仕えたりしてはならない。 わたしは主、あなたの神。 わたしは熱情の神である。 わたしを否む者には、父祖の罪を子孫に三代、四代までも問うが、 6 わたしを愛し、わたしの戒めを守る者には、幾千代にも及ぶ慈しみを与える。 7 あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。 みだりにその名を唱える者を主は罰せずにはおかれない。
8 安息日を心に留め、これを聖別せよ。 9 六日の間働いて、何であれあなたの仕事をし、 10 七日目は、あなたの神、主の安息日であるから、いかなる仕事もしてはならない。 あなたも、息子も、娘も、男女の奴隷も、家畜も、あなたの町の門の中に寄留する人々も同様である。 11 六日の間に主は天と地と海とそこにあるすべてのものを造り、七日目に休まれたから、主は安息日を祝福して聖別されたのである。
12 あなたの父母を敬え。 そうすればあなたは、あなたの神、主が与えられる土地に長く生きることができる。
13 殺してはならない。
14 姦淫してはならない。
15 盗んではならない。
16 隣人に関して偽証してはならない。
17 隣人の家を欲してはならない。 隣人の妻、男女の奴隷、牛、ろばなど隣人のものを一切欲してはならない。」
18 民全員は、雷鳴がとどろき、稲妻が光り、角笛の音が鳴り響いて、山が煙に包まれる有様を見た。 民は見て恐れ、遠くから離れて立ち、 19 モーセに言った。 「あなたがわたしたちに語ってください。 わたしたちは聞きます。 神がわたしたちにお語りにならないようにしてください。 そうでないと、わたしたちは死んでしまいます。」 20 モーセは民に答えた。 「恐れることはない。 神が来られたのは、あなたたちを試すためであり、また、あなたたちの前に神を畏れる畏れをおいて、罪を犯させないようにするためである。 21 民は遠く離れて立ち、モーセだけが神のおられる密雲に近づいて行った。
契約の書
(1) 祭壇について
22 主はモーセに言われた。
イスラエルの人々にこう言いなさい。
あなたたちは、わたしが天からあなたたちと語るのを見た。 23 あなたたちはわたしについて、何も造ってはならない。 銀の神々も金の神々も造ってはならない。
24 あなたは、わたしのために土の祭壇を造り、焼き尽くす捧げ物、和解の捧げ物、羊、牛をその上にささげなさい。 わたしの名を唱えられるすべての場所において、わたしはあなたに臨み、あなたを祝福する。 25 しかし、もしわたしのために石の祭壇を造るなら、切り石で築いてはならない。 のみを当てると、石が汚されるからである。 26 あなたは、階段を用いて祭壇に登ってはならない。 あなたの隠し所があらわにならないためである。
(2)奴隷について 21
1 以下は、あなたが彼らに示すべき法である。 2 あなたがヘブライ人である奴隷を買うならば、彼は六年間奴隷として働かねばならないが、七年目には無償で自由の身になることができる。 3 もし、彼が独身で来た場合は、独身で去らねばならない。 もし、彼が妻帯者であった場合は、その妻も共に去ることができる。 4 もし、主人が彼に妻を与えて、その妻が彼との間に息子あるいは娘を産んだ場合は、その妻と子供は主人に属し、彼は独身で去らねばならない。
5 もし、その奴隷が、「わたしは主人と妻子とを愛しており、自由の身になる意思はありません」と明言する場合は、 6 主人は彼を神のもとに連れて行く。 入り口もしくは入り口の柱のところに連れて行き、彼の耳を錐で刺し通すならば、彼を生涯、奴隷とすることができる。
7 人が自分の娘を女奴隷として売るならば、彼女は、男奴隷が去るときと同じように去ることはできない。 8 もし、主人が彼女を一度自分のものと定めながら、気に入らなくなった場合は、彼女が買い戻されることを許さねばならない。 彼は彼女を裏切ったのだから、外国人に売る権利はない。 9 もし、彼女を自分の息子のものと定めた場合は、自分の娘と同じように扱わなければならない。 10 もし、彼が別の女をめとった場合も、彼女から食事、衣服、夫婦の交わりを減らしてはならない。 11 もし、彼がこの三つの事柄を実行しない場合は、彼女は金を支払わずに無償で去ることができる。
(3) 死に値する罪
12 人を打って死なせた者は必ず死刑に処せられる。 13 ただし、故意ではなく、偶然、彼の手に神が渡された場合は、わたしがあなたのために一つの場所を定める。 彼はそこに逃れることができる。 14 しかし、人が故意に隣人を殺そうとして暴力を振るうならば、あなたは彼をわたしの祭壇のもとからでも連れ出して、処刑することができる。
15 自分の父あるいは母を打つ者は、必ず死刑に処せられる。
16 人を誘拐する者は、彼を売った場合も、自分の手もとに置いていた場合も、必ず死刑に処せられる。
17 自分の父あるいは母を呪う者は、必ず死刑に処せられる。
(4) 身体の障害
18 人々が争って、一人が他の一人を石、もしくはこぶしで打った場合は、彼が死なないで、床に伏しても、 19 もし、回復して、杖を頼りに外を歩き回ることができるようになるならば、彼を打った者は罰を免れる。 ただし、仕事を休んだ分を補償し、完全に治療させねばならない。
20人が自分の男奴隷あるいは女奴隷を棒で打ち、その場で死なせた場合は、必ず罰せられる。 21 ただし、一両日でも生きていた場合は、罰せられない。 それは自分の財産だからである。
22 人々がけんかをして、妊娠している女を打ち、流産させた場合は、もしその他の損傷がなくても、その女の主人が要求する賠償を支払わねばならない。 仲裁者の裁定に従ってそれを支払わねばならない。 23 もし、その他の損傷があるならば、命には命、 24 目には目、歯には歯、手には手、足には足、 25 やけどにはやけど、生傷には生傷、打ち傷には打ち傷をもって償わなければならない。
26 人が自分の男奴隷あるいは女奴隷の目を打って、目がつぶれた場合、その目の償いとして、その者を自由にして去らせねばならない。 27 もし、自分の男奴隷あるいは女奴隷の歯を折った場合、その歯の償いとして、その者を自由に去らせねばならない。
28 牛が男あるいは女を突いて死なせた場合、その牛は必ず石で打ち殺されねばならない。 また、その肉は食べてはならない。 しかし、その牛の所有者には罪はない。 29 ただし、もし、その牛に以前から突く癖があり、所有者に警告がなされていたのに、彼がその警告を守らず、男あるいは女を死なせた場合は、牛は石で打ち殺され、所有者もまた死刑に処せられる。 30 もし、賠償金が要求された場合には、自分の命の代償として、要求されたとおりに支払わねばならない。 31 男の子あるいは女の子を突いた場合も、この規定に準じて処理されねばならない。 32 もし、牛が男奴隷あるいは女奴隷を突いた場合は、銀三十シェケルをその主人に支払い、その牛は石で打ち殺されねばならない。
(5) 財産の損傷
33 人が水溜めをあけたままにしておくか、水溜めを掘って、それに蓋をしないでおいたため、そこに牛あるいはろばが落ちた場合、 34 その水溜めの所有者はそれを償い、牛あるいはろばの所有者に銀を支払う。 ただし、死んだ家畜は彼のものとなる。
35 ある人の牛が隣人の牛を突いて死なせた場合、生きている方の牛を売って、その代金を折半し、死んだ方の牛も折半する。 36 しかし、牛に以前から突く癖のあることが分かっていながら、所有者が注意を怠った場合は、必ず、その牛の代償として牛で償わねばならない。 ただし、死んだ牛は彼のものとなる。
(6) 盗みと財産の保管
37 人が牛あるいは羊を盗んで、これを屠るか、売るかしたならば、牛一頭の代償として牛五頭、羊一匹の代償として羊四匹で償わねばならない。
22 2b 彼は必ず償わなければならない。 もし、彼が何も持っていない場合は、その盗みの代償として身売りせねばならない。 3 もし、牛であれ、ろばであれ、羊であれ、盗まれたものが生きたままで彼の手もとに見つかった場合は、二倍にして償わねばならない。
1 もし、盗人が壁に穴をあけて入るところを見つけられ、打たれて死んだ場合、殺した人に血を流した罪はない。 2a しかし、太陽が昇っているならば、殺した人に血を流した責任がある。
4 人が畑あるいはぶどう畑で家畜に草を食べさせるとき、自分の家畜を放って、他人の畑で草を食べさせたならば、自分の畑とぶどう畑の最上の産物をもって償わねばならない。
5 火が出て、茨に燃え移り、麦束、立ち穂、あるいは畑のものを焼いた場合、火を出した者が必ず償わねばならない。
6 人が銀あるいは物品の保管を隣人に託し、それが隣人の家から盗まれた場合、もし、その盗人が見つかれば、盗人は二倍にして償わねばならない。 7 もし、盗人が見つからない場合は、その家の主人が神の御もとに進み出て、自分は決して隣人の持ち物に手をかけなかったことを誓わねばならない。 8 牛、ろば、羊、あるいは衣服、その他すべての紛失物について言い争いが生じ、一方が、「それは自分の物です」と言うとき、両者の言い分は神の御もとに出され、神が有罪とした者が、隣人に二倍の償いをせねばならない。
9 人が隣人にろば、牛、羊、その他の家畜を預けたならば、それが死ぬか、傷つくか、奪われるかして、しかもそれを見た者がいない場合、 10 自分は決して隣人の持ち物に手をかけなかった、と両者の間で主に誓いがなされねばならない。 そして、所有者はこれを受け入れ、預かった人は償う必要はない。 11 ただし、彼のところから確かに盗まれた場合は、所有者に償わねばならない。 12 もし、野獣にかみ殺された場合は、証拠を持って行く。 かみ殺されたものに対しては、償う必要はない。
13 人が隣人から家畜を借りて、それが傷つくか、死んだならば、所有者が一緒にいなかったときには必ず償わねばならない。 14 もし、所有者が一緒にいたならば、償う必要はない。 ただし、それが賃借りしたものであれば、借り賃は支払わねばならない。
(7) 処女の誘惑
15 人がまだ婚約していない処女を誘惑し、彼女と寝たならば、必ず結納金を払って、自分の妻としなければならない。 16 もし、彼女の父親が彼に与えることを強く拒む場合は、彼は処女のための結納金に相当するものを銀で支払わねばならない。
(8) 死に値する罪
17 女呪術師を生かしておいてはならない。
18 すべて獣と寝る者は必ず死刑に処せられる。
19 主ひとりのほか、神々に犠牲をささげる者は絶ち滅ぼされる。
(9) 人道的律法
20 寄留者を虐待したり、圧迫したりしてはならない。 あなたたちはエジプトの国で寄留者であったからである。
21 寡婦や孤児はすべて苦しめてはならない。 22 もし、あなたが彼を苦しめ、彼がわたしに向かって叫ぶ場合は、わたしは必ずその叫びを聞く。 23 そして、わたしの怒りは燃え上がり、あなたたちを剣で殺す。 あなたたちの妻は寡婦となり、子供らは、孤児となる。 24 もし、あなたがわたしの民、あなたと共にいる貧しい者に金を貸す場合は、彼に対して高利貸しのようになってはならない。 彼から利子を取ってはならない。 25 もし、隣人の上着を質にとる場合には、日没までに返さねばならない。 26 なぜなら、それは彼の唯一の衣服、肌を覆う着物だからである。 彼は何にくるまって寝ることができるだろうか。 もし、彼がわたしに向かって叫ぶならば、わたしは聞く。 わたしは憐れみ深いからである。
(10) 祭儀的律法
27 神をののしってはならない。 あなたの民の中の代表者を呪ってはならない。
28 あなたの豊かな収穫とぶどう酒の奉献を遅らせてはならない。 あなたの初子をわたしにささげねばならない。 29 あなたの牛と羊についても同じようにせよ。 七日の間、その母と共に置き、八日目にわたしにささげなければならない。
30 あなたたちは、わたしに属する聖なる者とならねばならない。 野外でかみ殺された肉を食べてはならない。 それは犬に投げ与えるべきでる。
(11) 法廷において 23
1 あなたは根拠のないうわさを流してはならない。 悪人に加担して、不法を引き起こす証人となってはならない。
2 あなたは多数者に追随して、悪を行ってはならない。 法廷の争いにおいて多数者に追随して証言し、判決を曲げてはならない。 3 また、弱い人を訴訟において曲げてかばってはならない。
(12) 敵対する者とのかかわり
4 あなたの敵の牛あるいはろばが迷っているのに出会ったならば、必ず彼のもとに連れ戻さなければならない。 5 もし、あなたを憎む者のろばが荷物の下に倒れ伏しているのを見た場合、それを見捨てておいてはならない。 必ず彼と共に助け起こさねばならない。
(13) 訴訟において
6 あなたは訴訟において乏しい人の判決を曲げてはならない。 7 偽りの発言を避けねばならない。 罪なき人、正しい人を殺してはならない。 わたしは悪人を、正しいとすることはない。 8 あなたは賄賂を取ってはならない。 賄賂は、目のあいている者の目を見えなくし、正しい人の言い分をゆがめるからである。 9 あなたは寄留者を虐げてはならない。 あなたたちは寄留者の気持ちを知っている。 あなたたちは、エジプトの国で寄留者であったからである。
(14) 安息年
10 あなたは六年の間、自分の土地に種を蒔き、産物を取り入れなさい。 11 しかし、七年目には、それを休ませて、休閑地しなければならない。 あなたの民の乏しい者が食べ、残りを野の獣に食べさせるがよい。 ぶどう畑、オリーブ畑の場合も同じようにしなければならない。
(15)安息日
12 あなたは六日の間、あなたの仕事を行い、七日目には、仕事をやめねばならない。 それは、あなたの牛やろばが休み、女奴隷の子や寄留者が元気を回復するためである。
13 わたしが命じたことをすべて、あなたたちは守らねばならない。 他の神々の名を唱えてはならない。 それを口にしてはならない。
(16) 祭りについて
14 あなたは年に三度、わたしのために祭りを行わねばならない。 15 あなたは除酵祭を守らねばならない。 七日の間、わたしが命じたように、あなたはアビブの月の定められた時に酵母を入れないパンを食べねばならない。 あなたはその時エジプトを出たからである。 何も持たずにわたしの前に出てはならない。 16 あなたは、畑に蒔いて得た産物の初物を刈り入れる刈り入れの祭りの祭りを行い、年の終わりには、畑の産物を取り入れる時に、取入れの祭りを行わねばならない。 17 年に三度、男子はすべて、主なる神の御前に出ねばならない。 18 あなたはわたしにささげるいけにえの血を、酵母を入れたパンと共にささげてはならない。 また、祭りの捧げ物の脂肪を朝まで残しておいてはならない。 19 あなたは、土地の最上の初物をあなたの神、主の宮に携えて来なければならない。
あなたは子山羊をその母の乳で煮てはならない。
違反に対する警告
20 見よ、わたしはあなたの前に使いを遣わして、あなたを道で守らせ、わたしの備えた場所に導かせる。 21 あなたは彼に心を留め、その声に聞き従い、彼に逆らってはならない。 彼はあなたたちの背きを赦さないであろう。 彼はわたしの名を帯びているからである。 22 しかし、もしあなたが彼の声に聞き従い、わたしの語ることをすべて行うならば、わたしはあなたの敵に敵対し、仇に仇を報いる。
23 わたしの使いがあなたの前を行き、あなたをアモリ人、ヘト人、ペリジ人、カナン人、ヒビ人、エブス人のところに導くとき、わたしは彼らを絶やす。 24 あなたは彼らの神々にひれ伏し仕えてはならない。 そのならわしを行ってはならない。 あなたは彼らを滅ぼし、その石柱を打ち砕かねばならない。 25 あなたたちは、あなたたちの神、主に仕えねばならない。 主はあなたのパンと水を祝福するであろう。 わたしはあなたの中から病を取り除く。 26 あなたの国には流産する女も不妊の女もいなくなる。 わたしはあなたの天寿を全うさせる。
27 わたしは、あなたの前にわたしの畏れを送り、あなたが入って行く土地の民をすべて混乱に陥れ、あなたの敵をすべて敗退させる。 28 わたしはまた、あなたの前に恐怖を送り、あなたの前からヒビ人、カナン人、ヘト人を追い出す。 29 しかし、一年間は彼らをあなたの前から追い出さない。 さもないと、国土は荒れ果て、野獣の数が増し、あなたに向かって来る。 30 わたしは彼らをあなたの前から徐々に追い出すので、あなたは子を産み、国土を受け継ぐに至る。 31 わたしは葦の海からペリシテ人の海まで、また荒れ野から大河までをあなたの領地と定める。 わたしはその土地の住民をあなたたちの手に渡すから、あなたは彼らを自分の前から追い出す。 32 あなたは彼らおよび彼らの神々と契約を結んではならない。 33 彼らはあなたの国に住むことはできない。 彼らがあなたに、わたしに対する罪を犯させないためである。 さもないと、あなたは彼らの神々を拝み、それは、あなたにとって罠となるからである。
契約の締結 24
1 主はモーセに言われた。
「あなたは、アロン、ナダブ、アビフ、およびイスラエルの七十人の長老と一緒に主のもとに登りなさい。 あなたたちは遠く離れて、ひれ伏さねばならない。 2 しかし、モーセだけは主に近づくことができる。 その他の者は近づいてはならない。 民は彼と共に登ることはできない。」
3 モーセは戻って、主のすべての言葉とすべての法を民に読み聞かせると、民は皆、声を一つにして答え、「わたしたちは、主が語られた言葉をすべて行います」と言った。 4 モーセは主の言葉をすべて書き記し、朝早く起きて、山のふもとに祭壇を築き、十二の石の柱イスラエルの十二部族のために建てた。 5 彼はイスラエルの人々の若者を遣わし、焼き尽くす捧げものをささげさせ、更に和解の捧げ物として主に雄牛をささげさせた。 6 モーセは血の半分を取って鉢に入れて、残りの半分を祭壇に振りかけると、 7 契約の書を取り、民に読んで聞かせた。 彼らが、「わたしたちは主が語られたことをすべて行い、守ります」と言うと、 8 モーセは血を取り、民に振りかけて言った。 「見よ、これは主がこれらの言葉に基づいてあなたたちと結ばれた契約の血である。」
9 モーセはアロン、ナダブ、アビフおよびイスラエルの七十人の長老と一緒に登って行った。 10 彼らがイスラエルの神を見ると、その御足の下にはサファイアの敷石のような物があり、それはまさに大空のように澄んでいた。 11 神はイスラエルの民の代表者たちに向かって手を伸ばされなかったので、彼らは神を見て、食べ、また飲んだ。
12 主が、「わたしのもとに登りなさい。 山に来て、そこにいなさい。 わたしは、彼らを教えるために、教えと戒めを記した石の板をあなたに授ける」とモーセに言われると、 13 モーセは従者ヨシュアと共に立ち上がった。 モーセは、神の山へ登って行くとき、 14 長老たちに言った。 「わたしたちがあなたたちのもとに帰って来るまで、ここにとどまっていなさい。 見よ、アロンとフルとがあなたたちと共にいる。 何か訴えのある者は、彼らのところに行きなさい。」
15 モーセが山に登って行くと、雲は山を覆った。 16 主の栄光がシナイ山の上にとどまり、雲は六日の間、山を覆っていた。 七日目には、主は雲の中からモーセに呼びかけられた。 17 主の栄光はイスラエルの人々の目には、山の頂で燃える火のように見えた。 18 モーセは雲の中に入って行き、山に登った。 モーセは四十日四十夜山にいた。
幕屋建設の指示 25
1 主はモーセに仰せになった。
2 イスラエルの人々に命じて、わたしのもとに献納物を持って来させなさい。 あなたたちは、彼らがおのおの進んで心からささげるわたしへの献納物を受け取りなさい。 3 彼らから受け取るべき献納物は以下のとおりである。 金、銀、青銅、 4 青、紫、緋色の毛糸、亜麻糸、山羊の毛、 5 赤く染めた雄羊の毛皮、じゅごんの皮、アカシヤ材、 6 ともし火のための油、聖別の油と香草の香とに用いる種々の香料、 7 エフォドや胸当てにはめ込むラピス・ラズリやその他の宝石類である。
8 わたしのための聖なる所を彼らに造らせなさい。 わたしは彼らの中に住むであろう。 9 わたしが示す作り方に正しく従って、幕屋とそのすべての祭具を作りなさい。
箱
10 アカシヤ材で箱をつくりなさい。 寸法は縦二・五アンマ、横一・五アンマ。 11 純金で内側も外側も覆い、周囲に金の飾り縁を作る。 12 四つの金環を鋳造し、それを箱の四隅の脚に、すなわち箱の両側に二つずつ付ける。 13-14 箱を担ぐために、アカシヤ材で棒を作り、それを金で覆い、箱の両側に付けた環に通す。 15 棒はその環に通したまま抜かずに置く。 16 この箱に、わたしが与える掟の板を納めなさい。 17 次に、贖いの座を純金で作りなさい。 寸法は縦二・五アンマ、横一・五アンマとする。 18 打ち出し作りで一対のケルビムを作り、贖いの座の両端、 19 すなわち、一つを一方の端に、もう一つを他の端に付けなさい。 一対のケルビムを贖いの座の一部としてその両端に作る。 20 一対のケルビムは顔を贖いの座に向けて向かい合い、翼を広げてそれを覆う。 21 この贖いの座を箱の上に置いて蓋とし、その前にわたしが与える掟の板を納める。 22 わたしは掟の箱の上の一対のケルビムの間、すなわち贖いの座の上からあなたに臨み、わたしがイスラエルの人々に命じることをことごとくあなたに語る。
机
23 アカシア材で机を作りなさい。 寸法は縦二アンマ、横一・五アンマ。 24 純金で覆い、金の飾り?を作る。 25 一トファの幅の枠で四本の脚を補強し、枠にも金の飾り縁を作る。 26 四つの金環を作り、それぞれの脚の外側に付けるが、 27 枠の高さに付け、机を担ぐ棒を通す環とする。 28 アカシア材で棒を作って金で覆い、机を担ぐ棒とする。 29 皿、柄杓、小瓶、水差しを作り、ぶどう酒の捧げ物をささげるのに用いる。 これらは、純金で作る。 30 この机に供えのパンを、絶えずわたしの前に供えなさい。
燭台
31 純金で燭台を作りなさい。 燭台は打つ出し作りとし、台座と支柱、蕚と節と花弁は一体でなければならない。 32 六本の支柱が左右に出るように作り、一方に三本、他方に三本付ける。 33 一本の支柱には三つのアーモンドの花の形をした蕚と節と花弁を付け、もう一本の支柱にも三つのアーモンドの花の形をした蕚と節と花弁を付ける。 燭台から分かれて出ている六本の支柱を同じように作る。 34 燭台の支柱には四つのアーモンドの花と形をした蕚と節と花弁を付ける。 35 節は、支柱が対になって出ている所に一つ、その次に支柱が対になって出ている所に一つ、またその次に支柱が対になって出ている所に一つと、燭台の支柱から出ている六本の支柱の付け根の所に作る。 36 これらの節と支柱は主柱と一体でなければならず、燭台全体は一枚の純金の打ち出し作りとする。
37 次に、七個のともし灯皿を作り、それを上に載せて光が前方に届くようにする。 38 また、芯切り鋏と火皿を純金で作る。 39 燭台とこれらすべての祭具とを重さ一キカルの純金で作る。
40 あなたはこの山で示された作り方に従い、注意して作りなさい。
幕屋を覆う幕 26
1 次に、幕屋を覆う十枚の幕を織りなさい。 亜麻のより糸、青、紫、緋色の糸を使って意匠家の描いたケルビムの模様を織り上げなさい。 2 一枚の幕は長さ二十八アンマ、幅四アンマ、すべての幕を同じ寸法にする。 3 五枚の幕をつづり合わせ、他の五枚も同じようにする。 4 青い糸の輪を作り、一方のつづり合わせたものの端に当たる幕の縁と、もう一方のつづり合わせたものの最後の幕の縁とにそれを並べる。 5 一方の幕について五十の輪、他方のつづり合わせたものの幕にも五十の輪を作り、互に合うように並べて付ける。 6 そこに、五十の金の留め金を作り、両方の幕をそれらで留め合せる。 こうして幕屋を一つに仕上げる。
7 次に、山羊の毛を使って十一枚の幕を作り、幕屋を覆う天幕としなさい。 8 一枚の幕は長さ三十アンマ、幅四アンマで、十一枚の幕をすべて同じ寸法にする。 9 そのうちの五枚をつづり合わせたものと、残りの六枚をつづり合わせたものを作る。 六枚目の幕は天幕の前面で二重にする。 10 五十の輪を作り、一方のつづり合わせたものの端に当たる幕の縁に付け、もう一方のつづり合わせたものの端に当たる幕の縁に五十の輪を付ける。 11 そこに、五十の青銅の留め金を作り、それぞれの輪にはめ、天幕を留め合せて一つに仕上げる。 12 天幕の幕の長さの余る分、すなわち、余分の半幕分は幕屋の後ろに垂らす。 13 また、天幕の幕の長さは一方に一アンマ、他方に一アンマ余るが、それは南北両側面を覆うために垂らす。
14 最後に、赤く染めた雄羊の毛皮で天幕の覆いを作り、更にその上をじゅごんの皮の覆いでおおう。
幕屋の壁板と横木
15 幕屋の壁板をアカシア材で作って立てなさい。 16 一枚の壁板は縦十アンマ、横一・五アンマ、 17 それぞれの壁板に二つの柄を作って隣の壁板とつなぎ合わせる。 幕屋の壁板全部に同じものを作る。 18 幕屋の壁板は南側に二十枚並べ、 19 二十枚の壁板の下にはめるために銀の台座四十個を作る。 すなわち、一枚の板の下に作る二つのほぞに合うように二個の台座を、それぞれの壁板の下に置く。 20 幕屋の他の側面、すなわち北側にも二十枚の壁板を並べ、 21 四十個の銀の台座を作り、壁板一枚につき二個の割りで、それぞれの壁板の下に置く。
22 次に、幕屋の後ろ、すなわち西側には六枚の壁板を並べ、 23 更に二枚の板を作って両方の隅とする。 24 壁板は、下部では二つずつ分かれているが、上部は箍で一つに連ねられている。 両方の隅は同じように作る。 25 従って、西側の壁板は八枚となり、銀の台座は、壁板一枚につき二個、次の一枚にも二個と、計十六個となる。
26 次に、アカシヤ材で横木を作りなさい。 幕屋の一方の側の壁板に五本、 27 もう一方の側の壁板に五本、また西側、つまり後ろ側の壁板に五本用いる。 28 壁板の中央の高さに位置する横木は、壁板の端から端まで渡す。 29 金箔で壁板を覆い、金環に横木を通す。 その横木も金箔で覆う。
30 こうして、山で示された方式に従って幕屋を造りなさい。
至聖所の垂れ幕
31 次に、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸を使って、意匠家の描いたケルビムの模様の垂れ幕を作り、 32 金箔で覆ったアカシア材の四本の柱の鉤に掛けなさい。 鉤は金、四本の柱の台座は銀で作る。 33 その垂れ幕は留め金の下に掛け、その垂れ幕の奥に掟の箱を置く、この垂れ幕はあなたたちに対して聖所と至聖所とを分けるものとなる。 34 至聖所の掟の箱の上に贖いの座を置く、 35 垂れ幕の手前には机を置き、向かい合わせに燭台を置く、燭台は幕屋の南側に、机は北側に置く。
天幕の入り口の幕
36 次に、天幕の入り口に掛ける幕を作る。 青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸を使ってつづれ織を作りなさい。 37 また、幕を掛けるためにアカシア材で五本の柱を作り、それを金箔で覆い、鉤は金で作る。 また柱のためには五個の青銅の台座を鋳造する。
祭壇 27
1 アカシア材で祭壇を造りなさい。 縦五アンマ、横五アンマの正方形、高さは三アンマとする。 2 祭壇の四隅にそれぞれ角を作り、祭壇から生えているように作り、全体を青銅で覆う。 3 灰を取る壺、十能、鉢、肉刺し、火皿などの祭具はすべて青銅で作る。 4 祭壇の下部には青銅の網目作りの格子を付ける。 その網の四隅に青銅の環四個を取り付ける。 5 網目格子は祭壇の半ばの高さにある、張り出した棚の下の部分に付ける。 6 祭壇を担ぐためにアカシア材の棒を作り、それを青銅で覆う。 7 この棒を環に差し込み、祭壇を運ぶとき、その両側に棒があるように整えておく。 8 祭壇は板で造り、中を空洞にする。 山であなたに示されたとおりに造りなさい。
幕屋を囲む庭
9 次に、幕屋を囲む庭を造りなさい。 庭の南側に面して、その側のために亜麻のより糸で織った長さ百アンマの幔幕を張る。 10 そのために、二十本の柱と二十個の台座を青銅で作り、柱の鉤と桁は銀で作る。 11 同じようにして、北側に長さ百アンマの幔幕を張り、二十本の柱と二十個の台座を青銅で、柱の鉤と桁は銀で作る。 12 庭の西側には幅五十アンマの幔幕を張り、十本の柱と十個の台座を作る。 13 庭の東側の幅も五十アンマとし、 14 十五アンマの幔幕を三本の柱と三個の台座によって右に、 15 同じく、十五アンマの幔幕を三本の柱と三個の台座によって左に張る。 16 庭の入り口には、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸で織ったつづれ織りの二十アンマの幕を張り、四本の柱と四個の台座を作る。
17 庭を囲むすべての柱は銀の桁でつなぎ合わせる。 柱の鉤は銀、台座は青銅で作る。 18 この庭の奥行きは百アンマ、間口は五十アンマである。 幔幕は高さ五アンマで、亜麻のより糸で織る。 台座は青銅で作る。 19 また、幕屋で祭儀に用いる祭具、幕屋や庭の杭などすべては青銅で作る。
幕屋を囲む庭
9 次に、幕屋を囲む庭を造りなさい。 庭の南側に面して、その側のために亜麻のより糸で織った長さ百アンマの幔幕を張る。 10 そのために、二十本の柱と二十個の台座を青銅で作り、柱の鉤と桁は銀で作る。 11 同じようにして、北側に長さ百アンマの幔幕を張り、二十本の柱と二十個の台座を青銅で、柱の鉤と桁は銀で作る。 12 庭の西側には幅五十アンマの幔幕を張り、十本の柱と十個の台座を作る。 13 庭の東側の幅も五十アンマとし、 14 十五アンマの幔幕を三本の柱と三個の台座によって右に、 15 同じく、十五アンマの幔幕を三本の柱と三個の台座によって左に張る。 16 庭の入り口には、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸で織ったつづれ織りの二十アンマの幕を張り、四本の柱と四個の台座を作る。
17 庭を囲むすべての柱は銀の桁でつなぎ合わせる。 柱の鉤は銀、台座は青銅で作る。 18 この庭の奥行きは百アンマ、間口は五十アンマである。 幔幕は高さ五アンマで、亜麻のより糸で織る。 台座は青銅で作る。 19 また、幕屋で祭儀に用いる祭具、幕屋や庭の杭などすべては青銅で作る。
常夜灯
20 あなたはイスラエルの人々に命じて、オリーブを砕いて取った純粋の油をともし火に用いるために持って来させ、常夜灯をともさせなさい。 21 常夜灯は臨在の幕屋にある掟の箱を隔てる垂れ幕の手前に置き、アロンとその子らが、主の御前に、夕暮れから夜明けまで守る。 これはイスラエルの人々にとって、代々にわたって守るべき不変の定めである。
祭服 28
1 次に、祭司としてわたしに仕えさせるために、イスラエルの人々の中から、兄弟アロンとその子ら、すなわち、ナダブ、アビフ、エルアザルとイタマルを、アロンと共にあなたの近くに置きなさい。 2 あなたの兄弟アロンに威厳と美しさを添える聖なる祭服を作らねばならない。 3 あなたは、わたしが知恵の霊を与えたすべての知恵のある者たちに説明して、わたしの祭司として聖別されたアロンのために祭服を作らせなさい。 4 彼らが作るべき衣類は、胸当て、エフォド、上着、格子縞の長い服、ターバン、飾り帯である。 あなたの兄弟であるアロンとその子らが祭司としてわたしに仕えるときの聖なる祭服を作るために、 5 彼らは金、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻布を受け取る。
エフォド
6 彼らは金、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸を使って、意匠家の描いた模様のエフォドを織り、 7 その両端に二本の肩ひもを付ける。 8 付け帯はエフォドと同じように、金、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸を使って作る。
9 また、二個のラピス・ラズリを取り、その上にイスラエルの子らの名を彫りつける。 10 六つの名を第一の石に、残る六つの名を第二の石に、生まれた順に彫りつける。 11 印章に石の細工人が彫るように、イスラエルの子らの名をその二個の石に彫りつけ、その石を金で縁取りする。 12 その二個の石をエフォドの両肩ひもに付け、イスラエルの子らのための記念の石とする。 アロンは彼らの名を記念として両肩に付け、主の御前に立つ。
13 金の縁取りをし、 14 二本の純金の鎖を組みひものように作って、金で縁取りをしたものに付ける。
胸当て
15 次に、金、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸を使ってエフォドと同じように、意匠家の描いた模様の、裁きの胸当てを織りなさい。 16 それは、縦横それぞれ一ゼレトの真四角なものとし、二重にする。 17 それに宝石を四列に並べて付ける。
第一列 ルビー トパーズ エメラルド
18 第二列 ざくろ石 サファイア ジャスパー
19 第三列 オパール めのう 紫水晶
20 第四列 藍玉 ラピス・ラズリ 碧玉
これらの並べたものを金で縁取りする。 21 これらの宝石はイスラエルの子らの名を表して十二個あり、それぞれの宝石には十二部族に従ってそれぞれの名が印章に彫るように彫りつけられている。
22 次に、組みひも状にねじった純金の鎖を作り、胸当てに付ける。 23 更に、金環二個を作っておのおのを胸当ての上の端に付ける。 24 そして、二本の金の鎖を胸当ての端の二個の金環にそれぞれ通して、 25 二本の鎖の両端を金の縁取り細工に結び付け、エフォドの肩ひもの外側に取り付ける。 26 また別の二個の金環を作って、おのおのを胸当ての下の端、つまりエフォドと接するあたりの裏側に取り付ける。 27 更に、別の二個の金環を作り、それを二本のエフォドの肩ひもの下、すなわちエフォドの付け帯のすぐ上、そのつなぎ目のあたりの外側に取り付ける。 28 胸当ては、その環とエフォドの環を青いねじりひもで結び、それがエフォドの付け帯の上に来るようにし、胸当てがエフォドからはずれないようにする。 29 このようにして、アロンは聖所に入るとき、裁きの胸当てにあるイスラエルの子らの名を胸に帯び、常に主の御前に記念とするのである。
30 裁きの胸当てにはウリムとトンミムを入れる。 それらは、アロンが主の御前に出るときに、その胸に帯びる。 アロンはこうして、イスラエルの人々の裁きを、主の御前に常に胸に帯びるのである。
上着
31 また、エフォドと共に着る上着を青一色の布で作りなさい。 32 その上着の真ん中に頭を通す穴をあけ、そのへりは革の鎧の襟のように縁取りをして破れないようにする。 33 上着の裾の回りには、青、紫、および緋色の毛糸で作ったざくろの飾りを付け、その間に金の鈴を付ける。 34 金の鈴の次にざくろの飾り、金の鈴の次にざくろの飾りと、上着の裾の回りに付ける。 35 アロンが聖所で務めをするとき、この上着を着ける。 それは彼が中に入って、主の御前に出るときにも、立ち去るときにも、鈴の音が聞こえるようにして、死を招くことがないためである。
額当て
36 また、純金の花模様の額当てを作り、その上に印章に彫るように、「主の聖なる者」と彫りなさい。 37 次に、この額当ての両端に青いねじりひもを付け、ターバンに当てて結び、ターバンの正面にくるようにする。 38 これがアロンの額にあれば、アロンは、イスラエルの人々がささげる捧げ物、つまり、聖なる捧げ物に関して生じた罪を負うことになる。 また、彼がそれを常に額に帯びていれば、彼らは主の御前に受入れられる。
アロンとその子らの衣服
39 また、亜麻の長い服を格子縞に織り、亜麻のターバンを作り、またつづれ織りをした飾り帯を作りなさい。
40 また、アロンの子らのためにも長い服を作り、飾り帯を作り、威厳と美しさを添えるターバンを作りなさい。 41 これらの衣服を兄弟アロンとその子らに着せ、彼らに油を注いで祭司の職に就かせ、彼らを聖別してわたしに仕えさせなさい。 42 また、彼らに亜麻布のズボンを作り、腰から腿までの肌を覆い隠すようにしなさい。 43 アロンとその子らがそれを身に着けていれば、臨在の幕屋に入ったとき、あるいは聖所で務めをするために祭壇に近づいたとき、罪を負って死を招くことがない。 これは彼とその子らにとって不変の定めである。
祭司聖別の儀式 29
1 わたしに仕える祭司として、彼らを聖別するためにすべき儀式は、次のとおりである。
若い雄牛一頭と傷のない雄の子羊二匹を取る。 2 次に、酵母を入れないパン、酵母を使わずに、オリーブ油を混ぜて焼いた小麦粉の輪形のパン、オリーブ油を塗った、酵母を入れない薄焼きパンを、みな上等の小麦粉で作る。 3 それをみな一つの籠に入れ、一頭の雄牛、二匹の雄羊と共にささげる。 4 次に、アロンとその子らを臨在の幕屋の入り口に進ませ、彼らを水で清める。 5 次いで、式服一そろいを取り、アロンに長い服、エフォドと共に着る上着、エフォド、胸当てを着せ、エフォドの付け帯で締める。 6 それから、彼の頭にターバンを巻き、その上に聖別のしるしの額当てを付ける。 7 次いで、聖別の油を取り、彼の頭に注ぎかけて、聖別する。 8 次に、アロンの子らを前に進ませ、彼らに長い服を着せ、 9 飾り帯を締め、ターバンを巻く。 彼らの祭司職はこうして、不変の定めにより、彼らのものとなる。
次に、アロンとその子らの任職式を行う。 10 まず、雄牛を臨在の幕屋の前に引いて来る。 アロンとその子らは手を雄牛の頭に置く。 11 あなたはそれを主の御前、臨在の幕屋の入り口で屠る。 12 次いで雄牛の血を器に取り、その一部を指で祭壇の四隅の角に塗り、血は全部祭壇の基に流す。 13 次に、内臓を覆っているすべての脂肪と肝臓の尾状葉と二つの腎臓とそれに付着する脂肪を取って、祭壇で燃やして煙にする。 14 雄牛の肉と皮と胃の中身は宿営の外で焼き捨てる。 これが贖罪の捧げ物である。
15 また、雄羊一匹を取り、アロンとその子らが手を羊の頭に置く。 16 あなたはそれを屠り、血を取って祭壇の四つの側面に注ぎかける。 17 また、その雄羊を各部に分割し、内臓と四肢を水で洗い、分割した各部と頭と共に、 18 その雄羊全部を祭壇で燃やして煙にする。 これは主にささげる焼き尽くす捧げ物であり、主に燃やしてささげる宥めの香りである。
19 次いで、もう一匹の雄羊を取り、アロンとその子らが手を羊の頭に置く。 20 あなたはそれを屠り、血を取ってその一部をアロンとその子らの右の耳たぶと右手の親指と右足の親指に付け、血を祭壇の四つの側面に注ぎかける。 21 また、祭壇の上の血の一部を取り、更に聖別の油の一部を取って、アロンとその衣服、更にアロンの子らとその衣服に振りまく。 そうすれば、彼自身も衣服も、また彼の子ら自身も衣服も、聖なるものとなる。 22 次に、雄羊から脂肪と油尾と内臓を覆う脂肪、肝臓の尾状葉と二つの腎臓とそれに付着する脂肪と右後ろ肢を切り取る。 これは任職の雄羊だからである。 23 また、一塊のパン、オリーブ油を混ぜて焼いた輪形のパン一個、薄焼きパン一個を、主の御前に供えた酵母を入れないパンの籠から取る。 24 あなたはこれらをすべてアロンとその子らの手に載せ、奉納物として主の御前にささげさせる。 25 次いで、彼らの手からそれらを受け取って、祭壇の上の焼き尽くす捧げ物の傍らに置いて煙にし、主を宥める香りとする。 これが燃やして主にささげる捧げ物である。 26 次に、あなたはアロンの任職の雄羊の胸の肉を取り、奉納物として主の御前にささげる。 それはあなたが受けるべき分である。 27 あなたは、アロンとその子らの任職のための雄羊の捧げ物のうちから、奉納物の胸の肉と礼物の右後ろ肢とを聖別しなさい。 28 それは、不変の定めにより、イスラエルの人々からささげられた物のうちアロンとその子らの分となるべきものである。 なぜなら、それは礼物だからである。 それはイスラエルの人々が主に対する献納物として、和解の捧げ物のうちからささげる物である。
29 アロンの祭服は、彼の後を継ぐ子らが聖別の油を注がれ、祭司職に任命されたならば、彼らのものとなる。 30 アロンの子らのうち、彼の後を継いで祭司となり、臨在の幕屋に入って聖所で仕える者が、その祭服を七日の間、着用する。
31 あなたは任職の雄羊を取り、その肉を聖なる場所で煮て料理する。 32 アロンとその子らは、その肉と籠に入れてあるパンを臨在の幕屋の入り口で食べる。 33 彼らは、自分たちの任職と聖別の儀式に際して、罪の贖いとして用いられた捧げ物を食べる。 それは聖なるものであるから、一般の人は食べてはならない。 34 もし、この任職の捧げ物の肉やパンが翌朝まで残ったならば、焼き捨てる。 それは聖なるものであるから、だれも食べてはならない。
35 あなたはわたしが命じたとおり、アロンとその子らのために七日の間任職式を行いなさい。 36 罪の贖いのために毎日、贖罪の捧げ物の雄牛をささげ、祭壇のために罪の贖いの儀式を行って、それを清め、またそれに油を注いで聖別しなさい。 37 七日の間、祭壇のために罪の贖いの儀式を行って、聖別すれば、祭壇は神聖なものとなる。
日ごとの捧げ物
38 祭壇にささげるべき物は次のとおりである。 毎日絶やすことなく一歳の雄羊二匹を、 39 朝に一匹、夕暮れに他の一匹をささげる。 40 そして、朝ささげる雄羊には四分の一ヒンのオリーブを砕いて取った油を混ぜた十分の一エファの小麦粉と、四分の一ヒンのぶどう酒の捧げ物を加える。 41 また、朝と同じく夕暮れにも、雄羊に穀物の捧げ物とぶどう酒の捧げ物を加え、燃やして主にささげる宥めの香りとする。 42 これは代々にわたって、臨在の幕屋の入り口で主の御前にささぐべき日ごとの焼き尽くす捧げ物である。 わたしはその場所で、あなたたちと会い、あなたに語りかける。 43 わたしはその所でイスラエルの人々に会う。 そこは、わたしの栄光によって聖別される。 44 わたしは臨在の幕屋と祭壇を聖別し、またアロンとその子らをわたしに仕える祭司として聖別する。 45 また、わたしはイスラエルの人々のただ中に宿り、彼らの神となる。 46 彼らは、わたしが彼らの神、主であることを、すなわち彼らのただ中に宿るために、わたしが彼らをエジプトの国から導き出したものであることを知る。 わたしは彼らの神、主である。
香をたく祭壇 30
1 アカシア材で香をたく祭壇を造りなさい。 2 寸法は縦一アンマ、横一アンマの正方形に、高さ二アンマとする。 そして、四隅に角を祭壇から生えるように作る。 3 祭壇の上の面と四つの側面と角を純金で覆い、側面に金の飾り縁を作る。 4 二個の金環を作り、それを金の飾り縁の下の両側に相対するように取り付け、担ぐための棒を差し入れる環とする。 5 この棒もアカシア材で作り、金で覆う。 6 それを掟の箱を隔てる垂れ幕の手前に置く。 この掟の箱の上の贖いの座の前でわたしはあなたと会う。 7 アロンはその祭壇で香草の香をたく。 すなわち、毎朝ともし火を整えるとき、 8 また夕暮れに、ともし火をともすときに、香をたき、代々にわたって主の御前に香りの捧げ物を絶やさぬようにする。 9 あなたたちはその上で規定に反した香や焼き尽くす捧げ物、穀物の捧げ物、ぶどう酒の捧げ物などをささげてはならない。 10 アロンは年に一度、この香をたく祭壇の四隅の角に贖罪の捧げ物の血を塗って、罪の贖いの儀式を行う。 代々にわたって、年に一度、その所で罪の贖いの儀式を行う。 この祭壇は主にとって神聖なものである。
命の代償
11 主はモーセに仰せになった。
12 あなたがイスラエルの人々の人口を調査して、彼らを登録させるとき、登録に際して、各自は命に代償を主に支払わねばならない。 登録することによって彼らに災いがふりかからぬためである。 13 登録が済んだ者はすべて、聖所のシェケルで銀半シェケルを主への献納物として支払う。 一シェケルは二十ゲラに当たる。
14 登録を済ませた二十歳以上の男子は、主への献納物としてこれを支払う。 15 あなたたちの命を贖うために主への献納物として支払う銀は半シェケルである。 豊かな者がそれ以上支払うことも、貧しい者がそれ以下支払うことも禁じる。 16 あなたがイスラエルの人々から集めた命の代償金は臨在の幕屋のために用いる。 それは、イスラエルの人々が主の御前で覚えられるために、あなたたちの命を贖うためである。
手足を清める
17 主はモーセに仰せになった。
18 洗い清めるために、青銅の洗盤とその台を作り、臨在の幕屋と祭壇の間に置き、水を入れなさい。 19 アロンとその子らは、その水で手足を洗い清める。 20 すなわち、臨在の幕屋は入る際に、水で洗い清める。 死を招くことのないためである。 また、主に燃やしてささげる捧げ物を煙にする奉仕のために祭壇に近づくときにも、 21 手足を洗い清める。 死を招くこのないためである。 これは彼らにとっても、子孫にとっても、代々にわたって守るべき不変の定めである。
聖別の油
22 主はモーセに仰せになった。
23 上質の香料を取りなさい。 すなわち、ミルラの樹脂五百シェケル、シナモンをその半量の二百五十シェケル、 24 桂皮を聖所のシェケルで五百シェケル、オリーブ油一ヒンである。 25 あなたはこれらを材料にして聖なる聖別の油を作る。 すなわち、香料師の混ぜ合わせ方に従って聖なる聖別の油を作る。 26 それを以下のものに注ぐ。 すなわち、臨在の幕屋、掟の箱、 27 机とそのすべての祭具、燭台とその祭具、香をたく祭壇、 28 焼き尽くす捧げ物の祭壇とそのすべての祭具、洗盤とその台。 29 あなたがこれらを聖別すると、神聖なるものとなる。 それに触れたものは、みな聖なるものとなる。 30 アロンとその子らにこの油を注いで、彼らを聖別し、祭司としてわたしに仕えさせなさい。
31 イスラエルの人々に告げてこう言いなさい。
聖なる聖別の油は、代々にわたってわたしのために使うべきものである。 32 一般の人の体に注いだり、同じ割合のものを作ってはならない。 それは聖なるものであるからである。 聖なるものとして扱いなさない。 33 類似したものを混ぜ合わせて、一般の人に塗る者は、その民から断たれる。
香料
34 主はモーセに言われた。
以下の香料、すなわち、ナタフ香、シェヘレト香、ヘルベナ香、これらの香料と純粋な乳香をそれぞれ同量取り、 35 香を作りなさい。 すなわち、香料師の混ぜ合わせ方に従ってよく混ぜ合わせた、純粋な、聖なる香を作る。 36 その一部を細かく砕いて粉末にし、粉末の一部を、臨在の幕屋の中の掟の箱の前に置く。 わたしはそこであなたに会う。 これはあなたたちにとって神聖なものである。 37 同じ割合で作った香を私用に使ってはならない。 あなたは、それを主に対して聖なるものとしなければならない。
38 また、類似したものを作って、香りを楽しもうとする者は、すべてその民から断たれる。
技術者の任命 31
1 主はモーセにおう仰せになった。
2 見よ、わたしはユダ族のフルの孫、ウリの子ベツァルエルを名指しで呼び、 3 彼に神の霊を満たし、どのような工芸にも知恵と英知と知識をもたせ、 4 金、銀、青銅による細工に意匠をこらし、 5 宝石をはめ込み、木に彫刻するなど、すべての工芸をさせる。 6 わたしはダン族のアヒサマクの子オホリアブを、彼の助手にする。 わたしは、心に知恵あるすべての者の心に知恵を授け、わたしがあなたに命じたものをすべて作らせる。 7 すなわち、臨在の幕屋、掟の箱、その箱の上の贖いの座、幕屋のすべての祭具、 8 机とその祭具、純金の燭台とそのすべての祭具、香をたく祭壇、 9 焼き尽くす捧げ物の祭壇とそのすべての祭具、洗盤とその台、 10 祭司アロンのために織った衣服と祭服、アロンの子らが祭司として仕えるときの衣服、 11 性別の油、聖所でたく香ばしい香である。 彼らはわたしが命じたとおりに作らねばならない。
安息日を厳守せよ
12 主はモーセに言われた。
13 あなたは、イスラエルの人々に告げてこう言いなさい。
あなたたちは、わたしの安息日を守らねばならない。 それは、代々にわたってわたしとあなたたちとの間のしるしであり、わたしがあなたたちを聖別する主であることを知るためのものである。 14 安息日を守りなさい。 それは、あなたたちにとって聖なる日である。 それを汚す者は必ず死刑に処せられる。 だれでもこの日に仕事をする者は、民の中から断たれる。 15 六日の間は仕事をすることができるが、七日目は、主の聖なる、最も厳かな安息日である。 だれでも安息日に仕事をする者は必ず死刑に処せられる。 16 イスラエルの人人は安息日を守り、それを代々にわたって永遠の契約としなさい。 17 これは、永遠にわたしとイスラエルの人々との間のしるしである。 主は六日の間に天地を創造し、七日目に御業をやめて憩われたからである。
18 主はシナイ山でモーセと語り終えられたとき、二枚の掟の板、すなわち、神の指で記された石の板をモーセにお授けになった。
金の子牛 32
1 モーセが山からなかなか下りて来ないのを見て、民がアロンのもとに集まって来て、「さあ、我々に先立って進む神々を造ってください。 エジプトの国から我々を導き上った人、あのモーセがどうなってしまったのか分からないからです」と言うと、 2 アロンは彼らに言った。 「あなたたちの妻、息子、娘らが着けている金の耳輪をはずし、わたしのところに持って来なさい。」 3 民は全員、着けていた金の耳輪をはずし、アロンのところに持って来た。 4 彼はそれを受け取ると、のみで型を作り、若い雄牛の鋳造を造った。 すると彼らは、「イスラエルよ、これこそあなたをエジプトの国から導き上ったあなたの神々だ」と言った。 5 アロンはこれを見て、その前に祭壇を築き、「明日、主の祭りを行なう」と宣言した。 6 彼らは次の朝早く起き、焼き尽くす捧げ物をささげ、和解の捧げ物を供えた。 民は座って飲み食いし、立って戯れた。 7 主はモーセに仰せになった。 「直ちに下山せよ。 あなたがエジプトの国から導き上った民は堕落し、 8 早くもわたしが命じた道からそれて、若い雄牛の鋳造を造り、それにひれ伏し、いけにえをささげて、『イスラエルよ、これこそあなたをエジプトの国から導き上った神々だ』と叫んでいる。」 9 主は更に、モーセに言われた。 「わたしはこの民を見てきたが、実にかたくなな民である。 10 今は、わたしを引き止めるな。 わたしの怒りは彼らに対して燃え上がっている。 わたしは彼らを滅ぼし尽くし、あなたを大いなる民とする。」 11 モーセは主なる神をなだめて言った。 「主よ、どうして御自分の民に向かって怒りを燃やされるのですか。 あなたが大いなる御力と強い御手をもってエジプトの国から導き出された民ではありませんか。 12 どうしてエジプト人に、『あの神は、悪意をもって彼らを山で殺し、地上から滅ぼし尽くすために導き出した』と言わせてよいでしょうか。 どうか、燃える怒りをやめ、御自分の民にくだす災いを思い直してください。 13 どうか、あなたの僕であるアブラハム、イサク、イスラエルを思い起こしてください。 あなたは彼らに自ら誓って、『わたしはあなたたちの子孫を天の星のように増やし、わたしが与えると約束したこの土地をことごとくあなたたちの子孫に授け、永久にそれを継がせる』と言われたではありませんか。」 14 主は御自身の民にくだす、と告げられた災いを思い直された。
15 モーセが身を翻して山を下るとき、二枚の掟の板が彼の手にあり、板には文字が書かれていた。 その両面に、表にも裏にも文字が書かれていった。 16 その板は神御自身が作られ、筆跡も神御自身のものであり、板に彫り刻まれていた。
17ヨシュアが民のどよめく声を聞いて、モーセに、「宿営で戦いの声がします」と言うと、 18 モーセは言った。
「これは勝利の叫び声でも敗戦の叫び声でもない。
わたしが聞くのは歌をうたう声だ。」
19 宿営に近づくと、彼は若い雄牛の像と踊りを見た。 モーセは激しく怒って、手に持っていた板を投げつけ、山のふもとで砕いた。 20 そして、彼らが造った若い雄牛の像を取って火で焼き、それを粉々に砕いて水の上にまき散らし、イスラエルの人々に飲ませた。 21 モーセはアロンに、「この民があなたに一体何をしたというので、あなたはこの民にこんな大きな罪を犯させたのか」と言うと、 22 アロンは言った。 「わたしの主よ、どうか怒らないでください。 この民が悪いことはあなたもご存じです。 23 彼らはわたしに、『我々に先立って進む神々を造ってください。 我々をエジプトの国から導き上った人、あのモーセがどうなってしまったのか分からないからです』と言いましたので、 24 わたしが彼らに、『だれでも金を持っている者は、それをはずしなさい』と言うと、彼らはわたしに差し出しました。 わたしがそれを火に投げ入れると、この若い雄牛ができたのです。」
25 モーセはこの民が勝手なふるまいをしたこと、アロンが彼らに勝手なふるまいをさせて、敵対する者の嘲りの種となったことを見ると、 26 宿営の入り口に立ち、「だれでも主につく者は、わたしのもとに集まれ」と言った。 レビの子らが全員彼のもとに集まると、 27 彼らに、「イスラエルの神、主がこう言われる。 『おのおの、剣を帯び、宿営を入り口から入り口まで行き巡って、おのおの自分の兄弟、友、隣人を殺せ』」と命じた。 28 レビの子らは、モーセの命じたとおりに行った。 その日、民のうちで倒れた者はおよそ三千人であった。 29 モーセは言った。 「おのおの自分の子や兄弟に逆らったから、今日、あなたたちは主の祭司職に任命された。 あなたたちは今日、祝福を受ける。」
30 翌日になって、モーセは民に言った。 「お前たちは大きな罪を犯した。 今、わたしは主のもとに上って行く。 あるいは、お前たちの罪のために贖いができるかもしれない。 31 モーセは主のもとに戻って言った。 「ああ、この民は大きな罪を犯し、金の神を造りました。 32 今、もしもあなたが彼らの罪をお赦しくださるのであれば…。 もし、それがかなわなければ、どうかこのわたしをあなたが書き記された書の中から消し去ってください。」 33 主はモーセに言われた。 「わたしに罪を犯した者はだれでも、わたしの書から消し去る。 34 しかし今、わたしがあなたに告げた所にこの民を導いて行きなさい。 見よ、わたしの使いがあなたに先立って行く。 しかし、私の裁きの日に、わたしは彼らをその罪ゆえに罰する。」 35 主は民がアロンに若い雄牛を造らせたので、民を打たれたのである。
民の嘆き 33
1 主はモーセに仰せになった。 「さあ、あなたも、あなたがエジプトの国から導き上った民も、ここをたって、わたしがアブラハム、イサク、ヤコブに誓って、『あなたの子孫にそれを与える』と言った土地に上りなさい。 2 わたしは、使いをあなたに先立って遣わし、カナン人、アモリ人、ヘト人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人を追い出す。 3 あなたは乳と蜜の流れる土地に上りなさい。 しかし、わたしはあなたの間にあって上ることはしない。 途中であなたを滅ぼしてしまうことがないためである。 あなたはかたくなな民である。
4 民はこの悪い知らせを聞いて嘆き悲しみ、一人も飾りを身に着けなかった。 5 主がモーセに、「イスラエルの人々に告げなさい。 『あなたたちはかたくなな民である。 わたしがひとときでも、あなたの間にあって上るならば、あなたを滅ぼしてしまうかもしれない。 直ちに、身に着けている飾りを取り去りさない。 そうすれば、わたしはあなたをどのようにするか考えよう』」と言われたので、 6 イスラエルの人々は、ホレブ山をたって後、飾りをはずした。
臨在の幕屋
7 モーセは一つの天満を取って、宿営の外の、宿営から遠く離れた所に張り、それを臨在の幕屋と名付けた。 主に伺いを立てる者はだれでも、宿営の外にある臨在の幕屋に行くのであった。 8 モーセが幕屋に出て行くときには、民は全員起立し、自分の天幕の入り口に立って、モーセが幕屋に入ってしまうまで見送った。 9 モーセが幕屋に入ると、雲の柱が降りて来て幕屋の入り口に立ち、主はモーセに語られた。 10 雲の柱が幕屋の入り口に立つのを見ると、民は全員起立し、おのおの自分の天幕の入り口で礼拝した。 11 主は人がその友と語るように、顔と顔を合わせてモーセに語られた。 モーセは宿営に戻ったが、彼の従者である若者、ヌンの子ヨシュアは幕屋から離れなかった。
民と共に行かれる主
12 モーセは主に言った。 「あなたはわたしに、『この民を率いて上れ』と言われました。 しかし、わたしと共に遣わされる者をお示しになりません。 あなたは、また、『わたしはあなたを名指しで選んだ。 わたしはあなたに好意を示す』と言われました。 13 お願いです。 もしあなたがわたしに御好意を示してくださるのでしたら、どうか今、あなたの道をお示しください。 そうすれば、わたしはどのようにして、あなたがわたしに御好意を示してくださるか知りうるでしょうか。 どうか、この国民があなたの民であることも目にお留めください。 14 主が、「わたしが自ら同行し、あなたに安息を与えよう」と言われると、 15 モーセは主に言った。 「もし、あなた御自身が行ってくださらないのなら、わたしたちをここから上らせないでください。 16 一体何によって、わたしとあなたの民に御好意を示してくださることが分かるでしょうか。 あなたがわたしたちと共に行ってくださることによってではありませんか。 そうすればわたしとあなたの民は、地上のすべての民と異なる特別なものとなるでしょう。」
17 主はモーセに言われた。 「わたしは、あなたのこの願いもかなえよう。 わたしはあなたに好意を示し、あなたを名指しで選んだからである。」
主の栄光
18 モーセが、「どうか、あなたの栄光をお示しください」と言うと、 19 主は言われた。 「わたしはあなたの前にすべてのわたしの善い賜物を通らせ、あなたの前に主という名を宣言する。 わたしは恵もうとする者を恵み、憐れもうとする者を憐れむ。」 20 また言われた。 「あなたはわたしの顔を見ることはできない。 人はわたしを見て、なお生きていることはできないからである。」 21 更に、主は言われた。 「見よ、一つの場所がわたしの傍らにある。 あなたはその岩のそばに立ちなさい。 22 わが栄光が通り過ぎるとき、わたしはあなたをその岩の裂け目に入れ、わたしが通り過ぎるまで、わたしの手であなたを覆う。 23 わたしが手を離すとき、あなたはわたしの後ろを見るが、わたしの顔は見えない。」
戒めの再授与 34
1 主はモーセに言われた。 「前と同じ石の板を二枚切りなさい。 わたしは、あなたが砕いた、前の板に書かれていた言葉を、その板に記そう。 2 明日の朝までにそれを用意し、朝、シナイ山に登り、山の頂でわたしの前に立ちなさい。 3 だれもあなたと一緒に登ってならない。 山のどこにも人の姿があってはならず、山のふもとで羊や牛の放牧もしてはならない。」
4 モーセは前と同じ石の板を二枚切り、朝早く起きて、主が命じたとおりシナイ山に登った。 手には二枚の石に板を携えていた。 5 主は雲のうちにあって降り、モーセと共にそこに立ち、主の御名を宣言された。 6 主は彼の前を通り過ぎて宣言された。 「主、主、憐れみ深く恵みに富む神、忍耐強く、慈しみとまことに満ち、 7 幾千代にも及ぶ慈しみを守り、罪と背きと過ちを赦す。 しかし罰すべき者を罰せずにはおかず、父祖の罪を、子、孫に三代、四代までも問う者。」 8 モーセは急いで地にひざまずき、ひれ伏して、 9 言った。 「主よ、もし御好意を示してくださいますならば、主よ、わたしたちの中にあって進んでください。 確かにかたくなな民ですが、わたしたちの罪と過ちを赦し、わたしたちをあなたの嗣業として受け入れてください。」
10 主は言われた。 「見よ、わたしは契約を結ぶ。 わたしはあなたの民すべての前で驚くべき業を行う。 それは全地のいかなる民にもいまだかってなされたことのない業である。 あなたと共にいるこの民は皆、主の業を見るだろう。 わたしがあなたと共にあって行うことは恐るべきものである。 11 わたしが、今日命じることを守りなさい。 見よ、わたしはあなたの前から、 アモリ人、カナン人、ヘト人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人を追い出す。 12 よく注意して、あなたがこれから入って行く土地の住民と契約を結ばないようにしなさい。 それがあなたの間で罠とならないためである。 13 あなたたちは、彼らの祭壇を引き倒し、石柱を打ち砕き、アシェラ像を切り倒しなさい。 14あなたはほかの神を拝んではならない。 主はその名を熱情といい、熱情の神である。 15 その土地の住民と契約を結ばないようにしなさい。 彼らがその神々を求めて姦淫を行い、その神々にいけにえをささげるとき、あなたを招き、あなたはそのいけにえを食べるようになる。 16 あなたが彼らの娘を自分の息子にめとると、彼女たちがその神々と姦淫を行い、あなたの息子たちを誘ってその神々姦淫を行わせるようになる。
17 あなたは鋳造の神々を造ってはならない。
18 あなたは除酵祭を守りなさい。 七日の間、アビブの月の定めの日に、わたしが命じた酵母を入れないパンを食べなさい。 アビブの月に、あなたはエジプトを出たからです。 19 初めに胎を開くものはすべて、わたしのものである。 あなたの家畜である牛や羊の初子が雄であるならば、すべて別にしなければならない。 20 ただし、ろばの初子の場合は、子羊をもって贖わねばならない。 もし、贖わない場合は、その首を折りなさい。 あなたの初子のうち、男の子はすべて贖わねばならない。
何も持たず、わたしの前に出てはならない。
21 あなたは六日の間働き、七日目には仕事をやめねばならない。 耕作の時にも、収穫の時にも、仕事をやめねばならない。
22 あなたは、小麦の収穫の初穂の時に、七週祭を祝いなさい。
年の終わりに、取り入れの祭りを祝いなさい。
23 年に三度、男子はすべて、主なるイスラエルの神、主の御前に出ねばならない。 24 わたしはあなたの前から国々の民を追い出し、あなたの国境を広くするが、あなたが年に三度、あなたの神、主の御前に出るために上るとき、だれもあなたの土地を侵すことはないであろう。
25 あなたは、わたしにささげるいけにえの血を、酵母を入れたパンと共にささげてはならない。 過越祭のいけにえは翌朝まで残しておいてはならない。
26 あなたは、土地の最上の初物をあなたの神、主の宮に携えて来なければならない。
あなたは子山羊をその母の乳で煮てはならない。」
27 主はモーセに言われた。 「これらの言葉を書き記しなさい。 わたしは、これらの言葉に基づいてあなたと、またイスラエルと契約を結ぶ。
28 モーセは主と共に四十日四十夜、そこにとどまった。 彼はパンも食べず、水も飲まなかった。 そして、十の戒めからなる契約の言葉を板に書き記した。
モーセの顔の光
29 モーセがシナイ山を下ったとき、その手には二枚の掟の板があった。 モーセは、山から下ったとき、自分が神と語っている間に、自分の顔の肌が光を放っているのを知らなかった。 30 アロンとイスラエルの人々がすべてモーセを見ると、なんと、彼の顔の肌は光を放っていた。 彼らは恐れて近づけなかったが、 31 モーセが呼びかけると、アロンと共同体の代表者は全員彼のもとに戻って来たので、モーセは彼らに語った。 32 その後、イスラエルの人々が皆、近づいて来たので、彼はシナイ山で主が彼に語られたことをことごとく彼らに命じた。 33 モーセはそれを語り終わったとき、自分の顔に覆いを掛けた。
34 モーセは、主の御前に行って主と語るときはいつでも、出て来るまで覆いをはずしていた。 彼は出て来ると、命じられたことをイスラエルの人々に語った。 35 イスラエルの人々がモーセの顔を見ると、モーセの顔の肌は光を放っていた。 モーセは、再び御前に行って主と語るまで顔に覆いを掛けた。
安息日の厳守 35
1 モーセはイスラエルの人々の共同体全体を集めて言った。
「これが主が行うよう命じられた言葉である。 2 六日の間は仕事をすることができるが、第七日はあなたたちにとって聖なる日であり、主の最も厳かな安息日である。 その日に仕事をする者はすべて死刑に処せられる。 3 安息日には、あなたたちの住まいのどこででも火をたいてはならない。」
幕屋建設の準備
4 モーセはイスラエルの人々の共同体全体に告げた。
「これは主が命じられた言葉である。 5 「あなたたちの持ち物のうちから、主のもとに献納物を持って来なさい。 すべて進んで心からささげようとする者は、それを主への献納物として携えなさい。 すなわち、金、銀、青銅、 6 青、紫、緋色の毛糸、亜麻糸、山羊の毛、 7 赤く染めた雄羊の毛皮、じゅごんの皮、アカシア材、 8 ともし火のための油、聖別の油と香草の香とに用いる種々の香料、 9 エフォドや胸当てにはめ込む縞めのうの石やその他の宝石類である。
10 また、あなたたちのうちの、心に知恵のある者をすべて集めて、主が命じられた物をことごとく作らせなさい。 11 すなわち、幕屋、天幕、覆い、留め金、壁板、横木、柱、台座、 12 掟の箱とそれを担ぐ棒、贖いの座、至聖所の垂れ幕、 13 机とそれを担ぐ棒、そのすべての祭具、供えのパン、 14 燭台とその祭具、ともし火皿、灯油、 15 香をたく祭壇とそれを担ぐ棒、聖別の油、香草の香、幕屋の入り口に掛ける幕、 16 焼き尽くす捧げ物の祭壇とそれに付く青銅の格子、それを担ぐ棒、およびそのすべての祭具、洗盤と台、 17 庭の幔幕とその柱と台座、庭の入り口の幕 18 幔幕の杭と庭の杭、およびその綱、 19 聖所で仕えるための衣服、祭司アロンのための祭服、その子らが祭司として仕えるための衣服がそれである。
20 イスラエルの人々の共同体全体はモーセの前を去った。 21 心動かされ、進んで心からする者は皆、臨在の幕屋の仕事とすべての作業、および祭服などに用いるため、主への献納物を携えていた。 22 進んで心からする者は皆、男も女も次々と襟留め、耳輪、指輪、首飾り、およびすべての金の飾りを携えて来て、みな金の献納物として主にささげた。 23 青、紫、緋色の毛糸、亜麻糸、山羊の毛、赤く染めた雄羊の毛皮、およびじゅごんの皮を持っている者も皆、それを携えて来た。 24 銀や青銅を献納物としようとする者は皆、それを主への献納物として携えて来た。 また、アカシヤ材を持っている者は皆、奉仕の仕事のためにそれを携えて来た。 25 心に知恵を持つ女は皆、自分の手で紡ぎ、紡いだ青、紫、緋色の毛糸および亜麻糸を携えて来た。 26 心動かされ、知恵に満ちた女たちは皆、山羊の毛を紡いだ。 27 指導者たちはエフォドや胸当てにはめ込むラピス・ラズリやその他の宝石類、 28 香料、灯油、聖別の油、および香草の香を携えて来た。 29 モーセを通じて主が行うようお命じになったすべての仕事のために、進んで心からするイスラエルの人々は、男も女も皆、随意の捧げ物を主に携えて来た。
30 モーセはイスラエルの人々に言った。
「見よ、主は、ユダ族のフルの孫、ウリの子ベツァルエルを名指しで呼び、 31 彼に神の霊を満たし、どのような工芸にも知恵と英知と知識を持たせ、 32 金、銀、青銅による細工に意匠をこらし、 33 宝石をはめ込み、木に彫刻するなど、すべての細かい工芸に従事させ、 34 更に、人を教える力をお与えになった。 主は、彼とダン族のアヒサマクの子オホリアブに、 35 知恵の心を満たして、すべての工芸に従事させ、彫刻師、意匠を考案する者、更に、青、紫、緋色の毛糸、亜麻糸を使ってつづれ織や縁取りをする者など、あらゆる種類の工芸に従事する者とし、意匠を考案する者とされた。
36
1 ベツァルエルとオホリアブ、および知恵と英知を主から授けられ、聖所の建設のすべての仕事を行うに必要な知識を与えられた。 心に知恵のある者は、すべて主が命じられたとおり、作業に当たらねばならない。」
2 モーセは、ベツァルエルとオホリアブ、および主から心に知恵を授けられた、心に知恵のあるすべての者、すなわち、心動かされたすべての者をこの仕事に従事させるために呼び集めた。 3 彼らは、イスラエルの人々が聖所建設の仕事を行うために携えて来たすべての献納物を、モーセから受け取ったが、人々はなおも、毎朝、随意の捧げ物を彼のもとに携えて来たので、 4 聖所のあらゆる仕事に携わる知恵のある者は皆、それぞれの仕事場を離れて来て、 5 モーセに言った。 「この民は、主がお命じになった仕事のために、必要以上の物を携えて来ます。」
6 モーセが宿営に、「男も女も、聖所の献納物のためにこれ以上務める必要はない」との命令を伝えさせたので、民は携えて行くのをやめた。 7 既にささげられた物は、作業全体を仕上げるのに十分で有り余るほどあった。
(3) 出エジプト記 エジプトでのイスラエル 1-1 〜幕屋建設の準備 36-7
2023年09月18日
(2) 創世記 井戸をめぐる争い 26-15 〜 ヨセフの死 50-26
井戸をめぐる争い 26
15 ペリシテ人は、昔、イサクの父アブラハムが僕たちに掘らせた井戸をことごとく塞ぎ、土で埋めた。 16 アビメレクはイサクに言った。 「あなたは我々と比べてあまりに強くなった。 どうか、ここから出て行っていただきたい。」 17 イサクはそこを去って、ゲラルの谷に天幕を張って住んだ。 18 そこにも、父アブラハムの時代に掘った井戸が幾つかあったが、アブラハムの死後、ペリシテ人がそれらをふさいでしまっていた。 イサクはそれらの井戸を掘り直し、父が付けたとおりの名前を付けた。 19 イサクの僕たちが谷で井戸を掘り、水が豊かに湧き出る井戸を見つけると、 20 ゲラルの羊飼いは、「この水は我々のものだ」とイサクの羊飼いと争った。 そこで、イサクはその井戸をエセク(争い)と名付けた。 彼らがイサクと争ったからである。 21 イサクの僕たちがもう一つの井戸を掘り当てると、それについても争いが生じた。 そこで、イサクはその井戸をシトナ(敵意)と名付けた。 22 イサクはそこから移って、更にもう一つの井戸を掘り当てた。 それについては、もはや争いは起こらなかった。 イサクは、その井戸をレホボト(広い広場)と名付け、「今や、主は我々の?栄のための広い場所をお与えになった」と言った。 23 イサクは更に、そこからベエル・シェバに上った。 24 その夜、主が現れて言われた。
「わたしは、あなたの父アブラハムの神である。
恐れてはならない。わたしはあなたと共にいる。
わたしはあなたを祝福し、子孫を増やす
わが僕アブラハムゆえに。」
25 イサクは、そこに祭壇を築き、主の御名を呼んで礼拝した。 彼はそこに天幕を張り、イサクの僕たちは井戸を掘った。
イサクとアビメレクの契約
26 アビメレクが参謀のアフザトと軍隊の長のピコルと共に、ゲラルからイサクのところに来た。 27 イサクは彼らに尋ねた。 「あなたたちは、わたしを憎んで追い出したのに、なぜここに来たのですか。」 28 彼らは答えた。 「主があなたと共におられることがよく分かったからです。 そこで考えたのですが、我々はお互いに、つまり、我々とあなたの間で誓約を交わし、あなたと契約を結びたいのです。 29 以前、我々はあなたに何ら危害を加えず、むしろあなたのためになるよう計り、あなたを無事に送り出しました。 そのようにあなたも、我々にいかなる害も与えないでください。 あなたは確かに、主に祝福された方です。 30 そこで、イサクは彼らのために祝宴を催し、共に飲み食いした。 31 次の朝早く、互に誓いを交わした後、イサクは彼らを送り出し、彼らは安らかに去って行った。 32 その日に、井戸を掘っていたイサクの僕たちが帰って来て、「水がでました」と報告した。 33 そこで、その町の名は、今日に至るまで、ベエル・シェバ(誓いの井戸)といわれている。
エサウの妻
34 エサウは、四十歳のときヘト人ベエリの娘ユディトとヘト人エロンの娘バセマトを妻として迎えた。 35 彼女達は、イサクとリベカにとって悩みの種となった。
リベカの計略 27
1 イサクは年をとり、目がかすんで見えなくなってきた。 そこで上の息子のエサウを呼び寄せて、「息子よ」と言った。 エサウが、「はい」と答えると、
2 イサクは言った。
「こんなに年をとったので、わたしはいつ死ぬか分からない。 3 今すぐに、弓と矢筒など、狩りの道具を持って野に行き、獲物を取って来て、 4 わたしの好きなおいしい料理を作り、ここへ持って来てほしい。 死ぬ前にそれを食べて、わたし自身の祝福をお前に与えたい。」
5 リベカは、イサクが息子のエサウに話しているのを聞いていた。 エサウが獲物を取りに野に行くと、 6 リベカは息子のヤコブに言った。
「今、お父さんが兄さんのエサウにこう言っているのを耳にしました。 7 『獲物を取って来て、あのおいしい料理を作って欲しい。 わたしは死ぬ前にそれを食べて、主の御前でお前を祝福したい』と。 8 わたしの子よ。 今、わたしが言うことをよく聞いてそのとおりにしなさい。 9 家畜の群れのところへ行って、よく肥えた子山羊を二匹取って来なさい。 わたしが、それでお父さんの好きなおいしい料理を作りますから、 10 それをお父さんのところへ持って行きなさい。 お父さんは召し上がって、亡くなる前にお前を祝福してくださるでしょう。」
11 しかし、ヤコブは母リベカに言った。
「でも、エサウ兄さんはとても毛深いのに、わたしの肌は滑らかです。 12 お父さんがわたしに触れば、だましているのが分かります。 そうしたら、わたしは祝福どころか、反対に呪いを受けてしまいます。」
13 母は言った。
「わたしの子よ。 そのときにはお母さんがその呪いを引き受けます。 ただ、わたしの言うとおりに、行って取って来なさい。」
14 ヤコブは取りに行き、母のところへ持って来たので、母は父の好きなおいしい料理を作った。 15 リベカは、家にしまっておいた上の息子エサウの晴れ着を取り出して、下の息子ヤコブに着せ、 16 子山羊の毛皮を彼の腕や滑らかな首に巻きつけて、 17 自分が作ったおいしい料理とパンを息子ヤコブに渡した。
祝福をだまし取るヤコブ
18 ヤコブは、父のもとへ行き、「わたしのお父さん」と呼びかけた。 父が、「ここにいる。 わたしの子よ。 誰だ、お前は」と尋ねると、 19 ヤコブは言った。 「長男のエサウです。 お父さんの言われたとおりにしてきました。 さあ、どうぞ起きて、座ってわたしの獲物を召し上がり、お父さん自身の祝福をわたしに与えてください。」 20 「わたしの子よ、どうしてまた、こんなに早くしとめられたのか」と、イサクが息子に尋ねると、ヤコブは答えた。 「あなたの神、主がわたしのために計らってくださったからです。」 21 イサクはヤコブに言った。 「近寄りなさい。 わたしの子に触って、本当にお前が息子のエサウかどうか、確かめたい。」 22 ヤコブが父イサクに近寄ると、イサクは彼に触りながら言った。 「声はヤコブの声だが、腕はエサウの腕だ。」 23 イサクは、ヤコブの腕が兄エサウの腕のように毛深くなっていたので、見破ることができなかった。 そこで、彼は祝福しようとして、 24 言った。 「お前は本当にわたしの子エサウなのだな。」 ヤコブは、「もちろんです」と答えた。 25 イサクは言った。 「では、お前の獲物をここへ持って来なさい。 それを食べて、わたし自身の祝福をお前に与えよう。」 ヤコブが料理を差し出すと、イサクは食べ、ぶどう酒をつぐと、それを飲んだ。 26 それから、父イサクは彼に言った。 「わたしの子よ、近寄ってわたしに口づけをしなさい。」 27 ヤコブが近寄って口づけをすると、イサクは、ヤコブの着物の匂いをかいで、祝福して言った。
「ああ、わたしの子の香りは
主が祝福された野の香りのようだ。
28 どうか、神が
天の露と地の産み出す豊かなもの
穀物とぶどう酒を
お前に与えてくださるように
29 多くの民がお前に仕え
多くの国民がお前にひれ伏す。
お前は兄弟たちの主人となり
母の子らもお前にひれ伏す。
お前を呪う者は呪われ
お前を祝福する者は
祝福されるように。」
悔しがるエサウ
30 イサクガヤコブを祝福し終えて、ヤコブが父イサクの前から立ち去るとすぐ、兄エサウが狩りから帰って来た。 31 彼もおいしい料理を作り、父のところへ持って来て言った。 「わたしのお父さん。 起きて、息子の獲物を食べてください。 そして、あなた自身の祝福をわたしに与えてください。」 32 父イサクが、「お前は誰なのか」と聞くと、「わたしです。 あなたの息子、長男のエサウです」と答えが返って来た。 33 イサクは激しく体を震わせて言った。 「では、あれは、一体誰だったのだ。 さっき獲物を取ってわたしのところへ持って来たのは。 実は、お前が来る前に私はみんな食べて、彼を祝福してしまった。 だから、彼が祝福されたものになっている。」 34 エサウはこの父の言葉を聞くと、悲痛な叫びをあげて激しく泣き、父に向って言った。 「わたしのお父さん。 わたしも、このわたしも祝福してください。」 35 イサクは言った。 「お前の弟が来て策略を使い、お前の祝福を奪ってしまった。」 36 エサウは叫んだ。
「彼をヤコブとは、よくも名付けたものだ。 これで二度も、わたしの足を引っ張り(アーカブ)欺いた。 あのときは長子の権利を奪い、今度はわたしの祝福を奪ってしまった。」 エサウは続けて言った。 「お父さんは、わたしのために祝福を残しておいてくれなかったのですか。」
37 イサクはエサウに答えた。 「既にわたしは、彼をお前の主人とし、親族をすべて彼の僕とし、穀物もぶどう酒も彼のものにしてしまった。 わたしの子よ。 今となっては、お前のために何をしてやれようか。」
38 エサウは父に叫んだ。
「わたしのお父さん。 祝福はたった一つしかないのですか。 わたしも、このわたしも祝福してください、わたしのお父さん。」エサウは声をあげて泣いた。 39 父イサクは言った。
「ああ
地の産み出す豊かなものから遠く離れた所
この後お前はそこに住む
天の露からも遠く隔てられて。
40 お前は剣に頼って生きていく。
しかしお前は弟に仕える。
いつの日にかお前は反抗を企て
自分の首から軛を振り落とす。」
逃亡の勧め
41 エサウは、父がヤコブを祝福したことを根に持って、ヤコブを憎むようになった。 そして、心の中で言った。 「父の喪の日も遠くない。 そのときがきたら、必ず弟ヤコブを殺してやる。」 42 ところが、上の息子エサウのこの言葉が母リベカの耳に入った。 彼女は人をやって、下の息子のヤコブを呼び寄せて言った。 「大変です。 エサウ兄さんがお前を殺して恨みを晴らそうとしています。 43 わたしの子よ。 今、わたしの言うことをよく聞き、急いでハランに、わたしの兄ラバンの所に逃げて行きなさい。 44 そして、お兄さんの怒りが治まるまで、しばらく伯父さんの所に置いてもらいなさい。 45 そのうちに、お兄さんの憤りも治まり、お前のしたことを忘れてくれるだろうから、そのときには人をやってお前を呼び戻します。 一日のうちにお前たち二人を失うことなど、どうしてできましょう。
ヤコブの出発
46 リベカはイサクに言った。 「わたしは、ヘト人の娘たちのことで、生きているのが嫌になりました。 もしヤコブまでも、この土地の娘の中からあんなヘト人の娘をめとったら、わたしは生きているかいがありません。」
28
1 イサクはヤコブを呼び寄せて祝福して、命じた。
「お前はカナンの娘の中から妻を迎えてはいけない。 2 ここをたって、パダン・アラムのベトエルおじいさんの家に行き、そこでラバン伯父さんの娘の中から結婚相手を見つけなさい。 3 どうか、全能の神がお前を祝福して繁栄させ、お前を増やして多くの民の群れとしてくださるように。 4 どうか、アブラハムの祝福がお前とその子孫に及び、神がアブラハムに与えられた土地、お前が寄留しているこの土地を受け継ぐことができるように。」
5 ヤコブはイサクに送り出されて、パダン・アラムのラバンの所へ旅立った。 ラバンはアラム人ベトエルの息子で、ヤコブとエサウの母リベカの兄であった。
エサウの別の妻
6 エサウは、イサクがヤコブを祝福し、パダン・アラムに送り出し、そこから妻を迎えさせようとしたこと、しかも彼を祝福したとき、「カナンの娘の中から妻を迎えてはいけない」と命じたこと、 7 そして、ヤコブが父と母の命令に従ってパダン・アラムへ旅立ったことなどを知った。 8 エサウは、カナンの娘たちが父イサクの気に入らないことを知って、 9 イシュマエルのところへ行き、既にいる妻のほかにもう一人、アブラハムの息子イシュマエルの娘で、ネバヨトの妹に当たるマハラトを妻とした。
ヤコブの夢
10 ヤコブはベエル・シュバを立ってハランに向った。 11 とある場所に来たとき、日が沈んだので、そこで一夜を過ごすこにした。 ヤコブはその場所にあった石を一つ取って枕にして、その場所に横たわった。 12 すると、彼は夢を見た。 先端が天まで達する階段が地に向って伸びており、しかも、神の御使いたちがそれを上ったり下ったりしていた。 13 見よ、主が傍らに立って言われた。
「わたしは、あなたの祖父アブラハムの神、イサクの神、主である。 あなたが今横たわっているこの土地を、あなたとあなたの子孫に与える。 14 あなたの子孫は大地の砂粒のように多くなり、西へ、東へ、北へ、南へと広がっていくであろう。 地上の子孫はすべて、あなたとあなたの子孫によって祝福に入る。 15 見よ、わたしはあなたと共にいる。 あなたがどこへ行っても、わたしはあなたを守り、必ずこの土地に連れ帰る。 わたしは、あなたに約束したことを果たすまで決して見捨てない。」
16 ヤコブは眠りから覚めて言った。
「まことに主がこの場所におられるのに、わたしは知らなかった。」
17 そして、恐れおののいて言った。
「ここは、なんと畏れ多い場所だろう。 これはまさしく神の家である。 そうだ、ここは天の門だ。」
18 ヤコブは次の朝早く起きて、枕にしていた石を取り、それを記念碑として立て、先端に油を注いで、 19 その場所をベテル(神の家)と名付けた。 ちなみに、その町の名はかってルズと呼ばれていた。
20 ヤコブはまた、誓願を立てて言った。
「神がわたしと共におられ、わたしが歩むこの旅路を守り、食べ物、着る物を与え、 21 無事に父の家に帰らせてくださり、主がわたしの神となられるなら、 22 わたしが記念碑として立てたこの石を神の家とし、すべて、あなたがわたしに与えられるものの十分の一をささげます。」
ラバンの家に着く 29
1 ヤコブは旅を続けて、東方の人々の土地へ行った。 2 ふと見ると、野原に井戸があり、そのそばに羊が三つの群れになって伏していた。 その井戸から羊の群れに、水を飲ませることになっていたからである。 ところが、井戸の口の上には大きな石が載せてあった。 3 まず羊の群れを全部そこに集め、石を井戸の口から転がして羊の群れに水を飲ませ、また石を元の所に戻しておくことになっていた。 4 ヤコブはそこにいた人たちに尋ねた。 「皆さんはどちらの方ですか。」 「わたしたちはハランの者です」と答えたので、 5 ヤコブは尋ねた。 「では、ナホルの息子のラバンを知っていますか。」 「ええ、知っています」と彼らが答えたので、 6 ヤコブは更に尋ねた。 「元気でしょうか。」 「元気です。 もうすぐ、娘のラケルも羊の群れを連れてやって来ます」と彼らは答えた。 7 ヤコブは言った。 「まだこんなに日は高いし、家畜を集める時でもない。 羊に水を飲ませて、もう一度草を食べさせに行ったらどうですか。」 8 すると、彼らは答えた。 「そうはできないのです。 羊の群れを全部ここに集め、あの石を井戸の口から転がして羊に水を飲ませるのですから。」
9 ヤコブが彼らと話しているうちに、ラケルが父の羊の群れを連れてやって来た。 彼女も羊を飼っていたからである。 10 ヤコブは、叔父ラバンの娘ラケルと伯父ラバンの羊の群れを見るとすぐに、井戸の口へ近寄り石を転がして、叔父ラバンの羊に水を飲ませた。 11 ヤコブはラケルに口づけし、声をあげて泣いた。 12 ヤコブはやがて、ラケルに、自分が彼女の父の甥に当たり、リベカの息子であることを打ち明けた。 ラケルは走って行って、父に知らせた。 13 ラバンは、妹の息子ヤコブの事を聞くと、走って迎えに行き、ヤコブを抱き締め口づけした。 それから、ヤコブを自分の家に案内した。 ヤコブがラバンに事の次第をすべて話すと、 14 ラバンは彼に言った。 「お前は、本当にわたしの骨肉の者だ。」
ヤコブの結婚
ヤコブがラバンのもとにひと月ほど滞在したある日、 15 ラバンはヤコブに言った。 「お前は身内の者だからといって、ただで働くことはない。 どんな報酬が欲しいか言ってみなさい。」
16 ところで、ラバンには二人の娘があり、姉の方はレア、妹の方はラケルといった。 17 レアは優しい目をしていたが、ラケルは顔も美しく、容姿も優れていた。 18 ヤコブはラケルを愛していたので、「下の娘のラケルをくださるなら、わたしは七年間あなたの所で働きます」と言った。 19 ラバンは答えた。 「あの娘をほかの人に嫁がせるより、お前に嫁がせる方が良い。 わたしの所にいなさい。」 20 ヤコブはラケルのために七年間働いたが、彼女を愛していたので、それはほんの数日のように思われた。 21 ヤコブはラバンに言った。
「約束の年月が満ちましたから、わたしのいいなずけと一緒にならせてください。」 22 ラバンは土地の人たちを皆集め祝宴を開き、 23 夜になると、娘のレアをヤコブのもとに連れて行ったので、ヤコブは彼女のところに入った。 24 ラバンはまた、女奴隷ジルバを娘レアに召し使いとして付けてやった。 25 ところが、朝になってみると、それはレアであった。 ヤコブがラバンに、「どうしてこんなことをなさったのですか。 わたしがあなたのもとで働いたのは、ラケルのためではありませんか。 なぜ、わたしをだましたのですか」と言うと、 26 ラバンは答えた。 「我々の所では、妹を姉より先に嫁がせることはしないものだ。 27 とにかく、この一週間の婚礼の祝いを済ませなさい。 そうすれば、妹の方もお前に嫁がせよう。 だがもう七年間、うちで働いてもらわねばならない。」 28 ヤコブが、言われたとおり一週間の婚礼の祝いを済ませると、ラバンは下の娘のラケルもヤコブに妻として与えた。 29 ラバンはまた、女奴隷ビルハを娘ラケルに召し使いとして付けてやった。 30 こうして、ヤコブはラケルをめとった。 ヤコブはレアよりラケルを愛した。 そして、更にもう七年ラバンのもとで働いた。
ヤコブの子供
31 主は、レアが疎んじられているのを見て彼女の胎を開かれたが、ラケルには子供ができなかった。 32 レアは身ごもって男の子を産み、ルベンと名付けた。 それは、彼女が、「主はわたしの苦しみを顧みて(ラア)くださった。 これからは夫もわたしを愛してくれるにちがいない」と言ったからである。 33 レアはまた身ごもって男の子を産み、「主はわたしが疎んじられていることを耳にされ(シャマ)、またこの子をも授けてくださった」と言って、シメオンと名付けた。 34 レアはまた身ごもって男の子を産み、「これからはきっと、夫はわたしに結びついて(ラベ)くれるだろう。 夫のために三人も男の子を産んだのだから」と言った。 そこで、その子をレビと名付けた。 35 レアはまた身ごもって男の子を産み、「今度こそ主をほめたたえ、(ヤダ)よう」と言った。 そこで、その子を(ユダ)と名付けた。 しばらく、彼女は子を産まなくなった。
30
1 ラケルは、ヤコブとの間に子供ができないことが分かると、姉をねたむようになり、ヤコブに向って、「わたしにもぜひ子供を与えてください。 与えてくださらなければ、わたしは死にます。」と言った。 2 ヤコブは激しく怒って、言った。 「わたしが神に代われると言うのか。 お前の胎に子供を宿らせないのは?~御自身なのだ。」 3 ラケルは、「わたしの召し使いのビルハがいます。 彼女のところへ入ってください。 彼女が子供を産み、わたしがその子を膝の上に迎えれば、彼女によってわたしも子供を持つことができます」と言った。 4 ラケルはヤコブに召し使いビルハを側女として与えたので、ヤコブは彼女のところに入った。 5 やがて、ビルハは身ごもってヤコブとの間に男の子を産んだ。 6 そのときラケルは、「わたしの訴えを神は正しくお裁き(ディン)になり、わたしの願いを聞き入れ男の子を与えてくださった」と言った。 そこで、彼女はその子をダンと名付けた。 7 ラケルの召し使いビルハはまた身ごもって、ヤコブとの間に二人目の男の子を産んだ。 8 そのときラケルは、「姉と死に物狂いの争いをして(ニフタル)、ついに勝った」と言って、その名をナフタリと名付けた。
9 レアも自分に子供ができなくなったのを知ると、自分の召し使いジルパをヤコブに側女として与えたので、 10 レアの召し使いジルパはヤコブとの間に男の子を産んだ。 11 そのときレアは、「なんと幸運な(ガド)」と言って、その子をガドと名付けた。 12 レアの召し使いジルパはヤコブとの二人目の男の子を産んだ。 13 そのときレアは、「なんと幸せなこと(アシェル)か。 娘たちはわたしを幸せ者と言うにちがいない」と言って、その子をアシェルと名付けた。
14 小麦の刈り入れのころ、ルベンは野原で恋なすびを見つけ、母レアのところへ持って来た。 ラケルがレアに、「あなたの子供が取って来た恋なすびをわたしに分けてください」と言うと、 15 レアは言った。 「あなたは、わたしの夫を取っただけでは気が済まず、わたしの息子の恋なすびまで取ろうとするのですか。」 「それでは、あなたの子供の恋なすびの代わりに、今夜あの人があなたと床を共にするようにしましょう」とラケルは答えた。 16 夕方になり、ヤコブが野原から帰って来ると、レアは出迎えて言った。 「あなたはわたしのところに来なければなりません。 わたしは、息子の恋なすびであなたを雇ったのですから。」 その夜、ヤコブはレアと寝た。 17 神がレアの願いを聞き入れられたので、レアは身ごもってヤコブとの間に五人目の男の子を産んだ。 18 そのときレアは、「わたしが召し使いを夫に与えたので、神はその報酬(サカル)をくださった」と言って、その子をイサカルと名付けた。 19 レアはまた身ごもって、ヤコブとの間に六人目の男の子を産んだ。 20 そのときレアは、「神がすばらしい贈り物をわたしにくださった。 今度こそ、夫はわたしを尊敬してくれる(ザバル)でしょう。 夫のために六人も男の子を産んだのだから」と言って、その子をゼブルンと名付けた。 21 その後、レアは女の子を産み、その子をディナと名付けた。 22 しかし、神はラケルも御心に留め、彼女の願いを聞き入れその胎を開かれたので、 23 ラケルは身ごもって男の子を産んだ。 そのときラケルは、「神がわたしの恥をすすいでくださった」と言った。 24 彼女は、「主がわたしにもう一人男の子を加えてくださいますように(ヨセフ)」と願っていたので、その子をヨセフと名付けた。
ラバンとの駆け引き
25 ラケルがヨセフを産んだころ、ヤコブはラバンに言った。 「わたしを独り立ちさせて、生まれ故郷へ帰らせてください。 26 わたしは今まで、妻を得るためにあなたのところで働いてきたのですから、妻子と共に帰らせてください。 あなたのために、わたしがどんなに尽くしてきたか、よくご存じのはずです。」
27 「もし、お前さえ良ければ、もっといてほしいのだが。 実は占いで、わたしはお前のお陰で、主から祝福をいただいていることが分かったのだ」とラバンは言い、 28 更に続けて、「お前の望む報酬をはっきり言いなさい。 必ず支払うから」と言った。 29 ヤコブは言った。 「わたしがどんなにあなたのために尽くし、家畜の世話をしてきたかよくご存じのはずです。 30 わたしが来るまではわずかだった家畜が、今ではこんなに多くなっています。 わたしが来てからは、主があなたを祝福しておられます。 しかし今のままでは、いつになったらわたしは自分の家を持つことができるでしょうか。」 31 「何をお前に支払えばよいのか」とラバンが尋ねると、ヤコブは答えた。 「何もくださるには及びません。 ただこういう条件なら、もう一度あなたの群れを飼い、世話をいたしましょう。 32 今日、わたしはあなたの群れを全部見回って、その中から、ぶちとまだらの羊をすべてと羊の中で黒みがかったものすべて、それからまだらとぶちの山羊を取り出しておきますから、それをわたしの報酬にしてください。 33 明日、あなたが来てわたしの報酬をよく調べれば、わたしの正しいことは証明されるでしょう。 山羊の中にぶちとまだらでないものや、羊の中に黒みがかっていないものがあったら、わたしが盗んだものと見なして結構です。」 34 ラバンは言った。 「よろしい。 お前の言うとおりにしよう。」
35 ところが、その日、ラバンは縞やまだらの雄山羊とぶちやまだら雌山羊全部、つまり白いところが混じっているもの全部とそれに黒みがかった羊をみな取り出して自分の息子たちの手に渡し、 36 ヤコブがラバンの残りの群れを飼っている間に、自分とヤコブとの間に歩いて三日かかるほど距離をおいた。
ヤコブの工夫
37 ヤコブは、ポプラとアーモンドとプラタナスの木の若枝を取って来て、皮をはぎ、枝に白い木肌の縞を作り、 38 家畜の群れがやって来たときに群れの目につくように、皮をはいだ枝を家畜の水飲み場の水槽の中に入れた。 そして、家畜の群れが水を飲みにやって来たとき、さかりがつくようにしたので、 39 家畜の群れは、その枝の前で交尾して縞やぶちやまだらのものを産んだ。 40 また、ヤコブは羊を二手に分けて、一方の群れをラバンの群れの中の縞のものと全体が黒みがかったものとに向かわせた。 彼は、自分の群れだけにはそうしたが、ラバンの群れにはそうしなかった。 41 また、丈夫な羊が交尾する時期になると、ヤコブは皮をはいだ枝をいつも水ぶねの中に入れて群れの前に置き、枝のそばで交尾させたが、 42 弱い羊のときには枝を置かなかった。 そこで、弱いのはラバンのものとなり、丈夫なものはヤコブのものとなった。 43 こうして、ヤコブはますます豊かになり、多くの家畜や男女の奴隷、それにらくだやろばなどを持つようになった。
ヤコブの脱走 31
1 ヤコブは、ラバンの息子たちが、「ヤコブは我我の父のものを全部奪ってしまった。 父のものをごまかして、あの富を築き上げたのだ」と言っているのを耳にした。 2 また、ラバンの態度を見ると、確かに以前とは変わっていた。 3 主はヤコブに言われた。
「あなたは、あなたの故郷である先祖の土地に帰りなさい。 わたしはあなたと共にいる。」
4 ヤコブは人をやって、ラケルとレアを家畜の群れがいる野原に呼び寄せて、 5 言った。 「最近、気づいたのだが、あなたたちのお父さんは、わたしに対して以前とは態度が変わった。 しかし、私の父の神は、ずっとわたしと共にいてくださった。 6 あなたたちも知っているように、わたしは全力を尽くしてあなたたちのお父さんのもとで働いてきたのに、 7 わたしをだまして、わたしの報酬を十回も変えた。 しかし、神はわたしに害を加えることをお許しにならなかった。 8 お父さんが、『ぶちのものがお前の報酬だ』と言えば、群れはみなぶちのものを産むし、『縞のものがお前の報酬だ』と言えば、群れはみな縞のものを産んだ。
9 神はあなたたちのお父さんの家畜を取り上げて、わたしにお与えになったのだ。
10 群れの発情期のころのことだが、夢の中でわたしが目を上げて見ると、雄山羊は縞とぶちとまだらのものばかりだった。 11 そのとき、夢の中で神の御使いが、『ヤコブよ』と言われたので、『はい』と答えると、 12 こう言われた。 『目を上げて見なさい。 雌山羊の群れとつがっている雄山羊はみな、縞とぶちとまだらのものだけだ。 ラバンのあなたの対する仕打ちは、すべてわたしには分かっている。 13 わたしはベテルの神である。 かってあなたは、そこに記念碑を立てて油を注ぎ、わたしに誓願を立てたではないか。 さあ、今すぐこの土地を出て、あなたの故郷に帰りなさい。』
14 ラケルとレアはヤコブに答えた。 「父の家に、わたしたちへの嗣業の割り当て分がまだあるでしょうか。 15 わたしたちはもう、父にとって他人と同じではありませんか。 父はわたしたちを売って、しかもそのお金を使い果たしてしまったのです。 16 神様が父から取り上げられた財産は、確かに全部わたしたちと子供たちのものです。 ですから、どうか今すぐ、神様があなたに告げられたとおりになさってください。」
17 ヤコブは直ちに、子供たちと妻たちをらくだに乗せ、 18 パダン・アラムで得たすべての財産である家畜を駆り立てて、父イサクのいるカナン地方へ向かって出発した。 19 そのとき、ラバンは羊の毛を刈りに出かけていたので、ラケルは父の家の守り神の像を盗んだ。 20 ヤコブもアラム人ラバンを欺いて、自分が逃げ去ることを悟られないようにした。 21 ヤコブはこうして、すべての財産を持って逃げ出し、川を渡りギレアドの山地へ向かった。
ラバンの追跡
22 ヤコブが逃げたことがラバンに知れたのは、三日目であった。 23 ラバンは一族を率いて、七日の道のりを追いかけて行き、ギレアドの山地でヤコブに追いついたが、 24 その夜夢の中で神は、アラム人ラバンのもとに来て言われた。 「ヤコブを一切非難せぬよう、よく心に留めておきなさい。」 25 ラバンがヤコブに追いついたとき、ヤコブは山の上に天幕を張っていたので、ラバンも一族と共にギレアドの山に天幕を張った。 26 ラバンはヤコブに言った。 「一体何ということをしたのか。 わたしを欺き、しかも娘たちを戦争の捕虜のように駆り立てて行くとは。 27 なぜ、こっそり逃げ出したりして、わたしをだましたのか。 ひとこと言ってくれさえすれば、わたしは太鼓や竪琴で喜び歌って、送り出してやったものを。 28 孫や娘たちに別れの口づけもさせないとは愚かなことをしたものだ。 29 わたしはお前たちをひどい目に遭わせることもできるが、夕べ、お前たちの父の神が、『ヤコブを一切非難せぬよう、よく心に留めておきなさい』とわたしにお告げになった。 30 父の家が恋しくて去るのなら、去ってもよい。 しかし、なぜわたしの守り神を盗んだのか。」
31 ヤコブはラバンに答えた。 「わたしは、あなたが娘たちをわたしから奪い取るのではないかと思って恐れただけです。 32 もし、あなたの守り神がだれかのところで見つかれば、その者を生かしてはおきません。 我々一同の前で、わたしのところにあなたのものがあるかどうか調べて、取り戻してください。」 ヤコブは、ラケルがそれを盗んでいたことを知らなかったのである。 33 そこで、ラバンはヤコブの天幕に入り、更にレアの天幕や二人の召し使いの天幕にも入って捜してみたが、見つからなかった。 ラバンがレアの天幕を出てラケルの天幕に入ると、 34 ラケルは既に守り神の像を取って、らくだの鞍の下に入れ、その上に座っていたので、ラバンは天幕の中をくまなく調べたが見つけることはできなかった。 35ラケルは父に言った。 「お父さん、どうか悪く思わないでください。 わたしは今、月のものがあるので立てません。」 ラバンはなおも捜したが、守り神の像をみつけることはできなかった。 36 ヤコブは怒ってラバンを責め、言い返した。
「わたしに何の背反、何の罪あって、わたしの後を追って来られたのですか。 37 あなたはわたしの物を一つ残らず調べられましたが、あなたの家の物が一つでも見つかりましたか。 それをここに出して、わたしの一族とあなたの一族の前に置き、わたしたち二人の間を、皆に裁いてもらおうではありませんか。 38 この二十年間というもの、わたしはあなたのもとにいましたが、あなたの雌羊や雌山羊が子を産み損ねたことはありません。 わたしは、あなたの群れの雄羊を食べたこともありません。 39 野獣にかみ裂かれたものがあっても、あなたのところへ持って行かないで自分で償いました。 昼であろうと夜であろうと、盗まれたものはみな弁償するようにあなたは要求しました。 40 しかも、わたしはしばしば、昼は猛暑に夜は極寒に悩まされ、眠ることもできませんでした。 41 この二十年間というもの、わたしはあなたの家で過ごしましたが、そのうち十四年はあなたの二人の娘のため、六年はあなたの家畜の群れのために働きました。 しかも、あなたはわたしの報酬を十回も変えました。 42 もし、わたしの父の神、アブラハムの神、イサクの畏れ敬う方がわたしの味方でなかったなら、あなたはきっと何も持たせずにわたしを追い出したことでしょう。 神は、わたしの労苦と悩みを目に留められ、昨夜、あなたを諭されたのです。」
ヤコブとラバンの契約
43 ラバンは、ヤコブに答えた。 「この娘たちはわたしの娘だ。 この孫たちもわたしの孫だ。 この家畜の群れもわたしの群れ、いや、お前の目の前にあるものはみなわたしのものだ。 しかし、娘たちや娘たちが産んだ孫たちのために、もはや、手出しをしようとは思わない。 44 さあ、これから、お前とわたしは契約を結ぼうではないか。 そして、お前とわたしの間に何か証拠となるものを立てよう。」
45 ヤコブは一つの石を取り、それを記念碑として立て、 46 一族の者に、「石を集めてきてくれ」と言った。 彼らは石を取ってきて石塚を築き、その石塚の傍らで食事を共にした。 47 ラバンはそれをエガル・サハドタと呼び、ヤコブはガルエドと呼んだ。 48 ラバンはまた、「この石塚(ガル)は、今日からお前とわたしの間の証拠(エド)となる」とも言った。 そこで、その名はガルエドと呼ばれるようになった。 49 そこはまた、ミツパ(見張り所)とも呼ばれた。 「我々が互いに離れているときも、主がお前とわたしの間を見張ってくださるように。 50 もし、お前がわたしの娘たちを苦しめたり、わたしの娘たち以外にほかの女性をめとったりするなら、たとえ、ほかにだれもいなくても、神御自身がお前とわたしの証人であることを忘れるな」とラバンが言ったからである。
51 ラバンは更に、ヤコブに言った。
「ここに石塚がある。 またここに、わたしがお前との間に立てた記念碑がある。 52 この石塚は証拠であり、記念碑は証人だ。 敵意をもって、わたしがこの石塚を越えてお前の方に侵入したり、お前がこの石塚とこの記念碑を越えてわたしの方に侵入したりすることがないようにしよう。 53 どうか、アブラハムの神とナホルの神、彼らの先祖の神が我々の間を正しく裁いてくださいますように。」
ヤコブも、父イサクの畏れ敬う方にかけて誓った。
54 ヤコブは山の上でいけにえをささげ、一族を招いて食事を共にした。 食事の後、彼らは山で一夜を過ごした。
32
1 次の朝早く、ラバンは孫や娘たちに口づけして祝福を与え、そこを去って自分の家へ帰って行った。
エサウとの再会の準備
2 ヤコブが旅を続けていると、突然、神の御使いたちが現れた。 3 ヤコブは彼らを見たとき、「ここは神の陣営だ」と言い、その場所をマハナイム(二組の陣営)と名付けた。
4 ヤコブは、あらかじめ、セイル地方、すなわちエドムの野にいる兄エサウのもとに使いの者を遣わすことにし、 5 お前たちはわたしの主人エサウにこう言いなさいと命じた。 「あなたの僕ヤコブはこう申しております。 わたしはラバンのもとに滞在し今日に至りましたが、 6 牛、ろば、羊、男女の奴隷を所有するようになりました。 そこで、使いの者を御主人様のもとに送って御報告し、御機嫌をお伺いします。」
7 使いの者はヤコブのところに帰って来て、「兄上のエサウさまのところへ行って参りました。 兄上様の方でも、あなたを迎えるため、四百人のお供を連れてこちらへおいでになる途中でございます」と報告した。 8 ヤコブは非常に恐れ、思い悩んだ末、連れている人々を、羊、牛、らくだなどと共に二組に分けた。 9 エサウがやって来て、一方の組に攻撃を仕掛けても、残りの組は助かると思ったのである。 10 ヤコブは祈った。
「わたしの父アブラハムの神、わたしの父イサクの神、主よ、あなたはわたしにこう言われました。 『あなたは生まれ故郷に帰りなさい。 わたしはあなたに幸いを与える』と。 11 わたしは、あなたが僕に示してくださったすべての慈しみとまことを受けるに足りない者です。 かってわたしは、一本の杖を頼りにこのヨルダン川を渡りましたが、今は二組の陣営を持つまでになりました。 12 どうか、兄エサウの手から救ってください。 わたしは兄が恐ろしいのです。 兄は攻めて来て、わたしをはじめ母も子供も殺すかもしれません。 13 あなたは、かってこう言われました。 『わたしは必ずあなたに幸いを与え、あなたの子孫を海辺の砂のように数えきれないほど多くする』と。」
14 その夜、ヤコブはそこに野宿して、自分の持ち物の中から兄エサウへの贈り物を選んだ。 15 それは、雌山羊二百匹、雄山羊二十匹、雌羊二百匹、雄羊二十匹、 16 乳らくだ三十頭とその子供、雌牛四十頭、雄牛十頭、雌ろば二十頭、雄ろば十頭であった。 17 それを群れごとに分け、召し使いたちの手に渡して言った。 「群れと群れとの間に距離を置き、わたしの先に立って行きなさい。」 18 また、先頭を行く者には次のように命じた。 「兄のエサウがお前に出会って、『お前の主人は誰だ。 どこへ行くのか。 ここにいる家畜は誰のものだ』と尋ねたら、 19 こう言いなさい。 『これは、あなたさまの僕ヤコブのもので、御主人のエサウさまに差し上げる贈り物でございます。 ヤコブも後から参ります』と。」 20 ヤコブは、二番目の者にも、群れの後について行くすべての者に命じて言った。 「エサウに出会ったら、これと同じことを述べ、 21 『あなたさまの僕ヤコブも後から参ります』と言いなさい。」 ヤコブは、贈り物を先に行かせて兄をなだめ、その後で顔を合せれば、恐らく快く迎えてくれるだろうと思ったのである。 22 こうして、贈り物を先に行かせ、ヤコブ自身は、その夜、野営地にとどまった。
ペヌエルでの格闘
23 その夜、ヤコブは起きて、二人の妻と二人の側女、それに十一人の子供を連れてヤボクの渡しを渡った。
24 皆を導いて川を渡らせ、持ち物も渡してしまうと、 25 ヤコブは独り後に残った。 そのとき、何者かが夜明けまでヤコブと格闘した。 26 ところが、その人はヤコブに勝てないとみて、ヤコブの腿の関節を打ったので、格闘をしているうちに腿の関節がはずれた。 27 「もう去らせてくれ。 夜が明けてしまうから」とその人は言ったが、ヤコブは答えた。 「いいえ、祝福してくださるまでは離しません。」 28 「お前の名は何というのか」とその人が尋ね、「ヤコブです」と答えると、 29 その人は言った。 「お前の名はもうヤコブではなく、これからはイスラエルと呼ばれる。 お前は神と人と闘って勝ったからだ。」 30 「どうか、あなたのお名前を教えてください」とヤコブが尋ねると、「どうして、わたしの名を尋ねるのか」と言って、ヤコブをその場で祝福した。 31 ヤコブは、「わたしは顔と顔とを合せて神を見たのに、なお生きている」と言って、その場所をベヌエル(神の顔)と名付けた。 32 ヤコブがベヌエルを過ぎたとき、太陽は彼の上に昇った。 ヤコブは腿を痛めて足を引きずっていた。 33 こういうわけで、イスラエルの人々は今でも腿の関節の上にある腰の筋を食べない。 かの人がヤコブの腿の関節、つまり腰の筋のところを打ったからである。
エサウとの再会 33
1 ヤコブが目を上げると、エサウが四百人の者を引き連れて来るのが見えた。 ヤコブは子供たちをそれぞれ、レアとラケルと二人の側女とに分け、 2 側女とその子供たちを前に、レアとその子供たちをその後ろに、ラケルとヨセフを最後に置いた。 3 ヤコブはそれから、先頭に進み出て、兄のもとに着くまでに七度地にひれ伏した。 4 エサウは走って来てヤコブを迎え、抱き締め、首を抱えて口づけし、共に泣いた。 5 やがて、エサウは顔を上げ、女たちや子供たちを見回して尋ねた。
「一緒にいるこの人々は誰なのか。」
「あなたの僕であるわたしに、神が恵んでくださった子供たちです。」
ヤコブが答えると、 6 側女たちが子供たちと共に進み出てひれ伏し、 7 次に、レアが子供たちと共に進み出てひれ伏し、最後にヨセフとラケルが進み出てひれ伏した。
8 エサウは尋ねた。
「今、わたしが出会ったあの多くの家畜は何のつもりか。」
ヤコブが、「ご主人様の好意を得るためです」と答えると、 9 エサウは言った。
「弟よ、わたしのところには何でも十分ある。 お前のものはお前が持っていなさい。」
10 ヤコブは言った。
「いいえ、もし御好意をいただけるのであれば、どうぞ贈り物をお受け取りください。 兄上のお顔は、わたしには神の御顔のように見えます。 このわたしを温かく迎えてくださったのですから。 11 どうか、持参しました贈り物をお納めください。 神がわたしに恵みをお与えになったので、わたしは何でも持っていますから。」
ヤコブがしきりに勧めたので、エサウは受け取った。
12 それからエサウは言った。
「さあ、一緒に出かけよう。 わたしが先導するから。」
13 「御主人様。 ご存じのように、子供たちはか弱く、わたしも羊や牛の子に乳を飲ませる世話をしなければなりません。 群れは、一日でも無理に追い立てるとみな死んでしまいます。 14 どうか御主人様、僕におかまいなく先にお進みください。 わたしは、ここにいる家畜や子供たちの歩みに合わせてゆっくり進み、セイルの御主人様のもとへ参りましょう。」
ヤコブがこう答えたので、 15 エサウは言った。
「では、わたしが連れている者を何人か、お前のところに残しておくことにしよう。」
「いいえ。 それには及びません。 御好意だけで十分です」と答えたので、 16 エサウは、その日セイルへの道を帰って行った。
17 ヤコブはストコへ行き、自分の家を建て、家畜の小屋を作った。 そこで、その場所の名はストコ(小屋)と呼ばれている。
18 ヤコブはこうして、パダン・アラムから無事にカナン地方にあるシケムの町に着き、町のそばに宿営した。 19 ヤコブは、天幕を張った土地の一部を、シケムの父ハモルの息子たちから百ケシタで買い取り、 20 そこに祭壇を建てて、それをエル・エロヘ・イスラエルと呼んだ。
シケムでの出来事 34
1 あるとき、レアとヤコブの間に生まれた娘のディナが土地の娘たちに会いに出かけたが、 2 その土地の首長であるヒビ人ハモルの息子シケムが彼女を見かけて捕らえ、共に寝て辱めた。 3 シケムはヤコブの娘ディナに心を奪われ、この若い娘を愛し、言い寄った。 4 更にシケムは、父ハモルに言った。
「どうか、この娘と結婚させてください。」
5 ヤコブは、娘のディナが汚されたことを聞いたが、息子たちは家畜を連れて野に出ていたので、彼らが帰るまで黙っていた。 6 シケムの父ハモルがヤコブと話し合うためにやって来たとき、 7 ヤコブの息子たちが野から帰って来てこの事を聞き、皆、互に嘆き、また激しく憤った。 シケムがヤコブの娘と寝て、イスラエルに対して恥ずべきことを行ったからである。 それはしてはならないことであった。 8 ハモルは彼らと話した。
「息子のシケムは、あなたがたの娘さんを恋い慕っています。 どうか、娘さんを息子の嫁にしてください。 9 お互いに姻戚関係を結び、あなたがたの娘さんたちをわたしどもにくださり、わたしどもの娘を嫁にしてくださいませんか。 10 そして、わたしどもと一緒に住んでください。 あなたがたのための土地も十分あります。 どうか、ここに移り住んで、自由に使ってください。」
11 シケムも、ディナの父や兄弟たちに言った。
「ぜひとも、よろしくお願いします。 お申し出があれば何でも差し上げます。 12 どんなに高い結納金でも贈り物でも、お望みどおり差し上げます。 ですから、ぜひあの方をわたしの妻にください。」
13 しかし、シケムが妹のディナを汚したので、ヤコブの息子たちは、シケムとその父ハモルをだましてこう答えた。
14 「割礼を受けていない男に、妹を妻として与えることはできません。 そのようなことは我々の恥とするところです。 15 ただ、次の条件がかなえられれば、あなたたちに同意しましょう。 それは、あなたたちの男性が皆、割礼を受けて我々と同じようになることです。 16 そうすれば、我々の娘たちをあなたたちに与え、あなたたちの娘を我々がめとります。 そして我々は、あなたたちと一緒に住んで一つの民となります。 17 しかし、もし割礼を受けることに同意しないなら、我々は娘を連れてここを立ち去ることにします。
18 ハモルとその息子シケルは、この条件なら受け入れてもよいと思った。 19 とくにシケムは、ヤコブの娘を愛していたので、ためらわず実行することにした。 彼は、ハモル家の中では最も尊敬されていた。 20 ハモルと息子シケムは、町の門のところへ行き町の人々に提案した。
21 「あの人たちは、我々と仲良くやっていける人たちだ。 彼らをここに住まわせ、この土地を自由に使ってもらうことにしようではないか。 土地は御覧のとおり十分広いから、彼らが来ても大丈夫だ。 そして、彼らの娘たちを我々の嫁として迎え、我々の娘たちを彼らの与えようではないか。 22 ただ、次の条件がかなえられれば、あの人たちは我々と一緒に住み、一つの民となることに同意するというのだ。 それは、彼らが割礼を受けているように、我々も男性は皆、割礼を受けることだ。 23 そうすれば、彼らの家畜の群れも財産も動物もみな、我々のものになるではないか。 それには、ただ彼らの条件に同意さえすれば、彼らは我々と一緒に住むことができるのだ。」
24 町の門のところに集まっていた人々は皆、ハモルと息子シケムの提案を受け入れた。 町の門のところに集まっていた男性はこうして、すべて割礼を受けた。
25 三日目になって、男たちがまだ傷の痛みに苦しんでいたとき、ヤコブの二人の息子、つまりディナの兄のシメオンとレビは、めいめい剣を取って難なく町に入り、男たちをことごとく殺した。 26 ハモルと息子シケムも剣にかけて殺し、シケムの家からディナを連れ出した。 27 ヤコブの息子たちは、倒れている者たちに襲いかかり、更に町中を略奪した。 自分たちの妹を汚したからである。 28 そして、羊や牛やろばなど、町の中のものも野にあるものも奪い取り、 29 家の中にあるものもみな奪い、女も子供もすべて捕虜にした。
30 「困ったことをしてくれたものだ。 わたしはこの土地に住むカナン人やペリジ人の憎まれ者になり、のけ者になってしまった。 こちらは少人数なのだから、彼らが集まって攻撃してきたら、わたしも家族も滅ぼされてしまうではないか」とヤコブがシメオンとレビに言うと、 31 二人はこう言い返した。
「わたしたちの妹が娼婦のように扱われてもかまわないのですか。」
再びベテルへ 35
1 神はヤコブに言われた。 「さあ、ベテルに上り、そこに住みなさい。 そしてその地に、あなたが兄エサウを避けて逃げて行ったとき、あなたに現れた神のための祭壇を造りなさい。」
2 ヤコブは、家族の者や一緒にいるすべての人々に言った。 「お前たちが身に着けている外国の神々を取り去り、身を清めて衣服を着替えなさい。 3 さあ、これからベテルに上ろう。 わたしはその地に、苦難の時わたしに答え、旅の間わたしと共にいてくださった神のために祭壇を造る。」 4 人々は、持っていた外国のすべての神々と、着けていた耳飾りをヤコブに渡したので、ヤコブはそれらをシケムの近くにある樫の木の下に埋めた。 5 こうして一同は出発したが、神が周囲の町々を恐れさせたので、ヤコブの息子たちを追跡する者はなかった。 6 ヤコブはやがて、一族の者すべてと共に、カナン地方のルズ、すなわちベテルに着き、 7 そこに祭壇を築いて、その場所をエル・ベテルと名付けた。 兄を避けて逃げて行ったとき、神がそこでヤコブに現れたからである。
8 リベカの乳母デボラが死に、ベテルの下手にある樫の木の下に葬られた。 そこで、その名はアロン・バクト(嘆きの樫の木)と呼ばれるようになった。
9 ヤコブがパダン・アラムから帰って来たとき、神は再びヤコブに現れて彼を祝福された。 10 神は彼に言われた。
「あなたの名はヤコブである。 しかし、あなたの名はもはやヤコブと呼ばれない。 イスラエルがあなたの名となる。」
神はこうして、彼をイスラエルと名付けられた。
11 神は、また彼に言われた。
「わたしは全能の神である。
産めよ、増えよ。
あなたから
一つの国民、いや多くの国民の群れが起こり
あなたの腰から王たちが出る。
12 わたしは、アウラハムとイサクに与えた土地を
あなたに与える。
また、あなたに続く子孫にこの土地を与える。
13 神はヤコブと語られた場所を離れて昇って行かれた。 14 ヤコブは、神が自分と語られて場所に記念碑立てた。 それは石の柱で、彼はその上にぶどう酒を注ぎかけ、また油を注いだ。 15 そしてヤコブは、神が自分と語られた場所をベテルと名付けた。
ラケルの死
16 一同がベテルを出発し、エフラタまで行くにはまだかなりの道のりがあるときに、ラケルが産気づいたが、難産であった。 17 ラケルが産みの苦しみをしているとき、助産婦は彼女に、「心配ありません。 今度も男の子ですよ」と言った。 18 ラケルが最後の息を引き取ろうとするとき、その子をベン・オニ(わたしの苦しみの子)と名付けたが、父はこれをベニヤミン(幸いの子)と呼んだ。
19 ラケルは死んで、エフラタ、すなわち今日のベツレヘムへ向かう道の傍らに葬られた。 20 ヤコブは、彼女の葬られた所に記念碑を立てた。 それは、ラケルの葬りの碑として今でも残っている。 21 イスラエルは更に旅を続け、ミグダル・エデルを過ぎた所に天幕を張った。 22 イスラエルがそこに滞在していたとき、ルベンは父の側女ビルハのところへ入って寝た。 このことはイスラエルの耳にも入った。
ヤコブの息子たち
ヤコブの息子は十二人であった。 23 レアの息子がヤコブの長男ルベン、それからシメオン、レビ、ユダ、イサカル、ゼブルン、 24 ラケルの息子がヨセフとベニヤミン、 25 ラケルの召し使いビハルの息子がダンとナフタリ、 26 レアの召し使いジルパの息子がガドとアシェルである。 これらは、パダン・アラムの生まれたヤコブの息子たちである。
イサクの死
27 ヤコブは、キルヤト・アルバ、すなわちヘブロンのマレムにいる父のイサクのところへ行った。 そこは、イサクだけでなく、アブラハムも滞在した所である。 28 イサクの生涯は百八十年であった。 29 イサクは息を引き取り、高齢のうちに満ち足りて死に、先祖の列に加えられた。 息子のエサウとヤコブが彼を葬った。
エサウの子孫 36
1 エサウ、すなわちエドムの系図は次のとおりである。 2 エサウは、カナンの娘たちの中から妻を迎えた。 ヘト人エロンの娘アダ、ヒビ人ツィブオンの孫娘でアナの娘オホリバマ、 3 それに、ネバヨトの姉妹でイシュマエルの娘バセマトである。 4 アダは、エサウとの間にエリファズを産み、バセマトはレウエルを産んだ。 5 オホリバマは、エウシュ、ヤラム、コラを産んだ。 これらは、カナン地方で生まれたエサウの息子たちである。
6 エサウは、妻、息子、娘、家で働くすべての人々、家畜の群れ、すべての動物を連れ、カナンの土地で手に入れた全財産を携え、弟ヤコブのところから離れたほかの土地へ出て行った。 7 彼らの所有物は一緒に住むにはあまりに多く、滞在していた土地は彼らの家畜を養うには狭すぎたからである。 8 エサウはこうして、セイルの山地に住むようになった。 エサウとはエドムのことである。
9 セイルの山地に住む、エドム人の先祖エサウの系図は次のとおりである。 10 まず、エサウの息子たちの名前を挙げると、エリファズはエサウの妻アダの子で、レウエルはエサウの妻バセマトの子である。 11 エリファズの息子たちは、テマン、オマル、ツエフォ、ガタム、ケナズである。 12 エサウの息子エリファズの側女ティムナは、エリファズのとの間にアマレクを産んだ。 以上が、エサウの妻アダの子孫である。 13 レウエルの息子たちは、ナハト、ゼラ、シャンマ、ミザである。 以上が、エサウの妻バセマトの子孫である。 14 ツィブオンの孫娘で、アナの娘であるエサウの妻オホリバマの息子たちは、次のとおりである。 彼女は、エサウとの間にエウシュ、ヤラム、コラを産んだ。
15 エサウの子孫である首長は次のとおりである。 まず、エサウの長男エリファズの息子たちについていえば、首長テマン、首長オマル、首長ツェホ、首長ケナズ、 16 首長コラ、首長ガタム、首長アマレクである。 これらは、エドム地方に住むエリファズ系の首長で、アダの子孫である。 17 次に、エサウの子レウエルの息子たちについていえば、首長ナハト、首長ゼラ、首長シャンマ、首長ミザ、である。 これらは、エドム地方に住むレウエル系の首長で、エサウの妻バセマトの子孫である。 18 エサウの妻ホオリバマの息子たちについていえば、首長エウシュ、首長ヤラム、首長コラである。 これらは、アナの娘であるエサウの妻オホリバマから生まれた首長である。 19 以上が、エサウ、すなわちエドムの子孫である首長たちである。
セイルの子孫
20 この土地に住むフリ人セイルの息子たちは、ロタン、ショバル、ツィブオン、アナ、 21 ディション、エツェル、ディシャンである。 これらは、エドム地方に住むセイルの息子で、フリ人の首長たちである。 22 ロタンの息子たちは、ホリとヘマムであり、ロタンの妹がティムナである。 23 ショバルの息子たちは、アルワン、マナハト、エバル、シェフォ、オナムである。 24 ツィブオンの息子たちは、アヤとアナである。 アナは父ツィブオンのろばを飼っていたとき、荒れ野で泉を発見した人である。 25 アナの子供たちは、ディションとアナの娘オホリバマである。 26 ディションの息子たちは、ヘムダン、エシュバン、イトラン、ケランである。 27 エツェルの息子たちは、ビルハン、ザアワン、アカンである。 28 ディションの息子たちは、ウツとアランである。
29 フリ人の首長は次の通りである。 首長ロタン、首長ショバル、首長ツィブオン、首長アナ、 30 首長ディション、首長エツェル、首長ディシャン。 以上がフリ人の首長であり、セイル地方に住むそれぞれの首長であった。
エドムの王国
31 イスラエルの人々を治める王がまだいなかった時代に、エドム地方を治めていた王たちは次のとおりである。 32 エドムで治めていたのは、ベオルの息子ベラであり、その町の名はディンハバといった・ 33 ベラが死んで、代りに王となったのは、ボツラ出身でゼラの息子ヨバブである。 34 ヨバブが死んで、代りに王となったのは、テマン人の土地から出たフシャムである。 35 フシャムが死んで代わりに王になったのは、ベダドの息子ハダドであり、モアブの野でミディアン人を撃退した人である。 その町の名はアビトといった。 36 ハダドが死んで代わりに王となったのは、マスレカ出身のサムラである。 37 サムラが死んで代わりに王となったのは、ユーフラテス川のレホボト出身のシャウルである。 38 シャウルが死んで、代りに王となったのは、アクボルの息子バアル・ハナンである。 39 アクボルの息子バアル・ハナンが死んで代わりに王となったのは、ハダドである。 その町の名はバウといい、その妻の名はメヘタブエルといった。 彼女はマトレドの娘で、メ・ザハブの孫娘である。
40 エサウ系の首長たちの名前を氏族と場所の名に従って挙げれば、首長ティムナ、首長アルワ、首長エテト、 41 首長オホリバマ、首長エラ、首長ピノン、 42 首長ケナズ、首長テマン、首長ミブツァル、 43 首長マグディエル、首長イラムである。 以上がエドムの首長であって、彼らが所有した領地に従って挙げたものである。 エサウは、エドム人の先祖である。
ヨセフの夢 37
1 ヤコブは、父がかって滞在していたカナン地方に住んでいた。
2 ヤコブの家族の由来は次にとおりである。 ヨセフは十七歳のとき、兄たちと羊
の群れを飼っていた。 まだ若く、父の側女ビルハやジツパの子供たちと一緒にいた。 ヨセフは兄たちのことを父に告げ口した。
3 イスラエルは、ヨセフが年寄り子であったので、どの息子よりもかわいがり、彼には裾の長い晴れ着を作ってやった。 4 兄たちは、父がどの兄弟よりもヨセフをかわいがるのを見て、ヨセフを憎み、穏やかに話すこともできなかった。
5 ヨセフは夢を見て、それを兄たちに語ったので、彼らはますます憎むようになった。 6 ヨセフは言った。
「聞いてください。 わたしはこんな夢を見ました。 7 畑でわたしたちが束を結わえていると、いきなりわたしの束が起き上がり、まっすぐに立ったのです。 すると、兄さんたちの束が周りに集まって来て、わたしの束にひれ伏しました。」
8 兄たちはヨセフに言った。
「なに、お前が我々の王になるというのか。 お前が我々を支配するというのか。」
9 ヨセフはまた別の夢を見て、それを兄たちに話した。
「わたしはまた夢を見ました。 太陽と月と十一の星がわたしにひれ伏しているのです。」
10 今度は兄たちだけでなく、父にも話した。 父はヨセフを叱って言った。
「一体どういうことだ、お前が見たその夢は。 わたしもお母さんも兄さんたちも、お前の前に行って、地面にひれ伏すというのか。」
11 兄たちはヨセフをねたんだが、父はこのことを心に留めた。
ヨセフ、エジプトに売られる
12 兄たちが出かけて行き、シケムで父の羊の群れを飼っていたとき、 13 イスラエルはヨセフに言った。 「兄さんたちはシケムで羊を飼っているはずだ。 お前を彼らのところはやりたいのだが。」
「はい、分かりました」とヨセフが答えると、 14 更にこう言った。
「では、早速出かけて、兄さんたちが元気にやっているか、羊の群れも無事か見届けて、様子を知らせてくれないか。」
父はヨセフをヘブロンの谷から送り出した。 ヨセフがシケムに着き、 15 野原をさまよっていると、一人の人に出会った。 その人はヨセフに尋ねた。
「何を探しているのかね。」
16 「兄たちを探しているのです。 どこで羊の群れを飼っているか教えてください。」
ヨセフがこう言うと、 17 その人は答えた。
「もうここをたってしまった。 ドタンへ行こう、 と言っていたのを聞いたが。」
ヨセフは兄たちの後を追って行き、ドタンで一行を見つけた。
18 兄たちは、はるか遠くの方にヨセフの姿を認めると、まだ近づいて来ないうちに、ヨセフを殺してしまおうとたくらみ、 19 相談した。
「おい、向こうから例の夢見るお方がやって来る。 20 さあ、今だ。 あれを殺して、穴の一つに投げ込もう。 後は野獣に食われたと言えばよい。 あれの夢がどうなるか、見てやろう。」
21 ルベンはこれを聞いて、ヨセフを彼らの手から助け出そうとして、言った。
「命まで取るのはよそう。」
22 ルペンは続けて言った。
「血を流してはならない。 荒れ野のこの穴に投げ入れよう。 手を下してはならない。」
ルベンはヨセフを彼らの手から助け出して、父のもとへ帰したかったのである。
23 ヨセフがやって来ると、兄たちはヨセフが着ていた着物、裾の長い晴れ着をはぎ取り、 24 彼を捕らえて、穴に投げ込んだ。 その穴は空で水はなかった。
25 彼らはそれから、腰を下ろして食事を始めたが、ふと目を上げると、イシュマエル人の隊商がギレアドの方からやって来るのが見えた。 らくだに樹脂、乳香、没薬を積んで、エジプトに下って行こうとしているところであった。 26 ユダは兄弟たちに言った。
「弟を殺して、その血を覆っても何の得にもならない。 27 それより、あのイシュマエル人に売ろうではないか。 弟に手をかけるのはよそう。 あれだって、肉親の弟だから。」
兄弟たちは、これを聞き入れた。
28 ところが、その間にミディアン人の商人たちが通りかかって、ヨセフを穴から引き上げ、銀二十枚でイシュマエル人に売ったので、彼らはヨセフをエジプトに連れて行ってしまった。 29 ルベンが穴のところに戻ってみると、意外にも穴の中にヨセフはいなかった。 ルベンは自分の衣を引き裂き、 30 兄弟たちのところへ帰り、「あの子がいない。 わたしは、このわたしは、どうしたらいいのか」と言った。 31 兄弟たちはヨセフの着物を拾い上げ、雄山羊を殺してその血に着物を浸した。 32 彼らはそれから、裾の長い晴れ着を父のもとへ送り届け、「これを見つけましたが、あなたの息子の着物かどうか、お調べになってください」と言わせた。 33 父は、それを調べて言った。
「あの子の着物だ。 野獣に食われたのだ。 ああ、ヨセフはかみ裂かれてしまったのだ。」
34 ヤコブは自分の衣を引き裂き、粗布を腰にまとい、幾日もその子のために嘆き悲しんだ。 35 息子や娘たちが皆やって来て、慰めようとしたが、ヤコブは慰められることを拒んだ。
「ああ、わたしもあの子のところへ、嘆きながら陰府(よみ)へ下って行こう。」
父はこう言って、ヨセフのために泣いた。
36 一方、メダンの人たちがエジプトへ売ったヨセフは、ファラオの宮廷の役人で、侍従長であったポティファルのものとなった。
ユダとタマル 38
1 そのころ、ユダは兄弟たちと別れて、アドラム人のヒラという人の近くに天幕を張った。 2 ユダはそこで、カナン人のシュアという人の娘を見初めて結婚し、彼女のところへ入った。 3 彼女は身ごもり男の子を産んだ。 ユダはその子をエルと名付けた。 4 彼女はまた身ごもり男の子を産み、その子をオナンと名付けた。 5 彼女は更にまた男の子を産み、その子をシェラと名付けた。 彼女がシェラを産んだ時、ユダはケジブにいた。
6 ユダは長男のエルに、タマルという嫁を迎えたが、 7 ユダの長男エルは主の意に反したので、主は彼を殺された。 8 ユダはオナンに言った。
「兄嫁のところへ入り、兄弟の義務を果たし、兄のために子孫をのこしなさい。」
9 オナンはその子孫が自分のものとならないのを知っていたので、兄に子孫を与えないように、兄嫁のところに入る度に子種を地面に流した。 10 彼のしたことは主の意に反することであったので、彼もまた殺された。
11 ユダは嫁のタマルに言った。
「わたしの息子のシェラが成人するまで、あなたは父上の家で、やもめのまま暮らしなさい。」
それは、シェラもまた兄たちのように死んではいけないと思ったからであった。 タマルは自分の父の家に帰って暮らした。
12 かなりの年月がたって、シュアの娘であったユダの妻が死んだ。 ユダは喪に服した後、友人のアドラム人ヒラと一緒に、ティムナの羊の毛を刈る者のところへ上って行った。 13 ある人がタマルに、「あなたのしゅうとが、羊の毛を刈るために、ティムナへやって来ます」と知らせたので、 14 タマルはやもめの着物を脱ぎ、ベールをかぶって身なりを変え、ティムナへ行く途中のエナイムの入り口に座った。 シェラが成人したのに、自分がその妻にしてもらえない、と分かったからである。 15 ユダは彼女を見て、顔を隠しているので娼婦だと思った。 16 ユダは、路傍にいる彼女に近寄って、「さあ、あなたの所に入らせてくれ」と言った。 彼女が自分の嫁だとは気づかなかったからである。
「わたしの所にお入りになるのなら、何をくださいますか」と彼女が言うと、 17 ユダは、「群れの中から子山羊を一匹、送り届けよう」と答えた。 しかし彼女は言った。
「でも、それを送り届けてくださるまで、保証の品をください。」
18 「どんな保証がいいのか」と言うと、彼女は答えた。
「あなたのひもの付いた印章と、持っていらっしゃるその杖です。」
ユダはそれを渡し、彼女の所に入った。 彼女はこうして、ユダによって身ごもった。 19 彼女はそこを立ち去り、ベールを脱いで、再びやもめの着物を着た。
20 ユダは子山羊を友人のアドラム人の手に託して送り届け、女から保証の品を取り戻そうとしたが、その女は見つからなかった。 21 友人が土地の人々に、「エナイムの路傍にいた神殿娼婦は、どこにいるのでしょうか」と尋ねると、人々は、「ここには、神殿娼婦などいたことはありません」と答えた。 22 友人はユダのところに戻って来て言った。 「女は見つかりませんでした。 それに土地の人々も、『ここには、神殿娼婦などいたことはありません』と言うのです。」 23 ユダは言った。
「では、あの品はあの女にそのままやっておこう。 さもないと、我々が物笑いの種になるから。 とにかく、わたしは子山羊を届けたのだが、女が見つからなかったのだから。」
24 三か月ほどたって、「あなたの嫁タルマは姦淫をし、しかも、姦淫によって身ごもりました」とユダに告げる者があったので、ユダは言った。
「あの女を引きずり出して、焼き殺してしまえ。」
25 ところが、引きずり出されようとしたとき、タマルはしゅうとに使いをやって言った。
「わたしは、この品々の持ち主によって身ごもったのです。」
彼女は続けて言った。
「どうか、このひもの付いた印章とこの杖とが、どなたのものか、お調べください。」
26 ユダは調べて言った。
「わたしより彼女の方が正しい。 わたしが彼女を息子のシェラに与えなかったからだ。」
ユダは、再びタマルを知ることはなかった。
27 タマルの出産の時が来たが、胎内には双子がいた。 28 出産の時、一人の子が手を出したので、助産婦は、「これが先に出た」と言い、真赤な糸を取ってその手に結んだ。 29 ところがその子は手を引っ込めてしまい、もう一人の方が出てきたので、助産婦は言った。 「なんとまあ、この子は人を出し抜いたりして。」
そこで、この子はペレツ(出し抜き)と名付けられた。 30 その後から、手に真赤な糸を結んだ方の子が出てきたので、この子はゼラ(真赤)と名付けられた。
ヨセフとポティファルの妻 39
1 ヨセフはエジプトに連れて来られた。 ヨセフをエジプトへ連れて来たイシュマエル人の手から彼を買い取ったのは、ファラオの宮廷の役人で、侍従長のエジプト人ポティファルであった。
2 主がヨセフと共におられたので、彼はうまく事を運んだ。 彼はエジプト人の主人の家にいた。 3 主が共におられ、主が彼のすることをすべてうまく計らわれるのを見た主人は、 4 ヨセフに目をかけて身近に仕えさせ、家の管理をゆだね、財産をすべて彼の手に任せた。 5 主人が家の管理やすべての財産をヨセフに任せてから、主はヨセフゆえにそのエジプト人の家を祝福された。 主の祝福は、家の中にも農地にも、すべての財産に及んだ。 6 主人は全財産をヨセフの手にゆだねてしまい、自分が食べるもの以外は全く気を遣わなかった。 ヨセフは顔も美しく、体つきも優れていた。
7 これらのことの後で、主人の妻はヨセフに目を注ぎながら言った。
「わたしの床に入りなさい。」
8 しかし、ヨセフは拒んで、主人の妻に言った。
「御存じのように、御主人はわたしを側に置き、家の中のことには一切気をお遣いになりません。 財産もすべてわたしの手にゆだねてくださいました。 9 この家では、わたしの上に立つ者はいませんから、わたしの意のままにならないものもありません。 ただ、あなたは別です。 あなたは御主人の妻ですから。 わたしは、どうしてそのように大きな悪を働いて、神に罪を犯すことができましょう。」
10 彼女は毎日ヨセフに言い寄ったが、ヨセフは耳を貸さず、彼女の傍らに寝ることも、共にいることもしなかった。
11 こうして、ある日、ヨセフが仕事をしようと家に入ると、家の者が一人も家の中にいなかったので、 12 彼女はヨセフの着物をつかんで言った。
「わたしの床に入りなさい。」
ヨセフは着物を彼女の手に残し、逃げて外へ出た。 13 着物を彼女の手に残したまま、ヨセフが外へ逃げたのを見ると、 14 彼女は家の者たちを呼び寄せて言った。
「見てごらん、ヘブライ人などをわたしたちの所に連れて来たから、わたしたちはいたずらをされる。 彼がわたしの所へ来て、わたしと寝ようとしたから、大声で叫びました。 15 わたしが大声をあげて叫んだのを聞いて、わたしの傍らに着物を残したまま外へ逃げて行きました。 16 彼女は、主人が家に帰って来るまで、その着物を傍らに置いていた。 17 そして、主人に同じことを語った。
「あなたがわたしたちの所に連れて来た、あのヘブライ人の奴隷はわたしの所に来て、いたずらをしようとしたのです。 18 わたしが大声をあげて叫んだものですから、着物をわたしの傍らに残したまま、外へ逃げて行きました。」
19 「あなたの奴隷がわたしにこんなことをしたのです」と訴える妻の言葉を聞いて、主人は怒り、 20 ヨセフを捕らえて、王の囚人をつなぐ監獄に入れた。 ヨセフはこうして、監獄にいた。
21 しかし、主がヨセフと共におられ、恵みを施し、看守長の目にかなうように導かれたので、 22 看守長は監獄にいる囚人を皆、ヨセフの手にゆだね、獄中の人のすることはヨセフが取りしきるようになった。 23 看守長は、ヨセフの手にゆだねたことには、一切目を配らなくてもよかった。 主がヨセフと共におられ、ヨセフがすることを主がうまく計られたからである。
夢を解くヨセフ 40
1 これらのことの後で、エジプト王の給仕役と料理役が主君であるエジプト王に過ちを犯した。 2 ファラオは怒って、この二人の宮廷の役人、給仕役の長と料理役の長を、 3 侍従長の家にある牢獄、つまりヨセフがつながれている監獄に引き渡した。 4 侍従長は彼らをヨセフに預け、身辺の世話をさせた。 牢獄の中で幾日かが過ぎたが、 5 監獄につながれていたエジプト王の給仕役料理役は、二人とも同じ夜にそれぞれ夢を見た。 その夢には、それぞれ意味が隠されていた。 6 朝になって、ヨセフが二人のところへ行ってみると、二人ともふさぎ込んでいた。 7 ヨセフは主人の家の牢獄に自分一緒に入れられているファラオの宮廷の役人に尋ねた。
「今日は、どうしてそんなに憂うつな顔をしているのですか。」
8 「我々は夢を見たのだが、それを解き明かしてくれる人がいない」と二人は答えた。 ヨセフは、「解き明かしは神がなさることではありませんか。 どうかわたしに話してみてください」と言った。 9 給仕役の長はヨセフに自分の見た夢を話した。
「わたしが夢を見ていると、一本のぶどうの木が目の前に現れたのです。 10 そのぶどうの木には三本のつるがありました。 それがみるみるうちに芽を出したかと思うと、すぐに花が咲き、ふさふさとしたぶどうが熟しました。 11 ファラオの杯を手にしていたわたしは、そのぶどうを取って、ファラオの杯に搾り、その杯をファラオにささげました。
12 ヨセフは言った。
「その解き明かしはこうです。 三本のつるは三日です。 13 三日たてば、ファラオがあなたの頭を上げて、元の職務に復帰させてくださいます。 あなたは以前、給仕役であったときのように、ファラオに杯をささげる役目をするようになります
14 ついては、あなたがそのように幸せになられたときには、どうかわたしのことを思い出してください。 わたしのためにファラオにわたしの身の上を話し、この家から出られるように取り計らってください。 15 わたしはヘブライ人の国から無理やり連れて来られたのです。 また、ここでも、牢屋に入れられるようなことは何もしていないのです。
16 料理役の長は、ヨセフが巧みに解き明かすのを見て言った。
「わたしも夢を見ていると、編んだ籠が三個わたしの頭の上にありました。 17 いちばん上の籠には、料理役がファラオのために調えたいろいろな料理が入っていましたが、鳥がわたしの頭の上の籠からそれを食べているのです。」
18 ヨセフは答えた。
「その解き明かしはこうです。 三個の籠は三日です。 19 三日たてば、ファラオがあなたの頭を上げて切り離し、あなたを木にかけます。 そして、鳥があなたの肉をついばみます。
20 三日目はファラオの誕生日であったので、ファラオは家来たちを皆、招いて、祝宴を催した。 そして、家来たちの居並ぶところで例の給仕役の長の頭と料理役の長の頭を上げて調べた。 21 ファラオは給仕役の長を給仕の職に復帰させさせたので、彼はファラオに杯をささげる役目をするようになったが、 22 料理役の長は、ヨセフが解き明かしたとおり木にかけられた。 23 ところが、給仕役の長はヨセフのことを思い出さず、忘れてしまった。
ファラオの夢を解く 41
1 二年の後、ファラオは夢を見た。 ナイル川のほとりに立っていると、 2 突然、つややかな、よく肥えた七頭の雌牛が川から上がって来て、葦辺で草を食べ始めた。 3 すると、その後から、今度は醜い、やせ細った七頭の雌牛が川から上がって来て、岸辺にいる雌牛のそばに立った。 4 そして、醜い、やせ細った雌牛が雌牛が、つややかな、よく肥えた七頭の雌牛を食い尽くした。 ファラオは、そこで目が覚めた。
5 ファラオがまた眠ると、再び夢を見た。 今度は、太って、よく実った七つの穂が、一本の茎から出てきた。 6 すると、その後から、実が入っていない、東風で干からびた七つの穂が生えてきて、 7 実の入っていない穂が、太って、実の入った七つの穂をのみ込んでしまった。 ファラオは、そこで目が覚めた。 それは夢であった。 8 朝になって、ファラオはひどく心が騒ぎ、エジプト中の魔術師と賢者をすべて呼び集めさせ、自分の見た夢を彼らに話した。 しかし、ファラオに解き明かすことができる者はいなかった。
9 そのとき、例の給仕役の長がファラオに申し出た。
「わたしは、今日になって自分の過ちを思い出しました。 10 かってファラオが僕どもについて憤られて、侍従長の家にある牢獄にわたしと料理役の長を入れられたとき、 11 同じ夜に、わたしたちはそれぞれ夢を見たのですが、そのどちらにも意味が隠されていました。 12 そこには、侍従長に仕えていたヘブライ人の若者がおりまして、彼に話をしたところ、わたしたちの夢を解き明かし、それぞれ、その夢に応じて解き明かしたのです。 13 そしてまさしく、解き明かしたとおりになって、わたしは元の職務に復帰することを許され、彼は木にかけられました。
14 そこで、ファラオはヨセフを呼びにやった。 ヨセフは直ちに牢屋から連れ出され、散髪をし着物を着替えてから、ファラオの前に出た。 15 ファラオはヨセフに言った。
「わたしは夢を見たのだが、それを解き明かす者がいない。 聞くところによれば、お前は夢の話を聞いて、解き明かすことができるそうだが。」
16 ヨセフはファラオに答えた。
「わたしではありません。 神がファラオの幸いについて告げられるのです。」
17 ファラオはヨセフに話した。
「夢の中で、わたしがナイル川の岸に立っていると、 18 突然、よく肥えて、つややかな七頭の雌牛が川から上がって来て、葦辺で草を食べ始めた。 19 すると、その後から、今度は貧弱で、とても醜い、やせた七頭の雌牛が上って来た。 あれほどひどいのは、エジプトでは見たことがない。 20 そして、そのやせた、醜い雌牛が、初めのよく肥えた七頭の雌牛を食い尽くしてしまった。 21 ところが、確かに腹の中に入れたのに、腹の中に入れたことがまるで分からないほど、最初と同じように醜いままなのだ。 わたしは、そこで目が覚めた。
22 それからまた、夢の中でわたしは見たのだが、今度は、とてもよく実の入った七つの穂が一本の茎から出てきた。 23 すると、その後から、やせ細り、実が入っておらず、東風で干からびた七つの穂が生えてきた。 24 そして、実の入っていないその穂が、よく実った七つの穂をのみ込んでしまった。 わたしは魔術師たちに話したが、その意味を告げうる者は一人もいなかった。」
25 ヨセフはファラオに言った。
「ファラオの夢は、どちらも同じ意味でございます。 神がこれからなさろうとしていることを、ファラオにお告げになったのです。 26 七頭のよく育った雌牛は七年のことです。 七つのよく実った穂も七年のことです。 どちらの夢も同じ意味でございます。 27 その後から上がって来た七頭のやせた、醜い雌牛も七年のことです。 また、やせて、東風で干からびた七つの穂も同じで、これらは七年の飢饉のことです。 28 これは、先程ファラオに申上げましたように、神がこれからなさろうとしていることを、ファラオにお示しになったのです。 29 今から七年間、エジプトの国全体に大豊作が訪れます。 30 しかし、その後に七年間、飢饉が続き、エジプトの国に豊作があったことなど、すっかり忘れられてしまうでしょう。 飢饉が国を滅ぼしてしまうのです。 31 この国に豊作があったことは、その後に続く飢饉のために全く忘れられてしまうでしょう。 飢饉はそれほどひどいのです。 32 ファラオが夢を二度も重ねて見られたのは、神がこのことを既に決定しておられ、神が間もなく実行されようとしておられるからです。 33 このような次第ですから、ファラオは今すぐ、聡明で知恵のある人物をお見つけになって、エジプトの国を治めさせ、 34 また、国中に監督官をお立てになり、豊作の七年の間、エジプトの国の産物の五分の一を徴収なさいますように。 35 このようにして、これから訪れる豊年の間に食糧をできるかぎり集めさせ、町々の食糧となる穀物をファラオの管理の下に蓄え、保管させるのです。 36 そうすれば、その食糧がエジプトの国を襲う七年の飢饉に対する国の備蓄となり、飢饉によって国が滅びることはないでしょう。」
ヨセフの支配
37 ファラオと家来たちは皆、ヨセフの言葉に感心した。 38 ファラオは家来たちに、「このように神の霊が宿っている人はほかにあるだろうか」と言い、 39 ヨセフの方を向いてファラオは言った。
「神がそういうことをみな示されたからには、お前ほど聡明で知恵のある者は、ほかにはいないであろう。」 40 お前をわが宮廷の責任者とする。 わが国民は皆、お前の命に従うであろう。 ただ王位にあるということだけ、わたしはお前の上に立つ。」
41 ファラオはヨセフに向かって、「見よ、わたしは今、お前をエジプト全国の上に立てる」と言い、 42 印章のついた指輪を自分の指からはずしてヨセフの指にはめ、亜麻色の衣服を着せ、金の首飾りをヨセフの首にかけた。 43 ヨセフを王の第二の車に乗せると、人人はヨセフの前で、「アブレク(敬礼)と叫んだ。 ファラオはこうして、ヨセフをエジプト全国の上に立て、 44 ヨセフに言った。 「わたしはファラオである。 お前の許しなしには、このエジプト全国で、だれも、手足を上げてはならない。」
45 ファラオは更に、ヨセフにツッフェナト・パネアという名を与え、オンの祭司ポティ・フェラの娘アセナトを妻として与えた。 ヨセフの威光はこうして、エジプトの国にあまねく及んだ。
46 ヨセフは、エジプトの王ファラオの前に立ったとき三十歳であった。 ヨセフはファラオの前をたって、エジプト全国を巡回した。
47 豊作の七年の間、大地は豊かな実りに満ち溢れた。 48 ヨセフはその七年の間に、エジプトの国中の食糧をできるかぎり集め、その食糧を町々に蓄えさせた。 町の周囲の畑にできた食料を、その町の中に蓄えさせたのである。 49 ヨセフは、海辺の砂ほども多くの穀物を蓄え、ついに量りきれなくなったので、量るのをやめた。
50 飢饉の年がやって来る前に、ヨセフに二人の息子が生まれた。 この子供を産んだのは、オンの祭司ポティ・フェラの娘アセナトである。 51 ヨセフは長男をマナセ(忘れさせる)と名付けて言った。
「神が、わたしの苦労と父の家のことをすべて忘れさせてくださった。」
52 また、次男をエフライム(増やす)と名付けて言った。
「神は、悩みの地で、わたしに子孫を増やしてくださった。」
53 エジプトの国に七年間の大豊作が終わると、 54 ヨセフが言ったとおり、七年の飢饉が始まった。 その飢饉はすべての国々を襲ったが、エジプトには、全国どこにでも食物があった。 55 やがて、エジプト全国にも飢饉が広がり、民がファラオに食物を叫び求めた。 ファラオはすべてのエジプト人に、「ヨセフのもとに行って、ヨセフの言うとおりにせよ」と命じた。 56 飢饉は世界各地に及んだ。 ヨセフはすべての穀倉を開いてエジプト人に穀物を売ったが、エジプトの国の飢饉は激しくなっていた。 57 また、世界各地の人々も、穀物を買いにエジプトのヨセフのもとにやって来るようになった。 世界各地の飢饉も激しくなったからである。
兄たち、エジプトへ下る 42
1 ヤコブは、エジプトに穀物があると知って、息子たちに、「どうしてお前たちは顔を見合わせてばかりいるのだ」と言い、更に、 2 「聞くところでは、エジプトには穀物があるというではないか。 エジプトに下って行って穀物を買ってきなさい。 そうすれば、我々は死なずに生き延びることができるではないか」と言った。 3 そこでヨセフの十人の兄たちは、エジプトから穀物を買うために下って行った。 4 ヤコブはヨセフの弟ベニヤミンを兄たちに同行させなかった。 何か不幸なことが彼の身に起こるといけないと思ったからであった。 5 イスラエルの息子たちは、他の人々に混じって穀物を買いに出かけた。 カナン地方にも飢饉が襲っていたからである。
6 ところで、ヨセフはエジプトの司政者として、国民に穀物を販売する監督をしていた。 ヨセフの兄たちは来て、地面にひれ伏し、ヨセフを拝した。 7 ヨセフは一目で兄たちだと気づいたが、そしらぬ振りをして厳しい口調で、「お前たちは、どこからやって来たのか」と問いかけた。
彼らは答えた。
「食料を買うために、カナン地方からやって参りました。」
8 ヨセフは兄たちだと気づいていたが、兄たちはヨセフとは気づかなかった。 9 ヨセフは、そのとき、かつて兄たちについて見た夢を思い起こした。
ヨセフは彼らに言った。
「お前たちは回し者だ。 この国の手薄な所を探りに来たにちがいない。」
10 彼らは答えた。
「いいえ、御主君様。 僕どもは食糧を買いに来ただけでございます。 11 わたしどもは皆、ある男の息子で、正直な人間でございます。 僕どもは決して回し者などではありません。
12 しかしヨセフが、「いや、お前たちはこの国の手薄な所を探りに来たにちがいない」と言うと、 13 彼らは答えた。
「僕どもは、本当に十二人兄弟で、カナン地方に住むある男の息子たちでございます。 末の弟は、今、父のもとにおりますが、もう一人は失いました。」
14 すると、ヨセフは言った。
「お前たちは回し者だとわたしが言ったのは、そのことだ。 15 その点について、お前たちを試すことにする。 ファラオの命にかけて言う。 いちばん末の弟を、ここに来させよ。 それまでは、お前たちをここから出すわけにはいかぬ。 16 お前たちのうち、だれか一人を行かせて、弟を連れて来い。 それまでは、お前たちを監禁し、お前たちの言うことが本当かどうか試す。 もしそのとおりでなかったら、ファラオの命にかけて言う。 お前たちは間違いなく回し者だ。」
17 ヨセフは、こうして彼らを三日間、牢獄に監禁しておいた。
18 三日目になって、ヨセフは彼らに言った。
「こうすれば、お前たちの命を助けてやろう。 わたしは神を畏れる者だ。 19 お前たちが本当に正直な人間だというのなら、兄弟のうち一人だけを牢獄に監禁するから、ほかの者は皆、飢えているお前たちの家族のために穀物を持って帰り、 20 末の弟をここへ連れて来い。 そうして、お前たちの言い分が確かめられたら、殺されはしない。」
彼らは同意して、 21 互いに言った。
「ああ、我々は弟のことで罰を受けているのだ。 弟が我々に助けを求めたとき、あれほどの苦しみを見ながら、耳を貸そうともしなかった。 それで、この苦しみが我々にふりかかった。」
22 すると、ルベンが答えた。
「あのときわたしは、『あの子に悪いことをするな』と言ったではないか。 お前たちは耳を貸そうともしなかった。 だから、あの子の血の報いを受けるのだ。」
23 彼らはヨセフが聞いているのを知らなかった。 ヨセフと兄弟たちの間に、通訳がいたからである。 24 ヨセフは彼らから遠ざかって泣いた。 それからまた戻って来て、話をしたうえでシメオンを選び出し、彼らの見ている前で縛り上げた。 25 ヨセフは人々に命じて、兄たちの袋に穀物を詰め、支払った銀をめいめいの袋に返し、道中の食糧を与えるように指示し、そのとおり実行された。
26 彼らは穀物をろばに積んでそこを立ち去った。 27 途中の宿で、一人がろばに餌をやろうとして、自分の袋を開けてみると、袋の口のところに自分の銀があるのを見つけ、 28 ほかの兄弟たちに言った。
「戻されているぞ、わたしの銀が。 ほら、わたしの袋の中に。」
みんなの者は驚き、互いに震えながら言った。
「これは一体、どういうことだ。 神が我々になさったことは。」
29 一行はカナン地方にいる父ヤコブのところへ帰って来て、自分たちの身に起こったことをすべて報告した。
30 「あの国の主君である人が、我々を厳しい口調で問い詰めて、この国を探りに来た回し者にちがいないと言うのです。 31 もちろん、我々は正直な人間で、決して回し者などではないと答えました。 32 我々が十二人の兄弟で、一人の父の息子であり、一人は失いましたが、末の弟は今、カナン地方に住む父のもとにいますと言ったところ、 33 あの国の主君である人が言いました。 『では、お前たちが本当に正直な人間かどうかを、こうして確かめることにする。 お前たち兄弟のうち、一人だけ残し、飢えているお前たちの家族のため、穀物を持ち帰るがいい。 34 ただし、末の弟を必ずここへ連れて来るのだ。 そうすれば、お前たちが回し者ではなく、正直な人間であることが分かるから、お前たちに兄弟を返し、自由にこの国に出入りできるようにしてやろう。』」
35 それから、彼らが袋を開けてみると、めいめいの袋の中にもそれぞれ自分の銀の包みが入っていた。 彼らも父も、銀の包みを見て恐ろしくなった。 36 父ヤコブは息子たちに言った。
「お前たちは、わたしから次々と子供を奪ってしまった。 ヨセフを失い、シメオンも失った。 その上ベニヤミンまでも取り上げるのか。 みんなわたしを苦しめることばかりだ。
37 ルベンは父に言った。
「もしも、お父さんのところにベニヤミンを連れ帰らないようなことがあれば、わたしの二人の息子を殺してもかまいません。 どうか、彼をわたしに任せてください。 わたしが、必ずお父さんのところに連れ帰りますから。」
38 しかし、ヤコブは言った。
「いや、この子だけは、お前たちと一緒に行かせるわけにはいかぬ。 この子の兄は死んでしまい、残っているのは、この子だけではないか。 お前たちの旅の途中で、何か不幸なことがこの子の身に起こりでもしたら、お前たちは、この白髪の父を、悲嘆のうちに陰府に下らせることになるのだ。」
再びエジプトへ 43
1 この地方の飢饉はひどくなる一方であった。
2 エジプトから持ち帰った穀物を食べ尽くすと、父は息子たちに言った。
もう一度行って、我々の食糧を少し買って来なさい。」
3 しかし、ユダは答えた。
「あの人は、『弟が一緒でないかぎり、わたしの顔を見ることは許さぬ』と、厳しく我々に言い渡したのです。 4 もし弟を一緒に行かせてくださるなら、我々は下って行って、あなたのために食糧を買って参ります。 5 しかし、一緒に行かせてくださらないのなら、行くわけにはいきません。 『弟が一緒でないかぎり、わたしの顔を見ることは許さぬ』と、あの人が我々に言ったのですから。」
6 「なぜお前たちは、その人にもう一人弟がいるなどと言って、わたしを苦しめるようなことをしたのか」とイスラエルが言うと、 7 彼らは答えた。
「あの人が、我々のことや家族のことについて、『お前たちの父親は、まだ生きているのか』とか、『お前たちには、まだほかに弟がいるのか』などと、しきりに尋ねるものですから、尋ねられるままに答えただけです。 まさか、『弟を連れて来い』などと言われようとは思いも寄りませんでしたから。」
8 ユダは、父イスラエルに言った。
「あの子をぜひわたしと一緒に行かせてください。 それなら、すぐにでも行って参ります。 そうすれば、我々も、あなたも、子供たちも死なずに生き延びることができます。 9 あの子のことはわたしが保障します。 その責任をわたしに負わせてください。 もしも、あの子をお父さんのもとに連れ帰らず、無事な姿をお目にかけられないようなことにでもなれば、わたしがあなたに対して生涯その罪を負い続けます。 10 こんなにためらっていなければ、今ごろはもう二度も行って来たはずです。」
11 すると、父イスラエルは息子たちに言った。
「どうしてもそうしなければならないのなら、こうしなさい。 この土地の名産の品を袋に入れて、その人への贈り物として持って行くのだ。 乳香と蜜を少し、樹脂と没薬、ピスタチオやアーモンドの実。 12 それから、銀を二倍用意して行きなさい。 袋の口に戻されていた銀も持って行ってお返しするのだ。 たぶん何かの間違いだったのだろうから。 13 では、弟を連れて、早速その人のところへ戻りなさい。 14 どうか、全能の神がその人の前でお前たちに憐れみを施し、もう一人の兄弟と、このベニヤミンを返してくださいますように。 このわたしがどうしても子供を失わねばならないのなら、失ってもよい。」
15 息子たちは贈り物と二倍の銀を用意すると、ベニヤミンを連れて、早速エジプトへ下って行った。
さて、一行がヨセフの前に進み出ると、 16 ヨセフはベニヤミンが一緒なのを見て、自分の家を任せている執事に言った。
「この人たちを家へお連れしなさい。 それから、家畜を屠って料理を調えなさい。 昼の食事をこの人たちと一緒にするから。」
17 執事はヨセフに言われたとおりにし、一同をヨセフの屋敷へ連れて行った。 18 一同はヨセフの屋敷へ連れて来られたので、恐ろしくなって、「これはきっと、前に来たとき我々の袋に戻されていたあの銀のせいだ。 それで、ここに連れ込まれようとしているのだ。 今に、ろばもろとも捕らえられ、ひどい目に遭い、奴隷にされてしまうにちがいない」と思った。 19 彼らは屋敷の入り口のところでヨセフの執事の前に進み出て、話しかけて、 20 言った。
「ああ、御主人様。 実は、わたしどもは前に一度、食糧を買うためにここへ来たことがございます。 21 ところが、帰りに宿で袋を開けてみると、一人一人の袋の口のところに自分の銀が入っておりました。 しかも、銀の重さは元のままでした。 それで、それをお返ししなければ、と持って参りました。 22 もちろん、食糧を買うための銀は、別に用意してきております。 一体誰がわたしどもの袋に銀を入れたのか分かりません。」
23 執事は、「御安心なさい。 心配することはありません。 きっと、あなたたちの神、あなたたちの父の神が、その宝を袋に入れてくださったのでしょう。 あなたたちの銀は、このわたしが、このわたしが確かに受け取ったのですから」と答え、シメオンを兄弟たちのところへ連れて来た。 24 執事は一同をヨセフの屋敷に入れ、水を与えて足を洗わせ、ろばにも餌を与えた。 25 彼らは贈り物を調えて、昼にヨセフが帰宅するのを待った。 一緒に食事をすることになっていると聞いたからである。
26 ヨセフが帰宅すると、一同は屋敷に持って来た贈り物を差し出して、地にひれ伏してヨセフを拝した。
27 ヨセフは一同の安否を尋ねた後、言った。
「前に話をしていた、年をとった父上は元気か。 まだ生きておられるか。」
28 「あなたさまの僕である父は元気で、まだ生きております。と彼らは答え、ひざまずいて、ヨセフを拝した。
29 ヨセフは同じ母から生まれた弟ベニヤミンをじっと見つめて、「前に話していた末の弟はこれか」と尋ね、「わたしの子よ。 神の恵みがお前にあるように」と言うと、 30 ヨセフは急いで席を外した。 弟懐かしさに、胸が熱くなり、涙がこぼれそうになったからである。 ヨセフは奥の部屋に入ると泣いた。 31 やがて、顔を洗って出て来ると、ヨセフは平静を装い、「さあ、食事を出しなさい」と言いつけた。 32 食事は、ヨセフにはヨセフの、兄弟たちには兄弟たちの、相伴するエジプト人にはエジプト人のものと、別々に用意された。 当時、エジプト人は、ヘブライ人と共に食事をすることはできなかったからである。 それはエジプト人のいとうことであった。 33 兄弟たちは、いちばん上の兄から末の弟まで、ヨセフに向かって年齢順に座らされたので、驚いて互いに顔を見合わせた。 34 そして、料理がヨセフの前からみんなのところへ配られたが、ベニヤミンの分はほかのだれの分より五倍も多かった。 一同はぶどう酒を飲み、ヨセフと共に酒宴を楽しんだ。
銀の杯 44
1 ヨセフは執事に命じた。
「あの人たちの袋を、運べるかぎり多くの食糧でいっぱいにし、めいめいの銀をそ
れぞれの袋の口のところへ入れておけ。 2 それから、わたしの杯、あの銀の杯を、いちばん年下の者の袋の口に、穀物の代金の銀と一緒に入れておきなさい。」
執事はヨセフが命じたとおりにした。
3 次の朝、辺りが明るくなったころ、一行は見送りを受け、ろばと共に出発した。 4 ところが、町を出て、まだ遠くに行かないうちに、ヨセフは執事に命じた。
「すぐに、あの人たちを追いかけ、追いついたら彼らに言いなさい。 『どうして、お前たちは悪をもって善に報いるのだ。 5 あの銀の杯は、わたしの主人が飲むときや占いのときに、お使いになるものではないか。 よくもこんな悪いことができたものだ。』」
6 執事は彼らに追いつくと、そのとおりに言った。 7 すると、彼らは言った。
「御主人様、どうしてそのようなことをおっしゃるのですか。 僕どもがそんなことをするなどとは、とんでもないことです。 8 袋の口で見つけた銀でさえ、わたしどもはカナンの地から持ち帰って、御主人様にお返ししたではありませんか。 そのわたしどもがどうして、あなたの御主君のお屋敷から銀や金を盗んだりするでしょうか。 9 僕どもの中のだれからでも杯が見つかれば、その者は死罪に、ほかのわたしどもも皆、御主人様の奴隷になります。」 10 すると、執事は言った。
「今度もお前たちが言うとおりならよいが。 だれであっても、杯が見つかれば、その者はわたしの奴隷にならねばならない。 ほかの者には罪は無い。」
11 彼らは急いで自分の袋を地面に降ろし、めいめいで袋を開けた。 12 執事が年上の者から念入りに調べ始め、いちばん最後に年下の者になったとき、ベニヤミンの袋の中から杯が見つかった。 13 彼らは衣を引き裂き、めいめい自分のろばに荷を積むと、町へ引き返した。
14 ユダと兄弟たちがヨセフの屋敷に入って行くと、ヨセフはまだそこにいた。 一同は彼の前で地にひれ伏した。 15 「お前たちのしたこの仕業は何事か。 わたしのような者は占い当てることを知らないのか」とヨセフが言うと、 16 ユダが答えた。
「御主君に何と申し開きできましょう。 今更どう言えば、わたしどもの身の証を立てることができましょう。 神が僕どもの罪を暴かれたのです。 この上は、わたしどもも、杯が見つかった者と共に、御主君の奴隷になります。」
17 ヨセフは言った。
「そんなことは全く考えていない。 ただ、杯を見つけられた者だけが、わたしの奴隷になればよい。 ほかのお前たちは皆、安心して父親のもとへ帰るがよい。」
ユダの嘆願
18 ユダはヨセフの前に進み出て言った。
「ああ、御主君様。 何とぞお怒りにならず、僕の申し上げますことに耳を傾けてください。 あなたはファラオに等しいお方でいらっしゃいますから。
19 御主君は僕どもに向かって、『父や兄弟がいるのか』とお尋ねになりましたが、 20 そのとき、御主君に、『年をとった父と、それに父の年寄り子である末の弟がおります。 その兄は亡くなり、同じ母の子で残っているのはその子だけですから、父は彼をかわいがっております』と申上げました。 21 すると、あなたさまは、『その子をここへ連れて来い。 自分の目で確かめることにする』と僕どもにお命じになりました。 22 わたしどもは、御主君に、『あの子は、父親のもとから離れるわけにはまいりません。 あの子が父親のもとを離れれば、父は死んでしまいます』と申しましたが、 23 あなたさまは、『その末の弟が一緒に来なければ、再びわたしの顔を見ることは許さぬ』と僕どもにおっしゃいました。 24 わたしどもは、あなたさまの僕である父のところへ帰り、御主君のお言葉を伝えました。 25 そして父が、「もう一度行って、我々の食糧を少し買って来い」と申しました折にも、 26 『行くことはできません。 もし、末の弟が一緒なら、行って参ります。 末の弟が一緒でない限り、あの方の顔を見ることはできないのです』と答えました。 27 すると、あなたさまの僕である父は、『お前たちも知っているように、わたしの妻は二人の息子を産んだ。 28 ところが、そのうちの一人はわたしのところから出て行ったきりだ。 きっとかみ裂かれてしまったと思うが、それ以来、会っていない。 29 それなのに、お前たちはこの子までも、わたしから取り上げようとする。 もしも、何か不幸なことがこの子の身に起こりでもしたら、お前たちはこの白髪の父を、苦しめて陰府に下らせることになるのだ』と申しました。 30 今わたしが、この子を一緒に連れずに、あなたさまの僕である父のところへ帰れば、父の魂はこの子の魂と堅く結ばれていますから、 31 この子がいないことを知って、父は死んでしまうでしょう。 そして、僕どもは白髪の父を、悲嘆のうちに陰府に下らせることになるのです。
32 実は、この僕が父にこの子の安全を保障して、『もしも、この子をあなたのもとに連れ帰らないようなことがあれば、わたしが父に対して生涯その罪を負い続けます』と言ったのです。 33 何とぞ、この子の代わりに、この僕を御主君の奴隷としてここに残し、この子はほかの兄弟たちと一緒に帰らせてください。 34 この子を一緒に連れずに、どうしてわたしは父のもとへ帰ることができましょう。 父に襲いかかる苦悶を見るに忍びません。」
ヨセフ、身を明かす 45
1 ヨセフは、そばで仕えている者の前で、もはや平静を装っていることができなくなり、「みんな、ここから出て行ったくれ」と叫んだ。 だれもそばにいなくなってから、ヨセフは兄弟たちに自分の身を明かした。 2 ヨセフは、声をあげて泣いたので、エジプト人はそれを聞き、ファラオの宮廷にも伝わった。
3 ヨセフは、兄弟たちに言った。
「わたしはヨセフです。 お父さんはまだ生きておられますか。」
兄弟たちはヨセフの前で驚きのあまり、答えることができなかった。
4 ヨセフは兄弟たちに言った。
「どうか、もっと近寄ってください。」
兄弟たちがそばに近づくと、ヨセフはまた言った。
「わたしはあなたたちがエジプトに売った弟のヨセフです。 5 しかし、今は、わたしをここへ売ったことを悔やんだり、責め合ったりする必要はありません。 命を救うために、神がわたしをあなたたちより先にお遣わしになったのです。 6 この二年の間、世界中に飢饉が襲っていますが、まだこれから五年間は、耕すこともなく、収穫もないでしょう。 7 神がわたしをあなたたちより先にお遣わしになったのは、この国にあなたたちの残りの者を与え、あなたたちを生き永らえさせて、大いなる救いに至らせるためです。 8 わたしをここへ遣わしたのは、あなたたちではなく、神です。 神がわたしをファラオの顧問、宮廷全体の主、エジプト全国を治める者としてくださったのです。
9 急いで父上のもとへ帰って、伝えてください。 『息子のヨセフがこう言っています。 神が、わたしを全エジプトの主としてくださいました。 ためらわずに、わたしのところへおいでください。 10 そして、ゴシェンの地域に住んでください。 そうすればあなたも、息子も孫も、羊や牛の群れも、そのほかのすべてのものも、わたしの近くで暮らすことができます。 11 そこでのお世話は、わたしがお引き受けいたします。 まだ五年間は飢饉が続くのですから、父上も家族も、そのほかすべてのものも、困ることのないようになさらなければいけません。』 12 さあ、お兄さんたちも、弟のベニヤミンも、自分の目でみてください。 ほかならぬわたしがあなたたちに言っているのです。 13 エジプトでわたしが受けているすべての栄誉と、あなたたちが見たすべてのことを父上に話してください。 そして、急いで父上をここへ連れて来てください。」
14 ヨセフは、弟ベニヤミンの首を抱いて泣いた。 15 ヨセフは兄弟たち皆に口づけし、彼らを抱いて泣いた。 その後、兄弟たちはヨセフと語り合った。
16 ヨセフの兄弟たちがやって来たという知らせがファラオの宮廷に伝わると、ファラオも家来たちも喜んだ。 17 ファラオはヨセフに言った。
「兄弟たちに、こうするように言いなさい。 『家畜に荷を積んでカナンの地に行き、 18 父上と家族をここへ連れて来なさい。 わたしは、エジプトの国の最良のものを与えよう。 あなたたちはこの国の最上の産物を食べるがよい。』 19 また、こうするように命じなさい。 『エジプトの国から、あなたたちの子供や妻たちを乗せる馬車を引いて行き、父上もそれに乗せて来るがよい。 20 家財道具などには未練を残さないように。 エジプトの国中で最良のものが、あなたたちのものになるのだから。』」
21 イスラエルの息子たちはそのとおりにした。 ヨセフは、ファラオの命令に従って、彼らに馬車を与え、また道中の食糧を与えた。 22 ヨセフは更に、全員にそれぞれ晴れ着を与えたが、特にベニヤミンには銀三百枚と晴れ着五枚を与えた。 23 父にも、エジプトの最良のものを積んだろば十頭と、穀物やパン、それに父の道中に必要な食糧を積んだ雌ろば十頭を贈った。 24 いよいよ兄弟たちを送り出すとき、出発にあたってヨセフは、「途中で、争わないでください」と言った。 25 兄弟たちはエジプトからカナン地方へ上って行き、父ヤコブのもとへ帰ると、 26 直ちに報復した。 「ヨセフがまだ生きています。 しかも、エジプトの全国を治める者になっています。」
父は気が遠くなった。 彼らの言うことが信じられなかったのである。 27 彼らはヨセフが話したとおりのことを、残らず父に語り、ヨセフが父を乗せるために遣わした馬車を見せた。 父ヤコブは元気を取り戻した。
28 イスラエルは言った。
「よかった。 息子ヨセフがまだ生きていたとは。 わたしは行こう。 死ぬ前に、どうしても会いたい。」
ヤコブのエジプト下り 46
1 イスラエルは、一家を挙げて旅立った。 そして、ベエル・シェバに着くと、父イサクの神にいけにえをささげた。 2 その夜、幻の中で神がイスラエルに、「ヤコブ、ヤコブ」と呼びかけた。 彼が、「はい」と答えると、 3 神は言われた。
「わたしは神、あなたの父の神である。 エジプトへ下ることを恐れてはならない。 わたしはあなたをそこで大いなる国民にする。 4 わたしがあなたと共にエジプトへ下り、わたしがあなたを必ず連れ戻す。 ヨセフがあなたのまぶたを閉じてくれるであろう。」
5 ヤコブはベエル・シャバを出発した。 イスラエルの息子たちは、ファラオが遣わした馬車に父ヤコブと子供や妻たちを乗せた。 6 ヤコブとその子孫は皆、カナン地方で得た家畜や財産を携えてエジプトへ向かった。 7 こうしてヤコブは、息子や孫、娘や孫娘など、子孫を皆連れてエジプトへ行った。
8 エジプトへ行ったイスラエルの人々、すなわちヤコブとその子らの名前は次ぎのとおりである。 ヤコブの長男ルベン。 9 ルベンの息子のハノク、パル、ヘツロン、カルミ。 10 シメオンの息子のエムエル、ヤミン、オハド、ヤキン、ツォハル、およびカナンの女による息子シャウル。 11 レビの息子のゲルション、ケハト、メラリ。 12 ユダの息子のエル、オナン、シェラ、ペレツ、ゼラ。 ただし、エルとオナンはカナンの土地で死んだ。 ペレツの息子のヘツロン、ハルム。 13 イサカルの息子のトラ、プウ、ヨブ、シムロン。 14 ゼブルンの息子のセレド、エロン、ヤフレエル。 15 これらは、レアがパダン・アラムでヤコブとの間に産んだ子らである。 ヤコブの娘ディナも含め、男女の総数は三十三名である。
16 ガドの息子のツィフヨン、ハギ、シュニ、エツボン、エリ、アロディ、アルエリ。 17 アシェルの息子のイムナ、イシュワ、イシュビ、ベリア、及び妹セラ。 ベリアの息子はヘベル、マルキエル。 18 これらは、ラバンが娘レアに与えたジルバの子らである。 ジルバがヤコブとの間に産んだのは十六名である。
19 ヤコブの妻ラケルの息子のヨセフ、ベニアミン。 20 ヨセフには、エジプトの国で息子が生まれた。 それは、オンの祭司ポティ・フェラの娘アセナトが彼との間に産んだマナセとエフライムである。 21 ベニヤミンの息子のベラ、ベケル、アシュベル、ゲラ、ナアマン、エヒ、ロシュ、ムビム、フピム、アルド。 22 これらは、ヤコブとの間に生まれたラケルの子らで、その総数は十四名である。
23 ダンの息子のフシム。 24 ナフタリの息子のヤフツェエル、グニ、イエツェル、シレム。 25 これらは、ラバンが娘ラケルに与えたビルハの子らである。 ビルハがヤコブとの間に産んだ者の総数は七名である。
26 ヤコブの腰から出た者で、ヤコブと共にエジプトへ行った者は、ヤコブの息子の妻たちを除けば、総数六十六名である。 27 エジプトで生まれたヨセフの息子は二人である。 従って、エジプトへ行ったヤコブの家族は総数七十名であった。
ゴシェンでの再会
28 ヤコブは、ヨセフをゴシェンに連れて来るために、ユダを一足先にヨセフのとことへ遣わした。 そして一行はゴシェンの地に到着した。 29 ヨセフは車を用意させると、父イスラエルに会いにゴシェンへやって来た。 ヨセフは父を見るやいなや、父の首に抱きつき、その首にすがったまま、しばらく泣き続けた。 30 イスラエルはヨセフに言った。
「わたしはもう死んでもよい。 お前がまだ生きていて、お前の顔を見ることができたのだから。」
31 ヨセフは、兄弟や父の家族の者たちに言った。
「わたしはファラオのところへ報告のため参上し、『カナン地方にいたわたしの兄弟と父の家族を者たちがわたしのところに参りました。 32 この人たちは羊飼いで、家畜の群れを飼っていたのですが、羊や牛をはじめ、すべての財産を携えてやって来ました』と申します。 33 ですから、ファラオがあなたたちをお召しになって、『仕事は何か』と言われたら、 34 『あなたの僕であるわたしどもは、先祖代々、幼い時から今日まで家畜の群れを飼う者でございます』と答えてください。 そうすれば、あなたちはゴシェンの地域に住むことができるでしょう。」
羊飼いはすべて、エジプト人のいとうものであったのである。
ファラオとの会見 47
1 ヨセフはファラオのところへ行き、「わたしの父と兄弟たちが、羊や牛をはじめ、すべての財産を携えて、カナン地方からやって来て、今、ゴシェンの地におります」と報告した。 2 そのときヨセフは、兄弟の中から五人を選んで、ファラオの前に連れて行った。 3 ファラオはヨセフの兄弟たちに言った。
「お前たちの仕事は何か。」
兄弟たちが、「あなたの僕であるわたしどもは、先祖代々、羊飼いでございます」と答え、 4 更に続けてファラオに言った。
「わたしどもはこの国に寄留させていただきたいと思って、参りました。 カナン地方は飢饉がひどく、僕たちの羊を飼うための牧草がありません。 僕たちをゴシェンの地に住まわせてください。」
5 ファラオはヨセフに向かって言った。
「父上と兄弟たちが、お前のところにやって来たのだ。 6 エジプトの国のことはお前に任せてあるのだから、最も良い土地に父上と兄弟たちを住まわせるがよい。 ゴシェンの地に住まわせるのもよかろう。 もし、一族の中に有能な者がいるなら、わたしの家畜の監督をさせるがよい。」
7 それから、ヨセフは父ヤコブを連れて来て、ファラオの前に立たせた。 ヤコブはファラオに祝福の言葉を述べた。 8 ファラオが、「あなたは何歳におなりですか」とヤコブに語りかけると、 9 ヤコブはファラオに答えた。
「わたしの旅路の年月は百三十年です。 わたしの生涯の年月は短く、苦しみ多く、わたしの先祖たちの生涯や旅路の年月には及びません。」
10 ヤコブは、別れの挨拶をして、ファラオの前から退出した。
11 ヨセフはファラオが命じたように、父と兄弟たちの住まいを定め、エジプトの国に所有地を与えた。 そこは、ラメセス地方の最も良い土地であった。 12 ヨセフはまた、父と兄弟たちと父の家族の者すべてを養い、扶養すべき者の数に従って食糧を与えた。
ヨセフの政策
13 飢饉が極めて激しく、世界中に食糧がなくなった。 エジプトの国でも、カナン地方でも、人々は飢饉のために苦しみあえいだ。 14 ヨセフは、エジプトの国とカナン地方の人々が穀物の代金として支払った銀をすべて集め、それをファラオの宮廷に納めた。 15 エジプトの国にもカナン地方にも、銀が尽き果てると、エジプト人は皆、ヨセフのところへやって来て、「食べる物をください。 あなたさまは、わたしどもを見殺しになさるおつもりですか。 銀はなくなってしまいました」と言った。
16 ヨセフは答えた。 「家畜を連れて来なさい。 もし銀がなくなったのなら、家畜と引き換えに与えよう。」
17 人々が家畜をヨセフのところに連れて来ると、ヨセフは、馬や、羊や牛の群れや、ろばと引き換えに食糧を与えた。 ヨセフはこうして、その年、すべての家畜と引き換えに人々に食糧を分け与えた。 18 その年も終わり、次の年になると、人々はまたヨセフのところに来て、言った。
「御主君には、何もかも隠さずに申し上げます。 銀はすっかりなくなり、家畜の群れも御主君のものとなって、御覧のように残っているのは、わたしどもの体と農地だけです。 19 どうしてあなたさまの前で、わたしどもと農地が滅んでしまってよいのでしょうか。 食糧と引き換えに、わたしどもと土地を買い上げてください。 わたしどもは農地とともに、ファラオの奴隷になります。 種をお与えください。 そうすれば、わたしどもは死なずに生きることができ、農地も荒れ果てないでしょう。」
20 ヨセフは、エジプト中のすべての農地をファラオのために買い上げた。 飢饉が激しくなったので、エジプト人は皆自分の畑を売ったからである。 土地はこうして、ファラオのものとなった。 21 また民については、エジプト領の端から端まで、ヨセフが彼らを奴隷にした。 22 ただし、祭司の農地だけは買い上げなかった。 祭司にはファラオからの給与があって、ファラオが与える給与で生活していたので、農地を売らなかったからである。
23 ヨセフは民に言った。
「よいか、お前たちは今日、農地とともにファラオに買い取られたのだ。 さあ、ここに種があるから、畑に蒔きなさい。 24 収穫の時には、五分の一をファラオに納め、五分の四はお前たちのものとするがよい。 それを畑に蒔く種にしたり、お前たちの家族の者の食糧とし、子供たちの食糧としなさい。」
25 彼らは言った。
「あなたさまはわたしどもの命の恩人です。 御主君の御好意によって、わたしどもはファラオの奴隷にさせていただきます。」
26 ヨセフはこのように、収穫の五分の一をファラオに納めることを、エジプトの農業の定めとした。 それは今日まで続いている。 ただし、祭司の農地だけはファラオのものにならなかった。
ヤコブの遺言
27 イスラエルは、エジプトの国、ゴシェンの地域に住み、そこに土地を得て、子を産み、大いに数を増した。 28 ヤコブは、エジプトの国で十七年生きた。 ヤコブの生涯は百四十七年であった。
29 イスラエルは死ぬ日が近づいたとき、息子ヨセフを呼び寄せて言った。
「もし、お前がわたしの願いを聞いてくれるなら、お前の手をわたしの腿の間に入れ、わたしのために慈しみとまことをもって実行すると、誓ってほしい。 どうか、わたしをこのエジプトには葬らないでくれ。 30 わたしが先祖たちと共に眠りについたなら、わたしをエジプトから運び出して、先祖たちの墓に葬ってほしい。」
ヨセフが、「必ず、おっしゃるとおりにいたします」と答えると、 31 「では、誓ってくれ」と言ったので、ヨセフは誓った。 イスラエルは、寝台の枕もとで感謝を表した。
ヤコブ、ヨセフの子らを祝福する 48
1 これらのことの後で、ヨセフに、「お父上が御病気です」との知らせが入ったので、ヨセフは二人の息子マナセとエフライムを連れて行った。 2 ある人がヤコブに、「御子息のヨセフさまが、ただいまお見えになりました」と知らせると、イスラエルは力を奮い起こして、寝台の上に座った。 3 ヤコブはヨセフに言った。
「全能の神がカナン地方のルズでわたしに現れて、わたしを祝福してくださったとき、 4 こう言われた。
『あなたの子孫を?栄させ、数を増やし
あなたの諸国民の群れとしよう。
この土地をあなたに続く子孫に
永遠の所有地として与えよう。』
5 今、わたしがエジプトのお前のところに来る前に、エジプトに国で生まれたお前の二人の息子をわたしの子供にしたい。 エフライムとマナセは、ルベンやシメオンと同じように、わたしの子となるが、 6 その後に生まれる者はお前のものとしてよい。 しかし、彼らの嗣業の土地は兄たちの名で呼ばれるであろう。
7 わたしはパダン地方から帰る途中、ラケルに死なれてしまった。 あれはカナン地方で、エフラトまで行くには、まだかなりの道のりがある途中でのことだった。 わたしはラケルを、エフラト、つまり今のベツレヘムへ向かう道のほとりに葬った。」
8 イスラエルは、ヨセフの息子たちを見ながら、「これは誰か」と尋ねた。 9 ヨセフが父に、「神が、ここで授けてくださったわたしの息子です」と答えると、父は、「ここへ連れて来なさい。 彼らを祝福しよう」と言った。 10 イスラエルの目は老齢のためかすんでよく見えなかったので、ヨセフが二人の息子を父のもとに近寄らせると、父は彼らに口づけをして抱き締めた。
11 イスラエルはヨセフに言った。
「お前の顔さえ見ることができようとは思わなかったのに、なんと、神はお前の子供たちをも見せてくださった。」
12 ヨセフは彼らを父の膝から離し、地にひれ伏して拝した。 13 ヨセフは二人の息子のうち、エフライムを自分の右手でイスラエルの左手に向かわせ、マナセを自分の左手でイスラエルの右手に向かわせ、二人を近寄らせた。 14 イスラエルは右手を伸ばして、弟であるエフライムの頭の上に置き、左手をマナセの頭の上に置いた。 つまり、マナセが長男であるのに、彼は両手を交差して置いたのである。
15 そして、ヨセフを祝福して言った.
「わたしの先祖アブラハムとイサクが
その御前に歩んだ神よ。
わたしの生涯を今日まで
導かれた牧者なる神よ。
16 わたしをあらゆる苦しみから
贖われた御使いよ。
どうか、この子供たちの上に
祝福をお与えください。
どうか、わたしの名と
わたしの先祖アブラハム、イサクの名が
彼らによって覚えられますように。
どうか、彼らがこの地上に
数多く増え続けますように。」
17 ヨセフは、父が右手をエフライムの頭の上に置いているのを見て、不満に思い、父の手を取ってエフライムの頭からマナセの頭に移そうとした。 18 ヨセフは父に言った。
「父上、そうではありません。 これが長男ですから、右手をこれの頭に上に置いてください。」
19 ところが、父はそれを拒んで言った。
「いや、分かっている。 わたしの子よ、わたしには分かっている。 この子も一つの民となり、大きくなるであろう。 しかし、弟の方が彼よりも大きくなり、その子孫は国々に満ちるものとなる。」
20 その日、父は彼らを祝福して言った。
「あなたによって
イスラエルは人を祝福して言うであろう。
『どうか、神があなたを
エフライムとマナセのように
してくださるように。』」
彼はこのように、エフライムをマナセの上に立てたのである。
21 イスラエルはヨセフに言った。
「間もなく、わたしは死ぬ。 だが、神がお前たちと共にいてくださり、きっとお前たちを先祖の国に導き帰らせてくださる。 22 わたしは、お前に兄弟たちよりも多く、わたしが剣と弓をもってアモリ人の手から取った一つの分け前(シェケム)を与えることにする。」
ヤコブの祝福 49
1 ヤコブは息子たちを呼び寄せて言った。
「集まりなさい。 わたしは後の日にお前たちに起こることを語っておきたい。
2 ヤコブの息子たちよ、集まって耳を傾けよ。
お前たちの父イスラエルに耳を傾けよ。
3 ルベンよ、お前はわたしの長子
わたしの勢い、命の力の初穂。
気位が高く、力も強い。
4 お前は水のように奔放で
長子の誉を失う。
お前は父の寝台に上り
それを汚した。
5 シメオンとレビは似た兄弟。
彼らの剣は暴力の道具。
6 わたしの魂よ、彼らの謀議に加わるな。
わたしの心よ、彼らの仲間に連なるな。
彼らは怒りのままに人を殺し
思うがままに雄牛の足の筋を切った。
7 呪われよ、彼らの怒りは激しく
憤りは甚だしいゆえに。
わたしは彼らをヤコブの間に分け
イスラエルの間に散らす。
8 ユダよ、あなたは兄弟たちにたたえられる。
あなたの手は敵の首を押さえ、
父の子たちはあなたを伏し拝む。
9 ユダは獅子の子。
わたしの子よ、あなたは獲物を取って上って来る。
彼は雄獅子のようにうずくまり
雌獅子のように身を伏せる。
誰がこれを起こすことができようか。
10 王笏はユダから離れず
統治の杖は足の間から離れない。
ついにシロが来て、諸国の民は彼に従う。
11 彼はろばをぶどうの木に
雌ろばの子を良いぶどうの木につなぐ。
彼は自分の衣をぶどう酒で
着物をぶどうの汁で洗う。
12 彼の目はぶどう酒によって輝き
歯は乳によって白くなる。
13 ゼブルンは海辺に住む。
そこは舟の出入りする港となり
その境はシドンに及ぶ。
14 イサカルは骨太のろば
二つの革袋の間に身を伏せる
15 彼にはその土地が快く
好ましい休息の場となった。
彼はそこで背をかがめて荷を担い
苦役の奴隷に身を落とす。
16 ダンは自分の民を裁く
イスラエルのほかの部族のように。
17 ダンは、道端の蛇
小道のほとりに潜む蝮。
馬のかかとをかむと
乗り手はあおむけに落ちる。
18 主よ、わたしはあなたの救いを待ち望む。
19 ガドは略奪者に襲われる。
しかし彼は、彼らのかかとを襲う。
20 アシェルには豊かな食物があり
王の食卓に美味を供える。
21 ナフタリは解き放たれた雌鹿
美しい小鹿を産む。
22 ヨセフは実を結ぶ若木
泉のほとりの実を結ぶ若木
その枝は石垣を越えて伸びる
23 弓を射る者たちは彼に敵意を抱き
矢を放ち、追いかけてくる。
24 しかし、彼の弓はたるむことなく
彼の腕と手は素早く動く。
ヤコブの勇者の御手により
それによって、イスラエルの石となり牧者となった。
25 どうか、あなたの父の神があなたを助け
全能者によってあなたは祝福を受けるように。
上は天の祝福
下は横たわる淵の祝福
乳房と母の胎の祝福をもって。
26 あなたの父の祝福は
永遠の山の祝福にまさり
永久の丘の賜物にまさる。
これらの祝福がヨセフの頭の上にあり
兄弟たちから選ばれた者の頭にあるように。
27 ベニヤミンはかみ裂く狼
朝には獲物に食らいつき
夕には奪ったものを分け合う。」
28 これらはすべて、イスラエルの部族で、その数は十二である。 これは彼らの父が語り、祝福した言葉である。 父は彼らを、おのおのにふさわしい祝福をもって祝福したのである。
ヤコブの死
29 ヤコブは息子たちに命じた。
「間もなくわたしは、先祖の列に加えられる。 わたしをヘト人エフロンの畑にある洞穴に、先祖たちと共に葬ってほしい。 30 それはカナン地方のマムレの前のマクベラの畑にある洞穴で、アブラハムがヘト人エフロンから買い取り、墓地として所有するようになった。
31 そこに、アブラハムと妻サラが葬られている。 そこに、イサクと妻リベカも葬られている。 そこに、わたしもレアを葬った。 32 あの畑とあそこにある洞穴は、ヘトの人たちから買い取ったものだ。」
33 ヤコブは、息子たちに命じ終えると、寝床の上に足をそろえ、息を引き取り、先祖の列に加えられた。
ヤコブの埋葬 50
1 ヨセフは父の顔に伏して泣き、口づけした。
2 ヨセフは自分の侍医たちに、父のなきがらに薬を塗り、防腐処置をするように命じたので、医者はイスラエルにその処置をした。 3 そのために四十日を費やした。 この処置をするにはそれだけの日数が必要であった。 エジプト人は七十日の間喪に服した。
4 喪が明けると、ヨセフはファラオの宮廷に願い出た。
「ぜひともよろしくファラオにお取り次ぎください。 5 実は、父がわたしに誓わせて、『わたしは間もなく死ぬ。 そのときは、カナンの土地に用意してある墓にわたしを葬ってくれ』と申しました。 ですから、どうか父を葬りに行かせてください。 わたしはまた帰って参ります。」
6 ファラオは答えた。
「父上が誓わせたとおりに、葬りに行って来るがよい。」
7 ヨセフは父を葬りに上って行った。 ヨセフと共に上って行ったのは、ファラオの宮廷の元老である重臣たちすべてとエジプトの国の長老たちすべて、 8 それにヨセフの家族全員と彼の兄弟たち、および父の一族であった。 ただ幼児と、羊と牛の群れはゴシェンの地域に残した。 9 また戦車も騎兵も共に上って行ったので、それはまことに盛大な行列となった。
10 一行はヨルダン川の東側にあるゴレン・アタドに着き、そこで非常に荘厳な葬儀を行った。 父の追悼の儀式は七日間にわたって行われた。 11 その土地に住んでいるカナン人たちは、ゴレン・アタドで行われた追悼の儀式を見て、「あれは、エジプト流の盛大な追悼の儀式だ」と言った。 それゆえ、その場所の名は、アベル・ミツライム(エジプト流の追悼の儀式)と呼ばれるようになった。 それは、ヨルダン川の東側にある。
12 それから、ヤコブの息子たちは父に命じられたとおりに行った。 13 すなわち、ヤコブの息子たちは、父のなきがらをカナンの土地に運び、マクベラの畑の洞穴に葬った。 それは、アブラハムがマムレの前にある畑とともにヘト人エフロンから買い取り、墓地として所有するようになったものである。
14 ヨセフは父を葬った後、兄弟たちをはじめ、父を葬るために一緒に上って来たすべての人々と共にエジプトに帰った。
赦しの再確認
15 ヨセフの兄弟たちは、父が死んでしまったので、ヨセフがことによると自分たちをまだ恨み、昔ヨセフにしたすべての悪に仕返しをするのではないかと思った。 16 そこで、人を介してヨセフに言った。
「お父さんは亡くなる前に、こう言っていました。
17 『お前たちはヨセフにこう言いなさい。 確かに、兄たちはお前に悪いことをしたが、どうか兄たちの咎と罪を赦してやってほしい。』お願いです。 どうか、あなたの父の神に仕える僕たちの咎を赦してください。」
これを聞いて、ヨセフは涙を流した。 18 やがて、兄たち自身もやって来て、ヨセフの前にひれ伏して、「このとおり、私どもはあなたの僕です」と言うと、 19 ヨセフは兄たちに言った。
「恐れることはありません。 わたしが神に代わることができましょうか。 20 あなたがたはわたしに悪をたくらみましたが、神はそれを善に変え、多くの民の命を救うために、今日のようにしてくださったのです。 21 どうか恐れないでください。 このわたしが、あなたたちとあなたたちの子供を養いましょう。」
ヨセフはこのように、兄たちを慰め、優しく語りかけた。
ヨセフの死
22 ヨセフは父の家族と共にエジプトに住み、百十歳まで生き、 23 エフライムの三代の子孫を見ることができた。 マナセの息子マキルの子供たちも生まれると、ヨセフの膝に抱かれた。
24 ヨセフは兄弟たちに言った。
「わたしは間もなく死にます。 しかし、神は必ずあなたちを顧みてくださり、この国からアブラハム、イサク、ヤコブに誓われた土地に導き上ってくださいます。」
25 それから、ヨセフはイスラエルの息子たちにこう言って誓わせた。
「神は、必ずあなたちを顧みてくださいます。 そのときには、わたしの骨をここから携えて上ってください。」
26 ヨセフはこうして、百十歳で死んだ。 人々はエジプトで彼のなきがらに薬を塗り、防腐処置をして、ひつぎに納めた。
(2) 創世記 井戸をめぐる争い 26-15 〜 ヨセフの死 50-26
15 ペリシテ人は、昔、イサクの父アブラハムが僕たちに掘らせた井戸をことごとく塞ぎ、土で埋めた。 16 アビメレクはイサクに言った。 「あなたは我々と比べてあまりに強くなった。 どうか、ここから出て行っていただきたい。」 17 イサクはそこを去って、ゲラルの谷に天幕を張って住んだ。 18 そこにも、父アブラハムの時代に掘った井戸が幾つかあったが、アブラハムの死後、ペリシテ人がそれらをふさいでしまっていた。 イサクはそれらの井戸を掘り直し、父が付けたとおりの名前を付けた。 19 イサクの僕たちが谷で井戸を掘り、水が豊かに湧き出る井戸を見つけると、 20 ゲラルの羊飼いは、「この水は我々のものだ」とイサクの羊飼いと争った。 そこで、イサクはその井戸をエセク(争い)と名付けた。 彼らがイサクと争ったからである。 21 イサクの僕たちがもう一つの井戸を掘り当てると、それについても争いが生じた。 そこで、イサクはその井戸をシトナ(敵意)と名付けた。 22 イサクはそこから移って、更にもう一つの井戸を掘り当てた。 それについては、もはや争いは起こらなかった。 イサクは、その井戸をレホボト(広い広場)と名付け、「今や、主は我々の?栄のための広い場所をお与えになった」と言った。 23 イサクは更に、そこからベエル・シェバに上った。 24 その夜、主が現れて言われた。
「わたしは、あなたの父アブラハムの神である。
恐れてはならない。わたしはあなたと共にいる。
わたしはあなたを祝福し、子孫を増やす
わが僕アブラハムゆえに。」
25 イサクは、そこに祭壇を築き、主の御名を呼んで礼拝した。 彼はそこに天幕を張り、イサクの僕たちは井戸を掘った。
イサクとアビメレクの契約
26 アビメレクが参謀のアフザトと軍隊の長のピコルと共に、ゲラルからイサクのところに来た。 27 イサクは彼らに尋ねた。 「あなたたちは、わたしを憎んで追い出したのに、なぜここに来たのですか。」 28 彼らは答えた。 「主があなたと共におられることがよく分かったからです。 そこで考えたのですが、我々はお互いに、つまり、我々とあなたの間で誓約を交わし、あなたと契約を結びたいのです。 29 以前、我々はあなたに何ら危害を加えず、むしろあなたのためになるよう計り、あなたを無事に送り出しました。 そのようにあなたも、我々にいかなる害も与えないでください。 あなたは確かに、主に祝福された方です。 30 そこで、イサクは彼らのために祝宴を催し、共に飲み食いした。 31 次の朝早く、互に誓いを交わした後、イサクは彼らを送り出し、彼らは安らかに去って行った。 32 その日に、井戸を掘っていたイサクの僕たちが帰って来て、「水がでました」と報告した。 33 そこで、その町の名は、今日に至るまで、ベエル・シェバ(誓いの井戸)といわれている。
エサウの妻
34 エサウは、四十歳のときヘト人ベエリの娘ユディトとヘト人エロンの娘バセマトを妻として迎えた。 35 彼女達は、イサクとリベカにとって悩みの種となった。
リベカの計略 27
1 イサクは年をとり、目がかすんで見えなくなってきた。 そこで上の息子のエサウを呼び寄せて、「息子よ」と言った。 エサウが、「はい」と答えると、
2 イサクは言った。
「こんなに年をとったので、わたしはいつ死ぬか分からない。 3 今すぐに、弓と矢筒など、狩りの道具を持って野に行き、獲物を取って来て、 4 わたしの好きなおいしい料理を作り、ここへ持って来てほしい。 死ぬ前にそれを食べて、わたし自身の祝福をお前に与えたい。」
5 リベカは、イサクが息子のエサウに話しているのを聞いていた。 エサウが獲物を取りに野に行くと、 6 リベカは息子のヤコブに言った。
「今、お父さんが兄さんのエサウにこう言っているのを耳にしました。 7 『獲物を取って来て、あのおいしい料理を作って欲しい。 わたしは死ぬ前にそれを食べて、主の御前でお前を祝福したい』と。 8 わたしの子よ。 今、わたしが言うことをよく聞いてそのとおりにしなさい。 9 家畜の群れのところへ行って、よく肥えた子山羊を二匹取って来なさい。 わたしが、それでお父さんの好きなおいしい料理を作りますから、 10 それをお父さんのところへ持って行きなさい。 お父さんは召し上がって、亡くなる前にお前を祝福してくださるでしょう。」
11 しかし、ヤコブは母リベカに言った。
「でも、エサウ兄さんはとても毛深いのに、わたしの肌は滑らかです。 12 お父さんがわたしに触れば、だましているのが分かります。 そうしたら、わたしは祝福どころか、反対に呪いを受けてしまいます。」
13 母は言った。
「わたしの子よ。 そのときにはお母さんがその呪いを引き受けます。 ただ、わたしの言うとおりに、行って取って来なさい。」
14 ヤコブは取りに行き、母のところへ持って来たので、母は父の好きなおいしい料理を作った。 15 リベカは、家にしまっておいた上の息子エサウの晴れ着を取り出して、下の息子ヤコブに着せ、 16 子山羊の毛皮を彼の腕や滑らかな首に巻きつけて、 17 自分が作ったおいしい料理とパンを息子ヤコブに渡した。
祝福をだまし取るヤコブ
18 ヤコブは、父のもとへ行き、「わたしのお父さん」と呼びかけた。 父が、「ここにいる。 わたしの子よ。 誰だ、お前は」と尋ねると、 19 ヤコブは言った。 「長男のエサウです。 お父さんの言われたとおりにしてきました。 さあ、どうぞ起きて、座ってわたしの獲物を召し上がり、お父さん自身の祝福をわたしに与えてください。」 20 「わたしの子よ、どうしてまた、こんなに早くしとめられたのか」と、イサクが息子に尋ねると、ヤコブは答えた。 「あなたの神、主がわたしのために計らってくださったからです。」 21 イサクはヤコブに言った。 「近寄りなさい。 わたしの子に触って、本当にお前が息子のエサウかどうか、確かめたい。」 22 ヤコブが父イサクに近寄ると、イサクは彼に触りながら言った。 「声はヤコブの声だが、腕はエサウの腕だ。」 23 イサクは、ヤコブの腕が兄エサウの腕のように毛深くなっていたので、見破ることができなかった。 そこで、彼は祝福しようとして、 24 言った。 「お前は本当にわたしの子エサウなのだな。」 ヤコブは、「もちろんです」と答えた。 25 イサクは言った。 「では、お前の獲物をここへ持って来なさい。 それを食べて、わたし自身の祝福をお前に与えよう。」 ヤコブが料理を差し出すと、イサクは食べ、ぶどう酒をつぐと、それを飲んだ。 26 それから、父イサクは彼に言った。 「わたしの子よ、近寄ってわたしに口づけをしなさい。」 27 ヤコブが近寄って口づけをすると、イサクは、ヤコブの着物の匂いをかいで、祝福して言った。
「ああ、わたしの子の香りは
主が祝福された野の香りのようだ。
28 どうか、神が
天の露と地の産み出す豊かなもの
穀物とぶどう酒を
お前に与えてくださるように
29 多くの民がお前に仕え
多くの国民がお前にひれ伏す。
お前は兄弟たちの主人となり
母の子らもお前にひれ伏す。
お前を呪う者は呪われ
お前を祝福する者は
祝福されるように。」
悔しがるエサウ
30 イサクガヤコブを祝福し終えて、ヤコブが父イサクの前から立ち去るとすぐ、兄エサウが狩りから帰って来た。 31 彼もおいしい料理を作り、父のところへ持って来て言った。 「わたしのお父さん。 起きて、息子の獲物を食べてください。 そして、あなた自身の祝福をわたしに与えてください。」 32 父イサクが、「お前は誰なのか」と聞くと、「わたしです。 あなたの息子、長男のエサウです」と答えが返って来た。 33 イサクは激しく体を震わせて言った。 「では、あれは、一体誰だったのだ。 さっき獲物を取ってわたしのところへ持って来たのは。 実は、お前が来る前に私はみんな食べて、彼を祝福してしまった。 だから、彼が祝福されたものになっている。」 34 エサウはこの父の言葉を聞くと、悲痛な叫びをあげて激しく泣き、父に向って言った。 「わたしのお父さん。 わたしも、このわたしも祝福してください。」 35 イサクは言った。 「お前の弟が来て策略を使い、お前の祝福を奪ってしまった。」 36 エサウは叫んだ。
「彼をヤコブとは、よくも名付けたものだ。 これで二度も、わたしの足を引っ張り(アーカブ)欺いた。 あのときは長子の権利を奪い、今度はわたしの祝福を奪ってしまった。」 エサウは続けて言った。 「お父さんは、わたしのために祝福を残しておいてくれなかったのですか。」
37 イサクはエサウに答えた。 「既にわたしは、彼をお前の主人とし、親族をすべて彼の僕とし、穀物もぶどう酒も彼のものにしてしまった。 わたしの子よ。 今となっては、お前のために何をしてやれようか。」
38 エサウは父に叫んだ。
「わたしのお父さん。 祝福はたった一つしかないのですか。 わたしも、このわたしも祝福してください、わたしのお父さん。」エサウは声をあげて泣いた。 39 父イサクは言った。
「ああ
地の産み出す豊かなものから遠く離れた所
この後お前はそこに住む
天の露からも遠く隔てられて。
40 お前は剣に頼って生きていく。
しかしお前は弟に仕える。
いつの日にかお前は反抗を企て
自分の首から軛を振り落とす。」
逃亡の勧め
41 エサウは、父がヤコブを祝福したことを根に持って、ヤコブを憎むようになった。 そして、心の中で言った。 「父の喪の日も遠くない。 そのときがきたら、必ず弟ヤコブを殺してやる。」 42 ところが、上の息子エサウのこの言葉が母リベカの耳に入った。 彼女は人をやって、下の息子のヤコブを呼び寄せて言った。 「大変です。 エサウ兄さんがお前を殺して恨みを晴らそうとしています。 43 わたしの子よ。 今、わたしの言うことをよく聞き、急いでハランに、わたしの兄ラバンの所に逃げて行きなさい。 44 そして、お兄さんの怒りが治まるまで、しばらく伯父さんの所に置いてもらいなさい。 45 そのうちに、お兄さんの憤りも治まり、お前のしたことを忘れてくれるだろうから、そのときには人をやってお前を呼び戻します。 一日のうちにお前たち二人を失うことなど、どうしてできましょう。
ヤコブの出発
46 リベカはイサクに言った。 「わたしは、ヘト人の娘たちのことで、生きているのが嫌になりました。 もしヤコブまでも、この土地の娘の中からあんなヘト人の娘をめとったら、わたしは生きているかいがありません。」
28
1 イサクはヤコブを呼び寄せて祝福して、命じた。
「お前はカナンの娘の中から妻を迎えてはいけない。 2 ここをたって、パダン・アラムのベトエルおじいさんの家に行き、そこでラバン伯父さんの娘の中から結婚相手を見つけなさい。 3 どうか、全能の神がお前を祝福して繁栄させ、お前を増やして多くの民の群れとしてくださるように。 4 どうか、アブラハムの祝福がお前とその子孫に及び、神がアブラハムに与えられた土地、お前が寄留しているこの土地を受け継ぐことができるように。」
5 ヤコブはイサクに送り出されて、パダン・アラムのラバンの所へ旅立った。 ラバンはアラム人ベトエルの息子で、ヤコブとエサウの母リベカの兄であった。
エサウの別の妻
6 エサウは、イサクがヤコブを祝福し、パダン・アラムに送り出し、そこから妻を迎えさせようとしたこと、しかも彼を祝福したとき、「カナンの娘の中から妻を迎えてはいけない」と命じたこと、 7 そして、ヤコブが父と母の命令に従ってパダン・アラムへ旅立ったことなどを知った。 8 エサウは、カナンの娘たちが父イサクの気に入らないことを知って、 9 イシュマエルのところへ行き、既にいる妻のほかにもう一人、アブラハムの息子イシュマエルの娘で、ネバヨトの妹に当たるマハラトを妻とした。
ヤコブの夢
10 ヤコブはベエル・シュバを立ってハランに向った。 11 とある場所に来たとき、日が沈んだので、そこで一夜を過ごすこにした。 ヤコブはその場所にあった石を一つ取って枕にして、その場所に横たわった。 12 すると、彼は夢を見た。 先端が天まで達する階段が地に向って伸びており、しかも、神の御使いたちがそれを上ったり下ったりしていた。 13 見よ、主が傍らに立って言われた。
「わたしは、あなたの祖父アブラハムの神、イサクの神、主である。 あなたが今横たわっているこの土地を、あなたとあなたの子孫に与える。 14 あなたの子孫は大地の砂粒のように多くなり、西へ、東へ、北へ、南へと広がっていくであろう。 地上の子孫はすべて、あなたとあなたの子孫によって祝福に入る。 15 見よ、わたしはあなたと共にいる。 あなたがどこへ行っても、わたしはあなたを守り、必ずこの土地に連れ帰る。 わたしは、あなたに約束したことを果たすまで決して見捨てない。」
16 ヤコブは眠りから覚めて言った。
「まことに主がこの場所におられるのに、わたしは知らなかった。」
17 そして、恐れおののいて言った。
「ここは、なんと畏れ多い場所だろう。 これはまさしく神の家である。 そうだ、ここは天の門だ。」
18 ヤコブは次の朝早く起きて、枕にしていた石を取り、それを記念碑として立て、先端に油を注いで、 19 その場所をベテル(神の家)と名付けた。 ちなみに、その町の名はかってルズと呼ばれていた。
20 ヤコブはまた、誓願を立てて言った。
「神がわたしと共におられ、わたしが歩むこの旅路を守り、食べ物、着る物を与え、 21 無事に父の家に帰らせてくださり、主がわたしの神となられるなら、 22 わたしが記念碑として立てたこの石を神の家とし、すべて、あなたがわたしに与えられるものの十分の一をささげます。」
ラバンの家に着く 29
1 ヤコブは旅を続けて、東方の人々の土地へ行った。 2 ふと見ると、野原に井戸があり、そのそばに羊が三つの群れになって伏していた。 その井戸から羊の群れに、水を飲ませることになっていたからである。 ところが、井戸の口の上には大きな石が載せてあった。 3 まず羊の群れを全部そこに集め、石を井戸の口から転がして羊の群れに水を飲ませ、また石を元の所に戻しておくことになっていた。 4 ヤコブはそこにいた人たちに尋ねた。 「皆さんはどちらの方ですか。」 「わたしたちはハランの者です」と答えたので、 5 ヤコブは尋ねた。 「では、ナホルの息子のラバンを知っていますか。」 「ええ、知っています」と彼らが答えたので、 6 ヤコブは更に尋ねた。 「元気でしょうか。」 「元気です。 もうすぐ、娘のラケルも羊の群れを連れてやって来ます」と彼らは答えた。 7 ヤコブは言った。 「まだこんなに日は高いし、家畜を集める時でもない。 羊に水を飲ませて、もう一度草を食べさせに行ったらどうですか。」 8 すると、彼らは答えた。 「そうはできないのです。 羊の群れを全部ここに集め、あの石を井戸の口から転がして羊に水を飲ませるのですから。」
9 ヤコブが彼らと話しているうちに、ラケルが父の羊の群れを連れてやって来た。 彼女も羊を飼っていたからである。 10 ヤコブは、叔父ラバンの娘ラケルと伯父ラバンの羊の群れを見るとすぐに、井戸の口へ近寄り石を転がして、叔父ラバンの羊に水を飲ませた。 11 ヤコブはラケルに口づけし、声をあげて泣いた。 12 ヤコブはやがて、ラケルに、自分が彼女の父の甥に当たり、リベカの息子であることを打ち明けた。 ラケルは走って行って、父に知らせた。 13 ラバンは、妹の息子ヤコブの事を聞くと、走って迎えに行き、ヤコブを抱き締め口づけした。 それから、ヤコブを自分の家に案内した。 ヤコブがラバンに事の次第をすべて話すと、 14 ラバンは彼に言った。 「お前は、本当にわたしの骨肉の者だ。」
ヤコブの結婚
ヤコブがラバンのもとにひと月ほど滞在したある日、 15 ラバンはヤコブに言った。 「お前は身内の者だからといって、ただで働くことはない。 どんな報酬が欲しいか言ってみなさい。」
16 ところで、ラバンには二人の娘があり、姉の方はレア、妹の方はラケルといった。 17 レアは優しい目をしていたが、ラケルは顔も美しく、容姿も優れていた。 18 ヤコブはラケルを愛していたので、「下の娘のラケルをくださるなら、わたしは七年間あなたの所で働きます」と言った。 19 ラバンは答えた。 「あの娘をほかの人に嫁がせるより、お前に嫁がせる方が良い。 わたしの所にいなさい。」 20 ヤコブはラケルのために七年間働いたが、彼女を愛していたので、それはほんの数日のように思われた。 21 ヤコブはラバンに言った。
「約束の年月が満ちましたから、わたしのいいなずけと一緒にならせてください。」 22 ラバンは土地の人たちを皆集め祝宴を開き、 23 夜になると、娘のレアをヤコブのもとに連れて行ったので、ヤコブは彼女のところに入った。 24 ラバンはまた、女奴隷ジルバを娘レアに召し使いとして付けてやった。 25 ところが、朝になってみると、それはレアであった。 ヤコブがラバンに、「どうしてこんなことをなさったのですか。 わたしがあなたのもとで働いたのは、ラケルのためではありませんか。 なぜ、わたしをだましたのですか」と言うと、 26 ラバンは答えた。 「我々の所では、妹を姉より先に嫁がせることはしないものだ。 27 とにかく、この一週間の婚礼の祝いを済ませなさい。 そうすれば、妹の方もお前に嫁がせよう。 だがもう七年間、うちで働いてもらわねばならない。」 28 ヤコブが、言われたとおり一週間の婚礼の祝いを済ませると、ラバンは下の娘のラケルもヤコブに妻として与えた。 29 ラバンはまた、女奴隷ビルハを娘ラケルに召し使いとして付けてやった。 30 こうして、ヤコブはラケルをめとった。 ヤコブはレアよりラケルを愛した。 そして、更にもう七年ラバンのもとで働いた。
ヤコブの子供
31 主は、レアが疎んじられているのを見て彼女の胎を開かれたが、ラケルには子供ができなかった。 32 レアは身ごもって男の子を産み、ルベンと名付けた。 それは、彼女が、「主はわたしの苦しみを顧みて(ラア)くださった。 これからは夫もわたしを愛してくれるにちがいない」と言ったからである。 33 レアはまた身ごもって男の子を産み、「主はわたしが疎んじられていることを耳にされ(シャマ)、またこの子をも授けてくださった」と言って、シメオンと名付けた。 34 レアはまた身ごもって男の子を産み、「これからはきっと、夫はわたしに結びついて(ラベ)くれるだろう。 夫のために三人も男の子を産んだのだから」と言った。 そこで、その子をレビと名付けた。 35 レアはまた身ごもって男の子を産み、「今度こそ主をほめたたえ、(ヤダ)よう」と言った。 そこで、その子を(ユダ)と名付けた。 しばらく、彼女は子を産まなくなった。
30
1 ラケルは、ヤコブとの間に子供ができないことが分かると、姉をねたむようになり、ヤコブに向って、「わたしにもぜひ子供を与えてください。 与えてくださらなければ、わたしは死にます。」と言った。 2 ヤコブは激しく怒って、言った。 「わたしが神に代われると言うのか。 お前の胎に子供を宿らせないのは?~御自身なのだ。」 3 ラケルは、「わたしの召し使いのビルハがいます。 彼女のところへ入ってください。 彼女が子供を産み、わたしがその子を膝の上に迎えれば、彼女によってわたしも子供を持つことができます」と言った。 4 ラケルはヤコブに召し使いビルハを側女として与えたので、ヤコブは彼女のところに入った。 5 やがて、ビルハは身ごもってヤコブとの間に男の子を産んだ。 6 そのときラケルは、「わたしの訴えを神は正しくお裁き(ディン)になり、わたしの願いを聞き入れ男の子を与えてくださった」と言った。 そこで、彼女はその子をダンと名付けた。 7 ラケルの召し使いビルハはまた身ごもって、ヤコブとの間に二人目の男の子を産んだ。 8 そのときラケルは、「姉と死に物狂いの争いをして(ニフタル)、ついに勝った」と言って、その名をナフタリと名付けた。
9 レアも自分に子供ができなくなったのを知ると、自分の召し使いジルパをヤコブに側女として与えたので、 10 レアの召し使いジルパはヤコブとの間に男の子を産んだ。 11 そのときレアは、「なんと幸運な(ガド)」と言って、その子をガドと名付けた。 12 レアの召し使いジルパはヤコブとの二人目の男の子を産んだ。 13 そのときレアは、「なんと幸せなこと(アシェル)か。 娘たちはわたしを幸せ者と言うにちがいない」と言って、その子をアシェルと名付けた。
14 小麦の刈り入れのころ、ルベンは野原で恋なすびを見つけ、母レアのところへ持って来た。 ラケルがレアに、「あなたの子供が取って来た恋なすびをわたしに分けてください」と言うと、 15 レアは言った。 「あなたは、わたしの夫を取っただけでは気が済まず、わたしの息子の恋なすびまで取ろうとするのですか。」 「それでは、あなたの子供の恋なすびの代わりに、今夜あの人があなたと床を共にするようにしましょう」とラケルは答えた。 16 夕方になり、ヤコブが野原から帰って来ると、レアは出迎えて言った。 「あなたはわたしのところに来なければなりません。 わたしは、息子の恋なすびであなたを雇ったのですから。」 その夜、ヤコブはレアと寝た。 17 神がレアの願いを聞き入れられたので、レアは身ごもってヤコブとの間に五人目の男の子を産んだ。 18 そのときレアは、「わたしが召し使いを夫に与えたので、神はその報酬(サカル)をくださった」と言って、その子をイサカルと名付けた。 19 レアはまた身ごもって、ヤコブとの間に六人目の男の子を産んだ。 20 そのときレアは、「神がすばらしい贈り物をわたしにくださった。 今度こそ、夫はわたしを尊敬してくれる(ザバル)でしょう。 夫のために六人も男の子を産んだのだから」と言って、その子をゼブルンと名付けた。 21 その後、レアは女の子を産み、その子をディナと名付けた。 22 しかし、神はラケルも御心に留め、彼女の願いを聞き入れその胎を開かれたので、 23 ラケルは身ごもって男の子を産んだ。 そのときラケルは、「神がわたしの恥をすすいでくださった」と言った。 24 彼女は、「主がわたしにもう一人男の子を加えてくださいますように(ヨセフ)」と願っていたので、その子をヨセフと名付けた。
ラバンとの駆け引き
25 ラケルがヨセフを産んだころ、ヤコブはラバンに言った。 「わたしを独り立ちさせて、生まれ故郷へ帰らせてください。 26 わたしは今まで、妻を得るためにあなたのところで働いてきたのですから、妻子と共に帰らせてください。 あなたのために、わたしがどんなに尽くしてきたか、よくご存じのはずです。」
27 「もし、お前さえ良ければ、もっといてほしいのだが。 実は占いで、わたしはお前のお陰で、主から祝福をいただいていることが分かったのだ」とラバンは言い、 28 更に続けて、「お前の望む報酬をはっきり言いなさい。 必ず支払うから」と言った。 29 ヤコブは言った。 「わたしがどんなにあなたのために尽くし、家畜の世話をしてきたかよくご存じのはずです。 30 わたしが来るまではわずかだった家畜が、今ではこんなに多くなっています。 わたしが来てからは、主があなたを祝福しておられます。 しかし今のままでは、いつになったらわたしは自分の家を持つことができるでしょうか。」 31 「何をお前に支払えばよいのか」とラバンが尋ねると、ヤコブは答えた。 「何もくださるには及びません。 ただこういう条件なら、もう一度あなたの群れを飼い、世話をいたしましょう。 32 今日、わたしはあなたの群れを全部見回って、その中から、ぶちとまだらの羊をすべてと羊の中で黒みがかったものすべて、それからまだらとぶちの山羊を取り出しておきますから、それをわたしの報酬にしてください。 33 明日、あなたが来てわたしの報酬をよく調べれば、わたしの正しいことは証明されるでしょう。 山羊の中にぶちとまだらでないものや、羊の中に黒みがかっていないものがあったら、わたしが盗んだものと見なして結構です。」 34 ラバンは言った。 「よろしい。 お前の言うとおりにしよう。」
35 ところが、その日、ラバンは縞やまだらの雄山羊とぶちやまだら雌山羊全部、つまり白いところが混じっているもの全部とそれに黒みがかった羊をみな取り出して自分の息子たちの手に渡し、 36 ヤコブがラバンの残りの群れを飼っている間に、自分とヤコブとの間に歩いて三日かかるほど距離をおいた。
ヤコブの工夫
37 ヤコブは、ポプラとアーモンドとプラタナスの木の若枝を取って来て、皮をはぎ、枝に白い木肌の縞を作り、 38 家畜の群れがやって来たときに群れの目につくように、皮をはいだ枝を家畜の水飲み場の水槽の中に入れた。 そして、家畜の群れが水を飲みにやって来たとき、さかりがつくようにしたので、 39 家畜の群れは、その枝の前で交尾して縞やぶちやまだらのものを産んだ。 40 また、ヤコブは羊を二手に分けて、一方の群れをラバンの群れの中の縞のものと全体が黒みがかったものとに向かわせた。 彼は、自分の群れだけにはそうしたが、ラバンの群れにはそうしなかった。 41 また、丈夫な羊が交尾する時期になると、ヤコブは皮をはいだ枝をいつも水ぶねの中に入れて群れの前に置き、枝のそばで交尾させたが、 42 弱い羊のときには枝を置かなかった。 そこで、弱いのはラバンのものとなり、丈夫なものはヤコブのものとなった。 43 こうして、ヤコブはますます豊かになり、多くの家畜や男女の奴隷、それにらくだやろばなどを持つようになった。
ヤコブの脱走 31
1 ヤコブは、ラバンの息子たちが、「ヤコブは我我の父のものを全部奪ってしまった。 父のものをごまかして、あの富を築き上げたのだ」と言っているのを耳にした。 2 また、ラバンの態度を見ると、確かに以前とは変わっていた。 3 主はヤコブに言われた。
「あなたは、あなたの故郷である先祖の土地に帰りなさい。 わたしはあなたと共にいる。」
4 ヤコブは人をやって、ラケルとレアを家畜の群れがいる野原に呼び寄せて、 5 言った。 「最近、気づいたのだが、あなたたちのお父さんは、わたしに対して以前とは態度が変わった。 しかし、私の父の神は、ずっとわたしと共にいてくださった。 6 あなたたちも知っているように、わたしは全力を尽くしてあなたたちのお父さんのもとで働いてきたのに、 7 わたしをだまして、わたしの報酬を十回も変えた。 しかし、神はわたしに害を加えることをお許しにならなかった。 8 お父さんが、『ぶちのものがお前の報酬だ』と言えば、群れはみなぶちのものを産むし、『縞のものがお前の報酬だ』と言えば、群れはみな縞のものを産んだ。
9 神はあなたたちのお父さんの家畜を取り上げて、わたしにお与えになったのだ。
10 群れの発情期のころのことだが、夢の中でわたしが目を上げて見ると、雄山羊は縞とぶちとまだらのものばかりだった。 11 そのとき、夢の中で神の御使いが、『ヤコブよ』と言われたので、『はい』と答えると、 12 こう言われた。 『目を上げて見なさい。 雌山羊の群れとつがっている雄山羊はみな、縞とぶちとまだらのものだけだ。 ラバンのあなたの対する仕打ちは、すべてわたしには分かっている。 13 わたしはベテルの神である。 かってあなたは、そこに記念碑を立てて油を注ぎ、わたしに誓願を立てたではないか。 さあ、今すぐこの土地を出て、あなたの故郷に帰りなさい。』
14 ラケルとレアはヤコブに答えた。 「父の家に、わたしたちへの嗣業の割り当て分がまだあるでしょうか。 15 わたしたちはもう、父にとって他人と同じではありませんか。 父はわたしたちを売って、しかもそのお金を使い果たしてしまったのです。 16 神様が父から取り上げられた財産は、確かに全部わたしたちと子供たちのものです。 ですから、どうか今すぐ、神様があなたに告げられたとおりになさってください。」
17 ヤコブは直ちに、子供たちと妻たちをらくだに乗せ、 18 パダン・アラムで得たすべての財産である家畜を駆り立てて、父イサクのいるカナン地方へ向かって出発した。 19 そのとき、ラバンは羊の毛を刈りに出かけていたので、ラケルは父の家の守り神の像を盗んだ。 20 ヤコブもアラム人ラバンを欺いて、自分が逃げ去ることを悟られないようにした。 21 ヤコブはこうして、すべての財産を持って逃げ出し、川を渡りギレアドの山地へ向かった。
ラバンの追跡
22 ヤコブが逃げたことがラバンに知れたのは、三日目であった。 23 ラバンは一族を率いて、七日の道のりを追いかけて行き、ギレアドの山地でヤコブに追いついたが、 24 その夜夢の中で神は、アラム人ラバンのもとに来て言われた。 「ヤコブを一切非難せぬよう、よく心に留めておきなさい。」 25 ラバンがヤコブに追いついたとき、ヤコブは山の上に天幕を張っていたので、ラバンも一族と共にギレアドの山に天幕を張った。 26 ラバンはヤコブに言った。 「一体何ということをしたのか。 わたしを欺き、しかも娘たちを戦争の捕虜のように駆り立てて行くとは。 27 なぜ、こっそり逃げ出したりして、わたしをだましたのか。 ひとこと言ってくれさえすれば、わたしは太鼓や竪琴で喜び歌って、送り出してやったものを。 28 孫や娘たちに別れの口づけもさせないとは愚かなことをしたものだ。 29 わたしはお前たちをひどい目に遭わせることもできるが、夕べ、お前たちの父の神が、『ヤコブを一切非難せぬよう、よく心に留めておきなさい』とわたしにお告げになった。 30 父の家が恋しくて去るのなら、去ってもよい。 しかし、なぜわたしの守り神を盗んだのか。」
31 ヤコブはラバンに答えた。 「わたしは、あなたが娘たちをわたしから奪い取るのではないかと思って恐れただけです。 32 もし、あなたの守り神がだれかのところで見つかれば、その者を生かしてはおきません。 我々一同の前で、わたしのところにあなたのものがあるかどうか調べて、取り戻してください。」 ヤコブは、ラケルがそれを盗んでいたことを知らなかったのである。 33 そこで、ラバンはヤコブの天幕に入り、更にレアの天幕や二人の召し使いの天幕にも入って捜してみたが、見つからなかった。 ラバンがレアの天幕を出てラケルの天幕に入ると、 34 ラケルは既に守り神の像を取って、らくだの鞍の下に入れ、その上に座っていたので、ラバンは天幕の中をくまなく調べたが見つけることはできなかった。 35ラケルは父に言った。 「お父さん、どうか悪く思わないでください。 わたしは今、月のものがあるので立てません。」 ラバンはなおも捜したが、守り神の像をみつけることはできなかった。 36 ヤコブは怒ってラバンを責め、言い返した。
「わたしに何の背反、何の罪あって、わたしの後を追って来られたのですか。 37 あなたはわたしの物を一つ残らず調べられましたが、あなたの家の物が一つでも見つかりましたか。 それをここに出して、わたしの一族とあなたの一族の前に置き、わたしたち二人の間を、皆に裁いてもらおうではありませんか。 38 この二十年間というもの、わたしはあなたのもとにいましたが、あなたの雌羊や雌山羊が子を産み損ねたことはありません。 わたしは、あなたの群れの雄羊を食べたこともありません。 39 野獣にかみ裂かれたものがあっても、あなたのところへ持って行かないで自分で償いました。 昼であろうと夜であろうと、盗まれたものはみな弁償するようにあなたは要求しました。 40 しかも、わたしはしばしば、昼は猛暑に夜は極寒に悩まされ、眠ることもできませんでした。 41 この二十年間というもの、わたしはあなたの家で過ごしましたが、そのうち十四年はあなたの二人の娘のため、六年はあなたの家畜の群れのために働きました。 しかも、あなたはわたしの報酬を十回も変えました。 42 もし、わたしの父の神、アブラハムの神、イサクの畏れ敬う方がわたしの味方でなかったなら、あなたはきっと何も持たせずにわたしを追い出したことでしょう。 神は、わたしの労苦と悩みを目に留められ、昨夜、あなたを諭されたのです。」
ヤコブとラバンの契約
43 ラバンは、ヤコブに答えた。 「この娘たちはわたしの娘だ。 この孫たちもわたしの孫だ。 この家畜の群れもわたしの群れ、いや、お前の目の前にあるものはみなわたしのものだ。 しかし、娘たちや娘たちが産んだ孫たちのために、もはや、手出しをしようとは思わない。 44 さあ、これから、お前とわたしは契約を結ぼうではないか。 そして、お前とわたしの間に何か証拠となるものを立てよう。」
45 ヤコブは一つの石を取り、それを記念碑として立て、 46 一族の者に、「石を集めてきてくれ」と言った。 彼らは石を取ってきて石塚を築き、その石塚の傍らで食事を共にした。 47 ラバンはそれをエガル・サハドタと呼び、ヤコブはガルエドと呼んだ。 48 ラバンはまた、「この石塚(ガル)は、今日からお前とわたしの間の証拠(エド)となる」とも言った。 そこで、その名はガルエドと呼ばれるようになった。 49 そこはまた、ミツパ(見張り所)とも呼ばれた。 「我々が互いに離れているときも、主がお前とわたしの間を見張ってくださるように。 50 もし、お前がわたしの娘たちを苦しめたり、わたしの娘たち以外にほかの女性をめとったりするなら、たとえ、ほかにだれもいなくても、神御自身がお前とわたしの証人であることを忘れるな」とラバンが言ったからである。
51 ラバンは更に、ヤコブに言った。
「ここに石塚がある。 またここに、わたしがお前との間に立てた記念碑がある。 52 この石塚は証拠であり、記念碑は証人だ。 敵意をもって、わたしがこの石塚を越えてお前の方に侵入したり、お前がこの石塚とこの記念碑を越えてわたしの方に侵入したりすることがないようにしよう。 53 どうか、アブラハムの神とナホルの神、彼らの先祖の神が我々の間を正しく裁いてくださいますように。」
ヤコブも、父イサクの畏れ敬う方にかけて誓った。
54 ヤコブは山の上でいけにえをささげ、一族を招いて食事を共にした。 食事の後、彼らは山で一夜を過ごした。
32
1 次の朝早く、ラバンは孫や娘たちに口づけして祝福を与え、そこを去って自分の家へ帰って行った。
エサウとの再会の準備
2 ヤコブが旅を続けていると、突然、神の御使いたちが現れた。 3 ヤコブは彼らを見たとき、「ここは神の陣営だ」と言い、その場所をマハナイム(二組の陣営)と名付けた。
4 ヤコブは、あらかじめ、セイル地方、すなわちエドムの野にいる兄エサウのもとに使いの者を遣わすことにし、 5 お前たちはわたしの主人エサウにこう言いなさいと命じた。 「あなたの僕ヤコブはこう申しております。 わたしはラバンのもとに滞在し今日に至りましたが、 6 牛、ろば、羊、男女の奴隷を所有するようになりました。 そこで、使いの者を御主人様のもとに送って御報告し、御機嫌をお伺いします。」
7 使いの者はヤコブのところに帰って来て、「兄上のエサウさまのところへ行って参りました。 兄上様の方でも、あなたを迎えるため、四百人のお供を連れてこちらへおいでになる途中でございます」と報告した。 8 ヤコブは非常に恐れ、思い悩んだ末、連れている人々を、羊、牛、らくだなどと共に二組に分けた。 9 エサウがやって来て、一方の組に攻撃を仕掛けても、残りの組は助かると思ったのである。 10 ヤコブは祈った。
「わたしの父アブラハムの神、わたしの父イサクの神、主よ、あなたはわたしにこう言われました。 『あなたは生まれ故郷に帰りなさい。 わたしはあなたに幸いを与える』と。 11 わたしは、あなたが僕に示してくださったすべての慈しみとまことを受けるに足りない者です。 かってわたしは、一本の杖を頼りにこのヨルダン川を渡りましたが、今は二組の陣営を持つまでになりました。 12 どうか、兄エサウの手から救ってください。 わたしは兄が恐ろしいのです。 兄は攻めて来て、わたしをはじめ母も子供も殺すかもしれません。 13 あなたは、かってこう言われました。 『わたしは必ずあなたに幸いを与え、あなたの子孫を海辺の砂のように数えきれないほど多くする』と。」
14 その夜、ヤコブはそこに野宿して、自分の持ち物の中から兄エサウへの贈り物を選んだ。 15 それは、雌山羊二百匹、雄山羊二十匹、雌羊二百匹、雄羊二十匹、 16 乳らくだ三十頭とその子供、雌牛四十頭、雄牛十頭、雌ろば二十頭、雄ろば十頭であった。 17 それを群れごとに分け、召し使いたちの手に渡して言った。 「群れと群れとの間に距離を置き、わたしの先に立って行きなさい。」 18 また、先頭を行く者には次のように命じた。 「兄のエサウがお前に出会って、『お前の主人は誰だ。 どこへ行くのか。 ここにいる家畜は誰のものだ』と尋ねたら、 19 こう言いなさい。 『これは、あなたさまの僕ヤコブのもので、御主人のエサウさまに差し上げる贈り物でございます。 ヤコブも後から参ります』と。」 20 ヤコブは、二番目の者にも、群れの後について行くすべての者に命じて言った。 「エサウに出会ったら、これと同じことを述べ、 21 『あなたさまの僕ヤコブも後から参ります』と言いなさい。」 ヤコブは、贈り物を先に行かせて兄をなだめ、その後で顔を合せれば、恐らく快く迎えてくれるだろうと思ったのである。 22 こうして、贈り物を先に行かせ、ヤコブ自身は、その夜、野営地にとどまった。
ペヌエルでの格闘
23 その夜、ヤコブは起きて、二人の妻と二人の側女、それに十一人の子供を連れてヤボクの渡しを渡った。
24 皆を導いて川を渡らせ、持ち物も渡してしまうと、 25 ヤコブは独り後に残った。 そのとき、何者かが夜明けまでヤコブと格闘した。 26 ところが、その人はヤコブに勝てないとみて、ヤコブの腿の関節を打ったので、格闘をしているうちに腿の関節がはずれた。 27 「もう去らせてくれ。 夜が明けてしまうから」とその人は言ったが、ヤコブは答えた。 「いいえ、祝福してくださるまでは離しません。」 28 「お前の名は何というのか」とその人が尋ね、「ヤコブです」と答えると、 29 その人は言った。 「お前の名はもうヤコブではなく、これからはイスラエルと呼ばれる。 お前は神と人と闘って勝ったからだ。」 30 「どうか、あなたのお名前を教えてください」とヤコブが尋ねると、「どうして、わたしの名を尋ねるのか」と言って、ヤコブをその場で祝福した。 31 ヤコブは、「わたしは顔と顔とを合せて神を見たのに、なお生きている」と言って、その場所をベヌエル(神の顔)と名付けた。 32 ヤコブがベヌエルを過ぎたとき、太陽は彼の上に昇った。 ヤコブは腿を痛めて足を引きずっていた。 33 こういうわけで、イスラエルの人々は今でも腿の関節の上にある腰の筋を食べない。 かの人がヤコブの腿の関節、つまり腰の筋のところを打ったからである。
エサウとの再会 33
1 ヤコブが目を上げると、エサウが四百人の者を引き連れて来るのが見えた。 ヤコブは子供たちをそれぞれ、レアとラケルと二人の側女とに分け、 2 側女とその子供たちを前に、レアとその子供たちをその後ろに、ラケルとヨセフを最後に置いた。 3 ヤコブはそれから、先頭に進み出て、兄のもとに着くまでに七度地にひれ伏した。 4 エサウは走って来てヤコブを迎え、抱き締め、首を抱えて口づけし、共に泣いた。 5 やがて、エサウは顔を上げ、女たちや子供たちを見回して尋ねた。
「一緒にいるこの人々は誰なのか。」
「あなたの僕であるわたしに、神が恵んでくださった子供たちです。」
ヤコブが答えると、 6 側女たちが子供たちと共に進み出てひれ伏し、 7 次に、レアが子供たちと共に進み出てひれ伏し、最後にヨセフとラケルが進み出てひれ伏した。
8 エサウは尋ねた。
「今、わたしが出会ったあの多くの家畜は何のつもりか。」
ヤコブが、「ご主人様の好意を得るためです」と答えると、 9 エサウは言った。
「弟よ、わたしのところには何でも十分ある。 お前のものはお前が持っていなさい。」
10 ヤコブは言った。
「いいえ、もし御好意をいただけるのであれば、どうぞ贈り物をお受け取りください。 兄上のお顔は、わたしには神の御顔のように見えます。 このわたしを温かく迎えてくださったのですから。 11 どうか、持参しました贈り物をお納めください。 神がわたしに恵みをお与えになったので、わたしは何でも持っていますから。」
ヤコブがしきりに勧めたので、エサウは受け取った。
12 それからエサウは言った。
「さあ、一緒に出かけよう。 わたしが先導するから。」
13 「御主人様。 ご存じのように、子供たちはか弱く、わたしも羊や牛の子に乳を飲ませる世話をしなければなりません。 群れは、一日でも無理に追い立てるとみな死んでしまいます。 14 どうか御主人様、僕におかまいなく先にお進みください。 わたしは、ここにいる家畜や子供たちの歩みに合わせてゆっくり進み、セイルの御主人様のもとへ参りましょう。」
ヤコブがこう答えたので、 15 エサウは言った。
「では、わたしが連れている者を何人か、お前のところに残しておくことにしよう。」
「いいえ。 それには及びません。 御好意だけで十分です」と答えたので、 16 エサウは、その日セイルへの道を帰って行った。
17 ヤコブはストコへ行き、自分の家を建て、家畜の小屋を作った。 そこで、その場所の名はストコ(小屋)と呼ばれている。
18 ヤコブはこうして、パダン・アラムから無事にカナン地方にあるシケムの町に着き、町のそばに宿営した。 19 ヤコブは、天幕を張った土地の一部を、シケムの父ハモルの息子たちから百ケシタで買い取り、 20 そこに祭壇を建てて、それをエル・エロヘ・イスラエルと呼んだ。
シケムでの出来事 34
1 あるとき、レアとヤコブの間に生まれた娘のディナが土地の娘たちに会いに出かけたが、 2 その土地の首長であるヒビ人ハモルの息子シケムが彼女を見かけて捕らえ、共に寝て辱めた。 3 シケムはヤコブの娘ディナに心を奪われ、この若い娘を愛し、言い寄った。 4 更にシケムは、父ハモルに言った。
「どうか、この娘と結婚させてください。」
5 ヤコブは、娘のディナが汚されたことを聞いたが、息子たちは家畜を連れて野に出ていたので、彼らが帰るまで黙っていた。 6 シケムの父ハモルがヤコブと話し合うためにやって来たとき、 7 ヤコブの息子たちが野から帰って来てこの事を聞き、皆、互に嘆き、また激しく憤った。 シケムがヤコブの娘と寝て、イスラエルに対して恥ずべきことを行ったからである。 それはしてはならないことであった。 8 ハモルは彼らと話した。
「息子のシケムは、あなたがたの娘さんを恋い慕っています。 どうか、娘さんを息子の嫁にしてください。 9 お互いに姻戚関係を結び、あなたがたの娘さんたちをわたしどもにくださり、わたしどもの娘を嫁にしてくださいませんか。 10 そして、わたしどもと一緒に住んでください。 あなたがたのための土地も十分あります。 どうか、ここに移り住んで、自由に使ってください。」
11 シケムも、ディナの父や兄弟たちに言った。
「ぜひとも、よろしくお願いします。 お申し出があれば何でも差し上げます。 12 どんなに高い結納金でも贈り物でも、お望みどおり差し上げます。 ですから、ぜひあの方をわたしの妻にください。」
13 しかし、シケムが妹のディナを汚したので、ヤコブの息子たちは、シケムとその父ハモルをだましてこう答えた。
14 「割礼を受けていない男に、妹を妻として与えることはできません。 そのようなことは我々の恥とするところです。 15 ただ、次の条件がかなえられれば、あなたたちに同意しましょう。 それは、あなたたちの男性が皆、割礼を受けて我々と同じようになることです。 16 そうすれば、我々の娘たちをあなたたちに与え、あなたたちの娘を我々がめとります。 そして我々は、あなたたちと一緒に住んで一つの民となります。 17 しかし、もし割礼を受けることに同意しないなら、我々は娘を連れてここを立ち去ることにします。
18 ハモルとその息子シケルは、この条件なら受け入れてもよいと思った。 19 とくにシケムは、ヤコブの娘を愛していたので、ためらわず実行することにした。 彼は、ハモル家の中では最も尊敬されていた。 20 ハモルと息子シケムは、町の門のところへ行き町の人々に提案した。
21 「あの人たちは、我々と仲良くやっていける人たちだ。 彼らをここに住まわせ、この土地を自由に使ってもらうことにしようではないか。 土地は御覧のとおり十分広いから、彼らが来ても大丈夫だ。 そして、彼らの娘たちを我々の嫁として迎え、我々の娘たちを彼らの与えようではないか。 22 ただ、次の条件がかなえられれば、あの人たちは我々と一緒に住み、一つの民となることに同意するというのだ。 それは、彼らが割礼を受けているように、我々も男性は皆、割礼を受けることだ。 23 そうすれば、彼らの家畜の群れも財産も動物もみな、我々のものになるではないか。 それには、ただ彼らの条件に同意さえすれば、彼らは我々と一緒に住むことができるのだ。」
24 町の門のところに集まっていた人々は皆、ハモルと息子シケムの提案を受け入れた。 町の門のところに集まっていた男性はこうして、すべて割礼を受けた。
25 三日目になって、男たちがまだ傷の痛みに苦しんでいたとき、ヤコブの二人の息子、つまりディナの兄のシメオンとレビは、めいめい剣を取って難なく町に入り、男たちをことごとく殺した。 26 ハモルと息子シケムも剣にかけて殺し、シケムの家からディナを連れ出した。 27 ヤコブの息子たちは、倒れている者たちに襲いかかり、更に町中を略奪した。 自分たちの妹を汚したからである。 28 そして、羊や牛やろばなど、町の中のものも野にあるものも奪い取り、 29 家の中にあるものもみな奪い、女も子供もすべて捕虜にした。
30 「困ったことをしてくれたものだ。 わたしはこの土地に住むカナン人やペリジ人の憎まれ者になり、のけ者になってしまった。 こちらは少人数なのだから、彼らが集まって攻撃してきたら、わたしも家族も滅ぼされてしまうではないか」とヤコブがシメオンとレビに言うと、 31 二人はこう言い返した。
「わたしたちの妹が娼婦のように扱われてもかまわないのですか。」
再びベテルへ 35
1 神はヤコブに言われた。 「さあ、ベテルに上り、そこに住みなさい。 そしてその地に、あなたが兄エサウを避けて逃げて行ったとき、あなたに現れた神のための祭壇を造りなさい。」
2 ヤコブは、家族の者や一緒にいるすべての人々に言った。 「お前たちが身に着けている外国の神々を取り去り、身を清めて衣服を着替えなさい。 3 さあ、これからベテルに上ろう。 わたしはその地に、苦難の時わたしに答え、旅の間わたしと共にいてくださった神のために祭壇を造る。」 4 人々は、持っていた外国のすべての神々と、着けていた耳飾りをヤコブに渡したので、ヤコブはそれらをシケムの近くにある樫の木の下に埋めた。 5 こうして一同は出発したが、神が周囲の町々を恐れさせたので、ヤコブの息子たちを追跡する者はなかった。 6 ヤコブはやがて、一族の者すべてと共に、カナン地方のルズ、すなわちベテルに着き、 7 そこに祭壇を築いて、その場所をエル・ベテルと名付けた。 兄を避けて逃げて行ったとき、神がそこでヤコブに現れたからである。
8 リベカの乳母デボラが死に、ベテルの下手にある樫の木の下に葬られた。 そこで、その名はアロン・バクト(嘆きの樫の木)と呼ばれるようになった。
9 ヤコブがパダン・アラムから帰って来たとき、神は再びヤコブに現れて彼を祝福された。 10 神は彼に言われた。
「あなたの名はヤコブである。 しかし、あなたの名はもはやヤコブと呼ばれない。 イスラエルがあなたの名となる。」
神はこうして、彼をイスラエルと名付けられた。
11 神は、また彼に言われた。
「わたしは全能の神である。
産めよ、増えよ。
あなたから
一つの国民、いや多くの国民の群れが起こり
あなたの腰から王たちが出る。
12 わたしは、アウラハムとイサクに与えた土地を
あなたに与える。
また、あなたに続く子孫にこの土地を与える。
13 神はヤコブと語られた場所を離れて昇って行かれた。 14 ヤコブは、神が自分と語られて場所に記念碑立てた。 それは石の柱で、彼はその上にぶどう酒を注ぎかけ、また油を注いだ。 15 そしてヤコブは、神が自分と語られた場所をベテルと名付けた。
ラケルの死
16 一同がベテルを出発し、エフラタまで行くにはまだかなりの道のりがあるときに、ラケルが産気づいたが、難産であった。 17 ラケルが産みの苦しみをしているとき、助産婦は彼女に、「心配ありません。 今度も男の子ですよ」と言った。 18 ラケルが最後の息を引き取ろうとするとき、その子をベン・オニ(わたしの苦しみの子)と名付けたが、父はこれをベニヤミン(幸いの子)と呼んだ。
19 ラケルは死んで、エフラタ、すなわち今日のベツレヘムへ向かう道の傍らに葬られた。 20 ヤコブは、彼女の葬られた所に記念碑を立てた。 それは、ラケルの葬りの碑として今でも残っている。 21 イスラエルは更に旅を続け、ミグダル・エデルを過ぎた所に天幕を張った。 22 イスラエルがそこに滞在していたとき、ルベンは父の側女ビルハのところへ入って寝た。 このことはイスラエルの耳にも入った。
ヤコブの息子たち
ヤコブの息子は十二人であった。 23 レアの息子がヤコブの長男ルベン、それからシメオン、レビ、ユダ、イサカル、ゼブルン、 24 ラケルの息子がヨセフとベニヤミン、 25 ラケルの召し使いビハルの息子がダンとナフタリ、 26 レアの召し使いジルパの息子がガドとアシェルである。 これらは、パダン・アラムの生まれたヤコブの息子たちである。
イサクの死
27 ヤコブは、キルヤト・アルバ、すなわちヘブロンのマレムにいる父のイサクのところへ行った。 そこは、イサクだけでなく、アブラハムも滞在した所である。 28 イサクの生涯は百八十年であった。 29 イサクは息を引き取り、高齢のうちに満ち足りて死に、先祖の列に加えられた。 息子のエサウとヤコブが彼を葬った。
エサウの子孫 36
1 エサウ、すなわちエドムの系図は次のとおりである。 2 エサウは、カナンの娘たちの中から妻を迎えた。 ヘト人エロンの娘アダ、ヒビ人ツィブオンの孫娘でアナの娘オホリバマ、 3 それに、ネバヨトの姉妹でイシュマエルの娘バセマトである。 4 アダは、エサウとの間にエリファズを産み、バセマトはレウエルを産んだ。 5 オホリバマは、エウシュ、ヤラム、コラを産んだ。 これらは、カナン地方で生まれたエサウの息子たちである。
6 エサウは、妻、息子、娘、家で働くすべての人々、家畜の群れ、すべての動物を連れ、カナンの土地で手に入れた全財産を携え、弟ヤコブのところから離れたほかの土地へ出て行った。 7 彼らの所有物は一緒に住むにはあまりに多く、滞在していた土地は彼らの家畜を養うには狭すぎたからである。 8 エサウはこうして、セイルの山地に住むようになった。 エサウとはエドムのことである。
9 セイルの山地に住む、エドム人の先祖エサウの系図は次のとおりである。 10 まず、エサウの息子たちの名前を挙げると、エリファズはエサウの妻アダの子で、レウエルはエサウの妻バセマトの子である。 11 エリファズの息子たちは、テマン、オマル、ツエフォ、ガタム、ケナズである。 12 エサウの息子エリファズの側女ティムナは、エリファズのとの間にアマレクを産んだ。 以上が、エサウの妻アダの子孫である。 13 レウエルの息子たちは、ナハト、ゼラ、シャンマ、ミザである。 以上が、エサウの妻バセマトの子孫である。 14 ツィブオンの孫娘で、アナの娘であるエサウの妻オホリバマの息子たちは、次のとおりである。 彼女は、エサウとの間にエウシュ、ヤラム、コラを産んだ。
15 エサウの子孫である首長は次のとおりである。 まず、エサウの長男エリファズの息子たちについていえば、首長テマン、首長オマル、首長ツェホ、首長ケナズ、 16 首長コラ、首長ガタム、首長アマレクである。 これらは、エドム地方に住むエリファズ系の首長で、アダの子孫である。 17 次に、エサウの子レウエルの息子たちについていえば、首長ナハト、首長ゼラ、首長シャンマ、首長ミザ、である。 これらは、エドム地方に住むレウエル系の首長で、エサウの妻バセマトの子孫である。 18 エサウの妻ホオリバマの息子たちについていえば、首長エウシュ、首長ヤラム、首長コラである。 これらは、アナの娘であるエサウの妻オホリバマから生まれた首長である。 19 以上が、エサウ、すなわちエドムの子孫である首長たちである。
セイルの子孫
20 この土地に住むフリ人セイルの息子たちは、ロタン、ショバル、ツィブオン、アナ、 21 ディション、エツェル、ディシャンである。 これらは、エドム地方に住むセイルの息子で、フリ人の首長たちである。 22 ロタンの息子たちは、ホリとヘマムであり、ロタンの妹がティムナである。 23 ショバルの息子たちは、アルワン、マナハト、エバル、シェフォ、オナムである。 24 ツィブオンの息子たちは、アヤとアナである。 アナは父ツィブオンのろばを飼っていたとき、荒れ野で泉を発見した人である。 25 アナの子供たちは、ディションとアナの娘オホリバマである。 26 ディションの息子たちは、ヘムダン、エシュバン、イトラン、ケランである。 27 エツェルの息子たちは、ビルハン、ザアワン、アカンである。 28 ディションの息子たちは、ウツとアランである。
29 フリ人の首長は次の通りである。 首長ロタン、首長ショバル、首長ツィブオン、首長アナ、 30 首長ディション、首長エツェル、首長ディシャン。 以上がフリ人の首長であり、セイル地方に住むそれぞれの首長であった。
エドムの王国
31 イスラエルの人々を治める王がまだいなかった時代に、エドム地方を治めていた王たちは次のとおりである。 32 エドムで治めていたのは、ベオルの息子ベラであり、その町の名はディンハバといった・ 33 ベラが死んで、代りに王となったのは、ボツラ出身でゼラの息子ヨバブである。 34 ヨバブが死んで、代りに王となったのは、テマン人の土地から出たフシャムである。 35 フシャムが死んで代わりに王になったのは、ベダドの息子ハダドであり、モアブの野でミディアン人を撃退した人である。 その町の名はアビトといった。 36 ハダドが死んで代わりに王となったのは、マスレカ出身のサムラである。 37 サムラが死んで代わりに王となったのは、ユーフラテス川のレホボト出身のシャウルである。 38 シャウルが死んで、代りに王となったのは、アクボルの息子バアル・ハナンである。 39 アクボルの息子バアル・ハナンが死んで代わりに王となったのは、ハダドである。 その町の名はバウといい、その妻の名はメヘタブエルといった。 彼女はマトレドの娘で、メ・ザハブの孫娘である。
40 エサウ系の首長たちの名前を氏族と場所の名に従って挙げれば、首長ティムナ、首長アルワ、首長エテト、 41 首長オホリバマ、首長エラ、首長ピノン、 42 首長ケナズ、首長テマン、首長ミブツァル、 43 首長マグディエル、首長イラムである。 以上がエドムの首長であって、彼らが所有した領地に従って挙げたものである。 エサウは、エドム人の先祖である。
ヨセフの夢 37
1 ヤコブは、父がかって滞在していたカナン地方に住んでいた。
2 ヤコブの家族の由来は次にとおりである。 ヨセフは十七歳のとき、兄たちと羊
の群れを飼っていた。 まだ若く、父の側女ビルハやジツパの子供たちと一緒にいた。 ヨセフは兄たちのことを父に告げ口した。
3 イスラエルは、ヨセフが年寄り子であったので、どの息子よりもかわいがり、彼には裾の長い晴れ着を作ってやった。 4 兄たちは、父がどの兄弟よりもヨセフをかわいがるのを見て、ヨセフを憎み、穏やかに話すこともできなかった。
5 ヨセフは夢を見て、それを兄たちに語ったので、彼らはますます憎むようになった。 6 ヨセフは言った。
「聞いてください。 わたしはこんな夢を見ました。 7 畑でわたしたちが束を結わえていると、いきなりわたしの束が起き上がり、まっすぐに立ったのです。 すると、兄さんたちの束が周りに集まって来て、わたしの束にひれ伏しました。」
8 兄たちはヨセフに言った。
「なに、お前が我々の王になるというのか。 お前が我々を支配するというのか。」
9 ヨセフはまた別の夢を見て、それを兄たちに話した。
「わたしはまた夢を見ました。 太陽と月と十一の星がわたしにひれ伏しているのです。」
10 今度は兄たちだけでなく、父にも話した。 父はヨセフを叱って言った。
「一体どういうことだ、お前が見たその夢は。 わたしもお母さんも兄さんたちも、お前の前に行って、地面にひれ伏すというのか。」
11 兄たちはヨセフをねたんだが、父はこのことを心に留めた。
ヨセフ、エジプトに売られる
12 兄たちが出かけて行き、シケムで父の羊の群れを飼っていたとき、 13 イスラエルはヨセフに言った。 「兄さんたちはシケムで羊を飼っているはずだ。 お前を彼らのところはやりたいのだが。」
「はい、分かりました」とヨセフが答えると、 14 更にこう言った。
「では、早速出かけて、兄さんたちが元気にやっているか、羊の群れも無事か見届けて、様子を知らせてくれないか。」
父はヨセフをヘブロンの谷から送り出した。 ヨセフがシケムに着き、 15 野原をさまよっていると、一人の人に出会った。 その人はヨセフに尋ねた。
「何を探しているのかね。」
16 「兄たちを探しているのです。 どこで羊の群れを飼っているか教えてください。」
ヨセフがこう言うと、 17 その人は答えた。
「もうここをたってしまった。 ドタンへ行こう、 と言っていたのを聞いたが。」
ヨセフは兄たちの後を追って行き、ドタンで一行を見つけた。
18 兄たちは、はるか遠くの方にヨセフの姿を認めると、まだ近づいて来ないうちに、ヨセフを殺してしまおうとたくらみ、 19 相談した。
「おい、向こうから例の夢見るお方がやって来る。 20 さあ、今だ。 あれを殺して、穴の一つに投げ込もう。 後は野獣に食われたと言えばよい。 あれの夢がどうなるか、見てやろう。」
21 ルベンはこれを聞いて、ヨセフを彼らの手から助け出そうとして、言った。
「命まで取るのはよそう。」
22 ルペンは続けて言った。
「血を流してはならない。 荒れ野のこの穴に投げ入れよう。 手を下してはならない。」
ルベンはヨセフを彼らの手から助け出して、父のもとへ帰したかったのである。
23 ヨセフがやって来ると、兄たちはヨセフが着ていた着物、裾の長い晴れ着をはぎ取り、 24 彼を捕らえて、穴に投げ込んだ。 その穴は空で水はなかった。
25 彼らはそれから、腰を下ろして食事を始めたが、ふと目を上げると、イシュマエル人の隊商がギレアドの方からやって来るのが見えた。 らくだに樹脂、乳香、没薬を積んで、エジプトに下って行こうとしているところであった。 26 ユダは兄弟たちに言った。
「弟を殺して、その血を覆っても何の得にもならない。 27 それより、あのイシュマエル人に売ろうではないか。 弟に手をかけるのはよそう。 あれだって、肉親の弟だから。」
兄弟たちは、これを聞き入れた。
28 ところが、その間にミディアン人の商人たちが通りかかって、ヨセフを穴から引き上げ、銀二十枚でイシュマエル人に売ったので、彼らはヨセフをエジプトに連れて行ってしまった。 29 ルベンが穴のところに戻ってみると、意外にも穴の中にヨセフはいなかった。 ルベンは自分の衣を引き裂き、 30 兄弟たちのところへ帰り、「あの子がいない。 わたしは、このわたしは、どうしたらいいのか」と言った。 31 兄弟たちはヨセフの着物を拾い上げ、雄山羊を殺してその血に着物を浸した。 32 彼らはそれから、裾の長い晴れ着を父のもとへ送り届け、「これを見つけましたが、あなたの息子の着物かどうか、お調べになってください」と言わせた。 33 父は、それを調べて言った。
「あの子の着物だ。 野獣に食われたのだ。 ああ、ヨセフはかみ裂かれてしまったのだ。」
34 ヤコブは自分の衣を引き裂き、粗布を腰にまとい、幾日もその子のために嘆き悲しんだ。 35 息子や娘たちが皆やって来て、慰めようとしたが、ヤコブは慰められることを拒んだ。
「ああ、わたしもあの子のところへ、嘆きながら陰府(よみ)へ下って行こう。」
父はこう言って、ヨセフのために泣いた。
36 一方、メダンの人たちがエジプトへ売ったヨセフは、ファラオの宮廷の役人で、侍従長であったポティファルのものとなった。
ユダとタマル 38
1 そのころ、ユダは兄弟たちと別れて、アドラム人のヒラという人の近くに天幕を張った。 2 ユダはそこで、カナン人のシュアという人の娘を見初めて結婚し、彼女のところへ入った。 3 彼女は身ごもり男の子を産んだ。 ユダはその子をエルと名付けた。 4 彼女はまた身ごもり男の子を産み、その子をオナンと名付けた。 5 彼女は更にまた男の子を産み、その子をシェラと名付けた。 彼女がシェラを産んだ時、ユダはケジブにいた。
6 ユダは長男のエルに、タマルという嫁を迎えたが、 7 ユダの長男エルは主の意に反したので、主は彼を殺された。 8 ユダはオナンに言った。
「兄嫁のところへ入り、兄弟の義務を果たし、兄のために子孫をのこしなさい。」
9 オナンはその子孫が自分のものとならないのを知っていたので、兄に子孫を与えないように、兄嫁のところに入る度に子種を地面に流した。 10 彼のしたことは主の意に反することであったので、彼もまた殺された。
11 ユダは嫁のタマルに言った。
「わたしの息子のシェラが成人するまで、あなたは父上の家で、やもめのまま暮らしなさい。」
それは、シェラもまた兄たちのように死んではいけないと思ったからであった。 タマルは自分の父の家に帰って暮らした。
12 かなりの年月がたって、シュアの娘であったユダの妻が死んだ。 ユダは喪に服した後、友人のアドラム人ヒラと一緒に、ティムナの羊の毛を刈る者のところへ上って行った。 13 ある人がタマルに、「あなたのしゅうとが、羊の毛を刈るために、ティムナへやって来ます」と知らせたので、 14 タマルはやもめの着物を脱ぎ、ベールをかぶって身なりを変え、ティムナへ行く途中のエナイムの入り口に座った。 シェラが成人したのに、自分がその妻にしてもらえない、と分かったからである。 15 ユダは彼女を見て、顔を隠しているので娼婦だと思った。 16 ユダは、路傍にいる彼女に近寄って、「さあ、あなたの所に入らせてくれ」と言った。 彼女が自分の嫁だとは気づかなかったからである。
「わたしの所にお入りになるのなら、何をくださいますか」と彼女が言うと、 17 ユダは、「群れの中から子山羊を一匹、送り届けよう」と答えた。 しかし彼女は言った。
「でも、それを送り届けてくださるまで、保証の品をください。」
18 「どんな保証がいいのか」と言うと、彼女は答えた。
「あなたのひもの付いた印章と、持っていらっしゃるその杖です。」
ユダはそれを渡し、彼女の所に入った。 彼女はこうして、ユダによって身ごもった。 19 彼女はそこを立ち去り、ベールを脱いで、再びやもめの着物を着た。
20 ユダは子山羊を友人のアドラム人の手に託して送り届け、女から保証の品を取り戻そうとしたが、その女は見つからなかった。 21 友人が土地の人々に、「エナイムの路傍にいた神殿娼婦は、どこにいるのでしょうか」と尋ねると、人々は、「ここには、神殿娼婦などいたことはありません」と答えた。 22 友人はユダのところに戻って来て言った。 「女は見つかりませんでした。 それに土地の人々も、『ここには、神殿娼婦などいたことはありません』と言うのです。」 23 ユダは言った。
「では、あの品はあの女にそのままやっておこう。 さもないと、我々が物笑いの種になるから。 とにかく、わたしは子山羊を届けたのだが、女が見つからなかったのだから。」
24 三か月ほどたって、「あなたの嫁タルマは姦淫をし、しかも、姦淫によって身ごもりました」とユダに告げる者があったので、ユダは言った。
「あの女を引きずり出して、焼き殺してしまえ。」
25 ところが、引きずり出されようとしたとき、タマルはしゅうとに使いをやって言った。
「わたしは、この品々の持ち主によって身ごもったのです。」
彼女は続けて言った。
「どうか、このひもの付いた印章とこの杖とが、どなたのものか、お調べください。」
26 ユダは調べて言った。
「わたしより彼女の方が正しい。 わたしが彼女を息子のシェラに与えなかったからだ。」
ユダは、再びタマルを知ることはなかった。
27 タマルの出産の時が来たが、胎内には双子がいた。 28 出産の時、一人の子が手を出したので、助産婦は、「これが先に出た」と言い、真赤な糸を取ってその手に結んだ。 29 ところがその子は手を引っ込めてしまい、もう一人の方が出てきたので、助産婦は言った。 「なんとまあ、この子は人を出し抜いたりして。」
そこで、この子はペレツ(出し抜き)と名付けられた。 30 その後から、手に真赤な糸を結んだ方の子が出てきたので、この子はゼラ(真赤)と名付けられた。
ヨセフとポティファルの妻 39
1 ヨセフはエジプトに連れて来られた。 ヨセフをエジプトへ連れて来たイシュマエル人の手から彼を買い取ったのは、ファラオの宮廷の役人で、侍従長のエジプト人ポティファルであった。
2 主がヨセフと共におられたので、彼はうまく事を運んだ。 彼はエジプト人の主人の家にいた。 3 主が共におられ、主が彼のすることをすべてうまく計らわれるのを見た主人は、 4 ヨセフに目をかけて身近に仕えさせ、家の管理をゆだね、財産をすべて彼の手に任せた。 5 主人が家の管理やすべての財産をヨセフに任せてから、主はヨセフゆえにそのエジプト人の家を祝福された。 主の祝福は、家の中にも農地にも、すべての財産に及んだ。 6 主人は全財産をヨセフの手にゆだねてしまい、自分が食べるもの以外は全く気を遣わなかった。 ヨセフは顔も美しく、体つきも優れていた。
7 これらのことの後で、主人の妻はヨセフに目を注ぎながら言った。
「わたしの床に入りなさい。」
8 しかし、ヨセフは拒んで、主人の妻に言った。
「御存じのように、御主人はわたしを側に置き、家の中のことには一切気をお遣いになりません。 財産もすべてわたしの手にゆだねてくださいました。 9 この家では、わたしの上に立つ者はいませんから、わたしの意のままにならないものもありません。 ただ、あなたは別です。 あなたは御主人の妻ですから。 わたしは、どうしてそのように大きな悪を働いて、神に罪を犯すことができましょう。」
10 彼女は毎日ヨセフに言い寄ったが、ヨセフは耳を貸さず、彼女の傍らに寝ることも、共にいることもしなかった。
11 こうして、ある日、ヨセフが仕事をしようと家に入ると、家の者が一人も家の中にいなかったので、 12 彼女はヨセフの着物をつかんで言った。
「わたしの床に入りなさい。」
ヨセフは着物を彼女の手に残し、逃げて外へ出た。 13 着物を彼女の手に残したまま、ヨセフが外へ逃げたのを見ると、 14 彼女は家の者たちを呼び寄せて言った。
「見てごらん、ヘブライ人などをわたしたちの所に連れて来たから、わたしたちはいたずらをされる。 彼がわたしの所へ来て、わたしと寝ようとしたから、大声で叫びました。 15 わたしが大声をあげて叫んだのを聞いて、わたしの傍らに着物を残したまま外へ逃げて行きました。 16 彼女は、主人が家に帰って来るまで、その着物を傍らに置いていた。 17 そして、主人に同じことを語った。
「あなたがわたしたちの所に連れて来た、あのヘブライ人の奴隷はわたしの所に来て、いたずらをしようとしたのです。 18 わたしが大声をあげて叫んだものですから、着物をわたしの傍らに残したまま、外へ逃げて行きました。」
19 「あなたの奴隷がわたしにこんなことをしたのです」と訴える妻の言葉を聞いて、主人は怒り、 20 ヨセフを捕らえて、王の囚人をつなぐ監獄に入れた。 ヨセフはこうして、監獄にいた。
21 しかし、主がヨセフと共におられ、恵みを施し、看守長の目にかなうように導かれたので、 22 看守長は監獄にいる囚人を皆、ヨセフの手にゆだね、獄中の人のすることはヨセフが取りしきるようになった。 23 看守長は、ヨセフの手にゆだねたことには、一切目を配らなくてもよかった。 主がヨセフと共におられ、ヨセフがすることを主がうまく計られたからである。
夢を解くヨセフ 40
1 これらのことの後で、エジプト王の給仕役と料理役が主君であるエジプト王に過ちを犯した。 2 ファラオは怒って、この二人の宮廷の役人、給仕役の長と料理役の長を、 3 侍従長の家にある牢獄、つまりヨセフがつながれている監獄に引き渡した。 4 侍従長は彼らをヨセフに預け、身辺の世話をさせた。 牢獄の中で幾日かが過ぎたが、 5 監獄につながれていたエジプト王の給仕役料理役は、二人とも同じ夜にそれぞれ夢を見た。 その夢には、それぞれ意味が隠されていた。 6 朝になって、ヨセフが二人のところへ行ってみると、二人ともふさぎ込んでいた。 7 ヨセフは主人の家の牢獄に自分一緒に入れられているファラオの宮廷の役人に尋ねた。
「今日は、どうしてそんなに憂うつな顔をしているのですか。」
8 「我々は夢を見たのだが、それを解き明かしてくれる人がいない」と二人は答えた。 ヨセフは、「解き明かしは神がなさることではありませんか。 どうかわたしに話してみてください」と言った。 9 給仕役の長はヨセフに自分の見た夢を話した。
「わたしが夢を見ていると、一本のぶどうの木が目の前に現れたのです。 10 そのぶどうの木には三本のつるがありました。 それがみるみるうちに芽を出したかと思うと、すぐに花が咲き、ふさふさとしたぶどうが熟しました。 11 ファラオの杯を手にしていたわたしは、そのぶどうを取って、ファラオの杯に搾り、その杯をファラオにささげました。
12 ヨセフは言った。
「その解き明かしはこうです。 三本のつるは三日です。 13 三日たてば、ファラオがあなたの頭を上げて、元の職務に復帰させてくださいます。 あなたは以前、給仕役であったときのように、ファラオに杯をささげる役目をするようになります
14 ついては、あなたがそのように幸せになられたときには、どうかわたしのことを思い出してください。 わたしのためにファラオにわたしの身の上を話し、この家から出られるように取り計らってください。 15 わたしはヘブライ人の国から無理やり連れて来られたのです。 また、ここでも、牢屋に入れられるようなことは何もしていないのです。
16 料理役の長は、ヨセフが巧みに解き明かすのを見て言った。
「わたしも夢を見ていると、編んだ籠が三個わたしの頭の上にありました。 17 いちばん上の籠には、料理役がファラオのために調えたいろいろな料理が入っていましたが、鳥がわたしの頭の上の籠からそれを食べているのです。」
18 ヨセフは答えた。
「その解き明かしはこうです。 三個の籠は三日です。 19 三日たてば、ファラオがあなたの頭を上げて切り離し、あなたを木にかけます。 そして、鳥があなたの肉をついばみます。
20 三日目はファラオの誕生日であったので、ファラオは家来たちを皆、招いて、祝宴を催した。 そして、家来たちの居並ぶところで例の給仕役の長の頭と料理役の長の頭を上げて調べた。 21 ファラオは給仕役の長を給仕の職に復帰させさせたので、彼はファラオに杯をささげる役目をするようになったが、 22 料理役の長は、ヨセフが解き明かしたとおり木にかけられた。 23 ところが、給仕役の長はヨセフのことを思い出さず、忘れてしまった。
ファラオの夢を解く 41
1 二年の後、ファラオは夢を見た。 ナイル川のほとりに立っていると、 2 突然、つややかな、よく肥えた七頭の雌牛が川から上がって来て、葦辺で草を食べ始めた。 3 すると、その後から、今度は醜い、やせ細った七頭の雌牛が川から上がって来て、岸辺にいる雌牛のそばに立った。 4 そして、醜い、やせ細った雌牛が雌牛が、つややかな、よく肥えた七頭の雌牛を食い尽くした。 ファラオは、そこで目が覚めた。
5 ファラオがまた眠ると、再び夢を見た。 今度は、太って、よく実った七つの穂が、一本の茎から出てきた。 6 すると、その後から、実が入っていない、東風で干からびた七つの穂が生えてきて、 7 実の入っていない穂が、太って、実の入った七つの穂をのみ込んでしまった。 ファラオは、そこで目が覚めた。 それは夢であった。 8 朝になって、ファラオはひどく心が騒ぎ、エジプト中の魔術師と賢者をすべて呼び集めさせ、自分の見た夢を彼らに話した。 しかし、ファラオに解き明かすことができる者はいなかった。
9 そのとき、例の給仕役の長がファラオに申し出た。
「わたしは、今日になって自分の過ちを思い出しました。 10 かってファラオが僕どもについて憤られて、侍従長の家にある牢獄にわたしと料理役の長を入れられたとき、 11 同じ夜に、わたしたちはそれぞれ夢を見たのですが、そのどちらにも意味が隠されていました。 12 そこには、侍従長に仕えていたヘブライ人の若者がおりまして、彼に話をしたところ、わたしたちの夢を解き明かし、それぞれ、その夢に応じて解き明かしたのです。 13 そしてまさしく、解き明かしたとおりになって、わたしは元の職務に復帰することを許され、彼は木にかけられました。
14 そこで、ファラオはヨセフを呼びにやった。 ヨセフは直ちに牢屋から連れ出され、散髪をし着物を着替えてから、ファラオの前に出た。 15 ファラオはヨセフに言った。
「わたしは夢を見たのだが、それを解き明かす者がいない。 聞くところによれば、お前は夢の話を聞いて、解き明かすことができるそうだが。」
16 ヨセフはファラオに答えた。
「わたしではありません。 神がファラオの幸いについて告げられるのです。」
17 ファラオはヨセフに話した。
「夢の中で、わたしがナイル川の岸に立っていると、 18 突然、よく肥えて、つややかな七頭の雌牛が川から上がって来て、葦辺で草を食べ始めた。 19 すると、その後から、今度は貧弱で、とても醜い、やせた七頭の雌牛が上って来た。 あれほどひどいのは、エジプトでは見たことがない。 20 そして、そのやせた、醜い雌牛が、初めのよく肥えた七頭の雌牛を食い尽くしてしまった。 21 ところが、確かに腹の中に入れたのに、腹の中に入れたことがまるで分からないほど、最初と同じように醜いままなのだ。 わたしは、そこで目が覚めた。
22 それからまた、夢の中でわたしは見たのだが、今度は、とてもよく実の入った七つの穂が一本の茎から出てきた。 23 すると、その後から、やせ細り、実が入っておらず、東風で干からびた七つの穂が生えてきた。 24 そして、実の入っていないその穂が、よく実った七つの穂をのみ込んでしまった。 わたしは魔術師たちに話したが、その意味を告げうる者は一人もいなかった。」
25 ヨセフはファラオに言った。
「ファラオの夢は、どちらも同じ意味でございます。 神がこれからなさろうとしていることを、ファラオにお告げになったのです。 26 七頭のよく育った雌牛は七年のことです。 七つのよく実った穂も七年のことです。 どちらの夢も同じ意味でございます。 27 その後から上がって来た七頭のやせた、醜い雌牛も七年のことです。 また、やせて、東風で干からびた七つの穂も同じで、これらは七年の飢饉のことです。 28 これは、先程ファラオに申上げましたように、神がこれからなさろうとしていることを、ファラオにお示しになったのです。 29 今から七年間、エジプトの国全体に大豊作が訪れます。 30 しかし、その後に七年間、飢饉が続き、エジプトの国に豊作があったことなど、すっかり忘れられてしまうでしょう。 飢饉が国を滅ぼしてしまうのです。 31 この国に豊作があったことは、その後に続く飢饉のために全く忘れられてしまうでしょう。 飢饉はそれほどひどいのです。 32 ファラオが夢を二度も重ねて見られたのは、神がこのことを既に決定しておられ、神が間もなく実行されようとしておられるからです。 33 このような次第ですから、ファラオは今すぐ、聡明で知恵のある人物をお見つけになって、エジプトの国を治めさせ、 34 また、国中に監督官をお立てになり、豊作の七年の間、エジプトの国の産物の五分の一を徴収なさいますように。 35 このようにして、これから訪れる豊年の間に食糧をできるかぎり集めさせ、町々の食糧となる穀物をファラオの管理の下に蓄え、保管させるのです。 36 そうすれば、その食糧がエジプトの国を襲う七年の飢饉に対する国の備蓄となり、飢饉によって国が滅びることはないでしょう。」
ヨセフの支配
37 ファラオと家来たちは皆、ヨセフの言葉に感心した。 38 ファラオは家来たちに、「このように神の霊が宿っている人はほかにあるだろうか」と言い、 39 ヨセフの方を向いてファラオは言った。
「神がそういうことをみな示されたからには、お前ほど聡明で知恵のある者は、ほかにはいないであろう。」 40 お前をわが宮廷の責任者とする。 わが国民は皆、お前の命に従うであろう。 ただ王位にあるということだけ、わたしはお前の上に立つ。」
41 ファラオはヨセフに向かって、「見よ、わたしは今、お前をエジプト全国の上に立てる」と言い、 42 印章のついた指輪を自分の指からはずしてヨセフの指にはめ、亜麻色の衣服を着せ、金の首飾りをヨセフの首にかけた。 43 ヨセフを王の第二の車に乗せると、人人はヨセフの前で、「アブレク(敬礼)と叫んだ。 ファラオはこうして、ヨセフをエジプト全国の上に立て、 44 ヨセフに言った。 「わたしはファラオである。 お前の許しなしには、このエジプト全国で、だれも、手足を上げてはならない。」
45 ファラオは更に、ヨセフにツッフェナト・パネアという名を与え、オンの祭司ポティ・フェラの娘アセナトを妻として与えた。 ヨセフの威光はこうして、エジプトの国にあまねく及んだ。
46 ヨセフは、エジプトの王ファラオの前に立ったとき三十歳であった。 ヨセフはファラオの前をたって、エジプト全国を巡回した。
47 豊作の七年の間、大地は豊かな実りに満ち溢れた。 48 ヨセフはその七年の間に、エジプトの国中の食糧をできるかぎり集め、その食糧を町々に蓄えさせた。 町の周囲の畑にできた食料を、その町の中に蓄えさせたのである。 49 ヨセフは、海辺の砂ほども多くの穀物を蓄え、ついに量りきれなくなったので、量るのをやめた。
50 飢饉の年がやって来る前に、ヨセフに二人の息子が生まれた。 この子供を産んだのは、オンの祭司ポティ・フェラの娘アセナトである。 51 ヨセフは長男をマナセ(忘れさせる)と名付けて言った。
「神が、わたしの苦労と父の家のことをすべて忘れさせてくださった。」
52 また、次男をエフライム(増やす)と名付けて言った。
「神は、悩みの地で、わたしに子孫を増やしてくださった。」
53 エジプトの国に七年間の大豊作が終わると、 54 ヨセフが言ったとおり、七年の飢饉が始まった。 その飢饉はすべての国々を襲ったが、エジプトには、全国どこにでも食物があった。 55 やがて、エジプト全国にも飢饉が広がり、民がファラオに食物を叫び求めた。 ファラオはすべてのエジプト人に、「ヨセフのもとに行って、ヨセフの言うとおりにせよ」と命じた。 56 飢饉は世界各地に及んだ。 ヨセフはすべての穀倉を開いてエジプト人に穀物を売ったが、エジプトの国の飢饉は激しくなっていた。 57 また、世界各地の人々も、穀物を買いにエジプトのヨセフのもとにやって来るようになった。 世界各地の飢饉も激しくなったからである。
兄たち、エジプトへ下る 42
1 ヤコブは、エジプトに穀物があると知って、息子たちに、「どうしてお前たちは顔を見合わせてばかりいるのだ」と言い、更に、 2 「聞くところでは、エジプトには穀物があるというではないか。 エジプトに下って行って穀物を買ってきなさい。 そうすれば、我々は死なずに生き延びることができるではないか」と言った。 3 そこでヨセフの十人の兄たちは、エジプトから穀物を買うために下って行った。 4 ヤコブはヨセフの弟ベニヤミンを兄たちに同行させなかった。 何か不幸なことが彼の身に起こるといけないと思ったからであった。 5 イスラエルの息子たちは、他の人々に混じって穀物を買いに出かけた。 カナン地方にも飢饉が襲っていたからである。
6 ところで、ヨセフはエジプトの司政者として、国民に穀物を販売する監督をしていた。 ヨセフの兄たちは来て、地面にひれ伏し、ヨセフを拝した。 7 ヨセフは一目で兄たちだと気づいたが、そしらぬ振りをして厳しい口調で、「お前たちは、どこからやって来たのか」と問いかけた。
彼らは答えた。
「食料を買うために、カナン地方からやって参りました。」
8 ヨセフは兄たちだと気づいていたが、兄たちはヨセフとは気づかなかった。 9 ヨセフは、そのとき、かつて兄たちについて見た夢を思い起こした。
ヨセフは彼らに言った。
「お前たちは回し者だ。 この国の手薄な所を探りに来たにちがいない。」
10 彼らは答えた。
「いいえ、御主君様。 僕どもは食糧を買いに来ただけでございます。 11 わたしどもは皆、ある男の息子で、正直な人間でございます。 僕どもは決して回し者などではありません。
12 しかしヨセフが、「いや、お前たちはこの国の手薄な所を探りに来たにちがいない」と言うと、 13 彼らは答えた。
「僕どもは、本当に十二人兄弟で、カナン地方に住むある男の息子たちでございます。 末の弟は、今、父のもとにおりますが、もう一人は失いました。」
14 すると、ヨセフは言った。
「お前たちは回し者だとわたしが言ったのは、そのことだ。 15 その点について、お前たちを試すことにする。 ファラオの命にかけて言う。 いちばん末の弟を、ここに来させよ。 それまでは、お前たちをここから出すわけにはいかぬ。 16 お前たちのうち、だれか一人を行かせて、弟を連れて来い。 それまでは、お前たちを監禁し、お前たちの言うことが本当かどうか試す。 もしそのとおりでなかったら、ファラオの命にかけて言う。 お前たちは間違いなく回し者だ。」
17 ヨセフは、こうして彼らを三日間、牢獄に監禁しておいた。
18 三日目になって、ヨセフは彼らに言った。
「こうすれば、お前たちの命を助けてやろう。 わたしは神を畏れる者だ。 19 お前たちが本当に正直な人間だというのなら、兄弟のうち一人だけを牢獄に監禁するから、ほかの者は皆、飢えているお前たちの家族のために穀物を持って帰り、 20 末の弟をここへ連れて来い。 そうして、お前たちの言い分が確かめられたら、殺されはしない。」
彼らは同意して、 21 互いに言った。
「ああ、我々は弟のことで罰を受けているのだ。 弟が我々に助けを求めたとき、あれほどの苦しみを見ながら、耳を貸そうともしなかった。 それで、この苦しみが我々にふりかかった。」
22 すると、ルベンが答えた。
「あのときわたしは、『あの子に悪いことをするな』と言ったではないか。 お前たちは耳を貸そうともしなかった。 だから、あの子の血の報いを受けるのだ。」
23 彼らはヨセフが聞いているのを知らなかった。 ヨセフと兄弟たちの間に、通訳がいたからである。 24 ヨセフは彼らから遠ざかって泣いた。 それからまた戻って来て、話をしたうえでシメオンを選び出し、彼らの見ている前で縛り上げた。 25 ヨセフは人々に命じて、兄たちの袋に穀物を詰め、支払った銀をめいめいの袋に返し、道中の食糧を与えるように指示し、そのとおり実行された。
26 彼らは穀物をろばに積んでそこを立ち去った。 27 途中の宿で、一人がろばに餌をやろうとして、自分の袋を開けてみると、袋の口のところに自分の銀があるのを見つけ、 28 ほかの兄弟たちに言った。
「戻されているぞ、わたしの銀が。 ほら、わたしの袋の中に。」
みんなの者は驚き、互いに震えながら言った。
「これは一体、どういうことだ。 神が我々になさったことは。」
29 一行はカナン地方にいる父ヤコブのところへ帰って来て、自分たちの身に起こったことをすべて報告した。
30 「あの国の主君である人が、我々を厳しい口調で問い詰めて、この国を探りに来た回し者にちがいないと言うのです。 31 もちろん、我々は正直な人間で、決して回し者などではないと答えました。 32 我々が十二人の兄弟で、一人の父の息子であり、一人は失いましたが、末の弟は今、カナン地方に住む父のもとにいますと言ったところ、 33 あの国の主君である人が言いました。 『では、お前たちが本当に正直な人間かどうかを、こうして確かめることにする。 お前たち兄弟のうち、一人だけ残し、飢えているお前たちの家族のため、穀物を持ち帰るがいい。 34 ただし、末の弟を必ずここへ連れて来るのだ。 そうすれば、お前たちが回し者ではなく、正直な人間であることが分かるから、お前たちに兄弟を返し、自由にこの国に出入りできるようにしてやろう。』」
35 それから、彼らが袋を開けてみると、めいめいの袋の中にもそれぞれ自分の銀の包みが入っていた。 彼らも父も、銀の包みを見て恐ろしくなった。 36 父ヤコブは息子たちに言った。
「お前たちは、わたしから次々と子供を奪ってしまった。 ヨセフを失い、シメオンも失った。 その上ベニヤミンまでも取り上げるのか。 みんなわたしを苦しめることばかりだ。
37 ルベンは父に言った。
「もしも、お父さんのところにベニヤミンを連れ帰らないようなことがあれば、わたしの二人の息子を殺してもかまいません。 どうか、彼をわたしに任せてください。 わたしが、必ずお父さんのところに連れ帰りますから。」
38 しかし、ヤコブは言った。
「いや、この子だけは、お前たちと一緒に行かせるわけにはいかぬ。 この子の兄は死んでしまい、残っているのは、この子だけではないか。 お前たちの旅の途中で、何か不幸なことがこの子の身に起こりでもしたら、お前たちは、この白髪の父を、悲嘆のうちに陰府に下らせることになるのだ。」
再びエジプトへ 43
1 この地方の飢饉はひどくなる一方であった。
2 エジプトから持ち帰った穀物を食べ尽くすと、父は息子たちに言った。
もう一度行って、我々の食糧を少し買って来なさい。」
3 しかし、ユダは答えた。
「あの人は、『弟が一緒でないかぎり、わたしの顔を見ることは許さぬ』と、厳しく我々に言い渡したのです。 4 もし弟を一緒に行かせてくださるなら、我々は下って行って、あなたのために食糧を買って参ります。 5 しかし、一緒に行かせてくださらないのなら、行くわけにはいきません。 『弟が一緒でないかぎり、わたしの顔を見ることは許さぬ』と、あの人が我々に言ったのですから。」
6 「なぜお前たちは、その人にもう一人弟がいるなどと言って、わたしを苦しめるようなことをしたのか」とイスラエルが言うと、 7 彼らは答えた。
「あの人が、我々のことや家族のことについて、『お前たちの父親は、まだ生きているのか』とか、『お前たちには、まだほかに弟がいるのか』などと、しきりに尋ねるものですから、尋ねられるままに答えただけです。 まさか、『弟を連れて来い』などと言われようとは思いも寄りませんでしたから。」
8 ユダは、父イスラエルに言った。
「あの子をぜひわたしと一緒に行かせてください。 それなら、すぐにでも行って参ります。 そうすれば、我々も、あなたも、子供たちも死なずに生き延びることができます。 9 あの子のことはわたしが保障します。 その責任をわたしに負わせてください。 もしも、あの子をお父さんのもとに連れ帰らず、無事な姿をお目にかけられないようなことにでもなれば、わたしがあなたに対して生涯その罪を負い続けます。 10 こんなにためらっていなければ、今ごろはもう二度も行って来たはずです。」
11 すると、父イスラエルは息子たちに言った。
「どうしてもそうしなければならないのなら、こうしなさい。 この土地の名産の品を袋に入れて、その人への贈り物として持って行くのだ。 乳香と蜜を少し、樹脂と没薬、ピスタチオやアーモンドの実。 12 それから、銀を二倍用意して行きなさい。 袋の口に戻されていた銀も持って行ってお返しするのだ。 たぶん何かの間違いだったのだろうから。 13 では、弟を連れて、早速その人のところへ戻りなさい。 14 どうか、全能の神がその人の前でお前たちに憐れみを施し、もう一人の兄弟と、このベニヤミンを返してくださいますように。 このわたしがどうしても子供を失わねばならないのなら、失ってもよい。」
15 息子たちは贈り物と二倍の銀を用意すると、ベニヤミンを連れて、早速エジプトへ下って行った。
さて、一行がヨセフの前に進み出ると、 16 ヨセフはベニヤミンが一緒なのを見て、自分の家を任せている執事に言った。
「この人たちを家へお連れしなさい。 それから、家畜を屠って料理を調えなさい。 昼の食事をこの人たちと一緒にするから。」
17 執事はヨセフに言われたとおりにし、一同をヨセフの屋敷へ連れて行った。 18 一同はヨセフの屋敷へ連れて来られたので、恐ろしくなって、「これはきっと、前に来たとき我々の袋に戻されていたあの銀のせいだ。 それで、ここに連れ込まれようとしているのだ。 今に、ろばもろとも捕らえられ、ひどい目に遭い、奴隷にされてしまうにちがいない」と思った。 19 彼らは屋敷の入り口のところでヨセフの執事の前に進み出て、話しかけて、 20 言った。
「ああ、御主人様。 実は、わたしどもは前に一度、食糧を買うためにここへ来たことがございます。 21 ところが、帰りに宿で袋を開けてみると、一人一人の袋の口のところに自分の銀が入っておりました。 しかも、銀の重さは元のままでした。 それで、それをお返ししなければ、と持って参りました。 22 もちろん、食糧を買うための銀は、別に用意してきております。 一体誰がわたしどもの袋に銀を入れたのか分かりません。」
23 執事は、「御安心なさい。 心配することはありません。 きっと、あなたたちの神、あなたたちの父の神が、その宝を袋に入れてくださったのでしょう。 あなたたちの銀は、このわたしが、このわたしが確かに受け取ったのですから」と答え、シメオンを兄弟たちのところへ連れて来た。 24 執事は一同をヨセフの屋敷に入れ、水を与えて足を洗わせ、ろばにも餌を与えた。 25 彼らは贈り物を調えて、昼にヨセフが帰宅するのを待った。 一緒に食事をすることになっていると聞いたからである。
26 ヨセフが帰宅すると、一同は屋敷に持って来た贈り物を差し出して、地にひれ伏してヨセフを拝した。
27 ヨセフは一同の安否を尋ねた後、言った。
「前に話をしていた、年をとった父上は元気か。 まだ生きておられるか。」
28 「あなたさまの僕である父は元気で、まだ生きております。と彼らは答え、ひざまずいて、ヨセフを拝した。
29 ヨセフは同じ母から生まれた弟ベニヤミンをじっと見つめて、「前に話していた末の弟はこれか」と尋ね、「わたしの子よ。 神の恵みがお前にあるように」と言うと、 30 ヨセフは急いで席を外した。 弟懐かしさに、胸が熱くなり、涙がこぼれそうになったからである。 ヨセフは奥の部屋に入ると泣いた。 31 やがて、顔を洗って出て来ると、ヨセフは平静を装い、「さあ、食事を出しなさい」と言いつけた。 32 食事は、ヨセフにはヨセフの、兄弟たちには兄弟たちの、相伴するエジプト人にはエジプト人のものと、別々に用意された。 当時、エジプト人は、ヘブライ人と共に食事をすることはできなかったからである。 それはエジプト人のいとうことであった。 33 兄弟たちは、いちばん上の兄から末の弟まで、ヨセフに向かって年齢順に座らされたので、驚いて互いに顔を見合わせた。 34 そして、料理がヨセフの前からみんなのところへ配られたが、ベニヤミンの分はほかのだれの分より五倍も多かった。 一同はぶどう酒を飲み、ヨセフと共に酒宴を楽しんだ。
銀の杯 44
1 ヨセフは執事に命じた。
「あの人たちの袋を、運べるかぎり多くの食糧でいっぱいにし、めいめいの銀をそ
れぞれの袋の口のところへ入れておけ。 2 それから、わたしの杯、あの銀の杯を、いちばん年下の者の袋の口に、穀物の代金の銀と一緒に入れておきなさい。」
執事はヨセフが命じたとおりにした。
3 次の朝、辺りが明るくなったころ、一行は見送りを受け、ろばと共に出発した。 4 ところが、町を出て、まだ遠くに行かないうちに、ヨセフは執事に命じた。
「すぐに、あの人たちを追いかけ、追いついたら彼らに言いなさい。 『どうして、お前たちは悪をもって善に報いるのだ。 5 あの銀の杯は、わたしの主人が飲むときや占いのときに、お使いになるものではないか。 よくもこんな悪いことができたものだ。』」
6 執事は彼らに追いつくと、そのとおりに言った。 7 すると、彼らは言った。
「御主人様、どうしてそのようなことをおっしゃるのですか。 僕どもがそんなことをするなどとは、とんでもないことです。 8 袋の口で見つけた銀でさえ、わたしどもはカナンの地から持ち帰って、御主人様にお返ししたではありませんか。 そのわたしどもがどうして、あなたの御主君のお屋敷から銀や金を盗んだりするでしょうか。 9 僕どもの中のだれからでも杯が見つかれば、その者は死罪に、ほかのわたしどもも皆、御主人様の奴隷になります。」 10 すると、執事は言った。
「今度もお前たちが言うとおりならよいが。 だれであっても、杯が見つかれば、その者はわたしの奴隷にならねばならない。 ほかの者には罪は無い。」
11 彼らは急いで自分の袋を地面に降ろし、めいめいで袋を開けた。 12 執事が年上の者から念入りに調べ始め、いちばん最後に年下の者になったとき、ベニヤミンの袋の中から杯が見つかった。 13 彼らは衣を引き裂き、めいめい自分のろばに荷を積むと、町へ引き返した。
14 ユダと兄弟たちがヨセフの屋敷に入って行くと、ヨセフはまだそこにいた。 一同は彼の前で地にひれ伏した。 15 「お前たちのしたこの仕業は何事か。 わたしのような者は占い当てることを知らないのか」とヨセフが言うと、 16 ユダが答えた。
「御主君に何と申し開きできましょう。 今更どう言えば、わたしどもの身の証を立てることができましょう。 神が僕どもの罪を暴かれたのです。 この上は、わたしどもも、杯が見つかった者と共に、御主君の奴隷になります。」
17 ヨセフは言った。
「そんなことは全く考えていない。 ただ、杯を見つけられた者だけが、わたしの奴隷になればよい。 ほかのお前たちは皆、安心して父親のもとへ帰るがよい。」
ユダの嘆願
18 ユダはヨセフの前に進み出て言った。
「ああ、御主君様。 何とぞお怒りにならず、僕の申し上げますことに耳を傾けてください。 あなたはファラオに等しいお方でいらっしゃいますから。
19 御主君は僕どもに向かって、『父や兄弟がいるのか』とお尋ねになりましたが、 20 そのとき、御主君に、『年をとった父と、それに父の年寄り子である末の弟がおります。 その兄は亡くなり、同じ母の子で残っているのはその子だけですから、父は彼をかわいがっております』と申上げました。 21 すると、あなたさまは、『その子をここへ連れて来い。 自分の目で確かめることにする』と僕どもにお命じになりました。 22 わたしどもは、御主君に、『あの子は、父親のもとから離れるわけにはまいりません。 あの子が父親のもとを離れれば、父は死んでしまいます』と申しましたが、 23 あなたさまは、『その末の弟が一緒に来なければ、再びわたしの顔を見ることは許さぬ』と僕どもにおっしゃいました。 24 わたしどもは、あなたさまの僕である父のところへ帰り、御主君のお言葉を伝えました。 25 そして父が、「もう一度行って、我々の食糧を少し買って来い」と申しました折にも、 26 『行くことはできません。 もし、末の弟が一緒なら、行って参ります。 末の弟が一緒でない限り、あの方の顔を見ることはできないのです』と答えました。 27 すると、あなたさまの僕である父は、『お前たちも知っているように、わたしの妻は二人の息子を産んだ。 28 ところが、そのうちの一人はわたしのところから出て行ったきりだ。 きっとかみ裂かれてしまったと思うが、それ以来、会っていない。 29 それなのに、お前たちはこの子までも、わたしから取り上げようとする。 もしも、何か不幸なことがこの子の身に起こりでもしたら、お前たちはこの白髪の父を、苦しめて陰府に下らせることになるのだ』と申しました。 30 今わたしが、この子を一緒に連れずに、あなたさまの僕である父のところへ帰れば、父の魂はこの子の魂と堅く結ばれていますから、 31 この子がいないことを知って、父は死んでしまうでしょう。 そして、僕どもは白髪の父を、悲嘆のうちに陰府に下らせることになるのです。
32 実は、この僕が父にこの子の安全を保障して、『もしも、この子をあなたのもとに連れ帰らないようなことがあれば、わたしが父に対して生涯その罪を負い続けます』と言ったのです。 33 何とぞ、この子の代わりに、この僕を御主君の奴隷としてここに残し、この子はほかの兄弟たちと一緒に帰らせてください。 34 この子を一緒に連れずに、どうしてわたしは父のもとへ帰ることができましょう。 父に襲いかかる苦悶を見るに忍びません。」
ヨセフ、身を明かす 45
1 ヨセフは、そばで仕えている者の前で、もはや平静を装っていることができなくなり、「みんな、ここから出て行ったくれ」と叫んだ。 だれもそばにいなくなってから、ヨセフは兄弟たちに自分の身を明かした。 2 ヨセフは、声をあげて泣いたので、エジプト人はそれを聞き、ファラオの宮廷にも伝わった。
3 ヨセフは、兄弟たちに言った。
「わたしはヨセフです。 お父さんはまだ生きておられますか。」
兄弟たちはヨセフの前で驚きのあまり、答えることができなかった。
4 ヨセフは兄弟たちに言った。
「どうか、もっと近寄ってください。」
兄弟たちがそばに近づくと、ヨセフはまた言った。
「わたしはあなたたちがエジプトに売った弟のヨセフです。 5 しかし、今は、わたしをここへ売ったことを悔やんだり、責め合ったりする必要はありません。 命を救うために、神がわたしをあなたたちより先にお遣わしになったのです。 6 この二年の間、世界中に飢饉が襲っていますが、まだこれから五年間は、耕すこともなく、収穫もないでしょう。 7 神がわたしをあなたたちより先にお遣わしになったのは、この国にあなたたちの残りの者を与え、あなたたちを生き永らえさせて、大いなる救いに至らせるためです。 8 わたしをここへ遣わしたのは、あなたたちではなく、神です。 神がわたしをファラオの顧問、宮廷全体の主、エジプト全国を治める者としてくださったのです。
9 急いで父上のもとへ帰って、伝えてください。 『息子のヨセフがこう言っています。 神が、わたしを全エジプトの主としてくださいました。 ためらわずに、わたしのところへおいでください。 10 そして、ゴシェンの地域に住んでください。 そうすればあなたも、息子も孫も、羊や牛の群れも、そのほかのすべてのものも、わたしの近くで暮らすことができます。 11 そこでのお世話は、わたしがお引き受けいたします。 まだ五年間は飢饉が続くのですから、父上も家族も、そのほかすべてのものも、困ることのないようになさらなければいけません。』 12 さあ、お兄さんたちも、弟のベニヤミンも、自分の目でみてください。 ほかならぬわたしがあなたたちに言っているのです。 13 エジプトでわたしが受けているすべての栄誉と、あなたたちが見たすべてのことを父上に話してください。 そして、急いで父上をここへ連れて来てください。」
14 ヨセフは、弟ベニヤミンの首を抱いて泣いた。 15 ヨセフは兄弟たち皆に口づけし、彼らを抱いて泣いた。 その後、兄弟たちはヨセフと語り合った。
16 ヨセフの兄弟たちがやって来たという知らせがファラオの宮廷に伝わると、ファラオも家来たちも喜んだ。 17 ファラオはヨセフに言った。
「兄弟たちに、こうするように言いなさい。 『家畜に荷を積んでカナンの地に行き、 18 父上と家族をここへ連れて来なさい。 わたしは、エジプトの国の最良のものを与えよう。 あなたたちはこの国の最上の産物を食べるがよい。』 19 また、こうするように命じなさい。 『エジプトの国から、あなたたちの子供や妻たちを乗せる馬車を引いて行き、父上もそれに乗せて来るがよい。 20 家財道具などには未練を残さないように。 エジプトの国中で最良のものが、あなたたちのものになるのだから。』」
21 イスラエルの息子たちはそのとおりにした。 ヨセフは、ファラオの命令に従って、彼らに馬車を与え、また道中の食糧を与えた。 22 ヨセフは更に、全員にそれぞれ晴れ着を与えたが、特にベニヤミンには銀三百枚と晴れ着五枚を与えた。 23 父にも、エジプトの最良のものを積んだろば十頭と、穀物やパン、それに父の道中に必要な食糧を積んだ雌ろば十頭を贈った。 24 いよいよ兄弟たちを送り出すとき、出発にあたってヨセフは、「途中で、争わないでください」と言った。 25 兄弟たちはエジプトからカナン地方へ上って行き、父ヤコブのもとへ帰ると、 26 直ちに報復した。 「ヨセフがまだ生きています。 しかも、エジプトの全国を治める者になっています。」
父は気が遠くなった。 彼らの言うことが信じられなかったのである。 27 彼らはヨセフが話したとおりのことを、残らず父に語り、ヨセフが父を乗せるために遣わした馬車を見せた。 父ヤコブは元気を取り戻した。
28 イスラエルは言った。
「よかった。 息子ヨセフがまだ生きていたとは。 わたしは行こう。 死ぬ前に、どうしても会いたい。」
ヤコブのエジプト下り 46
1 イスラエルは、一家を挙げて旅立った。 そして、ベエル・シェバに着くと、父イサクの神にいけにえをささげた。 2 その夜、幻の中で神がイスラエルに、「ヤコブ、ヤコブ」と呼びかけた。 彼が、「はい」と答えると、 3 神は言われた。
「わたしは神、あなたの父の神である。 エジプトへ下ることを恐れてはならない。 わたしはあなたをそこで大いなる国民にする。 4 わたしがあなたと共にエジプトへ下り、わたしがあなたを必ず連れ戻す。 ヨセフがあなたのまぶたを閉じてくれるであろう。」
5 ヤコブはベエル・シャバを出発した。 イスラエルの息子たちは、ファラオが遣わした馬車に父ヤコブと子供や妻たちを乗せた。 6 ヤコブとその子孫は皆、カナン地方で得た家畜や財産を携えてエジプトへ向かった。 7 こうしてヤコブは、息子や孫、娘や孫娘など、子孫を皆連れてエジプトへ行った。
8 エジプトへ行ったイスラエルの人々、すなわちヤコブとその子らの名前は次ぎのとおりである。 ヤコブの長男ルベン。 9 ルベンの息子のハノク、パル、ヘツロン、カルミ。 10 シメオンの息子のエムエル、ヤミン、オハド、ヤキン、ツォハル、およびカナンの女による息子シャウル。 11 レビの息子のゲルション、ケハト、メラリ。 12 ユダの息子のエル、オナン、シェラ、ペレツ、ゼラ。 ただし、エルとオナンはカナンの土地で死んだ。 ペレツの息子のヘツロン、ハルム。 13 イサカルの息子のトラ、プウ、ヨブ、シムロン。 14 ゼブルンの息子のセレド、エロン、ヤフレエル。 15 これらは、レアがパダン・アラムでヤコブとの間に産んだ子らである。 ヤコブの娘ディナも含め、男女の総数は三十三名である。
16 ガドの息子のツィフヨン、ハギ、シュニ、エツボン、エリ、アロディ、アルエリ。 17 アシェルの息子のイムナ、イシュワ、イシュビ、ベリア、及び妹セラ。 ベリアの息子はヘベル、マルキエル。 18 これらは、ラバンが娘レアに与えたジルバの子らである。 ジルバがヤコブとの間に産んだのは十六名である。
19 ヤコブの妻ラケルの息子のヨセフ、ベニアミン。 20 ヨセフには、エジプトの国で息子が生まれた。 それは、オンの祭司ポティ・フェラの娘アセナトが彼との間に産んだマナセとエフライムである。 21 ベニヤミンの息子のベラ、ベケル、アシュベル、ゲラ、ナアマン、エヒ、ロシュ、ムビム、フピム、アルド。 22 これらは、ヤコブとの間に生まれたラケルの子らで、その総数は十四名である。
23 ダンの息子のフシム。 24 ナフタリの息子のヤフツェエル、グニ、イエツェル、シレム。 25 これらは、ラバンが娘ラケルに与えたビルハの子らである。 ビルハがヤコブとの間に産んだ者の総数は七名である。
26 ヤコブの腰から出た者で、ヤコブと共にエジプトへ行った者は、ヤコブの息子の妻たちを除けば、総数六十六名である。 27 エジプトで生まれたヨセフの息子は二人である。 従って、エジプトへ行ったヤコブの家族は総数七十名であった。
ゴシェンでの再会
28 ヤコブは、ヨセフをゴシェンに連れて来るために、ユダを一足先にヨセフのとことへ遣わした。 そして一行はゴシェンの地に到着した。 29 ヨセフは車を用意させると、父イスラエルに会いにゴシェンへやって来た。 ヨセフは父を見るやいなや、父の首に抱きつき、その首にすがったまま、しばらく泣き続けた。 30 イスラエルはヨセフに言った。
「わたしはもう死んでもよい。 お前がまだ生きていて、お前の顔を見ることができたのだから。」
31 ヨセフは、兄弟や父の家族の者たちに言った。
「わたしはファラオのところへ報告のため参上し、『カナン地方にいたわたしの兄弟と父の家族を者たちがわたしのところに参りました。 32 この人たちは羊飼いで、家畜の群れを飼っていたのですが、羊や牛をはじめ、すべての財産を携えてやって来ました』と申します。 33 ですから、ファラオがあなたたちをお召しになって、『仕事は何か』と言われたら、 34 『あなたの僕であるわたしどもは、先祖代々、幼い時から今日まで家畜の群れを飼う者でございます』と答えてください。 そうすれば、あなたちはゴシェンの地域に住むことができるでしょう。」
羊飼いはすべて、エジプト人のいとうものであったのである。
ファラオとの会見 47
1 ヨセフはファラオのところへ行き、「わたしの父と兄弟たちが、羊や牛をはじめ、すべての財産を携えて、カナン地方からやって来て、今、ゴシェンの地におります」と報告した。 2 そのときヨセフは、兄弟の中から五人を選んで、ファラオの前に連れて行った。 3 ファラオはヨセフの兄弟たちに言った。
「お前たちの仕事は何か。」
兄弟たちが、「あなたの僕であるわたしどもは、先祖代々、羊飼いでございます」と答え、 4 更に続けてファラオに言った。
「わたしどもはこの国に寄留させていただきたいと思って、参りました。 カナン地方は飢饉がひどく、僕たちの羊を飼うための牧草がありません。 僕たちをゴシェンの地に住まわせてください。」
5 ファラオはヨセフに向かって言った。
「父上と兄弟たちが、お前のところにやって来たのだ。 6 エジプトの国のことはお前に任せてあるのだから、最も良い土地に父上と兄弟たちを住まわせるがよい。 ゴシェンの地に住まわせるのもよかろう。 もし、一族の中に有能な者がいるなら、わたしの家畜の監督をさせるがよい。」
7 それから、ヨセフは父ヤコブを連れて来て、ファラオの前に立たせた。 ヤコブはファラオに祝福の言葉を述べた。 8 ファラオが、「あなたは何歳におなりですか」とヤコブに語りかけると、 9 ヤコブはファラオに答えた。
「わたしの旅路の年月は百三十年です。 わたしの生涯の年月は短く、苦しみ多く、わたしの先祖たちの生涯や旅路の年月には及びません。」
10 ヤコブは、別れの挨拶をして、ファラオの前から退出した。
11 ヨセフはファラオが命じたように、父と兄弟たちの住まいを定め、エジプトの国に所有地を与えた。 そこは、ラメセス地方の最も良い土地であった。 12 ヨセフはまた、父と兄弟たちと父の家族の者すべてを養い、扶養すべき者の数に従って食糧を与えた。
ヨセフの政策
13 飢饉が極めて激しく、世界中に食糧がなくなった。 エジプトの国でも、カナン地方でも、人々は飢饉のために苦しみあえいだ。 14 ヨセフは、エジプトの国とカナン地方の人々が穀物の代金として支払った銀をすべて集め、それをファラオの宮廷に納めた。 15 エジプトの国にもカナン地方にも、銀が尽き果てると、エジプト人は皆、ヨセフのところへやって来て、「食べる物をください。 あなたさまは、わたしどもを見殺しになさるおつもりですか。 銀はなくなってしまいました」と言った。
16 ヨセフは答えた。 「家畜を連れて来なさい。 もし銀がなくなったのなら、家畜と引き換えに与えよう。」
17 人々が家畜をヨセフのところに連れて来ると、ヨセフは、馬や、羊や牛の群れや、ろばと引き換えに食糧を与えた。 ヨセフはこうして、その年、すべての家畜と引き換えに人々に食糧を分け与えた。 18 その年も終わり、次の年になると、人々はまたヨセフのところに来て、言った。
「御主君には、何もかも隠さずに申し上げます。 銀はすっかりなくなり、家畜の群れも御主君のものとなって、御覧のように残っているのは、わたしどもの体と農地だけです。 19 どうしてあなたさまの前で、わたしどもと農地が滅んでしまってよいのでしょうか。 食糧と引き換えに、わたしどもと土地を買い上げてください。 わたしどもは農地とともに、ファラオの奴隷になります。 種をお与えください。 そうすれば、わたしどもは死なずに生きることができ、農地も荒れ果てないでしょう。」
20 ヨセフは、エジプト中のすべての農地をファラオのために買い上げた。 飢饉が激しくなったので、エジプト人は皆自分の畑を売ったからである。 土地はこうして、ファラオのものとなった。 21 また民については、エジプト領の端から端まで、ヨセフが彼らを奴隷にした。 22 ただし、祭司の農地だけは買い上げなかった。 祭司にはファラオからの給与があって、ファラオが与える給与で生活していたので、農地を売らなかったからである。
23 ヨセフは民に言った。
「よいか、お前たちは今日、農地とともにファラオに買い取られたのだ。 さあ、ここに種があるから、畑に蒔きなさい。 24 収穫の時には、五分の一をファラオに納め、五分の四はお前たちのものとするがよい。 それを畑に蒔く種にしたり、お前たちの家族の者の食糧とし、子供たちの食糧としなさい。」
25 彼らは言った。
「あなたさまはわたしどもの命の恩人です。 御主君の御好意によって、わたしどもはファラオの奴隷にさせていただきます。」
26 ヨセフはこのように、収穫の五分の一をファラオに納めることを、エジプトの農業の定めとした。 それは今日まで続いている。 ただし、祭司の農地だけはファラオのものにならなかった。
ヤコブの遺言
27 イスラエルは、エジプトの国、ゴシェンの地域に住み、そこに土地を得て、子を産み、大いに数を増した。 28 ヤコブは、エジプトの国で十七年生きた。 ヤコブの生涯は百四十七年であった。
29 イスラエルは死ぬ日が近づいたとき、息子ヨセフを呼び寄せて言った。
「もし、お前がわたしの願いを聞いてくれるなら、お前の手をわたしの腿の間に入れ、わたしのために慈しみとまことをもって実行すると、誓ってほしい。 どうか、わたしをこのエジプトには葬らないでくれ。 30 わたしが先祖たちと共に眠りについたなら、わたしをエジプトから運び出して、先祖たちの墓に葬ってほしい。」
ヨセフが、「必ず、おっしゃるとおりにいたします」と答えると、 31 「では、誓ってくれ」と言ったので、ヨセフは誓った。 イスラエルは、寝台の枕もとで感謝を表した。
ヤコブ、ヨセフの子らを祝福する 48
1 これらのことの後で、ヨセフに、「お父上が御病気です」との知らせが入ったので、ヨセフは二人の息子マナセとエフライムを連れて行った。 2 ある人がヤコブに、「御子息のヨセフさまが、ただいまお見えになりました」と知らせると、イスラエルは力を奮い起こして、寝台の上に座った。 3 ヤコブはヨセフに言った。
「全能の神がカナン地方のルズでわたしに現れて、わたしを祝福してくださったとき、 4 こう言われた。
『あなたの子孫を?栄させ、数を増やし
あなたの諸国民の群れとしよう。
この土地をあなたに続く子孫に
永遠の所有地として与えよう。』
5 今、わたしがエジプトのお前のところに来る前に、エジプトに国で生まれたお前の二人の息子をわたしの子供にしたい。 エフライムとマナセは、ルベンやシメオンと同じように、わたしの子となるが、 6 その後に生まれる者はお前のものとしてよい。 しかし、彼らの嗣業の土地は兄たちの名で呼ばれるであろう。
7 わたしはパダン地方から帰る途中、ラケルに死なれてしまった。 あれはカナン地方で、エフラトまで行くには、まだかなりの道のりがある途中でのことだった。 わたしはラケルを、エフラト、つまり今のベツレヘムへ向かう道のほとりに葬った。」
8 イスラエルは、ヨセフの息子たちを見ながら、「これは誰か」と尋ねた。 9 ヨセフが父に、「神が、ここで授けてくださったわたしの息子です」と答えると、父は、「ここへ連れて来なさい。 彼らを祝福しよう」と言った。 10 イスラエルの目は老齢のためかすんでよく見えなかったので、ヨセフが二人の息子を父のもとに近寄らせると、父は彼らに口づけをして抱き締めた。
11 イスラエルはヨセフに言った。
「お前の顔さえ見ることができようとは思わなかったのに、なんと、神はお前の子供たちをも見せてくださった。」
12 ヨセフは彼らを父の膝から離し、地にひれ伏して拝した。 13 ヨセフは二人の息子のうち、エフライムを自分の右手でイスラエルの左手に向かわせ、マナセを自分の左手でイスラエルの右手に向かわせ、二人を近寄らせた。 14 イスラエルは右手を伸ばして、弟であるエフライムの頭の上に置き、左手をマナセの頭の上に置いた。 つまり、マナセが長男であるのに、彼は両手を交差して置いたのである。
15 そして、ヨセフを祝福して言った.
「わたしの先祖アブラハムとイサクが
その御前に歩んだ神よ。
わたしの生涯を今日まで
導かれた牧者なる神よ。
16 わたしをあらゆる苦しみから
贖われた御使いよ。
どうか、この子供たちの上に
祝福をお与えください。
どうか、わたしの名と
わたしの先祖アブラハム、イサクの名が
彼らによって覚えられますように。
どうか、彼らがこの地上に
数多く増え続けますように。」
17 ヨセフは、父が右手をエフライムの頭の上に置いているのを見て、不満に思い、父の手を取ってエフライムの頭からマナセの頭に移そうとした。 18 ヨセフは父に言った。
「父上、そうではありません。 これが長男ですから、右手をこれの頭に上に置いてください。」
19 ところが、父はそれを拒んで言った。
「いや、分かっている。 わたしの子よ、わたしには分かっている。 この子も一つの民となり、大きくなるであろう。 しかし、弟の方が彼よりも大きくなり、その子孫は国々に満ちるものとなる。」
20 その日、父は彼らを祝福して言った。
「あなたによって
イスラエルは人を祝福して言うであろう。
『どうか、神があなたを
エフライムとマナセのように
してくださるように。』」
彼はこのように、エフライムをマナセの上に立てたのである。
21 イスラエルはヨセフに言った。
「間もなく、わたしは死ぬ。 だが、神がお前たちと共にいてくださり、きっとお前たちを先祖の国に導き帰らせてくださる。 22 わたしは、お前に兄弟たちよりも多く、わたしが剣と弓をもってアモリ人の手から取った一つの分け前(シェケム)を与えることにする。」
ヤコブの祝福 49
1 ヤコブは息子たちを呼び寄せて言った。
「集まりなさい。 わたしは後の日にお前たちに起こることを語っておきたい。
2 ヤコブの息子たちよ、集まって耳を傾けよ。
お前たちの父イスラエルに耳を傾けよ。
3 ルベンよ、お前はわたしの長子
わたしの勢い、命の力の初穂。
気位が高く、力も強い。
4 お前は水のように奔放で
長子の誉を失う。
お前は父の寝台に上り
それを汚した。
5 シメオンとレビは似た兄弟。
彼らの剣は暴力の道具。
6 わたしの魂よ、彼らの謀議に加わるな。
わたしの心よ、彼らの仲間に連なるな。
彼らは怒りのままに人を殺し
思うがままに雄牛の足の筋を切った。
7 呪われよ、彼らの怒りは激しく
憤りは甚だしいゆえに。
わたしは彼らをヤコブの間に分け
イスラエルの間に散らす。
8 ユダよ、あなたは兄弟たちにたたえられる。
あなたの手は敵の首を押さえ、
父の子たちはあなたを伏し拝む。
9 ユダは獅子の子。
わたしの子よ、あなたは獲物を取って上って来る。
彼は雄獅子のようにうずくまり
雌獅子のように身を伏せる。
誰がこれを起こすことができようか。
10 王笏はユダから離れず
統治の杖は足の間から離れない。
ついにシロが来て、諸国の民は彼に従う。
11 彼はろばをぶどうの木に
雌ろばの子を良いぶどうの木につなぐ。
彼は自分の衣をぶどう酒で
着物をぶどうの汁で洗う。
12 彼の目はぶどう酒によって輝き
歯は乳によって白くなる。
13 ゼブルンは海辺に住む。
そこは舟の出入りする港となり
その境はシドンに及ぶ。
14 イサカルは骨太のろば
二つの革袋の間に身を伏せる
15 彼にはその土地が快く
好ましい休息の場となった。
彼はそこで背をかがめて荷を担い
苦役の奴隷に身を落とす。
16 ダンは自分の民を裁く
イスラエルのほかの部族のように。
17 ダンは、道端の蛇
小道のほとりに潜む蝮。
馬のかかとをかむと
乗り手はあおむけに落ちる。
18 主よ、わたしはあなたの救いを待ち望む。
19 ガドは略奪者に襲われる。
しかし彼は、彼らのかかとを襲う。
20 アシェルには豊かな食物があり
王の食卓に美味を供える。
21 ナフタリは解き放たれた雌鹿
美しい小鹿を産む。
22 ヨセフは実を結ぶ若木
泉のほとりの実を結ぶ若木
その枝は石垣を越えて伸びる
23 弓を射る者たちは彼に敵意を抱き
矢を放ち、追いかけてくる。
24 しかし、彼の弓はたるむことなく
彼の腕と手は素早く動く。
ヤコブの勇者の御手により
それによって、イスラエルの石となり牧者となった。
25 どうか、あなたの父の神があなたを助け
全能者によってあなたは祝福を受けるように。
上は天の祝福
下は横たわる淵の祝福
乳房と母の胎の祝福をもって。
26 あなたの父の祝福は
永遠の山の祝福にまさり
永久の丘の賜物にまさる。
これらの祝福がヨセフの頭の上にあり
兄弟たちから選ばれた者の頭にあるように。
27 ベニヤミンはかみ裂く狼
朝には獲物に食らいつき
夕には奪ったものを分け合う。」
28 これらはすべて、イスラエルの部族で、その数は十二である。 これは彼らの父が語り、祝福した言葉である。 父は彼らを、おのおのにふさわしい祝福をもって祝福したのである。
ヤコブの死
29 ヤコブは息子たちに命じた。
「間もなくわたしは、先祖の列に加えられる。 わたしをヘト人エフロンの畑にある洞穴に、先祖たちと共に葬ってほしい。 30 それはカナン地方のマムレの前のマクベラの畑にある洞穴で、アブラハムがヘト人エフロンから買い取り、墓地として所有するようになった。
31 そこに、アブラハムと妻サラが葬られている。 そこに、イサクと妻リベカも葬られている。 そこに、わたしもレアを葬った。 32 あの畑とあそこにある洞穴は、ヘトの人たちから買い取ったものだ。」
33 ヤコブは、息子たちに命じ終えると、寝床の上に足をそろえ、息を引き取り、先祖の列に加えられた。
ヤコブの埋葬 50
1 ヨセフは父の顔に伏して泣き、口づけした。
2 ヨセフは自分の侍医たちに、父のなきがらに薬を塗り、防腐処置をするように命じたので、医者はイスラエルにその処置をした。 3 そのために四十日を費やした。 この処置をするにはそれだけの日数が必要であった。 エジプト人は七十日の間喪に服した。
4 喪が明けると、ヨセフはファラオの宮廷に願い出た。
「ぜひともよろしくファラオにお取り次ぎください。 5 実は、父がわたしに誓わせて、『わたしは間もなく死ぬ。 そのときは、カナンの土地に用意してある墓にわたしを葬ってくれ』と申しました。 ですから、どうか父を葬りに行かせてください。 わたしはまた帰って参ります。」
6 ファラオは答えた。
「父上が誓わせたとおりに、葬りに行って来るがよい。」
7 ヨセフは父を葬りに上って行った。 ヨセフと共に上って行ったのは、ファラオの宮廷の元老である重臣たちすべてとエジプトの国の長老たちすべて、 8 それにヨセフの家族全員と彼の兄弟たち、および父の一族であった。 ただ幼児と、羊と牛の群れはゴシェンの地域に残した。 9 また戦車も騎兵も共に上って行ったので、それはまことに盛大な行列となった。
10 一行はヨルダン川の東側にあるゴレン・アタドに着き、そこで非常に荘厳な葬儀を行った。 父の追悼の儀式は七日間にわたって行われた。 11 その土地に住んでいるカナン人たちは、ゴレン・アタドで行われた追悼の儀式を見て、「あれは、エジプト流の盛大な追悼の儀式だ」と言った。 それゆえ、その場所の名は、アベル・ミツライム(エジプト流の追悼の儀式)と呼ばれるようになった。 それは、ヨルダン川の東側にある。
12 それから、ヤコブの息子たちは父に命じられたとおりに行った。 13 すなわち、ヤコブの息子たちは、父のなきがらをカナンの土地に運び、マクベラの畑の洞穴に葬った。 それは、アブラハムがマムレの前にある畑とともにヘト人エフロンから買い取り、墓地として所有するようになったものである。
14 ヨセフは父を葬った後、兄弟たちをはじめ、父を葬るために一緒に上って来たすべての人々と共にエジプトに帰った。
赦しの再確認
15 ヨセフの兄弟たちは、父が死んでしまったので、ヨセフがことによると自分たちをまだ恨み、昔ヨセフにしたすべての悪に仕返しをするのではないかと思った。 16 そこで、人を介してヨセフに言った。
「お父さんは亡くなる前に、こう言っていました。
17 『お前たちはヨセフにこう言いなさい。 確かに、兄たちはお前に悪いことをしたが、どうか兄たちの咎と罪を赦してやってほしい。』お願いです。 どうか、あなたの父の神に仕える僕たちの咎を赦してください。」
これを聞いて、ヨセフは涙を流した。 18 やがて、兄たち自身もやって来て、ヨセフの前にひれ伏して、「このとおり、私どもはあなたの僕です」と言うと、 19 ヨセフは兄たちに言った。
「恐れることはありません。 わたしが神に代わることができましょうか。 20 あなたがたはわたしに悪をたくらみましたが、神はそれを善に変え、多くの民の命を救うために、今日のようにしてくださったのです。 21 どうか恐れないでください。 このわたしが、あなたたちとあなたたちの子供を養いましょう。」
ヨセフはこのように、兄たちを慰め、優しく語りかけた。
ヨセフの死
22 ヨセフは父の家族と共にエジプトに住み、百十歳まで生き、 23 エフライムの三代の子孫を見ることができた。 マナセの息子マキルの子供たちも生まれると、ヨセフの膝に抱かれた。
24 ヨセフは兄弟たちに言った。
「わたしは間もなく死にます。 しかし、神は必ずあなたちを顧みてくださり、この国からアブラハム、イサク、ヤコブに誓われた土地に導き上ってくださいます。」
25 それから、ヨセフはイスラエルの息子たちにこう言って誓わせた。
「神は、必ずあなたちを顧みてくださいます。 そのときには、わたしの骨をここから携えて上ってください。」
26 ヨセフはこうして、百十歳で死んだ。 人々はエジプトで彼のなきがらに薬を塗り、防腐処置をして、ひつぎに納めた。
(2) 創世記 井戸をめぐる争い 26-15 〜 ヨセフの死 50-26
2023年07月02日
(1) 創世記 天地の創造 1-1 から イサクのゲラル滞在 26-14 まで
創世記 天地の創造 1
1 初めに、神は天地を創造された。 2 地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、?~の靈が水の面を動いていた。 3 ?~は言われた。「光あれ。」こうして、光があった。 4 ?~は光を見て、良しとされた。?~は光と闇を分け、 5 光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第一の日である。6 ?~は言われた。「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。」 7 ?~は大空を造り、大空の下と大空の上に水を分けさせられた。そのようになった。 8 ?~は大空を天と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第二の日である。 9 ?~は言われた。「天の下の水は一つ所に集まれ。乾いた所が現れよ。」そのようになった。 10 神は乾いた所を地と呼び、水の集まった所を海と呼ばれた。神はこれを見て、良しとされた。 11 神は言われた。「地は草を芽生えさせよ。種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける果樹を、地に芽生えさせよ。」そのようになった。 12 地は草を芽生えさせ、それぞれの種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける木を芽生えさせた。?~はこれを見て、良しとされた。 13 夕べがあり、朝があった。第三の日である。 14 神は言われた。「天の大空に光る物があって、昼と夜を分け、季節のしるし、日や年のしるしとなれ。 15 天の大空に光る物があって、地を照らせ。」そのようになった。 16 ?~は二つの大きな光る物と星を造り、大きな方に昼を治めさせ、小さな方に夜を治めさせられた。 17 ?~はそれらを天の大空に置いて、地を照らさせ、 18 昼と夜を治めさせ、光と闇を分けさせられた。?~はこれを見て、良しとされた。 19 夕べがあり、朝があった。第四の日である。 20 ?~は言われた。「生き物が水の中に群がれ。鳥は地の上、天の大空の面を飛べ。」 21 ?~は水に群がるもの、すなわち大きな怪物、うごめく生き物をそれぞれに、また、翼ある鳥をそれぞれに創造された。?~はこれを見て、良しとされた。 22 ?~はそれらのものを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、海の水に満ちよ。鳥は地の上に増えよ。」 23 夕べがあり、朝があった。第五の日である。 24 ?~は言われた。「地は、それぞれの生き物を産み出せ。家畜、這うもの、地の獣をそれぞれに産み出せ。」そのようになった。 25 ?~はそれぞれの地の獣、それぞれの家畜、それぞれの土を這うものを造られた。?~はこれを見て、良しとされた。 26 ?~は言われた。「我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。そして海の魚、空の鳥、家畜、地の獣、地を這うものすべてを支配させよう。」 27 ?~は御自分にかたどって人を創造された。?~にかたどって創造された。男と女に創造された。28 ?~は彼らを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ。」 29 ?~は言われた。「見よ、全地に生える、種を持つ草と種を持つ実をつける木を、すべてあなたたちに与えよう。それがあなたたちの食べ物となる。 30 地の獣、空の鳥、地を這うものなど、すべて命あるものにはあらゆる青草をたべさせよう。」そのようになった。 31 ?~はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった。夕べがあり、朝があった。第六の日である。
2
1 天地万物は完成された。 2 第七の日に、?~は御自分の仕事を完成され、第七の日に、神は御自分の仕事を離れ、安息なさった。 3 この日に?~はすべての創造の仕事を離れ、安息なさったので、第七の日を?~は祝福し、聖別された。 4 これが天地創造の由来である。主なる?~が地と天を造られたとき、 5 地上には野の木も、野の草も生えていなかった。主なる?~が地上に雨をお送りにならなかったからである。また土を耕す人もいなかった。 6 しかし、水が地下から湧き出て、土の面をすべて潤した。 7 主なる?~は、土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった。 8 主なる?~は、東の方のエデンに園を設け、自ら形づくった人をそこに置かれた。 9 主なる?~は、見るからに好ましく、食べるに良いものをもたらすあらゆる木を地に生えいでさせ、また園の中央には、命の木と善悪の知識の木を生えいでさせられた。 10 エデンから一つの川が流れ出ていた。園を潤し、そこで分かれて、四つの川となっていた。 11 第一の川の名はピションで、金を産出するハビラ地方全域を巡っていた。 12 その金は良質であり、そこではまた、琥珀の類やラピス・ラズリも産出した。 13 第二の川の名はギホンで、クシュ地方全域を巡っていた。 14 第三の川の名はチグリスで、アシュルの東の方を流れており、第四の川の名はユーフラテスであった。 15 主なる?~は人を連れて来て、エデンの園に住まわせ、人がそこを耕し、守るようにされた。 16 主なる?~は人に命じて言われた。「園のすべての木から取って食べなさい。 17 ただし、善悪の知識の木からは、決して食べてはならない。食べると必ず死んでしまう。」 18 主なる?~は言われた。「人が一人でいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう。」 19 主なる?~は、野のあらゆる獣、空のあらゆる鳥を土で形づくり、人のところへ持って来て、人がそれぞれどう呼ぶか見ておられた。人が呼ぶと、それはすべて、生き物の名となった。 20 人はあらゆる家畜、空の鳥、野のあらゆる獣に名を付けたが、自分に合う助ける者は見つけることができなかった。 21 主なる?~はそこで、人を深い眠りに落とされた。人が眠り込むと、あばら骨の一部を抜き取り、その跡を肉でふさがれた。 22 そして、人から抜き取ったあばら骨で女を造り上げられた。主なる?~が彼女を人のところへ連れて来られると、 23 人は言った。「ついに、これこそわたしの骨の骨わたしの肉の肉。これこそ、女(イシャー)と呼ぼう まさに、男(イシュ)から取られたものだから。」 24 こういうわけで、男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる。 25 人と妻は二人とも裸であったが、恥ずかしがりはしなかった。
創世記 蛇の誘惑 3
1 主なる?~が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった。蛇は女に言った。「園のどの木からも食べてはいけない、などと神は言われたのか。」 2 女は蛇に答えた。「わたしたちは園の木の果実を食べてよいのです。 3 でも、園の中央に生えている木の果実だけは、食べてはいけない。触れてもいけない、死んではいけないから、と?~様はおっしゃいました。」 4 蛇は女に言った。「決して死ぬことはない。 5 それを食べると、目が開け、?~のように善悪を知るものとなることを?~はご存じなのだ。」 6 女が見ると、その木はいかにもおいしそうで、目を引き付け、賢くなるように唆していた。女は実を取って食べ、一緒にいた男にも渡したので、彼も食べた。 7 二人の目は開け、自分たちが裸であることを知り、二人はいちじくの葉をつづり合わせ、腰を覆うものとした。 8 その日、風の吹くころ、主なる?~が園の中を歩く音が聞こえてきた。アダムと女が、主なる?~の顔を避けて、園の木の間に隠れると、 9 主なる?~はアダムを呼ばれた。「どこにいるのか」 10 彼は答えた。「あなたの足音が園の中に聞こえたので、恐ろしくなり、隠れております。わたしは裸ですから。」 11 ?~は言われた。「お前が裸であることを誰が告げたのか。取って食べるなと命じた木から食べたのか。」 12 アダムは答えた。「あなたがわたしと共にいるようにしてくださった女が、木から取って与えたので、食べました。」 13 主なる?~は女に向かって言われた。「何ということをしたのか。」女は答えた。「蛇がだましたので、食べてしまいました。」 14 主なる?~は、蛇に向かって言われた。「このようなことをしたお前はあらゆる家畜、あらゆる野の獣の中で呪われるものとなった。お前は、生涯這いまわり、塵を食らう。 15 お前と女、お前の子孫と女の子孫の間にわたしは敵意を置く。彼はお前の頭を砕き お前は彼のかかとを砕く。」 16 ?~は女に向かって言われた。「お前のはらみの苦しみを大きなものにする。お前は、苦しんで子を産む。お前は男を求め 彼はお前を支配する。」 17 ?~はアダムに向かって言われた。「お前は女の声に従い 取って食べるなと命じた木から食べた。お前のゆえに、土は呪われるものとなった。お前は、生涯食べ物を得ようと苦しむ。 18 お前に対して 土は茨とあざみを生えいでさせる 野の草を食べようとするお前に。 19 お前は顔に汗を流してパンを得る 土に返るときまで。お前がそこから取られた土に。塵にすぎないお前は塵に返る。」 20 アダムは女をエバ(命)と名付けた。彼女がすべて命あるものの母となったからである。 21 主なる?~は、アダムと女に皮の衣を作って着せられた。 22 主なる?~は言われた。「人は我々の一人のように、善悪を知る者となった。今は、手を伸ばして命の木からも取って食べ、永遠に生きる者となるおそれがある。」 23 主なる?~は、彼をエデンの園から追い出し、彼に、自分がそこから取られた土を耕させることにされた。 24 こうしてアダムを追放し、命の木に至る道を守るために、エデンの園の東にケルビムと、きらめく剣の炎を置かれた。
創世記 カインとアペル 4
1 さて、アダムは妻エバを知った。彼女は身ごもってカインを産み、「わたしは主によって男子を得た」と言った。 2 彼女はまたその弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。 3 時を経て、カインは土の実りを主のもとに献げ物として持って来た。 4 アベルは羊の群れの中から肥えた初子を持って来た。主はアベルとその献げ物に目を留められたが、 5 カインとその献げ物には目を留められなかった。カインは激しく怒って顔を伏せた。 6 主はカインに言われた。「どうして怒るのか。どうして顔を伏せるのか。 7 もしお前が正しいなら、顔を上げられるはずではないか。正しくないなら、罪は戸口で待ち伏せており、お前を求める。お前はそれを支配せねばならない。」 8 カインが弟アベルに言葉をかけ、二人が野原に着いたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。 9 主はカインに言われた。「お前の弟アベルは、どこにいるのか。」カインは答えた。「知りません。わたしは弟の番人でしょうか。」 10 主は言われた。「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。 11 今、お前は呪われる者となった。お前が流した弟の血を、口を開けて飲み込んだ土よりもなお、呪われる。 12 土を耕しても、土はもはやお前のために作物を産み出すことはない。お前は地上をさまよい、さすらう者となる。」 13 カインは主に言った。「わたしの罪は重すぎて負いきれません。 14 今日、あなたがわたしをこの土地から追放なさり、わたしが御顔から隠されて、地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう。」 15 主はカインに言われた。「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。 16 カインは主の前を去り、エデンの東、ノド(さすらい)の地に住んだ。 17 カインは妻を知った。彼女は身ごもってエノクを産んだ。カインは町を建てていたが、その町を息子の名前にちなんでエノクと名付けた。 18 エノクにはイラドが生まれた。イラドはメフヤエルの父となり、メフヤエルはメトシャエルの父となり、メトシャエルはレメクの父となった。
19 レメクは二人の妻をめとった。一人はアダ、もう一人はツィラと言った。 20 アダはヤバルを産んだ。ヤバルは、家畜を飼い天幕に住む者の先祖となった。 21 その弟はユバルといい、竪琴や笛を奏でる者すべての先祖となった。 22 ツィラもまた、トバル・カインを産んだ。彼は青銅や鉄でさまざまの道具を作る者となった。トバル・カインの妹はナアマといった。 23 さて、レメクは妻に言った。「アダとツィラよ、わが声を聞け。レメクの妻たちよ、わが言葉に耳を傾けよ。わたしは傷の報いに男を殺し 打ち傷の報いに若者を殺す。 24 カインのための復讐が七倍なら レメクのためには七十七倍。」 25 再び、アダムは妻を知った。彼女は男の子を産み、セトと名付けた。カインがアベルを殺したので、?~が彼に代わる子を授け(シャト)られたからである。 26 セトにも男の子が生まれた。彼はその子をエノシュと名付けた。主の御名を呼び始めたのは、この時代のことである。
創世記 アダムの系図 5
1 これはアダムの系図の書である。?~は人を創造された日、?~に似せてこれを造られ、 2 男と女に創造された。創造の日に、彼らを祝福されて、人と名付けられた。 3 アダムは百三十歳になったとき、自分に似た、自分にかたどった男の子をもうけた。アダムはその子をセトと名付けた。 4 アダムは、セトが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 5 アダムは九百三十年生き、そして死んだ。 6 セトは百五歳になったとき、エノシュをもうけた。 7 セトはエノシュが生まれた後八百七年生きて、息子や娘をもうけた。 8 セトは九百十二年生き、そして死んだ。 9 エノシュは九十歳になったとき、ケナンをもうけた。 10 エノシュは、ケナンが生まれた後八百十五年生きて、息子や娘をもうけた。 11 エノシュは九百五年生き、そして死んだ。 12 ケナンは七十歳になったとき、マハラルエルをもうけた。 13 ケナンはマハラルエルが生まれた後八百四十年生きて、息子や娘をもうけた。 14 ケナンは九百十年生き、そして死んだ。 15 マハラルエルは六十五歳になったとき、イエレドをもうけた。 16 マハラルエルは、イエレドが生まれた後八百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 17 マハラルエルは八百九十五年生き、そして死んだ。 18 イエレドは百六十二歳になったとき、エノクをもうけた。 19 イエレドは、エノクが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 20 イエレドは九百六十二年生き、そして死んだ。 21 エノクは六十五歳になったとき、メトシェラもうけた。 22 エノクは、メトシェラが生まれた後、三百年?~と共に歩み、息子や娘をもうけた。 23 エノクは三百六十五年生きた。 24 エノクは?~と共に歩み、?~が取られたのでいなくなった。 25 メトシェラは百八十七歳になったとき、レメクをもうけた。 26 メトシェラは、レメクが生まれた後七百八十二年生きて、息子や娘をもうけた。 27 メトシェラは九百六十九年生き、そして死んだ。 28 レメクは百八十二歳になったとき、男の子をもうけた。 29 彼は、「主の呪いを受けた大地で働く我々の手の苦労を、この子は慰めてくれるだろう」と言って、その子をノア(慰め)と名付けた。 30 レメクは、ノアが生まれた後五百九十五年生きて、息子や娘をもうけた。 31 レメクは七百七十七年生き、そして死んだ。 32 ノアは五百歳になったとき、セム ハム ヤフェトをもうけた。
創世記 洪水 6
1 さて、地上に人が増え始め、娘たちが生まれた。 2 ?~の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、おのおの選んだ者を妻にした。 3 主は言われた。 「わたしの霊は人の中に永久にとどまるべきではない。人は肉にすぎないのだから。」こうして、人の一生は百二十年となった。 4 当時もその後も、地上にはネフィリムがいた。これは、?~の子らが人の娘たちのところに入って産ませた者であり、大昔の名高い英雄たちであった。 5 主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、 6 地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた。 7 主は言われた。 「わたしは人を創造したが、これを地上からぬぐい去ろう。人だけでなく、家畜も這うものも空の鳥も。わたしはこれらを造ったことを後悔する。」 8 しかし、ノアは主の好意を得た。 9 これはノアの物語である。その世代の中で、ノアは?~に従う無垢な人であった。ノアは?~と共に歩んだ。 10 ノアには三人の息子、セム ハム ヤフェトが生まれた。 11 この地は?~の前に堕落し、不法に満ちていた。 12 ?~は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。 13 ?~はノアに言われた。「すべて肉なるものを終わらせる時がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす。 14 あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟には小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。 15 次のようにしてそれを造りなさい。箱舟の長さを三百アンマ、幅を五十アンマ、高さを三十アンマにし、 16 箱舟に明かり取りを造り、上から一アンマにして、それを仕上げなさい。箱舟の側面には戸口を造りなさい。また、一階と二階と三階を造りなさい。 17 見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊をもつ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべてのものは息絶える。 18 わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。 19 また、すべて命あるもの、すべて肉なるものから、二つずつ箱舟に連れて入り、あなたと共に生き延びるようにしなさい。それらは、雄と雌でなければならない。 20 それぞれの鳥、それぞれの家畜、それぞれの地を這うものが、二つずつあなたのところへ来て、生き延びるようにしなさい。 21 更に、食べられる物はすべてあなたのところに集め、あなたと彼らの食料としなさい。」 22 ノアは、すべて?~が命じられたとおりに果たした。
7
1 主はノアに言われた。「さあ、あなたとあなたの家族は皆、箱舟に入りなさい。この世代の中であなただけはわたしに従う人だと、わたしは認めている。 2 あなたは清い動物をすべて七つがい取り、また、清くない動物をすべて一つがいずつ取りなさい 3 空の鳥も七つがい取りなさい。全地の面に子孫が生き続けるように。 4 七日の後、わたしは四十日四十夜地上に雨を降らせ、わたしが造ったすべての生き物を地の面からぬぐい去ることにした。」 5 ノアはすべて主が命じられたとおりにした。 6 ノアが六百歳のとき、洪水が地上に起こり、水が地の上にみなぎった。 7 ノアは妻子や嫁たちと共に洪水を免れようと箱舟に入った。 8 清い動物も清くない動物も、鳥も地を這うものもすべて、 9 二つずつ箱舟のノアのもとに来た。それは?~がノアに命じられたとおりに、雄と雌であった。 10 七日が過ぎて、洪水が地上起こった。 11 ノアの生涯の第六百年、第二の月の十七日、この日、大いなる深淵の源がことごとく裂け、天の窓が開かれた。 12 雨が四十日四十夜地上に降り続いたが、 13 まさにこの日、ノアも、息子のセム、ハム、ヤフェト、ノアの妻、この三人の息子の嫁たちも、箱舟に入った。 14 彼らと共にそれぞれの獣、それぞれの家畜、それぞれの地を這うもの、それぞれの鳥、小鳥や翼のあるものすべて、 15 命の霊をもつ肉なるものは、二つずつノアのもとに来て箱舟に入った。 16 ?~が命じられたとおりに、すべて肉なるものの雄と雌とが来た。主は、ノアの後ろで戸を閉ざされた。 17 洪水は四十日間地上を覆った。水は次第に増して箱舟を押し上げ、箱舟は大地を離れて浮かんだ。 18 水は勢力を増し、地の上に大いにみなぎり、箱舟は水の面を漂った。 19 水はますます勢いを加えて地上にみなぎり、およそ天の下にある高い山はすべて覆われた。 20 水は勢い増して更にその上十五アンマに達し、山々を覆った。 21 地上で動いていた肉なるものはすべて、鳥も家畜も獣も地に群がり這うものも人も、ことごとく息絶えた。 22 乾いた地のすべてのもののうち、その鼻に命の息と霊のあるものはことごとく死んだ。 23 地の面にいた生き物はすべて、人をはじめ、家畜、這うもの、空の鳥に至るまでぬぐい去られた。彼らは大地からぬぐい去られ、ノアと、彼と共に箱舟にいたものだけが残った。 24 水は百五十日の間、地上で勢いを失わなかった。
8
1 神は、ノアと彼と共に箱舟にいたすべての獣とすべての家畜を御心に留め、地の上に風を吹かせられたので、水が減り始めた。 2 また、深淵の源と天の窓が閉じられたので、天からの雨は降りやみ、 3 水は地上からひいて行った。百五十日の後には水が減って、 4 第七の月の十七日に箱舟はアララト山の上に止まった。 5 水はますます減って第十の月になり、第十の月の一日には山々の頂が現れた。 6 四十日たって、ノアは自分が造った箱舟の窓を開き、烏を放した。烏は飛び立ったが、地上の水が乾くのを待って、出たり入ったりした。 8 ノアは鳩を彼のもとから放して、地の面から水がひいたかどうかを確かめようとした。 9 しかし、鳩は止まる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰って来た。水がまだ全地の面を覆っていたからである。ノアは手を差し伸べて鳩を捕らえ、箱舟の自分のもとに戻した。 10 更に七日待って、彼は再び鳩を箱舟から放した。 11 鳩は夕方になってノアのもとに帰って来た。見よ、鳩はくちばしにオリーブの葉をくわえていた。ノアは水が地上からひいたことを知った。 12 彼は更に七日待って、鳩を放した。鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。 13 ノアが六百一歳のとき、最初の月の一日に、地上の水は乾いた。ノアは箱舟の覆いを取り外して眺めた。見よ、地の面は乾いていた。 14 第二の月の二十七日になると、地はすっかり乾いた。 15 神はノアに仰せになった。 「さあ、あなたもあなたの妻も、息子も嫁も、皆一緒に箱舟から出なさい。 17 すべて肉なるもののうちからあなたのもとに来たすべての動物、鳥も家畜も地を這うものも一緒に連れ出し、地に群がり、地上で子を産み、増えるようにしなさい。」 18 そこで、ノアは息子や妻や嫁と共に外へ出た。 19 獣、這うもの、鳥、地に群がるもの、それぞれすべて箱舟から出た。 20 ノアは主のために祭壇を築いた。そしてすべての清い家畜と清い鳥のうちから取り、焼き尽くす捧げ物として祭壇の上にささげた。 21 主は宥めの香りをかいで、御心に言われた。「人に対して大地を呪うことは二度とすまい。人が心に思うことは、幼いときから悪いのだ。わたしは、この度したように生き物をことごとく打つことは、二度とすまい。 22 地の続くかぎり、種蒔きも刈り入れも 寒さも暑さも、夏も冬も 昼も夜も、やむことはない。」
創世記 祝福と契約 9
1 ?~はノアと彼の息子たちを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちよ。 2 地のすべての獣と空のすべての鳥は、地を這うすべてのものと海のすべての魚と共に、あなたたちの前に恐れおののき、あなたたちの手にゆだねられる。 3 動いている命あるものは、すべてあなたたちの食糧とするがよい。わたしはこれらすべてのものを、青草と同じようにあなたたちに与える。 4 ただし、肉は命である血を含んだまま食べてはならない。 5 また、あなたたちの命である血が流された場合、わたしは賠償を要求する。いかなる獣からも要求する。人間どうしの血については、人間から人間の命を賠償として要求する。 6 人の血を流す者は 人によって自分の血を流される。人は?~にかたどって造られたからだ。 7 あなたたちは産めよ、増えよ 地に群がり、地に増えよ。」 8 ?~はノアと彼の息子たちに言われた。 9 「わたしは、あなたたちと、そして後に続く子孫と、契約を立てる。 10 あなたたちと共にいるすべての生き物、またあなたたちと共にいる鳥や家畜や地のすべての獣など、箱舟から出たすべてのもののみならず、地のすべての獣と契約を立てる。 11 わたしがあなたたちと契約を立てたならば、二度と洪水によって肉なるものが滅ぼされることはなく、洪水が起こって地を滅ぼすことも決してない。」 12 更に?~は言われた。「あなたたちならびにあなたたちと共にいるすべての生き物と、代々(よよ)とこしえにわたしが立てる契約のしるしはこれである。 13 すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立てた契約のしるしとなる。 14 わたしが地の上に雲を湧き起こらせ、雲の中に虹が現れると、 15 わたしは、わたしとあなたたちならびにすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた契約に心を留める。水が洪水となって、肉なるものをすべて滅ぼすことは決してない。 16 雲の中に虹が現れると、わたしはそれを見て、神と地上のすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた永遠の契約に心をと留める。」 17 ?~はノアに言われた。「これが、わたしと地上のすべて肉なるものとの間にたてた契約のしるしである。」
創世記 ノアと息子たち
18 箱舟から出たノアの息子は、セム、ハム、ヤフェトであった。ハムはカナンの父である。 19 この三人がノアの息子で、全世界の人々は彼らから出て広がったのである。 20 さて、ノアは農夫となり、ぶどう畑を作った。 21 あるとき、ノアはぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。 22 カナンの父ハムは、自分の父の裸を見て、外にいた二人の兄弟に告げた。 23 セムとヤフェトは着物を取って自分たちの肩に掛け、後ろ向きに歩いて行き、父の裸を覆った。二人は顔を背けたままで、父の裸を見なかった。 24 ノアは酔いからさめると、末の息子がしたことを知り、 25 こう言った。「カナンは呪われよ 奴隷の奴隷となり、兄たちに仕えよ。」 26 また言った。「セムの神、主をたたえよ。 カナンはセムの奴隷となれ。
27 神がヤフェトの土地を広げ(ヤフェト) セムの天幕に住まわせ カナンはその奴隷となれ。」 28 ノアは、洪水の後三百五十年生きた。 29 ノアは九百五十歳になって、死んだ。
創世記 ノアの子孫 10
1 ノアの息子、セム、ハム、ヤフェトの系図は次のとおりである。洪水の後、彼らに息子が生まれた。 2 ヤフェトの子孫はゴメル、マゴグ、メディア、ヤワン、トバル、メシェク、ティラスであった。 3 ゴメルの子孫は、アシュケナズ、リファト、トガルマであった。 4 ヤワンの子孫は、エリシャ、タルシシュ、キティム、ロダニムであった。 5 海沿いの国々は、彼らから出て、それぞれの地に、その言語、氏族、民族に従って住むようになった。 6 ハムの子孫は、クシュ、エジプト、プト、カナンであった。 7 クシュの子孫はセバ、ハビラ、サブタ、ラマ、サブテカであり、ラマの子孫はシェバとデダンであった。 8 クシュにはまた、ニムロドが生まれた。ニムロドは地上で最初の勇士となった。 9 彼は、主の御前に勇敢な狩人であり、「主の御前に勇敢な狩人ニムドロのようだ」という言い方がある。 10 彼の王国の主な町は、バベル、ウルク、アッカドであり、それらはすべてシンアルの地にあった。 11 彼はその地方からアッシリに進み、ニネベ、レホボト・イル、カラ、 12 レセンを建てた。レセンはニネベとカラとの間にある、非常に大きな町であった。 13 エジプトにはリディア人、アルミナ人、レハビム人、ナフトヒム人、 14 上エジプト人、カスルヒム人、カフトル人が生まれた。このカフトル人からペリシテ人が出た。
15 カナンには長男シドンとヘト、 16 また、エブス人、アモリ人、ギルガシ人、 17 ヒビ人、アルキ人、シニ人、 18 アルワド人、フェマリ人、ハマト人が生まれた。その後、カナン人の諸氏族が広がった。 19 カナン人の領土は、シドンから南下してゲラルを経てガザまでを含み、更に、ソドム、ゴモラ、アドマ、ツェボイムを経てラシャまでを含んだ。 20 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたハムの子孫である。 21 セムにもまた子供が生まれた。彼はエベルのすべての子孫の先祖であり、ヤフェトの兄であった。 22 セムの子孫はエラム、アシュル、アルパクシャド、ルド、アラムであった。 23 アラムの子孫は、ウツ、フル、ゲテル、マシュであった。 24 アルパクシャドにはシェラが生まれ、シェラにはエベルが生まれた。 25 エベルには二人の息子が生まれた。ひとりの名は、その時代に土地が分けられた(パラグ)ので、ペレグといい、その兄弟はヨクタンといった。 26 ヨクタンには、アルモダド、シェレフ、ハツァルマベト、イエラ、 27 ハドラム、ウザル、ディクラ、 28 オバル、アビマエル、シェバ、 29 オフィル、ハビラ、ヨバブが生まれた。これらは皆、ヨクタンの息子であった。 30 彼らはメシャからセファルに至る東の高原地帯に住んでいた。 31 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたセムの子孫である。 32 ノアの子孫である諸氏族を、民族ごとの系図にまとめると以上のようになる。地上の諸民族は洪水の後、彼らから分かれ出た。
創世記 バベルの塔 11
1 世界中は同じ言葉を使って、同じように話していた。 2 東の方から移動してきた人々は、シンアルの地に平野を見つけ、そこに住み着いた。 3 彼らは、「れんがを作り、それをよく焼こう」と話し合った。石の代わりにれんがを、しっくいの代わりにアスファルトを用いた。 4 彼らは、「さあ 天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。 5 主は降って来て、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、 6 言われた。「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。 7 我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」 8 主は彼らをそこから全地に散らされたので、彼らはこの町の建設をやめた。 9 こういうわけで、この町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ、また、主がそこから彼らを全地に散らされたからである。
創世記 セムの系図
10 セムの系図は次のとおりである。セムが百歳になったとき、アルバクシャドが生まれた。それは洪水の二年後のことであった。 11 セムは、アルパクシャドが生まれた後五百年生きて、息子や娘をもうけた。 12 アルパクシャドが三十五歳になったとき、シェラが生まれた。 13 アルパクシャドは、シェラが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 14 シェラが三十歳になったとき、エベルが生まれた。 15 シェラは、エベルが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 16 エベルが三十四歳になったとき、ぺレグが生まれた。 17 エベルは、ぺレグが生まれた後四百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 18 ぺレグが三十歳になったとき、レウが生まれた。 19 ぺレグは、レウが生まれた後二百九年生きて、息子や娘をもうけた。 20 レウが三十二歳になったとき、セルグが生まれた。 21 レウは、セルグが生まれた後二百七年生きて、息子や娘をもうけた。 22 セルグ三十歳なったとき、ナホルが生まれた。 23 セルグは、ナホルが生まれた後二百年生きて、息子や娘をもうけた。 24 ナホルが二十九歳になったとき、テラが生まれた。 25 ナホルは、テラが生まれた後百十九年生きて、息子や娘をもうけた。 26 テラが七十歳になったとき、アブラム、ナホル、ハランが生まれた。
創世記 テラの系図
27 テラの系図は次のとおりである。テラにはアブラム、ナホル、ハランが生まれた。ハランにはロトが生まれた。 28 ハランは父のテラより先に、故郷カルデアのウルで死んだ。 29 アブラムとナホルはそれぞれ妻をめとった。アブラムの妻の名はサライ、ナホルの妻の妻の名はミルカといった。ミルカはハランの娘である。ハランはミルカとイスカの父であった。 30 サライは不妊の女で、子供ができなかった。 31 テラは、息子アブラムと、ハランの息子で自分の孫であるロト、および息子アブラムの妻で自分の嫁であるサライを連れて、カルデアのウルを出発し、カナン地方に向った。彼らはハランまで来ると、そこにとどまった。 32 テラは二百五年の生涯を終えて、ハランで死んだ。
創世記 アブラムの召命と移住 12
1 主はアブラムに言われた。「あなたは生まれ故郷 父の家を離れて わたしが示す地に行きなさい 2 わたしはあなたを大いなる国民にし あなたを祝福し あなたに名を高める 祝福の源となるように 3 あなたを祝福する人をわたしは祝福し あなたを呪う者をわたしは呪う。 地上の氏族はすべて あなたによって祝福に入る。」 4 アブラムは 主の言葉に従って旅立った。ロトも共に行った。アブラムは、ハランを出発したとき七十五歳であった。 5 アブラムは妻のサライ、甥のロトを連れ、蓄えた財産をすべて携え、ハランで加わった人々と共にカナン地方へ向かって出発し、カナン地方入った。 6 アブラムはその地を通り、シケムの聖所、モレの樫の木まで来た。当時、その地方にはカナン人が住んでいた。 7 主はアブラムに現れて、言われた。「あなたの子孫のこの地を与える」アブラムは、彼に現れた主のために、そこに祭壇を築いた。 8 アブラムは、そこからベテルの東の山へ移り、西にベテル、東にアイを望む所に天幕を張って、そこにも主のために祭壇を築き、主の御名を呼んだ。 9 アブラムは更に旅を続け、ネゲブ地方に移った。
創世記 エジプト滞在
10 その地方に飢饉があった。 アブラムは、その地方の飢饉がひどかったので、エジプトに下り、そこに滞在することにした。 11 エジプトに入ろうしたとき、妻サライに言った。 「あなたが美しいのを、わたしはよく知っている。 12 エジプト人があなたを見たら、『この女はあの男の妻だ』と言って、わたしを殺し、あなたを生かしておくにちがいない。 13 どうか、わたしの妹だ、と言ってください。 そうすれば、わたしはあなたのゆえに幸いになり、あなたのお陰で命も助かるだろう。」 14 アブラムがエジプトに入ると、エジプト人はサライを見て、大変美しいと思った。 15 ファラオの家臣たちも彼女を見て、ファラオに彼女のことを褒めたので、サライはファラオの宮廷に召し入れられた 16 アブラムも彼女のゆえに幸いを受け、羊の群れ、牛の群れ、ろば、男女の奴隷、雌ろば、らくだなどを与えられた。 17 ところが主は、アブラムの妻サライのことで、ファラオと宮廷の人々を恐ろしい病気にかからせた。 18 ファラオはアブラムを呼び寄せて言った。 「あなたはわたしに何ということをしたのか。 なぜ、あの婦人は自分の妻だと、言わなかったのか。 19 なぜ、『わたしの妹です』などと言ったのか。 だからこそ、わたしの妻として召し入れたのだ。 さあ、あなたの妻を連れて、立ち去ってもらいたい。 20 ファラオは家来たちに命じて、アブラムを、その妻とすべての持ち物と共に送り出させた。
創世記 ロトとの別れ 13
1 アブラムは、妻と共に、すべての持ち物を携え、エジプトを出て再びネゲブ地方へ上った。ロトも一緒であった。 2 アブラムは非常に多くの家畜や金銀を持っていた。 3 ネゲブ地方から更に、ベテルに向って旅を続け、ベテルとアイとの間の、以前に天幕を張った所まで来た。 4 そこは、彼が最初に祭壇を築いて、主の御名を呼んだ場所であった。 5 アブラムと共に旅をしていたロトもまた、羊や牛の群れを飼い、たくさんの天幕を持っていた。 6 その土地は、彼らが一緒に住むには十分ではなかった。 彼らの財産が多すぎたから、一緒に住むことができなかったのである。 7 アブラムの家畜を飼う者たちと、ロトの家畜を飼うものたちとの間に争いが起きた。 そのころ、その地方にはカナン人もペリジ人も住んでいた。 8 アブラムはロトに言った。 「わたしたちは親類どうしだ。わたしとあなたの間ではもちろん、お互いの羊飼いの間でも争うのはやめよう。 9 あなたの前には幾らでも土地があるのだから、ここで別れようではないか。 あなたが左に行くなら、わたしは右に行こう。 あなたが右に行くなら、わたしは左に行こう。」 10 ロトが目を上げて眺めると、ヨルダン川流域の低地一帯は、 主がソドムとゴモラを滅ぼす前であったので、ツォアルに至るまで、主の園のように、エジプトの国のように、見渡すかぎりよく潤っていた。 11 ロトはヨルダン川流域の低地一帯を選んで、東へ移って行った。こうして彼らは、左右に別れた。 12 アブラムはカナン地方に住み、ロトは低地の町々に住んだが、彼はソドムまで天幕を移した。 13 ソドムの住民は邪悪で、主に対して多くの罪を犯していた。 14 主は、ロトが別れて行った後、アブラムに言われた。「さあ、目を上げて、あなたがいる場所から東西南北を見渡しなさい。 15 見えるかぎりの土地をすべて、わたしは永久にあなたとあなたの子孫に与える。 16 あなたの子孫を大地の砂粒のようにする。大地の砂粒が数えきれないように、あなたの子孫も数えきれないであろう。 17 さあ、この土地を縦横に歩き回るがよい。わたしはそれをあなたに与えるから。」 18 アブラムは天幕を移し、ヘブロンにあるマムレの樫の木のところに来て住み、そこに主のために祭壇を築いた。
創世記 王との戦い 14
1 シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨク、エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアルが、 2 ソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アドマの王シンアブ、ツェボイムの王シェムエベル、ベラ、すなわちツオワルの王と戦ったとき、 3 これら五人の王は皆、シディムの谷、すなわち塩の海で同盟を結んだ。 4 彼らは十二年間ケドルラオメルに支配されていたが、十三年目に背いたのである。 5 十四年目に、ケドルラオメルとその味方の王たちが来て、アシュテロト・カルナイムでレファイム人を、ハムでズジム人を、シャベ・キルヤタイムでエミル人を、 6 セイルの山地でフリ人人を撃ち、荒れ野に近いエル・バランまで進んだ。 7 彼らは転進して、エン・ミシュパト、すなわちカデシュに向かい、アマレク人の全領土とハツェツオン・タマルに住むアモリ人を撃った。 8 そこで、ソドムの王、ゴモラの王、アドマの王、ツェボイムの王、ベラすなわちツォアルの王は兵を繰り出し、シディムの谷で彼らと戦おうと陣を敷いた。 9 エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアル、シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨクの四人の王に対して、これら五人の王が戦いを挑んだのである。 10 シディムの谷には至るところに天然アスファルトの穴があった。ソドムとゴモラの王は逃げるとき、その穴に落ちた。残りの王は山へ逃れた。 11 ソドムとゴモラの財産や食糧はすべて奪い去られ、 12 ソドムに住んでいたアブラムの甥ロトも、財産もろとも連れ去られた。
創世記 ロトの救出
13 逃げ延びた一人の男がヘブライ人アブラムのもとに来て、そのことを知らせた。アブラムは当時、アモリ人マムレ樫の木の傍らに住んでいた。マムレはエシュコルとアネルの兄弟で、彼らはアブラムと同盟を結んでいた。 14 アブラムは、親族の者が捕虜になったと聞いて、彼の家で生まれた奴隷で、訓練を受けた者三百十八人を召集し、ダンまで追跡した。 15 夜、彼と僕たちは分かれて敵を襲い、ダマスコの北のホバまで追跡した。 16 アブラムはすべての財産を取り返し、親族のロトとその財産、女たちやそのほかの人々も取り戻した。
創世記 メルキゼデグの祝福
17 アブラムがケドルラオメルとその味方の王たちを撃ち破って帰って来たとき、ソドムの王はシャベの谷、すなわち王の谷まで彼を出迎えた。 18 いと高き神の祭司であったサレムの王メルキゼデクも、パンとぶどう酒を持って来た。 19 彼はアブラムを祝福して言った。「天地の造り主、いと高き神に アブラムは祝福されますように。 20 敵をあなたの手に渡された いと高き神がたたえられますように。」 アブラムはすべての物の十分の一を彼に贈った。 21 ソドムの王はアブラムに、「人はわたしにお返しください。 しかし、財産はお取りください」と言ったが、 22 アブラムはソドムの王に言った。 「わたしは天地の造り主、いと高き?~、主に手を上げて誓います。 23 あなたの物は、たとえ糸一筋、靴ひも一本でも、決していただきません。 『アブラムを裕福にしたのは、このわたしだ』と、あなたに言われたくありません。 24 わたしは何も要りません。 ただ、若い者たちが食べたものと、わたしと共に戦った人々、すなわち、アネルとエシュコルとマムレの分は別です。 彼らには分け前を取らせてください。
創世記 神の約束 15
1 これらのことの後で、主の言葉が幻の中でアブラムに臨んだ。 「恐れるな、アブラムよ。 わたしはあなたの盾である。 あなたの受ける報いは非常に大きいであろう。 2 アブラムは尋ねた。 「わが神、主よ。わたしに何をくださるというのですか。わたしには子供がありません。家を継ぐのはダマスコのエリエゼルです。 3 アブラムは言葉をついだ。「御覧のとおり、あなたはわたしに子孫を与えてくださいませんでしたから、家の僕が跡を継ぐことになっています。」 4 見よ、主の言葉があった。「その者があなたの跡を継ぐのではなく、あなたから生まれる者が跡を継ぐ。」 5 主は彼を外に連れ出して言われた。「天を仰いで、星を数えることができるなら、数えてみるがよい。」 そして言われた。 「あなたの子孫はこのようになる。」 6 アブラムは主を信じた。主はそれを彼の義と認められた。 7 主は言われた。 「わたしはあなたをカルデアのウルから導き出した主である。わたしはあなたにこの土地を与え、それを継がせる。」 8 アブラムは尋ねた。 「わが神、主よ。この土地をわたしが継ぐことを、何によって知ることができましょうか。」 9 主は言われた。 「三歳の雌牛と、三歳の雌山羊と、三歳の雄羊と、山鳩と、鳩の雛とをわたしのもとに持ってきなさい。」 10 アブラムはそれらのものをみな持って来て、真っ二つに切り裂き、それぞれを互いに向かい合わせて置いた。 ただ、鳥は切り裂かなかった。 11 はげ鷹がこれらの死体をねらって降りて来ると、アブラムは追い払った。 12 日が沈みかけたころ、アブラムは深い眠りに襲われた。すると、恐ろしい大いなる暗黒が彼に臨んだ。 13 主はアブラムに言われた。 「よく覚えておくがよい。あなたの子孫は異邦の国で寄留者となり、四百年の間奴隷として仕え、苦しめられるであろう。 14 しかしわたしは、彼らが奴隷として仕えるその国民を裁く。
その後、彼らは多くの財産を携えて脱出するであろう。 15 あなた自身は、長寿を全うして葬られ、安らかに先祖のもとに行く。 16 ここに戻ってくるのは、四代目の者たちである。それまではアモリ人の罪が極みに達しないからである。 17 日が沈み、暗闇に覆われたころ、突然、煙を吐く炉と燃える松明が二つに裂かれた動物の間を通り過ぎた。 18 その日、主はアブラムと契約を結んで言われた。 「あなたの子孫にこの土地を与える。エジプトの川から大河ユーフラテスに至るまで、 19 カイン人、ケナズ人、カドモニ人、 20 ヘト人、ペリジ人、レファイム人、 21 アモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人の土地を与える。」
創世記 ハガルの逃亡と出産 16
1 アブラムの妻サライには、子供が生まれなかった。彼女には、ハガルというエジプト人の女奴隷がいた。 2 サライはアブラムに言った。 「主はわたしに子供を授けてくださいません。どうぞ、わたしの奴隷のところへ入ってください。わたしは彼女によって、子供を与えられるかもしれません。」 アブラムは、サライの願いを聞き入れた。 3 アブラムの妻サライは、エジプト人の女奴隷ハガルを連れて来て、夫アブラムの側女とした。アブラムがカナン地方に住んでから、十年後のことであった。 4 アブラムはハガルのところに入り、彼女は身ごもった。ところが、自分が身ごもったのを知ると、彼女は女主人を軽んじた。 5 サライはアブラムに言った。 「わたしが不当な目に遭ったのは、あなたのせいです。女奴隷をあなたのふところに与えたのはわたしなのに、彼女は自分が身ごもったのを知ると、わたしを軽んじるようになりました。主がわたしとあなたとの間を裁かれますように。 6 アブラムはサライに答えた。
「あなたの女奴隷はあなたのものだ。好きなようにするがいい。」サライは彼女につらく当たったので、彼女はサライのもとから逃げた。 7 主の御使いが荒れ野の泉のほとり、シュル街道に沿う泉のほとりで彼女と出会って、 8 言った。 「サライの女奴隷ハガルよ。あなたはどこから来て、どこへ行こうとしているのか。」「女主人サライのもとから逃げているところです」と答えると、 9 主の御使いは言った。 「女主人のもとに帰り、従順に仕えなさい。」 10 主の御使いは更に言った。 「わたしは、あなたの子孫を数えきれないほど多く増やす。」 11 主の御使いはまた言った。 「今、あなたは身ごもっている。やがてあなたは男の子を産む。その子をイシュマエルと名付けなさい。主があなたの悩みをお聞きになられたから。 12 彼は野生のろばのような人になる。彼があらゆる人にこぶしを振りかざすので、人々は皆、こぶしを振るう。彼は兄弟すべてに敵対して暮らす。」 13 ハガルは自分に語りかけた主の御名を呼んで、 「あなたこそエル・ロイ(わたしを顧みられる?~)です」と言った。それは、彼女が、「神がわたしを顧みられた後もなお、わたしはここで見続けていたではないか」と言ったからである。 14 そこで、その井戸は、ベエル・ラハイ・ロイと呼ばれるようになった。それはカディシュとベレドの間にある。 15 ハガルはアブラムとの間に男の子を産んだ。アブラムは、ハガルが産んだ男の子をイシュマエルと名付けた。 16 ハガルがイシュマエルを生んだとき、アブラムは八十六歳であった。
創世記 契約と割礼 17
1 アブラムが九十九歳になったとき、主はアブラムに現れて言われた。「わたしは全能の神である。あなたはわたしに従って歩み、全き者となりなさい。 2 わたしは、あなたとの間にわたしの契約を立て、あなたをますます増やすであろう。」 3 アブラムはひれ伏した。神は更に、語りかけて言われた。 4 「これがあなたと結ぶわたしの契約である。あなたは多くの国民の父となる。 5 あなたは、もはやアブラムではなく、アブラハムと名乗りなさい。あなたを多くの国民の父とするからである。 6 わたしは、あなたをますます?栄させ、諸国民の父とする。王となる者たちがあなたから出るであろう。 7 わたしは、あなたとの間に、また後に続く子孫との間に契約を立て、それを永遠の契約とする。そして、あなたとあなたの子孫の神となる。 8 わたしは、あなたが滞在しているこのカナンのすべての土地を、あなたとその子孫に、永久の所有地として与える。わたしは彼らの神となる。」 9 神はまた、アブラムに言われた。「だからあなたも、わたしの契約を守りなさい、あなたも後に続く子孫も。 10 あなたたち、およびあなたの後に続く子孫と、わたしとの間で守るべき契約はこれである。すなわち、あなたたちの男子はすべて、割礼を受ける。 11 包皮の部分を切り取りなさい。これが、わたしとあなたたちとの間の契約のしるしとなる。 12 いつの時代でも、あなたたちの男子はすべて、直系の子孫はもちろんのこと、家で生まれた奴隷も、外国人から買い取った奴隷であなたの子孫でない者も皆、生れてから八日目に割礼を受けなければならない。 13 あなたのお家で生まれた奴隷も、買い取った奴隷も、必ず割礼を受けなければならない。それによって、わたしの契約はあなたの体に記されて永遠の契約となる。 14 包皮の部分を切り取らない無割礼の男がいたなら、その人は民の間から断たれる。わたしの契約を破ったからである。」 15 神はアブラムに言われた。「あなたの妻サライは、名前をサライではなく、サラと呼びなさい。 16 わたしは彼女を祝福し、彼女によってあなたに男の子を与えよう。わたしは彼女を祝福し、諸国民の母とする。諸民族の王となる者たちが彼女から出る。」 17 アブラハムひれ伏した。しかし笑って、ひそかに言った。「百歳の男に子供が生まれるだろうか。九十歳のサラに子供が産めるだろうか。」 18 アブラハムは神に言った。「どうか、イシュマエルが御前に生き永らえますように。」 19 神は言われた。「いや、あなたの妻サラがあなたとの間に男の子を産む。その子をイサク(彼は笑う)と名付けなさい。わたしは彼と契約を立て、彼の子孫のために永遠の契約とする。 20 イシュマエルについての願いも聞き入れよう。必ず、わたしは彼を祝福し、大いに子供を増やし繁栄させる。彼は十二人の首長の父となろう。わたしは彼を大いなる国民とする。 21 しかし、わたしの契約は、来年の今ごろ、サラがあなたとの間に産むイサクと立てる。」 22 神はこう語り終えると、アブラハムを離れて昇って行かれた。 23 アブラハムは、息子のイシュマエルをはじめ、家で生まれた奴隷や買い取った奴隷など、自分の家にいる人々のうち、男子を皆集めて、すぐその日に、神が命じられたとおり包皮に割礼を施した。 24 アブラハムが包皮に割礼を受けたのは、九十九歳、 25 息子イシュマエルが包皮に割礼を受けたのは、十三歳であった。 26 アブラハムと息子のイシュマエルは、すぐその日に割礼を受けた。 27 アブラハムの家の男子は、家で生まれた奴隷も外国人から買い取った奴隷も皆、共に割礼を受けた。
創世記 イサクの誕生の予告 18
1 主はマムレの樫の木の所でアブラハムに現れた。暑い真昼に、アブラハムは天幕の入り口に座っていた。 2 目を上げて見ると、三人の人が彼に向って立っていた。アブラハムはすぐに天幕の入り口から走り出て迎え、地にひれ伏して、 3 言った。「お客様、よろしければ、どうか、僕のもとを通り過ぎないでください。 4 水を少々持ってこさせますから、足を洗って、木陰でどうぞひと休みなさってください。 5 何か召し上がるものを調えますので、疲れをいやしてから、お出かけください。せっかく、僕の所の近くをお通りになったのですから。」その人たちは言った。「では、お言葉どおりにしましょう。」 6 アブラハムは急いで天幕に戻り、サラのところに来て言った。「早く、上等の小麦粉を三セアほどこねて、パン菓子をこしらえなさい。」 7 アブラハムは牛の群れのところへ走って行き、柔らかくておいしそうな子牛を選び、召し使いに渡し、急いで料理をさせた。 8 アブラハムは、凝乳、乳、出来立ての子牛の料理などを選び、彼らの前に並べた。そして、彼らが木陰で食事をしている間、そばに立って給仕をした。 9 彼らはアブラハムに尋ねた。「あなたの妻のサラはどこにいますか。」「はい、天幕の中におります」とアブラハムが答えると、 10 彼らの一人が言った。「わたしは来年の今ごろ、必ずここにまた来ますが、そのころには、あなたの妻のサラに男の子が生まれているでしょう。」サラは、すぐ後ろの天幕の入り口で聞いていた。 11 アブラハムもサラも多くの日を重ねて老人になっており、しかもサラは月のものがとうになくっていた。 12 サラはひそかに笑った。自分は年をとり、もはや楽しみがあるはずもなし、主人も年老いているのに、と思ったのである。13 主はアブラハムに言われた。「なぜサラは笑ったのか。なぜ年をとった自分に子供が生まれるはずがないと思ったのだ。 14 主に不可能なことがあろうか。来年の今ごろ、わたしはここに戻ってくる。そのころ、サラには必ず男の子が生まれている。」 15 サラは恐ろしくなり、打ち消して言った。「わたしは笑いませんでした。」主は言われた。「いや、あなたは確かに笑った。」
創世記 ソドムのための執り成し
16 その人たちはそこを立って、ソドムを見下ろす所まで来た。アブラハムも、彼らを見送るために一緒に行った。 17 主は言われた。「わたしが行おうとしていることをアブラハムに隠す必要があろうか。 18 アブラハムは大きな強い国民になり、世界のすべての国民は彼によって祝福に入る。 19 わたしがアブラハムを選んだのは、彼が息子たちとその子孫に、主の道を守り、主に従って正義を行うよう命じて、主がアブラハムに約束したことを成就するためである。 20 主は言われた。「ソドムとゴモラの罪は非常に重い、と訴える叫びが実に大きい。 21 わたしは降って行き、彼らの行跡が、果たして、わたしに届いた叫びのとおりかどうか見て確かめよう。」 22 その人たちは、更にソドムの方に向かったが、アブラハムはなお、主の御前にいた。 23 アブラハムは進み出て言った。「もことにあなたは、正しい者を悪い者と一緒に滅ぼされるのですか。 24 あの町に正しい者が五十人いるとしても、それでも滅ぼし、その五十人の正しい者のために、町をお赦しにはならないのですか。 25 正しい者を悪い者と一緒に殺し、正しい者を悪い者と同じ目に遭わせるようなことを、あなたがなさるはずはございません。全くありえないことです。全世界を裁くお方は、正義を行われるべきではありませんか。」 26 主は言われた。「もしソドムの町に正しい者が五十人いるならば、その者たちのために、町を全部赦そう。」 27 アブラハムは答えた。「塵にすぎないわたしですが、あえて、わが主に申し上げます。 28 もしかすると、五十人の正しい者に五人足りないかもしれません。それでもあなたは、五人たりないために、町のすべてを滅ぼされますか。」主は言われた。「もし、四十五人いれば滅ぼさない。」 29 アブラハムは重ねて言った。「もしかすると、四十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その四十人のためにわたしはそれをしない」 30 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう少し言わせてください。もしかすると、そこには三十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「もし三十人いるならわたしはそれはしない。」 31 アブラハムは言った。「あえて、わが主に申し上げます。もしかすると、二十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その二十人のためにわたしは滅ぼさない。」 32 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう一度だけ言わせてください。もしかすると、十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その十人のためにわたしは滅ぼさない。」 33 主はアブラハムと語り終えると、去って行かれた。アブラハムも自分の住まいに帰った。
創世記 ソドムの滅亡 19
1 二人の御使いが夕方ソドムに着いたとき、ロトはソドムの門の所に座っていた。ロトは彼らを見ると、立ち上って迎え、地にひれ伏して、 2 言った。 「皆様方、どうぞ僕(しもべ)の家に立ち寄り、足を洗ってお泊りください。彼らは言った。「いや、結構です。わたしたちはこの広場で夜を過ごします。」 3 しかし、ロトがぜひにと勧めたので、彼らはロトの所に立ちよることにし、彼の家を訪ねた。ロトは、酵母を入れないパンを焼いて食事を供し、彼らをもてなした。 4 彼らがまだ床に就かないうちに、ソドムの町の男たちが、若者も年寄りもこぞって押しかけ、家を取り囲んで、 5 わめきたてた。 「今夜、お前のところへ来た連中はどこにいる。ここへ連れてこい。なぶりものにしてやるから。」 6 ロトは、戸口の前にたむろしている男たちのところへ出て行き、後ろの戸を閉めて、 7 言った。 「どうか、皆さん、乱暴なことはしないでください。 8 実は、わたしにはまだ嫁がせていない娘が二人おります。皆さんにその娘たちを差し出しますから、好きなようにしてください。ただ、あの方々には何もしないでください。この家の屋根の下に身を寄せていただいたのですから。」 9 男たちは口々に言った。 「そこをどけ」 「こいつはよそ者のくせに、指図などして。」 「さあ、彼らより先に、お前を痛い目に遭わせてやる。」 そして、ロトに詰め寄って体を押しつけ、戸を破ろうとした。 10 二人の客はそのとき、手を伸ばして、ロトを家の中に引き入れて戸を閉め、 11 戸口の前に入る男たちに、老若を問わず、目つぶしを食わせ、戸口を分からなくした。 12 二人の客はロトに言った。 「ほかに、あなたの身内の人がこの町にいますか。あなたの婿や息子や娘などを皆連れてここから逃げなさい。 13 実は、わたしたちはこの町を滅ぼしに来たのです。大きな叫びが主にもとに届いたので、主は、この町を滅ぼすためにわたしたちを遣わされたのです。」 14 ロトは嫁いだ娘たちの婿のところへ行き、「さあ早くここから逃げるのだ。主がこの町を滅ぼされるからだ」と促したが、婿たちは冗談だと思った。 15 夜が明けるころ、御使いたちはロトをせきたてて言った。「さあ早く、あなたの妻とここにいる二人の娘を連れて行きなさい。さもないと、この町に下る罰の巻き添えになって滅ぼされてしまう。」 16 ロトはためらっていた。主は憐れんで、二人の客にロト、妻、二人の娘の手をとらせて町の外へ避難するようにされた。 17 彼らがロトたちを町外れへ連れ出したとき、主は言われた。 「命がけで逃れよ。後ろを振り返ってはいけない。低地のどこにもとどまるな。山へ逃げなさい。さもないと、滅びることになる。」 18 ロトは言った。 「主よ、できません。 19 あなたは僕(しもべ)に目を留め、慈しみを豊かに示し、命を救おうとしています。しかし、わたしは山まで逃げ延びることはできません。恐らく、災害に巻き込まれて、死んでしまうのでしょう。 20 御覧ください、あの町を。あそこなら近いので、逃げて行けると思います。あれは小さな町です。あそこへ逃げさせてください。あれはほんの小さな町です。どうか、そこでわたしの命を救ってください。」 21 主は言われた。 「よろしい。そのこともあなたの願いを聞き届け、あなたの言うその町は滅ぼさないことにしよう。 22 急いで逃げなさい。あなたがあの町に着くまでは、わたしは何も行わないから。」 そこで、その町はツォアル(小さい)と名付けられた。 23 太陽が地上に昇ったとき、ロトはツォアルに着いた。 24 主はソドムとゴモラの上に天から、主のもとから硫黄の火を降らせ、 25 これらの町と低地一帯を、町の全住民、地の草木もろとも滅ぼした。 26 ロトの妻は後ろを振り向いたので、塩の柱になった。 27 アブラハムは、その朝早く起きて、さきに主と対面した場所へ行き、 28 ソドムとゴモラ、および低地一帯を見下ろすと、炉の煙のように地面から煙が立ち上っていた。 29 こうして、ロトの住んでいた低地の町々は滅ぼされたが、神はアブラハムを御心に留め、ロトを破滅のただ中から救い出された。
創世記 ロトの娘たち
30 ロトはツォアルを出て、二人の娘と山の中に住んだ。ツォアルに住むのを恐れたからである。彼は洞穴に二人の娘と住んだ。 31 姉は妹に言った。 「父も年老いてきました。この辺りには、世のしきたりに従って、わたしたちのところへ来てくれる男の人はいません。 32 さあ、父にぶどう酒を飲ませ、床を共にし、父から子種を受けましょう。」 33 娘たちはその夜、父親にぶどう酒を飲ませ、姉がまず、父親のところへ入って寝た。 父親は、娘が寝に来たのも立ち去ったのも気がつかなかった。 34 あくる日、姉は妹に言った。 「わたしは夕べ父と寝ました。 今晩も父にぶどう酒を飲ませて、あなたが行って父と床を共にし、父から子種をいただきましょう。」 35 娘たちはその夜もまた、父親にぶどう酒を飲ませ、妹が父親のところへ行って寝た。父親は、娘が寝に来たのも立ち去ったのも気がつかなかった。 36 このようにして、ロトの二人の娘は父の子を身ごもり、 37 やがて、姉は男の子を産み、モアブ(父親より)と名付けた。 彼は今日のモアブ人の先祖である。 38 妹もまた男の子を産み、ベン・アミ(わたしの肉親の子)と名付けた。彼は今日のアンモン人の人々の先祖である。
創世記 ゲラル滞在 20
1 アブラハムは、そこからネゲブ地方に移り、カデシュとシュルの間に住んだ。 ゲラルに滞在していたとき、 2 アブラハムは妻サラのことを、「これはわたしの妹です」と言ったので、ゲラルの王アビメレクは使いをやってサラを召し入れた。 3 その夜、夢の中でアビメレクに神が現れて言われた。 「あなたは、召し入れた女のゆえに死ぬ。その女は夫のある身だ。」 4 アビメレクは、まだ彼女に近づいていなかったので、「主よ、あなたは正しい者でも殺されるのですか。 5 彼女が妹だと言ったのは彼ではありませんか。 また彼女自身も、『あの人はわたしの兄です』と言いました。 わたしは、全くやましい考えも不正な手段でもなくこの事をしたのです。」と言った。 6 神は夢の中でアビメレクに言われた。 「わたしも、あなたが全くやましい考えでなしにこの事をしたことは知っている。 だからわたしも、あなたがわたしに対して罪を犯すことのないように、彼女に触れさせなかったのだ。 7 直ちに、あの人の妻を返しなさい。 彼は預言者だから、あなたのために祈り、命を救ってくれるだろう。 しかし、もし返さなければ、あなたもあなたの家来も皆、必ず死ぬことを覚悟せねばならない。」 8 つぎの朝早く、アビレメクは家来たちを残らず呼び集め、一切の出来事を語り聞かせたので、一同は非常に恐れた。 9 アビレメクはそれから、アブラハムを呼んで言った。 「あなたは我々に何ということをしたのか。 わたしがあなたにどんな罪を犯したというので、あなたはわたしとわたしの王国に大それた罪を犯させようとしたのか。 あなたは、してはならぬことをわたしにしたのだ。」 10 アビレメクは更に、アブラハムに言った。 「どういうつもりで、こんなことをしたのか。」 11 アブラハムは答えた。 「この土地には、神を畏れることが全くないので、わたしは妻のゆえに殺されると思ったのです。 12 事実、彼女は、わたしの妹でもあるのです。 わたしの父の娘ですが、母の娘ではないのです。 それで、わたしの妻となったのです。 13 かって、神がわたしを父の家から離して、さすらいの旅に出されたとき、わたしは妻に、『わたしに尽くすと思って、どこへ行っても、わたしのことを、この人は兄ですと言ってくれないか』 と頼んだのです。 14 アビメレクは羊、牛、男女の奴隷などを取ってアブラハムに与え、また、妻サラを返して、 15 言った。 「この辺りはすべてわたしの領土です。 好きな所にお住まいください。」 16 また、サラに言った。 「わたしは、銀一千シュケルをあなたの兄上に贈りました。 それは、あなたとの間のすべての出来事の疑惑を晴らす証拠です。 これであなたの名誉は取り戻されるでしょう。」 17 アブラハムが神に祈ると、神はアビメレクとその妻、および侍女たちをいやされたので、再び子供を産むことができるようになった。 18 主がアブラハムの妻サラのゆえに、アビメレクの宮廷のすべての女たちの胎を堅く閉ざしておられたからである。
創世記 イサクの誕生 21
1 主は、約束されたとおりサラを顧み、さきに語られたとおりサラのために行われたので、 2 彼女は身ごもり、年老いたアブラハムとの間に男の子を産んだ。 それは、神が約束されていた時期であった。 3 アブラハムは、サラが産んだ自分の子をイサクと名付け、 4 神が命じられたとおり、八日目に、息子イサクに割礼を施した。 5 息子イサクが生まれたとき、アブラハムは百歳であった。 6 サラは言った。 「神はわたしに笑いをお与えになった。 聞く者は皆、わたしと笑い(イサク)を共にしてくれるでしょう。」 7 サラはまた言った。 「誰がアブラハムに言いえたでしょう サラは子に乳を含ませるだろうと。 しかしわたしは子を産みました 年老いた夫のために。」 8 やがて、子供は育って乳離れした。 アブラハムはイサクの乳離れの日に盛大な祝宴を開いた。
創世記 ハガルとイシュマエル
9 サラは、エジプトの女ハガルがアブラハムとの間に産んだ子が、イサクをからかっているのを見て、 10 アブラハムに訴えた。 「あの女とあの子を追い出してください。 あの女の息子は、わたしの子イサクと同じ跡継ぎとなるべきではありません。」 11 このことはアブラハムを非常に苦しめた。 その子も自分の子であったからである。 12 神はアブラハムに言われた。 「あの子供とあの女のことで苦しまなくてもよい。 すべてサラが言うことに聞き従いなさい。 あなたの子孫はイサクによって伝えられる。 13 しかし、あの女の息子も一つの国民の父とする。 彼もあなたの子であるからだ。」 14 アブラハムは、次の朝早く起き、パンと水の革袋を取ってハガルに与え、背中に負わせて子供を連れ去らせた。 ハガルは立ち去り、ベエル・シェバの荒れ野をさまよった。 15 革袋の水が無くなると、彼女は子供を一本の灌木の下に寝かせ、 16 「わたしは子供が死ぬのを見るのは忍びない」と言って、矢の届くほど離れ、子供の方を向いて座り込んだ。 彼女は子供の方を向いて座ると、声をあげて泣いた。 17 神は子供の泣き声を聞かれ、天から神の御使いがハガルに呼びかけて言った。 「ハガルよ、どうしたのか。 恐れることはない。 神はあそこにいる子供の泣き声を聞かれた。 18 立って行って、あの子を抱き上げ、お前の腕でしっかり抱き締めてやりなさい。 わたしは、必ずあの子を大きな国民とする。」 19 神がハガルの目を開かれたので、彼女は水のある井戸を見つけた。 彼女は行って革袋に水を満たし、子供に飲ませた。 20 神がその子と共におられたので、その子は成長し、荒れ野に住んで弓を射る者となった。 21 彼がバランの荒れ野に住んでいたとき、母は彼のために妻をエジプトの国から迎えた。
創世記 アビメレクとの契約
22 そのころ、アビメレクとその軍隊の長ピコルはアブラハムに言った。 「神は、あなたが何をなさっても、あなたと共におられます。 23 どうか、今ここでわたしとわたしの子、わたしの孫を欺かないと、神にかけて誓って(シャバ)ください。 わたしがあなたに友好的な態度をとってきたように、あなたも、寄留しているこの国とわたしに友好的な態度をとってください。」 24 アブラハムは答えた。 「よろしい。誓いましょう。」 25 アブラハムはアビメレクの部下たちが井戸を奪ったことについて、アビメレクを責めた。 26 アビメレクは言った。 「そんなことをした者がいたとは知りませんでした。 あなたも告げなかったし、わたしも今日まで聞いていなかったのです。」 27 アブラハムは、羊と牛の群れを連れて来て、アビメレクに贈り、二人は契約を結んだ。 28 アブラハムは更に、羊の群れの中から七匹(シェバ)の雌の子羊を別にしたので、 29 アビメレクがアブラハムに尋ねた。 「この七匹の雌の子羊を別にしたのは、何のためですか。」 30 アブラハムは答えた。 「わたしの手からこの七匹の雌の子羊を受け取って、わたしがこの井戸(ベエル)を掘ったことの証拠としてください。」 31 それで、この場所をベエル・シェバと呼ぶようになった。 二人がそこで誓いを交わしたからである。 32 二人はベエル・シェバで契約を結び、アビメレクと、その軍隊の長ピコルはペリシテの国に帰って行った。 33 アブラハムは、ベエル・シェバに一本のぎょりゅうの木を植え、永遠の神、主の御名を呼んだ。 34 アブラハムは、長い間、ペリシテの国に寄留した。
創世記 アブラハム、イサクをささげる 22
1 これらのことの後で、神はアブラハムを試された。 神が、「アブラハムよ」と呼びかけ、彼が、「はい」と答えると、 2 神は命じられた。 「あなたの息子、あなたの愛する独り子イサクを連れて、モリヤの地に行きなさい。 わたしが命じる山の一つに登り、彼を焼き尽くす献げ物としてささげなさい。」 3 次の朝早く、アブラハムはろばに鞍を置き、献げ物に用いる薪を割り、二人の若者と息子イサクを連れ、神の命じられた所に向って行った。 4 三日目になって、アブラハムが目を凝らすと、遠くにその場所が見えたので、 5 アブラハムは若者に言った。 「お前たちは、ろばと一緒にここで待っていなさい。 わたしと息子はあそこへ行って、礼拝をして、また戻ってくる。」 6 アブラハムは、焼き尽くす献げ物に用いる薪を取って、息子イサクに背負わせ、自分は火と刃物を手に持った。 二人は一緒に歩いて行った。 7 イサクは父アブラハムに、「わたしのお父さん」と呼びかけた。 彼が、「ここにいる。 わたしの子よ」と答えると、イサクは言った。 「火と薪はここにありますが、焼き尽くす献げ物にする子羊はどこにいるのですか。」 8 アブラハムは答えた。 「わたしの子よ、焼き尽くす献げ物の子羊はきっと神が備えてくださる。」 二人は一緒に歩いて行った。 9 神が命じられた場所に着くと、アブラハムはそこに祭壇を築き、薪を並べ、息子イサクを縛って祭壇の薪の上に載せた。 10 そしてアブラハムは、手を伸ばして刃物を取り、息子を屠ろうとした。 11 そのとき、天から主の御使いが、「アブラハム、アブラハム」と呼びかけた。 彼が、「はい」と答えると、 12 御使いは言った。 「その子に手を下すな。何もしてはならない。あなたが神を畏れる者であることが、今、分かったからだ。あなたは、自分の独り子である息子すら、わたしにささげることを惜しまなかった。」 13 アブラハムは目を凝らして見回した。すると、後ろの木の茂みに一匹の雄羊が角を取られていた。アブラハムは行ってその雄羊を捕まえ、息子の代わりに焼き尽くす献げ物としてささげた。 14 アブラハムはその場所をヤーウェ・イルエ(主は備えてくださる)と名付けた。そこで、人々は今日でも、「主の山に、備えあり(イエラエ)と言っている。 15 主の御使いは、再び天からアブラハムに呼びかけた。 16 御使いは言った。 「わたしは自らにかけて誓う、と主は言われる。あなたがこの事を行い、自分の独り子である息子すら惜しまなかったので、 17 あなたを豊かに祝福し、あなたの子孫を天の星のように、海辺の砂のように増やそう。あなたの子孫は敵の城門を勝ち取る。 18 地上の諸国民はすべて、あなたの子孫によって祝福を得る。あなたがわたしの声に聞き従ったからである。 19 アブラハムはベエル・シェバに住んだ。
創世記 ナホルの子孫
20 これらのことの後で、アブラハムに知らせが届いた。「ミルカもまた、あなたの兄弟ナホルとの間に子供を産みました。 21 長男はウツ、その弟はブズ、次はアラムの父ケムエル、 22 それからケセド、ハゾ、ピルダシュ、イドラフ、ベトエルです。」 23 ベトエルはリベカの父となった。 ミルカは、アブラハムの兄弟ナホルとの間にこれら八人の子供を産んだ。 24 ナホルの側女で、レウマという女性もまた、テバ、ガハム、タハシュ、マアカを産んだ。
創世記 サラの死と埋葬 23
1 サラの生涯は百二十七年であった。これがサラの生きた年数である。 2 サラは、カナン地方のキルヤト・アルバ、すなわちネブロンで死んだ。アブラハムは、サラのために胸を打ち、嘆き悲しんだ。 3 アブラハムは、遺体の傍らから立ち上がり、ヘトの人人に頼んだ。 4 「わたしは、あなたがたのところに一時滞在する寄留者ですが、あなたがたが所有する墓地を譲ってくださいませんか。亡くなった妻を葬ってやりたいのです。」 5 ヘトの人々はアブラハムに答えた。「どうか、 6 御主人、お聞きください。あなたは、わたしどもの中で神に選ばれた方です。どうぞ、わたしどもの最も良い墓地を選んで、亡くなられた方を葬ってください。わたしどもの中には墓地の提供を拒んで、亡くなられた方を葬らせない者など、一人もいません。」 7 アブラハムは改めて国の民であるヘトの人々に挨拶をし、 8 頼んだ。 「もし、亡くなった妻を葬ることをお許しいただけるなら、ぜひ、わたしの願いを聞いてください。ツォハルの子、エフロンにお願いして、 9 あの方の畑の端にあるマクペラノ洞穴を譲っていただきたいのです。十分な銀をお支払いしますから、皆様方の間に墓地を所有させてください。」 10 エフロンはそのとき、ヘトの人々の間に座っていた。 ヘトの人エフロンは、町の門広場に集まって来たすべてのヘトの人々が聞いているところで、アブラハムに答えた。 11 「どうか、御主人、お聞きください。あの畑は差し上げます。あそこにある洞穴も差し上げます。わたしの一族が立ち会っているところで、あなたに差し上げますから、早速、亡くなられた方を葬ってください。」 12 アブラハムは国の民の前で挨拶をし、 13 国の民の聞いているところで、エフロンに頼んだ。 「わたしの願いを聞き入れてくださるなら、どうか、畑の代金を払わせてください。どうぞ、受け取ってください。そうすれば、亡くなった妻をあそこに葬ってやれます。」 14 エフロンはアブラハムに答えた。「どうか、 15 御主人、お聞きください。あの土地は銀四百シェケルのものです。それがあなたとわたしの間で、どれほどのことでしょう。早速、亡くなられた方を葬ってください。」 16 アブラハムはこのエフロンの言葉を聞き入れ、エフロンがヘトの人々が聞いているところで言った値段、銀四百シェケルを商人の通用銀の重さで量り、エフロンに渡した。 17 こうして、マレムの前のマクペラにあるエフロンの畑は、土地とそこの洞穴と、その周囲の境界内に生えている木を含め、 18 町の門の広場に来ていたすべてのヘトの人々の立ち会いのもとに、アブラハムの所有となった。 19 その後アブラハムは、カナン地方のヘブロンにあるマレムの前のマクペラの畑の洞穴に妻のサラを葬った。 20 その畑とそこの洞穴は、こうして、ヘトの人々からアブラハムが買い取り、墓地として所有することになった。
創世記 イサクとリベカの結婚 24
1 アブラハムは多くの日を重ね老人になり、主は何事においてもアブラハムに祝福をお与えになっていた。 2 アブラハムは家の全財産を任せている年寄りの僕に言った。 「手をわたしの腿の間に入れ、 3 天の神、地の神である主にかけて誓いなさい。 あなたはわたしの息子の嫁をわたしが今住んでいるカナンの娘から取るのではなく、 4 わたしの一族のいる故郷に行って、嫁を息子イサクのために連れて来るように。」 5 僕は尋ねた。 「もしかすると、その娘がわたしに従ってこの土地へ来たくないと言うかもしれません。 その場合には、御子息をあなたの故郷にお連れしてよいでしょうか。」 6 アブラハムは答えた。 「決して、息子をあちらへ行かせてはならない。 7 天の神である主は、わたしを父の家、生まれ故郷から連れ出し、『あなたの子孫にこの土地を与える』と言って、わたしに誓い、約束してくださった。 その方がお前の行く手に御使いを遣わして、そこから息子に嫁を連れて来ることができるようにしてくださる。 8 もし女がお前に従ってこちらへ来たくないと言うならば、お前は、わたしに対するこの誓いを解かれる。 ただわたしの息子をあちらへ行かせることだけはしてはならない。」 9 そこで、僕は主人アブラハムの腿の間に手を入れ、このことを彼に誓った。 10 僕は主人のらくだの中から十頭を選び、主人から預かった高価な贈り物を多く携え、アラム・ナハライムのナホルの町に向って出発した。 11 女たちが水くみに来る夕方、彼は、らくだを町外れの井戸の傍らに休ませて、 12 祈った。 「主人アブラハムの神、主よ。 どうか、今日、わたしを顧みて、主人に慈しみを示してください。 13 わたしはい今、御覧のように、泉の傍らに立っています。 この町に住む人の娘たちが水を汲みに来たとき、 14 その一人に、「どうか、水がめを傾けて、飲ませてください」と頼んでみます。 その娘が「どうぞ、お飲みください。 らくだにも飲ませてあげましょう」と答えれば、彼女こそ、あなたがあなたの僕イサクの嫁としてお決めになったものとさせてください。 そのことによってわたしは、あなたが主人に慈しみを示されたのを知るでしょう。」 15 僕がまだ祈り終わらないうちに、見よ、リベカが水がめを肩に載せてやってきた。 彼女は、アブラハムの兄弟ナホルとその妻ミルカの息子ベトエルの娘で、 16 際立って美しく、男を知らない処女であった。 彼女が泉に下りて行き、水がめに水を満たして上がって来ると、 17 僕は駆け寄り、彼女に向い合って語りかけた。 「水がめの水を少し飲ませてください。」 18 すると彼女は、「どうぞ、お飲みください」と答え、すぐに水がめを下ろして手に抱え、彼に飲ませた。 19 彼が飲み終わると、彼女は、「らくだにも水をくんで来て、たっぷり飲ませてあげましょう」と言いながら、 20 すぐにかめの水を水槽に空け、また水をくみに井戸に走って行った。 こうして、彼女はすべてのらくだに水をくんでやった。 21 その間、僕は主がこの旅の目的をかなえてくださるかどうかを知ろうとして、黙って彼女を見つめていた。 22 らくだが水を飲み終えると、彼は重さ一ベカの金の鼻輪一つと十シュケルの金の腕輪二つを取り出しながら、 23 「あなたは、どなたの娘さんですか。 教えてください。 お父さまの家にはわたしどもが泊めていただける場所があるのでしょうか」と尋ねた。 24 すると彼女は、「わたしは、ナホルとその妻ミルカの子のベトエルの娘です」と答え、 25 更に続けて、「わたしどもの所にはわらも餌もたくさんあります。 お泊りになる場所もございます」と言った。 26 彼はひざまずいて主を伏し拝み、 27 「主人アブラハムの神、主はたたえられますように。 主の慈しみとまことはわたしの主人を離れず、主はわたしの旅路を導き、主人の一族の家にたどりつかせてくださいました」と祈った。 28 娘は走って行き、母の家の者に出来事を告げた。 29 リベカにはラバンという兄がいたが、ラバンはすぐに町の外れの泉の傍らにいるその人のところへ走った。 30 妹が着けている鼻輪と腕輪を見、妹レベカが、「その人がこう言いました」と話しているのを聞いたためである。 彼が行ってみると、確かに泉のほとりのらくだのそばにその人が立っていた。 31 そこで、ラバンは言った。 「おいでください。 主に祝福されたお方。 なぜ、町の外に立っておられるのですか。 わたしが、お泊りになる部屋もらくだの休む場所も整えました。」 32 その人は家に来て、らくだの鞍をはずした。 らくだにはわらと餌が与えられ、その人と従者たちには足を洗う水が運ばれた。 33 やがて食事が前に並べられたが、その人は言った。 「用件をお話しするまでは、食事をいただくわけにはまいりません。」 「お話しください」とラバンが答えると、 34 その人は語り始めた。 「わたしはアブラハムの僕でございます。 35 主がわたしの主人を大層祝福され、羊や牛の群れ、金銀、男女の奴隷、らくだやろばなどをお与えになったので、主人は裕福になりました。 36 奥様のサラは、年をとっていたのに、わたしの主人との間に男の子を産みました。 その子にわたしの主人は全財産をお譲りになったのです。 37 主人はわたしに誓いを立てさせ、「あなたはわたしの息子の嫁を、わたしが今住んでいるカナンの土地の娘から選び取るな。 38 わたしの父の家、わたしの親族のところへ行って、息子の嫁を連れて来るように」と命じました。 39 わたしが主人に、「もしかすると、相手の女がわたしに従って来たくないと言うかもしれません」と申しますと、 40 主人は、「わたしは今まで主の導きに従って歩んできた。 主は御使いを遣わしてお前に伴わせ、旅の目的をかなえてくださる。 お前は、わたしの親族、父の家から息子のために嫁を連れて来ることができよう。 41 そのとき初めて、お前はわたしに対する誓いを解かれる。 またもし、わたしの親族のところに行っても、娘をもらえない場合には、お前はこの誓いを解かれる」と言いました。 42 こういうわけで、わたしは、今日、泉の傍らにやって来て、祈っておりました。 「主人アブラハムの神、主よ。 わたしがたどってきたこの旅の目的を、もしあなたが本当にかなえてくださっるおつもりなら、 43 わたしは今、御覧のように、泉の傍らに立っていますから、どうか、おとめが水をくみにやって来るようになさってください。 彼女に、あなたの水がめの水を少し飲ませてください、と頼んでみます。 44 どうぞお飲みください、らくだにも水をくんであげましょう、と彼女が答えましたなら、その娘こそ、主が主人の息子のためにお決めになった方であるといたします。」 45 わたしがまだ心に言い終わらないうちに、リベカさまが水がめを肩に載せて来られたではありませんか。 そして、泉に下りて行き、水をおくみになりました。 わたしが、「どうか、水を飲ませてください」と頼みますと、 46 レベカさまはすぐに水がめを肩から下ろして、「どうぞお飲みください。 らくだにも飲ませてあげましょう」と答えてくださいました。 わたしも飲み、らくだも飲ませていただいたのです。 47 「あなたは、どなたの娘さんですか」とお尋ねしたところ、「ナホルとミルカの子ベトエルの娘です」と答えられましたので、わたしは鼻輪を鼻に、腕輪を腕に着けて差し上げたのです。 48 わたしはひざまずいて主を伏し拝み、主人アブラハムの神、主をほめたたえました。 主は、主人の子息のために、ほかならぬ主人の一族のお嬢さまを迎えることができるように、わたしの旅路をまことをもって導いてくださいました。 49 あなたがたが、今わたしの主人に慈しみとまことを示してくださるおつもりならば、そうおっしゃってください。 そうでなければ、そうとおっしゃってください。 それによって、わたしは進退を決めたいと存じます。」 50 ラバンとベトエルは答えた。 「このことは主の御意志ですから、わたしどもが善し悪しを申すことはできません。 51 リベカはここにおります。 どうぞお連れください。 主がお決めになったとおり、御主人の御子息の妻になってください。」 52 アブラハムの僕はこの言葉を聞くと、地に伏して主を拝した。 53 そして、金銀の装身具や衣装を取り出してリベカに贈り、その兄と母にも高価な品物を贈った。 54 僕と従者たちは酒食のもてなしを受け、そこに泊まった。 次の朝、皆が起きたとき、僕が、「主人のところへ帰らせてください」と言うと、 55 リベカの兄と母は、「娘をもうしばらく、十日ほど、わたしたちの手もとに置いて、それから行かせるようにしたいのです」と頼んだ。 56 しかし僕は言った。 「わたしを、お引き止めにならないでください。 この旅の目的をかなえさせてくださったのは主なのですから。 わたしを帰らせてください。 主人のところへ参ります。」 57 「娘を呼んで、その口から聞いてみましょう」と彼らは言い、 58 リベカを呼んで、「お前はこの人と一緒に行きますか」と尋ねた。 「はい、参ります」と彼女は答えた。 59 彼らは妹であるリベカとその乳母、アブラハムの僕とその従者たちを一緒に出立させることにし、 60 リベカを祝福して言った。
「わたしたちの妹よ
あなたが幾千万の民となるように。
あなたの子孫が敵の門を勝ち取るように。」
61 リベカは侍女たちと共に立ち上がり、らくだに乗り、その人の後に従った。 僕はリベカを連れて行った。 62 イサクはネゲブ地方に住んでいた。 そのころ、ベエル・ラハイ・ロイから帰ったところであった。 63 夕方暗くなるころ、野原を散策していた。 目を上げて眺めると、らくだがやって来るのが見えた。 64 リベカも目を上げて眺め、イサクを見た。 リベカはらくだから下り、 65 「野原を歩いて、わたしたちを迎えに来るあの人は誰ですか」と僕に尋ねた。 「あの方がわたしの主人です」と僕が答えると、リベカはベールを取り出してかぶった。 66 僕は、自分が成し遂げたことをすべてイサクに報告した。 67 イサクは、母サラの天幕に彼女を案内した。 彼はリベカを迎えて妻とした。 イサクは、リベカを愛して、亡くなった母に代わる慰めを得た。
創世記 ケトラによるアブラハムの子孫 25
1 アブラハムは、再び妻をめとった。 その名はケトラと言った。 2 彼女は、アブラハムとの間にジムラン、ヨクシャン、メダン、ミディアン、イシュバク、シュアを産んだ。 3 ヨクシャンにはシェバとデダンが産まれた。 デダンの子孫は、アシュル人、レトシム人、レオミム人であった。 4 ミディアンの子孫は、エフェ、エフェル、ハノク、アビダ、エルダアであった。 これらは皆、ケトラの子孫であった。 5 アブラハムは、全財産をイサクに譲った。 6 側女の子供たちには贈り物を与え、自分が生きている間に、東の方、ケデム地方へ移住させ、息子イサクから遠ざけた。
創世記 アブラハムの死と埋葬 25
7 アブラハムの生涯は百七十五年であった。 8 アブラハムは長寿を全うして息を引き取り、満ち足りて死に、先祖の列に加えられた。 9 息子イサクとイシュマエルは、マクベラの洞穴に彼を葬った。 その洞穴はマレムの前の、ヘト人ツォハルの子エフロンの畑の中にあったが、 10 その畑は、アブラハムがヘトの人々から買い取ったものである。 そこに、アブラハムは妻サラと共に葬られた。 11 アブラハムが死んだ後、神は息子のイサクを祝福された。 イサクは、ベエル・ラハイ・ロイの近くに住んだ。
創世記 イシュマエルの子孫 25
12 サラの女奴隷であったエジプト人ハガルが、アブラハムとの間に産んだ息子イシュマエルの系図は次のとおりである。 13 イシュマエルの息子たちの名前は、生まれた順に挙げれば、長男がネバヨト、次はケダル、アドベエル、ミブサム、 14 ミシュマ、ドマ、マサ、 15 ハダド、テマ、エトル、ナフィシェ、ケデマである。 16 以上がイシュマエルの息子たちで、村落や宿営地に従って付けられた名前である。 彼らはそれぞれの部族の十二人の首長であった。 17 イシュマエルの生涯は百三十七年であった。 彼は息を引き取り、死んで先祖の列に加えられた。 18 イシュマエルの子孫は、エジプトに近いシュルに接したハビラからアシュル方面に向かう道筋に沿って宿営し、互に敵対しつつ生活していた。
創世記 エサウとヤコブの誕生 25
19 アブラハムの息子のイサクの系図は次のとおりである。 アブラハムにはイサクが生まれた。 20 イサクは、リベカと結婚したとき四十歳であった。 リベカは、パダン・アラムのアラム人ベトエルの娘で、アラム人ラバンの妹であった。 21 イサクは、妻に子供ができなかったので、妻のために主に祈った。 その祈りは主に聞き入れられ、妻リベカは身ごもった。 22 ところが、胎内で子供たちが押し合うので、リベカは「これでは、わたしはどうなるのでしょう」と言って、主の御心を尋ねるために出かけた。 23 主は彼女に言われた。
「二つの国民があなたの胎内に宿っており
二つの民があなたの腹の内で分かれ争っている。
一つの民が他の民より強くなり
兄が弟に仕えるようになる。」
24 月が満ちて出産の時が来ると、胎内にはまさしく双子がいた。 25 先に出てきた子は赤くて、全身が毛皮の衣のようであったので、エサウと名付けた。 26 その後で弟が出てきたが、その手がエサウのかかと(アケブ)をつかんでいたので、ヤコブと名付けた。 リベカが二人を産んだとき、イサクは六十歳であった。
創世記 長子の特権 25
27 二人の子供は成長して、エサウは巧みな狩人で野の人となったが、ヤコブは穏やかな人で天幕の周りで働くのを常とした。 28 イサクはエサウを愛した。 狩りの獲物が好物だったからである。 しかし、リベカはヤコブを愛した。 29 ある日のこと、ヤコブが煮物をしていると、エサウが疲れきって野原から帰って来た。 30 エサウはヤコブに言った。 「お願いだ、その赤いもの(アドム)、そこの赤いものを食べさせてほしい。 わたしは疲れきっているんだ。」 彼が名をエドムとも呼ばれたのはこのためである。 31 ヤコブは言った。 「まず、お兄さんの長子の権利を譲ってきださい。」 32 「ああ、もう死にそうだ。 長子の権利などどうでもよい」とエサウが答えると、 33 ヤコブは言った。 「では、今すぐに誓ってください。」 エサウは誓い、長子の権利をヤコブに譲ってしまいました。 34 ヤコブはエサウにパンとレンズ豆の煮物を与えた。 エサウは飲み食いしたあげく立ち、去って行った。 こうしてエサウは、長子の権利を軽んじた。
創世記 イサクのゲラル滞在 26
1 アブラハムの時代にあった飢饉とは別に、この地方にまた飢饉があったので、イサクはゲラルにいるペリシテ人の王アビメルクのところへ行った。 2 そのとき、主がイサクに現れて言われた。
「エジプトへ下って行ってはならない。 わたしが命じる土地に滞在しなさい。 3 あなたがこの土地に寄留するならば、わたしはあなたと共にいてあなたを祝福し、これらの土地をすべてあなたとその子孫に与え、あなたの父アブラハムに誓ったわたしの誓いを成就する。 4 わたしはあなたの子孫を天の星のように増やし、これらの土地をすべてあなたの子孫に与える。 地上の諸国民はすべて、あなたの子孫によって祝福を得る。 5 アブラハムがわたしの声に聞き従い、わたしの戒めや命令、掟や教えを守ったからである。 6 そこで、イサクはゲラルに住んだ。 7 その土地の人たちがイサクの妻のことを尋ねたとき、彼は、自分の妻だと言うのを恐れて、「わたしの妹です」と答えた。 リベカが美しかったので、土地の者たちがリベカゆえに自分を殺すのではないかと思ったからである。 8 イサクは長く滞在していたが、あるとき、ペリシテ人の王アビメレクが窓から下を眺めると、イサクが妻のリベカと戯れていた。 9 アビメレクは早速イサクを呼びつけて言った。 「あの女は、本当はあなたの妻ではないか。 それなのになぜ、『わたしの妹ですと』などと言ったのか。」 「彼女のゆえにわたしは死ぬことになるかもしれないと思ったからです」とイサクは答えると、 10 アビメレクは言った。 「あなたは何ということをしたのだ。 民のだれかがあなたの妻と寝たら、あなたは我々を罪に陥れるところであった。」 11 アビメレクはすべての民に命令を下した。 「この人、またはその妻に危害を加える者は、必ず死刑に処せられる。」 12 イサクがその土地に穀物の種を蒔くと、その年のうちに百倍もの収穫があった。 イサクが主の祝福を受けて、 13 豊かになり、ますます富み栄えて、 14 多くの羊や牛の群れ、それに多くの召し使いを持つようになると、ペリシテ人はイサクをねたむようになった。
(1) 創世記 天地の創造 1-1 から イサクのゲラル滞在 26-14 まで
1 初めに、神は天地を創造された。 2 地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、?~の靈が水の面を動いていた。 3 ?~は言われた。「光あれ。」こうして、光があった。 4 ?~は光を見て、良しとされた。?~は光と闇を分け、 5 光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第一の日である。6 ?~は言われた。「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。」 7 ?~は大空を造り、大空の下と大空の上に水を分けさせられた。そのようになった。 8 ?~は大空を天と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第二の日である。 9 ?~は言われた。「天の下の水は一つ所に集まれ。乾いた所が現れよ。」そのようになった。 10 神は乾いた所を地と呼び、水の集まった所を海と呼ばれた。神はこれを見て、良しとされた。 11 神は言われた。「地は草を芽生えさせよ。種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける果樹を、地に芽生えさせよ。」そのようになった。 12 地は草を芽生えさせ、それぞれの種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける木を芽生えさせた。?~はこれを見て、良しとされた。 13 夕べがあり、朝があった。第三の日である。 14 神は言われた。「天の大空に光る物があって、昼と夜を分け、季節のしるし、日や年のしるしとなれ。 15 天の大空に光る物があって、地を照らせ。」そのようになった。 16 ?~は二つの大きな光る物と星を造り、大きな方に昼を治めさせ、小さな方に夜を治めさせられた。 17 ?~はそれらを天の大空に置いて、地を照らさせ、 18 昼と夜を治めさせ、光と闇を分けさせられた。?~はこれを見て、良しとされた。 19 夕べがあり、朝があった。第四の日である。 20 ?~は言われた。「生き物が水の中に群がれ。鳥は地の上、天の大空の面を飛べ。」 21 ?~は水に群がるもの、すなわち大きな怪物、うごめく生き物をそれぞれに、また、翼ある鳥をそれぞれに創造された。?~はこれを見て、良しとされた。 22 ?~はそれらのものを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、海の水に満ちよ。鳥は地の上に増えよ。」 23 夕べがあり、朝があった。第五の日である。 24 ?~は言われた。「地は、それぞれの生き物を産み出せ。家畜、這うもの、地の獣をそれぞれに産み出せ。」そのようになった。 25 ?~はそれぞれの地の獣、それぞれの家畜、それぞれの土を這うものを造られた。?~はこれを見て、良しとされた。 26 ?~は言われた。「我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。そして海の魚、空の鳥、家畜、地の獣、地を這うものすべてを支配させよう。」 27 ?~は御自分にかたどって人を創造された。?~にかたどって創造された。男と女に創造された。28 ?~は彼らを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ。」 29 ?~は言われた。「見よ、全地に生える、種を持つ草と種を持つ実をつける木を、すべてあなたたちに与えよう。それがあなたたちの食べ物となる。 30 地の獣、空の鳥、地を這うものなど、すべて命あるものにはあらゆる青草をたべさせよう。」そのようになった。 31 ?~はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった。夕べがあり、朝があった。第六の日である。
2
1 天地万物は完成された。 2 第七の日に、?~は御自分の仕事を完成され、第七の日に、神は御自分の仕事を離れ、安息なさった。 3 この日に?~はすべての創造の仕事を離れ、安息なさったので、第七の日を?~は祝福し、聖別された。 4 これが天地創造の由来である。主なる?~が地と天を造られたとき、 5 地上には野の木も、野の草も生えていなかった。主なる?~が地上に雨をお送りにならなかったからである。また土を耕す人もいなかった。 6 しかし、水が地下から湧き出て、土の面をすべて潤した。 7 主なる?~は、土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった。 8 主なる?~は、東の方のエデンに園を設け、自ら形づくった人をそこに置かれた。 9 主なる?~は、見るからに好ましく、食べるに良いものをもたらすあらゆる木を地に生えいでさせ、また園の中央には、命の木と善悪の知識の木を生えいでさせられた。 10 エデンから一つの川が流れ出ていた。園を潤し、そこで分かれて、四つの川となっていた。 11 第一の川の名はピションで、金を産出するハビラ地方全域を巡っていた。 12 その金は良質であり、そこではまた、琥珀の類やラピス・ラズリも産出した。 13 第二の川の名はギホンで、クシュ地方全域を巡っていた。 14 第三の川の名はチグリスで、アシュルの東の方を流れており、第四の川の名はユーフラテスであった。 15 主なる?~は人を連れて来て、エデンの園に住まわせ、人がそこを耕し、守るようにされた。 16 主なる?~は人に命じて言われた。「園のすべての木から取って食べなさい。 17 ただし、善悪の知識の木からは、決して食べてはならない。食べると必ず死んでしまう。」 18 主なる?~は言われた。「人が一人でいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう。」 19 主なる?~は、野のあらゆる獣、空のあらゆる鳥を土で形づくり、人のところへ持って来て、人がそれぞれどう呼ぶか見ておられた。人が呼ぶと、それはすべて、生き物の名となった。 20 人はあらゆる家畜、空の鳥、野のあらゆる獣に名を付けたが、自分に合う助ける者は見つけることができなかった。 21 主なる?~はそこで、人を深い眠りに落とされた。人が眠り込むと、あばら骨の一部を抜き取り、その跡を肉でふさがれた。 22 そして、人から抜き取ったあばら骨で女を造り上げられた。主なる?~が彼女を人のところへ連れて来られると、 23 人は言った。「ついに、これこそわたしの骨の骨わたしの肉の肉。これこそ、女(イシャー)と呼ぼう まさに、男(イシュ)から取られたものだから。」 24 こういうわけで、男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる。 25 人と妻は二人とも裸であったが、恥ずかしがりはしなかった。
創世記 蛇の誘惑 3
1 主なる?~が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった。蛇は女に言った。「園のどの木からも食べてはいけない、などと神は言われたのか。」 2 女は蛇に答えた。「わたしたちは園の木の果実を食べてよいのです。 3 でも、園の中央に生えている木の果実だけは、食べてはいけない。触れてもいけない、死んではいけないから、と?~様はおっしゃいました。」 4 蛇は女に言った。「決して死ぬことはない。 5 それを食べると、目が開け、?~のように善悪を知るものとなることを?~はご存じなのだ。」 6 女が見ると、その木はいかにもおいしそうで、目を引き付け、賢くなるように唆していた。女は実を取って食べ、一緒にいた男にも渡したので、彼も食べた。 7 二人の目は開け、自分たちが裸であることを知り、二人はいちじくの葉をつづり合わせ、腰を覆うものとした。 8 その日、風の吹くころ、主なる?~が園の中を歩く音が聞こえてきた。アダムと女が、主なる?~の顔を避けて、園の木の間に隠れると、 9 主なる?~はアダムを呼ばれた。「どこにいるのか」 10 彼は答えた。「あなたの足音が園の中に聞こえたので、恐ろしくなり、隠れております。わたしは裸ですから。」 11 ?~は言われた。「お前が裸であることを誰が告げたのか。取って食べるなと命じた木から食べたのか。」 12 アダムは答えた。「あなたがわたしと共にいるようにしてくださった女が、木から取って与えたので、食べました。」 13 主なる?~は女に向かって言われた。「何ということをしたのか。」女は答えた。「蛇がだましたので、食べてしまいました。」 14 主なる?~は、蛇に向かって言われた。「このようなことをしたお前はあらゆる家畜、あらゆる野の獣の中で呪われるものとなった。お前は、生涯這いまわり、塵を食らう。 15 お前と女、お前の子孫と女の子孫の間にわたしは敵意を置く。彼はお前の頭を砕き お前は彼のかかとを砕く。」 16 ?~は女に向かって言われた。「お前のはらみの苦しみを大きなものにする。お前は、苦しんで子を産む。お前は男を求め 彼はお前を支配する。」 17 ?~はアダムに向かって言われた。「お前は女の声に従い 取って食べるなと命じた木から食べた。お前のゆえに、土は呪われるものとなった。お前は、生涯食べ物を得ようと苦しむ。 18 お前に対して 土は茨とあざみを生えいでさせる 野の草を食べようとするお前に。 19 お前は顔に汗を流してパンを得る 土に返るときまで。お前がそこから取られた土に。塵にすぎないお前は塵に返る。」 20 アダムは女をエバ(命)と名付けた。彼女がすべて命あるものの母となったからである。 21 主なる?~は、アダムと女に皮の衣を作って着せられた。 22 主なる?~は言われた。「人は我々の一人のように、善悪を知る者となった。今は、手を伸ばして命の木からも取って食べ、永遠に生きる者となるおそれがある。」 23 主なる?~は、彼をエデンの園から追い出し、彼に、自分がそこから取られた土を耕させることにされた。 24 こうしてアダムを追放し、命の木に至る道を守るために、エデンの園の東にケルビムと、きらめく剣の炎を置かれた。
創世記 カインとアペル 4
1 さて、アダムは妻エバを知った。彼女は身ごもってカインを産み、「わたしは主によって男子を得た」と言った。 2 彼女はまたその弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。 3 時を経て、カインは土の実りを主のもとに献げ物として持って来た。 4 アベルは羊の群れの中から肥えた初子を持って来た。主はアベルとその献げ物に目を留められたが、 5 カインとその献げ物には目を留められなかった。カインは激しく怒って顔を伏せた。 6 主はカインに言われた。「どうして怒るのか。どうして顔を伏せるのか。 7 もしお前が正しいなら、顔を上げられるはずではないか。正しくないなら、罪は戸口で待ち伏せており、お前を求める。お前はそれを支配せねばならない。」 8 カインが弟アベルに言葉をかけ、二人が野原に着いたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。 9 主はカインに言われた。「お前の弟アベルは、どこにいるのか。」カインは答えた。「知りません。わたしは弟の番人でしょうか。」 10 主は言われた。「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。 11 今、お前は呪われる者となった。お前が流した弟の血を、口を開けて飲み込んだ土よりもなお、呪われる。 12 土を耕しても、土はもはやお前のために作物を産み出すことはない。お前は地上をさまよい、さすらう者となる。」 13 カインは主に言った。「わたしの罪は重すぎて負いきれません。 14 今日、あなたがわたしをこの土地から追放なさり、わたしが御顔から隠されて、地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう。」 15 主はカインに言われた。「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。 16 カインは主の前を去り、エデンの東、ノド(さすらい)の地に住んだ。 17 カインは妻を知った。彼女は身ごもってエノクを産んだ。カインは町を建てていたが、その町を息子の名前にちなんでエノクと名付けた。 18 エノクにはイラドが生まれた。イラドはメフヤエルの父となり、メフヤエルはメトシャエルの父となり、メトシャエルはレメクの父となった。
19 レメクは二人の妻をめとった。一人はアダ、もう一人はツィラと言った。 20 アダはヤバルを産んだ。ヤバルは、家畜を飼い天幕に住む者の先祖となった。 21 その弟はユバルといい、竪琴や笛を奏でる者すべての先祖となった。 22 ツィラもまた、トバル・カインを産んだ。彼は青銅や鉄でさまざまの道具を作る者となった。トバル・カインの妹はナアマといった。 23 さて、レメクは妻に言った。「アダとツィラよ、わが声を聞け。レメクの妻たちよ、わが言葉に耳を傾けよ。わたしは傷の報いに男を殺し 打ち傷の報いに若者を殺す。 24 カインのための復讐が七倍なら レメクのためには七十七倍。」 25 再び、アダムは妻を知った。彼女は男の子を産み、セトと名付けた。カインがアベルを殺したので、?~が彼に代わる子を授け(シャト)られたからである。 26 セトにも男の子が生まれた。彼はその子をエノシュと名付けた。主の御名を呼び始めたのは、この時代のことである。
創世記 アダムの系図 5
1 これはアダムの系図の書である。?~は人を創造された日、?~に似せてこれを造られ、 2 男と女に創造された。創造の日に、彼らを祝福されて、人と名付けられた。 3 アダムは百三十歳になったとき、自分に似た、自分にかたどった男の子をもうけた。アダムはその子をセトと名付けた。 4 アダムは、セトが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 5 アダムは九百三十年生き、そして死んだ。 6 セトは百五歳になったとき、エノシュをもうけた。 7 セトはエノシュが生まれた後八百七年生きて、息子や娘をもうけた。 8 セトは九百十二年生き、そして死んだ。 9 エノシュは九十歳になったとき、ケナンをもうけた。 10 エノシュは、ケナンが生まれた後八百十五年生きて、息子や娘をもうけた。 11 エノシュは九百五年生き、そして死んだ。 12 ケナンは七十歳になったとき、マハラルエルをもうけた。 13 ケナンはマハラルエルが生まれた後八百四十年生きて、息子や娘をもうけた。 14 ケナンは九百十年生き、そして死んだ。 15 マハラルエルは六十五歳になったとき、イエレドをもうけた。 16 マハラルエルは、イエレドが生まれた後八百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 17 マハラルエルは八百九十五年生き、そして死んだ。 18 イエレドは百六十二歳になったとき、エノクをもうけた。 19 イエレドは、エノクが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 20 イエレドは九百六十二年生き、そして死んだ。 21 エノクは六十五歳になったとき、メトシェラもうけた。 22 エノクは、メトシェラが生まれた後、三百年?~と共に歩み、息子や娘をもうけた。 23 エノクは三百六十五年生きた。 24 エノクは?~と共に歩み、?~が取られたのでいなくなった。 25 メトシェラは百八十七歳になったとき、レメクをもうけた。 26 メトシェラは、レメクが生まれた後七百八十二年生きて、息子や娘をもうけた。 27 メトシェラは九百六十九年生き、そして死んだ。 28 レメクは百八十二歳になったとき、男の子をもうけた。 29 彼は、「主の呪いを受けた大地で働く我々の手の苦労を、この子は慰めてくれるだろう」と言って、その子をノア(慰め)と名付けた。 30 レメクは、ノアが生まれた後五百九十五年生きて、息子や娘をもうけた。 31 レメクは七百七十七年生き、そして死んだ。 32 ノアは五百歳になったとき、セム ハム ヤフェトをもうけた。
創世記 洪水 6
1 さて、地上に人が増え始め、娘たちが生まれた。 2 ?~の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、おのおの選んだ者を妻にした。 3 主は言われた。 「わたしの霊は人の中に永久にとどまるべきではない。人は肉にすぎないのだから。」こうして、人の一生は百二十年となった。 4 当時もその後も、地上にはネフィリムがいた。これは、?~の子らが人の娘たちのところに入って産ませた者であり、大昔の名高い英雄たちであった。 5 主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、 6 地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた。 7 主は言われた。 「わたしは人を創造したが、これを地上からぬぐい去ろう。人だけでなく、家畜も這うものも空の鳥も。わたしはこれらを造ったことを後悔する。」 8 しかし、ノアは主の好意を得た。 9 これはノアの物語である。その世代の中で、ノアは?~に従う無垢な人であった。ノアは?~と共に歩んだ。 10 ノアには三人の息子、セム ハム ヤフェトが生まれた。 11 この地は?~の前に堕落し、不法に満ちていた。 12 ?~は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。 13 ?~はノアに言われた。「すべて肉なるものを終わらせる時がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす。 14 あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟には小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。 15 次のようにしてそれを造りなさい。箱舟の長さを三百アンマ、幅を五十アンマ、高さを三十アンマにし、 16 箱舟に明かり取りを造り、上から一アンマにして、それを仕上げなさい。箱舟の側面には戸口を造りなさい。また、一階と二階と三階を造りなさい。 17 見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊をもつ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべてのものは息絶える。 18 わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。 19 また、すべて命あるもの、すべて肉なるものから、二つずつ箱舟に連れて入り、あなたと共に生き延びるようにしなさい。それらは、雄と雌でなければならない。 20 それぞれの鳥、それぞれの家畜、それぞれの地を這うものが、二つずつあなたのところへ来て、生き延びるようにしなさい。 21 更に、食べられる物はすべてあなたのところに集め、あなたと彼らの食料としなさい。」 22 ノアは、すべて?~が命じられたとおりに果たした。
7
1 主はノアに言われた。「さあ、あなたとあなたの家族は皆、箱舟に入りなさい。この世代の中であなただけはわたしに従う人だと、わたしは認めている。 2 あなたは清い動物をすべて七つがい取り、また、清くない動物をすべて一つがいずつ取りなさい 3 空の鳥も七つがい取りなさい。全地の面に子孫が生き続けるように。 4 七日の後、わたしは四十日四十夜地上に雨を降らせ、わたしが造ったすべての生き物を地の面からぬぐい去ることにした。」 5 ノアはすべて主が命じられたとおりにした。 6 ノアが六百歳のとき、洪水が地上に起こり、水が地の上にみなぎった。 7 ノアは妻子や嫁たちと共に洪水を免れようと箱舟に入った。 8 清い動物も清くない動物も、鳥も地を這うものもすべて、 9 二つずつ箱舟のノアのもとに来た。それは?~がノアに命じられたとおりに、雄と雌であった。 10 七日が過ぎて、洪水が地上起こった。 11 ノアの生涯の第六百年、第二の月の十七日、この日、大いなる深淵の源がことごとく裂け、天の窓が開かれた。 12 雨が四十日四十夜地上に降り続いたが、 13 まさにこの日、ノアも、息子のセム、ハム、ヤフェト、ノアの妻、この三人の息子の嫁たちも、箱舟に入った。 14 彼らと共にそれぞれの獣、それぞれの家畜、それぞれの地を這うもの、それぞれの鳥、小鳥や翼のあるものすべて、 15 命の霊をもつ肉なるものは、二つずつノアのもとに来て箱舟に入った。 16 ?~が命じられたとおりに、すべて肉なるものの雄と雌とが来た。主は、ノアの後ろで戸を閉ざされた。 17 洪水は四十日間地上を覆った。水は次第に増して箱舟を押し上げ、箱舟は大地を離れて浮かんだ。 18 水は勢力を増し、地の上に大いにみなぎり、箱舟は水の面を漂った。 19 水はますます勢いを加えて地上にみなぎり、およそ天の下にある高い山はすべて覆われた。 20 水は勢い増して更にその上十五アンマに達し、山々を覆った。 21 地上で動いていた肉なるものはすべて、鳥も家畜も獣も地に群がり這うものも人も、ことごとく息絶えた。 22 乾いた地のすべてのもののうち、その鼻に命の息と霊のあるものはことごとく死んだ。 23 地の面にいた生き物はすべて、人をはじめ、家畜、這うもの、空の鳥に至るまでぬぐい去られた。彼らは大地からぬぐい去られ、ノアと、彼と共に箱舟にいたものだけが残った。 24 水は百五十日の間、地上で勢いを失わなかった。
8
1 神は、ノアと彼と共に箱舟にいたすべての獣とすべての家畜を御心に留め、地の上に風を吹かせられたので、水が減り始めた。 2 また、深淵の源と天の窓が閉じられたので、天からの雨は降りやみ、 3 水は地上からひいて行った。百五十日の後には水が減って、 4 第七の月の十七日に箱舟はアララト山の上に止まった。 5 水はますます減って第十の月になり、第十の月の一日には山々の頂が現れた。 6 四十日たって、ノアは自分が造った箱舟の窓を開き、烏を放した。烏は飛び立ったが、地上の水が乾くのを待って、出たり入ったりした。 8 ノアは鳩を彼のもとから放して、地の面から水がひいたかどうかを確かめようとした。 9 しかし、鳩は止まる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰って来た。水がまだ全地の面を覆っていたからである。ノアは手を差し伸べて鳩を捕らえ、箱舟の自分のもとに戻した。 10 更に七日待って、彼は再び鳩を箱舟から放した。 11 鳩は夕方になってノアのもとに帰って来た。見よ、鳩はくちばしにオリーブの葉をくわえていた。ノアは水が地上からひいたことを知った。 12 彼は更に七日待って、鳩を放した。鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。 13 ノアが六百一歳のとき、最初の月の一日に、地上の水は乾いた。ノアは箱舟の覆いを取り外して眺めた。見よ、地の面は乾いていた。 14 第二の月の二十七日になると、地はすっかり乾いた。 15 神はノアに仰せになった。 「さあ、あなたもあなたの妻も、息子も嫁も、皆一緒に箱舟から出なさい。 17 すべて肉なるもののうちからあなたのもとに来たすべての動物、鳥も家畜も地を這うものも一緒に連れ出し、地に群がり、地上で子を産み、増えるようにしなさい。」 18 そこで、ノアは息子や妻や嫁と共に外へ出た。 19 獣、這うもの、鳥、地に群がるもの、それぞれすべて箱舟から出た。 20 ノアは主のために祭壇を築いた。そしてすべての清い家畜と清い鳥のうちから取り、焼き尽くす捧げ物として祭壇の上にささげた。 21 主は宥めの香りをかいで、御心に言われた。「人に対して大地を呪うことは二度とすまい。人が心に思うことは、幼いときから悪いのだ。わたしは、この度したように生き物をことごとく打つことは、二度とすまい。 22 地の続くかぎり、種蒔きも刈り入れも 寒さも暑さも、夏も冬も 昼も夜も、やむことはない。」
創世記 祝福と契約 9
1 ?~はノアと彼の息子たちを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちよ。 2 地のすべての獣と空のすべての鳥は、地を這うすべてのものと海のすべての魚と共に、あなたたちの前に恐れおののき、あなたたちの手にゆだねられる。 3 動いている命あるものは、すべてあなたたちの食糧とするがよい。わたしはこれらすべてのものを、青草と同じようにあなたたちに与える。 4 ただし、肉は命である血を含んだまま食べてはならない。 5 また、あなたたちの命である血が流された場合、わたしは賠償を要求する。いかなる獣からも要求する。人間どうしの血については、人間から人間の命を賠償として要求する。 6 人の血を流す者は 人によって自分の血を流される。人は?~にかたどって造られたからだ。 7 あなたたちは産めよ、増えよ 地に群がり、地に増えよ。」 8 ?~はノアと彼の息子たちに言われた。 9 「わたしは、あなたたちと、そして後に続く子孫と、契約を立てる。 10 あなたたちと共にいるすべての生き物、またあなたたちと共にいる鳥や家畜や地のすべての獣など、箱舟から出たすべてのもののみならず、地のすべての獣と契約を立てる。 11 わたしがあなたたちと契約を立てたならば、二度と洪水によって肉なるものが滅ぼされることはなく、洪水が起こって地を滅ぼすことも決してない。」 12 更に?~は言われた。「あなたたちならびにあなたたちと共にいるすべての生き物と、代々(よよ)とこしえにわたしが立てる契約のしるしはこれである。 13 すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立てた契約のしるしとなる。 14 わたしが地の上に雲を湧き起こらせ、雲の中に虹が現れると、 15 わたしは、わたしとあなたたちならびにすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた契約に心を留める。水が洪水となって、肉なるものをすべて滅ぼすことは決してない。 16 雲の中に虹が現れると、わたしはそれを見て、神と地上のすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた永遠の契約に心をと留める。」 17 ?~はノアに言われた。「これが、わたしと地上のすべて肉なるものとの間にたてた契約のしるしである。」
創世記 ノアと息子たち
18 箱舟から出たノアの息子は、セム、ハム、ヤフェトであった。ハムはカナンの父である。 19 この三人がノアの息子で、全世界の人々は彼らから出て広がったのである。 20 さて、ノアは農夫となり、ぶどう畑を作った。 21 あるとき、ノアはぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。 22 カナンの父ハムは、自分の父の裸を見て、外にいた二人の兄弟に告げた。 23 セムとヤフェトは着物を取って自分たちの肩に掛け、後ろ向きに歩いて行き、父の裸を覆った。二人は顔を背けたままで、父の裸を見なかった。 24 ノアは酔いからさめると、末の息子がしたことを知り、 25 こう言った。「カナンは呪われよ 奴隷の奴隷となり、兄たちに仕えよ。」 26 また言った。「セムの神、主をたたえよ。 カナンはセムの奴隷となれ。
27 神がヤフェトの土地を広げ(ヤフェト) セムの天幕に住まわせ カナンはその奴隷となれ。」 28 ノアは、洪水の後三百五十年生きた。 29 ノアは九百五十歳になって、死んだ。
創世記 ノアの子孫 10
1 ノアの息子、セム、ハム、ヤフェトの系図は次のとおりである。洪水の後、彼らに息子が生まれた。 2 ヤフェトの子孫はゴメル、マゴグ、メディア、ヤワン、トバル、メシェク、ティラスであった。 3 ゴメルの子孫は、アシュケナズ、リファト、トガルマであった。 4 ヤワンの子孫は、エリシャ、タルシシュ、キティム、ロダニムであった。 5 海沿いの国々は、彼らから出て、それぞれの地に、その言語、氏族、民族に従って住むようになった。 6 ハムの子孫は、クシュ、エジプト、プト、カナンであった。 7 クシュの子孫はセバ、ハビラ、サブタ、ラマ、サブテカであり、ラマの子孫はシェバとデダンであった。 8 クシュにはまた、ニムロドが生まれた。ニムロドは地上で最初の勇士となった。 9 彼は、主の御前に勇敢な狩人であり、「主の御前に勇敢な狩人ニムドロのようだ」という言い方がある。 10 彼の王国の主な町は、バベル、ウルク、アッカドであり、それらはすべてシンアルの地にあった。 11 彼はその地方からアッシリに進み、ニネベ、レホボト・イル、カラ、 12 レセンを建てた。レセンはニネベとカラとの間にある、非常に大きな町であった。 13 エジプトにはリディア人、アルミナ人、レハビム人、ナフトヒム人、 14 上エジプト人、カスルヒム人、カフトル人が生まれた。このカフトル人からペリシテ人が出た。
15 カナンには長男シドンとヘト、 16 また、エブス人、アモリ人、ギルガシ人、 17 ヒビ人、アルキ人、シニ人、 18 アルワド人、フェマリ人、ハマト人が生まれた。その後、カナン人の諸氏族が広がった。 19 カナン人の領土は、シドンから南下してゲラルを経てガザまでを含み、更に、ソドム、ゴモラ、アドマ、ツェボイムを経てラシャまでを含んだ。 20 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたハムの子孫である。 21 セムにもまた子供が生まれた。彼はエベルのすべての子孫の先祖であり、ヤフェトの兄であった。 22 セムの子孫はエラム、アシュル、アルパクシャド、ルド、アラムであった。 23 アラムの子孫は、ウツ、フル、ゲテル、マシュであった。 24 アルパクシャドにはシェラが生まれ、シェラにはエベルが生まれた。 25 エベルには二人の息子が生まれた。ひとりの名は、その時代に土地が分けられた(パラグ)ので、ペレグといい、その兄弟はヨクタンといった。 26 ヨクタンには、アルモダド、シェレフ、ハツァルマベト、イエラ、 27 ハドラム、ウザル、ディクラ、 28 オバル、アビマエル、シェバ、 29 オフィル、ハビラ、ヨバブが生まれた。これらは皆、ヨクタンの息子であった。 30 彼らはメシャからセファルに至る東の高原地帯に住んでいた。 31 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたセムの子孫である。 32 ノアの子孫である諸氏族を、民族ごとの系図にまとめると以上のようになる。地上の諸民族は洪水の後、彼らから分かれ出た。
創世記 バベルの塔 11
1 世界中は同じ言葉を使って、同じように話していた。 2 東の方から移動してきた人々は、シンアルの地に平野を見つけ、そこに住み着いた。 3 彼らは、「れんがを作り、それをよく焼こう」と話し合った。石の代わりにれんがを、しっくいの代わりにアスファルトを用いた。 4 彼らは、「さあ 天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。 5 主は降って来て、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、 6 言われた。「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。 7 我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」 8 主は彼らをそこから全地に散らされたので、彼らはこの町の建設をやめた。 9 こういうわけで、この町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ、また、主がそこから彼らを全地に散らされたからである。
創世記 セムの系図
10 セムの系図は次のとおりである。セムが百歳になったとき、アルバクシャドが生まれた。それは洪水の二年後のことであった。 11 セムは、アルパクシャドが生まれた後五百年生きて、息子や娘をもうけた。 12 アルパクシャドが三十五歳になったとき、シェラが生まれた。 13 アルパクシャドは、シェラが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 14 シェラが三十歳になったとき、エベルが生まれた。 15 シェラは、エベルが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 16 エベルが三十四歳になったとき、ぺレグが生まれた。 17 エベルは、ぺレグが生まれた後四百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 18 ぺレグが三十歳になったとき、レウが生まれた。 19 ぺレグは、レウが生まれた後二百九年生きて、息子や娘をもうけた。 20 レウが三十二歳になったとき、セルグが生まれた。 21 レウは、セルグが生まれた後二百七年生きて、息子や娘をもうけた。 22 セルグ三十歳なったとき、ナホルが生まれた。 23 セルグは、ナホルが生まれた後二百年生きて、息子や娘をもうけた。 24 ナホルが二十九歳になったとき、テラが生まれた。 25 ナホルは、テラが生まれた後百十九年生きて、息子や娘をもうけた。 26 テラが七十歳になったとき、アブラム、ナホル、ハランが生まれた。
創世記 テラの系図
27 テラの系図は次のとおりである。テラにはアブラム、ナホル、ハランが生まれた。ハランにはロトが生まれた。 28 ハランは父のテラより先に、故郷カルデアのウルで死んだ。 29 アブラムとナホルはそれぞれ妻をめとった。アブラムの妻の名はサライ、ナホルの妻の妻の名はミルカといった。ミルカはハランの娘である。ハランはミルカとイスカの父であった。 30 サライは不妊の女で、子供ができなかった。 31 テラは、息子アブラムと、ハランの息子で自分の孫であるロト、および息子アブラムの妻で自分の嫁であるサライを連れて、カルデアのウルを出発し、カナン地方に向った。彼らはハランまで来ると、そこにとどまった。 32 テラは二百五年の生涯を終えて、ハランで死んだ。
創世記 アブラムの召命と移住 12
1 主はアブラムに言われた。「あなたは生まれ故郷 父の家を離れて わたしが示す地に行きなさい 2 わたしはあなたを大いなる国民にし あなたを祝福し あなたに名を高める 祝福の源となるように 3 あなたを祝福する人をわたしは祝福し あなたを呪う者をわたしは呪う。 地上の氏族はすべて あなたによって祝福に入る。」 4 アブラムは 主の言葉に従って旅立った。ロトも共に行った。アブラムは、ハランを出発したとき七十五歳であった。 5 アブラムは妻のサライ、甥のロトを連れ、蓄えた財産をすべて携え、ハランで加わった人々と共にカナン地方へ向かって出発し、カナン地方入った。 6 アブラムはその地を通り、シケムの聖所、モレの樫の木まで来た。当時、その地方にはカナン人が住んでいた。 7 主はアブラムに現れて、言われた。「あなたの子孫のこの地を与える」アブラムは、彼に現れた主のために、そこに祭壇を築いた。 8 アブラムは、そこからベテルの東の山へ移り、西にベテル、東にアイを望む所に天幕を張って、そこにも主のために祭壇を築き、主の御名を呼んだ。 9 アブラムは更に旅を続け、ネゲブ地方に移った。
創世記 エジプト滞在
10 その地方に飢饉があった。 アブラムは、その地方の飢饉がひどかったので、エジプトに下り、そこに滞在することにした。 11 エジプトに入ろうしたとき、妻サライに言った。 「あなたが美しいのを、わたしはよく知っている。 12 エジプト人があなたを見たら、『この女はあの男の妻だ』と言って、わたしを殺し、あなたを生かしておくにちがいない。 13 どうか、わたしの妹だ、と言ってください。 そうすれば、わたしはあなたのゆえに幸いになり、あなたのお陰で命も助かるだろう。」 14 アブラムがエジプトに入ると、エジプト人はサライを見て、大変美しいと思った。 15 ファラオの家臣たちも彼女を見て、ファラオに彼女のことを褒めたので、サライはファラオの宮廷に召し入れられた 16 アブラムも彼女のゆえに幸いを受け、羊の群れ、牛の群れ、ろば、男女の奴隷、雌ろば、らくだなどを与えられた。 17 ところが主は、アブラムの妻サライのことで、ファラオと宮廷の人々を恐ろしい病気にかからせた。 18 ファラオはアブラムを呼び寄せて言った。 「あなたはわたしに何ということをしたのか。 なぜ、あの婦人は自分の妻だと、言わなかったのか。 19 なぜ、『わたしの妹です』などと言ったのか。 だからこそ、わたしの妻として召し入れたのだ。 さあ、あなたの妻を連れて、立ち去ってもらいたい。 20 ファラオは家来たちに命じて、アブラムを、その妻とすべての持ち物と共に送り出させた。
創世記 ロトとの別れ 13
1 アブラムは、妻と共に、すべての持ち物を携え、エジプトを出て再びネゲブ地方へ上った。ロトも一緒であった。 2 アブラムは非常に多くの家畜や金銀を持っていた。 3 ネゲブ地方から更に、ベテルに向って旅を続け、ベテルとアイとの間の、以前に天幕を張った所まで来た。 4 そこは、彼が最初に祭壇を築いて、主の御名を呼んだ場所であった。 5 アブラムと共に旅をしていたロトもまた、羊や牛の群れを飼い、たくさんの天幕を持っていた。 6 その土地は、彼らが一緒に住むには十分ではなかった。 彼らの財産が多すぎたから、一緒に住むことができなかったのである。 7 アブラムの家畜を飼う者たちと、ロトの家畜を飼うものたちとの間に争いが起きた。 そのころ、その地方にはカナン人もペリジ人も住んでいた。 8 アブラムはロトに言った。 「わたしたちは親類どうしだ。わたしとあなたの間ではもちろん、お互いの羊飼いの間でも争うのはやめよう。 9 あなたの前には幾らでも土地があるのだから、ここで別れようではないか。 あなたが左に行くなら、わたしは右に行こう。 あなたが右に行くなら、わたしは左に行こう。」 10 ロトが目を上げて眺めると、ヨルダン川流域の低地一帯は、 主がソドムとゴモラを滅ぼす前であったので、ツォアルに至るまで、主の園のように、エジプトの国のように、見渡すかぎりよく潤っていた。 11 ロトはヨルダン川流域の低地一帯を選んで、東へ移って行った。こうして彼らは、左右に別れた。 12 アブラムはカナン地方に住み、ロトは低地の町々に住んだが、彼はソドムまで天幕を移した。 13 ソドムの住民は邪悪で、主に対して多くの罪を犯していた。 14 主は、ロトが別れて行った後、アブラムに言われた。「さあ、目を上げて、あなたがいる場所から東西南北を見渡しなさい。 15 見えるかぎりの土地をすべて、わたしは永久にあなたとあなたの子孫に与える。 16 あなたの子孫を大地の砂粒のようにする。大地の砂粒が数えきれないように、あなたの子孫も数えきれないであろう。 17 さあ、この土地を縦横に歩き回るがよい。わたしはそれをあなたに与えるから。」 18 アブラムは天幕を移し、ヘブロンにあるマムレの樫の木のところに来て住み、そこに主のために祭壇を築いた。
創世記 王との戦い 14
1 シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨク、エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアルが、 2 ソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アドマの王シンアブ、ツェボイムの王シェムエベル、ベラ、すなわちツオワルの王と戦ったとき、 3 これら五人の王は皆、シディムの谷、すなわち塩の海で同盟を結んだ。 4 彼らは十二年間ケドルラオメルに支配されていたが、十三年目に背いたのである。 5 十四年目に、ケドルラオメルとその味方の王たちが来て、アシュテロト・カルナイムでレファイム人を、ハムでズジム人を、シャベ・キルヤタイムでエミル人を、 6 セイルの山地でフリ人人を撃ち、荒れ野に近いエル・バランまで進んだ。 7 彼らは転進して、エン・ミシュパト、すなわちカデシュに向かい、アマレク人の全領土とハツェツオン・タマルに住むアモリ人を撃った。 8 そこで、ソドムの王、ゴモラの王、アドマの王、ツェボイムの王、ベラすなわちツォアルの王は兵を繰り出し、シディムの谷で彼らと戦おうと陣を敷いた。 9 エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアル、シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨクの四人の王に対して、これら五人の王が戦いを挑んだのである。 10 シディムの谷には至るところに天然アスファルトの穴があった。ソドムとゴモラの王は逃げるとき、その穴に落ちた。残りの王は山へ逃れた。 11 ソドムとゴモラの財産や食糧はすべて奪い去られ、 12 ソドムに住んでいたアブラムの甥ロトも、財産もろとも連れ去られた。
創世記 ロトの救出
13 逃げ延びた一人の男がヘブライ人アブラムのもとに来て、そのことを知らせた。アブラムは当時、アモリ人マムレ樫の木の傍らに住んでいた。マムレはエシュコルとアネルの兄弟で、彼らはアブラムと同盟を結んでいた。 14 アブラムは、親族の者が捕虜になったと聞いて、彼の家で生まれた奴隷で、訓練を受けた者三百十八人を召集し、ダンまで追跡した。 15 夜、彼と僕たちは分かれて敵を襲い、ダマスコの北のホバまで追跡した。 16 アブラムはすべての財産を取り返し、親族のロトとその財産、女たちやそのほかの人々も取り戻した。
創世記 メルキゼデグの祝福
17 アブラムがケドルラオメルとその味方の王たちを撃ち破って帰って来たとき、ソドムの王はシャベの谷、すなわち王の谷まで彼を出迎えた。 18 いと高き神の祭司であったサレムの王メルキゼデクも、パンとぶどう酒を持って来た。 19 彼はアブラムを祝福して言った。「天地の造り主、いと高き神に アブラムは祝福されますように。 20 敵をあなたの手に渡された いと高き神がたたえられますように。」 アブラムはすべての物の十分の一を彼に贈った。 21 ソドムの王はアブラムに、「人はわたしにお返しください。 しかし、財産はお取りください」と言ったが、 22 アブラムはソドムの王に言った。 「わたしは天地の造り主、いと高き?~、主に手を上げて誓います。 23 あなたの物は、たとえ糸一筋、靴ひも一本でも、決していただきません。 『アブラムを裕福にしたのは、このわたしだ』と、あなたに言われたくありません。 24 わたしは何も要りません。 ただ、若い者たちが食べたものと、わたしと共に戦った人々、すなわち、アネルとエシュコルとマムレの分は別です。 彼らには分け前を取らせてください。
創世記 神の約束 15
1 これらのことの後で、主の言葉が幻の中でアブラムに臨んだ。 「恐れるな、アブラムよ。 わたしはあなたの盾である。 あなたの受ける報いは非常に大きいであろう。 2 アブラムは尋ねた。 「わが神、主よ。わたしに何をくださるというのですか。わたしには子供がありません。家を継ぐのはダマスコのエリエゼルです。 3 アブラムは言葉をついだ。「御覧のとおり、あなたはわたしに子孫を与えてくださいませんでしたから、家の僕が跡を継ぐことになっています。」 4 見よ、主の言葉があった。「その者があなたの跡を継ぐのではなく、あなたから生まれる者が跡を継ぐ。」 5 主は彼を外に連れ出して言われた。「天を仰いで、星を数えることができるなら、数えてみるがよい。」 そして言われた。 「あなたの子孫はこのようになる。」 6 アブラムは主を信じた。主はそれを彼の義と認められた。 7 主は言われた。 「わたしはあなたをカルデアのウルから導き出した主である。わたしはあなたにこの土地を与え、それを継がせる。」 8 アブラムは尋ねた。 「わが神、主よ。この土地をわたしが継ぐことを、何によって知ることができましょうか。」 9 主は言われた。 「三歳の雌牛と、三歳の雌山羊と、三歳の雄羊と、山鳩と、鳩の雛とをわたしのもとに持ってきなさい。」 10 アブラムはそれらのものをみな持って来て、真っ二つに切り裂き、それぞれを互いに向かい合わせて置いた。 ただ、鳥は切り裂かなかった。 11 はげ鷹がこれらの死体をねらって降りて来ると、アブラムは追い払った。 12 日が沈みかけたころ、アブラムは深い眠りに襲われた。すると、恐ろしい大いなる暗黒が彼に臨んだ。 13 主はアブラムに言われた。 「よく覚えておくがよい。あなたの子孫は異邦の国で寄留者となり、四百年の間奴隷として仕え、苦しめられるであろう。 14 しかしわたしは、彼らが奴隷として仕えるその国民を裁く。
その後、彼らは多くの財産を携えて脱出するであろう。 15 あなた自身は、長寿を全うして葬られ、安らかに先祖のもとに行く。 16 ここに戻ってくるのは、四代目の者たちである。それまではアモリ人の罪が極みに達しないからである。 17 日が沈み、暗闇に覆われたころ、突然、煙を吐く炉と燃える松明が二つに裂かれた動物の間を通り過ぎた。 18 その日、主はアブラムと契約を結んで言われた。 「あなたの子孫にこの土地を与える。エジプトの川から大河ユーフラテスに至るまで、 19 カイン人、ケナズ人、カドモニ人、 20 ヘト人、ペリジ人、レファイム人、 21 アモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人の土地を与える。」
創世記 ハガルの逃亡と出産 16
1 アブラムの妻サライには、子供が生まれなかった。彼女には、ハガルというエジプト人の女奴隷がいた。 2 サライはアブラムに言った。 「主はわたしに子供を授けてくださいません。どうぞ、わたしの奴隷のところへ入ってください。わたしは彼女によって、子供を与えられるかもしれません。」 アブラムは、サライの願いを聞き入れた。 3 アブラムの妻サライは、エジプト人の女奴隷ハガルを連れて来て、夫アブラムの側女とした。アブラムがカナン地方に住んでから、十年後のことであった。 4 アブラムはハガルのところに入り、彼女は身ごもった。ところが、自分が身ごもったのを知ると、彼女は女主人を軽んじた。 5 サライはアブラムに言った。 「わたしが不当な目に遭ったのは、あなたのせいです。女奴隷をあなたのふところに与えたのはわたしなのに、彼女は自分が身ごもったのを知ると、わたしを軽んじるようになりました。主がわたしとあなたとの間を裁かれますように。 6 アブラムはサライに答えた。
「あなたの女奴隷はあなたのものだ。好きなようにするがいい。」サライは彼女につらく当たったので、彼女はサライのもとから逃げた。 7 主の御使いが荒れ野の泉のほとり、シュル街道に沿う泉のほとりで彼女と出会って、 8 言った。 「サライの女奴隷ハガルよ。あなたはどこから来て、どこへ行こうとしているのか。」「女主人サライのもとから逃げているところです」と答えると、 9 主の御使いは言った。 「女主人のもとに帰り、従順に仕えなさい。」 10 主の御使いは更に言った。 「わたしは、あなたの子孫を数えきれないほど多く増やす。」 11 主の御使いはまた言った。 「今、あなたは身ごもっている。やがてあなたは男の子を産む。その子をイシュマエルと名付けなさい。主があなたの悩みをお聞きになられたから。 12 彼は野生のろばのような人になる。彼があらゆる人にこぶしを振りかざすので、人々は皆、こぶしを振るう。彼は兄弟すべてに敵対して暮らす。」 13 ハガルは自分に語りかけた主の御名を呼んで、 「あなたこそエル・ロイ(わたしを顧みられる?~)です」と言った。それは、彼女が、「神がわたしを顧みられた後もなお、わたしはここで見続けていたではないか」と言ったからである。 14 そこで、その井戸は、ベエル・ラハイ・ロイと呼ばれるようになった。それはカディシュとベレドの間にある。 15 ハガルはアブラムとの間に男の子を産んだ。アブラムは、ハガルが産んだ男の子をイシュマエルと名付けた。 16 ハガルがイシュマエルを生んだとき、アブラムは八十六歳であった。
創世記 契約と割礼 17
1 アブラムが九十九歳になったとき、主はアブラムに現れて言われた。「わたしは全能の神である。あなたはわたしに従って歩み、全き者となりなさい。 2 わたしは、あなたとの間にわたしの契約を立て、あなたをますます増やすであろう。」 3 アブラムはひれ伏した。神は更に、語りかけて言われた。 4 「これがあなたと結ぶわたしの契約である。あなたは多くの国民の父となる。 5 あなたは、もはやアブラムではなく、アブラハムと名乗りなさい。あなたを多くの国民の父とするからである。 6 わたしは、あなたをますます?栄させ、諸国民の父とする。王となる者たちがあなたから出るであろう。 7 わたしは、あなたとの間に、また後に続く子孫との間に契約を立て、それを永遠の契約とする。そして、あなたとあなたの子孫の神となる。 8 わたしは、あなたが滞在しているこのカナンのすべての土地を、あなたとその子孫に、永久の所有地として与える。わたしは彼らの神となる。」 9 神はまた、アブラムに言われた。「だからあなたも、わたしの契約を守りなさい、あなたも後に続く子孫も。 10 あなたたち、およびあなたの後に続く子孫と、わたしとの間で守るべき契約はこれである。すなわち、あなたたちの男子はすべて、割礼を受ける。 11 包皮の部分を切り取りなさい。これが、わたしとあなたたちとの間の契約のしるしとなる。 12 いつの時代でも、あなたたちの男子はすべて、直系の子孫はもちろんのこと、家で生まれた奴隷も、外国人から買い取った奴隷であなたの子孫でない者も皆、生れてから八日目に割礼を受けなければならない。 13 あなたのお家で生まれた奴隷も、買い取った奴隷も、必ず割礼を受けなければならない。それによって、わたしの契約はあなたの体に記されて永遠の契約となる。 14 包皮の部分を切り取らない無割礼の男がいたなら、その人は民の間から断たれる。わたしの契約を破ったからである。」 15 神はアブラムに言われた。「あなたの妻サライは、名前をサライではなく、サラと呼びなさい。 16 わたしは彼女を祝福し、彼女によってあなたに男の子を与えよう。わたしは彼女を祝福し、諸国民の母とする。諸民族の王となる者たちが彼女から出る。」 17 アブラハムひれ伏した。しかし笑って、ひそかに言った。「百歳の男に子供が生まれるだろうか。九十歳のサラに子供が産めるだろうか。」 18 アブラハムは神に言った。「どうか、イシュマエルが御前に生き永らえますように。」 19 神は言われた。「いや、あなたの妻サラがあなたとの間に男の子を産む。その子をイサク(彼は笑う)と名付けなさい。わたしは彼と契約を立て、彼の子孫のために永遠の契約とする。 20 イシュマエルについての願いも聞き入れよう。必ず、わたしは彼を祝福し、大いに子供を増やし繁栄させる。彼は十二人の首長の父となろう。わたしは彼を大いなる国民とする。 21 しかし、わたしの契約は、来年の今ごろ、サラがあなたとの間に産むイサクと立てる。」 22 神はこう語り終えると、アブラハムを離れて昇って行かれた。 23 アブラハムは、息子のイシュマエルをはじめ、家で生まれた奴隷や買い取った奴隷など、自分の家にいる人々のうち、男子を皆集めて、すぐその日に、神が命じられたとおり包皮に割礼を施した。 24 アブラハムが包皮に割礼を受けたのは、九十九歳、 25 息子イシュマエルが包皮に割礼を受けたのは、十三歳であった。 26 アブラハムと息子のイシュマエルは、すぐその日に割礼を受けた。 27 アブラハムの家の男子は、家で生まれた奴隷も外国人から買い取った奴隷も皆、共に割礼を受けた。
創世記 イサクの誕生の予告 18
1 主はマムレの樫の木の所でアブラハムに現れた。暑い真昼に、アブラハムは天幕の入り口に座っていた。 2 目を上げて見ると、三人の人が彼に向って立っていた。アブラハムはすぐに天幕の入り口から走り出て迎え、地にひれ伏して、 3 言った。「お客様、よろしければ、どうか、僕のもとを通り過ぎないでください。 4 水を少々持ってこさせますから、足を洗って、木陰でどうぞひと休みなさってください。 5 何か召し上がるものを調えますので、疲れをいやしてから、お出かけください。せっかく、僕の所の近くをお通りになったのですから。」その人たちは言った。「では、お言葉どおりにしましょう。」 6 アブラハムは急いで天幕に戻り、サラのところに来て言った。「早く、上等の小麦粉を三セアほどこねて、パン菓子をこしらえなさい。」 7 アブラハムは牛の群れのところへ走って行き、柔らかくておいしそうな子牛を選び、召し使いに渡し、急いで料理をさせた。 8 アブラハムは、凝乳、乳、出来立ての子牛の料理などを選び、彼らの前に並べた。そして、彼らが木陰で食事をしている間、そばに立って給仕をした。 9 彼らはアブラハムに尋ねた。「あなたの妻のサラはどこにいますか。」「はい、天幕の中におります」とアブラハムが答えると、 10 彼らの一人が言った。「わたしは来年の今ごろ、必ずここにまた来ますが、そのころには、あなたの妻のサラに男の子が生まれているでしょう。」サラは、すぐ後ろの天幕の入り口で聞いていた。 11 アブラハムもサラも多くの日を重ねて老人になっており、しかもサラは月のものがとうになくっていた。 12 サラはひそかに笑った。自分は年をとり、もはや楽しみがあるはずもなし、主人も年老いているのに、と思ったのである。13 主はアブラハムに言われた。「なぜサラは笑ったのか。なぜ年をとった自分に子供が生まれるはずがないと思ったのだ。 14 主に不可能なことがあろうか。来年の今ごろ、わたしはここに戻ってくる。そのころ、サラには必ず男の子が生まれている。」 15 サラは恐ろしくなり、打ち消して言った。「わたしは笑いませんでした。」主は言われた。「いや、あなたは確かに笑った。」
創世記 ソドムのための執り成し
16 その人たちはそこを立って、ソドムを見下ろす所まで来た。アブラハムも、彼らを見送るために一緒に行った。 17 主は言われた。「わたしが行おうとしていることをアブラハムに隠す必要があろうか。 18 アブラハムは大きな強い国民になり、世界のすべての国民は彼によって祝福に入る。 19 わたしがアブラハムを選んだのは、彼が息子たちとその子孫に、主の道を守り、主に従って正義を行うよう命じて、主がアブラハムに約束したことを成就するためである。 20 主は言われた。「ソドムとゴモラの罪は非常に重い、と訴える叫びが実に大きい。 21 わたしは降って行き、彼らの行跡が、果たして、わたしに届いた叫びのとおりかどうか見て確かめよう。」 22 その人たちは、更にソドムの方に向かったが、アブラハムはなお、主の御前にいた。 23 アブラハムは進み出て言った。「もことにあなたは、正しい者を悪い者と一緒に滅ぼされるのですか。 24 あの町に正しい者が五十人いるとしても、それでも滅ぼし、その五十人の正しい者のために、町をお赦しにはならないのですか。 25 正しい者を悪い者と一緒に殺し、正しい者を悪い者と同じ目に遭わせるようなことを、あなたがなさるはずはございません。全くありえないことです。全世界を裁くお方は、正義を行われるべきではありませんか。」 26 主は言われた。「もしソドムの町に正しい者が五十人いるならば、その者たちのために、町を全部赦そう。」 27 アブラハムは答えた。「塵にすぎないわたしですが、あえて、わが主に申し上げます。 28 もしかすると、五十人の正しい者に五人足りないかもしれません。それでもあなたは、五人たりないために、町のすべてを滅ぼされますか。」主は言われた。「もし、四十五人いれば滅ぼさない。」 29 アブラハムは重ねて言った。「もしかすると、四十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その四十人のためにわたしはそれをしない」 30 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう少し言わせてください。もしかすると、そこには三十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「もし三十人いるならわたしはそれはしない。」 31 アブラハムは言った。「あえて、わが主に申し上げます。もしかすると、二十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その二十人のためにわたしは滅ぼさない。」 32 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう一度だけ言わせてください。もしかすると、十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その十人のためにわたしは滅ぼさない。」 33 主はアブラハムと語り終えると、去って行かれた。アブラハムも自分の住まいに帰った。
創世記 ソドムの滅亡 19
1 二人の御使いが夕方ソドムに着いたとき、ロトはソドムの門の所に座っていた。ロトは彼らを見ると、立ち上って迎え、地にひれ伏して、 2 言った。 「皆様方、どうぞ僕(しもべ)の家に立ち寄り、足を洗ってお泊りください。彼らは言った。「いや、結構です。わたしたちはこの広場で夜を過ごします。」 3 しかし、ロトがぜひにと勧めたので、彼らはロトの所に立ちよることにし、彼の家を訪ねた。ロトは、酵母を入れないパンを焼いて食事を供し、彼らをもてなした。 4 彼らがまだ床に就かないうちに、ソドムの町の男たちが、若者も年寄りもこぞって押しかけ、家を取り囲んで、 5 わめきたてた。 「今夜、お前のところへ来た連中はどこにいる。ここへ連れてこい。なぶりものにしてやるから。」 6 ロトは、戸口の前にたむろしている男たちのところへ出て行き、後ろの戸を閉めて、 7 言った。 「どうか、皆さん、乱暴なことはしないでください。 8 実は、わたしにはまだ嫁がせていない娘が二人おります。皆さんにその娘たちを差し出しますから、好きなようにしてください。ただ、あの方々には何もしないでください。この家の屋根の下に身を寄せていただいたのですから。」 9 男たちは口々に言った。 「そこをどけ」 「こいつはよそ者のくせに、指図などして。」 「さあ、彼らより先に、お前を痛い目に遭わせてやる。」 そして、ロトに詰め寄って体を押しつけ、戸を破ろうとした。 10 二人の客はそのとき、手を伸ばして、ロトを家の中に引き入れて戸を閉め、 11 戸口の前に入る男たちに、老若を問わず、目つぶしを食わせ、戸口を分からなくした。 12 二人の客はロトに言った。 「ほかに、あなたの身内の人がこの町にいますか。あなたの婿や息子や娘などを皆連れてここから逃げなさい。 13 実は、わたしたちはこの町を滅ぼしに来たのです。大きな叫びが主にもとに届いたので、主は、この町を滅ぼすためにわたしたちを遣わされたのです。」 14 ロトは嫁いだ娘たちの婿のところへ行き、「さあ早くここから逃げるのだ。主がこの町を滅ぼされるからだ」と促したが、婿たちは冗談だと思った。 15 夜が明けるころ、御使いたちはロトをせきたてて言った。「さあ早く、あなたの妻とここにいる二人の娘を連れて行きなさい。さもないと、この町に下る罰の巻き添えになって滅ぼされてしまう。」 16 ロトはためらっていた。主は憐れんで、二人の客にロト、妻、二人の娘の手をとらせて町の外へ避難するようにされた。 17 彼らがロトたちを町外れへ連れ出したとき、主は言われた。 「命がけで逃れよ。後ろを振り返ってはいけない。低地のどこにもとどまるな。山へ逃げなさい。さもないと、滅びることになる。」 18 ロトは言った。 「主よ、できません。 19 あなたは僕(しもべ)に目を留め、慈しみを豊かに示し、命を救おうとしています。しかし、わたしは山まで逃げ延びることはできません。恐らく、災害に巻き込まれて、死んでしまうのでしょう。 20 御覧ください、あの町を。あそこなら近いので、逃げて行けると思います。あれは小さな町です。あそこへ逃げさせてください。あれはほんの小さな町です。どうか、そこでわたしの命を救ってください。」 21 主は言われた。 「よろしい。そのこともあなたの願いを聞き届け、あなたの言うその町は滅ぼさないことにしよう。 22 急いで逃げなさい。あなたがあの町に着くまでは、わたしは何も行わないから。」 そこで、その町はツォアル(小さい)と名付けられた。 23 太陽が地上に昇ったとき、ロトはツォアルに着いた。 24 主はソドムとゴモラの上に天から、主のもとから硫黄の火を降らせ、 25 これらの町と低地一帯を、町の全住民、地の草木もろとも滅ぼした。 26 ロトの妻は後ろを振り向いたので、塩の柱になった。 27 アブラハムは、その朝早く起きて、さきに主と対面した場所へ行き、 28 ソドムとゴモラ、および低地一帯を見下ろすと、炉の煙のように地面から煙が立ち上っていた。 29 こうして、ロトの住んでいた低地の町々は滅ぼされたが、神はアブラハムを御心に留め、ロトを破滅のただ中から救い出された。
創世記 ロトの娘たち
30 ロトはツォアルを出て、二人の娘と山の中に住んだ。ツォアルに住むのを恐れたからである。彼は洞穴に二人の娘と住んだ。 31 姉は妹に言った。 「父も年老いてきました。この辺りには、世のしきたりに従って、わたしたちのところへ来てくれる男の人はいません。 32 さあ、父にぶどう酒を飲ませ、床を共にし、父から子種を受けましょう。」 33 娘たちはその夜、父親にぶどう酒を飲ませ、姉がまず、父親のところへ入って寝た。 父親は、娘が寝に来たのも立ち去ったのも気がつかなかった。 34 あくる日、姉は妹に言った。 「わたしは夕べ父と寝ました。 今晩も父にぶどう酒を飲ませて、あなたが行って父と床を共にし、父から子種をいただきましょう。」 35 娘たちはその夜もまた、父親にぶどう酒を飲ませ、妹が父親のところへ行って寝た。父親は、娘が寝に来たのも立ち去ったのも気がつかなかった。 36 このようにして、ロトの二人の娘は父の子を身ごもり、 37 やがて、姉は男の子を産み、モアブ(父親より)と名付けた。 彼は今日のモアブ人の先祖である。 38 妹もまた男の子を産み、ベン・アミ(わたしの肉親の子)と名付けた。彼は今日のアンモン人の人々の先祖である。
創世記 ゲラル滞在 20
1 アブラハムは、そこからネゲブ地方に移り、カデシュとシュルの間に住んだ。 ゲラルに滞在していたとき、 2 アブラハムは妻サラのことを、「これはわたしの妹です」と言ったので、ゲラルの王アビメレクは使いをやってサラを召し入れた。 3 その夜、夢の中でアビメレクに神が現れて言われた。 「あなたは、召し入れた女のゆえに死ぬ。その女は夫のある身だ。」 4 アビメレクは、まだ彼女に近づいていなかったので、「主よ、あなたは正しい者でも殺されるのですか。 5 彼女が妹だと言ったのは彼ではありませんか。 また彼女自身も、『あの人はわたしの兄です』と言いました。 わたしは、全くやましい考えも不正な手段でもなくこの事をしたのです。」と言った。 6 神は夢の中でアビメレクに言われた。 「わたしも、あなたが全くやましい考えでなしにこの事をしたことは知っている。 だからわたしも、あなたがわたしに対して罪を犯すことのないように、彼女に触れさせなかったのだ。 7 直ちに、あの人の妻を返しなさい。 彼は預言者だから、あなたのために祈り、命を救ってくれるだろう。 しかし、もし返さなければ、あなたもあなたの家来も皆、必ず死ぬことを覚悟せねばならない。」 8 つぎの朝早く、アビレメクは家来たちを残らず呼び集め、一切の出来事を語り聞かせたので、一同は非常に恐れた。 9 アビレメクはそれから、アブラハムを呼んで言った。 「あなたは我々に何ということをしたのか。 わたしがあなたにどんな罪を犯したというので、あなたはわたしとわたしの王国に大それた罪を犯させようとしたのか。 あなたは、してはならぬことをわたしにしたのだ。」 10 アビレメクは更に、アブラハムに言った。 「どういうつもりで、こんなことをしたのか。」 11 アブラハムは答えた。 「この土地には、神を畏れることが全くないので、わたしは妻のゆえに殺されると思ったのです。 12 事実、彼女は、わたしの妹でもあるのです。 わたしの父の娘ですが、母の娘ではないのです。 それで、わたしの妻となったのです。 13 かって、神がわたしを父の家から離して、さすらいの旅に出されたとき、わたしは妻に、『わたしに尽くすと思って、どこへ行っても、わたしのことを、この人は兄ですと言ってくれないか』 と頼んだのです。 14 アビメレクは羊、牛、男女の奴隷などを取ってアブラハムに与え、また、妻サラを返して、 15 言った。 「この辺りはすべてわたしの領土です。 好きな所にお住まいください。」 16 また、サラに言った。 「わたしは、銀一千シュケルをあなたの兄上に贈りました。 それは、あなたとの間のすべての出来事の疑惑を晴らす証拠です。 これであなたの名誉は取り戻されるでしょう。」 17 アブラハムが神に祈ると、神はアビメレクとその妻、および侍女たちをいやされたので、再び子供を産むことができるようになった。 18 主がアブラハムの妻サラのゆえに、アビメレクの宮廷のすべての女たちの胎を堅く閉ざしておられたからである。
創世記 イサクの誕生 21
1 主は、約束されたとおりサラを顧み、さきに語られたとおりサラのために行われたので、 2 彼女は身ごもり、年老いたアブラハムとの間に男の子を産んだ。 それは、神が約束されていた時期であった。 3 アブラハムは、サラが産んだ自分の子をイサクと名付け、 4 神が命じられたとおり、八日目に、息子イサクに割礼を施した。 5 息子イサクが生まれたとき、アブラハムは百歳であった。 6 サラは言った。 「神はわたしに笑いをお与えになった。 聞く者は皆、わたしと笑い(イサク)を共にしてくれるでしょう。」 7 サラはまた言った。 「誰がアブラハムに言いえたでしょう サラは子に乳を含ませるだろうと。 しかしわたしは子を産みました 年老いた夫のために。」 8 やがて、子供は育って乳離れした。 アブラハムはイサクの乳離れの日に盛大な祝宴を開いた。
創世記 ハガルとイシュマエル
9 サラは、エジプトの女ハガルがアブラハムとの間に産んだ子が、イサクをからかっているのを見て、 10 アブラハムに訴えた。 「あの女とあの子を追い出してください。 あの女の息子は、わたしの子イサクと同じ跡継ぎとなるべきではありません。」 11 このことはアブラハムを非常に苦しめた。 その子も自分の子であったからである。 12 神はアブラハムに言われた。 「あの子供とあの女のことで苦しまなくてもよい。 すべてサラが言うことに聞き従いなさい。 あなたの子孫はイサクによって伝えられる。 13 しかし、あの女の息子も一つの国民の父とする。 彼もあなたの子であるからだ。」 14 アブラハムは、次の朝早く起き、パンと水の革袋を取ってハガルに与え、背中に負わせて子供を連れ去らせた。 ハガルは立ち去り、ベエル・シェバの荒れ野をさまよった。 15 革袋の水が無くなると、彼女は子供を一本の灌木の下に寝かせ、 16 「わたしは子供が死ぬのを見るのは忍びない」と言って、矢の届くほど離れ、子供の方を向いて座り込んだ。 彼女は子供の方を向いて座ると、声をあげて泣いた。 17 神は子供の泣き声を聞かれ、天から神の御使いがハガルに呼びかけて言った。 「ハガルよ、どうしたのか。 恐れることはない。 神はあそこにいる子供の泣き声を聞かれた。 18 立って行って、あの子を抱き上げ、お前の腕でしっかり抱き締めてやりなさい。 わたしは、必ずあの子を大きな国民とする。」 19 神がハガルの目を開かれたので、彼女は水のある井戸を見つけた。 彼女は行って革袋に水を満たし、子供に飲ませた。 20 神がその子と共におられたので、その子は成長し、荒れ野に住んで弓を射る者となった。 21 彼がバランの荒れ野に住んでいたとき、母は彼のために妻をエジプトの国から迎えた。
創世記 アビメレクとの契約
22 そのころ、アビメレクとその軍隊の長ピコルはアブラハムに言った。 「神は、あなたが何をなさっても、あなたと共におられます。 23 どうか、今ここでわたしとわたしの子、わたしの孫を欺かないと、神にかけて誓って(シャバ)ください。 わたしがあなたに友好的な態度をとってきたように、あなたも、寄留しているこの国とわたしに友好的な態度をとってください。」 24 アブラハムは答えた。 「よろしい。誓いましょう。」 25 アブラハムはアビメレクの部下たちが井戸を奪ったことについて、アビメレクを責めた。 26 アビメレクは言った。 「そんなことをした者がいたとは知りませんでした。 あなたも告げなかったし、わたしも今日まで聞いていなかったのです。」 27 アブラハムは、羊と牛の群れを連れて来て、アビメレクに贈り、二人は契約を結んだ。 28 アブラハムは更に、羊の群れの中から七匹(シェバ)の雌の子羊を別にしたので、 29 アビメレクがアブラハムに尋ねた。 「この七匹の雌の子羊を別にしたのは、何のためですか。」 30 アブラハムは答えた。 「わたしの手からこの七匹の雌の子羊を受け取って、わたしがこの井戸(ベエル)を掘ったことの証拠としてください。」 31 それで、この場所をベエル・シェバと呼ぶようになった。 二人がそこで誓いを交わしたからである。 32 二人はベエル・シェバで契約を結び、アビメレクと、その軍隊の長ピコルはペリシテの国に帰って行った。 33 アブラハムは、ベエル・シェバに一本のぎょりゅうの木を植え、永遠の神、主の御名を呼んだ。 34 アブラハムは、長い間、ペリシテの国に寄留した。
創世記 アブラハム、イサクをささげる 22
1 これらのことの後で、神はアブラハムを試された。 神が、「アブラハムよ」と呼びかけ、彼が、「はい」と答えると、 2 神は命じられた。 「あなたの息子、あなたの愛する独り子イサクを連れて、モリヤの地に行きなさい。 わたしが命じる山の一つに登り、彼を焼き尽くす献げ物としてささげなさい。」 3 次の朝早く、アブラハムはろばに鞍を置き、献げ物に用いる薪を割り、二人の若者と息子イサクを連れ、神の命じられた所に向って行った。 4 三日目になって、アブラハムが目を凝らすと、遠くにその場所が見えたので、 5 アブラハムは若者に言った。 「お前たちは、ろばと一緒にここで待っていなさい。 わたしと息子はあそこへ行って、礼拝をして、また戻ってくる。」 6 アブラハムは、焼き尽くす献げ物に用いる薪を取って、息子イサクに背負わせ、自分は火と刃物を手に持った。 二人は一緒に歩いて行った。 7 イサクは父アブラハムに、「わたしのお父さん」と呼びかけた。 彼が、「ここにいる。 わたしの子よ」と答えると、イサクは言った。 「火と薪はここにありますが、焼き尽くす献げ物にする子羊はどこにいるのですか。」 8 アブラハムは答えた。 「わたしの子よ、焼き尽くす献げ物の子羊はきっと神が備えてくださる。」 二人は一緒に歩いて行った。 9 神が命じられた場所に着くと、アブラハムはそこに祭壇を築き、薪を並べ、息子イサクを縛って祭壇の薪の上に載せた。 10 そしてアブラハムは、手を伸ばして刃物を取り、息子を屠ろうとした。 11 そのとき、天から主の御使いが、「アブラハム、アブラハム」と呼びかけた。 彼が、「はい」と答えると、 12 御使いは言った。 「その子に手を下すな。何もしてはならない。あなたが神を畏れる者であることが、今、分かったからだ。あなたは、自分の独り子である息子すら、わたしにささげることを惜しまなかった。」 13 アブラハムは目を凝らして見回した。すると、後ろの木の茂みに一匹の雄羊が角を取られていた。アブラハムは行ってその雄羊を捕まえ、息子の代わりに焼き尽くす献げ物としてささげた。 14 アブラハムはその場所をヤーウェ・イルエ(主は備えてくださる)と名付けた。そこで、人々は今日でも、「主の山に、備えあり(イエラエ)と言っている。 15 主の御使いは、再び天からアブラハムに呼びかけた。 16 御使いは言った。 「わたしは自らにかけて誓う、と主は言われる。あなたがこの事を行い、自分の独り子である息子すら惜しまなかったので、 17 あなたを豊かに祝福し、あなたの子孫を天の星のように、海辺の砂のように増やそう。あなたの子孫は敵の城門を勝ち取る。 18 地上の諸国民はすべて、あなたの子孫によって祝福を得る。あなたがわたしの声に聞き従ったからである。 19 アブラハムはベエル・シェバに住んだ。
創世記 ナホルの子孫
20 これらのことの後で、アブラハムに知らせが届いた。「ミルカもまた、あなたの兄弟ナホルとの間に子供を産みました。 21 長男はウツ、その弟はブズ、次はアラムの父ケムエル、 22 それからケセド、ハゾ、ピルダシュ、イドラフ、ベトエルです。」 23 ベトエルはリベカの父となった。 ミルカは、アブラハムの兄弟ナホルとの間にこれら八人の子供を産んだ。 24 ナホルの側女で、レウマという女性もまた、テバ、ガハム、タハシュ、マアカを産んだ。
創世記 サラの死と埋葬 23
1 サラの生涯は百二十七年であった。これがサラの生きた年数である。 2 サラは、カナン地方のキルヤト・アルバ、すなわちネブロンで死んだ。アブラハムは、サラのために胸を打ち、嘆き悲しんだ。 3 アブラハムは、遺体の傍らから立ち上がり、ヘトの人人に頼んだ。 4 「わたしは、あなたがたのところに一時滞在する寄留者ですが、あなたがたが所有する墓地を譲ってくださいませんか。亡くなった妻を葬ってやりたいのです。」 5 ヘトの人々はアブラハムに答えた。「どうか、 6 御主人、お聞きください。あなたは、わたしどもの中で神に選ばれた方です。どうぞ、わたしどもの最も良い墓地を選んで、亡くなられた方を葬ってください。わたしどもの中には墓地の提供を拒んで、亡くなられた方を葬らせない者など、一人もいません。」 7 アブラハムは改めて国の民であるヘトの人々に挨拶をし、 8 頼んだ。 「もし、亡くなった妻を葬ることをお許しいただけるなら、ぜひ、わたしの願いを聞いてください。ツォハルの子、エフロンにお願いして、 9 あの方の畑の端にあるマクペラノ洞穴を譲っていただきたいのです。十分な銀をお支払いしますから、皆様方の間に墓地を所有させてください。」 10 エフロンはそのとき、ヘトの人々の間に座っていた。 ヘトの人エフロンは、町の門広場に集まって来たすべてのヘトの人々が聞いているところで、アブラハムに答えた。 11 「どうか、御主人、お聞きください。あの畑は差し上げます。あそこにある洞穴も差し上げます。わたしの一族が立ち会っているところで、あなたに差し上げますから、早速、亡くなられた方を葬ってください。」 12 アブラハムは国の民の前で挨拶をし、 13 国の民の聞いているところで、エフロンに頼んだ。 「わたしの願いを聞き入れてくださるなら、どうか、畑の代金を払わせてください。どうぞ、受け取ってください。そうすれば、亡くなった妻をあそこに葬ってやれます。」 14 エフロンはアブラハムに答えた。「どうか、 15 御主人、お聞きください。あの土地は銀四百シェケルのものです。それがあなたとわたしの間で、どれほどのことでしょう。早速、亡くなられた方を葬ってください。」 16 アブラハムはこのエフロンの言葉を聞き入れ、エフロンがヘトの人々が聞いているところで言った値段、銀四百シェケルを商人の通用銀の重さで量り、エフロンに渡した。 17 こうして、マレムの前のマクペラにあるエフロンの畑は、土地とそこの洞穴と、その周囲の境界内に生えている木を含め、 18 町の門の広場に来ていたすべてのヘトの人々の立ち会いのもとに、アブラハムの所有となった。 19 その後アブラハムは、カナン地方のヘブロンにあるマレムの前のマクペラの畑の洞穴に妻のサラを葬った。 20 その畑とそこの洞穴は、こうして、ヘトの人々からアブラハムが買い取り、墓地として所有することになった。
創世記 イサクとリベカの結婚 24
1 アブラハムは多くの日を重ね老人になり、主は何事においてもアブラハムに祝福をお与えになっていた。 2 アブラハムは家の全財産を任せている年寄りの僕に言った。 「手をわたしの腿の間に入れ、 3 天の神、地の神である主にかけて誓いなさい。 あなたはわたしの息子の嫁をわたしが今住んでいるカナンの娘から取るのではなく、 4 わたしの一族のいる故郷に行って、嫁を息子イサクのために連れて来るように。」 5 僕は尋ねた。 「もしかすると、その娘がわたしに従ってこの土地へ来たくないと言うかもしれません。 その場合には、御子息をあなたの故郷にお連れしてよいでしょうか。」 6 アブラハムは答えた。 「決して、息子をあちらへ行かせてはならない。 7 天の神である主は、わたしを父の家、生まれ故郷から連れ出し、『あなたの子孫にこの土地を与える』と言って、わたしに誓い、約束してくださった。 その方がお前の行く手に御使いを遣わして、そこから息子に嫁を連れて来ることができるようにしてくださる。 8 もし女がお前に従ってこちらへ来たくないと言うならば、お前は、わたしに対するこの誓いを解かれる。 ただわたしの息子をあちらへ行かせることだけはしてはならない。」 9 そこで、僕は主人アブラハムの腿の間に手を入れ、このことを彼に誓った。 10 僕は主人のらくだの中から十頭を選び、主人から預かった高価な贈り物を多く携え、アラム・ナハライムのナホルの町に向って出発した。 11 女たちが水くみに来る夕方、彼は、らくだを町外れの井戸の傍らに休ませて、 12 祈った。 「主人アブラハムの神、主よ。 どうか、今日、わたしを顧みて、主人に慈しみを示してください。 13 わたしはい今、御覧のように、泉の傍らに立っています。 この町に住む人の娘たちが水を汲みに来たとき、 14 その一人に、「どうか、水がめを傾けて、飲ませてください」と頼んでみます。 その娘が「どうぞ、お飲みください。 らくだにも飲ませてあげましょう」と答えれば、彼女こそ、あなたがあなたの僕イサクの嫁としてお決めになったものとさせてください。 そのことによってわたしは、あなたが主人に慈しみを示されたのを知るでしょう。」 15 僕がまだ祈り終わらないうちに、見よ、リベカが水がめを肩に載せてやってきた。 彼女は、アブラハムの兄弟ナホルとその妻ミルカの息子ベトエルの娘で、 16 際立って美しく、男を知らない処女であった。 彼女が泉に下りて行き、水がめに水を満たして上がって来ると、 17 僕は駆け寄り、彼女に向い合って語りかけた。 「水がめの水を少し飲ませてください。」 18 すると彼女は、「どうぞ、お飲みください」と答え、すぐに水がめを下ろして手に抱え、彼に飲ませた。 19 彼が飲み終わると、彼女は、「らくだにも水をくんで来て、たっぷり飲ませてあげましょう」と言いながら、 20 すぐにかめの水を水槽に空け、また水をくみに井戸に走って行った。 こうして、彼女はすべてのらくだに水をくんでやった。 21 その間、僕は主がこの旅の目的をかなえてくださるかどうかを知ろうとして、黙って彼女を見つめていた。 22 らくだが水を飲み終えると、彼は重さ一ベカの金の鼻輪一つと十シュケルの金の腕輪二つを取り出しながら、 23 「あなたは、どなたの娘さんですか。 教えてください。 お父さまの家にはわたしどもが泊めていただける場所があるのでしょうか」と尋ねた。 24 すると彼女は、「わたしは、ナホルとその妻ミルカの子のベトエルの娘です」と答え、 25 更に続けて、「わたしどもの所にはわらも餌もたくさんあります。 お泊りになる場所もございます」と言った。 26 彼はひざまずいて主を伏し拝み、 27 「主人アブラハムの神、主はたたえられますように。 主の慈しみとまことはわたしの主人を離れず、主はわたしの旅路を導き、主人の一族の家にたどりつかせてくださいました」と祈った。 28 娘は走って行き、母の家の者に出来事を告げた。 29 リベカにはラバンという兄がいたが、ラバンはすぐに町の外れの泉の傍らにいるその人のところへ走った。 30 妹が着けている鼻輪と腕輪を見、妹レベカが、「その人がこう言いました」と話しているのを聞いたためである。 彼が行ってみると、確かに泉のほとりのらくだのそばにその人が立っていた。 31 そこで、ラバンは言った。 「おいでください。 主に祝福されたお方。 なぜ、町の外に立っておられるのですか。 わたしが、お泊りになる部屋もらくだの休む場所も整えました。」 32 その人は家に来て、らくだの鞍をはずした。 らくだにはわらと餌が与えられ、その人と従者たちには足を洗う水が運ばれた。 33 やがて食事が前に並べられたが、その人は言った。 「用件をお話しするまでは、食事をいただくわけにはまいりません。」 「お話しください」とラバンが答えると、 34 その人は語り始めた。 「わたしはアブラハムの僕でございます。 35 主がわたしの主人を大層祝福され、羊や牛の群れ、金銀、男女の奴隷、らくだやろばなどをお与えになったので、主人は裕福になりました。 36 奥様のサラは、年をとっていたのに、わたしの主人との間に男の子を産みました。 その子にわたしの主人は全財産をお譲りになったのです。 37 主人はわたしに誓いを立てさせ、「あなたはわたしの息子の嫁を、わたしが今住んでいるカナンの土地の娘から選び取るな。 38 わたしの父の家、わたしの親族のところへ行って、息子の嫁を連れて来るように」と命じました。 39 わたしが主人に、「もしかすると、相手の女がわたしに従って来たくないと言うかもしれません」と申しますと、 40 主人は、「わたしは今まで主の導きに従って歩んできた。 主は御使いを遣わしてお前に伴わせ、旅の目的をかなえてくださる。 お前は、わたしの親族、父の家から息子のために嫁を連れて来ることができよう。 41 そのとき初めて、お前はわたしに対する誓いを解かれる。 またもし、わたしの親族のところに行っても、娘をもらえない場合には、お前はこの誓いを解かれる」と言いました。 42 こういうわけで、わたしは、今日、泉の傍らにやって来て、祈っておりました。 「主人アブラハムの神、主よ。 わたしがたどってきたこの旅の目的を、もしあなたが本当にかなえてくださっるおつもりなら、 43 わたしは今、御覧のように、泉の傍らに立っていますから、どうか、おとめが水をくみにやって来るようになさってください。 彼女に、あなたの水がめの水を少し飲ませてください、と頼んでみます。 44 どうぞお飲みください、らくだにも水をくんであげましょう、と彼女が答えましたなら、その娘こそ、主が主人の息子のためにお決めになった方であるといたします。」 45 わたしがまだ心に言い終わらないうちに、リベカさまが水がめを肩に載せて来られたではありませんか。 そして、泉に下りて行き、水をおくみになりました。 わたしが、「どうか、水を飲ませてください」と頼みますと、 46 レベカさまはすぐに水がめを肩から下ろして、「どうぞお飲みください。 らくだにも飲ませてあげましょう」と答えてくださいました。 わたしも飲み、らくだも飲ませていただいたのです。 47 「あなたは、どなたの娘さんですか」とお尋ねしたところ、「ナホルとミルカの子ベトエルの娘です」と答えられましたので、わたしは鼻輪を鼻に、腕輪を腕に着けて差し上げたのです。 48 わたしはひざまずいて主を伏し拝み、主人アブラハムの神、主をほめたたえました。 主は、主人の子息のために、ほかならぬ主人の一族のお嬢さまを迎えることができるように、わたしの旅路をまことをもって導いてくださいました。 49 あなたがたが、今わたしの主人に慈しみとまことを示してくださるおつもりならば、そうおっしゃってください。 そうでなければ、そうとおっしゃってください。 それによって、わたしは進退を決めたいと存じます。」 50 ラバンとベトエルは答えた。 「このことは主の御意志ですから、わたしどもが善し悪しを申すことはできません。 51 リベカはここにおります。 どうぞお連れください。 主がお決めになったとおり、御主人の御子息の妻になってください。」 52 アブラハムの僕はこの言葉を聞くと、地に伏して主を拝した。 53 そして、金銀の装身具や衣装を取り出してリベカに贈り、その兄と母にも高価な品物を贈った。 54 僕と従者たちは酒食のもてなしを受け、そこに泊まった。 次の朝、皆が起きたとき、僕が、「主人のところへ帰らせてください」と言うと、 55 リベカの兄と母は、「娘をもうしばらく、十日ほど、わたしたちの手もとに置いて、それから行かせるようにしたいのです」と頼んだ。 56 しかし僕は言った。 「わたしを、お引き止めにならないでください。 この旅の目的をかなえさせてくださったのは主なのですから。 わたしを帰らせてください。 主人のところへ参ります。」 57 「娘を呼んで、その口から聞いてみましょう」と彼らは言い、 58 リベカを呼んで、「お前はこの人と一緒に行きますか」と尋ねた。 「はい、参ります」と彼女は答えた。 59 彼らは妹であるリベカとその乳母、アブラハムの僕とその従者たちを一緒に出立させることにし、 60 リベカを祝福して言った。
「わたしたちの妹よ
あなたが幾千万の民となるように。
あなたの子孫が敵の門を勝ち取るように。」
61 リベカは侍女たちと共に立ち上がり、らくだに乗り、その人の後に従った。 僕はリベカを連れて行った。 62 イサクはネゲブ地方に住んでいた。 そのころ、ベエル・ラハイ・ロイから帰ったところであった。 63 夕方暗くなるころ、野原を散策していた。 目を上げて眺めると、らくだがやって来るのが見えた。 64 リベカも目を上げて眺め、イサクを見た。 リベカはらくだから下り、 65 「野原を歩いて、わたしたちを迎えに来るあの人は誰ですか」と僕に尋ねた。 「あの方がわたしの主人です」と僕が答えると、リベカはベールを取り出してかぶった。 66 僕は、自分が成し遂げたことをすべてイサクに報告した。 67 イサクは、母サラの天幕に彼女を案内した。 彼はリベカを迎えて妻とした。 イサクは、リベカを愛して、亡くなった母に代わる慰めを得た。
創世記 ケトラによるアブラハムの子孫 25
1 アブラハムは、再び妻をめとった。 その名はケトラと言った。 2 彼女は、アブラハムとの間にジムラン、ヨクシャン、メダン、ミディアン、イシュバク、シュアを産んだ。 3 ヨクシャンにはシェバとデダンが産まれた。 デダンの子孫は、アシュル人、レトシム人、レオミム人であった。 4 ミディアンの子孫は、エフェ、エフェル、ハノク、アビダ、エルダアであった。 これらは皆、ケトラの子孫であった。 5 アブラハムは、全財産をイサクに譲った。 6 側女の子供たちには贈り物を与え、自分が生きている間に、東の方、ケデム地方へ移住させ、息子イサクから遠ざけた。
創世記 アブラハムの死と埋葬 25
7 アブラハムの生涯は百七十五年であった。 8 アブラハムは長寿を全うして息を引き取り、満ち足りて死に、先祖の列に加えられた。 9 息子イサクとイシュマエルは、マクベラの洞穴に彼を葬った。 その洞穴はマレムの前の、ヘト人ツォハルの子エフロンの畑の中にあったが、 10 その畑は、アブラハムがヘトの人々から買い取ったものである。 そこに、アブラハムは妻サラと共に葬られた。 11 アブラハムが死んだ後、神は息子のイサクを祝福された。 イサクは、ベエル・ラハイ・ロイの近くに住んだ。
創世記 イシュマエルの子孫 25
12 サラの女奴隷であったエジプト人ハガルが、アブラハムとの間に産んだ息子イシュマエルの系図は次のとおりである。 13 イシュマエルの息子たちの名前は、生まれた順に挙げれば、長男がネバヨト、次はケダル、アドベエル、ミブサム、 14 ミシュマ、ドマ、マサ、 15 ハダド、テマ、エトル、ナフィシェ、ケデマである。 16 以上がイシュマエルの息子たちで、村落や宿営地に従って付けられた名前である。 彼らはそれぞれの部族の十二人の首長であった。 17 イシュマエルの生涯は百三十七年であった。 彼は息を引き取り、死んで先祖の列に加えられた。 18 イシュマエルの子孫は、エジプトに近いシュルに接したハビラからアシュル方面に向かう道筋に沿って宿営し、互に敵対しつつ生活していた。
創世記 エサウとヤコブの誕生 25
19 アブラハムの息子のイサクの系図は次のとおりである。 アブラハムにはイサクが生まれた。 20 イサクは、リベカと結婚したとき四十歳であった。 リベカは、パダン・アラムのアラム人ベトエルの娘で、アラム人ラバンの妹であった。 21 イサクは、妻に子供ができなかったので、妻のために主に祈った。 その祈りは主に聞き入れられ、妻リベカは身ごもった。 22 ところが、胎内で子供たちが押し合うので、リベカは「これでは、わたしはどうなるのでしょう」と言って、主の御心を尋ねるために出かけた。 23 主は彼女に言われた。
「二つの国民があなたの胎内に宿っており
二つの民があなたの腹の内で分かれ争っている。
一つの民が他の民より強くなり
兄が弟に仕えるようになる。」
24 月が満ちて出産の時が来ると、胎内にはまさしく双子がいた。 25 先に出てきた子は赤くて、全身が毛皮の衣のようであったので、エサウと名付けた。 26 その後で弟が出てきたが、その手がエサウのかかと(アケブ)をつかんでいたので、ヤコブと名付けた。 リベカが二人を産んだとき、イサクは六十歳であった。
創世記 長子の特権 25
27 二人の子供は成長して、エサウは巧みな狩人で野の人となったが、ヤコブは穏やかな人で天幕の周りで働くのを常とした。 28 イサクはエサウを愛した。 狩りの獲物が好物だったからである。 しかし、リベカはヤコブを愛した。 29 ある日のこと、ヤコブが煮物をしていると、エサウが疲れきって野原から帰って来た。 30 エサウはヤコブに言った。 「お願いだ、その赤いもの(アドム)、そこの赤いものを食べさせてほしい。 わたしは疲れきっているんだ。」 彼が名をエドムとも呼ばれたのはこのためである。 31 ヤコブは言った。 「まず、お兄さんの長子の権利を譲ってきださい。」 32 「ああ、もう死にそうだ。 長子の権利などどうでもよい」とエサウが答えると、 33 ヤコブは言った。 「では、今すぐに誓ってください。」 エサウは誓い、長子の権利をヤコブに譲ってしまいました。 34 ヤコブはエサウにパンとレンズ豆の煮物を与えた。 エサウは飲み食いしたあげく立ち、去って行った。 こうしてエサウは、長子の権利を軽んじた。
創世記 イサクのゲラル滞在 26
1 アブラハムの時代にあった飢饉とは別に、この地方にまた飢饉があったので、イサクはゲラルにいるペリシテ人の王アビメルクのところへ行った。 2 そのとき、主がイサクに現れて言われた。
「エジプトへ下って行ってはならない。 わたしが命じる土地に滞在しなさい。 3 あなたがこの土地に寄留するならば、わたしはあなたと共にいてあなたを祝福し、これらの土地をすべてあなたとその子孫に与え、あなたの父アブラハムに誓ったわたしの誓いを成就する。 4 わたしはあなたの子孫を天の星のように増やし、これらの土地をすべてあなたの子孫に与える。 地上の諸国民はすべて、あなたの子孫によって祝福を得る。 5 アブラハムがわたしの声に聞き従い、わたしの戒めや命令、掟や教えを守ったからである。 6 そこで、イサクはゲラルに住んだ。 7 その土地の人たちがイサクの妻のことを尋ねたとき、彼は、自分の妻だと言うのを恐れて、「わたしの妹です」と答えた。 リベカが美しかったので、土地の者たちがリベカゆえに自分を殺すのではないかと思ったからである。 8 イサクは長く滞在していたが、あるとき、ペリシテ人の王アビメレクが窓から下を眺めると、イサクが妻のリベカと戯れていた。 9 アビメレクは早速イサクを呼びつけて言った。 「あの女は、本当はあなたの妻ではないか。 それなのになぜ、『わたしの妹ですと』などと言ったのか。」 「彼女のゆえにわたしは死ぬことになるかもしれないと思ったからです」とイサクは答えると、 10 アビメレクは言った。 「あなたは何ということをしたのだ。 民のだれかがあなたの妻と寝たら、あなたは我々を罪に陥れるところであった。」 11 アビメレクはすべての民に命令を下した。 「この人、またはその妻に危害を加える者は、必ず死刑に処せられる。」 12 イサクがその土地に穀物の種を蒔くと、その年のうちに百倍もの収穫があった。 イサクが主の祝福を受けて、 13 豊かになり、ますます富み栄えて、 14 多くの羊や牛の群れ、それに多くの召し使いを持つようになると、ペリシテ人はイサクをねたむようになった。
(1) 創世記 天地の創造 1-1 から イサクのゲラル滞在 26-14 まで
2021年10月09日
創世記 ソドムの滅亡 19-21,19-22
創世記 天地の創造
1
1 初めに、神は天地を創造された。 2 地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、?~の靈が水の面を動いていた。 3 ?~は言われた。「光あれ。」こうして、光があった。 4 ?~は光を見て、良しとされた。?~は光と闇を分け、 5 光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第一の日である。6 ?~は言われた。「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。」 7 ?~は大空を造り、大空の下と大空の上に水を分けさせられた。そのようになった。 8 ?~は大空を天と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第二の日である。 9 ?~は言われた。「天の下の水は一つ所に集まれ。乾いた所が現れよ。」そのようになった。 10 神は乾いた所を地と呼び、水の集まった所を海と呼ばれた。神はこれを見て、良しとされた。 11 神は言われた。「地は草を芽生えさせよ。種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける果樹を、地に芽生えさせよ。」そのようになった。 12 地は草を芽生えさせ、それぞれの種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける木を芽生えさせた。?~はこれを見て、良しとされた。 13 夕べがあり、朝があった。第三の日である。 14 神は言われた。「天の大空に光る物があって、昼と夜を分け、季節のしるし、日や年のしるしとなれ。 15 天の大空に光る物があって、地を照らせ。」そのようになった。 16 ?~は二つの大きな光る物と星を造り、大きな方に昼を治めさせ、小さな方に夜を治めさせられた。 17 ?~はそれらを天の大空に置いて、地を照らさせ、 18 昼と夜を治めさせ、光と闇を分けさせられた。?~はこれを見て、良しとされた。 19 夕べがあり、朝があった。第四の日である。 20 ?~は言われた。「生き物が水の中に群がれ。鳥は地の上、天の大空の面を飛べ。」 21 ?~は水に群がるもの、すなわち大きな怪物、うごめく生き物をそれぞれに、また、翼ある鳥をそれぞれに創造された。?~はこれを見て、良しとされた。 22 ?~はそれらのものを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、海の水に満ちよ。鳥は地の上に増えよ。」 23 夕べがあり、朝があった。第五の日である。 24 ?~は言われた。「地は、それぞれの生き物を産み出せ。家畜、這うもの、地の獣をそれぞれに産み出せ。」そのようになった。 25 ?~はそれぞれの地の獣、それぞれの家畜、それぞれの土を這うものを造られた。?~はこれを見て、良しとされた。 26 ?~は言われた。「我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。そして海の魚、空の鳥、家畜、地の獣、地を這うものすべてを支配させよう。」 27 ?~は御自分にかたどって人を創造された。?~にかたどって創造された。男と女に創造された。28 ?~は彼らを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ。」 29 ?~は言われた。「見よ、全地に生える、種を持つ草と種を持つ実をつける木を、すべてあなたたちに与えよう。それがあなたたちの食べ物となる。 30 地の獣、空の鳥、地を這うものなど、すべて命あるものにはあらゆる青草をたべさせよう。」そのようになった。 31 ?~はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった。夕べがあり、朝があった。第六の日である。
2
1 天地万物は完成された。 2 第七の日に、?~は御自分の仕事を完成され、第七の日に、神は御自分の仕事を離れ、安息なさった。 3 この日に?~はすべての創造の仕事を離れ、安息なさったので、第七の日を?~は祝福し、聖別された。 4 これが天地創造の由来である。主なる?~が地と天を造られたとき、 5 地上には野の木も、野の草も生えていなかった。主なる?~が地上に雨をお送りにならなかったからである。また土を耕す人もいなかった。 6 しかし、水が地下から湧き出て、土の面をすべて潤した。 7 主なる?~は、土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった。 8 主なる?~は、東の方のエデンに園を設け、自ら形づくった人をそこに置かれた。 9 主なる?~は、見るからに好ましく、食べるに良いものをもたらすあらゆる木を地に生えいでさせ、また園の中央には、命の木と善悪の知識の木を生えいでさせられた。 10 エデンから一つの川が流れ出ていた。園を潤し、そこで分かれて、四つの川となっていた。 11 第一の川の名はピションで、金を産出するハビラ地方全域を巡っていた。 12 その金は良質であり、そこではまた、琥珀の類やラピス・ラズリも産出した。 13 第二の川の名はギホンで、クシュ地方全域を巡っていた。 14 第三の川の名はチグリスで、アシュルの東の方を流れており、第四の川の名はユーフラテスであった。 15 主なる?~は人を連れて来て、エデンの園に住まわせ、人がそこを耕し、守るようにされた。 16 主なる?~は人に命じて言われた。「園のすべての木から取って食べなさい。 17 ただし、善悪の知識の木からは、決して食べてはならない。食べると必ず死んでしまう。」 18 主なる?~は言われた。「人が一人でいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう。」 19 主なる?~は、野のあらゆる獣、空のあらゆる鳥を土で形づくり、人のところへ持って来て、人がそれぞれどう呼ぶか見ておられた。人が呼ぶと、それはすべて、生き物の名となった。 20 人はあらゆる家畜、空の鳥、野のあらゆる獣に名を付けたが、自分に合う助ける者は見つけることができなかった。 21 主なる?~はそこで、人を深い眠りに落とされた。人が眠り込むと、あばら骨の一部を抜き取り、その跡を肉でふさがれた。 22 そして、人から抜き取ったあばら骨で女を造り上げられた。主なる?~が彼女を人のところへ連れて来られると、 23 人は言った。「ついに、これこそわたしの骨の骨わたしの肉の肉。これこそ、女(イシャー)と呼ぼう まさに、男(イシュ)から取られたものだから。」 24 こういうわけで、男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる。 25 人と妻は二人とも裸であったが、恥ずかしがりはしなかった。
創世記 蛇の誘惑
3
1 主なる?~が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった。蛇は女に言った。「園のどの木からも食べてはいけない、などと神は言われたのか。」 2 女は蛇に答えた。「わたしたちは園の木の果実を食べてよいのです。 3 でも、園の中央に生えている木の果実だけは、食べてはいけない。触れてもいけない、死んではいけないから、と?~様はおっしゃいました。」 4 蛇は女に言った。「決して死ぬことはない。 5 それを食べると、目が開け、?~のように善悪を知るものとなることを?~はご存じなのだ。」 6 女が見ると、その木はいかにもおいしそうで、目を引き付け、賢くなるように唆していた。女は実を取って食べ、一緒にいた男にも渡したので、彼も食べた。 7 二人の目は開け、自分たちが裸であることを知り、二人はいちじくの葉をつづり合わせ、腰を覆うものとした。 8 その日、風の吹くころ、主なる?~が園の中を歩く音が聞こえてきた。アダムと女が、主なる?~の顔を避けて、園の木の間に隠れると、 9 主なる?~はアダムを呼ばれた。「どこにいるのか」 10 彼は答えた。「あなたの足音が園の中に聞こえたので、恐ろしくなり、隠れております。わたしは裸ですから。」 11 ?~は言われた。「お前が裸であることを誰が告げたのか。取って食べるなと命じた木から食べたのか。」 12 アダムは答えた。「あなたがわたしと共にいるようにしてくださった女が、木から取って与えたので、食べました。」 13 主なる?~は女に向かって言われた。「何ということをしたのか。」女は答えた。「蛇がだましたので、食べてしまいました。」 14 主なる?~は、蛇に向かって言われた。「このようなことをしたお前はあらゆる家畜、あらゆる野の獣の中で呪われるものとなった。お前は、生涯這いまわり、塵を食らう。 15 お前と女、お前の子孫と女の子孫の間にわたしは敵意を置く。彼はお前の頭を砕き お前は彼のかかとを砕く。」 16 ?~は女に向かって言われた。「お前のはらみの苦しみを大きなものにする。お前は、苦しんで子を産む。お前は男を求め 彼はお前を支配する。」 17 ?~はアダムに向かって言われた。「お前は女の声に従い 取って食べるなと命じた木から食べた。お前のゆえに、土は呪われるものとなった。お前は、生涯食べ物を得ようと苦しむ。 18 お前に対して 土は茨とあざみを生えいでさせる 野の草を食べようとするお前に。 19 お前は顔に汗を流してパンを得る 土に返るときまで。お前がそこから取られた土に。塵にすぎないお前は塵に返る。」 20 アダムは女をエバ(命)と名付けた。彼女がすべて命あるものの母となったからである。 21 主なる?~は、アダムと女に皮の衣を作って着せられた。 22 主なる?~は言われた。「人は我々の一人のように、善悪を知る者となった。今は、手を伸ばして命の木からも取って食べ、永遠に生きる者となるおそれがある。」 23 主なる?~は、彼をエデンの園から追い出し、彼に、自分がそこから取られた土を耕させることにされた。 24 こうしてアダムを追放し、命の木に至る道を守るために、エデンの園の東にケルビムと、きらめく剣の炎を置かれた。
創世記 カインとアペル
4
1 さて、アダムは妻エバを知った。彼女は身ごもってカインを産み、「わたしは主によって男子を得た」と言った。 2 彼女はまたその弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。 3 時を経て、カインは土の実りを主のもとに献げ物として持って来た。 4 アベルは羊の群れの中から肥えた初子を持って来た。主はアベルとその献げ物に目を留められたが、 5 カインとその献げ物には目を留められなかった。カインは激しく怒って顔を伏せた。 6 主はカインに言われた。「どうして怒るのか。どうして顔を伏せるのか。 7 もしお前が正しいなら、顔を上げられるはずではないか。正しくないなら、罪は戸口で待ち伏せており、お前を求める。お前はそれを支配せねばならない。」 8 カインが弟アベルに言葉をかけ、二人が野原に着いたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。 9 主はカインに言われた。「お前の弟アベルは、どこにいるのか。」カインは答えた。「知りません。わたしは弟の番人でしょうか。」 10 主は言われた。「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。 11 今、お前は呪われる者となった。お前が流した弟の血を、口を開けて飲み込んだ土よりもなお、呪われる。 12 土を耕しても、土はもはやお前のために作物を産み出すことはない。お前は地上をさまよい、さすらう者となる。」 13 カインは主に言った。「わたしの罪は重すぎて負いきれません。 14 今日、あなたがわたしをこの土地から追放なさり、わたしが御顔から隠されて、地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう。」 15 主はカインに言われた。「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。 16 カインは主の前を去り、エデンの東、ノド(さすらい)の地に住んだ。 17 カインは妻を知った。彼女は身ごもってエノクを産んだ。カインは町を建てていたが、その町を息子の名前にちなんでエノクと名付けた。 18 エノクにはイラドが生まれた。イラドはメフヤエルの父となり、メフヤエルはメトシャエルの父となり、メトシャエルはレメクの父となった。
19 レメクは二人の妻をめとった。一人はアダ、もう一人はツィラと言った。 20 アダはヤバルを産んだ。ヤバルは、家畜を飼い天幕に住む者の先祖となった。 21 その弟はユバルといい、竪琴や笛を奏でる者すべての先祖となった。 22 ツィラもまた、トバル・カインを産んだ。彼は青銅や鉄でさまざまの道具を作る者となった。トバル・カインの妹はナアマといった。 23 さて、レメクは妻に言った。「アダとツィラよ、わが声を聞け。レメクの妻たちよ、わが言葉に耳を傾けよ。わたしは傷の報いに男を殺し 打ち傷の報いに若者を殺す。 24 カインのための復讐が七倍なら レメクのためには七十七倍。」 25 再び、アダムは妻を知った。彼女は男の子を産み、セトと名付けた。カインがアベルを殺したので、?~が彼に代わる子を授け(シャト)られたからである。 26 セトにも男の子が生まれた。彼はその子をエノシュと名付けた。主の御名を呼び始めたのは、この時代のことである。
創世記 アダムの系図
5
1 これはアダムの系図の書である。?~は人を創造された日、?~に似せてこれを造られ、 2 男と女に創造された。創造の日に、彼らを祝福されて、人と名付けられた。 3 アダムは百三十歳になったとき、自分に似た、自分にかたどった男の子をもうけた。アダムはその子をセトと名付けた。 4 アダムは、セトが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 5 アダムは九百三十年生き、そして死んだ。 6 セトは百五歳になったとき、エノシュをもうけた。 7 セトはエノシュが生まれた後八百七年生きて、息子や娘をもうけた。 8 セトは九百十二年生き、そして死んだ。 9 エノシュは九十歳になったとき、ケナンをもうけた。 10 エノシュは、ケナンが生まれた後八百十五年生きて、息子や娘をもうけた。 11 エノシュは九百五年生き、そして死んだ。 12 ケナンは七十歳になったとき、マハラルエルをもうけた。 13 ケナンはマハラルエルが生まれた後八百四十年生きて、息子や娘をもうけた。 14 ケナンは九百十年生き、そして死んだ。 15 マハラルエルは六十五歳になったとき、イエレドをもうけた。 16 マハラルエルは、イエレドが生まれた後八百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 17 マハラルエルは八百九十五年生き、そして死んだ。 18 イエレドは百六十二歳になったとき、エノクをもうけた。 19 イエレドは、エノクが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 20 イエレドは九百六十二年生き、そして死んだ。 21 エノクは六十五歳になったとき、メトシェラもうけた。 22 エノクは、メトシェラが生まれた後、三百年?~と共に歩み、息子や娘をもうけた。 23 エノクは三百六十五年生きた。 24 エノクは?~と共に歩み、?~が取られたのでいなくなった。 25 メトシェラは百八十七歳になったとき、レメクをもうけた。 26 メトシェラは、レメクが生まれた後七百八十二年生きて、息子や娘をもうけた。 27 メトシェラは九百六十九年生き、そして死んだ。 28 レメクは百八十二歳になったとき、男の子をもうけた。 29 彼は、「主の呪いを受けた大地で働く我々の手の苦労を、この子は慰めてくれるだろう」と言って、その子をノア(慰め)と名付けた。 30 レメクは、ノアが生まれた後五百九十五年生きて、息子や娘をもうけた。 31 レメクは七百七十七年生き、そして死んだ。 32 ノアは五百歳になったとき、セム ハム ヤフェトをもうけた。
創世記 洪水
6
1 さて、地上に人が増え始め、娘たちが生まれた。 2 ?~の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、おのおの選んだ者を妻にした。 3 主は言われた。 「わたしの霊は人の中に永久にとどまるべきではない。人は肉にすぎないのだから。」こうして、人の一生は百二十年となった。 4 当時もその後も、地上にはネフィリムがいた。これは、?~の子らが人の娘たちのところに入って産ませた者であり、大昔の名高い英雄たちであった。 5 主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、 6 地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた。 7 主は言われた。 「わたしは人を創造したが、これを地上からぬぐい去ろう。人だけでなく、家畜も這うものも空の鳥も。わたしはこれらを造ったことを後悔する。」 8 しかし、ノアは主の好意を得た。 9 これはノアの物語である。その世代の中で、ノアは?~に従う無垢な人であった。ノアは?~と共に歩んだ。 10 ノアには三人の息子、セム ハム ヤフェトが生まれた。 11 この地は?~の前に堕落し、不法に満ちていた。 12 ?~は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。 13 ?~はノアに言われた。「すべて肉なるものを終わらせる時がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす。 14 あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟には小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。 15 次のようにしてそれを造りなさい。箱舟の長さを三百アンマ、幅を五十アンマ、高さを三十アンマにし、 16 箱舟に明かり取りを造り、上から一アンマにして、それを仕上げなさい。箱舟の側面には戸口を造りなさい。また、一階と二階と三階を造りなさい。 17 見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊をもつ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべてのものは息絶える。 18 わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。 19 また、すべて命あるもの、すべて肉なるものから、二つずつ箱舟に連れて入り、あなたと共に生き延びるようにしなさい。それらは、雄と雌でなければならない。 20 それぞれの鳥、それぞれの家畜、それぞれの地を這うものが、二つずつあなたのところへ来て、生き延びるようにしなさい。 21 更に、食べられる物はすべてあなたのところに集め、あなたと彼らの食料としなさい。」 22 ノアは、すべて?~が命じられたとおりに果たした。
7
1 主はノアに言われた。「さあ、あなたとあなたの家族は皆、箱舟に入りなさい。この世代の中であなただけはわたしに従う人だと、わたしは認めている。 2 あなたは清い動物をすべて七つがい取り、また、清くない動物をすべて一つがいずつ取りなさい 3 空の鳥も七つがい取りなさい。全地の面に子孫が生き続けるように。 4 七日の後、わたしは四十日四十夜地上に雨を降らせ、わたしが造ったすべての生き物を地の面からぬぐい去ることにした。」 5 ノアはすべて主が命じられたとおりにした。 6 ノアが六百歳のとき、洪水が地上に起こり、水が地の上にみなぎった。 7 ノアは妻子や嫁たちと共に洪水を免れようと箱舟に入った。 8 清い動物も清くない動物も、鳥も地を這うものもすべて、 9 二つずつ箱舟のノアのもとに来た。それは?~がノアに命じられたとおりに、雄と雌であった。 10 七日が過ぎて、洪水が地上起こった。 11 ノアの生涯の第六百年、第二の月の十七日、この日、大いなる深淵の源がことごとく裂け、天の窓が開かれた。 12 雨が四十日四十夜地上に降り続いたが、 13 まさにこの日、ノアも、息子のセム、ハム、ヤフェト、ノアの妻、この三人の息子の嫁たちも、箱舟に入った。 14 彼らと共にそれぞれの獣、それぞれの家畜、それぞれの地を這うもの、それぞれの鳥、小鳥や翼のあるものすべて、 15 命の霊をもつ肉なるものは、二つずつノアのもとに来て箱舟に入った。 16 ?~が命じられたとおりに、すべて肉なるものの雄と雌とが来た。主は、ノアの後ろで戸を閉ざされた。 17 洪水は四十日間地上を覆った。水は次第に増して箱舟を押し上げ、箱舟は大地を離れて浮かんだ。 18 水は勢力を増し、地の上に大いにみなぎり、箱舟は水の面を漂った。 19 水はますます勢いを加えて地上にみなぎり、およそ天の下にある高い山はすべて覆われた。 20 水は勢い増して更にその上十五アンマに達し、山々を覆った。 21 地上で動いていた肉なるものはすべて、鳥も家畜も獣も地に群がり這うものも人も、ことごとく息絶えた。 22 乾いた地のすべてのもののうち、その鼻に命の息と霊のあるものはことごとく死んだ。 23 地の面にいた生き物はすべて、人をはじめ、家畜、這うもの、空の鳥に至るまでぬぐい去られた。彼らは大地からぬぐい去られ、ノアと、彼と共に箱舟にいたものだけが残った。 24 水は百五十日の間、地上で勢いを失わなかった。
8
1 神は、ノアと彼と共に箱舟にいたすべての獣とすべての家畜を御心に留め、地の上に風を吹かせられたので、水が減り始めた。 2 また、深淵の源と天の窓が閉じられたので、天からの雨は降りやみ、 3 水は地上からひいて行った。百五十日の後には水が減って、 4 第七の月の十七日に箱舟はアララト山の上に止まった。 5 水はますます減って第十の月になり、第十の月の一日には山々の頂が現れた。 6 四十日たって、ノアは自分が造った箱舟の窓を開き、烏を放した。烏は飛び立ったが、地上の水が乾くのを待って、出たり入ったりした。 8 ノアは鳩を彼のもとから放して、地の面から水がひいたかどうかを確かめようとした。 9 しかし、鳩は止まる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰って来た。水がまだ全地の面を覆っていたからである。ノアは手を差し伸べて鳩を捕らえ、箱舟の自分のもとに戻した。 10 更に七日待って、彼は再び鳩を箱舟から放した。 11 鳩は夕方になってノアのもとに帰って来た。見よ、鳩はくちばしにオリーブの葉をくわえていた。ノアは水が地上からひいたことを知った。 12 彼は更に七日待って、鳩を放した。鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。 13 ノアが六百一歳のとき、最初の月の一日に、地上の水は乾いた。ノアは箱舟の覆いを取り外して眺めた。見よ、地の面は乾いていた。 14 第二の月の二十七日になると、地はすっかり乾いた。 15 神はノアに仰せになった。 「さあ、あなたもあなたの妻も、息子も嫁も、皆一緒に箱舟から出なさい。 17 すべて肉なるもののうちからあなたのもとに来たすべての動物、鳥も家畜も地を這うものも一緒に連れ出し、地に群がり、地上で子を産み、増えるようにしなさい。」 18 そこで、ノアは息子や妻や嫁と共に外へ出た。 19 獣、這うもの、鳥、地に群がるもの、それぞれすべて箱舟から出た。 20 ノアは主のために祭壇を築いた。そしてすべての清い家畜と清い鳥のうちから取り、焼き尽くす捧げ物として祭壇の上にささげた。 21 主は宥めの香りをかいで、御心に言われた。「人に対して大地を呪うことは二度とすまい。人が心に思うことは、幼いときから悪いのだ。わたしは、この度したように生き物をことごとく打つことは、二度とすまい。 22 地の続くかぎり、種蒔きも刈り入れも 寒さも暑さも、夏も冬も 昼も夜も、やむことはない。」
創世記 祝福と契約
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1 ?~はノアと彼の息子たちを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちよ。 2 地のすべての獣と空のすべての鳥は、地を這うすべてのものと海のすべての魚と共に、あなたたちの前に恐れおののき、あなたたちの手にゆだねられる。 3 動いている命あるものは、すべてあなたたちの食糧とするがよい。わたしはこれらすべてのものを、青草と同じようにあなたたちに与える。 4 ただし、肉は命である血を含んだまま食べてはならない。 5 また、あなたたちの命である血が流された場合、わたしは賠償を要求する。いかなる獣からも要求する。人間どうしの血については、人間から人間の命を賠償として要求する。 6 人の血を流す者は 人によって自分の血を流される。人は?~にかたどって造られたからだ。 7 あなたたちは産めよ、増えよ 地に群がり、地に増えよ。」 8 ?~はノアと彼の息子たちに言われた。 9 「わたしは、あなたたちと、そして後に続く子孫と、契約を立てる。 10 あなたたちと共にいるすべての生き物、またあなたたちと共にいる鳥や家畜や地のすべての獣など、箱舟から出たすべてのもののみならず、地のすべての獣と契約を立てる。 11 わたしがあなたたちと契約を立てたならば、二度と洪水によって肉なるものが滅ぼされることはなく、洪水が起こって地を滅ぼすことも決してない。」 12 更に?~は言われた。「あなたたちならびにあなたたちと共にいるすべての生き物と、代々(よよ)とこしえにわたしが立てる契約のしるしはこれである。 13 すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立てた契約のしるしとなる。 14 わたしが地の上に雲を湧き起こらせ、雲の中に虹が現れると、 15 わたしは、わたしとあなたたちならびにすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた契約に心を留める。水が洪水となって、肉なるものをすべて滅ぼすことは決してない。 16 雲の中に虹が現れると、わたしはそれを見て、神と地上のすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた永遠の契約に心をと留める。」 17 ?~はノアに言われた。「これが、わたしと地上のすべて肉なるものとの間にたてた契約のしるしである。」
創世記 ノアと息子たち
18 箱舟から出たノアの息子は、セム、ハム、ヤフェトであった。ハムはカナンの父である。 19 この三人がノアの息子で、全世界の人々は彼らから出て広がったのである。 20 さて、ノアは農夫となり、ぶどう畑を作った。 21 あるとき、ノアはぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。 22 カナンの父ハムは、自分の父の裸を見て、外にいた二人の兄弟に告げた。 23 セムとヤフェトは着物を取って自分たちの肩に掛け、後ろ向きに歩いて行き、父の裸を覆った。二人は顔を背けたままで、父の裸を見なかった。 24 ノアは酔いからさめると、末の息子がしたことを知り、 25 こう言った。「カナンは呪われよ 奴隷の奴隷となり、兄たちに仕えよ。」 26 また言った。「セムの神、主をたたえよ。 カナンはセムの奴隷となれ。
27 神がヤフェトの土地を広げ(ヤフェト) セムの天幕に住まわせ カナンはその奴隷となれ。」 28 ノアは、洪水の後三百五十年生きた。 29 ノアは九百五十歳になって、死んだ。
創世記 ノアの子孫
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1 ノアの息子、セム、ハム、ヤフェトの系図は次のとおりである。洪水の後、彼らに息子が生まれた。 2 ヤフェトの子孫はゴメル、マゴグ、メディア、ヤワン、トバル、メシェク、ティラスであった。 3 ゴメルの子孫は、アシュケナズ、リファト、トガルマであった。 4 ヤワンの子孫は、エリシャ、タルシシュ、キティム、ロダニムであった。 5 海沿いの国々は、彼らから出て、それぞれの地に、その言語、氏族、民族に従って住むようになった。 6 ハムの子孫は、クシュ、エジプト、プト、カナンであった。 7 クシュの子孫はセバ、ハビラ、サブタ、ラマ、サブテカであり、ラマの子孫はシェバとデダンであった。 8 クシュにはまた、ニムロドが生まれた。ニムロドは地上で最初の勇士となった。 9 彼は、主の御前に勇敢な狩人であり、「主の御前に勇敢な狩人ニムドロのようだ」という言い方がある。 10 彼の王国の主な町は、バベル、ウルク、アッカドであり、それらはすべてシンアルの地にあった。 11 彼はその地方からアッシリに進み、ニネベ、レホボト・イル、カラ、 12 レセンを建てた。レセンはニネベとカラとの間にある、非常に大きな町であった。 13 エジプトにはリディア人、アルミナ人、レハビム人、ナフトヒム人、 14 上エジプト人、カスルヒム人、カフトル人が生まれた。このカフトル人からペリシテ人が出た。
15 カナンには長男シドンとヘト、 16 また、エブス人、アモリ人、ギルガシ人、 17 ヒビ人、アルキ人、シニ人、 18 アルワド人、フェマリ人、ハマト人が生まれた。その後、カナン人の諸氏族が広がった。 19 カナン人の領土は、シドンから南下してゲラルを経てガザまでを含み、更に、ソドム、ゴモラ、アドマ、ツェボイムを経てラシャまでを含んだ。 20 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたハムの子孫である。 21 セムにもまた子供が生まれた。彼はエベルのすべての子孫の先祖であり、ヤフェトの兄であった。 22 セムの子孫はエラム、アシュル、アルパクシャド、ルド、アラムであった。 23 アラムの子孫は、ウツ、フル、ゲテル、マシュであった。 24 アルパクシャドにはシェラが生まれ、シェラにはエベルが生まれた。 25 エベルには二人の息子が生まれた。ひとりの名は、その時代に土地が分けられた(パラグ)ので、ペレグといい、その兄弟はヨクタンといった。 26 ヨクタンには、アルモダド、シェレフ、ハツァルマベト、イエラ、 27 ハドラム、ウザル、ディクラ、 28 オバル、アビマエル、シェバ、 29 オフィル、ハビラ、ヨバブが生まれた。これらは皆、ヨクタンの息子であった。 30 彼らはメシャからセファルに至る東の高原地帯に住んでいた。 31 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたセムの子孫である。 32 ノアの子孫である諸氏族を、民族ごとの系図にまとめると以上のようになる。地上の諸民族は洪水の後、彼らから分かれ出た。
創世記 バベルの塔
11
1 世界中は同じ言葉を使って、同じように話していた。 2 東の方から移動してきた人々は、シンアルの地に平野を見つけ、そこに住み着いた。 3 彼らは、「れんがを作り、それをよく焼こう」と話し合った。石の代わりにれんがを、しっくいの代わりにアスファルトを用いた。 4 彼らは、「さあ 天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。 5 主は降って来て、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、 6 言われた。「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。 7 我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」 8 主は彼らをそこから全地に散らされたので、彼らはこの町の建設をやめた。 9 こういうわけで、この町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ、また、主がそこから彼らを全地に散らされたからである。
創世記 セムの系図
10 セムの系図は次のとおりである。セムが百歳になったとき、アルバクシャドが生まれた。それは洪水の二年後のことであった。 11 セムは、アルパクシャドが生まれた後五百年生きて、息子や娘をもうけた。 12 アルパクシャドが三十五歳になったとき、シェラが生まれた。 13 アルパクシャドは、シェラが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 14 シェラが三十歳になったとき、エベルが生まれた。 15 シェラは、エベルが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 16 エベルが三十四歳になったとき、ぺレグが生まれた。 17 エベルは、ぺレグが生まれた後四百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 18 ぺレグが三十歳になったとき、レウが生まれた。 19 ぺレグは、レウが生まれた後二百九年生きて、息子や娘をもうけた。 20 レウが三十二歳になったとき、セルグが生まれた。 21 レウは、セルグが生まれた後二百七年生きて、息子や娘をもうけた。 22 セルグ三十歳なったとき、ナホルが生まれた。 23 セルグは、ナホルが生まれた後二百年生きて、息子や娘をもうけた。 24 ナホルが二十九歳になったとき、テラが生まれた。 25 ナホルは、テラが生まれた後百十九年生きて、息子や娘をもうけた。 26 テラが七十歳になったとき、アブラム、ナホル、ハランが生まれた。
創世記 テラの系図
27 テラの系図は次のとおりである。テラにはアブラム、ナホル、ハランが生まれた。ハランにはロトが生まれた。 28 ハランは父のテラより先に、故郷カルデアのウルで死んだ。 29 アブラムとナホルはそれぞれ妻をめとった。アブラムの妻の名はサライ、ナホルの妻の妻の名はミルカといった。ミルカはハランの娘である。ハランはミルカとイスカの父であった。 30 サライは不妊の女で、子供ができなかった。 31 テラは、息子アブラムと、ハランの息子で自分の孫であるロト、および息子アブラムの妻で自分の嫁であるサライを連れて、カルデアのウルを出発し、カナン地方に向った。彼らはハランまで来ると、そこにとどまった。 32 テラは二百五年の生涯を終えて、ハランで死んだ。
創世記 アブラムの召命と移住
12
1 主はアブラムに言われた。「あなたは生まれ故郷 父の家を離れて わたしが示す地に行きなさい 2 わたしはあなたを大いなる国民にし あなたを祝福し あなたに名を高める 祝福の源となるように 3 あなたを祝福する人をわたしは祝福し あなたを呪う者をわたしは呪う。 地上の氏族はすべて あなたによって祝福に入る。」 4 アブラムは 主の言葉に従って旅立った。ロトも共に行った。アブラムは、ハランを出発したとき七十五歳であった。 5 アブラムは妻のサライ、甥のロトを連れ、蓄えた財産をすべて携え、ハランで加わった人々と共にカナン地方へ向かって出発し、カナン地方入った。 6 アブラムはその地を通り、シケムの聖所、モレの樫の木まで来た。当時、その地方にはカナン人が住んでいた。 7 主はアブラムに現れて、言われた。「あなたの子孫のこの地を与える」アブラムは、彼に現れた主のために、そこに祭壇を築いた。 8 アブラムは、そこからベテルの東の山へ移り、西にベテル、東にアイを望む所に天幕を張って、そこにも主のために祭壇を築き、主の御名を呼んだ。 9 アブラムは更に旅を続け、ネゲブ地方に移った。
創世記 エジプト滞在
10 その地方に飢饉があった。 アブラムは、その地方の飢饉がひどかったので、エジプトに下り、そこに滞在することにした。 11 エジプトに入ろうしたとき、妻サライに言った。 「あなたが美しいのを、わたしはよく知っている。 12 エジプト人があなたを見たら、『この女はあの男の妻だ』と言って、わたしを殺し、あなたを生かしておくにちがいない。 13 どうか、わたしの妹だ、と言ってください。 そうすれば、わたしはあなたのゆえに幸いになり、あなたのお陰で命も助かるだろう。」 14 アブラムがエジプトに入ると、エジプト人はサライを見て、大変美しいと思った。 15 ファラオの家臣たちも彼女を見て、ファラオに彼女のことを褒めたので、サライはファラオの宮廷に召し入れられた 16 アブラムも彼女のゆえに幸いを受け、羊の群れ、牛の群れ、ろば、男女の奴隷、雌ろば、らくだなどを与えられた。 17 ところが主は、アブラムの妻サライのことで、ファラオと宮廷の人々を恐ろしい病気にかからせた。 18 ファラオはアブラムを呼び寄せて言った。 「あなたはわたしに何ということをしたのか。 なぜ、あの婦人は自分の妻だと、言わなかったのか。 19 なぜ、『わたしの妹です』などと言ったのか。 だからこそ、わたしの妻として召し入れたのだ。 さあ、あなたの妻を連れて、立ち去ってもらいたい。 20 ファラオは家来たちに命じて、アブラムを、その妻とすべての持ち物と共に送り出させた。
創世記 ロトとの別れ
13
1 アブラムは、妻と共に、すべての持ち物を携え、エジプトを出て再びネゲブ地方へ上った。ロトも一緒であった。 2 アブラムは非常に多くの家畜や金銀を持っていた。 3 ネゲブ地方から更に、ベテルに向って旅を続け、ベテルとアイとの間の、以前に天幕を張った所まで来た。 4 そこは、彼が最初に祭壇を築いて、主の御名を呼んだ場所であった。 5 アブラムと共に旅をしていたロトもまた、羊や牛の群れを飼い、たくさんの天幕を持っていた。 6 その土地は、彼らが一緒に住むには十分ではなかった。 彼らの財産が多すぎたから、一緒に住むことができなかったのである。 7 アブラムの家畜を飼う者たちと、ロトの家畜を飼うものたちとの間に争いが起きた。 そのころ、その地方にはカナン人もペリジ人も住んでいた。 8 アブラムはロトに言った。 「わたしたちは親類どうしだ。わたしとあなたの間ではもちろん、お互いの羊飼いの間でも争うのはやめよう。 9 あなたの前には幾らでも土地があるのだから、ここで別れようではないか。 あなたが左に行くなら、わたしは右に行こう。 あなたが右に行くなら、わたしは左に行こう。」 10 ロトが目を上げて眺めると、ヨルダン川流域の低地一帯は、 主がソドムとゴモラを滅ぼす前であったので、ツォアルに至るまで、主の園のように、エジプトの国のように、見渡すかぎりよく潤っていた。 11 ロトはヨルダン川流域の低地一帯を選んで、東へ移って行った。こうして彼らは、左右に別れた。 12 アブラムはカナン地方に住み、ロトは低地の町々に住んだが、彼はソドムまで天幕を移した。 13 ソドムの住民は邪悪で、主に対して多くの罪を犯していた。 14 主は、ロトが別れて行った後、アブラムに言われた。「さあ、目を上げて、あなたがいる場所から東西南北を見渡しなさい。 15 見えるかぎりの土地をすべて、わたしは永久にあなたとあなたの子孫に与える。 16 あなたの子孫を大地の砂粒のようにする。大地の砂粒が数えきれないように、あなたの子孫も数えきれないであろう。 17 さあ、この土地を縦横に歩き回るがよい。わたしはそれをあなたに与えるから。」 18 アブラムは天幕を移し、ヘブロンにあるマムレの樫の木のところに来て住み、そこに主のために祭壇を築いた。
創世記 王との戦い
14
1 シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨク、エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアルが、 2 ソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アドマの王シンアブ、ツェボイムの王シェムエベル、ベラ、すなわちツオワルの王と戦ったとき、 3 これら五人の王は皆、シディムの谷、すなわち塩の海で同盟を結んだ。 4 彼らは十二年間ケドルラオメルに支配されていたが、十三年目に背いたのである。 5 十四年目に、ケドルラオメルとその味方の王たちが来て、アシュテロト・カルナイムでレファイム人を、ハムでズジム人を、シャベ・キルヤタイムでエミル人を、 6 セイルの山地でフリ人人を撃ち、荒れ野に近いエル・バランまで進んだ。 7 彼らは転進して、エン・ミシュパト、すなわちカデシュに向かい、アマレク人の全領土とハツェツオン・タマルに住むアモリ人を撃った。 8 そこで、ソドムの王、ゴモラの王、アドマの王、ツェボイムの王、ベラすなわちツォアルの王は兵を繰り出し、シディムの谷で彼らと戦おうと陣を敷いた。 9 エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアル、シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨクの四人の王に対して、これら五人の王が戦いを挑んだのである。 10 シディムの谷には至るところに天然アスファルトの穴があった。ソドムとゴモラの王は逃げるとき、その穴に落ちた。残りの王は山へ逃れた。 11 ソドムとゴモラの財産や食糧はすべて奪い去られ、 12 ソドムに住んでいたアブラムの甥ロトも、財産もろとも連れ去られた。
創世記 ロトの救出
13 逃げ延びた一人の男がヘブライ人アブラムのもとに来て、そのことを知らせた。アブラムは当時、アモリ人マムレ樫の木の傍らに住んでいた。マムレはエシュコルとアネルの兄弟で、彼らはアブラムと同盟を結んでいた。 14 アブラムは、親族の者が捕虜になったと聞いて、彼の家で生まれた奴隷で、訓練を受けた者三百十八人を召集し、ダンまで追跡した。 15 夜、彼と僕たちは分かれて敵を襲い、ダマスコの北のホバまで追跡した。 16 アブラムはすべての財産を取り返し、親族のロトとその財産、女たちやそのほかの人々も取り戻した。
創世記 メルキゼデグの祝福
17 アブラムがケドルラオメルとその味方の王たちを撃ち破って帰って来たとき、ソドムの王はシャベの谷、すなわち王の谷まで彼を出迎えた。 18 いと高き神の祭司であったサレムの王メルキゼデクも、パンとぶどう酒を持って来た。 19 彼はアブラムを祝福して言った。「天地の造り主、いと高き神に アブラムは祝福されますように。 20 敵をあなたの手に渡された いと高き神がたたえられますように。」 アブラムはすべての物の十分の一を彼に贈った。 21 ソドムの王はアブラムに、「人はわたしにお返しください。 しかし、財産はお取りください」と言ったが、 22 アブラムはソドムの王に言った。 「わたしは天地の造り主、いと高き?~、主に手を上げて誓います。 23 あなたの物は、たとえ糸一筋、靴ひも一本でも、決していただきません。 『アブラムを裕福にしたのは、このわたしだ』と、あなたに言われたくありません。 24 わたしは何も要りません。 ただ、若い者たちが食べたものと、わたしと共に戦った人々、すなわち、アネルとエシュコルとマムレの分は別です。 彼らには分け前を取らせてください。
創世記 神の約束
15
1 これらのことの後で、主の言葉が幻の中でアブラムに臨んだ。 「恐れるな、アブラムよ。 わたしはあなたの盾である。 あなたの受ける報いは非常に大きいであろう。 2 アブラムは尋ねた。 「わが神、主よ。わたしに何をくださるというのですか。わたしには子供がありません。家を継ぐのはダマスコのエリエゼルです。 3 アブラムは言葉をついだ。「御覧のとおり、あなたはわたしに子孫を与えてくださいませんでしたから、家の僕が跡を継ぐことになっています。」 4 見よ、主の言葉があった。「その者があなたの跡を継ぐのではなく、あなたから生まれる者が跡を継ぐ。」 5 主は彼を外に連れ出して言われた。「天を仰いで、星を数えることができるなら、数えてみるがよい。」 そして言われた。 「あなたの子孫はこのようになる。」 6 アブラムは主を信じた。主はそれを彼の義と認められた。 7 主は言われた。 「わたしはあなたをカルデアのウルから導き出した主である。わたしはあなたにこの土地を与え、それを継がせる。」 8 アブラムは尋ねた。 「わが神、主よ。この土地をわたしが継ぐことを、何によって知ることができましょうか。」 9 主は言われた。 「三歳の雌牛と、三歳の雌山羊と、三歳の雄羊と、山鳩と、鳩の雛とをわたしのもとに持ってきなさい。」 10 アブラムはそれらのものをみな持って来て、真っ二つに切り裂き、それぞれを互いに向かい合わせて置いた。 ただ、鳥は切り裂かなかった。 11 はげ鷹がこれらの死体をねらって降りて来ると、アブラムは追い払った。 12 日が沈みかけたころ、アブラムは深い眠りに襲われた。すると、恐ろしい大いなる暗黒が彼に臨んだ。 13 主はアブラムに言われた。 「よく覚えておくがよい。あなたの子孫は異邦の国で寄留者となり、四百年の間奴隷として仕え、苦しめられるであろう。 14 しかしわたしは、彼らが奴隷として仕えるその国民を裁く。
その後、彼らは多くの財産を携えて脱出するであろう。 15 あなた自身は、長寿を全うして葬られ、安らかに先祖のもとに行く。 16 ここに戻ってくるのは、四代目の者たちである。それまではアモリ人の罪が極みに達しないからである。 17 日が沈み、暗闇に覆われたころ、突然、煙を吐く炉と燃える松明が二つに裂かれた動物の間を通り過ぎた。 18 その日、主はアブラムと契約を結んで言われた。 「あなたの子孫にこの土地を与える。エジプトの川から大河ユーフラテスに至るまで、 19 カイン人、ケナズ人、カドモニ人、 20 ヘト人、ペリジ人、レファイム人、 21 アモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人の土地を与える。」
創世記 ハガルの逃亡と出産
16
1 アブラムの妻サライには、子供が生まれなかった。彼女には、ハガルというエジプト人の女奴隷がいた。 2 サライはアブラムに言った。 「主はわたしに子供を授けてくださいません。どうぞ、わたしの奴隷のところへ入ってください。わたしは彼女によって、子供を与えられるかもしれません。」 アブラムは、サライの願いを聞き入れた。 3 アブラムの妻サライは、エジプト人の女奴隷ハガルを連れて来て、夫アブラムの側女とした。アブラムがカナン地方に住んでから、十年後のことであった。 4 アブラムはハガルのところに入り、彼女は身ごもった。ところが、自分が身ごもったのを知ると、彼女は女主人を軽んじた。 5 サライはアブラムに言った。 「わたしが不当な目に遭ったのは、あなたのせいです。女奴隷をあなたのふところに与えたのはわたしなのに、彼女は自分が身ごもったのを知ると、わたしを軽んじるようになりました。主がわたしとあなたとの間を裁かれますように。 6 アブラムはサライに答えた。
「あなたの女奴隷はあなたのものだ。好きなようにするがいい。」サライは彼女につらく当たったので、彼女はサライのもとから逃げた。 7 主の御使いが荒れ野の泉のほとり、シュル街道に沿う泉のほとりで彼女と出会って、 8 言った。 「サライの女奴隷ハガルよ。あなたはどこから来て、どこへ行こうとしているのか。」「女主人サライのもとから逃げているところです」と答えると、 9 主の御使いは言った。 「女主人のもとに帰り、従順に仕えなさい。」 10 主の御使いは更に言った。 「わたしは、あなたの子孫を数えきれないほど多く増やす。」 11 主の御使いはまた言った。 「今、あなたは身ごもっている。やがてあなたは男の子を産む。その子をイシュマエルと名付けなさい。主があなたの悩みをお聞きになられたから。 12 彼は野生のろばのような人になる。彼があらゆる人にこぶしを振りかざすので、人々は皆、こぶしを振るう。彼は兄弟すべてに敵対して暮らす。」 13 ハガルは自分に語りかけた主の御名を呼んで、 「あなたこそエル・ロイ(わたしを顧みられる?~)です」と言った。それは、彼女が、「神がわたしを顧みられた後もなお、わたしはここで見続けていたではないか」と言ったからである。 14 そこで、その井戸は、ベエル・ラハイ・ロイと呼ばれるようになった。それはカディシュとベレドの間にある。 15 ハガルはアブラムとの間に男の子を産んだ。アブラムは、ハガルが産んだ男の子をイシュマエルと名付けた。 16 ハガルがイシュマエルを生んだとき、アブラムは八十六歳であった。
創世記 契約と割礼
17
1 アブラムが九十九歳になったとき、主はアブラムに現れて言われた。「わたしは全能の神である。あなたはわたしに従って歩み、全き者となりなさい。 2 わたしは、あなたとの間にわたしの契約を立て、あなたをますます増やすであろう。」 3 アブラムはひれ伏した。神は更に、語りかけて言われた。 4 「これがあなたと結ぶわたしの契約である。あなたは多くの国民の父となる。 5 あなたは、もはやアブラムではなく、アブラハムと名乗りなさい。あなたを多くの国民の父とするからである。 6 わたしは、あなたをますます?栄させ、諸国民の父とする。王となる者たちがあなたから出るであろう。 7 わたしは、あなたとの間に、また後に続く子孫との間に契約を立て、それを永遠の契約とする。そして、あなたとあなたの子孫の神となる。 8 わたしは、あなたが滞在しているこのカナンのすべての土地を、あなたとその子孫に、永久の所有地として与える。わたしは彼らの神となる。」 9 神はまた、アブラムに言われた。「だからあなたも、わたしの契約を守りなさい、あなたも後に続く子孫も。 10 あなたたち、およびあなたの後に続く子孫と、わたしとの間で守るべき契約はこれである。すなわち、あなたたちの男子はすべて、割礼を受ける。 11 包皮の部分を切り取りなさい。これが、わたしとあなたたちとの間の契約のしるしとなる。 12 いつの時代でも、あなたたちの男子はすべて、直系の子孫はもちろんのこと、家で生まれた奴隷も、外国人から買い取った奴隷であなたの子孫でない者も皆、生れてから八日目に割礼を受けなければならない。 13 あなたのお家で生まれた奴隷も、買い取った奴隷も、必ず割礼を受けなければならない。それによって、わたしの契約はあなたの体に記されて永遠の契約となる。 14 包皮の部分を切り取らない無割礼の男がいたなら、その人は民の間から断たれる。わたしの契約を破ったからである。」 15 神はアブラムに言われた。「あなたの妻サライは、名前をサライではなく、サラと呼びなさい。 16 わたしは彼女を祝福し、彼女によってあなたに男の子を与えよう。わたしは彼女を祝福し、諸国民の母とする。諸民族の王となる者たちが彼女から出る。」 17 アブラハムひれ伏した。しかし笑って、ひそかに言った。「百歳の男に子供が生まれるだろうか。九十歳のサラに子供が産めるだろうか。」 18 アブラハムは神に言った。「どうか、イシュマエルが御前に生き永らえますように。」 19 神は言われた。「いや、あなたの妻サラがあなたとの間に男の子を産む。その子をイサク(彼は笑う)と名付けなさい。わたしは彼と契約を立て、彼の子孫のために永遠の契約とする。 20 イシュマエルについての願いも聞き入れよう。必ず、わたしは彼を祝福し、大いに子供を増やし繁栄させる。彼は十二人の首長の父となろう。わたしは彼を大いなる国民とする。 21 しかし、わたしの契約は、来年の今ごろ、サラがあなたとの間に産むイサクと立てる。」 22 神はこう語り終えると、アブラハムを離れて昇って行かれた。 23 アブラハムは、息子のイシュマエルをはじめ、家で生まれた奴隷や買い取った奴隷など、自分の家にいる人々のうち、男子を皆集めて、すぐその日に、神が命じられたとおり包皮に割礼を施した。 24 アブラハムが包皮に割礼を受けたのは、九十九歳、 25 息子イシュマエルが包皮に割礼を受けたのは、十三歳であった。 26 アブラハムと息子のイシュマエルは、すぐその日に割礼を受けた。 27 アブラハムの家の男子は、家で生まれた奴隷も外国人から買い取った奴隷も皆、共に割礼を受けた。
創世記 イサクの誕生の予告
18
1 主はマムレの樫の木の所でアブラハムに現れた。暑い真昼に、アブラハムは天幕の入り口に座っていた。 2 目を上げて見ると、三人の人が彼に向って立っていた。アブラハムはすぐに天幕の入り口から走り出て迎え、地にひれ伏して、 3 言った。「お客様、よろしければ、どうか、僕のもとを通り過ぎないでください。 4 水を少々持ってこさせますから、足を洗って、木陰でどうぞひと休みなさってください。 5 何か召し上がるものを調えますので、疲れをいやしてから、お出かけください。せっかく、僕の所の近くをお通りになったのですから。」その人たちは言った。「では、お言葉どおりにしましょう。」 6 アブラハムは急いで天幕に戻り、サラのところに来て言った。「早く、上等の小麦粉を三セアほどこねて、パン菓子をこしらえなさい。」 7 アブラハムは牛の群れのところへ走って行き、柔らかくておいしそうな子牛を選び、召し使いに渡し、急いで料理をさせた。 8 アブラハムは、凝乳、乳、出来立ての子牛の料理などを選び、彼らの前に並べた。そして、彼らが木陰で食事をしている間、そばに立って給仕をした。 9 彼らはアブラハムに尋ねた。「あなたの妻のサラはどこにいますか。」「はい、天幕の中におります」とアブラハムが答えると、 10 彼らの一人が言った。「わたしは来年の今ごろ、必ずここにまた来ますが、そのころには、あなたの妻のサラに男の子が生まれているでしょう。」サラは、すぐ後ろの天幕の入り口で聞いていた。 11 アブラハムもサラも多くの日を重ねて老人になっており、しかもサラは月のものがとうになくっていた。 12 サラはひそかに笑った。自分は年をとり、もはや楽しみがあるはずもなし、主人も年老いているのに、と思ったのである。13 主はアブラハムに言われた。「なぜサラは笑ったのか。なぜ年をとった自分に子供が生まれるはずがないと思ったのだ。 14 主に不可能なことがあろうか。来年の今ごろ、わたしはここに戻ってくる。そのころ、サラには必ず男の子が生まれている。」 15 サラは恐ろしくなり、打ち消して言った。「わたしは笑いませんでした。」主は言われた。「いや、あなたは確かに笑った。」
創世記 ソドムのための執り成し
16 その人たちはそこを立って、ソドムを見下ろす所まで来た。アブラハムも、彼らを見送るために一緒に行った。 17 主は言われた。「わたしが行おうとしていることをアブラハムに隠す必要があろうか。 18 アブラハムは大きな強い国民になり、世界のすべての国民は彼によって祝福に入る。 19 わたしがアブラハムを選んだのは、彼が息子たちとその子孫に、主の道を守り、主に従って正義を行うよう命じて、主がアブラハムに約束したことを成就するためである。 20 主は言われた。「ソドムとゴモラの罪は非常に重い、と訴える叫びが実に大きい。 21 わたしは降って行き、彼らの行跡が、果たして、わたしに届いた叫びのとおりかどうか見て確かめよう。」 22 その人たちは、更にソドムの方に向かったが、アブラハムはなお、主の御前にいた。 23 アブラハムは進み出て言った。「もことにあなたは、正しい者を悪い者と一緒に滅ぼされるのですか。 24 あの町に正しい者が五十人いるとしても、それでも滅ぼし、その五十人の正しい者のために、町をお赦しにはならないのですか。 25 正しい者を悪い者と一緒に殺し、正しい者を悪い者と同じ目に遭わせるようなことを、あなたがなさるはずはございません。全くありえないことです。全世界を裁くお方は、正義を行われるべきではありませんか。」 26 主は言われた。「もしソドムの町に正しい者が五十人いるならば、その者たちのために、町を全部赦そう。」 27 アブラハムは答えた。「塵にすぎないわたしですが、あえて、わが主に申し上げます。 28 もしかすると、五十人の正しい者に五人足りないかもしれません。それでもあなたは、五人たりないために、町のすべてを滅ぼされますか。」主は言われた。「もし、四十五人いれば滅ぼさない。」 29 アブラハムは重ねて言った。「もしかすると、四十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その四十人のためにわたしはそれをしない」 30 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう少し言わせてください。もしかすると、そこには三十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「もし三十人いるならわたしはそれはしない。」 31 アブラハムは言った。「あえて、わが主に申し上げます。もしかすると、二十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その二十人のためにわたしは滅ぼさない。」 32 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう一度だけ言わせてください。もしかすると、十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その十人のためにわたしは滅ぼさない。」 33 主はアブラハムと語り終えると、去って行かれた。アブラハムも自分の住まいに帰った。
創世記 ソドムの滅亡
19
1 二人の御使いが夕方ソドムに着いたとき、ロトはソドムの門の所に座っていた。ロトは彼らを見ると、立ち上って迎え、地にひれ伏して、 2 言った。 「皆様方、どうぞ僕(しもべ)の家に立ち寄り、足を洗ってお泊りください。彼らは言った。「いや、結構です。わたしたちはこの広場で夜を過ごします。」 3 しかし、ロトがぜひにと勧めたので、彼らはロトの所に立ちよることにし、彼の家を訪ねた。ロトは、酵母を入れないパンを焼いて食事を供し、彼らをもてなした。 4 彼らがまだ床に就かないうちに、ソドムの町の男たちが、若者も年寄りもこぞって押しかけ、家を取り囲んで、 5 わめきたてた。 「今夜、お前のところへ来た連中はどこにいる。ここへ連れてこい。なぶりものにしてやるから。」 6 ロトは、戸口の前にたむろしている男たちのところへ出て行き、後ろの戸を閉めて、 7 言った。 「どうか、皆さん、乱暴なことはしないでください。 8 実は、わたしにはまだ嫁がせていない娘が二人おります。皆さんにその娘たちを差し出しますから、好きなようにしてください。ただ、あの方々には何もしないでください。この家の屋根の下に身を寄せていただいたのですから。」 9 男たちは口々に言った。 「そこをどけ」 「こいつはよそ者のくせに、指図などして。」 「さあ、彼らより先に、お前を痛い目に遭わせてやる。」 そして、ロトに詰め寄って体を押しつけ、戸を破ろうとした。 10 二人の客はそのとき、手を伸ばして、ロトを家の中に引き入れて戸を閉め、 11 戸口の前に入る男たちに、老若を問わず、目つぶしを食わせ、戸口を分からなくした。 12 二人の客はロトに言った。 「ほかに、あなたの身内の人がこの町にいますか。あなたの婿や息子や娘などを皆連れてここから逃げなさい。 13 実は、わたしたちはこの町を滅ぼしに来たのす。大きな叫びが主にもとに届いたので、主は、この町を滅ぼすためにわたしたちを遣わされたのです。」 14 ロトは嫁いだ娘たちの婿のところへ行き、「さあ早くここから逃げるのだ。主がこの町を滅ぼされるからだ」と促したが、婿たちは冗談だと思った。 15 夜が明けるころ、御使いたちはロトをせきたてて言った。「さあ早く、あなたの妻とここにいる二人の娘を連れて行きなさい。さもないと、この町に下る罰の巻き添えになって滅ぼされてしまう。」 16 ロトはためらっていた。主は憐れんで、二人の客にロト、妻、二人の娘の手をとらせて町の外へ避難するようにされた。 17 彼らがロトたちを町外れへ連れ出したとき、主は言われた。 「命がけで逃れよ。後ろを振り返ってはいけない。低地のどこにもとどまるな。山へ逃げなさい。さもないと、滅びることになる。」 18 ロトは言った。 「主よ、できません。 19 あなたは僕(しもべ)に目を留め、慈しみを豊かに示し、命を救おうとしています。しかし、わたしは山まで逃げ延びることはできません。恐らく、災害に巻き込まれて、死んでしまうのでしょう。 20 御覧ください、あの町を。あそこなら近いので、逃げて行けると思います。あれは小さな町です。あそこへ逃げさせてください。あれはほんの小さな町です。どうか、そこでわたしの命を救ってください。」 21 主は言われた。 「よろしい。そのこともあなたの願いを聞き届け、あなたの言うその町は滅ぼさないことにしよう。 22 急いで逃げなさい。あなたがあの町に着くまでは、わたしは何も行わないから。」 そこで、その町はツォアル(小さい)と名付けられた。
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1 初めに、神は天地を創造された。 2 地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、?~の靈が水の面を動いていた。 3 ?~は言われた。「光あれ。」こうして、光があった。 4 ?~は光を見て、良しとされた。?~は光と闇を分け、 5 光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第一の日である。6 ?~は言われた。「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。」 7 ?~は大空を造り、大空の下と大空の上に水を分けさせられた。そのようになった。 8 ?~は大空を天と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第二の日である。 9 ?~は言われた。「天の下の水は一つ所に集まれ。乾いた所が現れよ。」そのようになった。 10 神は乾いた所を地と呼び、水の集まった所を海と呼ばれた。神はこれを見て、良しとされた。 11 神は言われた。「地は草を芽生えさせよ。種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける果樹を、地に芽生えさせよ。」そのようになった。 12 地は草を芽生えさせ、それぞれの種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける木を芽生えさせた。?~はこれを見て、良しとされた。 13 夕べがあり、朝があった。第三の日である。 14 神は言われた。「天の大空に光る物があって、昼と夜を分け、季節のしるし、日や年のしるしとなれ。 15 天の大空に光る物があって、地を照らせ。」そのようになった。 16 ?~は二つの大きな光る物と星を造り、大きな方に昼を治めさせ、小さな方に夜を治めさせられた。 17 ?~はそれらを天の大空に置いて、地を照らさせ、 18 昼と夜を治めさせ、光と闇を分けさせられた。?~はこれを見て、良しとされた。 19 夕べがあり、朝があった。第四の日である。 20 ?~は言われた。「生き物が水の中に群がれ。鳥は地の上、天の大空の面を飛べ。」 21 ?~は水に群がるもの、すなわち大きな怪物、うごめく生き物をそれぞれに、また、翼ある鳥をそれぞれに創造された。?~はこれを見て、良しとされた。 22 ?~はそれらのものを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、海の水に満ちよ。鳥は地の上に増えよ。」 23 夕べがあり、朝があった。第五の日である。 24 ?~は言われた。「地は、それぞれの生き物を産み出せ。家畜、這うもの、地の獣をそれぞれに産み出せ。」そのようになった。 25 ?~はそれぞれの地の獣、それぞれの家畜、それぞれの土を這うものを造られた。?~はこれを見て、良しとされた。 26 ?~は言われた。「我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。そして海の魚、空の鳥、家畜、地の獣、地を這うものすべてを支配させよう。」 27 ?~は御自分にかたどって人を創造された。?~にかたどって創造された。男と女に創造された。28 ?~は彼らを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ。」 29 ?~は言われた。「見よ、全地に生える、種を持つ草と種を持つ実をつける木を、すべてあなたたちに与えよう。それがあなたたちの食べ物となる。 30 地の獣、空の鳥、地を這うものなど、すべて命あるものにはあらゆる青草をたべさせよう。」そのようになった。 31 ?~はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった。夕べがあり、朝があった。第六の日である。
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1 天地万物は完成された。 2 第七の日に、?~は御自分の仕事を完成され、第七の日に、神は御自分の仕事を離れ、安息なさった。 3 この日に?~はすべての創造の仕事を離れ、安息なさったので、第七の日を?~は祝福し、聖別された。 4 これが天地創造の由来である。主なる?~が地と天を造られたとき、 5 地上には野の木も、野の草も生えていなかった。主なる?~が地上に雨をお送りにならなかったからである。また土を耕す人もいなかった。 6 しかし、水が地下から湧き出て、土の面をすべて潤した。 7 主なる?~は、土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった。 8 主なる?~は、東の方のエデンに園を設け、自ら形づくった人をそこに置かれた。 9 主なる?~は、見るからに好ましく、食べるに良いものをもたらすあらゆる木を地に生えいでさせ、また園の中央には、命の木と善悪の知識の木を生えいでさせられた。 10 エデンから一つの川が流れ出ていた。園を潤し、そこで分かれて、四つの川となっていた。 11 第一の川の名はピションで、金を産出するハビラ地方全域を巡っていた。 12 その金は良質であり、そこではまた、琥珀の類やラピス・ラズリも産出した。 13 第二の川の名はギホンで、クシュ地方全域を巡っていた。 14 第三の川の名はチグリスで、アシュルの東の方を流れており、第四の川の名はユーフラテスであった。 15 主なる?~は人を連れて来て、エデンの園に住まわせ、人がそこを耕し、守るようにされた。 16 主なる?~は人に命じて言われた。「園のすべての木から取って食べなさい。 17 ただし、善悪の知識の木からは、決して食べてはならない。食べると必ず死んでしまう。」 18 主なる?~は言われた。「人が一人でいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう。」 19 主なる?~は、野のあらゆる獣、空のあらゆる鳥を土で形づくり、人のところへ持って来て、人がそれぞれどう呼ぶか見ておられた。人が呼ぶと、それはすべて、生き物の名となった。 20 人はあらゆる家畜、空の鳥、野のあらゆる獣に名を付けたが、自分に合う助ける者は見つけることができなかった。 21 主なる?~はそこで、人を深い眠りに落とされた。人が眠り込むと、あばら骨の一部を抜き取り、その跡を肉でふさがれた。 22 そして、人から抜き取ったあばら骨で女を造り上げられた。主なる?~が彼女を人のところへ連れて来られると、 23 人は言った。「ついに、これこそわたしの骨の骨わたしの肉の肉。これこそ、女(イシャー)と呼ぼう まさに、男(イシュ)から取られたものだから。」 24 こういうわけで、男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる。 25 人と妻は二人とも裸であったが、恥ずかしがりはしなかった。
創世記 蛇の誘惑
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1 主なる?~が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった。蛇は女に言った。「園のどの木からも食べてはいけない、などと神は言われたのか。」 2 女は蛇に答えた。「わたしたちは園の木の果実を食べてよいのです。 3 でも、園の中央に生えている木の果実だけは、食べてはいけない。触れてもいけない、死んではいけないから、と?~様はおっしゃいました。」 4 蛇は女に言った。「決して死ぬことはない。 5 それを食べると、目が開け、?~のように善悪を知るものとなることを?~はご存じなのだ。」 6 女が見ると、その木はいかにもおいしそうで、目を引き付け、賢くなるように唆していた。女は実を取って食べ、一緒にいた男にも渡したので、彼も食べた。 7 二人の目は開け、自分たちが裸であることを知り、二人はいちじくの葉をつづり合わせ、腰を覆うものとした。 8 その日、風の吹くころ、主なる?~が園の中を歩く音が聞こえてきた。アダムと女が、主なる?~の顔を避けて、園の木の間に隠れると、 9 主なる?~はアダムを呼ばれた。「どこにいるのか」 10 彼は答えた。「あなたの足音が園の中に聞こえたので、恐ろしくなり、隠れております。わたしは裸ですから。」 11 ?~は言われた。「お前が裸であることを誰が告げたのか。取って食べるなと命じた木から食べたのか。」 12 アダムは答えた。「あなたがわたしと共にいるようにしてくださった女が、木から取って与えたので、食べました。」 13 主なる?~は女に向かって言われた。「何ということをしたのか。」女は答えた。「蛇がだましたので、食べてしまいました。」 14 主なる?~は、蛇に向かって言われた。「このようなことをしたお前はあらゆる家畜、あらゆる野の獣の中で呪われるものとなった。お前は、生涯這いまわり、塵を食らう。 15 お前と女、お前の子孫と女の子孫の間にわたしは敵意を置く。彼はお前の頭を砕き お前は彼のかかとを砕く。」 16 ?~は女に向かって言われた。「お前のはらみの苦しみを大きなものにする。お前は、苦しんで子を産む。お前は男を求め 彼はお前を支配する。」 17 ?~はアダムに向かって言われた。「お前は女の声に従い 取って食べるなと命じた木から食べた。お前のゆえに、土は呪われるものとなった。お前は、生涯食べ物を得ようと苦しむ。 18 お前に対して 土は茨とあざみを生えいでさせる 野の草を食べようとするお前に。 19 お前は顔に汗を流してパンを得る 土に返るときまで。お前がそこから取られた土に。塵にすぎないお前は塵に返る。」 20 アダムは女をエバ(命)と名付けた。彼女がすべて命あるものの母となったからである。 21 主なる?~は、アダムと女に皮の衣を作って着せられた。 22 主なる?~は言われた。「人は我々の一人のように、善悪を知る者となった。今は、手を伸ばして命の木からも取って食べ、永遠に生きる者となるおそれがある。」 23 主なる?~は、彼をエデンの園から追い出し、彼に、自分がそこから取られた土を耕させることにされた。 24 こうしてアダムを追放し、命の木に至る道を守るために、エデンの園の東にケルビムと、きらめく剣の炎を置かれた。
創世記 カインとアペル
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1 さて、アダムは妻エバを知った。彼女は身ごもってカインを産み、「わたしは主によって男子を得た」と言った。 2 彼女はまたその弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。 3 時を経て、カインは土の実りを主のもとに献げ物として持って来た。 4 アベルは羊の群れの中から肥えた初子を持って来た。主はアベルとその献げ物に目を留められたが、 5 カインとその献げ物には目を留められなかった。カインは激しく怒って顔を伏せた。 6 主はカインに言われた。「どうして怒るのか。どうして顔を伏せるのか。 7 もしお前が正しいなら、顔を上げられるはずではないか。正しくないなら、罪は戸口で待ち伏せており、お前を求める。お前はそれを支配せねばならない。」 8 カインが弟アベルに言葉をかけ、二人が野原に着いたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。 9 主はカインに言われた。「お前の弟アベルは、どこにいるのか。」カインは答えた。「知りません。わたしは弟の番人でしょうか。」 10 主は言われた。「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。 11 今、お前は呪われる者となった。お前が流した弟の血を、口を開けて飲み込んだ土よりもなお、呪われる。 12 土を耕しても、土はもはやお前のために作物を産み出すことはない。お前は地上をさまよい、さすらう者となる。」 13 カインは主に言った。「わたしの罪は重すぎて負いきれません。 14 今日、あなたがわたしをこの土地から追放なさり、わたしが御顔から隠されて、地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう。」 15 主はカインに言われた。「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。 16 カインは主の前を去り、エデンの東、ノド(さすらい)の地に住んだ。 17 カインは妻を知った。彼女は身ごもってエノクを産んだ。カインは町を建てていたが、その町を息子の名前にちなんでエノクと名付けた。 18 エノクにはイラドが生まれた。イラドはメフヤエルの父となり、メフヤエルはメトシャエルの父となり、メトシャエルはレメクの父となった。
19 レメクは二人の妻をめとった。一人はアダ、もう一人はツィラと言った。 20 アダはヤバルを産んだ。ヤバルは、家畜を飼い天幕に住む者の先祖となった。 21 その弟はユバルといい、竪琴や笛を奏でる者すべての先祖となった。 22 ツィラもまた、トバル・カインを産んだ。彼は青銅や鉄でさまざまの道具を作る者となった。トバル・カインの妹はナアマといった。 23 さて、レメクは妻に言った。「アダとツィラよ、わが声を聞け。レメクの妻たちよ、わが言葉に耳を傾けよ。わたしは傷の報いに男を殺し 打ち傷の報いに若者を殺す。 24 カインのための復讐が七倍なら レメクのためには七十七倍。」 25 再び、アダムは妻を知った。彼女は男の子を産み、セトと名付けた。カインがアベルを殺したので、?~が彼に代わる子を授け(シャト)られたからである。 26 セトにも男の子が生まれた。彼はその子をエノシュと名付けた。主の御名を呼び始めたのは、この時代のことである。
創世記 アダムの系図
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1 これはアダムの系図の書である。?~は人を創造された日、?~に似せてこれを造られ、 2 男と女に創造された。創造の日に、彼らを祝福されて、人と名付けられた。 3 アダムは百三十歳になったとき、自分に似た、自分にかたどった男の子をもうけた。アダムはその子をセトと名付けた。 4 アダムは、セトが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 5 アダムは九百三十年生き、そして死んだ。 6 セトは百五歳になったとき、エノシュをもうけた。 7 セトはエノシュが生まれた後八百七年生きて、息子や娘をもうけた。 8 セトは九百十二年生き、そして死んだ。 9 エノシュは九十歳になったとき、ケナンをもうけた。 10 エノシュは、ケナンが生まれた後八百十五年生きて、息子や娘をもうけた。 11 エノシュは九百五年生き、そして死んだ。 12 ケナンは七十歳になったとき、マハラルエルをもうけた。 13 ケナンはマハラルエルが生まれた後八百四十年生きて、息子や娘をもうけた。 14 ケナンは九百十年生き、そして死んだ。 15 マハラルエルは六十五歳になったとき、イエレドをもうけた。 16 マハラルエルは、イエレドが生まれた後八百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 17 マハラルエルは八百九十五年生き、そして死んだ。 18 イエレドは百六十二歳になったとき、エノクをもうけた。 19 イエレドは、エノクが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 20 イエレドは九百六十二年生き、そして死んだ。 21 エノクは六十五歳になったとき、メトシェラもうけた。 22 エノクは、メトシェラが生まれた後、三百年?~と共に歩み、息子や娘をもうけた。 23 エノクは三百六十五年生きた。 24 エノクは?~と共に歩み、?~が取られたのでいなくなった。 25 メトシェラは百八十七歳になったとき、レメクをもうけた。 26 メトシェラは、レメクが生まれた後七百八十二年生きて、息子や娘をもうけた。 27 メトシェラは九百六十九年生き、そして死んだ。 28 レメクは百八十二歳になったとき、男の子をもうけた。 29 彼は、「主の呪いを受けた大地で働く我々の手の苦労を、この子は慰めてくれるだろう」と言って、その子をノア(慰め)と名付けた。 30 レメクは、ノアが生まれた後五百九十五年生きて、息子や娘をもうけた。 31 レメクは七百七十七年生き、そして死んだ。 32 ノアは五百歳になったとき、セム ハム ヤフェトをもうけた。
創世記 洪水
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1 さて、地上に人が増え始め、娘たちが生まれた。 2 ?~の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、おのおの選んだ者を妻にした。 3 主は言われた。 「わたしの霊は人の中に永久にとどまるべきではない。人は肉にすぎないのだから。」こうして、人の一生は百二十年となった。 4 当時もその後も、地上にはネフィリムがいた。これは、?~の子らが人の娘たちのところに入って産ませた者であり、大昔の名高い英雄たちであった。 5 主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、 6 地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた。 7 主は言われた。 「わたしは人を創造したが、これを地上からぬぐい去ろう。人だけでなく、家畜も這うものも空の鳥も。わたしはこれらを造ったことを後悔する。」 8 しかし、ノアは主の好意を得た。 9 これはノアの物語である。その世代の中で、ノアは?~に従う無垢な人であった。ノアは?~と共に歩んだ。 10 ノアには三人の息子、セム ハム ヤフェトが生まれた。 11 この地は?~の前に堕落し、不法に満ちていた。 12 ?~は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。 13 ?~はノアに言われた。「すべて肉なるものを終わらせる時がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす。 14 あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟には小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。 15 次のようにしてそれを造りなさい。箱舟の長さを三百アンマ、幅を五十アンマ、高さを三十アンマにし、 16 箱舟に明かり取りを造り、上から一アンマにして、それを仕上げなさい。箱舟の側面には戸口を造りなさい。また、一階と二階と三階を造りなさい。 17 見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊をもつ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべてのものは息絶える。 18 わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。 19 また、すべて命あるもの、すべて肉なるものから、二つずつ箱舟に連れて入り、あなたと共に生き延びるようにしなさい。それらは、雄と雌でなければならない。 20 それぞれの鳥、それぞれの家畜、それぞれの地を這うものが、二つずつあなたのところへ来て、生き延びるようにしなさい。 21 更に、食べられる物はすべてあなたのところに集め、あなたと彼らの食料としなさい。」 22 ノアは、すべて?~が命じられたとおりに果たした。
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1 主はノアに言われた。「さあ、あなたとあなたの家族は皆、箱舟に入りなさい。この世代の中であなただけはわたしに従う人だと、わたしは認めている。 2 あなたは清い動物をすべて七つがい取り、また、清くない動物をすべて一つがいずつ取りなさい 3 空の鳥も七つがい取りなさい。全地の面に子孫が生き続けるように。 4 七日の後、わたしは四十日四十夜地上に雨を降らせ、わたしが造ったすべての生き物を地の面からぬぐい去ることにした。」 5 ノアはすべて主が命じられたとおりにした。 6 ノアが六百歳のとき、洪水が地上に起こり、水が地の上にみなぎった。 7 ノアは妻子や嫁たちと共に洪水を免れようと箱舟に入った。 8 清い動物も清くない動物も、鳥も地を這うものもすべて、 9 二つずつ箱舟のノアのもとに来た。それは?~がノアに命じられたとおりに、雄と雌であった。 10 七日が過ぎて、洪水が地上起こった。 11 ノアの生涯の第六百年、第二の月の十七日、この日、大いなる深淵の源がことごとく裂け、天の窓が開かれた。 12 雨が四十日四十夜地上に降り続いたが、 13 まさにこの日、ノアも、息子のセム、ハム、ヤフェト、ノアの妻、この三人の息子の嫁たちも、箱舟に入った。 14 彼らと共にそれぞれの獣、それぞれの家畜、それぞれの地を這うもの、それぞれの鳥、小鳥や翼のあるものすべて、 15 命の霊をもつ肉なるものは、二つずつノアのもとに来て箱舟に入った。 16 ?~が命じられたとおりに、すべて肉なるものの雄と雌とが来た。主は、ノアの後ろで戸を閉ざされた。 17 洪水は四十日間地上を覆った。水は次第に増して箱舟を押し上げ、箱舟は大地を離れて浮かんだ。 18 水は勢力を増し、地の上に大いにみなぎり、箱舟は水の面を漂った。 19 水はますます勢いを加えて地上にみなぎり、およそ天の下にある高い山はすべて覆われた。 20 水は勢い増して更にその上十五アンマに達し、山々を覆った。 21 地上で動いていた肉なるものはすべて、鳥も家畜も獣も地に群がり這うものも人も、ことごとく息絶えた。 22 乾いた地のすべてのもののうち、その鼻に命の息と霊のあるものはことごとく死んだ。 23 地の面にいた生き物はすべて、人をはじめ、家畜、這うもの、空の鳥に至るまでぬぐい去られた。彼らは大地からぬぐい去られ、ノアと、彼と共に箱舟にいたものだけが残った。 24 水は百五十日の間、地上で勢いを失わなかった。
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1 神は、ノアと彼と共に箱舟にいたすべての獣とすべての家畜を御心に留め、地の上に風を吹かせられたので、水が減り始めた。 2 また、深淵の源と天の窓が閉じられたので、天からの雨は降りやみ、 3 水は地上からひいて行った。百五十日の後には水が減って、 4 第七の月の十七日に箱舟はアララト山の上に止まった。 5 水はますます減って第十の月になり、第十の月の一日には山々の頂が現れた。 6 四十日たって、ノアは自分が造った箱舟の窓を開き、烏を放した。烏は飛び立ったが、地上の水が乾くのを待って、出たり入ったりした。 8 ノアは鳩を彼のもとから放して、地の面から水がひいたかどうかを確かめようとした。 9 しかし、鳩は止まる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰って来た。水がまだ全地の面を覆っていたからである。ノアは手を差し伸べて鳩を捕らえ、箱舟の自分のもとに戻した。 10 更に七日待って、彼は再び鳩を箱舟から放した。 11 鳩は夕方になってノアのもとに帰って来た。見よ、鳩はくちばしにオリーブの葉をくわえていた。ノアは水が地上からひいたことを知った。 12 彼は更に七日待って、鳩を放した。鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。 13 ノアが六百一歳のとき、最初の月の一日に、地上の水は乾いた。ノアは箱舟の覆いを取り外して眺めた。見よ、地の面は乾いていた。 14 第二の月の二十七日になると、地はすっかり乾いた。 15 神はノアに仰せになった。 「さあ、あなたもあなたの妻も、息子も嫁も、皆一緒に箱舟から出なさい。 17 すべて肉なるもののうちからあなたのもとに来たすべての動物、鳥も家畜も地を這うものも一緒に連れ出し、地に群がり、地上で子を産み、増えるようにしなさい。」 18 そこで、ノアは息子や妻や嫁と共に外へ出た。 19 獣、這うもの、鳥、地に群がるもの、それぞれすべて箱舟から出た。 20 ノアは主のために祭壇を築いた。そしてすべての清い家畜と清い鳥のうちから取り、焼き尽くす捧げ物として祭壇の上にささげた。 21 主は宥めの香りをかいで、御心に言われた。「人に対して大地を呪うことは二度とすまい。人が心に思うことは、幼いときから悪いのだ。わたしは、この度したように生き物をことごとく打つことは、二度とすまい。 22 地の続くかぎり、種蒔きも刈り入れも 寒さも暑さも、夏も冬も 昼も夜も、やむことはない。」
創世記 祝福と契約
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1 ?~はノアと彼の息子たちを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちよ。 2 地のすべての獣と空のすべての鳥は、地を這うすべてのものと海のすべての魚と共に、あなたたちの前に恐れおののき、あなたたちの手にゆだねられる。 3 動いている命あるものは、すべてあなたたちの食糧とするがよい。わたしはこれらすべてのものを、青草と同じようにあなたたちに与える。 4 ただし、肉は命である血を含んだまま食べてはならない。 5 また、あなたたちの命である血が流された場合、わたしは賠償を要求する。いかなる獣からも要求する。人間どうしの血については、人間から人間の命を賠償として要求する。 6 人の血を流す者は 人によって自分の血を流される。人は?~にかたどって造られたからだ。 7 あなたたちは産めよ、増えよ 地に群がり、地に増えよ。」 8 ?~はノアと彼の息子たちに言われた。 9 「わたしは、あなたたちと、そして後に続く子孫と、契約を立てる。 10 あなたたちと共にいるすべての生き物、またあなたたちと共にいる鳥や家畜や地のすべての獣など、箱舟から出たすべてのもののみならず、地のすべての獣と契約を立てる。 11 わたしがあなたたちと契約を立てたならば、二度と洪水によって肉なるものが滅ぼされることはなく、洪水が起こって地を滅ぼすことも決してない。」 12 更に?~は言われた。「あなたたちならびにあなたたちと共にいるすべての生き物と、代々(よよ)とこしえにわたしが立てる契約のしるしはこれである。 13 すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立てた契約のしるしとなる。 14 わたしが地の上に雲を湧き起こらせ、雲の中に虹が現れると、 15 わたしは、わたしとあなたたちならびにすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた契約に心を留める。水が洪水となって、肉なるものをすべて滅ぼすことは決してない。 16 雲の中に虹が現れると、わたしはそれを見て、神と地上のすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた永遠の契約に心をと留める。」 17 ?~はノアに言われた。「これが、わたしと地上のすべて肉なるものとの間にたてた契約のしるしである。」
創世記 ノアと息子たち
18 箱舟から出たノアの息子は、セム、ハム、ヤフェトであった。ハムはカナンの父である。 19 この三人がノアの息子で、全世界の人々は彼らから出て広がったのである。 20 さて、ノアは農夫となり、ぶどう畑を作った。 21 あるとき、ノアはぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。 22 カナンの父ハムは、自分の父の裸を見て、外にいた二人の兄弟に告げた。 23 セムとヤフェトは着物を取って自分たちの肩に掛け、後ろ向きに歩いて行き、父の裸を覆った。二人は顔を背けたままで、父の裸を見なかった。 24 ノアは酔いからさめると、末の息子がしたことを知り、 25 こう言った。「カナンは呪われよ 奴隷の奴隷となり、兄たちに仕えよ。」 26 また言った。「セムの神、主をたたえよ。 カナンはセムの奴隷となれ。
27 神がヤフェトの土地を広げ(ヤフェト) セムの天幕に住まわせ カナンはその奴隷となれ。」 28 ノアは、洪水の後三百五十年生きた。 29 ノアは九百五十歳になって、死んだ。
創世記 ノアの子孫
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1 ノアの息子、セム、ハム、ヤフェトの系図は次のとおりである。洪水の後、彼らに息子が生まれた。 2 ヤフェトの子孫はゴメル、マゴグ、メディア、ヤワン、トバル、メシェク、ティラスであった。 3 ゴメルの子孫は、アシュケナズ、リファト、トガルマであった。 4 ヤワンの子孫は、エリシャ、タルシシュ、キティム、ロダニムであった。 5 海沿いの国々は、彼らから出て、それぞれの地に、その言語、氏族、民族に従って住むようになった。 6 ハムの子孫は、クシュ、エジプト、プト、カナンであった。 7 クシュの子孫はセバ、ハビラ、サブタ、ラマ、サブテカであり、ラマの子孫はシェバとデダンであった。 8 クシュにはまた、ニムロドが生まれた。ニムロドは地上で最初の勇士となった。 9 彼は、主の御前に勇敢な狩人であり、「主の御前に勇敢な狩人ニムドロのようだ」という言い方がある。 10 彼の王国の主な町は、バベル、ウルク、アッカドであり、それらはすべてシンアルの地にあった。 11 彼はその地方からアッシリに進み、ニネベ、レホボト・イル、カラ、 12 レセンを建てた。レセンはニネベとカラとの間にある、非常に大きな町であった。 13 エジプトにはリディア人、アルミナ人、レハビム人、ナフトヒム人、 14 上エジプト人、カスルヒム人、カフトル人が生まれた。このカフトル人からペリシテ人が出た。
15 カナンには長男シドンとヘト、 16 また、エブス人、アモリ人、ギルガシ人、 17 ヒビ人、アルキ人、シニ人、 18 アルワド人、フェマリ人、ハマト人が生まれた。その後、カナン人の諸氏族が広がった。 19 カナン人の領土は、シドンから南下してゲラルを経てガザまでを含み、更に、ソドム、ゴモラ、アドマ、ツェボイムを経てラシャまでを含んだ。 20 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたハムの子孫である。 21 セムにもまた子供が生まれた。彼はエベルのすべての子孫の先祖であり、ヤフェトの兄であった。 22 セムの子孫はエラム、アシュル、アルパクシャド、ルド、アラムであった。 23 アラムの子孫は、ウツ、フル、ゲテル、マシュであった。 24 アルパクシャドにはシェラが生まれ、シェラにはエベルが生まれた。 25 エベルには二人の息子が生まれた。ひとりの名は、その時代に土地が分けられた(パラグ)ので、ペレグといい、その兄弟はヨクタンといった。 26 ヨクタンには、アルモダド、シェレフ、ハツァルマベト、イエラ、 27 ハドラム、ウザル、ディクラ、 28 オバル、アビマエル、シェバ、 29 オフィル、ハビラ、ヨバブが生まれた。これらは皆、ヨクタンの息子であった。 30 彼らはメシャからセファルに至る東の高原地帯に住んでいた。 31 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたセムの子孫である。 32 ノアの子孫である諸氏族を、民族ごとの系図にまとめると以上のようになる。地上の諸民族は洪水の後、彼らから分かれ出た。
創世記 バベルの塔
11
1 世界中は同じ言葉を使って、同じように話していた。 2 東の方から移動してきた人々は、シンアルの地に平野を見つけ、そこに住み着いた。 3 彼らは、「れんがを作り、それをよく焼こう」と話し合った。石の代わりにれんがを、しっくいの代わりにアスファルトを用いた。 4 彼らは、「さあ 天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。 5 主は降って来て、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、 6 言われた。「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。 7 我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」 8 主は彼らをそこから全地に散らされたので、彼らはこの町の建設をやめた。 9 こういうわけで、この町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ、また、主がそこから彼らを全地に散らされたからである。
創世記 セムの系図
10 セムの系図は次のとおりである。セムが百歳になったとき、アルバクシャドが生まれた。それは洪水の二年後のことであった。 11 セムは、アルパクシャドが生まれた後五百年生きて、息子や娘をもうけた。 12 アルパクシャドが三十五歳になったとき、シェラが生まれた。 13 アルパクシャドは、シェラが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 14 シェラが三十歳になったとき、エベルが生まれた。 15 シェラは、エベルが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 16 エベルが三十四歳になったとき、ぺレグが生まれた。 17 エベルは、ぺレグが生まれた後四百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 18 ぺレグが三十歳になったとき、レウが生まれた。 19 ぺレグは、レウが生まれた後二百九年生きて、息子や娘をもうけた。 20 レウが三十二歳になったとき、セルグが生まれた。 21 レウは、セルグが生まれた後二百七年生きて、息子や娘をもうけた。 22 セルグ三十歳なったとき、ナホルが生まれた。 23 セルグは、ナホルが生まれた後二百年生きて、息子や娘をもうけた。 24 ナホルが二十九歳になったとき、テラが生まれた。 25 ナホルは、テラが生まれた後百十九年生きて、息子や娘をもうけた。 26 テラが七十歳になったとき、アブラム、ナホル、ハランが生まれた。
創世記 テラの系図
27 テラの系図は次のとおりである。テラにはアブラム、ナホル、ハランが生まれた。ハランにはロトが生まれた。 28 ハランは父のテラより先に、故郷カルデアのウルで死んだ。 29 アブラムとナホルはそれぞれ妻をめとった。アブラムの妻の名はサライ、ナホルの妻の妻の名はミルカといった。ミルカはハランの娘である。ハランはミルカとイスカの父であった。 30 サライは不妊の女で、子供ができなかった。 31 テラは、息子アブラムと、ハランの息子で自分の孫であるロト、および息子アブラムの妻で自分の嫁であるサライを連れて、カルデアのウルを出発し、カナン地方に向った。彼らはハランまで来ると、そこにとどまった。 32 テラは二百五年の生涯を終えて、ハランで死んだ。
創世記 アブラムの召命と移住
12
1 主はアブラムに言われた。「あなたは生まれ故郷 父の家を離れて わたしが示す地に行きなさい 2 わたしはあなたを大いなる国民にし あなたを祝福し あなたに名を高める 祝福の源となるように 3 あなたを祝福する人をわたしは祝福し あなたを呪う者をわたしは呪う。 地上の氏族はすべて あなたによって祝福に入る。」 4 アブラムは 主の言葉に従って旅立った。ロトも共に行った。アブラムは、ハランを出発したとき七十五歳であった。 5 アブラムは妻のサライ、甥のロトを連れ、蓄えた財産をすべて携え、ハランで加わった人々と共にカナン地方へ向かって出発し、カナン地方入った。 6 アブラムはその地を通り、シケムの聖所、モレの樫の木まで来た。当時、その地方にはカナン人が住んでいた。 7 主はアブラムに現れて、言われた。「あなたの子孫のこの地を与える」アブラムは、彼に現れた主のために、そこに祭壇を築いた。 8 アブラムは、そこからベテルの東の山へ移り、西にベテル、東にアイを望む所に天幕を張って、そこにも主のために祭壇を築き、主の御名を呼んだ。 9 アブラムは更に旅を続け、ネゲブ地方に移った。
創世記 エジプト滞在
10 その地方に飢饉があった。 アブラムは、その地方の飢饉がひどかったので、エジプトに下り、そこに滞在することにした。 11 エジプトに入ろうしたとき、妻サライに言った。 「あなたが美しいのを、わたしはよく知っている。 12 エジプト人があなたを見たら、『この女はあの男の妻だ』と言って、わたしを殺し、あなたを生かしておくにちがいない。 13 どうか、わたしの妹だ、と言ってください。 そうすれば、わたしはあなたのゆえに幸いになり、あなたのお陰で命も助かるだろう。」 14 アブラムがエジプトに入ると、エジプト人はサライを見て、大変美しいと思った。 15 ファラオの家臣たちも彼女を見て、ファラオに彼女のことを褒めたので、サライはファラオの宮廷に召し入れられた 16 アブラムも彼女のゆえに幸いを受け、羊の群れ、牛の群れ、ろば、男女の奴隷、雌ろば、らくだなどを与えられた。 17 ところが主は、アブラムの妻サライのことで、ファラオと宮廷の人々を恐ろしい病気にかからせた。 18 ファラオはアブラムを呼び寄せて言った。 「あなたはわたしに何ということをしたのか。 なぜ、あの婦人は自分の妻だと、言わなかったのか。 19 なぜ、『わたしの妹です』などと言ったのか。 だからこそ、わたしの妻として召し入れたのだ。 さあ、あなたの妻を連れて、立ち去ってもらいたい。 20 ファラオは家来たちに命じて、アブラムを、その妻とすべての持ち物と共に送り出させた。
創世記 ロトとの別れ
13
1 アブラムは、妻と共に、すべての持ち物を携え、エジプトを出て再びネゲブ地方へ上った。ロトも一緒であった。 2 アブラムは非常に多くの家畜や金銀を持っていた。 3 ネゲブ地方から更に、ベテルに向って旅を続け、ベテルとアイとの間の、以前に天幕を張った所まで来た。 4 そこは、彼が最初に祭壇を築いて、主の御名を呼んだ場所であった。 5 アブラムと共に旅をしていたロトもまた、羊や牛の群れを飼い、たくさんの天幕を持っていた。 6 その土地は、彼らが一緒に住むには十分ではなかった。 彼らの財産が多すぎたから、一緒に住むことができなかったのである。 7 アブラムの家畜を飼う者たちと、ロトの家畜を飼うものたちとの間に争いが起きた。 そのころ、その地方にはカナン人もペリジ人も住んでいた。 8 アブラムはロトに言った。 「わたしたちは親類どうしだ。わたしとあなたの間ではもちろん、お互いの羊飼いの間でも争うのはやめよう。 9 あなたの前には幾らでも土地があるのだから、ここで別れようではないか。 あなたが左に行くなら、わたしは右に行こう。 あなたが右に行くなら、わたしは左に行こう。」 10 ロトが目を上げて眺めると、ヨルダン川流域の低地一帯は、 主がソドムとゴモラを滅ぼす前であったので、ツォアルに至るまで、主の園のように、エジプトの国のように、見渡すかぎりよく潤っていた。 11 ロトはヨルダン川流域の低地一帯を選んで、東へ移って行った。こうして彼らは、左右に別れた。 12 アブラムはカナン地方に住み、ロトは低地の町々に住んだが、彼はソドムまで天幕を移した。 13 ソドムの住民は邪悪で、主に対して多くの罪を犯していた。 14 主は、ロトが別れて行った後、アブラムに言われた。「さあ、目を上げて、あなたがいる場所から東西南北を見渡しなさい。 15 見えるかぎりの土地をすべて、わたしは永久にあなたとあなたの子孫に与える。 16 あなたの子孫を大地の砂粒のようにする。大地の砂粒が数えきれないように、あなたの子孫も数えきれないであろう。 17 さあ、この土地を縦横に歩き回るがよい。わたしはそれをあなたに与えるから。」 18 アブラムは天幕を移し、ヘブロンにあるマムレの樫の木のところに来て住み、そこに主のために祭壇を築いた。
創世記 王との戦い
14
1 シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨク、エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアルが、 2 ソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アドマの王シンアブ、ツェボイムの王シェムエベル、ベラ、すなわちツオワルの王と戦ったとき、 3 これら五人の王は皆、シディムの谷、すなわち塩の海で同盟を結んだ。 4 彼らは十二年間ケドルラオメルに支配されていたが、十三年目に背いたのである。 5 十四年目に、ケドルラオメルとその味方の王たちが来て、アシュテロト・カルナイムでレファイム人を、ハムでズジム人を、シャベ・キルヤタイムでエミル人を、 6 セイルの山地でフリ人人を撃ち、荒れ野に近いエル・バランまで進んだ。 7 彼らは転進して、エン・ミシュパト、すなわちカデシュに向かい、アマレク人の全領土とハツェツオン・タマルに住むアモリ人を撃った。 8 そこで、ソドムの王、ゴモラの王、アドマの王、ツェボイムの王、ベラすなわちツォアルの王は兵を繰り出し、シディムの谷で彼らと戦おうと陣を敷いた。 9 エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアル、シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨクの四人の王に対して、これら五人の王が戦いを挑んだのである。 10 シディムの谷には至るところに天然アスファルトの穴があった。ソドムとゴモラの王は逃げるとき、その穴に落ちた。残りの王は山へ逃れた。 11 ソドムとゴモラの財産や食糧はすべて奪い去られ、 12 ソドムに住んでいたアブラムの甥ロトも、財産もろとも連れ去られた。
創世記 ロトの救出
13 逃げ延びた一人の男がヘブライ人アブラムのもとに来て、そのことを知らせた。アブラムは当時、アモリ人マムレ樫の木の傍らに住んでいた。マムレはエシュコルとアネルの兄弟で、彼らはアブラムと同盟を結んでいた。 14 アブラムは、親族の者が捕虜になったと聞いて、彼の家で生まれた奴隷で、訓練を受けた者三百十八人を召集し、ダンまで追跡した。 15 夜、彼と僕たちは分かれて敵を襲い、ダマスコの北のホバまで追跡した。 16 アブラムはすべての財産を取り返し、親族のロトとその財産、女たちやそのほかの人々も取り戻した。
創世記 メルキゼデグの祝福
17 アブラムがケドルラオメルとその味方の王たちを撃ち破って帰って来たとき、ソドムの王はシャベの谷、すなわち王の谷まで彼を出迎えた。 18 いと高き神の祭司であったサレムの王メルキゼデクも、パンとぶどう酒を持って来た。 19 彼はアブラムを祝福して言った。「天地の造り主、いと高き神に アブラムは祝福されますように。 20 敵をあなたの手に渡された いと高き神がたたえられますように。」 アブラムはすべての物の十分の一を彼に贈った。 21 ソドムの王はアブラムに、「人はわたしにお返しください。 しかし、財産はお取りください」と言ったが、 22 アブラムはソドムの王に言った。 「わたしは天地の造り主、いと高き?~、主に手を上げて誓います。 23 あなたの物は、たとえ糸一筋、靴ひも一本でも、決していただきません。 『アブラムを裕福にしたのは、このわたしだ』と、あなたに言われたくありません。 24 わたしは何も要りません。 ただ、若い者たちが食べたものと、わたしと共に戦った人々、すなわち、アネルとエシュコルとマムレの分は別です。 彼らには分け前を取らせてください。
創世記 神の約束
15
1 これらのことの後で、主の言葉が幻の中でアブラムに臨んだ。 「恐れるな、アブラムよ。 わたしはあなたの盾である。 あなたの受ける報いは非常に大きいであろう。 2 アブラムは尋ねた。 「わが神、主よ。わたしに何をくださるというのですか。わたしには子供がありません。家を継ぐのはダマスコのエリエゼルです。 3 アブラムは言葉をついだ。「御覧のとおり、あなたはわたしに子孫を与えてくださいませんでしたから、家の僕が跡を継ぐことになっています。」 4 見よ、主の言葉があった。「その者があなたの跡を継ぐのではなく、あなたから生まれる者が跡を継ぐ。」 5 主は彼を外に連れ出して言われた。「天を仰いで、星を数えることができるなら、数えてみるがよい。」 そして言われた。 「あなたの子孫はこのようになる。」 6 アブラムは主を信じた。主はそれを彼の義と認められた。 7 主は言われた。 「わたしはあなたをカルデアのウルから導き出した主である。わたしはあなたにこの土地を与え、それを継がせる。」 8 アブラムは尋ねた。 「わが神、主よ。この土地をわたしが継ぐことを、何によって知ることができましょうか。」 9 主は言われた。 「三歳の雌牛と、三歳の雌山羊と、三歳の雄羊と、山鳩と、鳩の雛とをわたしのもとに持ってきなさい。」 10 アブラムはそれらのものをみな持って来て、真っ二つに切り裂き、それぞれを互いに向かい合わせて置いた。 ただ、鳥は切り裂かなかった。 11 はげ鷹がこれらの死体をねらって降りて来ると、アブラムは追い払った。 12 日が沈みかけたころ、アブラムは深い眠りに襲われた。すると、恐ろしい大いなる暗黒が彼に臨んだ。 13 主はアブラムに言われた。 「よく覚えておくがよい。あなたの子孫は異邦の国で寄留者となり、四百年の間奴隷として仕え、苦しめられるであろう。 14 しかしわたしは、彼らが奴隷として仕えるその国民を裁く。
その後、彼らは多くの財産を携えて脱出するであろう。 15 あなた自身は、長寿を全うして葬られ、安らかに先祖のもとに行く。 16 ここに戻ってくるのは、四代目の者たちである。それまではアモリ人の罪が極みに達しないからである。 17 日が沈み、暗闇に覆われたころ、突然、煙を吐く炉と燃える松明が二つに裂かれた動物の間を通り過ぎた。 18 その日、主はアブラムと契約を結んで言われた。 「あなたの子孫にこの土地を与える。エジプトの川から大河ユーフラテスに至るまで、 19 カイン人、ケナズ人、カドモニ人、 20 ヘト人、ペリジ人、レファイム人、 21 アモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人の土地を与える。」
創世記 ハガルの逃亡と出産
16
1 アブラムの妻サライには、子供が生まれなかった。彼女には、ハガルというエジプト人の女奴隷がいた。 2 サライはアブラムに言った。 「主はわたしに子供を授けてくださいません。どうぞ、わたしの奴隷のところへ入ってください。わたしは彼女によって、子供を与えられるかもしれません。」 アブラムは、サライの願いを聞き入れた。 3 アブラムの妻サライは、エジプト人の女奴隷ハガルを連れて来て、夫アブラムの側女とした。アブラムがカナン地方に住んでから、十年後のことであった。 4 アブラムはハガルのところに入り、彼女は身ごもった。ところが、自分が身ごもったのを知ると、彼女は女主人を軽んじた。 5 サライはアブラムに言った。 「わたしが不当な目に遭ったのは、あなたのせいです。女奴隷をあなたのふところに与えたのはわたしなのに、彼女は自分が身ごもったのを知ると、わたしを軽んじるようになりました。主がわたしとあなたとの間を裁かれますように。 6 アブラムはサライに答えた。
「あなたの女奴隷はあなたのものだ。好きなようにするがいい。」サライは彼女につらく当たったので、彼女はサライのもとから逃げた。 7 主の御使いが荒れ野の泉のほとり、シュル街道に沿う泉のほとりで彼女と出会って、 8 言った。 「サライの女奴隷ハガルよ。あなたはどこから来て、どこへ行こうとしているのか。」「女主人サライのもとから逃げているところです」と答えると、 9 主の御使いは言った。 「女主人のもとに帰り、従順に仕えなさい。」 10 主の御使いは更に言った。 「わたしは、あなたの子孫を数えきれないほど多く増やす。」 11 主の御使いはまた言った。 「今、あなたは身ごもっている。やがてあなたは男の子を産む。その子をイシュマエルと名付けなさい。主があなたの悩みをお聞きになられたから。 12 彼は野生のろばのような人になる。彼があらゆる人にこぶしを振りかざすので、人々は皆、こぶしを振るう。彼は兄弟すべてに敵対して暮らす。」 13 ハガルは自分に語りかけた主の御名を呼んで、 「あなたこそエル・ロイ(わたしを顧みられる?~)です」と言った。それは、彼女が、「神がわたしを顧みられた後もなお、わたしはここで見続けていたではないか」と言ったからである。 14 そこで、その井戸は、ベエル・ラハイ・ロイと呼ばれるようになった。それはカディシュとベレドの間にある。 15 ハガルはアブラムとの間に男の子を産んだ。アブラムは、ハガルが産んだ男の子をイシュマエルと名付けた。 16 ハガルがイシュマエルを生んだとき、アブラムは八十六歳であった。
創世記 契約と割礼
17
1 アブラムが九十九歳になったとき、主はアブラムに現れて言われた。「わたしは全能の神である。あなたはわたしに従って歩み、全き者となりなさい。 2 わたしは、あなたとの間にわたしの契約を立て、あなたをますます増やすであろう。」 3 アブラムはひれ伏した。神は更に、語りかけて言われた。 4 「これがあなたと結ぶわたしの契約である。あなたは多くの国民の父となる。 5 あなたは、もはやアブラムではなく、アブラハムと名乗りなさい。あなたを多くの国民の父とするからである。 6 わたしは、あなたをますます?栄させ、諸国民の父とする。王となる者たちがあなたから出るであろう。 7 わたしは、あなたとの間に、また後に続く子孫との間に契約を立て、それを永遠の契約とする。そして、あなたとあなたの子孫の神となる。 8 わたしは、あなたが滞在しているこのカナンのすべての土地を、あなたとその子孫に、永久の所有地として与える。わたしは彼らの神となる。」 9 神はまた、アブラムに言われた。「だからあなたも、わたしの契約を守りなさい、あなたも後に続く子孫も。 10 あなたたち、およびあなたの後に続く子孫と、わたしとの間で守るべき契約はこれである。すなわち、あなたたちの男子はすべて、割礼を受ける。 11 包皮の部分を切り取りなさい。これが、わたしとあなたたちとの間の契約のしるしとなる。 12 いつの時代でも、あなたたちの男子はすべて、直系の子孫はもちろんのこと、家で生まれた奴隷も、外国人から買い取った奴隷であなたの子孫でない者も皆、生れてから八日目に割礼を受けなければならない。 13 あなたのお家で生まれた奴隷も、買い取った奴隷も、必ず割礼を受けなければならない。それによって、わたしの契約はあなたの体に記されて永遠の契約となる。 14 包皮の部分を切り取らない無割礼の男がいたなら、その人は民の間から断たれる。わたしの契約を破ったからである。」 15 神はアブラムに言われた。「あなたの妻サライは、名前をサライではなく、サラと呼びなさい。 16 わたしは彼女を祝福し、彼女によってあなたに男の子を与えよう。わたしは彼女を祝福し、諸国民の母とする。諸民族の王となる者たちが彼女から出る。」 17 アブラハムひれ伏した。しかし笑って、ひそかに言った。「百歳の男に子供が生まれるだろうか。九十歳のサラに子供が産めるだろうか。」 18 アブラハムは神に言った。「どうか、イシュマエルが御前に生き永らえますように。」 19 神は言われた。「いや、あなたの妻サラがあなたとの間に男の子を産む。その子をイサク(彼は笑う)と名付けなさい。わたしは彼と契約を立て、彼の子孫のために永遠の契約とする。 20 イシュマエルについての願いも聞き入れよう。必ず、わたしは彼を祝福し、大いに子供を増やし繁栄させる。彼は十二人の首長の父となろう。わたしは彼を大いなる国民とする。 21 しかし、わたしの契約は、来年の今ごろ、サラがあなたとの間に産むイサクと立てる。」 22 神はこう語り終えると、アブラハムを離れて昇って行かれた。 23 アブラハムは、息子のイシュマエルをはじめ、家で生まれた奴隷や買い取った奴隷など、自分の家にいる人々のうち、男子を皆集めて、すぐその日に、神が命じられたとおり包皮に割礼を施した。 24 アブラハムが包皮に割礼を受けたのは、九十九歳、 25 息子イシュマエルが包皮に割礼を受けたのは、十三歳であった。 26 アブラハムと息子のイシュマエルは、すぐその日に割礼を受けた。 27 アブラハムの家の男子は、家で生まれた奴隷も外国人から買い取った奴隷も皆、共に割礼を受けた。
創世記 イサクの誕生の予告
18
1 主はマムレの樫の木の所でアブラハムに現れた。暑い真昼に、アブラハムは天幕の入り口に座っていた。 2 目を上げて見ると、三人の人が彼に向って立っていた。アブラハムはすぐに天幕の入り口から走り出て迎え、地にひれ伏して、 3 言った。「お客様、よろしければ、どうか、僕のもとを通り過ぎないでください。 4 水を少々持ってこさせますから、足を洗って、木陰でどうぞひと休みなさってください。 5 何か召し上がるものを調えますので、疲れをいやしてから、お出かけください。せっかく、僕の所の近くをお通りになったのですから。」その人たちは言った。「では、お言葉どおりにしましょう。」 6 アブラハムは急いで天幕に戻り、サラのところに来て言った。「早く、上等の小麦粉を三セアほどこねて、パン菓子をこしらえなさい。」 7 アブラハムは牛の群れのところへ走って行き、柔らかくておいしそうな子牛を選び、召し使いに渡し、急いで料理をさせた。 8 アブラハムは、凝乳、乳、出来立ての子牛の料理などを選び、彼らの前に並べた。そして、彼らが木陰で食事をしている間、そばに立って給仕をした。 9 彼らはアブラハムに尋ねた。「あなたの妻のサラはどこにいますか。」「はい、天幕の中におります」とアブラハムが答えると、 10 彼らの一人が言った。「わたしは来年の今ごろ、必ずここにまた来ますが、そのころには、あなたの妻のサラに男の子が生まれているでしょう。」サラは、すぐ後ろの天幕の入り口で聞いていた。 11 アブラハムもサラも多くの日を重ねて老人になっており、しかもサラは月のものがとうになくっていた。 12 サラはひそかに笑った。自分は年をとり、もはや楽しみがあるはずもなし、主人も年老いているのに、と思ったのである。13 主はアブラハムに言われた。「なぜサラは笑ったのか。なぜ年をとった自分に子供が生まれるはずがないと思ったのだ。 14 主に不可能なことがあろうか。来年の今ごろ、わたしはここに戻ってくる。そのころ、サラには必ず男の子が生まれている。」 15 サラは恐ろしくなり、打ち消して言った。「わたしは笑いませんでした。」主は言われた。「いや、あなたは確かに笑った。」
創世記 ソドムのための執り成し
16 その人たちはそこを立って、ソドムを見下ろす所まで来た。アブラハムも、彼らを見送るために一緒に行った。 17 主は言われた。「わたしが行おうとしていることをアブラハムに隠す必要があろうか。 18 アブラハムは大きな強い国民になり、世界のすべての国民は彼によって祝福に入る。 19 わたしがアブラハムを選んだのは、彼が息子たちとその子孫に、主の道を守り、主に従って正義を行うよう命じて、主がアブラハムに約束したことを成就するためである。 20 主は言われた。「ソドムとゴモラの罪は非常に重い、と訴える叫びが実に大きい。 21 わたしは降って行き、彼らの行跡が、果たして、わたしに届いた叫びのとおりかどうか見て確かめよう。」 22 その人たちは、更にソドムの方に向かったが、アブラハムはなお、主の御前にいた。 23 アブラハムは進み出て言った。「もことにあなたは、正しい者を悪い者と一緒に滅ぼされるのですか。 24 あの町に正しい者が五十人いるとしても、それでも滅ぼし、その五十人の正しい者のために、町をお赦しにはならないのですか。 25 正しい者を悪い者と一緒に殺し、正しい者を悪い者と同じ目に遭わせるようなことを、あなたがなさるはずはございません。全くありえないことです。全世界を裁くお方は、正義を行われるべきではありませんか。」 26 主は言われた。「もしソドムの町に正しい者が五十人いるならば、その者たちのために、町を全部赦そう。」 27 アブラハムは答えた。「塵にすぎないわたしですが、あえて、わが主に申し上げます。 28 もしかすると、五十人の正しい者に五人足りないかもしれません。それでもあなたは、五人たりないために、町のすべてを滅ぼされますか。」主は言われた。「もし、四十五人いれば滅ぼさない。」 29 アブラハムは重ねて言った。「もしかすると、四十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その四十人のためにわたしはそれをしない」 30 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう少し言わせてください。もしかすると、そこには三十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「もし三十人いるならわたしはそれはしない。」 31 アブラハムは言った。「あえて、わが主に申し上げます。もしかすると、二十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その二十人のためにわたしは滅ぼさない。」 32 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう一度だけ言わせてください。もしかすると、十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その十人のためにわたしは滅ぼさない。」 33 主はアブラハムと語り終えると、去って行かれた。アブラハムも自分の住まいに帰った。
創世記 ソドムの滅亡
19
1 二人の御使いが夕方ソドムに着いたとき、ロトはソドムの門の所に座っていた。ロトは彼らを見ると、立ち上って迎え、地にひれ伏して、 2 言った。 「皆様方、どうぞ僕(しもべ)の家に立ち寄り、足を洗ってお泊りください。彼らは言った。「いや、結構です。わたしたちはこの広場で夜を過ごします。」 3 しかし、ロトがぜひにと勧めたので、彼らはロトの所に立ちよることにし、彼の家を訪ねた。ロトは、酵母を入れないパンを焼いて食事を供し、彼らをもてなした。 4 彼らがまだ床に就かないうちに、ソドムの町の男たちが、若者も年寄りもこぞって押しかけ、家を取り囲んで、 5 わめきたてた。 「今夜、お前のところへ来た連中はどこにいる。ここへ連れてこい。なぶりものにしてやるから。」 6 ロトは、戸口の前にたむろしている男たちのところへ出て行き、後ろの戸を閉めて、 7 言った。 「どうか、皆さん、乱暴なことはしないでください。 8 実は、わたしにはまだ嫁がせていない娘が二人おります。皆さんにその娘たちを差し出しますから、好きなようにしてください。ただ、あの方々には何もしないでください。この家の屋根の下に身を寄せていただいたのですから。」 9 男たちは口々に言った。 「そこをどけ」 「こいつはよそ者のくせに、指図などして。」 「さあ、彼らより先に、お前を痛い目に遭わせてやる。」 そして、ロトに詰め寄って体を押しつけ、戸を破ろうとした。 10 二人の客はそのとき、手を伸ばして、ロトを家の中に引き入れて戸を閉め、 11 戸口の前に入る男たちに、老若を問わず、目つぶしを食わせ、戸口を分からなくした。 12 二人の客はロトに言った。 「ほかに、あなたの身内の人がこの町にいますか。あなたの婿や息子や娘などを皆連れてここから逃げなさい。 13 実は、わたしたちはこの町を滅ぼしに来たのす。大きな叫びが主にもとに届いたので、主は、この町を滅ぼすためにわたしたちを遣わされたのです。」 14 ロトは嫁いだ娘たちの婿のところへ行き、「さあ早くここから逃げるのだ。主がこの町を滅ぼされるからだ」と促したが、婿たちは冗談だと思った。 15 夜が明けるころ、御使いたちはロトをせきたてて言った。「さあ早く、あなたの妻とここにいる二人の娘を連れて行きなさい。さもないと、この町に下る罰の巻き添えになって滅ぼされてしまう。」 16 ロトはためらっていた。主は憐れんで、二人の客にロト、妻、二人の娘の手をとらせて町の外へ避難するようにされた。 17 彼らがロトたちを町外れへ連れ出したとき、主は言われた。 「命がけで逃れよ。後ろを振り返ってはいけない。低地のどこにもとどまるな。山へ逃げなさい。さもないと、滅びることになる。」 18 ロトは言った。 「主よ、できません。 19 あなたは僕(しもべ)に目を留め、慈しみを豊かに示し、命を救おうとしています。しかし、わたしは山まで逃げ延びることはできません。恐らく、災害に巻き込まれて、死んでしまうのでしょう。 20 御覧ください、あの町を。あそこなら近いので、逃げて行けると思います。あれは小さな町です。あそこへ逃げさせてください。あれはほんの小さな町です。どうか、そこでわたしの命を救ってください。」 21 主は言われた。 「よろしい。そのこともあなたの願いを聞き届け、あなたの言うその町は滅ぼさないことにしよう。 22 急いで逃げなさい。あなたがあの町に着くまでは、わたしは何も行わないから。」 そこで、その町はツォアル(小さい)と名付けられた。
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2021年10月08日
創世記 ソドムの滅亡 19-19,19-20
創世記 天地の創造
1
1 初めに、神は天地を創造された。 2 地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、?~の靈が水の面を動いていた。 3 ?~は言われた。「光あれ。」こうして、光があった。 4 ?~は光を見て、良しとされた。?~は光と闇を分け、 5 光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第一の日である。6 ?~は言われた。「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。」 7 ?~は大空を造り、大空の下と大空の上に水を分けさせられた。そのようになった。 8 ?~は大空を天と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第二の日である。 9 ?~は言われた。「天の下の水は一つ所に集まれ。乾いた所が現れよ。」そのようになった。 10 神は乾いた所を地と呼び、水の集まった所を海と呼ばれた。神はこれを見て、良しとされた。 11 神は言われた。「地は草を芽生えさせよ。種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける果樹を、地に芽生えさせよ。」そのようになった。 12 地は草を芽生えさせ、それぞれの種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける木を芽生えさせた。?~はこれを見て、良しとされた。 13 夕べがあり、朝があった。第三の日である。 14 神は言われた。「天の大空に光る物があって、昼と夜を分け、季節のしるし、日や年のしるしとなれ。 15 天の大空に光る物があって、地を照らせ。」そのようになった。 16 ?~は二つの大きな光る物と星を造り、大きな方に昼を治めさせ、小さな方に夜を治めさせられた。 17 ?~はそれらを天の大空に置いて、地を照らさせ、 18 昼と夜を治めさせ、光と闇を分けさせられた。?~はこれを見て、良しとされた。 19 夕べがあり、朝があった。第四の日である。 20 ?~は言われた。「生き物が水の中に群がれ。鳥は地の上、天の大空の面を飛べ。」 21 ?~は水に群がるもの、すなわち大きな怪物、うごめく生き物をそれぞれに、また、翼ある鳥をそれぞれに創造された。?~はこれを見て、良しとされた。 22 ?~はそれらのものを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、海の水に満ちよ。鳥は地の上に増えよ。」 23 夕べがあり、朝があった。第五の日である。 24 ?~は言われた。「地は、それぞれの生き物を産み出せ。家畜、這うもの、地の獣をそれぞれに産み出せ。」そのようになった。 25 ?~はそれぞれの地の獣、それぞれの家畜、それぞれの土を這うものを造られた。?~はこれを見て、良しとされた。 26 ?~は言われた。「我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。そして海の魚、空の鳥、家畜、地の獣、地を這うものすべてを支配させよう。」 27 ?~は御自分にかたどって人を創造された。?~にかたどって創造された。男と女に創造された。28 ?~は彼らを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ。」 29 ?~は言われた。「見よ、全地に生える、種を持つ草と種を持つ実をつける木を、すべてあなたたちに与えよう。それがあなたたちの食べ物となる。 30 地の獣、空の鳥、地を這うものなど、すべて命あるものにはあらゆる青草をたべさせよう。」そのようになった。 31 ?~はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった。夕べがあり、朝があった。第六の日である。
2
1 天地万物は完成された。 2 第七の日に、?~は御自分の仕事を完成され、第七の日に、神は御自分の仕事を離れ、安息なさった。 3 この日に?~はすべての創造の仕事を離れ、安息なさったので、第七の日を?~は祝福し、聖別された。 4 これが天地創造の由来である。主なる?~が地と天を造られたとき、 5 地上には野の木も、野の草も生えていなかった。主なる?~が地上に雨をお送りにならなかったからである。また土を耕す人もいなかった。 6 しかし、水が地下から湧き出て、土の面をすべて潤した。 7 主なる?~は、土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった。 8 主なる?~は、東の方のエデンに園を設け、自ら形づくった人をそこに置かれた。 9 主なる?~は、見るからに好ましく、食べるに良いものをもたらすあらゆる木を地に生えいでさせ、また園の中央には、命の木と善悪の知識の木を生えいでさせられた。 10 エデンから一つの川が流れ出ていた。園を潤し、そこで分かれて、四つの川となっていた。 11 第一の川の名はピションで、金を産出するハビラ地方全域を巡っていた。 12 その金は良質であり、そこではまた、琥珀の類やラピス・ラズリも産出した。 13 第二の川の名はギホンで、クシュ地方全域を巡っていた。 14 第三の川の名はチグリスで、アシュルの東の方を流れており、第四の川の名はユーフラテスであった。 15 主なる?~は人を連れて来て、エデンの園に住まわせ、人がそこを耕し、守るようにされた。 16 主なる?~は人に命じて言われた。「園のすべての木から取って食べなさい。 17 ただし、善悪の知識の木からは、決して食べてはならない。食べると必ず死んでしまう。」 18 主なる?~は言われた。「人が一人でいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう。」 19 主なる?~は、野のあらゆる獣、空のあらゆる鳥を土で形づくり、人のところへ持って来て、人がそれぞれどう呼ぶか見ておられた。人が呼ぶと、それはすべて、生き物の名となった。 20 人はあらゆる家畜、空の鳥、野のあらゆる獣に名を付けたが、自分に合う助ける者は見つけることができなかった。 21 主なる?~はそこで、人を深い眠りに落とされた。人が眠り込むと、あばら骨の一部を抜き取り、その跡を肉でふさがれた。 22 そして、人から抜き取ったあばら骨で女を造り上げられた。主なる?~が彼女を人のところへ連れて来られると、 23 人は言った。「ついに、これこそわたしの骨の骨わたしの肉の肉。これこそ、女(イシャー)と呼ぼう まさに、男(イシュ)から取られたものだから。」 24 こういうわけで、男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる。 25 人と妻は二人とも裸であったが、恥ずかしがりはしなかった。
創世記 蛇の誘惑
3
1 主なる?~が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった。蛇は女に言った。「園のどの木からも食べてはいけない、などと神は言われたのか。」 2 女は蛇に答えた。「わたしたちは園の木の果実を食べてよいのです。 3 でも、園の中央に生えている木の果実だけは、食べてはいけない。触れてもいけない、死んではいけないから、と?~様はおっしゃいました。」 4 蛇は女に言った。「決して死ぬことはない。 5 それを食べると、目が開け、?~のように善悪を知るものとなることを?~はご存じなのだ。」 6 女が見ると、その木はいかにもおいしそうで、目を引き付け、賢くなるように唆していた。女は実を取って食べ、一緒にいた男にも渡したので、彼も食べた。 7 二人の目は開け、自分たちが裸であることを知り、二人はいちじくの葉をつづり合わせ、腰を覆うものとした。 8 その日、風の吹くころ、主なる?~が園の中を歩く音が聞こえてきた。アダムと女が、主なる?~の顔を避けて、園の木の間に隠れると、 9 主なる?~はアダムを呼ばれた。「どこにいるのか」 10 彼は答えた。「あなたの足音が園の中に聞こえたので、恐ろしくなり、隠れております。わたしは裸ですから。」 11 ?~は言われた。「お前が裸であることを誰が告げたのか。取って食べるなと命じた木から食べたのか。」 12 アダムは答えた。「あなたがわたしと共にいるようにしてくださった女が、木から取って与えたので、食べました。」 13 主なる?~は女に向かって言われた。「何ということをしたのか。」女は答えた。「蛇がだましたので、食べてしまいました。」 14 主なる?~は、蛇に向かって言われた。「このようなことをしたお前はあらゆる家畜、あらゆる野の獣の中で呪われるものとなった。お前は、生涯這いまわり、塵を食らう。 15 お前と女、お前の子孫と女の子孫の間にわたしは敵意を置く。彼はお前の頭を砕き お前は彼のかかとを砕く。」 16 ?~は女に向かって言われた。「お前のはらみの苦しみを大きなものにする。お前は、苦しんで子を産む。お前は男を求め 彼はお前を支配する。」 17 ?~はアダムに向かって言われた。「お前は女の声に従い 取って食べるなと命じた木から食べた。お前のゆえに、土は呪われるものとなった。お前は、生涯食べ物を得ようと苦しむ。 18 お前に対して 土は茨とあざみを生えいでさせる 野の草を食べようとするお前に。 19 お前は顔に汗を流してパンを得る 土に返るときまで。お前がそこから取られた土に。塵にすぎないお前は塵に返る。」 20 アダムは女をエバ(命)と名付けた。彼女がすべて命あるものの母となったからである。 21 主なる?~は、アダムと女に皮の衣を作って着せられた。 22 主なる?~は言われた。「人は我々の一人のように、善悪を知る者となった。今は、手を伸ばして命の木からも取って食べ、永遠に生きる者となるおそれがある。」 23 主なる?~は、彼をエデンの園から追い出し、彼に、自分がそこから取られた土を耕させることにされた。 24 こうしてアダムを追放し、命の木に至る道を守るために、エデンの園の東にケルビムと、きらめく剣の炎を置かれた。
創世記 カインとアペル
4
1 さて、アダムは妻エバを知った。彼女は身ごもってカインを産み、「わたしは主によって男子を得た」と言った。 2 彼女はまたその弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。 3 時を経て、カインは土の実りを主のもとに献げ物として持って来た。 4 アベルは羊の群れの中から肥えた初子を持って来た。主はアベルとその献げ物に目を留められたが、 5 カインとその献げ物には目を留められなかった。カインは激しく怒って顔を伏せた。 6 主はカインに言われた。「どうして怒るのか。どうして顔を伏せるのか。 7 もしお前が正しいなら、顔を上げられるはずではないか。正しくないなら、罪は戸口で待ち伏せており、お前を求める。お前はそれを支配せねばならない。」 8 カインが弟アベルに言葉をかけ、二人が野原に着いたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。 9 主はカインに言われた。「お前の弟アベルは、どこにいるのか。」カインは答えた。「知りません。わたしは弟の番人でしょうか。」 10 主は言われた。「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。 11 今、お前は呪われる者となった。お前が流した弟の血を、口を開けて飲み込んだ土よりもなお、呪われる。 12 土を耕しても、土はもはやお前のために作物を産み出すことはない。お前は地上をさまよい、さすらう者となる。」 13 カインは主に言った。「わたしの罪は重すぎて負いきれません。 14 今日、あなたがわたしをこの土地から追放なさり、わたしが御顔から隠されて、地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう。」 15 主はカインに言われた。「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。 16 カインは主の前を去り、エデンの東、ノド(さすらい)の地に住んだ。 17 カインは妻を知った。彼女は身ごもってエノクを産んだ。カインは町を建てていたが、その町を息子の名前にちなんでエノクと名付けた。 18 エノクにはイラドが生まれた。イラドはメフヤエルの父となり、メフヤエルはメトシャエルの父となり、メトシャエルはレメクの父となった。
19 レメクは二人の妻をめとった。一人はアダ、もう一人はツィラと言った。 20 アダはヤバルを産んだ。ヤバルは、家畜を飼い天幕に住む者の先祖となった。 21 その弟はユバルといい、竪琴や笛を奏でる者すべての先祖となった。 22 ツィラもまた、トバル・カインを産んだ。彼は青銅や鉄でさまざまの道具を作る者となった。トバル・カインの妹はナアマといった。 23 さて、レメクは妻に言った。「アダとツィラよ、わが声を聞け。レメクの妻たちよ、わが言葉に耳を傾けよ。わたしは傷の報いに男を殺し 打ち傷の報いに若者を殺す。 24 カインのための復讐が七倍なら レメクのためには七十七倍。」 25 再び、アダムは妻を知った。彼女は男の子を産み、セトと名付けた。カインがアベルを殺したので、?~が彼に代わる子を授け(シャト)られたからである。 26 セトにも男の子が生まれた。彼はその子をエノシュと名付けた。主の御名を呼び始めたのは、この時代のことである。
創世記 アダムの系図
5
1 これはアダムの系図の書である。?~は人を創造された日、?~に似せてこれを造られ、 2 男と女に創造された。創造の日に、彼らを祝福されて、人と名付けられた。 3 アダムは百三十歳になったとき、自分に似た、自分にかたどった男の子をもうけた。アダムはその子をセトと名付けた。 4 アダムは、セトが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 5 アダムは九百三十年生き、そして死んだ。 6 セトは百五歳になったとき、エノシュをもうけた。 7 セトはエノシュが生まれた後八百七年生きて、息子や娘をもうけた。 8 セトは九百十二年生き、そして死んだ。 9 エノシュは九十歳になったとき、ケナンをもうけた。 10 エノシュは、ケナンが生まれた後八百十五年生きて、息子や娘をもうけた。 11 エノシュは九百五年生き、そして死んだ。 12 ケナンは七十歳になったとき、マハラルエルをもうけた。 13 ケナンはマハラルエルが生まれた後八百四十年生きて、息子や娘をもうけた。 14 ケナンは九百十年生き、そして死んだ。 15 マハラルエルは六十五歳になったとき、イエレドをもうけた。 16 マハラルエルは、イエレドが生まれた後八百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 17 マハラルエルは八百九十五年生き、そして死んだ。 18 イエレドは百六十二歳になったとき、エノクをもうけた。 19 イエレドは、エノクが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 20 イエレドは九百六十二年生き、そして死んだ。 21 エノクは六十五歳になったとき、メトシェラもうけた。 22 エノクは、メトシェラが生まれた後、三百年?~と共に歩み、息子や娘をもうけた。 23 エノクは三百六十五年生きた。 24 エノクは?~と共に歩み、?~が取られたのでいなくなった。 25 メトシェラは百八十七歳になったとき、レメクをもうけた。 26 メトシェラは、レメクが生まれた後七百八十二年生きて、息子や娘をもうけた。 27 メトシェラは九百六十九年生き、そして死んだ。 28 レメクは百八十二歳になったとき、男の子をもうけた。 29 彼は、「主の呪いを受けた大地で働く我々の手の苦労を、この子は慰めてくれるだろう」と言って、その子をノア(慰め)と名付けた。 30 レメクは、ノアが生まれた後五百九十五年生きて、息子や娘をもうけた。 31 レメクは七百七十七年生き、そして死んだ。 32 ノアは五百歳になったとき、セム ハム ヤフェトをもうけた。
創世記 洪水
6
1 さて、地上に人が増え始め、娘たちが生まれた。 2 ?~の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、おのおの選んだ者を妻にした。 3 主は言われた。 「わたしの霊は人の中に永久にとどまるべきではない。人は肉にすぎないのだから。」こうして、人の一生は百二十年となった。 4 当時もその後も、地上にはネフィリムがいた。これは、?~の子らが人の娘たちのところに入って産ませた者であり、大昔の名高い英雄たちであった。 5 主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、 6 地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた。 7 主は言われた。 「わたしは人を創造したが、これを地上からぬぐい去ろう。人だけでなく、家畜も這うものも空の鳥も。わたしはこれらを造ったことを後悔する。」 8 しかし、ノアは主の好意を得た。 9 これはノアの物語である。その世代の中で、ノアは?~に従う無垢な人であった。ノアは?~と共に歩んだ。 10 ノアには三人の息子、セム ハム ヤフェトが生まれた。 11 この地は?~の前に堕落し、不法に満ちていた。 12 ?~は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。 13 ?~はノアに言われた。「すべて肉なるものを終わらせる時がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす。 14 あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟には小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。 15 次のようにしてそれを造りなさい。箱舟の長さを三百アンマ、幅を五十アンマ、高さを三十アンマにし、 16 箱舟に明かり取りを造り、上から一アンマにして、それを仕上げなさい。箱舟の側面には戸口を造りなさい。また、一階と二階と三階を造りなさい。 17 見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊をもつ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべてのものは息絶える。 18 わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。 19 また、すべて命あるもの、すべて肉なるものから、二つずつ箱舟に連れて入り、あなたと共に生き延びるようにしなさい。それらは、雄と雌でなければならない。 20 それぞれの鳥、それぞれの家畜、それぞれの地を這うものが、二つずつあなたのところへ来て、生き延びるようにしなさい。 21 更に、食べられる物はすべてあなたのところに集め、あなたと彼らの食料としなさい。」 22 ノアは、すべて?~が命じられたとおりに果たした。
7
1 主はノアに言われた。「さあ、あなたとあなたの家族は皆、箱舟に入りなさい。この世代の中であなただけはわたしに従う人だと、わたしは認めている。 2 あなたは清い動物をすべて七つがい取り、また、清くない動物をすべて一つがいずつ取りなさい 3 空の鳥も七つがい取りなさい。全地の面に子孫が生き続けるように。 4 七日の後、わたしは四十日四十夜地上に雨を降らせ、わたしが造ったすべての生き物を地の面からぬぐい去ることにした。」 5 ノアはすべて主が命じられたとおりにした。 6 ノアが六百歳のとき、洪水が地上に起こり、水が地の上にみなぎった。 7 ノアは妻子や嫁たちと共に洪水を免れようと箱舟に入った。 8 清い動物も清くない動物も、鳥も地を這うものもすべて、 9 二つずつ箱舟のノアのもとに来た。それは?~がノアに命じられたとおりに、雄と雌であった。 10 七日が過ぎて、洪水が地上起こった。 11 ノアの生涯の第六百年、第二の月の十七日、この日、大いなる深淵の源がことごとく裂け、天の窓が開かれた。 12 雨が四十日四十夜地上に降り続いたが、 13 まさにこの日、ノアも、息子のセム、ハム、ヤフェト、ノアの妻、この三人の息子の嫁たちも、箱舟に入った。 14 彼らと共にそれぞれの獣、それぞれの家畜、それぞれの地を這うもの、それぞれの鳥、小鳥や翼のあるものすべて、 15 命の霊をもつ肉なるものは、二つずつノアのもとに来て箱舟に入った。 16 ?~が命じられたとおりに、すべて肉なるものの雄と雌とが来た。主は、ノアの後ろで戸を閉ざされた。 17 洪水は四十日間地上を覆った。水は次第に増して箱舟を押し上げ、箱舟は大地を離れて浮かんだ。 18 水は勢力を増し、地の上に大いにみなぎり、箱舟は水の面を漂った。 19 水はますます勢いを加えて地上にみなぎり、およそ天の下にある高い山はすべて覆われた。 20 水は勢い増して更にその上十五アンマに達し、山々を覆った。 21 地上で動いていた肉なるものはすべて、鳥も家畜も獣も地に群がり這うものも人も、ことごとく息絶えた。 22 乾いた地のすべてのもののうち、その鼻に命の息と霊のあるものはことごとく死んだ。 23 地の面にいた生き物はすべて、人をはじめ、家畜、這うもの、空の鳥に至るまでぬぐい去られた。彼らは大地からぬぐい去られ、ノアと、彼と共に箱舟にいたものだけが残った。 24 水は百五十日の間、地上で勢いを失わなかった。
8
1 神は、ノアと彼と共に箱舟にいたすべての獣とすべての家畜を御心に留め、地の上に風を吹かせられたので、水が減り始めた。 2 また、深淵の源と天の窓が閉じられたので、天からの雨は降りやみ、 3 水は地上からひいて行った。百五十日の後には水が減って、 4 第七の月の十七日に箱舟はアララト山の上に止まった。 5 水はますます減って第十の月になり、第十の月の一日には山々の頂が現れた。 6 四十日たって、ノアは自分が造った箱舟の窓を開き、烏を放した。烏は飛び立ったが、地上の水が乾くのを待って、出たり入ったりした。 8 ノアは鳩を彼のもとから放して、地の面から水がひいたかどうかを確かめようとした。 9 しかし、鳩は止まる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰って来た。水がまだ全地の面を覆っていたからである。ノアは手を差し伸べて鳩を捕らえ、箱舟の自分のもとに戻した。 10 更に七日待って、彼は再び鳩を箱舟から放した。 11 鳩は夕方になってノアのもとに帰って来た。見よ、鳩はくちばしにオリーブの葉をくわえていた。ノアは水が地上からひいたことを知った。 12 彼は更に七日待って、鳩を放した。鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。 13 ノアが六百一歳のとき、最初の月の一日に、地上の水は乾いた。ノアは箱舟の覆いを取り外して眺めた。見よ、地の面は乾いていた。 14 第二の月の二十七日になると、地はすっかり乾いた。 15 神はノアに仰せになった。 「さあ、あなたもあなたの妻も、息子も嫁も、皆一緒に箱舟から出なさい。 17 すべて肉なるもののうちからあなたのもとに来たすべての動物、鳥も家畜も地を這うものも一緒に連れ出し、地に群がり、地上で子を産み、増えるようにしなさい。」 18 そこで、ノアは息子や妻や嫁と共に外へ出た。 19 獣、這うもの、鳥、地に群がるもの、それぞれすべて箱舟から出た。 20 ノアは主のために祭壇を築いた。そしてすべての清い家畜と清い鳥のうちから取り、焼き尽くす捧げ物として祭壇の上にささげた。 21 主は宥めの香りをかいで、御心に言われた。「人に対して大地を呪うことは二度とすまい。人が心に思うことは、幼いときから悪いのだ。わたしは、この度したように生き物をことごとく打つことは、二度とすまい。 22 地の続くかぎり、種蒔きも刈り入れも 寒さも暑さも、夏も冬も 昼も夜も、やむことはない。」
創世記 祝福と契約
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1 ?~はノアと彼の息子たちを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちよ。 2 地のすべての獣と空のすべての鳥は、地を這うすべてのものと海のすべての魚と共に、あなたたちの前に恐れおののき、あなたたちの手にゆだねられる。 3 動いている命あるものは、すべてあなたたちの食糧とするがよい。わたしはこれらすべてのものを、青草と同じようにあなたたちに与える。 4 ただし、肉は命である血を含んだまま食べてはならない。 5 また、あなたたちの命である血が流された場合、わたしは賠償を要求する。いかなる獣からも要求する。人間どうしの血については、人間から人間の命を賠償として要求する。 6 人の血を流す者は 人によって自分の血を流される。人は?~にかたどって造られたからだ。 7 あなたたちは産めよ、増えよ 地に群がり、地に増えよ。」 8 ?~はノアと彼の息子たちに言われた。 9 「わたしは、あなたたちと、そして後に続く子孫と、契約を立てる。 10 あなたたちと共にいるすべての生き物、またあなたたちと共にいる鳥や家畜や地のすべての獣など、箱舟から出たすべてのもののみならず、地のすべての獣と契約を立てる。 11 わたしがあなたたちと契約を立てたならば、二度と洪水によって肉なるものが滅ぼされることはなく、洪水が起こって地を滅ぼすことも決してない。」 12 更に?~は言われた。「あなたたちならびにあなたたちと共にいるすべての生き物と、代々(よよ)とこしえにわたしが立てる契約のしるしはこれである。 13 すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立てた契約のしるしとなる。 14 わたしが地の上に雲を湧き起こらせ、雲の中に虹が現れると、 15 わたしは、わたしとあなたたちならびにすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた契約に心を留める。水が洪水となって、肉なるものをすべて滅ぼすことは決してない。 16 雲の中に虹が現れると、わたしはそれを見て、神と地上のすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた永遠の契約に心をと留める。」 17 ?~はノアに言われた。「これが、わたしと地上のすべて肉なるものとの間にたてた契約のしるしである。」
創世記 ノアと息子たち
18 箱舟から出たノアの息子は、セム、ハム、ヤフェトであった。ハムはカナンの父である。 19 この三人がノアの息子で、全世界の人々は彼らから出て広がったのである。 20 さて、ノアは農夫となり、ぶどう畑を作った。 21 あるとき、ノアはぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。 22 カナンの父ハムは、自分の父の裸を見て、外にいた二人の兄弟に告げた。 23 セムとヤフェトは着物を取って自分たちの肩に掛け、後ろ向きに歩いて行き、父の裸を覆った。二人は顔を背けたままで、父の裸を見なかった。 24 ノアは酔いからさめると、末の息子がしたことを知り、 25 こう言った。「カナンは呪われよ 奴隷の奴隷となり、兄たちに仕えよ。」 26 また言った。「セムの神、主をたたえよ。 カナンはセムの奴隷となれ。
27 神がヤフェトの土地を広げ(ヤフェト) セムの天幕に住まわせ カナンはその奴隷となれ。」 28 ノアは、洪水の後三百五十年生きた。 29 ノアは九百五十歳になって、死んだ。
創世記 ノアの子孫
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1 ノアの息子、セム、ハム、ヤフェトの系図は次のとおりである。洪水の後、彼らに息子が生まれた。 2 ヤフェトの子孫はゴメル、マゴグ、メディア、ヤワン、トバル、メシェク、ティラスであった。 3 ゴメルの子孫は、アシュケナズ、リファト、トガルマであった。 4 ヤワンの子孫は、エリシャ、タルシシュ、キティム、ロダニムであった。 5 海沿いの国々は、彼らから出て、それぞれの地に、その言語、氏族、民族に従って住むようになった。 6 ハムの子孫は、クシュ、エジプト、プト、カナンであった。 7 クシュの子孫はセバ、ハビラ、サブタ、ラマ、サブテカであり、ラマの子孫はシェバとデダンであった。 8 クシュにはまた、ニムロドが生まれた。ニムロドは地上で最初の勇士となった。 9 彼は、主の御前に勇敢な狩人であり、「主の御前に勇敢な狩人ニムドロのようだ」という言い方がある。 10 彼の王国の主な町は、バベル、ウルク、アッカドであり、それらはすべてシンアルの地にあった。 11 彼はその地方からアッシリに進み、ニネベ、レホボト・イル、カラ、 12 レセンを建てた。レセンはニネベとカラとの間にある、非常に大きな町であった。 13 エジプトにはリディア人、アルミナ人、レハビム人、ナフトヒム人、 14 上エジプト人、カスルヒム人、カフトル人が生まれた。このカフトル人からペリシテ人が出た。
15 カナンには長男シドンとヘト、 16 また、エブス人、アモリ人、ギルガシ人、 17 ヒビ人、アルキ人、シニ人、 18 アルワド人、フェマリ人、ハマト人が生まれた。その後、カナン人の諸氏族が広がった。 19 カナン人の領土は、シドンから南下してゲラルを経てガザまでを含み、更に、ソドム、ゴモラ、アドマ、ツェボイムを経てラシャまでを含んだ。 20 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたハムの子孫である。 21 セムにもまた子供が生まれた。彼はエベルのすべての子孫の先祖であり、ヤフェトの兄であった。 22 セムの子孫はエラム、アシュル、アルパクシャド、ルド、アラムであった。 23 アラムの子孫は、ウツ、フル、ゲテル、マシュであった。 24 アルパクシャドにはシェラが生まれ、シェラにはエベルが生まれた。 25 エベルには二人の息子が生まれた。ひとりの名は、その時代に土地が分けられた(パラグ)ので、ペレグといい、その兄弟はヨクタンといった。 26 ヨクタンには、アルモダド、シェレフ、ハツァルマベト、イエラ、 27 ハドラム、ウザル、ディクラ、 28 オバル、アビマエル、シェバ、 29 オフィル、ハビラ、ヨバブが生まれた。これらは皆、ヨクタンの息子であった。 30 彼らはメシャからセファルに至る東の高原地帯に住んでいた。 31 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたセムの子孫である。 32 ノアの子孫である諸氏族を、民族ごとの系図にまとめると以上のようになる。地上の諸民族は洪水の後、彼らから分かれ出た。
創世記 バベルの塔
11
1 世界中は同じ言葉を使って、同じように話していた。 2 東の方から移動してきた人々は、シンアルの地に平野を見つけ、そこに住み着いた。 3 彼らは、「れんがを作り、それをよく焼こう」と話し合った。石の代わりにれんがを、しっくいの代わりにアスファルトを用いた。 4 彼らは、「さあ 天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。 5 主は降って来て、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、 6 言われた。「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。 7 我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」 8 主は彼らをそこから全地に散らされたので、彼らはこの町の建設をやめた。 9 こういうわけで、この町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ、また、主がそこから彼らを全地に散らされたからである。
創世記 セムの系図
10 セムの系図は次のとおりである。セムが百歳になったとき、アルバクシャドが生まれた。それは洪水の二年後のことであった。 11 セムは、アルパクシャドが生まれた後五百年生きて、息子や娘をもうけた。 12 アルパクシャドが三十五歳になったとき、シェラが生まれた。 13 アルパクシャドは、シェラが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 14 シェラが三十歳になったとき、エベルが生まれた。 15 シェラは、エベルが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 16 エベルが三十四歳になったとき、ぺレグが生まれた。 17 エベルは、ぺレグが生まれた後四百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 18 ぺレグが三十歳になったとき、レウが生まれた。 19 ぺレグは、レウが生まれた後二百九年生きて、息子や娘をもうけた。 20 レウが三十二歳になったとき、セルグが生まれた。 21 レウは、セルグが生まれた後二百七年生きて、息子や娘をもうけた。 22 セルグ三十歳なったとき、ナホルが生まれた。 23 セルグは、ナホルが生まれた後二百年生きて、息子や娘をもうけた。 24 ナホルが二十九歳になったとき、テラが生まれた。 25 ナホルは、テラが生まれた後百十九年生きて、息子や娘をもうけた。 26 テラが七十歳になったとき、アブラム、ナホル、ハランが生まれた。
創世記 テラの系図
27 テラの系図は次のとおりである。テラにはアブラム、ナホル、ハランが生まれた。ハランにはロトが生まれた。 28 ハランは父のテラより先に、故郷カルデアのウルで死んだ。 29 アブラムとナホルはそれぞれ妻をめとった。アブラムの妻の名はサライ、ナホルの妻の妻の名はミルカといった。ミルカはハランの娘である。ハランはミルカとイスカの父であった。 30 サライは不妊の女で、子供ができなかった。 31 テラは、息子アブラムと、ハランの息子で自分の孫であるロト、および息子アブラムの妻で自分の嫁であるサライを連れて、カルデアのウルを出発し、カナン地方に向った。彼らはハランまで来ると、そこにとどまった。 32 テラは二百五年の生涯を終えて、ハランで死んだ。
創世記 アブラムの召命と移住
12
1 主はアブラムに言われた。「あなたは生まれ故郷 父の家を離れて わたしが示す地に行きなさい 2 わたしはあなたを大いなる国民にし あなたを祝福し あなたに名を高める 祝福の源となるように 3 あなたを祝福する人をわたしは祝福し あなたを呪う者をわたしは呪う。 地上の氏族はすべて あなたによって祝福に入る。」 4 アブラムは 主の言葉に従って旅立った。ロトも共に行った。アブラムは、ハランを出発したとき七十五歳であった。 5 アブラムは妻のサライ、甥のロトを連れ、蓄えた財産をすべて携え、ハランで加わった人々と共にカナン地方へ向かって出発し、カナン地方入った。 6 アブラムはその地を通り、シケムの聖所、モレの樫の木まで来た。当時、その地方にはカナン人が住んでいた。 7 主はアブラムに現れて、言われた。「あなたの子孫のこの地を与える」アブラムは、彼に現れた主のために、そこに祭壇を築いた。 8 アブラムは、そこからベテルの東の山へ移り、西にベテル、東にアイを望む所に天幕を張って、そこにも主のために祭壇を築き、主の御名を呼んだ。 9 アブラムは更に旅を続け、ネゲブ地方に移った。
創世記 エジプト滞在
10 その地方に飢饉があった。 アブラムは、その地方の飢饉がひどかったので、エジプトに下り、そこに滞在することにした。 11 エジプトに入ろうしたとき、妻サライに言った。 「あなたが美しいのを、わたしはよく知っている。 12 エジプト人があなたを見たら、『この女はあの男の妻だ』と言って、わたしを殺し、あなたを生かしておくにちがいない。 13 どうか、わたしの妹だ、と言ってください。 そうすれば、わたしはあなたのゆえに幸いになり、あなたのお陰で命も助かるだろう。」 14 アブラムがエジプトに入ると、エジプト人はサライを見て、大変美しいと思った。 15 ファラオの家臣たちも彼女を見て、ファラオに彼女のことを褒めたので、サライはファラオの宮廷に召し入れられた 16 アブラムも彼女のゆえに幸いを受け、羊の群れ、牛の群れ、ろば、男女の奴隷、雌ろば、らくだなどを与えられた。 17 ところが主は、アブラムの妻サライのことで、ファラオと宮廷の人々を恐ろしい病気にかからせた。 18 ファラオはアブラムを呼び寄せて言った。 「あなたはわたしに何ということをしたのか。 なぜ、あの婦人は自分の妻だと、言わなかったのか。 19 なぜ、『わたしの妹です』などと言ったのか。 だからこそ、わたしの妻として召し入れたのだ。 さあ、あなたの妻を連れて、立ち去ってもらいたい。 20 ファラオは家来たちに命じて、アブラムを、その妻とすべての持ち物と共に送り出させた。
創世記 ロトとの別れ
13
1 アブラムは、妻と共に、すべての持ち物を携え、エジプトを出て再びネゲブ地方へ上った。ロトも一緒であった。 2 アブラムは非常に多くの家畜や金銀を持っていた。 3 ネゲブ地方から更に、ベテルに向って旅を続け、ベテルとアイとの間の、以前に天幕を張った所まで来た。 4 そこは、彼が最初に祭壇を築いて、主の御名を呼んだ場所であった。 5 アブラムと共に旅をしていたロトもまた、羊や牛の群れを飼い、たくさんの天幕を持っていた。 6 その土地は、彼らが一緒に住むには十分ではなかった。 彼らの財産が多すぎたから、一緒に住むことができなかったのである。 7 アブラムの家畜を飼う者たちと、ロトの家畜を飼うものたちとの間に争いが起きた。 そのころ、その地方にはカナン人もペリジ人も住んでいた。 8 アブラムはロトに言った。 「わたしたちは親類どうしだ。わたしとあなたの間ではもちろん、お互いの羊飼いの間でも争うのはやめよう。 9 あなたの前には幾らでも土地があるのだから、ここで別れようではないか。 あなたが左に行くなら、わたしは右に行こう。 あなたが右に行くなら、わたしは左に行こう。」 10 ロトが目を上げて眺めると、ヨルダン川流域の低地一帯は、 主がソドムとゴモラを滅ぼす前であったので、ツォアルに至るまで、主の園のように、エジプトの国のように、見渡すかぎりよく潤っていた。 11 ロトはヨルダン川流域の低地一帯を選んで、東へ移って行った。こうして彼らは、左右に別れた。 12 アブラムはカナン地方に住み、ロトは低地の町々に住んだが、彼はソドムまで天幕を移した。 13 ソドムの住民は邪悪で、主に対して多くの罪を犯していた。 14 主は、ロトが別れて行った後、アブラムに言われた。「さあ、目を上げて、あなたがいる場所から東西南北を見渡しなさい。 15 見えるかぎりの土地をすべて、わたしは永久にあなたとあなたの子孫に与える。 16 あなたの子孫を大地の砂粒のようにする。大地の砂粒が数えきれないように、あなたの子孫も数えきれないであろう。 17 さあ、この土地を縦横に歩き回るがよい。わたしはそれをあなたに与えるから。」 18 アブラムは天幕を移し、ヘブロンにあるマムレの樫の木のところに来て住み、そこに主のために祭壇を築いた。
王との戦い
14
1 シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨク、エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアルが、 2 ソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アドマの王シンアブ、ツェボイムの王シェムエベル、ベラ、すなわちツオワルの王と戦ったとき、 3 これら五人の王は皆、シディムの谷、すなわち塩の海で同盟を結んだ。 4 彼らは十二年間ケドルラオメルに支配されていたが、十三年目に背いたのである。 5 十四年目に、ケドルラオメルとその味方の王たちが来て、アシュテロト・カルナイムでレファイム人を、ハムでズジム人を、シャベ・キルヤタイムでエミル人を、 6 セイルの山地でフリ人人を撃ち、荒れ野に近いエル・バランまで進んだ。 7 彼らは転進して、エン・ミシュパト、すなわちカデシュに向かい、アマレク人の全領土とハツェツオン・タマルに住むアモリ人を撃った。 8 そこで、ソドムの王、ゴモラの王、アドマの王、ツェボイムの王、ベラすなわちツォアルの王は兵を繰り出し、シディムの谷で彼らと戦おうと陣を敷いた。 9 エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアル、シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨクの四人の王に対して、これら五人の王が戦いを挑んだのである。 10 シディムの谷には至るところに天然アスファルトの穴があった。ソドムとゴモラの王は逃げるとき、その穴に落ちた。残りの王は山へ逃れた。 11 ソドムとゴモラの財産や食糧はすべて奪い去られ、 12 ソドムに住んでいたアブラムの甥ロトも、財産もろとも連れ去られた。
ロトの救出
13 逃げ延びた一人の男がヘブライ人アブラムのもとに来て、そのことを知らせた。アブラムは当時、アモリ人マムレ樫の木の傍らに住んでいた。マムレはエシュコルとアネルの兄弟で、彼らはアブラムと同盟を結んでいた。 14 アブラムは、親族の者が捕虜になったと聞いて、彼の家で生まれた奴隷で、訓練を受けた者三百十八人を召集し、ダンまで追跡した。 15 夜、彼と僕たちは分かれて敵を襲い、ダマスコの北のホバまで追跡した。 16 アブラムはすべての財産を取り返し、親族のロトとその財産、女たちやそのほかの人々も取り戻した。
メルキゼデグの祝福
17 アブラムがケドルラオメルとその味方の王たちを撃ち破って帰って来たとき、ソドムの王はシャベの谷、すなわち王の谷まで彼を出迎えた。 18 いと高き神の祭司であったサレムの王メルキゼデクも、パンとぶどう酒を持って来た。 19 彼はアブラムを祝福して言った。「天地の造り主、いと高き神に アブラムは祝福されますように。 20 敵をあなたの手に渡された いと高き神がたたえられますように。」 アブラムはすべての物の十分の一を彼に贈った。 21 ソドムの王はアブラムに、「人はわたしにお返しください。 しかし、財産はお取りください」と言ったが、 22 アブラムはソドムの王に言った。 「わたしは天地の造り主、いと高き?~、主に手を上げて誓います。 23 あなたの物は、たとえ糸一筋、靴ひも一本でも、決していただきません。 『アブラムを裕福にしたのは、このわたしだ』と、あなたに言われたくありません。 24 わたしは何も要りません。 ただ、若い者たちが食べたものと、わたしと共に戦った人々、すなわち、アネルとエシュコルとマムレの分は別です。 彼らには分け前を取らせてください。
神の約束
15
1 これらのことの後で、主の言葉が幻の中でアブラムに臨んだ。 「恐れるな、アブラムよ。 わたしはあなたの盾である。 あなたの受ける報いは非常に大きいであろう。 2 アブラムは尋ねた。 「わが神、主よ。わたしに何をくださるというのですか。わたしには子供がありません。家を継ぐのはダマスコのエリエゼルです。 3 アブラムは言葉をついだ。「御覧のとおり、あなたはわたしに子孫を与えてくださいませんでしたから、家の僕が跡を継ぐことになっています。」 4 見よ、主の言葉があった。「その者があなたの跡を継ぐのではなく、あなたから生まれる者が跡を継ぐ。」 5 主は彼を外に連れ出して言われた。「天を仰いで、星を数えることができるなら、数えてみるがよい。」 そして言われた。 「あなたの子孫はこのようになる。」 6 アブラムは主を信じた。主はそれを彼の義と認められた。 7 主は言われた。 「わたしはあなたをカルデアのウルから導き出した主である。わたしはあなたにこの土地を与え、それを継がせる。」 8 アブラムは尋ねた。 「わが神、主よ。この土地をわたしが継ぐことを、何によって知ることができましょうか。」 9 主は言われた。 「三歳の雌牛と、三歳の雌山羊と、三歳の雄羊と、山鳩と、鳩の雛とをわたしのもとに持ってきなさい。」 10 アブラムはそれらのものをみな持って来て、真っ二つに切り裂き、それぞれを互いに向かい合わせて置いた。 ただ、鳥は切り裂かなかった。 11 はげ鷹がこれらの死体をねらって降りて来ると、アブラムは追い払った。 12 日が沈みかけたころ、アブラムは深い眠りに襲われた。すると、恐ろしい大いなる暗黒が彼に臨んだ。 13 主はアブラムに言われた。 「よく覚えておくがよい。あなたの子孫は異邦の国で寄留者となり、四百年の間奴隷として仕え、苦しめられるであろう。 14 しかしわたしは、彼らが奴隷として仕えるその国民を裁く。
その後、彼らは多くの財産を携えて脱出するであろう。 15 あなた自身は、長寿を全うして葬られ、安らかに先祖のもとに行く。 16 ここに戻ってくるのは、四代目の者たちである。それまではアモリ人の罪が極みに達しないからである。 17 日が沈み、暗闇に覆われたころ、突然、煙を吐く炉と燃える松明が二つに裂かれた動物の間を通り過ぎた。 18 その日、主はアブラムと契約を結んで言われた。 「あなたの子孫にこの土地を与える。エジプトの川から大河ユーフラテスに至るまで、 19 カイン人、ケナズ人、カドモニ人、 20 ヘト人、ペリジ人、レファイム人、 21 アモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人の土地を与える。」
ハガルの逃亡と出産
16
1 アブラムの妻サライには、子供が生まれなかった。彼女には、ハガルというエジプト人の女奴隷がいた。 2 サライはアブラムに言った。 「主はわたしに子供を授けてくださいません。どうぞ、わたしの奴隷のところへ入ってください。わたしは彼女によって、子供を与えられるかもしれません。」 アブラムは、サライの願いを聞き入れた。 3 アブラムの妻サライは、エジプト人の女奴隷ハガルを連れて来て、夫アブラムの側女とした。アブラムがカナン地方に住んでから、十年後のことであった。 4 アブラムはハガルのところに入り、彼女は身ごもった。ところが、自分が身ごもったのを知ると、彼女は女主人を軽んじた。 5 サライはアブラムに言った。 「わたしが不当な目に遭ったのは、あなたのせいです。女奴隷をあなたのふところに与えたのはわたしなのに、彼女は自分が身ごもったのを知ると、わたしを軽んじるようになりました。主がわたしとあなたとの間を裁かれますように。 6 アブラムはサライに答えた。
「あなたの女奴隷はあなたのものだ。好きなようにするがいい。」サライは彼女につらく当たったので、彼女はサライのもとから逃げた。 7 主の御使いが荒れ野の泉のほとり、シュル街道に沿う泉のほとりで彼女と出会って、 8 言った。 「サライの女奴隷ハガルよ。あなたはどこから来て、どこへ行こうとしているのか。」「女主人サライのもとから逃げているところです」と答えると、 9 主の御使いは言った。 「女主人のもとに帰り、従順に仕えなさい。」 10 主の御使いは更に言った。 「わたしは、あなたの子孫を数えきれないほど多く増やす。」 11 主の御使いはまた言った。 「今、あなたは身ごもっている。やがてあなたは男の子を産む。その子をイシュマエルと名付けなさい。主があなたの悩みをお聞きになられたから。 12 彼は野生のろばのような人になる。彼があらゆる人にこぶしを振りかざすので、人々は皆、こぶしを振るう。彼は兄弟すべてに敵対して暮らす。」 13 ハガルは自分に語りかけた主の御名を呼んで、 「あなたこそエル・ロイ(わたしを顧みられる?~)です」と言った。それは、彼女が、「神がわたしを顧みられた後もなお、わたしはここで見続けていたではないか」と言ったからである。 14 そこで、その井戸は、ベエル・ラハイ・ロイと呼ばれるようになった。それはカディシュとベレドの間にある。 15 ハガルはアブラムとの間に男の子を産んだ。アブラムは、ハガルが産んだ男の子をイシュマエルと名付けた。 16 ハガルがイシュマエルを生んだとき、アブラムは八十六歳であった。
創世記 契約と割礼
17
1 アブラムが九十九歳になったとき、主はアブラムに現れて言われた。「わたしは全能の神である。あなたはわたしに従って歩み、全き者となりなさい。 2 わたしは、あなたとの間にわたしの契約を立て、あなたをますます増やすであろう。」 3 アブラムはひれ伏した。神は更に、語りかけて言われた。 4 「これがあなたと結ぶわたしの契約である。あなたは多くの国民の父となる。 5 あなたは、もはやアブラムではなく、アブラハムと名乗りなさい。あなたを多くの国民の父とするからである。 6 わたしは、あなたをますます?栄させ、諸国民の父とする。王となる者たちがあなたから出るであろう。 7 わたしは、あなたとの間に、また後に続く子孫との間に契約を立て、それを永遠の契約とする。そして、あなたとあなたの子孫の神となる。 8 わたしは、あなたが滞在しているこのカナンのすべての土地を、あなたとその子孫に、永久の所有地として与える。わたしは彼らの神となる。」 9 神はまた、アブラムに言われた。「だからあなたも、わたしの契約を守りなさい、あなたも後に続く子孫も。 10 あなたたち、およびあなたの後に続く子孫と、わたしとの間で守るべき契約はこれである。すなわち、あなたたちの男子はすべて、割礼を受ける。 11 包皮の部分を切り取りなさい。これが、わたしとあなたたちとの間の契約のしるしとなる。 12 いつの時代でも、あなたたちの男子はすべて、直系の子孫はもちろんのこと、家で生まれた奴隷も、外国人から買い取った奴隷であなたの子孫でない者も皆、生れてから八日目に割礼を受けなければならない。 13 あなたのお家で生まれた奴隷も、買い取った奴隷も、必ず割礼を受けなければならない。それによって、わたしの契約はあなたの体に記されて永遠の契約となる。 14 包皮の部分を切り取らない無割礼の男がいたなら、その人は民の間から断たれる。わたしの契約を破ったからである。」 15 神はアブラムに言われた。「あなたの妻サライは、名前をサライではなく、サラと呼びなさい。 16 わたしは彼女を祝福し、彼女によってあなたに男の子を与えよう。わたしは彼女を祝福し、諸国民の母とする。諸民族の王となる者たちが彼女から出る。」 17 アブラハムひれ伏した。しかし笑って、ひそかに言った。「百歳の男に子供が生まれるだろうか。九十歳のサラに子供が産めるだろうか。」 18 アブラハムは神に言った。「どうか、イシュマエルが御前に生き永らえますように。」 19 神は言われた。「いや、あなたの妻サラがあなたとの間に男の子を産む。その子をイサク(彼は笑う)と名付けなさい。わたしは彼と契約を立て、彼の子孫のために永遠の契約とする。 20 イシュマエルについての願いも聞き入れよう。必ず、わたしは彼を祝福し、大いに子供を増やし繁栄させる。彼は十二人の首長の父となろう。わたしは彼を大いなる国民とする。 21 しかし、わたしの契約は、来年の今ごろ、サラがあなたとの間に産むイサクと立てる。」 22 神はこう語り終えると、アブラハムを離れて昇って行かれた。 23 アブラハムは、息子のイシュマエルをはじめ、家で生まれた奴隷や買い取った奴隷など、自分の家にいる人々のうち、男子を皆集めて、すぐその日に、神が命じられたとおり包皮に割礼を施した。 24 アブラハムが包皮に割礼を受けたのは、九十九歳、 25 息子イシュマエルが包皮に割礼を受けたのは、十三歳であった。 26 アブラハムと息子のイシュマエルは、すぐその日に割礼を受けた。 27 アブラハムの家の男子は、家で生まれた奴隷も外国人から買い取った奴隷も皆、共に割礼を受けた。
創世記 イサクの誕生の予告
18
1 主はマムレの樫の木の所でアブラハムに現れた。暑い真昼に、アブラハムは天幕の入り口に座っていた。 2 目を上げて見ると、三人の人が彼に向って立っていた。アブラハムはすぐに天幕の入り口から走り出て迎え、地にひれ伏して、 3 言った。「お客様、よろしければ、どうか、僕のもとを通り過ぎないでください。 4 水を少々持ってこさせますから、足を洗って、木陰でどうぞひと休みなさってください。 5 何か召し上がるものを調えますので、疲れをいやしてから、お出かけください。せっかく、僕の所の近くをお通りになったのですから。」その人たちは言った。「では、お言葉どおりにしましょう。」 6 アブラハムは急いで天幕に戻り、サラのところに来て言った。「早く、上等の小麦粉を三セアほどこねて、パン菓子をこしらえなさい。」 7 アブラハムは牛の群れのところへ走って行き、柔らかくておいしそうな子牛を選び、召し使いに渡し、急いで料理をさせた。 8 アブラハムは、凝乳、乳、出来立ての子牛の料理などを選び、彼らの前に並べた。そして、彼らが木陰で食事をしている間、そばに立って給仕をした。 9 彼らはアブラハムに尋ねた。「あなたの妻のサラはどこにいますか。」「はい、天幕の中におります」とアブラハムが答えると、 10 彼らの一人が言った。「わたしは来年の今ごろ、必ずここにまた来ますが、そのころには、あなたの妻のサラに男の子が生まれているでしょう。」サラは、すぐ後ろの天幕の入り口で聞いていた。 11 アブラハムもサラも多くの日を重ねて老人になっており、しかもサラは月のものがとうになくっていた。 12 サラはひそかに笑った。自分は年をとり、もはや楽しみがあるはずもなし、主人も年老いているのに、と思ったのである。13 主はアブラハムに言われた。「なぜサラは笑ったのか。なぜ年をとった自分に子供が生まれるはずがないと思ったのだ。 14 主に不可能なことがあろうか。来年の今ごろ、わたしはここに戻ってくる。そのころ、サラには必ず男の子が生まれている。」 15 サラは恐ろしくなり、打ち消して言った。「わたしは笑いませんでした。」主は言われた。「いや、あなたは確かに笑った。」
創世記 ソドムのための執り成し
16 その人たちはそこを立って、ソドムを見下ろす所まで来た。アブラハムも、彼らを見送るために一緒に行った。 17 主は言われた。「わたしが行おうとしていることをアブラハムに隠す必要があろうか。 18 アブラハムは大きな強い国民になり、世界のすべての国民は彼によって祝福に入る。 19 わたしがアブラハムを選んだのは、彼が息子たちとその子孫に、主の道を守り、主に従って正義を行うよう命じて、主がアブラハムに約束したことを成就するためである。 20 主は言われた。「ソドムとゴモラの罪は非常に重い、と訴える叫びが実に大きい。 21 わたしは降って行き、彼らの行跡が、果たして、わたしに届いた叫びのとおりかどうか見て確かめよう。」 22 その人たちは、更にソドムの方に向かったが、アブラハムはなお、主の御前にいた。 23 アブラハムは進み出て言った。「もことにあなたは、正しい者を悪い者と一緒に滅ぼされるのですか。 24 あの町に正しい者が五十人いるとしても、それでも滅ぼし、その五十人の正しい者のために、町をお赦しにはならないのですか。 25 正しい者を悪い者と一緒に殺し、正しい者を悪い者と同じ目に遭わせるようなことを、あなたがなさるはずはございません。全くありえないことです。全世界を裁くお方は、正義を行われるべきではありませんか。」 26 主は言われた。「もしソドムの町に正しい者が五十人いるならば、その者たちのために、町を全部赦そう。」 27 アブラハムは答えた。「塵にすぎないわたしですが、あえて、わが主に申し上げます。 28 もしかすると、五十人の正しい者に五人足りないかもしれません。それでもあなたは、五人たりないために、町のすべてを滅ぼされますか。」主は言われた。「もし、四十五人いれば滅ぼさない。」 29 アブラハムは重ねて言った。「もしかすると、四十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その四十人のためにわたしはそれをしない」 30 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう少し言わせてください。もしかすると、そこには三十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「もし三十人いるならわたしはそれはしない。」 31 アブラハムは言った。「あえて、わが主に申し上げます。もしかすると、二十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その二十人のためにわたしは滅ぼさない。」 32 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう一度だけ言わせてください。もしかすると、十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その十人のためにわたしは滅ぼさない。」 33 主はアブラハムと語り終えると、去って行かれた。アブラハムも自分の住まいに帰った。
創世記 ソドムの滅亡
19
1 二人の御使いが夕方ソドムに着いたとき、ロトはソドムの門の所に座っていた。ロトは彼らを見ると、立ち上って迎え、地にひれ伏して、 2 言った。 「皆様方、どうぞ僕(しもべ)の家に立ち寄り、足を洗ってお泊りください。彼らは言った。「いや、結構です。わたしたちはこの広場で夜を過ごします。」 3 しかし、ロトがぜひにと勧めたので、彼らはロトの所に立ちよることにし、彼の家を訪ねた。ロトは、酵母を入れないパンを焼いて食事を供し、彼らをもてなした。 4 彼らがまだ床に就かないうちに、ソドムの町の男たちが、若者も年寄りもこぞって押しかけ、家を取り囲んで、 5 わめきたてた。 「今夜、お前のところへ来た連中はどこにいる。ここへ連れてこい。なぶりものにしてやるから。」 6 ロトは、戸口の前にたむろしている男たちのところへ出て行き、後ろの戸を閉めて、 7 言った。 「どうか、皆さん、乱暴なことはしないでください。 8 実は、わたしにはまだ嫁がせていない娘が二人おります。皆さんにその娘たちを差し出しますから、好きなようにしてください。ただ、あの方々には何もしないでください。この家の屋根の下に身を寄せていただいたのですから。」 9 男たちは口々に言った。 「そこをどけ」 「こいつはよそ者のくせに、指図などして。」 「さあ、彼らより先に、お前を痛い目に遭わせてやる。」 そして、ロトに詰め寄って体を押しつけ、戸を破ろうとした。 10 二人の客はそのとき、手を伸ばして、ロトを家の中に引き入れて戸を閉め、 11 戸口の前に入る男たちに、老若を問わず、目つぶしを食わせ、戸口を分からなくした。 12 二人の客はロトに言った。 「ほかに、あなたの身内の人がこの町にいますか。あなたの婿や息子や娘などを皆連れてここから逃げなさい。 13 実は、わたしたちはこの町を滅ぼしに来たのす。大きな叫びが主にもとに届いたので、主は、この町を滅ぼすためにわたしたちを遣わされたのです。」 14 ロトは嫁いだ娘たちの婿のところへ行き、「さあ早くここから逃げるのだ。主がこの町を滅ぼされるからだ」と促したが、婿たちは冗談だと思った。 15 夜が明けるころ、御使いたちはロトをせきたてて言った。「さあ早く、あなたの妻とここにいる二人の娘を連れて行きなさい。さもないと、この町に下る罰の巻き添えになって滅ぼされてしまう。」 16 ロトはためらっていた。主は憐れんで、二人の客にロト、妻、二人の娘の手をとらせて町の外へ避難するようにされた。 17 彼らがロトたちを町外れへ連れ出したとき、主は言われた。 「命がけで逃れよ。後ろを振り返ってはいけない。低地のどこにもとどまるな。山へ逃げなさい。さもないと、滅びることになる。」 18 ロトは言った。 「主よ、できません。 19 あなたは僕(しもべ)に目を留め、慈しみを豊かに示し、命を救おうとしています。しかし、わたしは山まで逃げ延びることはできません。恐らく、災害に巻き込まれて、死んでしまうのでしょう。 20 御覧ください、あの町を。あそこなら近いので、逃げて行けると思います。あれは小さな町です。あそこへ逃げさせてください。あれはほんの小さな町です。どうか、そこでわたしの命を救ってください。」
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1 初めに、神は天地を創造された。 2 地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、?~の靈が水の面を動いていた。 3 ?~は言われた。「光あれ。」こうして、光があった。 4 ?~は光を見て、良しとされた。?~は光と闇を分け、 5 光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第一の日である。6 ?~は言われた。「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。」 7 ?~は大空を造り、大空の下と大空の上に水を分けさせられた。そのようになった。 8 ?~は大空を天と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第二の日である。 9 ?~は言われた。「天の下の水は一つ所に集まれ。乾いた所が現れよ。」そのようになった。 10 神は乾いた所を地と呼び、水の集まった所を海と呼ばれた。神はこれを見て、良しとされた。 11 神は言われた。「地は草を芽生えさせよ。種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける果樹を、地に芽生えさせよ。」そのようになった。 12 地は草を芽生えさせ、それぞれの種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける木を芽生えさせた。?~はこれを見て、良しとされた。 13 夕べがあり、朝があった。第三の日である。 14 神は言われた。「天の大空に光る物があって、昼と夜を分け、季節のしるし、日や年のしるしとなれ。 15 天の大空に光る物があって、地を照らせ。」そのようになった。 16 ?~は二つの大きな光る物と星を造り、大きな方に昼を治めさせ、小さな方に夜を治めさせられた。 17 ?~はそれらを天の大空に置いて、地を照らさせ、 18 昼と夜を治めさせ、光と闇を分けさせられた。?~はこれを見て、良しとされた。 19 夕べがあり、朝があった。第四の日である。 20 ?~は言われた。「生き物が水の中に群がれ。鳥は地の上、天の大空の面を飛べ。」 21 ?~は水に群がるもの、すなわち大きな怪物、うごめく生き物をそれぞれに、また、翼ある鳥をそれぞれに創造された。?~はこれを見て、良しとされた。 22 ?~はそれらのものを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、海の水に満ちよ。鳥は地の上に増えよ。」 23 夕べがあり、朝があった。第五の日である。 24 ?~は言われた。「地は、それぞれの生き物を産み出せ。家畜、這うもの、地の獣をそれぞれに産み出せ。」そのようになった。 25 ?~はそれぞれの地の獣、それぞれの家畜、それぞれの土を這うものを造られた。?~はこれを見て、良しとされた。 26 ?~は言われた。「我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。そして海の魚、空の鳥、家畜、地の獣、地を這うものすべてを支配させよう。」 27 ?~は御自分にかたどって人を創造された。?~にかたどって創造された。男と女に創造された。28 ?~は彼らを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ。」 29 ?~は言われた。「見よ、全地に生える、種を持つ草と種を持つ実をつける木を、すべてあなたたちに与えよう。それがあなたたちの食べ物となる。 30 地の獣、空の鳥、地を這うものなど、すべて命あるものにはあらゆる青草をたべさせよう。」そのようになった。 31 ?~はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった。夕べがあり、朝があった。第六の日である。
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1 天地万物は完成された。 2 第七の日に、?~は御自分の仕事を完成され、第七の日に、神は御自分の仕事を離れ、安息なさった。 3 この日に?~はすべての創造の仕事を離れ、安息なさったので、第七の日を?~は祝福し、聖別された。 4 これが天地創造の由来である。主なる?~が地と天を造られたとき、 5 地上には野の木も、野の草も生えていなかった。主なる?~が地上に雨をお送りにならなかったからである。また土を耕す人もいなかった。 6 しかし、水が地下から湧き出て、土の面をすべて潤した。 7 主なる?~は、土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった。 8 主なる?~は、東の方のエデンに園を設け、自ら形づくった人をそこに置かれた。 9 主なる?~は、見るからに好ましく、食べるに良いものをもたらすあらゆる木を地に生えいでさせ、また園の中央には、命の木と善悪の知識の木を生えいでさせられた。 10 エデンから一つの川が流れ出ていた。園を潤し、そこで分かれて、四つの川となっていた。 11 第一の川の名はピションで、金を産出するハビラ地方全域を巡っていた。 12 その金は良質であり、そこではまた、琥珀の類やラピス・ラズリも産出した。 13 第二の川の名はギホンで、クシュ地方全域を巡っていた。 14 第三の川の名はチグリスで、アシュルの東の方を流れており、第四の川の名はユーフラテスであった。 15 主なる?~は人を連れて来て、エデンの園に住まわせ、人がそこを耕し、守るようにされた。 16 主なる?~は人に命じて言われた。「園のすべての木から取って食べなさい。 17 ただし、善悪の知識の木からは、決して食べてはならない。食べると必ず死んでしまう。」 18 主なる?~は言われた。「人が一人でいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう。」 19 主なる?~は、野のあらゆる獣、空のあらゆる鳥を土で形づくり、人のところへ持って来て、人がそれぞれどう呼ぶか見ておられた。人が呼ぶと、それはすべて、生き物の名となった。 20 人はあらゆる家畜、空の鳥、野のあらゆる獣に名を付けたが、自分に合う助ける者は見つけることができなかった。 21 主なる?~はそこで、人を深い眠りに落とされた。人が眠り込むと、あばら骨の一部を抜き取り、その跡を肉でふさがれた。 22 そして、人から抜き取ったあばら骨で女を造り上げられた。主なる?~が彼女を人のところへ連れて来られると、 23 人は言った。「ついに、これこそわたしの骨の骨わたしの肉の肉。これこそ、女(イシャー)と呼ぼう まさに、男(イシュ)から取られたものだから。」 24 こういうわけで、男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる。 25 人と妻は二人とも裸であったが、恥ずかしがりはしなかった。
創世記 蛇の誘惑
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1 主なる?~が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった。蛇は女に言った。「園のどの木からも食べてはいけない、などと神は言われたのか。」 2 女は蛇に答えた。「わたしたちは園の木の果実を食べてよいのです。 3 でも、園の中央に生えている木の果実だけは、食べてはいけない。触れてもいけない、死んではいけないから、と?~様はおっしゃいました。」 4 蛇は女に言った。「決して死ぬことはない。 5 それを食べると、目が開け、?~のように善悪を知るものとなることを?~はご存じなのだ。」 6 女が見ると、その木はいかにもおいしそうで、目を引き付け、賢くなるように唆していた。女は実を取って食べ、一緒にいた男にも渡したので、彼も食べた。 7 二人の目は開け、自分たちが裸であることを知り、二人はいちじくの葉をつづり合わせ、腰を覆うものとした。 8 その日、風の吹くころ、主なる?~が園の中を歩く音が聞こえてきた。アダムと女が、主なる?~の顔を避けて、園の木の間に隠れると、 9 主なる?~はアダムを呼ばれた。「どこにいるのか」 10 彼は答えた。「あなたの足音が園の中に聞こえたので、恐ろしくなり、隠れております。わたしは裸ですから。」 11 ?~は言われた。「お前が裸であることを誰が告げたのか。取って食べるなと命じた木から食べたのか。」 12 アダムは答えた。「あなたがわたしと共にいるようにしてくださった女が、木から取って与えたので、食べました。」 13 主なる?~は女に向かって言われた。「何ということをしたのか。」女は答えた。「蛇がだましたので、食べてしまいました。」 14 主なる?~は、蛇に向かって言われた。「このようなことをしたお前はあらゆる家畜、あらゆる野の獣の中で呪われるものとなった。お前は、生涯這いまわり、塵を食らう。 15 お前と女、お前の子孫と女の子孫の間にわたしは敵意を置く。彼はお前の頭を砕き お前は彼のかかとを砕く。」 16 ?~は女に向かって言われた。「お前のはらみの苦しみを大きなものにする。お前は、苦しんで子を産む。お前は男を求め 彼はお前を支配する。」 17 ?~はアダムに向かって言われた。「お前は女の声に従い 取って食べるなと命じた木から食べた。お前のゆえに、土は呪われるものとなった。お前は、生涯食べ物を得ようと苦しむ。 18 お前に対して 土は茨とあざみを生えいでさせる 野の草を食べようとするお前に。 19 お前は顔に汗を流してパンを得る 土に返るときまで。お前がそこから取られた土に。塵にすぎないお前は塵に返る。」 20 アダムは女をエバ(命)と名付けた。彼女がすべて命あるものの母となったからである。 21 主なる?~は、アダムと女に皮の衣を作って着せられた。 22 主なる?~は言われた。「人は我々の一人のように、善悪を知る者となった。今は、手を伸ばして命の木からも取って食べ、永遠に生きる者となるおそれがある。」 23 主なる?~は、彼をエデンの園から追い出し、彼に、自分がそこから取られた土を耕させることにされた。 24 こうしてアダムを追放し、命の木に至る道を守るために、エデンの園の東にケルビムと、きらめく剣の炎を置かれた。
創世記 カインとアペル
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1 さて、アダムは妻エバを知った。彼女は身ごもってカインを産み、「わたしは主によって男子を得た」と言った。 2 彼女はまたその弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。 3 時を経て、カインは土の実りを主のもとに献げ物として持って来た。 4 アベルは羊の群れの中から肥えた初子を持って来た。主はアベルとその献げ物に目を留められたが、 5 カインとその献げ物には目を留められなかった。カインは激しく怒って顔を伏せた。 6 主はカインに言われた。「どうして怒るのか。どうして顔を伏せるのか。 7 もしお前が正しいなら、顔を上げられるはずではないか。正しくないなら、罪は戸口で待ち伏せており、お前を求める。お前はそれを支配せねばならない。」 8 カインが弟アベルに言葉をかけ、二人が野原に着いたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。 9 主はカインに言われた。「お前の弟アベルは、どこにいるのか。」カインは答えた。「知りません。わたしは弟の番人でしょうか。」 10 主は言われた。「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。 11 今、お前は呪われる者となった。お前が流した弟の血を、口を開けて飲み込んだ土よりもなお、呪われる。 12 土を耕しても、土はもはやお前のために作物を産み出すことはない。お前は地上をさまよい、さすらう者となる。」 13 カインは主に言った。「わたしの罪は重すぎて負いきれません。 14 今日、あなたがわたしをこの土地から追放なさり、わたしが御顔から隠されて、地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう。」 15 主はカインに言われた。「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。 16 カインは主の前を去り、エデンの東、ノド(さすらい)の地に住んだ。 17 カインは妻を知った。彼女は身ごもってエノクを産んだ。カインは町を建てていたが、その町を息子の名前にちなんでエノクと名付けた。 18 エノクにはイラドが生まれた。イラドはメフヤエルの父となり、メフヤエルはメトシャエルの父となり、メトシャエルはレメクの父となった。
19 レメクは二人の妻をめとった。一人はアダ、もう一人はツィラと言った。 20 アダはヤバルを産んだ。ヤバルは、家畜を飼い天幕に住む者の先祖となった。 21 その弟はユバルといい、竪琴や笛を奏でる者すべての先祖となった。 22 ツィラもまた、トバル・カインを産んだ。彼は青銅や鉄でさまざまの道具を作る者となった。トバル・カインの妹はナアマといった。 23 さて、レメクは妻に言った。「アダとツィラよ、わが声を聞け。レメクの妻たちよ、わが言葉に耳を傾けよ。わたしは傷の報いに男を殺し 打ち傷の報いに若者を殺す。 24 カインのための復讐が七倍なら レメクのためには七十七倍。」 25 再び、アダムは妻を知った。彼女は男の子を産み、セトと名付けた。カインがアベルを殺したので、?~が彼に代わる子を授け(シャト)られたからである。 26 セトにも男の子が生まれた。彼はその子をエノシュと名付けた。主の御名を呼び始めたのは、この時代のことである。
創世記 アダムの系図
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1 これはアダムの系図の書である。?~は人を創造された日、?~に似せてこれを造られ、 2 男と女に創造された。創造の日に、彼らを祝福されて、人と名付けられた。 3 アダムは百三十歳になったとき、自分に似た、自分にかたどった男の子をもうけた。アダムはその子をセトと名付けた。 4 アダムは、セトが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 5 アダムは九百三十年生き、そして死んだ。 6 セトは百五歳になったとき、エノシュをもうけた。 7 セトはエノシュが生まれた後八百七年生きて、息子や娘をもうけた。 8 セトは九百十二年生き、そして死んだ。 9 エノシュは九十歳になったとき、ケナンをもうけた。 10 エノシュは、ケナンが生まれた後八百十五年生きて、息子や娘をもうけた。 11 エノシュは九百五年生き、そして死んだ。 12 ケナンは七十歳になったとき、マハラルエルをもうけた。 13 ケナンはマハラルエルが生まれた後八百四十年生きて、息子や娘をもうけた。 14 ケナンは九百十年生き、そして死んだ。 15 マハラルエルは六十五歳になったとき、イエレドをもうけた。 16 マハラルエルは、イエレドが生まれた後八百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 17 マハラルエルは八百九十五年生き、そして死んだ。 18 イエレドは百六十二歳になったとき、エノクをもうけた。 19 イエレドは、エノクが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 20 イエレドは九百六十二年生き、そして死んだ。 21 エノクは六十五歳になったとき、メトシェラもうけた。 22 エノクは、メトシェラが生まれた後、三百年?~と共に歩み、息子や娘をもうけた。 23 エノクは三百六十五年生きた。 24 エノクは?~と共に歩み、?~が取られたのでいなくなった。 25 メトシェラは百八十七歳になったとき、レメクをもうけた。 26 メトシェラは、レメクが生まれた後七百八十二年生きて、息子や娘をもうけた。 27 メトシェラは九百六十九年生き、そして死んだ。 28 レメクは百八十二歳になったとき、男の子をもうけた。 29 彼は、「主の呪いを受けた大地で働く我々の手の苦労を、この子は慰めてくれるだろう」と言って、その子をノア(慰め)と名付けた。 30 レメクは、ノアが生まれた後五百九十五年生きて、息子や娘をもうけた。 31 レメクは七百七十七年生き、そして死んだ。 32 ノアは五百歳になったとき、セム ハム ヤフェトをもうけた。
創世記 洪水
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1 さて、地上に人が増え始め、娘たちが生まれた。 2 ?~の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、おのおの選んだ者を妻にした。 3 主は言われた。 「わたしの霊は人の中に永久にとどまるべきではない。人は肉にすぎないのだから。」こうして、人の一生は百二十年となった。 4 当時もその後も、地上にはネフィリムがいた。これは、?~の子らが人の娘たちのところに入って産ませた者であり、大昔の名高い英雄たちであった。 5 主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、 6 地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた。 7 主は言われた。 「わたしは人を創造したが、これを地上からぬぐい去ろう。人だけでなく、家畜も這うものも空の鳥も。わたしはこれらを造ったことを後悔する。」 8 しかし、ノアは主の好意を得た。 9 これはノアの物語である。その世代の中で、ノアは?~に従う無垢な人であった。ノアは?~と共に歩んだ。 10 ノアには三人の息子、セム ハム ヤフェトが生まれた。 11 この地は?~の前に堕落し、不法に満ちていた。 12 ?~は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。 13 ?~はノアに言われた。「すべて肉なるものを終わらせる時がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす。 14 あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟には小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。 15 次のようにしてそれを造りなさい。箱舟の長さを三百アンマ、幅を五十アンマ、高さを三十アンマにし、 16 箱舟に明かり取りを造り、上から一アンマにして、それを仕上げなさい。箱舟の側面には戸口を造りなさい。また、一階と二階と三階を造りなさい。 17 見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊をもつ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべてのものは息絶える。 18 わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。 19 また、すべて命あるもの、すべて肉なるものから、二つずつ箱舟に連れて入り、あなたと共に生き延びるようにしなさい。それらは、雄と雌でなければならない。 20 それぞれの鳥、それぞれの家畜、それぞれの地を這うものが、二つずつあなたのところへ来て、生き延びるようにしなさい。 21 更に、食べられる物はすべてあなたのところに集め、あなたと彼らの食料としなさい。」 22 ノアは、すべて?~が命じられたとおりに果たした。
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1 主はノアに言われた。「さあ、あなたとあなたの家族は皆、箱舟に入りなさい。この世代の中であなただけはわたしに従う人だと、わたしは認めている。 2 あなたは清い動物をすべて七つがい取り、また、清くない動物をすべて一つがいずつ取りなさい 3 空の鳥も七つがい取りなさい。全地の面に子孫が生き続けるように。 4 七日の後、わたしは四十日四十夜地上に雨を降らせ、わたしが造ったすべての生き物を地の面からぬぐい去ることにした。」 5 ノアはすべて主が命じられたとおりにした。 6 ノアが六百歳のとき、洪水が地上に起こり、水が地の上にみなぎった。 7 ノアは妻子や嫁たちと共に洪水を免れようと箱舟に入った。 8 清い動物も清くない動物も、鳥も地を這うものもすべて、 9 二つずつ箱舟のノアのもとに来た。それは?~がノアに命じられたとおりに、雄と雌であった。 10 七日が過ぎて、洪水が地上起こった。 11 ノアの生涯の第六百年、第二の月の十七日、この日、大いなる深淵の源がことごとく裂け、天の窓が開かれた。 12 雨が四十日四十夜地上に降り続いたが、 13 まさにこの日、ノアも、息子のセム、ハム、ヤフェト、ノアの妻、この三人の息子の嫁たちも、箱舟に入った。 14 彼らと共にそれぞれの獣、それぞれの家畜、それぞれの地を這うもの、それぞれの鳥、小鳥や翼のあるものすべて、 15 命の霊をもつ肉なるものは、二つずつノアのもとに来て箱舟に入った。 16 ?~が命じられたとおりに、すべて肉なるものの雄と雌とが来た。主は、ノアの後ろで戸を閉ざされた。 17 洪水は四十日間地上を覆った。水は次第に増して箱舟を押し上げ、箱舟は大地を離れて浮かんだ。 18 水は勢力を増し、地の上に大いにみなぎり、箱舟は水の面を漂った。 19 水はますます勢いを加えて地上にみなぎり、およそ天の下にある高い山はすべて覆われた。 20 水は勢い増して更にその上十五アンマに達し、山々を覆った。 21 地上で動いていた肉なるものはすべて、鳥も家畜も獣も地に群がり這うものも人も、ことごとく息絶えた。 22 乾いた地のすべてのもののうち、その鼻に命の息と霊のあるものはことごとく死んだ。 23 地の面にいた生き物はすべて、人をはじめ、家畜、這うもの、空の鳥に至るまでぬぐい去られた。彼らは大地からぬぐい去られ、ノアと、彼と共に箱舟にいたものだけが残った。 24 水は百五十日の間、地上で勢いを失わなかった。
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1 神は、ノアと彼と共に箱舟にいたすべての獣とすべての家畜を御心に留め、地の上に風を吹かせられたので、水が減り始めた。 2 また、深淵の源と天の窓が閉じられたので、天からの雨は降りやみ、 3 水は地上からひいて行った。百五十日の後には水が減って、 4 第七の月の十七日に箱舟はアララト山の上に止まった。 5 水はますます減って第十の月になり、第十の月の一日には山々の頂が現れた。 6 四十日たって、ノアは自分が造った箱舟の窓を開き、烏を放した。烏は飛び立ったが、地上の水が乾くのを待って、出たり入ったりした。 8 ノアは鳩を彼のもとから放して、地の面から水がひいたかどうかを確かめようとした。 9 しかし、鳩は止まる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰って来た。水がまだ全地の面を覆っていたからである。ノアは手を差し伸べて鳩を捕らえ、箱舟の自分のもとに戻した。 10 更に七日待って、彼は再び鳩を箱舟から放した。 11 鳩は夕方になってノアのもとに帰って来た。見よ、鳩はくちばしにオリーブの葉をくわえていた。ノアは水が地上からひいたことを知った。 12 彼は更に七日待って、鳩を放した。鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。 13 ノアが六百一歳のとき、最初の月の一日に、地上の水は乾いた。ノアは箱舟の覆いを取り外して眺めた。見よ、地の面は乾いていた。 14 第二の月の二十七日になると、地はすっかり乾いた。 15 神はノアに仰せになった。 「さあ、あなたもあなたの妻も、息子も嫁も、皆一緒に箱舟から出なさい。 17 すべて肉なるもののうちからあなたのもとに来たすべての動物、鳥も家畜も地を這うものも一緒に連れ出し、地に群がり、地上で子を産み、増えるようにしなさい。」 18 そこで、ノアは息子や妻や嫁と共に外へ出た。 19 獣、這うもの、鳥、地に群がるもの、それぞれすべて箱舟から出た。 20 ノアは主のために祭壇を築いた。そしてすべての清い家畜と清い鳥のうちから取り、焼き尽くす捧げ物として祭壇の上にささげた。 21 主は宥めの香りをかいで、御心に言われた。「人に対して大地を呪うことは二度とすまい。人が心に思うことは、幼いときから悪いのだ。わたしは、この度したように生き物をことごとく打つことは、二度とすまい。 22 地の続くかぎり、種蒔きも刈り入れも 寒さも暑さも、夏も冬も 昼も夜も、やむことはない。」
創世記 祝福と契約
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1 ?~はノアと彼の息子たちを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちよ。 2 地のすべての獣と空のすべての鳥は、地を這うすべてのものと海のすべての魚と共に、あなたたちの前に恐れおののき、あなたたちの手にゆだねられる。 3 動いている命あるものは、すべてあなたたちの食糧とするがよい。わたしはこれらすべてのものを、青草と同じようにあなたたちに与える。 4 ただし、肉は命である血を含んだまま食べてはならない。 5 また、あなたたちの命である血が流された場合、わたしは賠償を要求する。いかなる獣からも要求する。人間どうしの血については、人間から人間の命を賠償として要求する。 6 人の血を流す者は 人によって自分の血を流される。人は?~にかたどって造られたからだ。 7 あなたたちは産めよ、増えよ 地に群がり、地に増えよ。」 8 ?~はノアと彼の息子たちに言われた。 9 「わたしは、あなたたちと、そして後に続く子孫と、契約を立てる。 10 あなたたちと共にいるすべての生き物、またあなたたちと共にいる鳥や家畜や地のすべての獣など、箱舟から出たすべてのもののみならず、地のすべての獣と契約を立てる。 11 わたしがあなたたちと契約を立てたならば、二度と洪水によって肉なるものが滅ぼされることはなく、洪水が起こって地を滅ぼすことも決してない。」 12 更に?~は言われた。「あなたたちならびにあなたたちと共にいるすべての生き物と、代々(よよ)とこしえにわたしが立てる契約のしるしはこれである。 13 すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立てた契約のしるしとなる。 14 わたしが地の上に雲を湧き起こらせ、雲の中に虹が現れると、 15 わたしは、わたしとあなたたちならびにすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた契約に心を留める。水が洪水となって、肉なるものをすべて滅ぼすことは決してない。 16 雲の中に虹が現れると、わたしはそれを見て、神と地上のすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた永遠の契約に心をと留める。」 17 ?~はノアに言われた。「これが、わたしと地上のすべて肉なるものとの間にたてた契約のしるしである。」
創世記 ノアと息子たち
18 箱舟から出たノアの息子は、セム、ハム、ヤフェトであった。ハムはカナンの父である。 19 この三人がノアの息子で、全世界の人々は彼らから出て広がったのである。 20 さて、ノアは農夫となり、ぶどう畑を作った。 21 あるとき、ノアはぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。 22 カナンの父ハムは、自分の父の裸を見て、外にいた二人の兄弟に告げた。 23 セムとヤフェトは着物を取って自分たちの肩に掛け、後ろ向きに歩いて行き、父の裸を覆った。二人は顔を背けたままで、父の裸を見なかった。 24 ノアは酔いからさめると、末の息子がしたことを知り、 25 こう言った。「カナンは呪われよ 奴隷の奴隷となり、兄たちに仕えよ。」 26 また言った。「セムの神、主をたたえよ。 カナンはセムの奴隷となれ。
27 神がヤフェトの土地を広げ(ヤフェト) セムの天幕に住まわせ カナンはその奴隷となれ。」 28 ノアは、洪水の後三百五十年生きた。 29 ノアは九百五十歳になって、死んだ。
創世記 ノアの子孫
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1 ノアの息子、セム、ハム、ヤフェトの系図は次のとおりである。洪水の後、彼らに息子が生まれた。 2 ヤフェトの子孫はゴメル、マゴグ、メディア、ヤワン、トバル、メシェク、ティラスであった。 3 ゴメルの子孫は、アシュケナズ、リファト、トガルマであった。 4 ヤワンの子孫は、エリシャ、タルシシュ、キティム、ロダニムであった。 5 海沿いの国々は、彼らから出て、それぞれの地に、その言語、氏族、民族に従って住むようになった。 6 ハムの子孫は、クシュ、エジプト、プト、カナンであった。 7 クシュの子孫はセバ、ハビラ、サブタ、ラマ、サブテカであり、ラマの子孫はシェバとデダンであった。 8 クシュにはまた、ニムロドが生まれた。ニムロドは地上で最初の勇士となった。 9 彼は、主の御前に勇敢な狩人であり、「主の御前に勇敢な狩人ニムドロのようだ」という言い方がある。 10 彼の王国の主な町は、バベル、ウルク、アッカドであり、それらはすべてシンアルの地にあった。 11 彼はその地方からアッシリに進み、ニネベ、レホボト・イル、カラ、 12 レセンを建てた。レセンはニネベとカラとの間にある、非常に大きな町であった。 13 エジプトにはリディア人、アルミナ人、レハビム人、ナフトヒム人、 14 上エジプト人、カスルヒム人、カフトル人が生まれた。このカフトル人からペリシテ人が出た。
15 カナンには長男シドンとヘト、 16 また、エブス人、アモリ人、ギルガシ人、 17 ヒビ人、アルキ人、シニ人、 18 アルワド人、フェマリ人、ハマト人が生まれた。その後、カナン人の諸氏族が広がった。 19 カナン人の領土は、シドンから南下してゲラルを経てガザまでを含み、更に、ソドム、ゴモラ、アドマ、ツェボイムを経てラシャまでを含んだ。 20 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたハムの子孫である。 21 セムにもまた子供が生まれた。彼はエベルのすべての子孫の先祖であり、ヤフェトの兄であった。 22 セムの子孫はエラム、アシュル、アルパクシャド、ルド、アラムであった。 23 アラムの子孫は、ウツ、フル、ゲテル、マシュであった。 24 アルパクシャドにはシェラが生まれ、シェラにはエベルが生まれた。 25 エベルには二人の息子が生まれた。ひとりの名は、その時代に土地が分けられた(パラグ)ので、ペレグといい、その兄弟はヨクタンといった。 26 ヨクタンには、アルモダド、シェレフ、ハツァルマベト、イエラ、 27 ハドラム、ウザル、ディクラ、 28 オバル、アビマエル、シェバ、 29 オフィル、ハビラ、ヨバブが生まれた。これらは皆、ヨクタンの息子であった。 30 彼らはメシャからセファルに至る東の高原地帯に住んでいた。 31 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたセムの子孫である。 32 ノアの子孫である諸氏族を、民族ごとの系図にまとめると以上のようになる。地上の諸民族は洪水の後、彼らから分かれ出た。
創世記 バベルの塔
11
1 世界中は同じ言葉を使って、同じように話していた。 2 東の方から移動してきた人々は、シンアルの地に平野を見つけ、そこに住み着いた。 3 彼らは、「れんがを作り、それをよく焼こう」と話し合った。石の代わりにれんがを、しっくいの代わりにアスファルトを用いた。 4 彼らは、「さあ 天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。 5 主は降って来て、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、 6 言われた。「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。 7 我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」 8 主は彼らをそこから全地に散らされたので、彼らはこの町の建設をやめた。 9 こういうわけで、この町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ、また、主がそこから彼らを全地に散らされたからである。
創世記 セムの系図
10 セムの系図は次のとおりである。セムが百歳になったとき、アルバクシャドが生まれた。それは洪水の二年後のことであった。 11 セムは、アルパクシャドが生まれた後五百年生きて、息子や娘をもうけた。 12 アルパクシャドが三十五歳になったとき、シェラが生まれた。 13 アルパクシャドは、シェラが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 14 シェラが三十歳になったとき、エベルが生まれた。 15 シェラは、エベルが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 16 エベルが三十四歳になったとき、ぺレグが生まれた。 17 エベルは、ぺレグが生まれた後四百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 18 ぺレグが三十歳になったとき、レウが生まれた。 19 ぺレグは、レウが生まれた後二百九年生きて、息子や娘をもうけた。 20 レウが三十二歳になったとき、セルグが生まれた。 21 レウは、セルグが生まれた後二百七年生きて、息子や娘をもうけた。 22 セルグ三十歳なったとき、ナホルが生まれた。 23 セルグは、ナホルが生まれた後二百年生きて、息子や娘をもうけた。 24 ナホルが二十九歳になったとき、テラが生まれた。 25 ナホルは、テラが生まれた後百十九年生きて、息子や娘をもうけた。 26 テラが七十歳になったとき、アブラム、ナホル、ハランが生まれた。
創世記 テラの系図
27 テラの系図は次のとおりである。テラにはアブラム、ナホル、ハランが生まれた。ハランにはロトが生まれた。 28 ハランは父のテラより先に、故郷カルデアのウルで死んだ。 29 アブラムとナホルはそれぞれ妻をめとった。アブラムの妻の名はサライ、ナホルの妻の妻の名はミルカといった。ミルカはハランの娘である。ハランはミルカとイスカの父であった。 30 サライは不妊の女で、子供ができなかった。 31 テラは、息子アブラムと、ハランの息子で自分の孫であるロト、および息子アブラムの妻で自分の嫁であるサライを連れて、カルデアのウルを出発し、カナン地方に向った。彼らはハランまで来ると、そこにとどまった。 32 テラは二百五年の生涯を終えて、ハランで死んだ。
創世記 アブラムの召命と移住
12
1 主はアブラムに言われた。「あなたは生まれ故郷 父の家を離れて わたしが示す地に行きなさい 2 わたしはあなたを大いなる国民にし あなたを祝福し あなたに名を高める 祝福の源となるように 3 あなたを祝福する人をわたしは祝福し あなたを呪う者をわたしは呪う。 地上の氏族はすべて あなたによって祝福に入る。」 4 アブラムは 主の言葉に従って旅立った。ロトも共に行った。アブラムは、ハランを出発したとき七十五歳であった。 5 アブラムは妻のサライ、甥のロトを連れ、蓄えた財産をすべて携え、ハランで加わった人々と共にカナン地方へ向かって出発し、カナン地方入った。 6 アブラムはその地を通り、シケムの聖所、モレの樫の木まで来た。当時、その地方にはカナン人が住んでいた。 7 主はアブラムに現れて、言われた。「あなたの子孫のこの地を与える」アブラムは、彼に現れた主のために、そこに祭壇を築いた。 8 アブラムは、そこからベテルの東の山へ移り、西にベテル、東にアイを望む所に天幕を張って、そこにも主のために祭壇を築き、主の御名を呼んだ。 9 アブラムは更に旅を続け、ネゲブ地方に移った。
創世記 エジプト滞在
10 その地方に飢饉があった。 アブラムは、その地方の飢饉がひどかったので、エジプトに下り、そこに滞在することにした。 11 エジプトに入ろうしたとき、妻サライに言った。 「あなたが美しいのを、わたしはよく知っている。 12 エジプト人があなたを見たら、『この女はあの男の妻だ』と言って、わたしを殺し、あなたを生かしておくにちがいない。 13 どうか、わたしの妹だ、と言ってください。 そうすれば、わたしはあなたのゆえに幸いになり、あなたのお陰で命も助かるだろう。」 14 アブラムがエジプトに入ると、エジプト人はサライを見て、大変美しいと思った。 15 ファラオの家臣たちも彼女を見て、ファラオに彼女のことを褒めたので、サライはファラオの宮廷に召し入れられた 16 アブラムも彼女のゆえに幸いを受け、羊の群れ、牛の群れ、ろば、男女の奴隷、雌ろば、らくだなどを与えられた。 17 ところが主は、アブラムの妻サライのことで、ファラオと宮廷の人々を恐ろしい病気にかからせた。 18 ファラオはアブラムを呼び寄せて言った。 「あなたはわたしに何ということをしたのか。 なぜ、あの婦人は自分の妻だと、言わなかったのか。 19 なぜ、『わたしの妹です』などと言ったのか。 だからこそ、わたしの妻として召し入れたのだ。 さあ、あなたの妻を連れて、立ち去ってもらいたい。 20 ファラオは家来たちに命じて、アブラムを、その妻とすべての持ち物と共に送り出させた。
創世記 ロトとの別れ
13
1 アブラムは、妻と共に、すべての持ち物を携え、エジプトを出て再びネゲブ地方へ上った。ロトも一緒であった。 2 アブラムは非常に多くの家畜や金銀を持っていた。 3 ネゲブ地方から更に、ベテルに向って旅を続け、ベテルとアイとの間の、以前に天幕を張った所まで来た。 4 そこは、彼が最初に祭壇を築いて、主の御名を呼んだ場所であった。 5 アブラムと共に旅をしていたロトもまた、羊や牛の群れを飼い、たくさんの天幕を持っていた。 6 その土地は、彼らが一緒に住むには十分ではなかった。 彼らの財産が多すぎたから、一緒に住むことができなかったのである。 7 アブラムの家畜を飼う者たちと、ロトの家畜を飼うものたちとの間に争いが起きた。 そのころ、その地方にはカナン人もペリジ人も住んでいた。 8 アブラムはロトに言った。 「わたしたちは親類どうしだ。わたしとあなたの間ではもちろん、お互いの羊飼いの間でも争うのはやめよう。 9 あなたの前には幾らでも土地があるのだから、ここで別れようではないか。 あなたが左に行くなら、わたしは右に行こう。 あなたが右に行くなら、わたしは左に行こう。」 10 ロトが目を上げて眺めると、ヨルダン川流域の低地一帯は、 主がソドムとゴモラを滅ぼす前であったので、ツォアルに至るまで、主の園のように、エジプトの国のように、見渡すかぎりよく潤っていた。 11 ロトはヨルダン川流域の低地一帯を選んで、東へ移って行った。こうして彼らは、左右に別れた。 12 アブラムはカナン地方に住み、ロトは低地の町々に住んだが、彼はソドムまで天幕を移した。 13 ソドムの住民は邪悪で、主に対して多くの罪を犯していた。 14 主は、ロトが別れて行った後、アブラムに言われた。「さあ、目を上げて、あなたがいる場所から東西南北を見渡しなさい。 15 見えるかぎりの土地をすべて、わたしは永久にあなたとあなたの子孫に与える。 16 あなたの子孫を大地の砂粒のようにする。大地の砂粒が数えきれないように、あなたの子孫も数えきれないであろう。 17 さあ、この土地を縦横に歩き回るがよい。わたしはそれをあなたに与えるから。」 18 アブラムは天幕を移し、ヘブロンにあるマムレの樫の木のところに来て住み、そこに主のために祭壇を築いた。
王との戦い
14
1 シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨク、エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアルが、 2 ソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アドマの王シンアブ、ツェボイムの王シェムエベル、ベラ、すなわちツオワルの王と戦ったとき、 3 これら五人の王は皆、シディムの谷、すなわち塩の海で同盟を結んだ。 4 彼らは十二年間ケドルラオメルに支配されていたが、十三年目に背いたのである。 5 十四年目に、ケドルラオメルとその味方の王たちが来て、アシュテロト・カルナイムでレファイム人を、ハムでズジム人を、シャベ・キルヤタイムでエミル人を、 6 セイルの山地でフリ人人を撃ち、荒れ野に近いエル・バランまで進んだ。 7 彼らは転進して、エン・ミシュパト、すなわちカデシュに向かい、アマレク人の全領土とハツェツオン・タマルに住むアモリ人を撃った。 8 そこで、ソドムの王、ゴモラの王、アドマの王、ツェボイムの王、ベラすなわちツォアルの王は兵を繰り出し、シディムの谷で彼らと戦おうと陣を敷いた。 9 エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアル、シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨクの四人の王に対して、これら五人の王が戦いを挑んだのである。 10 シディムの谷には至るところに天然アスファルトの穴があった。ソドムとゴモラの王は逃げるとき、その穴に落ちた。残りの王は山へ逃れた。 11 ソドムとゴモラの財産や食糧はすべて奪い去られ、 12 ソドムに住んでいたアブラムの甥ロトも、財産もろとも連れ去られた。
ロトの救出
13 逃げ延びた一人の男がヘブライ人アブラムのもとに来て、そのことを知らせた。アブラムは当時、アモリ人マムレ樫の木の傍らに住んでいた。マムレはエシュコルとアネルの兄弟で、彼らはアブラムと同盟を結んでいた。 14 アブラムは、親族の者が捕虜になったと聞いて、彼の家で生まれた奴隷で、訓練を受けた者三百十八人を召集し、ダンまで追跡した。 15 夜、彼と僕たちは分かれて敵を襲い、ダマスコの北のホバまで追跡した。 16 アブラムはすべての財産を取り返し、親族のロトとその財産、女たちやそのほかの人々も取り戻した。
メルキゼデグの祝福
17 アブラムがケドルラオメルとその味方の王たちを撃ち破って帰って来たとき、ソドムの王はシャベの谷、すなわち王の谷まで彼を出迎えた。 18 いと高き神の祭司であったサレムの王メルキゼデクも、パンとぶどう酒を持って来た。 19 彼はアブラムを祝福して言った。「天地の造り主、いと高き神に アブラムは祝福されますように。 20 敵をあなたの手に渡された いと高き神がたたえられますように。」 アブラムはすべての物の十分の一を彼に贈った。 21 ソドムの王はアブラムに、「人はわたしにお返しください。 しかし、財産はお取りください」と言ったが、 22 アブラムはソドムの王に言った。 「わたしは天地の造り主、いと高き?~、主に手を上げて誓います。 23 あなたの物は、たとえ糸一筋、靴ひも一本でも、決していただきません。 『アブラムを裕福にしたのは、このわたしだ』と、あなたに言われたくありません。 24 わたしは何も要りません。 ただ、若い者たちが食べたものと、わたしと共に戦った人々、すなわち、アネルとエシュコルとマムレの分は別です。 彼らには分け前を取らせてください。
神の約束
15
1 これらのことの後で、主の言葉が幻の中でアブラムに臨んだ。 「恐れるな、アブラムよ。 わたしはあなたの盾である。 あなたの受ける報いは非常に大きいであろう。 2 アブラムは尋ねた。 「わが神、主よ。わたしに何をくださるというのですか。わたしには子供がありません。家を継ぐのはダマスコのエリエゼルです。 3 アブラムは言葉をついだ。「御覧のとおり、あなたはわたしに子孫を与えてくださいませんでしたから、家の僕が跡を継ぐことになっています。」 4 見よ、主の言葉があった。「その者があなたの跡を継ぐのではなく、あなたから生まれる者が跡を継ぐ。」 5 主は彼を外に連れ出して言われた。「天を仰いで、星を数えることができるなら、数えてみるがよい。」 そして言われた。 「あなたの子孫はこのようになる。」 6 アブラムは主を信じた。主はそれを彼の義と認められた。 7 主は言われた。 「わたしはあなたをカルデアのウルから導き出した主である。わたしはあなたにこの土地を与え、それを継がせる。」 8 アブラムは尋ねた。 「わが神、主よ。この土地をわたしが継ぐことを、何によって知ることができましょうか。」 9 主は言われた。 「三歳の雌牛と、三歳の雌山羊と、三歳の雄羊と、山鳩と、鳩の雛とをわたしのもとに持ってきなさい。」 10 アブラムはそれらのものをみな持って来て、真っ二つに切り裂き、それぞれを互いに向かい合わせて置いた。 ただ、鳥は切り裂かなかった。 11 はげ鷹がこれらの死体をねらって降りて来ると、アブラムは追い払った。 12 日が沈みかけたころ、アブラムは深い眠りに襲われた。すると、恐ろしい大いなる暗黒が彼に臨んだ。 13 主はアブラムに言われた。 「よく覚えておくがよい。あなたの子孫は異邦の国で寄留者となり、四百年の間奴隷として仕え、苦しめられるであろう。 14 しかしわたしは、彼らが奴隷として仕えるその国民を裁く。
その後、彼らは多くの財産を携えて脱出するであろう。 15 あなた自身は、長寿を全うして葬られ、安らかに先祖のもとに行く。 16 ここに戻ってくるのは、四代目の者たちである。それまではアモリ人の罪が極みに達しないからである。 17 日が沈み、暗闇に覆われたころ、突然、煙を吐く炉と燃える松明が二つに裂かれた動物の間を通り過ぎた。 18 その日、主はアブラムと契約を結んで言われた。 「あなたの子孫にこの土地を与える。エジプトの川から大河ユーフラテスに至るまで、 19 カイン人、ケナズ人、カドモニ人、 20 ヘト人、ペリジ人、レファイム人、 21 アモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人の土地を与える。」
ハガルの逃亡と出産
16
1 アブラムの妻サライには、子供が生まれなかった。彼女には、ハガルというエジプト人の女奴隷がいた。 2 サライはアブラムに言った。 「主はわたしに子供を授けてくださいません。どうぞ、わたしの奴隷のところへ入ってください。わたしは彼女によって、子供を与えられるかもしれません。」 アブラムは、サライの願いを聞き入れた。 3 アブラムの妻サライは、エジプト人の女奴隷ハガルを連れて来て、夫アブラムの側女とした。アブラムがカナン地方に住んでから、十年後のことであった。 4 アブラムはハガルのところに入り、彼女は身ごもった。ところが、自分が身ごもったのを知ると、彼女は女主人を軽んじた。 5 サライはアブラムに言った。 「わたしが不当な目に遭ったのは、あなたのせいです。女奴隷をあなたのふところに与えたのはわたしなのに、彼女は自分が身ごもったのを知ると、わたしを軽んじるようになりました。主がわたしとあなたとの間を裁かれますように。 6 アブラムはサライに答えた。
「あなたの女奴隷はあなたのものだ。好きなようにするがいい。」サライは彼女につらく当たったので、彼女はサライのもとから逃げた。 7 主の御使いが荒れ野の泉のほとり、シュル街道に沿う泉のほとりで彼女と出会って、 8 言った。 「サライの女奴隷ハガルよ。あなたはどこから来て、どこへ行こうとしているのか。」「女主人サライのもとから逃げているところです」と答えると、 9 主の御使いは言った。 「女主人のもとに帰り、従順に仕えなさい。」 10 主の御使いは更に言った。 「わたしは、あなたの子孫を数えきれないほど多く増やす。」 11 主の御使いはまた言った。 「今、あなたは身ごもっている。やがてあなたは男の子を産む。その子をイシュマエルと名付けなさい。主があなたの悩みをお聞きになられたから。 12 彼は野生のろばのような人になる。彼があらゆる人にこぶしを振りかざすので、人々は皆、こぶしを振るう。彼は兄弟すべてに敵対して暮らす。」 13 ハガルは自分に語りかけた主の御名を呼んで、 「あなたこそエル・ロイ(わたしを顧みられる?~)です」と言った。それは、彼女が、「神がわたしを顧みられた後もなお、わたしはここで見続けていたではないか」と言ったからである。 14 そこで、その井戸は、ベエル・ラハイ・ロイと呼ばれるようになった。それはカディシュとベレドの間にある。 15 ハガルはアブラムとの間に男の子を産んだ。アブラムは、ハガルが産んだ男の子をイシュマエルと名付けた。 16 ハガルがイシュマエルを生んだとき、アブラムは八十六歳であった。
創世記 契約と割礼
17
1 アブラムが九十九歳になったとき、主はアブラムに現れて言われた。「わたしは全能の神である。あなたはわたしに従って歩み、全き者となりなさい。 2 わたしは、あなたとの間にわたしの契約を立て、あなたをますます増やすであろう。」 3 アブラムはひれ伏した。神は更に、語りかけて言われた。 4 「これがあなたと結ぶわたしの契約である。あなたは多くの国民の父となる。 5 あなたは、もはやアブラムではなく、アブラハムと名乗りなさい。あなたを多くの国民の父とするからである。 6 わたしは、あなたをますます?栄させ、諸国民の父とする。王となる者たちがあなたから出るであろう。 7 わたしは、あなたとの間に、また後に続く子孫との間に契約を立て、それを永遠の契約とする。そして、あなたとあなたの子孫の神となる。 8 わたしは、あなたが滞在しているこのカナンのすべての土地を、あなたとその子孫に、永久の所有地として与える。わたしは彼らの神となる。」 9 神はまた、アブラムに言われた。「だからあなたも、わたしの契約を守りなさい、あなたも後に続く子孫も。 10 あなたたち、およびあなたの後に続く子孫と、わたしとの間で守るべき契約はこれである。すなわち、あなたたちの男子はすべて、割礼を受ける。 11 包皮の部分を切り取りなさい。これが、わたしとあなたたちとの間の契約のしるしとなる。 12 いつの時代でも、あなたたちの男子はすべて、直系の子孫はもちろんのこと、家で生まれた奴隷も、外国人から買い取った奴隷であなたの子孫でない者も皆、生れてから八日目に割礼を受けなければならない。 13 あなたのお家で生まれた奴隷も、買い取った奴隷も、必ず割礼を受けなければならない。それによって、わたしの契約はあなたの体に記されて永遠の契約となる。 14 包皮の部分を切り取らない無割礼の男がいたなら、その人は民の間から断たれる。わたしの契約を破ったからである。」 15 神はアブラムに言われた。「あなたの妻サライは、名前をサライではなく、サラと呼びなさい。 16 わたしは彼女を祝福し、彼女によってあなたに男の子を与えよう。わたしは彼女を祝福し、諸国民の母とする。諸民族の王となる者たちが彼女から出る。」 17 アブラハムひれ伏した。しかし笑って、ひそかに言った。「百歳の男に子供が生まれるだろうか。九十歳のサラに子供が産めるだろうか。」 18 アブラハムは神に言った。「どうか、イシュマエルが御前に生き永らえますように。」 19 神は言われた。「いや、あなたの妻サラがあなたとの間に男の子を産む。その子をイサク(彼は笑う)と名付けなさい。わたしは彼と契約を立て、彼の子孫のために永遠の契約とする。 20 イシュマエルについての願いも聞き入れよう。必ず、わたしは彼を祝福し、大いに子供を増やし繁栄させる。彼は十二人の首長の父となろう。わたしは彼を大いなる国民とする。 21 しかし、わたしの契約は、来年の今ごろ、サラがあなたとの間に産むイサクと立てる。」 22 神はこう語り終えると、アブラハムを離れて昇って行かれた。 23 アブラハムは、息子のイシュマエルをはじめ、家で生まれた奴隷や買い取った奴隷など、自分の家にいる人々のうち、男子を皆集めて、すぐその日に、神が命じられたとおり包皮に割礼を施した。 24 アブラハムが包皮に割礼を受けたのは、九十九歳、 25 息子イシュマエルが包皮に割礼を受けたのは、十三歳であった。 26 アブラハムと息子のイシュマエルは、すぐその日に割礼を受けた。 27 アブラハムの家の男子は、家で生まれた奴隷も外国人から買い取った奴隷も皆、共に割礼を受けた。
創世記 イサクの誕生の予告
18
1 主はマムレの樫の木の所でアブラハムに現れた。暑い真昼に、アブラハムは天幕の入り口に座っていた。 2 目を上げて見ると、三人の人が彼に向って立っていた。アブラハムはすぐに天幕の入り口から走り出て迎え、地にひれ伏して、 3 言った。「お客様、よろしければ、どうか、僕のもとを通り過ぎないでください。 4 水を少々持ってこさせますから、足を洗って、木陰でどうぞひと休みなさってください。 5 何か召し上がるものを調えますので、疲れをいやしてから、お出かけください。せっかく、僕の所の近くをお通りになったのですから。」その人たちは言った。「では、お言葉どおりにしましょう。」 6 アブラハムは急いで天幕に戻り、サラのところに来て言った。「早く、上等の小麦粉を三セアほどこねて、パン菓子をこしらえなさい。」 7 アブラハムは牛の群れのところへ走って行き、柔らかくておいしそうな子牛を選び、召し使いに渡し、急いで料理をさせた。 8 アブラハムは、凝乳、乳、出来立ての子牛の料理などを選び、彼らの前に並べた。そして、彼らが木陰で食事をしている間、そばに立って給仕をした。 9 彼らはアブラハムに尋ねた。「あなたの妻のサラはどこにいますか。」「はい、天幕の中におります」とアブラハムが答えると、 10 彼らの一人が言った。「わたしは来年の今ごろ、必ずここにまた来ますが、そのころには、あなたの妻のサラに男の子が生まれているでしょう。」サラは、すぐ後ろの天幕の入り口で聞いていた。 11 アブラハムもサラも多くの日を重ねて老人になっており、しかもサラは月のものがとうになくっていた。 12 サラはひそかに笑った。自分は年をとり、もはや楽しみがあるはずもなし、主人も年老いているのに、と思ったのである。13 主はアブラハムに言われた。「なぜサラは笑ったのか。なぜ年をとった自分に子供が生まれるはずがないと思ったのだ。 14 主に不可能なことがあろうか。来年の今ごろ、わたしはここに戻ってくる。そのころ、サラには必ず男の子が生まれている。」 15 サラは恐ろしくなり、打ち消して言った。「わたしは笑いませんでした。」主は言われた。「いや、あなたは確かに笑った。」
創世記 ソドムのための執り成し
16 その人たちはそこを立って、ソドムを見下ろす所まで来た。アブラハムも、彼らを見送るために一緒に行った。 17 主は言われた。「わたしが行おうとしていることをアブラハムに隠す必要があろうか。 18 アブラハムは大きな強い国民になり、世界のすべての国民は彼によって祝福に入る。 19 わたしがアブラハムを選んだのは、彼が息子たちとその子孫に、主の道を守り、主に従って正義を行うよう命じて、主がアブラハムに約束したことを成就するためである。 20 主は言われた。「ソドムとゴモラの罪は非常に重い、と訴える叫びが実に大きい。 21 わたしは降って行き、彼らの行跡が、果たして、わたしに届いた叫びのとおりかどうか見て確かめよう。」 22 その人たちは、更にソドムの方に向かったが、アブラハムはなお、主の御前にいた。 23 アブラハムは進み出て言った。「もことにあなたは、正しい者を悪い者と一緒に滅ぼされるのですか。 24 あの町に正しい者が五十人いるとしても、それでも滅ぼし、その五十人の正しい者のために、町をお赦しにはならないのですか。 25 正しい者を悪い者と一緒に殺し、正しい者を悪い者と同じ目に遭わせるようなことを、あなたがなさるはずはございません。全くありえないことです。全世界を裁くお方は、正義を行われるべきではありませんか。」 26 主は言われた。「もしソドムの町に正しい者が五十人いるならば、その者たちのために、町を全部赦そう。」 27 アブラハムは答えた。「塵にすぎないわたしですが、あえて、わが主に申し上げます。 28 もしかすると、五十人の正しい者に五人足りないかもしれません。それでもあなたは、五人たりないために、町のすべてを滅ぼされますか。」主は言われた。「もし、四十五人いれば滅ぼさない。」 29 アブラハムは重ねて言った。「もしかすると、四十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その四十人のためにわたしはそれをしない」 30 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう少し言わせてください。もしかすると、そこには三十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「もし三十人いるならわたしはそれはしない。」 31 アブラハムは言った。「あえて、わが主に申し上げます。もしかすると、二十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その二十人のためにわたしは滅ぼさない。」 32 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう一度だけ言わせてください。もしかすると、十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その十人のためにわたしは滅ぼさない。」 33 主はアブラハムと語り終えると、去って行かれた。アブラハムも自分の住まいに帰った。
創世記 ソドムの滅亡
19
1 二人の御使いが夕方ソドムに着いたとき、ロトはソドムの門の所に座っていた。ロトは彼らを見ると、立ち上って迎え、地にひれ伏して、 2 言った。 「皆様方、どうぞ僕(しもべ)の家に立ち寄り、足を洗ってお泊りください。彼らは言った。「いや、結構です。わたしたちはこの広場で夜を過ごします。」 3 しかし、ロトがぜひにと勧めたので、彼らはロトの所に立ちよることにし、彼の家を訪ねた。ロトは、酵母を入れないパンを焼いて食事を供し、彼らをもてなした。 4 彼らがまだ床に就かないうちに、ソドムの町の男たちが、若者も年寄りもこぞって押しかけ、家を取り囲んで、 5 わめきたてた。 「今夜、お前のところへ来た連中はどこにいる。ここへ連れてこい。なぶりものにしてやるから。」 6 ロトは、戸口の前にたむろしている男たちのところへ出て行き、後ろの戸を閉めて、 7 言った。 「どうか、皆さん、乱暴なことはしないでください。 8 実は、わたしにはまだ嫁がせていない娘が二人おります。皆さんにその娘たちを差し出しますから、好きなようにしてください。ただ、あの方々には何もしないでください。この家の屋根の下に身を寄せていただいたのですから。」 9 男たちは口々に言った。 「そこをどけ」 「こいつはよそ者のくせに、指図などして。」 「さあ、彼らより先に、お前を痛い目に遭わせてやる。」 そして、ロトに詰め寄って体を押しつけ、戸を破ろうとした。 10 二人の客はそのとき、手を伸ばして、ロトを家の中に引き入れて戸を閉め、 11 戸口の前に入る男たちに、老若を問わず、目つぶしを食わせ、戸口を分からなくした。 12 二人の客はロトに言った。 「ほかに、あなたの身内の人がこの町にいますか。あなたの婿や息子や娘などを皆連れてここから逃げなさい。 13 実は、わたしたちはこの町を滅ぼしに来たのす。大きな叫びが主にもとに届いたので、主は、この町を滅ぼすためにわたしたちを遣わされたのです。」 14 ロトは嫁いだ娘たちの婿のところへ行き、「さあ早くここから逃げるのだ。主がこの町を滅ぼされるからだ」と促したが、婿たちは冗談だと思った。 15 夜が明けるころ、御使いたちはロトをせきたてて言った。「さあ早く、あなたの妻とここにいる二人の娘を連れて行きなさい。さもないと、この町に下る罰の巻き添えになって滅ぼされてしまう。」 16 ロトはためらっていた。主は憐れんで、二人の客にロト、妻、二人の娘の手をとらせて町の外へ避難するようにされた。 17 彼らがロトたちを町外れへ連れ出したとき、主は言われた。 「命がけで逃れよ。後ろを振り返ってはいけない。低地のどこにもとどまるな。山へ逃げなさい。さもないと、滅びることになる。」 18 ロトは言った。 「主よ、できません。 19 あなたは僕(しもべ)に目を留め、慈しみを豊かに示し、命を救おうとしています。しかし、わたしは山まで逃げ延びることはできません。恐らく、災害に巻き込まれて、死んでしまうのでしょう。 20 御覧ください、あの町を。あそこなら近いので、逃げて行けると思います。あれは小さな町です。あそこへ逃げさせてください。あれはほんの小さな町です。どうか、そこでわたしの命を救ってください。」
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2021年10月07日
創世記 ソドムの滅亡 19-17,19-18
創世記 天地の創造
1
1 初めに、神は天地を創造された。 2 地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、?~の靈が水の面を動いていた。 3 ?~は言われた。「光あれ。」こうして、光があった。 4 ?~は光を見て、良しとされた。?~は光と闇を分け、 5 光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第一の日である。6 ?~は言われた。「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。」 7 ?~は大空を造り、大空の下と大空の上に水を分けさせられた。そのようになった。 8 ?~は大空を天と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第二の日である。 9 ?~は言われた。「天の下の水は一つ所に集まれ。乾いた所が現れよ。」そのようになった。 10 神は乾いた所を地と呼び、水の集まった所を海と呼ばれた。神はこれを見て、良しとされた。 11 神は言われた。「地は草を芽生えさせよ。種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける果樹を、地に芽生えさせよ。」そのようになった。 12 地は草を芽生えさせ、それぞれの種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける木を芽生えさせた。?~はこれを見て、良しとされた。 13 夕べがあり、朝があった。第三の日である。 14 神は言われた。「天の大空に光る物があって、昼と夜を分け、季節のしるし、日や年のしるしとなれ。 15 天の大空に光る物があって、地を照らせ。」そのようになった。 16 ?~は二つの大きな光る物と星を造り、大きな方に昼を治めさせ、小さな方に夜を治めさせられた。 17 ?~はそれらを天の大空に置いて、地を照らさせ、 18 昼と夜を治めさせ、光と闇を分けさせられた。?~はこれを見て、良しとされた。 19 夕べがあり、朝があった。第四の日である。 20 ?~は言われた。「生き物が水の中に群がれ。鳥は地の上、天の大空の面を飛べ。」 21 ?~は水に群がるもの、すなわち大きな怪物、うごめく生き物をそれぞれに、また、翼ある鳥をそれぞれに創造された。?~はこれを見て、良しとされた。 22 ?~はそれらのものを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、海の水に満ちよ。鳥は地の上に増えよ。」 23 夕べがあり、朝があった。第五の日である。 24 ?~は言われた。「地は、それぞれの生き物を産み出せ。家畜、這うもの、地の獣をそれぞれに産み出せ。」そのようになった。 25 ?~はそれぞれの地の獣、それぞれの家畜、それぞれの土を這うものを造られた。?~はこれを見て、良しとされた。 26 ?~は言われた。「我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。そして海の魚、空の鳥、家畜、地の獣、地を這うものすべてを支配させよう。」 27 ?~は御自分にかたどって人を創造された。?~にかたどって創造された。男と女に創造された。28 ?~は彼らを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ。」 29 ?~は言われた。「見よ、全地に生える、種を持つ草と種を持つ実をつける木を、すべてあなたたちに与えよう。それがあなたたちの食べ物となる。 30 地の獣、空の鳥、地を這うものなど、すべて命あるものにはあらゆる青草をたべさせよう。」そのようになった。 31 ?~はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった。夕べがあり、朝があった。第六の日である。
2
1 天地万物は完成された。 2 第七の日に、?~は御自分の仕事を完成され、第七の日に、神は御自分の仕事を離れ、安息なさった。 3 この日に?~はすべての創造の仕事を離れ、安息なさったので、第七の日を?~は祝福し、聖別された。 4 これが天地創造の由来である。主なる?~が地と天を造られたとき、 5 地上には野の木も、野の草も生えていなかった。主なる?~が地上に雨をお送りにならなかったからである。また土を耕す人もいなかった。 6 しかし、水が地下から湧き出て、土の面をすべて潤した。 7 主なる?~は、土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった。 8 主なる?~は、東の方のエデンに園を設け、自ら形づくった人をそこに置かれた。 9 主なる?~は、見るからに好ましく、食べるに良いものをもたらすあらゆる木を地に生えいでさせ、また園の中央には、命の木と善悪の知識の木を生えいでさせられた。 10 エデンから一つの川が流れ出ていた。園を潤し、そこで分かれて、四つの川となっていた。 11 第一の川の名はピションで、金を産出するハビラ地方全域を巡っていた。 12 その金は良質であり、そこではまた、琥珀の類やラピス・ラズリも産出した。 13 第二の川の名はギホンで、クシュ地方全域を巡っていた。 14 第三の川の名はチグリスで、アシュルの東の方を流れており、第四の川の名はユーフラテスであった。 15 主なる?~は人を連れて来て、エデンの園に住まわせ、人がそこを耕し、守るようにされた。 16 主なる?~は人に命じて言われた。「園のすべての木から取って食べなさい。 17 ただし、善悪の知識の木からは、決して食べてはならない。食べると必ず死んでしまう。」 18 主なる?~は言われた。「人が一人でいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう。」 19 主なる?~は、野のあらゆる獣、空のあらゆる鳥を土で形づくり、人のところへ持って来て、人がそれぞれどう呼ぶか見ておられた。人が呼ぶと、それはすべて、生き物の名となった。 20 人はあらゆる家畜、空の鳥、野のあらゆる獣に名を付けたが、自分に合う助ける者は見つけることができなかった。 21 主なる?~はそこで、人を深い眠りに落とされた。人が眠り込むと、あばら骨の一部を抜き取り、その跡を肉でふさがれた。 22 そして、人から抜き取ったあばら骨で女を造り上げられた。主なる?~が彼女を人のところへ連れて来られると、 23 人は言った。「ついに、これこそわたしの骨の骨わたしの肉の肉。これこそ、女(イシャー)と呼ぼう まさに、男(イシュ)から取られたものだから。」 24 こういうわけで、男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる。 25 人と妻は二人とも裸であったが、恥ずかしがりはしなかった。
創世記 蛇の誘惑
3
1 主なる?~が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった。蛇は女に言った。「園のどの木からも食べてはいけない、などと神は言われたのか。」 2 女は蛇に答えた。「わたしたちは園の木の果実を食べてよいのです。 3 でも、園の中央に生えている木の果実だけは、食べてはいけない。触れてもいけない、死んではいけないから、と?~様はおっしゃいました。」 4 蛇は女に言った。「決して死ぬことはない。 5 それを食べると、目が開け、?~のように善悪を知るものとなることを?~はご存じなのだ。」 6 女が見ると、その木はいかにもおいしそうで、目を引き付け、賢くなるように唆していた。女は実を取って食べ、一緒にいた男にも渡したので、彼も食べた。 7 二人の目は開け、自分たちが裸であることを知り、二人はいちじくの葉をつづり合わせ、腰を覆うものとした。 8 その日、風の吹くころ、主なる?~が園の中を歩く音が聞こえてきた。アダムと女が、主なる?~の顔を避けて、園の木の間に隠れると、 9 主なる?~はアダムを呼ばれた。「どこにいるのか」 10 彼は答えた。「あなたの足音が園の中に聞こえたので、恐ろしくなり、隠れております。わたしは裸ですから。」 11 ?~は言われた。「お前が裸であることを誰が告げたのか。取って食べるなと命じた木から食べたのか。」 12 アダムは答えた。「あなたがわたしと共にいるようにしてくださった女が、木から取って与えたので、食べました。」 13 主なる?~は女に向かって言われた。「何ということをしたのか。」女は答えた。「蛇がだましたので、食べてしまいました。」 14 主なる?~は、蛇に向かって言われた。「このようなことをしたお前はあらゆる家畜、あらゆる野の獣の中で呪われるものとなった。お前は、生涯這いまわり、塵を食らう。 15 お前と女、お前の子孫と女の子孫の間にわたしは敵意を置く。彼はお前の頭を砕き お前は彼のかかとを砕く。」 16 ?~は女に向かって言われた。「お前のはらみの苦しみを大きなものにする。お前は、苦しんで子を産む。お前は男を求め 彼はお前を支配する。」 17 ?~はアダムに向かって言われた。「お前は女の声に従い 取って食べるなと命じた木から食べた。お前のゆえに、土は呪われるものとなった。お前は、生涯食べ物を得ようと苦しむ。 18 お前に対して 土は茨とあざみを生えいでさせる 野の草を食べようとするお前に。 19 お前は顔に汗を流してパンを得る 土に返るときまで。お前がそこから取られた土に。塵にすぎないお前は塵に返る。」 20 アダムは女をエバ(命)と名付けた。彼女がすべて命あるものの母となったからである。 21 主なる?~は、アダムと女に皮の衣を作って着せられた。 22 主なる?~は言われた。「人は我々の一人のように、善悪を知る者となった。今は、手を伸ばして命の木からも取って食べ、永遠に生きる者となるおそれがある。」 23 主なる?~は、彼をエデンの園から追い出し、彼に、自分がそこから取られた土を耕させることにされた。 24 こうしてアダムを追放し、命の木に至る道を守るために、エデンの園の東にケルビムと、きらめく剣の炎を置かれた。
創世記 カインとアペル
4
1 さて、アダムは妻エバを知った。彼女は身ごもってカインを産み、「わたしは主によって男子を得た」と言った。 2 彼女はまたその弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。 3 時を経て、カインは土の実りを主のもとに献げ物として持って来た。 4 アベルは羊の群れの中から肥えた初子を持って来た。主はアベルとその献げ物に目を留められたが、 5 カインとその献げ物には目を留められなかった。カインは激しく怒って顔を伏せた。 6 主はカインに言われた。「どうして怒るのか。どうして顔を伏せるのか。 7 もしお前が正しいなら、顔を上げられるはずではないか。正しくないなら、罪は戸口で待ち伏せており、お前を求める。お前はそれを支配せねばならない。」 8 カインが弟アベルに言葉をかけ、二人が野原に着いたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。 9 主はカインに言われた。「お前の弟アベルは、どこにいるのか。」カインは答えた。「知りません。わたしは弟の番人でしょうか。」 10 主は言われた。「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。 11 今、お前は呪われる者となった。お前が流した弟の血を、口を開けて飲み込んだ土よりもなお、呪われる。 12 土を耕しても、土はもはやお前のために作物を産み出すことはない。お前は地上をさまよい、さすらう者となる。」 13 カインは主に言った。「わたしの罪は重すぎて負いきれません。 14 今日、あなたがわたしをこの土地から追放なさり、わたしが御顔から隠されて、地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう。」 15 主はカインに言われた。「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。 16 カインは主の前を去り、エデンの東、ノド(さすらい)の地に住んだ。 17 カインは妻を知った。彼女は身ごもってエノクを産んだ。カインは町を建てていたが、その町を息子の名前にちなんでエノクと名付けた。 18 エノクにはイラドが生まれた。イラドはメフヤエルの父となり、メフヤエルはメトシャエルの父となり、メトシャエルはレメクの父となった。
19 レメクは二人の妻をめとった。一人はアダ、もう一人はツィラと言った。 20 アダはヤバルを産んだ。ヤバルは、家畜を飼い天幕に住む者の先祖となった。 21 その弟はユバルといい、竪琴や笛を奏でる者すべての先祖となった。 22 ツィラもまた、トバル・カインを産んだ。彼は青銅や鉄でさまざまの道具を作る者となった。トバル・カインの妹はナアマといった。 23 さて、レメクは妻に言った。「アダとツィラよ、わが声を聞け。レメクの妻たちよ、わが言葉に耳を傾けよ。わたしは傷の報いに男を殺し 打ち傷の報いに若者を殺す。 24 カインのための復讐が七倍なら レメクのためには七十七倍。」 25 再び、アダムは妻を知った。彼女は男の子を産み、セトと名付けた。カインがアベルを殺したので、?~が彼に代わる子を授け(シャト)られたからである。 26 セトにも男の子が生まれた。彼はその子をエノシュと名付けた。主の御名を呼び始めたのは、この時代のことである。
創世記 アダムの系図
5
1 これはアダムの系図の書である。?~は人を創造された日、?~に似せてこれを造られ、 2 男と女に創造された。創造の日に、彼らを祝福されて、人と名付けられた。 3 アダムは百三十歳になったとき、自分に似た、自分にかたどった男の子をもうけた。アダムはその子をセトと名付けた。 4 アダムは、セトが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 5 アダムは九百三十年生き、そして死んだ。 6 セトは百五歳になったとき、エノシュをもうけた。 7 セトはエノシュが生まれた後八百七年生きて、息子や娘をもうけた。 8 セトは九百十二年生き、そして死んだ。 9 エノシュは九十歳になったとき、ケナンをもうけた。 10 エノシュは、ケナンが生まれた後八百十五年生きて、息子や娘をもうけた。 11 エノシュは九百五年生き、そして死んだ。 12 ケナンは七十歳になったとき、マハラルエルをもうけた。 13 ケナンはマハラルエルが生まれた後八百四十年生きて、息子や娘をもうけた。 14 ケナンは九百十年生き、そして死んだ。 15 マハラルエルは六十五歳になったとき、イエレドをもうけた。 16 マハラルエルは、イエレドが生まれた後八百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 17 マハラルエルは八百九十五年生き、そして死んだ。 18 イエレドは百六十二歳になったとき、エノクをもうけた。 19 イエレドは、エノクが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 20 イエレドは九百六十二年生き、そして死んだ。 21 エノクは六十五歳になったとき、メトシェラもうけた。 22 エノクは、メトシェラが生まれた後、三百年?~と共に歩み、息子や娘をもうけた。 23 エノクは三百六十五年生きた。 24 エノクは?~と共に歩み、?~が取られたのでいなくなった。 25 メトシェラは百八十七歳になったとき、レメクをもうけた。 26 メトシェラは、レメクが生まれた後七百八十二年生きて、息子や娘をもうけた。 27 メトシェラは九百六十九年生き、そして死んだ。 28 レメクは百八十二歳になったとき、男の子をもうけた。 29 彼は、「主の呪いを受けた大地で働く我々の手の苦労を、この子は慰めてくれるだろう」と言って、その子をノア(慰め)と名付けた。 30 レメクは、ノアが生まれた後五百九十五年生きて、息子や娘をもうけた。 31 レメクは七百七十七年生き、そして死んだ。 32 ノアは五百歳になったとき、セム ハム ヤフェトをもうけた。
創世記 洪水
6
1 さて、地上に人が増え始め、娘たちが生まれた。 2 ?~の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、おのおの選んだ者を妻にした。 3 主は言われた。 「わたしの霊は人の中に永久にとどまるべきではない。人は肉にすぎないのだから。」こうして、人の一生は百二十年となった。 4 当時もその後も、地上にはネフィリムがいた。これは、?~の子らが人の娘たちのところに入って産ませた者であり、大昔の名高い英雄たちであった。 5 主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、 6 地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた。 7 主は言われた。 「わたしは人を創造したが、これを地上からぬぐい去ろう。人だけでなく、家畜も這うものも空の鳥も。わたしはこれらを造ったことを後悔する。」 8 しかし、ノアは主の好意を得た。 9 これはノアの物語である。その世代の中で、ノアは?~に従う無垢な人であった。ノアは?~と共に歩んだ。 10 ノアには三人の息子、セム ハム ヤフェトが生まれた。 11 この地は?~の前に堕落し、不法に満ちていた。 12 ?~は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。 13 ?~はノアに言われた。「すべて肉なるものを終わらせる時がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす。 14 あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟には小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。 15 次のようにしてそれを造りなさい。箱舟の長さを三百アンマ、幅を五十アンマ、高さを三十アンマにし、 16 箱舟に明かり取りを造り、上から一アンマにして、それを仕上げなさい。箱舟の側面には戸口を造りなさい。また、一階と二階と三階を造りなさい。 17 見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊をもつ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべてのものは息絶える。 18 わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。 19 また、すべて命あるもの、すべて肉なるものから、二つずつ箱舟に連れて入り、あなたと共に生き延びるようにしなさい。それらは、雄と雌でなければならない。 20 それぞれの鳥、それぞれの家畜、それぞれの地を這うものが、二つずつあなたのところへ来て、生き延びるようにしなさい。 21 更に、食べられる物はすべてあなたのところに集め、あなたと彼らの食料としなさい。」 22 ノアは、すべて?~が命じられたとおりに果たした。
7
1 主はノアに言われた。「さあ、あなたとあなたの家族は皆、箱舟に入りなさい。この世代の中であなただけはわたしに従う人だと、わたしは認めている。 2 あなたは清い動物をすべて七つがい取り、また、清くない動物をすべて一つがいずつ取りなさい 3 空の鳥も七つがい取りなさい。全地の面に子孫が生き続けるように。 4 七日の後、わたしは四十日四十夜地上に雨を降らせ、わたしが造ったすべての生き物を地の面からぬぐい去ることにした。」 5 ノアはすべて主が命じられたとおりにした。 6 ノアが六百歳のとき、洪水が地上に起こり、水が地の上にみなぎった。 7 ノアは妻子や嫁たちと共に洪水を免れようと箱舟に入った。 8 清い動物も清くない動物も、鳥も地を這うものもすべて、 9 二つずつ箱舟のノアのもとに来た。それは?~がノアに命じられたとおりに、雄と雌であった。 10 七日が過ぎて、洪水が地上起こった。 11 ノアの生涯の第六百年、第二の月の十七日、この日、大いなる深淵の源がことごとく裂け、天の窓が開かれた。 12 雨が四十日四十夜地上に降り続いたが、 13 まさにこの日、ノアも、息子のセム、ハム、ヤフェト、ノアの妻、この三人の息子の嫁たちも、箱舟に入った。 14 彼らと共にそれぞれの獣、それぞれの家畜、それぞれの地を這うもの、それぞれの鳥、小鳥や翼のあるものすべて、 15 命の霊をもつ肉なるものは、二つずつノアのもとに来て箱舟に入った。 16 ?~が命じられたとおりに、すべて肉なるものの雄と雌とが来た。主は、ノアの後ろで戸を閉ざされた。 17 洪水は四十日間地上を覆った。水は次第に増して箱舟を押し上げ、箱舟は大地を離れて浮かんだ。 18 水は勢力を増し、地の上に大いにみなぎり、箱舟は水の面を漂った。 19 水はますます勢いを加えて地上にみなぎり、およそ天の下にある高い山はすべて覆われた。 20 水は勢い増して更にその上十五アンマに達し、山々を覆った。 21 地上で動いていた肉なるものはすべて、鳥も家畜も獣も地に群がり這うものも人も、ことごとく息絶えた。 22 乾いた地のすべてのもののうち、その鼻に命の息と霊のあるものはことごとく死んだ。 23 地の面にいた生き物はすべて、人をはじめ、家畜、這うもの、空の鳥に至るまでぬぐい去られた。彼らは大地からぬぐい去られ、ノアと、彼と共に箱舟にいたものだけが残った。 24 水は百五十日の間、地上で勢いを失わなかった。
8
1 神は、ノアと彼と共に箱舟にいたすべての獣とすべての家畜を御心に留め、地の上に風を吹かせられたので、水が減り始めた。 2 また、深淵の源と天の窓が閉じられたので、天からの雨は降りやみ、 3 水は地上からひいて行った。百五十日の後には水が減って、 4 第七の月の十七日に箱舟はアララト山の上に止まった。 5 水はますます減って第十の月になり、第十の月の一日には山々の頂が現れた。 6 四十日たって、ノアは自分が造った箱舟の窓を開き、烏を放した。烏は飛び立ったが、地上の水が乾くのを待って、出たり入ったりした。 8 ノアは鳩を彼のもとから放して、地の面から水がひいたかどうかを確かめようとした。 9 しかし、鳩は止まる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰って来た。水がまだ全地の面を覆っていたからである。ノアは手を差し伸べて鳩を捕らえ、箱舟の自分のもとに戻した。 10 更に七日待って、彼は再び鳩を箱舟から放した。 11 鳩は夕方になってノアのもとに帰って来た。見よ、鳩はくちばしにオリーブの葉をくわえていた。ノアは水が地上からひいたことを知った。 12 彼は更に七日待って、鳩を放した。鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。 13 ノアが六百一歳のとき、最初の月の一日に、地上の水は乾いた。ノアは箱舟の覆いを取り外して眺めた。見よ、地の面は乾いていた。 14 第二の月の二十七日になると、地はすっかり乾いた。 15 神はノアに仰せになった。 「さあ、あなたもあなたの妻も、息子も嫁も、皆一緒に箱舟から出なさい。 17 すべて肉なるもののうちからあなたのもとに来たすべての動物、鳥も家畜も地を這うものも一緒に連れ出し、地に群がり、地上で子を産み、増えるようにしなさい。」 18 そこで、ノアは息子や妻や嫁と共に外へ出た。 19 獣、這うもの、鳥、地に群がるもの、それぞれすべて箱舟から出た。 20 ノアは主のために祭壇を築いた。そしてすべての清い家畜と清い鳥のうちから取り、焼き尽くす捧げ物として祭壇の上にささげた。 21 主は宥めの香りをかいで、御心に言われた。「人に対して大地を呪うことは二度とすまい。人が心に思うことは、幼いときから悪いのだ。わたしは、この度したように生き物をことごとく打つことは、二度とすまい。 22 地の続くかぎり、種蒔きも刈り入れも 寒さも暑さも、夏も冬も 昼も夜も、やむことはない。」
創世記 祝福と契約
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1 ?~はノアと彼の息子たちを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちよ。 2 地のすべての獣と空のすべての鳥は、地を這うすべてのものと海のすべての魚と共に、あなたたちの前に恐れおののき、あなたたちの手にゆだねられる。 3 動いている命あるものは、すべてあなたたちの食糧とするがよい。わたしはこれらすべてのものを、青草と同じようにあなたたちに与える。 4 ただし、肉は命である血を含んだまま食べてはならない。 5 また、あなたたちの命である血が流された場合、わたしは賠償を要求する。いかなる獣からも要求する。人間どうしの血については、人間から人間の命を賠償として要求する。 6 人の血を流す者は 人によって自分の血を流される。人は?~にかたどって造られたからだ。 7 あなたたちは産めよ、増えよ 地に群がり、地に増えよ。」 8 ?~はノアと彼の息子たちに言われた。 9 「わたしは、あなたたちと、そして後に続く子孫と、契約を立てる。 10 あなたたちと共にいるすべての生き物、またあなたたちと共にいる鳥や家畜や地のすべての獣など、箱舟から出たすべてのもののみならず、地のすべての獣と契約を立てる。 11 わたしがあなたたちと契約を立てたならば、二度と洪水によって肉なるものが滅ぼされることはなく、洪水が起こって地を滅ぼすことも決してない。」 12 更に?~は言われた。「あなたたちならびにあなたたちと共にいるすべての生き物と、代々(よよ)とこしえにわたしが立てる契約のしるしはこれである。 13 すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立てた契約のしるしとなる。 14 わたしが地の上に雲を湧き起こらせ、雲の中に虹が現れると、 15 わたしは、わたしとあなたたちならびにすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた契約に心を留める。水が洪水となって、肉なるものをすべて滅ぼすことは決してない。 16 雲の中に虹が現れると、わたしはそれを見て、神と地上のすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた永遠の契約に心をと留める。」 17 ?~はノアに言われた。「これが、わたしと地上のすべて肉なるものとの間にたてた契約のしるしである。」
創世記 ノアと息子たち
18 箱舟から出たノアの息子は、セム、ハム、ヤフェトであった。ハムはカナンの父である。 19 この三人がノアの息子で、全世界の人々は彼らから出て広がったのである。 20 さて、ノアは農夫となり、ぶどう畑を作った。 21 あるとき、ノアはぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。 22 カナンの父ハムは、自分の父の裸を見て、外にいた二人の兄弟に告げた。 23 セムとヤフェトは着物を取って自分たちの肩に掛け、後ろ向きに歩いて行き、父の裸を覆った。二人は顔を背けたままで、父の裸を見なかった。 24 ノアは酔いからさめると、末の息子がしたことを知り、 25 こう言った。「カナンは呪われよ 奴隷の奴隷となり、兄たちに仕えよ。」 26 また言った。「セムの神、主をたたえよ。 カナンはセムの奴隷となれ。
27 神がヤフェトの土地を広げ(ヤフェト) セムの天幕に住まわせ カナンはその奴隷となれ。」 28 ノアは、洪水の後三百五十年生きた。 29 ノアは九百五十歳になって、死んだ。
創世記 ノアの子孫
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1 ノアの息子、セム、ハム、ヤフェトの系図は次のとおりである。洪水の後、彼らに息子が生まれた。 2 ヤフェトの子孫はゴメル、マゴグ、メディア、ヤワン、トバル、メシェク、ティラスであった。 3 ゴメルの子孫は、アシュケナズ、リファト、トガルマであった。 4 ヤワンの子孫は、エリシャ、タルシシュ、キティム、ロダニムであった。 5 海沿いの国々は、彼らから出て、それぞれの地に、その言語、氏族、民族に従って住むようになった。 6 ハムの子孫は、クシュ、エジプト、プト、カナンであった。 7 クシュの子孫はセバ、ハビラ、サブタ、ラマ、サブテカであり、ラマの子孫はシェバとデダンであった。 8 クシュにはまた、ニムロドが生まれた。ニムロドは地上で最初の勇士となった。 9 彼は、主の御前に勇敢な狩人であり、「主の御前に勇敢な狩人ニムドロのようだ」という言い方がある。 10 彼の王国の主な町は、バベル、ウルク、アッカドであり、それらはすべてシンアルの地にあった。 11 彼はその地方からアッシリに進み、ニネベ、レホボト・イル、カラ、 12 レセンを建てた。レセンはニネベとカラとの間にある、非常に大きな町であった。 13 エジプトにはリディア人、アルミナ人、レハビム人、ナフトヒム人、 14 上エジプト人、カスルヒム人、カフトル人が生まれた。このカフトル人からペリシテ人が出た。
15 カナンには長男シドンとヘト、 16 また、エブス人、アモリ人、ギルガシ人、 17 ヒビ人、アルキ人、シニ人、 18 アルワド人、フェマリ人、ハマト人が生まれた。その後、カナン人の諸氏族が広がった。 19 カナン人の領土は、シドンから南下してゲラルを経てガザまでを含み、更に、ソドム、ゴモラ、アドマ、ツェボイムを経てラシャまでを含んだ。 20 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたハムの子孫である。 21 セムにもまた子供が生まれた。彼はエベルのすべての子孫の先祖であり、ヤフェトの兄であった。 22 セムの子孫はエラム、アシュル、アルパクシャド、ルド、アラムであった。 23 アラムの子孫は、ウツ、フル、ゲテル、マシュであった。 24 アルパクシャドにはシェラが生まれ、シェラにはエベルが生まれた。 25 エベルには二人の息子が生まれた。ひとりの名は、その時代に土地が分けられた(パラグ)ので、ペレグといい、その兄弟はヨクタンといった。 26 ヨクタンには、アルモダド、シェレフ、ハツァルマベト、イエラ、 27 ハドラム、ウザル、ディクラ、 28 オバル、アビマエル、シェバ、 29 オフィル、ハビラ、ヨバブが生まれた。これらは皆、ヨクタンの息子であった。 30 彼らはメシャからセファルに至る東の高原地帯に住んでいた。 31 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたセムの子孫である。 32 ノアの子孫である諸氏族を、民族ごとの系図にまとめると以上のようになる。地上の諸民族は洪水の後、彼らから分かれ出た。
創世記 バベルの塔
11
1 世界中は同じ言葉を使って、同じように話していた。 2 東の方から移動してきた人々は、シンアルの地に平野を見つけ、そこに住み着いた。 3 彼らは、「れんがを作り、それをよく焼こう」と話し合った。石の代わりにれんがを、しっくいの代わりにアスファルトを用いた。 4 彼らは、「さあ 天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。 5 主は降って来て、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、 6 言われた。「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。 7 我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」 8 主は彼らをそこから全地に散らされたので、彼らはこの町の建設をやめた。 9 こういうわけで、この町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ、また、主がそこから彼らを全地に散らされたからである。
創世記 セムの系図
10 セムの系図は次のとおりである。セムが百歳になったとき、アルバクシャドが生まれた。それは洪水の二年後のことであった。 11 セムは、アルパクシャドが生まれた後五百年生きて、息子や娘をもうけた。 12 アルパクシャドが三十五歳になったとき、シェラが生まれた。 13 アルパクシャドは、シェラが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 14 シェラが三十歳になったとき、エベルが生まれた。 15 シェラは、エベルが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 16 エベルが三十四歳になったとき、ぺレグが生まれた。 17 エベルは、ぺレグが生まれた後四百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 18 ぺレグが三十歳になったとき、レウが生まれた。 19 ぺレグは、レウが生まれた後二百九年生きて、息子や娘をもうけた。 20 レウが三十二歳になったとき、セルグが生まれた。 21 レウは、セルグが生まれた後二百七年生きて、息子や娘をもうけた。 22 セルグ三十歳なったとき、ナホルが生まれた。 23 セルグは、ナホルが生まれた後二百年生きて、息子や娘をもうけた。 24 ナホルが二十九歳になったとき、テラが生まれた。 25 ナホルは、テラが生まれた後百十九年生きて、息子や娘をもうけた。 26 テラが七十歳になったとき、アブラム、ナホル、ハランが生まれた。
創世記 テラの系図
27 テラの系図は次のとおりである。テラにはアブラム、ナホル、ハランが生まれた。ハランにはロトが生まれた。 28 ハランは父のテラより先に、故郷カルデアのウルで死んだ。 29 アブラムとナホルはそれぞれ妻をめとった。アブラムの妻の名はサライ、ナホルの妻の妻の名はミルカといった。ミルカはハランの娘である。ハランはミルカとイスカの父であった。 30 サライは不妊の女で、子供ができなかった。 31 テラは、息子アブラムと、ハランの息子で自分の孫であるロト、および息子アブラムの妻で自分の嫁であるサライを連れて、カルデアのウルを出発し、カナン地方に向った。彼らはハランまで来ると、そこにとどまった。 32 テラは二百五年の生涯を終えて、ハランで死んだ。
創世記 アブラムの召命と移住
12
1 主はアブラムに言われた。「あなたは生まれ故郷 父の家を離れて わたしが示す地に行きなさい 2 わたしはあなたを大いなる国民にし あなたを祝福し あなたに名を高める 祝福の源となるように 3 あなたを祝福する人をわたしは祝福し あなたを呪う者をわたしは呪う。 地上の氏族はすべて あなたによって祝福に入る。」 4 アブラムは 主の言葉に従って旅立った。ロトも共に行った。アブラムは、ハランを出発したとき七十五歳であった。 5 アブラムは妻のサライ、甥のロトを連れ、蓄えた財産をすべて携え、ハランで加わった人々と共にカナン地方へ向かって出発し、カナン地方入った。 6 アブラムはその地を通り、シケムの聖所、モレの樫の木まで来た。当時、その地方にはカナン人が住んでいた。 7 主はアブラムに現れて、言われた。「あなたの子孫のこの地を与える」アブラムは、彼に現れた主のために、そこに祭壇を築いた。 8 アブラムは、そこからベテルの東の山へ移り、西にベテル、東にアイを望む所に天幕を張って、そこにも主のために祭壇を築き、主の御名を呼んだ。 9 アブラムは更に旅を続け、ネゲブ地方に移った。
創世記 エジプト滞在
10 その地方に飢饉があった。 アブラムは、その地方の飢饉がひどかったので、エジプトに下り、そこに滞在することにした。 11 エジプトに入ろうしたとき、妻サライに言った。 「あなたが美しいのを、わたしはよく知っている。 12 エジプト人があなたを見たら、『この女はあの男の妻だ』と言って、わたしを殺し、あなたを生かしておくにちがいない。 13 どうか、わたしの妹だ、と言ってください。 そうすれば、わたしはあなたのゆえに幸いになり、あなたのお陰で命も助かるだろう。」 14 アブラムがエジプトに入ると、エジプト人はサライを見て、大変美しいと思った。 15 ファラオの家臣たちも彼女を見て、ファラオに彼女のことを褒めたので、サライはファラオの宮廷に召し入れられた 16 アブラムも彼女のゆえに幸いを受け、羊の群れ、牛の群れ、ろば、男女の奴隷、雌ろば、らくだなどを与えられた。 17 ところが主は、アブラムの妻サライのことで、ファラオと宮廷の人々を恐ろしい病気にかからせた。 18 ファラオはアブラムを呼び寄せて言った。 「あなたはわたしに何ということをしたのか。 なぜ、あの婦人は自分の妻だと、言わなかったのか。 19 なぜ、『わたしの妹です』などと言ったのか。 だからこそ、わたしの妻として召し入れたのだ。 さあ、あなたの妻を連れて、立ち去ってもらいたい。 20 ファラオは家来たちに命じて、アブラムを、その妻とすべての持ち物と共に送り出させた。
創世記 ロトとの別れ
13
1 アブラムは、妻と共に、すべての持ち物を携え、エジプトを出て再びネゲブ地方へ上った。ロトも一緒であった。 2 アブラムは非常に多くの家畜や金銀を持っていた。 3 ネゲブ地方から更に、ベテルに向って旅を続け、ベテルとアイとの間の、以前に天幕を張った所まで来た。 4 そこは、彼が最初に祭壇を築いて、主の御名を呼んだ場所であった。 5 アブラムと共に旅をしていたロトもまた、羊や牛の群れを飼い、たくさんの天幕を持っていた。 6 その土地は、彼らが一緒に住むには十分ではなかった。 彼らの財産が多すぎたから、一緒に住むことができなかったのである。 7 アブラムの家畜を飼う者たちと、ロトの家畜を飼うものたちとの間に争いが起きた。 そのころ、その地方にはカナン人もペリジ人も住んでいた。 8 アブラムはロトに言った。 「わたしたちは親類どうしだ。わたしとあなたの間ではもちろん、お互いの羊飼いの間でも争うのはやめよう。 9 あなたの前には幾らでも土地があるのだから、ここで別れようではないか。 あなたが左に行くなら、わたしは右に行こう。 あなたが右に行くなら、わたしは左に行こう。」 10 ロトが目を上げて眺めると、ヨルダン川流域の低地一帯は、 主がソドムとゴモラを滅ぼす前であったので、ツォアルに至るまで、主の園のように、エジプトの国のように、見渡すかぎりよく潤っていた。 11 ロトはヨルダン川流域の低地一帯を選んで、東へ移って行った。こうして彼らは、左右に別れた。 12 アブラムはカナン地方に住み、ロトは低地の町々に住んだが、彼はソドムまで天幕を移した。 13 ソドムの住民は邪悪で、主に対して多くの罪を犯していた。 14 主は、ロトが別れて行った後、アブラムに言われた。「さあ、目を上げて、あなたがいる場所から東西南北を見渡しなさい。 15 見えるかぎりの土地をすべて、わたしは永久にあなたとあなたの子孫に与える。 16 あなたの子孫を大地の砂粒のようにする。大地の砂粒が数えきれないように、あなたの子孫も数えきれないであろう。 17 さあ、この土地を縦横に歩き回るがよい。わたしはそれをあなたに与えるから。」 18 アブラムは天幕を移し、ヘブロンにあるマムレの樫の木のところに来て住み、そこに主のために祭壇を築いた。
王との戦い
14
1 シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨク、エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアルが、 2 ソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アドマの王シンアブ、ツェボイムの王シェムエベル、ベラ、すなわちツオワルの王と戦ったとき、 3 これら五人の王は皆、シディムの谷、すなわち塩の海で同盟を結んだ。 4 彼らは十二年間ケドルラオメルに支配されていたが、十三年目に背いたのである。 5 十四年目に、ケドルラオメルとその味方の王たちが来て、アシュテロト・カルナイムでレファイム人を、ハムでズジム人を、シャベ・キルヤタイムでエミル人を、 6 セイルの山地でフリ人人を撃ち、荒れ野に近いエル・バランまで進んだ。 7 彼らは転進して、エン・ミシュパト、すなわちカデシュに向かい、アマレク人の全領土とハツェツオン・タマルに住むアモリ人を撃った。 8 そこで、ソドムの王、ゴモラの王、アドマの王、ツェボイムの王、ベラすなわちツォアルの王は兵を繰り出し、シディムの谷で彼らと戦おうと陣を敷いた。 9 エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアル、シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨクの四人の王に対して、これら五人の王が戦いを挑んだのである。 10 シディムの谷には至るところに天然アスファルトの穴があった。ソドムとゴモラの王は逃げるとき、その穴に落ちた。残りの王は山へ逃れた。 11 ソドムとゴモラの財産や食糧はすべて奪い去られ、 12 ソドムに住んでいたアブラムの甥ロトも、財産もろとも連れ去られた。
ロトの救出
13 逃げ延びた一人の男がヘブライ人アブラムのもとに来て、そのことを知らせた。アブラムは当時、アモリ人マムレ樫の木の傍らに住んでいた。マムレはエシュコルとアネルの兄弟で、彼らはアブラムと同盟を結んでいた。 14 アブラムは、親族の者が捕虜になったと聞いて、彼の家で生まれた奴隷で、訓練を受けた者三百十八人を召集し、ダンまで追跡した。 15 夜、彼と僕たちは分かれて敵を襲い、ダマスコの北のホバまで追跡した。 16 アブラムはすべての財産を取り返し、親族のロトとその財産、女たちやそのほかの人々も取り戻した。
メルキゼデグの祝福
17 アブラムがケドルラオメルとその味方の王たちを撃ち破って帰って来たとき、ソドムの王はシャベの谷、すなわち王の谷まで彼を出迎えた。 18 いと高き神の祭司であったサレムの王メルキゼデクも、パンとぶどう酒を持って来た。 19 彼はアブラムを祝福して言った。「天地の造り主、いと高き神に アブラムは祝福されますように。 20 敵をあなたの手に渡された いと高き神がたたえられますように。」 アブラムはすべての物の十分の一を彼に贈った。 21 ソドムの王はアブラムに、「人はわたしにお返しください。 しかし、財産はお取りください」と言ったが、 22 アブラムはソドムの王に言った。 「わたしは天地の造り主、いと高き?~、主に手を上げて誓います。 23 あなたの物は、たとえ糸一筋、靴ひも一本でも、決していただきません。 『アブラムを裕福にしたのは、このわたしだ』と、あなたに言われたくありません。 24 わたしは何も要りません。 ただ、若い者たちが食べたものと、わたしと共に戦った人々、すなわち、アネルとエシュコルとマムレの分は別です。 彼らには分け前を取らせてください。
神の約束
15
1 これらのことの後で、主の言葉が幻の中でアブラムに臨んだ。 「恐れるな、アブラムよ。 わたしはあなたの盾である。 あなたの受ける報いは非常に大きいであろう。 2 アブラムは尋ねた。 「わが神、主よ。わたしに何をくださるというのですか。わたしには子供がありません。家を継ぐのはダマスコのエリエゼルです。 3 アブラムは言葉をついだ。「御覧のとおり、あなたはわたしに子孫を与えてくださいませんでしたから、家の僕が跡を継ぐことになっています。」 4 見よ、主の言葉があった。「その者があなたの跡を継ぐのではなく、あなたから生まれる者が跡を継ぐ。」 5 主は彼を外に連れ出して言われた。「天を仰いで、星を数えることができるなら、数えてみるがよい。」 そして言われた。 「あなたの子孫はこのようになる。」 6 アブラムは主を信じた。主はそれを彼の義と認められた。 7 主は言われた。 「わたしはあなたをカルデアのウルから導き出した主である。わたしはあなたにこの土地を与え、それを継がせる。」 8 アブラムは尋ねた。 「わが神、主よ。この土地をわたしが継ぐことを、何によって知ることができましょうか。」 9 主は言われた。 「三歳の雌牛と、三歳の雌山羊と、三歳の雄羊と、山鳩と、鳩の雛とをわたしのもとに持ってきなさい。」 10 アブラムはそれらのものをみな持って来て、真っ二つに切り裂き、それぞれを互いに向かい合わせて置いた。 ただ、鳥は切り裂かなかった。 11 はげ鷹がこれらの死体をねらって降りて来ると、アブラムは追い払った。 12 日が沈みかけたころ、アブラムは深い眠りに襲われた。すると、恐ろしい大いなる暗黒が彼に臨んだ。 13 主はアブラムに言われた。 「よく覚えておくがよい。あなたの子孫は異邦の国で寄留者となり、四百年の間奴隷として仕え、苦しめられるであろう。 14 しかしわたしは、彼らが奴隷として仕えるその国民を裁く。
その後、彼らは多くの財産を携えて脱出するであろう。 15 あなた自身は、長寿を全うして葬られ、安らかに先祖のもとに行く。 16 ここに戻ってくるのは、四代目の者たちである。それまではアモリ人の罪が極みに達しないからである。 17 日が沈み、暗闇に覆われたころ、突然、煙を吐く炉と燃える松明が二つに裂かれた動物の間を通り過ぎた。 18 その日、主はアブラムと契約を結んで言われた。 「あなたの子孫にこの土地を与える。エジプトの川から大河ユーフラテスに至るまで、 19 カイン人、ケナズ人、カドモニ人、 20 ヘト人、ペリジ人、レファイム人、 21 アモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人の土地を与える。」
創世記 契約と割礼
17
1 アブラムが九十九歳になったとき、主はアブラムに現れて言われた。「わたしは全能の神である。あなたはわたしに従って歩み、全き者となりなさい。 2 わたしは、あなたとの間にわたしの契約を立て、あなたをますます増やすであろう。」 3 アブラムはひれ伏した。神は更に、語りかけて言われた。 4 「これがあなたと結ぶわたしの契約である。あなたは多くの国民の父となる。 5 あなたは、もはやアブラムではなく、アブラハムと名乗りなさい。あなたを多くの国民の父とするからである。 6 わたしは、あなたをますます?栄させ、諸国民の父とする。王となる者たちがあなたから出るであろう。 7 わたしは、あなたとの間に、また後に続く子孫との間に契約を立て、それを永遠の契約とする。そして、あなたとあなたの子孫の神となる。 8 わたしは、あなたが滞在しているこのカナンのすべての土地を、あなたとその子孫に、永久の所有地として与える。わたしは彼らの神となる。」 9 神はまた、アブラムに言われた。「だからあなたも、わたしの契約を守りなさい、あなたも後に続く子孫も。 10 あなたたち、およびあなたの後に続く子孫と、わたしとの間で守るべき契約はこれである。すなわち、あなたたちの男子はすべて、割礼を受ける。 11 包皮の部分を切り取りなさい。これが、わたしとあなたたちとの間の契約のしるしとなる。 12 いつの時代でも、あなたたちの男子はすべて、直系の子孫はもちろんのこと、家で生まれた奴隷も、外国人から買い取った奴隷であなたの子孫でない者も皆、生れてから八日目に割礼を受けなければならない。 13 あなたのお家で生まれた奴隷も、買い取った奴隷も、必ず割礼を受けなければならない。それによって、わたしの契約はあなたの体に記されて永遠の契約となる。 14 包皮の部分を切り取らない無割礼の男がいたなら、その人は民の間から断たれる。わたしの契約を破ったからである。」 15 神はアブラムに言われた。「あなたの妻サライは、名前をサライではなく、サラと呼びなさい。 16 わたしは彼女を祝福し、彼女によってあなたに男の子を与えよう。わたしは彼女を祝福し、諸国民の母とする。諸民族の王となる者たちが彼女から出る。」 17 アブラハムひれ伏した。しかし笑って、ひそかに言った。「百歳の男に子供が生まれるだろうか。九十歳のサラに子供が産めるだろうか。」 18 アブラハムは神に言った。「どうか、イシュマエルが御前に生き永らえますように。」 19 神は言われた。「いや、あなたの妻サラがあなたとの間に男の子を産む。その子をイサク(彼は笑う)と名付けなさい。わたしは彼と契約を立て、彼の子孫のために永遠の契約とする。 20 イシュマエルについての願いも聞き入れよう。必ず、わたしは彼を祝福し、大いに子供を増やし繁栄させる。彼は十二人の首長の父となろう。わたしは彼を大いなる国民とする。 21 しかし、わたしの契約は、来年の今ごろ、サラがあなたとの間に産むイサクと立てる。」 22 神はこう語り終えると、アブラハムを離れて昇って行かれた。 23 アブラハムは、息子のイシュマエルをはじめ、家で生まれた奴隷や買い取った奴隷など、自分の家にいる人々のうち、男子を皆集めて、すぐその日に、神が命じられたとおり包皮に割礼を施した。 24 アブラハムが包皮に割礼を受けたのは、九十九歳、 25 息子イシュマエルが包皮に割礼を受けたのは、十三歳であった。 26 アブラハムと息子のイシュマエルは、すぐその日に割礼を受けた。 27 アブラハムの家の男子は、家で生まれた奴隷も外国人から買い取った奴隷も皆、共に割礼を受けた。
創世記 イサクの誕生の予告
18
1 主はマムレの樫の木の所でアブラハムに現れた。暑い真昼に、アブラハムは天幕の入り口に座っていた。 2 目を上げて見ると、三人の人が彼に向って立っていた。アブラハムはすぐに天幕の入り口から走り出て迎え、地にひれ伏して、 3 言った。「お客様、よろしければ、どうか、僕のもとを通り過ぎないでください。 4 水を少々持ってこさせますから、足を洗って、木陰でどうぞひと休みなさってください。 5 何か召し上がるものを調えますので、疲れをいやしてから、お出かけください。せっかく、僕の所の近くをお通りになったのですから。」その人たちは言った。「では、お言葉どおりにしましょう。」 6 アブラハムは急いで天幕に戻り、サラのところに来て言った。「早く、上等の小麦粉を三セアほどこねて、パン菓子をこしらえなさい。」 7 アブラハムは牛の群れのところへ走って行き、柔らかくておいしそうな子牛を選び、召し使いに渡し、急いで料理をさせた。 8 アブラハムは、凝乳、乳、出来立ての子牛の料理などを選び、彼らの前に並べた。そして、彼らが木陰で食事をしている間、そばに立って給仕をした。 9 彼らはアブラハムに尋ねた。「あなたの妻のサラはどこにいますか。」「はい、天幕の中におります」とアブラハムが答えると、 10 彼らの一人が言った。「わたしは来年の今ごろ、必ずここにまた来ますが、そのころには、あなたの妻のサラに男の子が生まれているでしょう。」サラは、すぐ後ろの天幕の入り口で聞いていた。 11 アブラハムもサラも多くの日を重ねて老人になっており、しかもサラは月のものがとうになくっていた。 12 サラはひそかに笑った。自分は年をとり、もはや楽しみがあるはずもなし、主人も年老いているのに、と思ったのである。13 主はアブラハムに言われた。「なぜサラは笑ったのか。なぜ年をとった自分に子供が生まれるはずがないと思ったのだ。 14 主に不可能なことがあろうか。来年の今ごろ、わたしはここに戻ってくる。そのころ、サラには必ず男の子が生まれている。」 15 サラは恐ろしくなり、打ち消して言った。「わたしは笑いませんでした。」主は言われた。「いや、あなたは確かに笑った。」
創世記 ソドムのための執り成し
16 その人たちはそこを立って、ソドムを見下ろす所まで来た。アブラハムも、彼らを見送るために一緒に行った。 17 主は言われた。「わたしが行おうとしていることをアブラハムに隠す必要があろうか。 18 アブラハムは大きな強い国民になり、世界のすべての国民は彼によって祝福に入る。 19 わたしがアブラハムを選んだのは、彼が息子たちとその子孫に、主の道を守り、主に従って正義を行うよう命じて、主がアブラハムに約束したことを成就するためである。 20 主は言われた。「ソドムとゴモラの罪は非常に重い、と訴える叫びが実に大きい。 21 わたしは降って行き、彼らの行跡が、果たして、わたしに届いた叫びのとおりかどうか見て確かめよう。」 22 その人たちは、更にソドムの方に向かったが、アブラハムはなお、主の御前にいた。 23 アブラハムは進み出て言った。「もことにあなたは、正しい者を悪い者と一緒に滅ぼされるのですか。 24 あの町に正しい者が五十人いるとしても、それでも滅ぼし、その五十人の正しい者のために、町をお赦しにはならないのですか。 25 正しい者を悪い者と一緒に殺し、正しい者を悪い者と同じ目に遭わせるようなことを、あなたがなさるはずはございません。全くありえないことです。全世界を裁くお方は、正義を行われるべきではありませんか。」 26 主は言われた。「もしソドムの町に正しい者が五十人いるならば、その者たちのために、町を全部赦そう。」 27 アブラハムは答えた。「塵にすぎないわたしですが、あえて、わが主に申し上げます。 28 もしかすると、五十人の正しい者に五人足りないかもしれません。それでもあなたは、五人たりないために、町のすべてを滅ぼされますか。」主は言われた。「もし、四十五人いれば滅ぼさない。」 29 アブラハムは重ねて言った。「もしかすると、四十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その四十人のためにわたしはそれをしない」 30 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう少し言わせてください。もしかすると、そこには三十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「もし三十人いるならわたしはそれはしない。」 31 アブラハムは言った。「あえて、わが主に申し上げます。もしかすると、二十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その二十人のためにわたしは滅ぼさない。」 32 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう一度だけ言わせてください。もしかすると、十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その十人のためにわたしは滅ぼさない。」 33 主はアブラハムと語り終えると、去って行かれた。アブラハムも自分の住まいに帰った。
創世記 ソドムの滅亡
19
1 二人の御使いが夕方ソドムに着いたとき、ロトはソドムの門の所に座っていた。ロトは彼らを見ると、立ち上って迎え、地にひれ伏して、 2 言った。 「皆様方、どうぞ僕(しもべ)の家に立ち寄り、足を洗ってお泊りください。彼らは言った。「いや、結構です。わたしたちはこの広場で夜を過ごします。」 3 しかし、ロトがぜひにと勧めたので、彼らはロトの所に立ちよることにし、彼の家を訪ねた。ロトは、酵母を入れないパンを焼いて食事を供し、彼らをもてなした。 4 彼らがまだ床に就かないうちに、ソドムの町の男たちが、若者も年寄りもこぞって押しかけ、家を取り囲んで、 5 わめきたてた。 「今夜、お前のところへ来た連中はどこにいる。ここへ連れてこい。なぶりものにしてやるから。」 6 ロトは、戸口の前にたむろしている男たちのところへ出て行き、後ろの戸を閉めて、 7 言った。 「どうか、皆さん、乱暴なことはしないでください。 8 実は、わたしにはまだ嫁がせていない娘が二人おります。皆さんにその娘たちを差し出しますから、好きなようにしてください。ただ、あの方々には何もしないでください。この家の屋根の下に身を寄せていただいたのですから。」 9 男たちは口々に言った。 「そこをどけ」 「こいつはよそ者のくせに、指図などして。」 「さあ、彼らより先に、お前を痛い目に遭わせてやる。」 そして、ロトに詰め寄って体を押しつけ、戸を破ろうとした。 10 二人の客はそのとき、手を伸ばして、ロトを家の中に引き入れて戸を閉め、 11 戸口の前に入る男たちに、老若を問わず、目つぶしを食わせ、戸口を分からなくした。 12 二人の客はロトに言った。 「ほかに、あなたの身内の人がこの町にいますか。あなたの婿や息子や娘などを皆連れてここから逃げなさい。 13 実は、わたしたちはこの町を滅ぼしに来たのす。大きな叫びが主にもとに届いたので、主は、この町を滅ぼすためにわたしたちを遣わされたのです。」 14 ロトは嫁いだ娘たちの婿のところへ行き、「さあ早くここから逃げるのだ。主がこの町を滅ぼされるからだ」と促したが、婿たちは冗談だと思った。 15 夜が明けるころ、御使いたちはロトをせきたてて言った。「さあ早く、あなたの妻とここにいる二人の娘を連れて行きなさい。さもないと、この町に下る罰の巻き添えになって滅ぼされてしまう。」 16 ロトはためらっていた。主は憐れんで、二人の客にロト、妻、二人の娘の手をとらせて町の外へ避難するようにされた。 17 彼らがロトたちを町外れへ連れ出したとき、主は言われた。 「命がけで逃れよ。後ろを振り返ってはいけない。低地のどこにもとどまるな。山へ逃げなさい。さもないと、滅びることになる。」 18 ロトは言った。 「主よ、できません。
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1 初めに、神は天地を創造された。 2 地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、?~の靈が水の面を動いていた。 3 ?~は言われた。「光あれ。」こうして、光があった。 4 ?~は光を見て、良しとされた。?~は光と闇を分け、 5 光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第一の日である。6 ?~は言われた。「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。」 7 ?~は大空を造り、大空の下と大空の上に水を分けさせられた。そのようになった。 8 ?~は大空を天と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第二の日である。 9 ?~は言われた。「天の下の水は一つ所に集まれ。乾いた所が現れよ。」そのようになった。 10 神は乾いた所を地と呼び、水の集まった所を海と呼ばれた。神はこれを見て、良しとされた。 11 神は言われた。「地は草を芽生えさせよ。種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける果樹を、地に芽生えさせよ。」そのようになった。 12 地は草を芽生えさせ、それぞれの種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける木を芽生えさせた。?~はこれを見て、良しとされた。 13 夕べがあり、朝があった。第三の日である。 14 神は言われた。「天の大空に光る物があって、昼と夜を分け、季節のしるし、日や年のしるしとなれ。 15 天の大空に光る物があって、地を照らせ。」そのようになった。 16 ?~は二つの大きな光る物と星を造り、大きな方に昼を治めさせ、小さな方に夜を治めさせられた。 17 ?~はそれらを天の大空に置いて、地を照らさせ、 18 昼と夜を治めさせ、光と闇を分けさせられた。?~はこれを見て、良しとされた。 19 夕べがあり、朝があった。第四の日である。 20 ?~は言われた。「生き物が水の中に群がれ。鳥は地の上、天の大空の面を飛べ。」 21 ?~は水に群がるもの、すなわち大きな怪物、うごめく生き物をそれぞれに、また、翼ある鳥をそれぞれに創造された。?~はこれを見て、良しとされた。 22 ?~はそれらのものを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、海の水に満ちよ。鳥は地の上に増えよ。」 23 夕べがあり、朝があった。第五の日である。 24 ?~は言われた。「地は、それぞれの生き物を産み出せ。家畜、這うもの、地の獣をそれぞれに産み出せ。」そのようになった。 25 ?~はそれぞれの地の獣、それぞれの家畜、それぞれの土を這うものを造られた。?~はこれを見て、良しとされた。 26 ?~は言われた。「我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。そして海の魚、空の鳥、家畜、地の獣、地を這うものすべてを支配させよう。」 27 ?~は御自分にかたどって人を創造された。?~にかたどって創造された。男と女に創造された。28 ?~は彼らを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ。」 29 ?~は言われた。「見よ、全地に生える、種を持つ草と種を持つ実をつける木を、すべてあなたたちに与えよう。それがあなたたちの食べ物となる。 30 地の獣、空の鳥、地を這うものなど、すべて命あるものにはあらゆる青草をたべさせよう。」そのようになった。 31 ?~はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった。夕べがあり、朝があった。第六の日である。
2
1 天地万物は完成された。 2 第七の日に、?~は御自分の仕事を完成され、第七の日に、神は御自分の仕事を離れ、安息なさった。 3 この日に?~はすべての創造の仕事を離れ、安息なさったので、第七の日を?~は祝福し、聖別された。 4 これが天地創造の由来である。主なる?~が地と天を造られたとき、 5 地上には野の木も、野の草も生えていなかった。主なる?~が地上に雨をお送りにならなかったからである。また土を耕す人もいなかった。 6 しかし、水が地下から湧き出て、土の面をすべて潤した。 7 主なる?~は、土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった。 8 主なる?~は、東の方のエデンに園を設け、自ら形づくった人をそこに置かれた。 9 主なる?~は、見るからに好ましく、食べるに良いものをもたらすあらゆる木を地に生えいでさせ、また園の中央には、命の木と善悪の知識の木を生えいでさせられた。 10 エデンから一つの川が流れ出ていた。園を潤し、そこで分かれて、四つの川となっていた。 11 第一の川の名はピションで、金を産出するハビラ地方全域を巡っていた。 12 その金は良質であり、そこではまた、琥珀の類やラピス・ラズリも産出した。 13 第二の川の名はギホンで、クシュ地方全域を巡っていた。 14 第三の川の名はチグリスで、アシュルの東の方を流れており、第四の川の名はユーフラテスであった。 15 主なる?~は人を連れて来て、エデンの園に住まわせ、人がそこを耕し、守るようにされた。 16 主なる?~は人に命じて言われた。「園のすべての木から取って食べなさい。 17 ただし、善悪の知識の木からは、決して食べてはならない。食べると必ず死んでしまう。」 18 主なる?~は言われた。「人が一人でいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう。」 19 主なる?~は、野のあらゆる獣、空のあらゆる鳥を土で形づくり、人のところへ持って来て、人がそれぞれどう呼ぶか見ておられた。人が呼ぶと、それはすべて、生き物の名となった。 20 人はあらゆる家畜、空の鳥、野のあらゆる獣に名を付けたが、自分に合う助ける者は見つけることができなかった。 21 主なる?~はそこで、人を深い眠りに落とされた。人が眠り込むと、あばら骨の一部を抜き取り、その跡を肉でふさがれた。 22 そして、人から抜き取ったあばら骨で女を造り上げられた。主なる?~が彼女を人のところへ連れて来られると、 23 人は言った。「ついに、これこそわたしの骨の骨わたしの肉の肉。これこそ、女(イシャー)と呼ぼう まさに、男(イシュ)から取られたものだから。」 24 こういうわけで、男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる。 25 人と妻は二人とも裸であったが、恥ずかしがりはしなかった。
創世記 蛇の誘惑
3
1 主なる?~が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった。蛇は女に言った。「園のどの木からも食べてはいけない、などと神は言われたのか。」 2 女は蛇に答えた。「わたしたちは園の木の果実を食べてよいのです。 3 でも、園の中央に生えている木の果実だけは、食べてはいけない。触れてもいけない、死んではいけないから、と?~様はおっしゃいました。」 4 蛇は女に言った。「決して死ぬことはない。 5 それを食べると、目が開け、?~のように善悪を知るものとなることを?~はご存じなのだ。」 6 女が見ると、その木はいかにもおいしそうで、目を引き付け、賢くなるように唆していた。女は実を取って食べ、一緒にいた男にも渡したので、彼も食べた。 7 二人の目は開け、自分たちが裸であることを知り、二人はいちじくの葉をつづり合わせ、腰を覆うものとした。 8 その日、風の吹くころ、主なる?~が園の中を歩く音が聞こえてきた。アダムと女が、主なる?~の顔を避けて、園の木の間に隠れると、 9 主なる?~はアダムを呼ばれた。「どこにいるのか」 10 彼は答えた。「あなたの足音が園の中に聞こえたので、恐ろしくなり、隠れております。わたしは裸ですから。」 11 ?~は言われた。「お前が裸であることを誰が告げたのか。取って食べるなと命じた木から食べたのか。」 12 アダムは答えた。「あなたがわたしと共にいるようにしてくださった女が、木から取って与えたので、食べました。」 13 主なる?~は女に向かって言われた。「何ということをしたのか。」女は答えた。「蛇がだましたので、食べてしまいました。」 14 主なる?~は、蛇に向かって言われた。「このようなことをしたお前はあらゆる家畜、あらゆる野の獣の中で呪われるものとなった。お前は、生涯這いまわり、塵を食らう。 15 お前と女、お前の子孫と女の子孫の間にわたしは敵意を置く。彼はお前の頭を砕き お前は彼のかかとを砕く。」 16 ?~は女に向かって言われた。「お前のはらみの苦しみを大きなものにする。お前は、苦しんで子を産む。お前は男を求め 彼はお前を支配する。」 17 ?~はアダムに向かって言われた。「お前は女の声に従い 取って食べるなと命じた木から食べた。お前のゆえに、土は呪われるものとなった。お前は、生涯食べ物を得ようと苦しむ。 18 お前に対して 土は茨とあざみを生えいでさせる 野の草を食べようとするお前に。 19 お前は顔に汗を流してパンを得る 土に返るときまで。お前がそこから取られた土に。塵にすぎないお前は塵に返る。」 20 アダムは女をエバ(命)と名付けた。彼女がすべて命あるものの母となったからである。 21 主なる?~は、アダムと女に皮の衣を作って着せられた。 22 主なる?~は言われた。「人は我々の一人のように、善悪を知る者となった。今は、手を伸ばして命の木からも取って食べ、永遠に生きる者となるおそれがある。」 23 主なる?~は、彼をエデンの園から追い出し、彼に、自分がそこから取られた土を耕させることにされた。 24 こうしてアダムを追放し、命の木に至る道を守るために、エデンの園の東にケルビムと、きらめく剣の炎を置かれた。
創世記 カインとアペル
4
1 さて、アダムは妻エバを知った。彼女は身ごもってカインを産み、「わたしは主によって男子を得た」と言った。 2 彼女はまたその弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。 3 時を経て、カインは土の実りを主のもとに献げ物として持って来た。 4 アベルは羊の群れの中から肥えた初子を持って来た。主はアベルとその献げ物に目を留められたが、 5 カインとその献げ物には目を留められなかった。カインは激しく怒って顔を伏せた。 6 主はカインに言われた。「どうして怒るのか。どうして顔を伏せるのか。 7 もしお前が正しいなら、顔を上げられるはずではないか。正しくないなら、罪は戸口で待ち伏せており、お前を求める。お前はそれを支配せねばならない。」 8 カインが弟アベルに言葉をかけ、二人が野原に着いたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。 9 主はカインに言われた。「お前の弟アベルは、どこにいるのか。」カインは答えた。「知りません。わたしは弟の番人でしょうか。」 10 主は言われた。「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。 11 今、お前は呪われる者となった。お前が流した弟の血を、口を開けて飲み込んだ土よりもなお、呪われる。 12 土を耕しても、土はもはやお前のために作物を産み出すことはない。お前は地上をさまよい、さすらう者となる。」 13 カインは主に言った。「わたしの罪は重すぎて負いきれません。 14 今日、あなたがわたしをこの土地から追放なさり、わたしが御顔から隠されて、地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう。」 15 主はカインに言われた。「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。 16 カインは主の前を去り、エデンの東、ノド(さすらい)の地に住んだ。 17 カインは妻を知った。彼女は身ごもってエノクを産んだ。カインは町を建てていたが、その町を息子の名前にちなんでエノクと名付けた。 18 エノクにはイラドが生まれた。イラドはメフヤエルの父となり、メフヤエルはメトシャエルの父となり、メトシャエルはレメクの父となった。
19 レメクは二人の妻をめとった。一人はアダ、もう一人はツィラと言った。 20 アダはヤバルを産んだ。ヤバルは、家畜を飼い天幕に住む者の先祖となった。 21 その弟はユバルといい、竪琴や笛を奏でる者すべての先祖となった。 22 ツィラもまた、トバル・カインを産んだ。彼は青銅や鉄でさまざまの道具を作る者となった。トバル・カインの妹はナアマといった。 23 さて、レメクは妻に言った。「アダとツィラよ、わが声を聞け。レメクの妻たちよ、わが言葉に耳を傾けよ。わたしは傷の報いに男を殺し 打ち傷の報いに若者を殺す。 24 カインのための復讐が七倍なら レメクのためには七十七倍。」 25 再び、アダムは妻を知った。彼女は男の子を産み、セトと名付けた。カインがアベルを殺したので、?~が彼に代わる子を授け(シャト)られたからである。 26 セトにも男の子が生まれた。彼はその子をエノシュと名付けた。主の御名を呼び始めたのは、この時代のことである。
創世記 アダムの系図
5
1 これはアダムの系図の書である。?~は人を創造された日、?~に似せてこれを造られ、 2 男と女に創造された。創造の日に、彼らを祝福されて、人と名付けられた。 3 アダムは百三十歳になったとき、自分に似た、自分にかたどった男の子をもうけた。アダムはその子をセトと名付けた。 4 アダムは、セトが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 5 アダムは九百三十年生き、そして死んだ。 6 セトは百五歳になったとき、エノシュをもうけた。 7 セトはエノシュが生まれた後八百七年生きて、息子や娘をもうけた。 8 セトは九百十二年生き、そして死んだ。 9 エノシュは九十歳になったとき、ケナンをもうけた。 10 エノシュは、ケナンが生まれた後八百十五年生きて、息子や娘をもうけた。 11 エノシュは九百五年生き、そして死んだ。 12 ケナンは七十歳になったとき、マハラルエルをもうけた。 13 ケナンはマハラルエルが生まれた後八百四十年生きて、息子や娘をもうけた。 14 ケナンは九百十年生き、そして死んだ。 15 マハラルエルは六十五歳になったとき、イエレドをもうけた。 16 マハラルエルは、イエレドが生まれた後八百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 17 マハラルエルは八百九十五年生き、そして死んだ。 18 イエレドは百六十二歳になったとき、エノクをもうけた。 19 イエレドは、エノクが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 20 イエレドは九百六十二年生き、そして死んだ。 21 エノクは六十五歳になったとき、メトシェラもうけた。 22 エノクは、メトシェラが生まれた後、三百年?~と共に歩み、息子や娘をもうけた。 23 エノクは三百六十五年生きた。 24 エノクは?~と共に歩み、?~が取られたのでいなくなった。 25 メトシェラは百八十七歳になったとき、レメクをもうけた。 26 メトシェラは、レメクが生まれた後七百八十二年生きて、息子や娘をもうけた。 27 メトシェラは九百六十九年生き、そして死んだ。 28 レメクは百八十二歳になったとき、男の子をもうけた。 29 彼は、「主の呪いを受けた大地で働く我々の手の苦労を、この子は慰めてくれるだろう」と言って、その子をノア(慰め)と名付けた。 30 レメクは、ノアが生まれた後五百九十五年生きて、息子や娘をもうけた。 31 レメクは七百七十七年生き、そして死んだ。 32 ノアは五百歳になったとき、セム ハム ヤフェトをもうけた。
創世記 洪水
6
1 さて、地上に人が増え始め、娘たちが生まれた。 2 ?~の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、おのおの選んだ者を妻にした。 3 主は言われた。 「わたしの霊は人の中に永久にとどまるべきではない。人は肉にすぎないのだから。」こうして、人の一生は百二十年となった。 4 当時もその後も、地上にはネフィリムがいた。これは、?~の子らが人の娘たちのところに入って産ませた者であり、大昔の名高い英雄たちであった。 5 主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、 6 地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた。 7 主は言われた。 「わたしは人を創造したが、これを地上からぬぐい去ろう。人だけでなく、家畜も這うものも空の鳥も。わたしはこれらを造ったことを後悔する。」 8 しかし、ノアは主の好意を得た。 9 これはノアの物語である。その世代の中で、ノアは?~に従う無垢な人であった。ノアは?~と共に歩んだ。 10 ノアには三人の息子、セム ハム ヤフェトが生まれた。 11 この地は?~の前に堕落し、不法に満ちていた。 12 ?~は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。 13 ?~はノアに言われた。「すべて肉なるものを終わらせる時がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす。 14 あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟には小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。 15 次のようにしてそれを造りなさい。箱舟の長さを三百アンマ、幅を五十アンマ、高さを三十アンマにし、 16 箱舟に明かり取りを造り、上から一アンマにして、それを仕上げなさい。箱舟の側面には戸口を造りなさい。また、一階と二階と三階を造りなさい。 17 見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊をもつ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべてのものは息絶える。 18 わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。 19 また、すべて命あるもの、すべて肉なるものから、二つずつ箱舟に連れて入り、あなたと共に生き延びるようにしなさい。それらは、雄と雌でなければならない。 20 それぞれの鳥、それぞれの家畜、それぞれの地を這うものが、二つずつあなたのところへ来て、生き延びるようにしなさい。 21 更に、食べられる物はすべてあなたのところに集め、あなたと彼らの食料としなさい。」 22 ノアは、すべて?~が命じられたとおりに果たした。
7
1 主はノアに言われた。「さあ、あなたとあなたの家族は皆、箱舟に入りなさい。この世代の中であなただけはわたしに従う人だと、わたしは認めている。 2 あなたは清い動物をすべて七つがい取り、また、清くない動物をすべて一つがいずつ取りなさい 3 空の鳥も七つがい取りなさい。全地の面に子孫が生き続けるように。 4 七日の後、わたしは四十日四十夜地上に雨を降らせ、わたしが造ったすべての生き物を地の面からぬぐい去ることにした。」 5 ノアはすべて主が命じられたとおりにした。 6 ノアが六百歳のとき、洪水が地上に起こり、水が地の上にみなぎった。 7 ノアは妻子や嫁たちと共に洪水を免れようと箱舟に入った。 8 清い動物も清くない動物も、鳥も地を這うものもすべて、 9 二つずつ箱舟のノアのもとに来た。それは?~がノアに命じられたとおりに、雄と雌であった。 10 七日が過ぎて、洪水が地上起こった。 11 ノアの生涯の第六百年、第二の月の十七日、この日、大いなる深淵の源がことごとく裂け、天の窓が開かれた。 12 雨が四十日四十夜地上に降り続いたが、 13 まさにこの日、ノアも、息子のセム、ハム、ヤフェト、ノアの妻、この三人の息子の嫁たちも、箱舟に入った。 14 彼らと共にそれぞれの獣、それぞれの家畜、それぞれの地を這うもの、それぞれの鳥、小鳥や翼のあるものすべて、 15 命の霊をもつ肉なるものは、二つずつノアのもとに来て箱舟に入った。 16 ?~が命じられたとおりに、すべて肉なるものの雄と雌とが来た。主は、ノアの後ろで戸を閉ざされた。 17 洪水は四十日間地上を覆った。水は次第に増して箱舟を押し上げ、箱舟は大地を離れて浮かんだ。 18 水は勢力を増し、地の上に大いにみなぎり、箱舟は水の面を漂った。 19 水はますます勢いを加えて地上にみなぎり、およそ天の下にある高い山はすべて覆われた。 20 水は勢い増して更にその上十五アンマに達し、山々を覆った。 21 地上で動いていた肉なるものはすべて、鳥も家畜も獣も地に群がり這うものも人も、ことごとく息絶えた。 22 乾いた地のすべてのもののうち、その鼻に命の息と霊のあるものはことごとく死んだ。 23 地の面にいた生き物はすべて、人をはじめ、家畜、這うもの、空の鳥に至るまでぬぐい去られた。彼らは大地からぬぐい去られ、ノアと、彼と共に箱舟にいたものだけが残った。 24 水は百五十日の間、地上で勢いを失わなかった。
8
1 神は、ノアと彼と共に箱舟にいたすべての獣とすべての家畜を御心に留め、地の上に風を吹かせられたので、水が減り始めた。 2 また、深淵の源と天の窓が閉じられたので、天からの雨は降りやみ、 3 水は地上からひいて行った。百五十日の後には水が減って、 4 第七の月の十七日に箱舟はアララト山の上に止まった。 5 水はますます減って第十の月になり、第十の月の一日には山々の頂が現れた。 6 四十日たって、ノアは自分が造った箱舟の窓を開き、烏を放した。烏は飛び立ったが、地上の水が乾くのを待って、出たり入ったりした。 8 ノアは鳩を彼のもとから放して、地の面から水がひいたかどうかを確かめようとした。 9 しかし、鳩は止まる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰って来た。水がまだ全地の面を覆っていたからである。ノアは手を差し伸べて鳩を捕らえ、箱舟の自分のもとに戻した。 10 更に七日待って、彼は再び鳩を箱舟から放した。 11 鳩は夕方になってノアのもとに帰って来た。見よ、鳩はくちばしにオリーブの葉をくわえていた。ノアは水が地上からひいたことを知った。 12 彼は更に七日待って、鳩を放した。鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。 13 ノアが六百一歳のとき、最初の月の一日に、地上の水は乾いた。ノアは箱舟の覆いを取り外して眺めた。見よ、地の面は乾いていた。 14 第二の月の二十七日になると、地はすっかり乾いた。 15 神はノアに仰せになった。 「さあ、あなたもあなたの妻も、息子も嫁も、皆一緒に箱舟から出なさい。 17 すべて肉なるもののうちからあなたのもとに来たすべての動物、鳥も家畜も地を這うものも一緒に連れ出し、地に群がり、地上で子を産み、増えるようにしなさい。」 18 そこで、ノアは息子や妻や嫁と共に外へ出た。 19 獣、這うもの、鳥、地に群がるもの、それぞれすべて箱舟から出た。 20 ノアは主のために祭壇を築いた。そしてすべての清い家畜と清い鳥のうちから取り、焼き尽くす捧げ物として祭壇の上にささげた。 21 主は宥めの香りをかいで、御心に言われた。「人に対して大地を呪うことは二度とすまい。人が心に思うことは、幼いときから悪いのだ。わたしは、この度したように生き物をことごとく打つことは、二度とすまい。 22 地の続くかぎり、種蒔きも刈り入れも 寒さも暑さも、夏も冬も 昼も夜も、やむことはない。」
創世記 祝福と契約
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1 ?~はノアと彼の息子たちを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちよ。 2 地のすべての獣と空のすべての鳥は、地を這うすべてのものと海のすべての魚と共に、あなたたちの前に恐れおののき、あなたたちの手にゆだねられる。 3 動いている命あるものは、すべてあなたたちの食糧とするがよい。わたしはこれらすべてのものを、青草と同じようにあなたたちに与える。 4 ただし、肉は命である血を含んだまま食べてはならない。 5 また、あなたたちの命である血が流された場合、わたしは賠償を要求する。いかなる獣からも要求する。人間どうしの血については、人間から人間の命を賠償として要求する。 6 人の血を流す者は 人によって自分の血を流される。人は?~にかたどって造られたからだ。 7 あなたたちは産めよ、増えよ 地に群がり、地に増えよ。」 8 ?~はノアと彼の息子たちに言われた。 9 「わたしは、あなたたちと、そして後に続く子孫と、契約を立てる。 10 あなたたちと共にいるすべての生き物、またあなたたちと共にいる鳥や家畜や地のすべての獣など、箱舟から出たすべてのもののみならず、地のすべての獣と契約を立てる。 11 わたしがあなたたちと契約を立てたならば、二度と洪水によって肉なるものが滅ぼされることはなく、洪水が起こって地を滅ぼすことも決してない。」 12 更に?~は言われた。「あなたたちならびにあなたたちと共にいるすべての生き物と、代々(よよ)とこしえにわたしが立てる契約のしるしはこれである。 13 すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立てた契約のしるしとなる。 14 わたしが地の上に雲を湧き起こらせ、雲の中に虹が現れると、 15 わたしは、わたしとあなたたちならびにすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた契約に心を留める。水が洪水となって、肉なるものをすべて滅ぼすことは決してない。 16 雲の中に虹が現れると、わたしはそれを見て、神と地上のすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた永遠の契約に心をと留める。」 17 ?~はノアに言われた。「これが、わたしと地上のすべて肉なるものとの間にたてた契約のしるしである。」
創世記 ノアと息子たち
18 箱舟から出たノアの息子は、セム、ハム、ヤフェトであった。ハムはカナンの父である。 19 この三人がノアの息子で、全世界の人々は彼らから出て広がったのである。 20 さて、ノアは農夫となり、ぶどう畑を作った。 21 あるとき、ノアはぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。 22 カナンの父ハムは、自分の父の裸を見て、外にいた二人の兄弟に告げた。 23 セムとヤフェトは着物を取って自分たちの肩に掛け、後ろ向きに歩いて行き、父の裸を覆った。二人は顔を背けたままで、父の裸を見なかった。 24 ノアは酔いからさめると、末の息子がしたことを知り、 25 こう言った。「カナンは呪われよ 奴隷の奴隷となり、兄たちに仕えよ。」 26 また言った。「セムの神、主をたたえよ。 カナンはセムの奴隷となれ。
27 神がヤフェトの土地を広げ(ヤフェト) セムの天幕に住まわせ カナンはその奴隷となれ。」 28 ノアは、洪水の後三百五十年生きた。 29 ノアは九百五十歳になって、死んだ。
創世記 ノアの子孫
10
1 ノアの息子、セム、ハム、ヤフェトの系図は次のとおりである。洪水の後、彼らに息子が生まれた。 2 ヤフェトの子孫はゴメル、マゴグ、メディア、ヤワン、トバル、メシェク、ティラスであった。 3 ゴメルの子孫は、アシュケナズ、リファト、トガルマであった。 4 ヤワンの子孫は、エリシャ、タルシシュ、キティム、ロダニムであった。 5 海沿いの国々は、彼らから出て、それぞれの地に、その言語、氏族、民族に従って住むようになった。 6 ハムの子孫は、クシュ、エジプト、プト、カナンであった。 7 クシュの子孫はセバ、ハビラ、サブタ、ラマ、サブテカであり、ラマの子孫はシェバとデダンであった。 8 クシュにはまた、ニムロドが生まれた。ニムロドは地上で最初の勇士となった。 9 彼は、主の御前に勇敢な狩人であり、「主の御前に勇敢な狩人ニムドロのようだ」という言い方がある。 10 彼の王国の主な町は、バベル、ウルク、アッカドであり、それらはすべてシンアルの地にあった。 11 彼はその地方からアッシリに進み、ニネベ、レホボト・イル、カラ、 12 レセンを建てた。レセンはニネベとカラとの間にある、非常に大きな町であった。 13 エジプトにはリディア人、アルミナ人、レハビム人、ナフトヒム人、 14 上エジプト人、カスルヒム人、カフトル人が生まれた。このカフトル人からペリシテ人が出た。
15 カナンには長男シドンとヘト、 16 また、エブス人、アモリ人、ギルガシ人、 17 ヒビ人、アルキ人、シニ人、 18 アルワド人、フェマリ人、ハマト人が生まれた。その後、カナン人の諸氏族が広がった。 19 カナン人の領土は、シドンから南下してゲラルを経てガザまでを含み、更に、ソドム、ゴモラ、アドマ、ツェボイムを経てラシャまでを含んだ。 20 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたハムの子孫である。 21 セムにもまた子供が生まれた。彼はエベルのすべての子孫の先祖であり、ヤフェトの兄であった。 22 セムの子孫はエラム、アシュル、アルパクシャド、ルド、アラムであった。 23 アラムの子孫は、ウツ、フル、ゲテル、マシュであった。 24 アルパクシャドにはシェラが生まれ、シェラにはエベルが生まれた。 25 エベルには二人の息子が生まれた。ひとりの名は、その時代に土地が分けられた(パラグ)ので、ペレグといい、その兄弟はヨクタンといった。 26 ヨクタンには、アルモダド、シェレフ、ハツァルマベト、イエラ、 27 ハドラム、ウザル、ディクラ、 28 オバル、アビマエル、シェバ、 29 オフィル、ハビラ、ヨバブが生まれた。これらは皆、ヨクタンの息子であった。 30 彼らはメシャからセファルに至る東の高原地帯に住んでいた。 31 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたセムの子孫である。 32 ノアの子孫である諸氏族を、民族ごとの系図にまとめると以上のようになる。地上の諸民族は洪水の後、彼らから分かれ出た。
創世記 バベルの塔
11
1 世界中は同じ言葉を使って、同じように話していた。 2 東の方から移動してきた人々は、シンアルの地に平野を見つけ、そこに住み着いた。 3 彼らは、「れんがを作り、それをよく焼こう」と話し合った。石の代わりにれんがを、しっくいの代わりにアスファルトを用いた。 4 彼らは、「さあ 天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。 5 主は降って来て、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、 6 言われた。「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。 7 我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」 8 主は彼らをそこから全地に散らされたので、彼らはこの町の建設をやめた。 9 こういうわけで、この町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ、また、主がそこから彼らを全地に散らされたからである。
創世記 セムの系図
10 セムの系図は次のとおりである。セムが百歳になったとき、アルバクシャドが生まれた。それは洪水の二年後のことであった。 11 セムは、アルパクシャドが生まれた後五百年生きて、息子や娘をもうけた。 12 アルパクシャドが三十五歳になったとき、シェラが生まれた。 13 アルパクシャドは、シェラが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 14 シェラが三十歳になったとき、エベルが生まれた。 15 シェラは、エベルが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 16 エベルが三十四歳になったとき、ぺレグが生まれた。 17 エベルは、ぺレグが生まれた後四百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 18 ぺレグが三十歳になったとき、レウが生まれた。 19 ぺレグは、レウが生まれた後二百九年生きて、息子や娘をもうけた。 20 レウが三十二歳になったとき、セルグが生まれた。 21 レウは、セルグが生まれた後二百七年生きて、息子や娘をもうけた。 22 セルグ三十歳なったとき、ナホルが生まれた。 23 セルグは、ナホルが生まれた後二百年生きて、息子や娘をもうけた。 24 ナホルが二十九歳になったとき、テラが生まれた。 25 ナホルは、テラが生まれた後百十九年生きて、息子や娘をもうけた。 26 テラが七十歳になったとき、アブラム、ナホル、ハランが生まれた。
創世記 テラの系図
27 テラの系図は次のとおりである。テラにはアブラム、ナホル、ハランが生まれた。ハランにはロトが生まれた。 28 ハランは父のテラより先に、故郷カルデアのウルで死んだ。 29 アブラムとナホルはそれぞれ妻をめとった。アブラムの妻の名はサライ、ナホルの妻の妻の名はミルカといった。ミルカはハランの娘である。ハランはミルカとイスカの父であった。 30 サライは不妊の女で、子供ができなかった。 31 テラは、息子アブラムと、ハランの息子で自分の孫であるロト、および息子アブラムの妻で自分の嫁であるサライを連れて、カルデアのウルを出発し、カナン地方に向った。彼らはハランまで来ると、そこにとどまった。 32 テラは二百五年の生涯を終えて、ハランで死んだ。
創世記 アブラムの召命と移住
12
1 主はアブラムに言われた。「あなたは生まれ故郷 父の家を離れて わたしが示す地に行きなさい 2 わたしはあなたを大いなる国民にし あなたを祝福し あなたに名を高める 祝福の源となるように 3 あなたを祝福する人をわたしは祝福し あなたを呪う者をわたしは呪う。 地上の氏族はすべて あなたによって祝福に入る。」 4 アブラムは 主の言葉に従って旅立った。ロトも共に行った。アブラムは、ハランを出発したとき七十五歳であった。 5 アブラムは妻のサライ、甥のロトを連れ、蓄えた財産をすべて携え、ハランで加わった人々と共にカナン地方へ向かって出発し、カナン地方入った。 6 アブラムはその地を通り、シケムの聖所、モレの樫の木まで来た。当時、その地方にはカナン人が住んでいた。 7 主はアブラムに現れて、言われた。「あなたの子孫のこの地を与える」アブラムは、彼に現れた主のために、そこに祭壇を築いた。 8 アブラムは、そこからベテルの東の山へ移り、西にベテル、東にアイを望む所に天幕を張って、そこにも主のために祭壇を築き、主の御名を呼んだ。 9 アブラムは更に旅を続け、ネゲブ地方に移った。
創世記 エジプト滞在
10 その地方に飢饉があった。 アブラムは、その地方の飢饉がひどかったので、エジプトに下り、そこに滞在することにした。 11 エジプトに入ろうしたとき、妻サライに言った。 「あなたが美しいのを、わたしはよく知っている。 12 エジプト人があなたを見たら、『この女はあの男の妻だ』と言って、わたしを殺し、あなたを生かしておくにちがいない。 13 どうか、わたしの妹だ、と言ってください。 そうすれば、わたしはあなたのゆえに幸いになり、あなたのお陰で命も助かるだろう。」 14 アブラムがエジプトに入ると、エジプト人はサライを見て、大変美しいと思った。 15 ファラオの家臣たちも彼女を見て、ファラオに彼女のことを褒めたので、サライはファラオの宮廷に召し入れられた 16 アブラムも彼女のゆえに幸いを受け、羊の群れ、牛の群れ、ろば、男女の奴隷、雌ろば、らくだなどを与えられた。 17 ところが主は、アブラムの妻サライのことで、ファラオと宮廷の人々を恐ろしい病気にかからせた。 18 ファラオはアブラムを呼び寄せて言った。 「あなたはわたしに何ということをしたのか。 なぜ、あの婦人は自分の妻だと、言わなかったのか。 19 なぜ、『わたしの妹です』などと言ったのか。 だからこそ、わたしの妻として召し入れたのだ。 さあ、あなたの妻を連れて、立ち去ってもらいたい。 20 ファラオは家来たちに命じて、アブラムを、その妻とすべての持ち物と共に送り出させた。
創世記 ロトとの別れ
13
1 アブラムは、妻と共に、すべての持ち物を携え、エジプトを出て再びネゲブ地方へ上った。ロトも一緒であった。 2 アブラムは非常に多くの家畜や金銀を持っていた。 3 ネゲブ地方から更に、ベテルに向って旅を続け、ベテルとアイとの間の、以前に天幕を張った所まで来た。 4 そこは、彼が最初に祭壇を築いて、主の御名を呼んだ場所であった。 5 アブラムと共に旅をしていたロトもまた、羊や牛の群れを飼い、たくさんの天幕を持っていた。 6 その土地は、彼らが一緒に住むには十分ではなかった。 彼らの財産が多すぎたから、一緒に住むことができなかったのである。 7 アブラムの家畜を飼う者たちと、ロトの家畜を飼うものたちとの間に争いが起きた。 そのころ、その地方にはカナン人もペリジ人も住んでいた。 8 アブラムはロトに言った。 「わたしたちは親類どうしだ。わたしとあなたの間ではもちろん、お互いの羊飼いの間でも争うのはやめよう。 9 あなたの前には幾らでも土地があるのだから、ここで別れようではないか。 あなたが左に行くなら、わたしは右に行こう。 あなたが右に行くなら、わたしは左に行こう。」 10 ロトが目を上げて眺めると、ヨルダン川流域の低地一帯は、 主がソドムとゴモラを滅ぼす前であったので、ツォアルに至るまで、主の園のように、エジプトの国のように、見渡すかぎりよく潤っていた。 11 ロトはヨルダン川流域の低地一帯を選んで、東へ移って行った。こうして彼らは、左右に別れた。 12 アブラムはカナン地方に住み、ロトは低地の町々に住んだが、彼はソドムまで天幕を移した。 13 ソドムの住民は邪悪で、主に対して多くの罪を犯していた。 14 主は、ロトが別れて行った後、アブラムに言われた。「さあ、目を上げて、あなたがいる場所から東西南北を見渡しなさい。 15 見えるかぎりの土地をすべて、わたしは永久にあなたとあなたの子孫に与える。 16 あなたの子孫を大地の砂粒のようにする。大地の砂粒が数えきれないように、あなたの子孫も数えきれないであろう。 17 さあ、この土地を縦横に歩き回るがよい。わたしはそれをあなたに与えるから。」 18 アブラムは天幕を移し、ヘブロンにあるマムレの樫の木のところに来て住み、そこに主のために祭壇を築いた。
王との戦い
14
1 シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨク、エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアルが、 2 ソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アドマの王シンアブ、ツェボイムの王シェムエベル、ベラ、すなわちツオワルの王と戦ったとき、 3 これら五人の王は皆、シディムの谷、すなわち塩の海で同盟を結んだ。 4 彼らは十二年間ケドルラオメルに支配されていたが、十三年目に背いたのである。 5 十四年目に、ケドルラオメルとその味方の王たちが来て、アシュテロト・カルナイムでレファイム人を、ハムでズジム人を、シャベ・キルヤタイムでエミル人を、 6 セイルの山地でフリ人人を撃ち、荒れ野に近いエル・バランまで進んだ。 7 彼らは転進して、エン・ミシュパト、すなわちカデシュに向かい、アマレク人の全領土とハツェツオン・タマルに住むアモリ人を撃った。 8 そこで、ソドムの王、ゴモラの王、アドマの王、ツェボイムの王、ベラすなわちツォアルの王は兵を繰り出し、シディムの谷で彼らと戦おうと陣を敷いた。 9 エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアル、シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨクの四人の王に対して、これら五人の王が戦いを挑んだのである。 10 シディムの谷には至るところに天然アスファルトの穴があった。ソドムとゴモラの王は逃げるとき、その穴に落ちた。残りの王は山へ逃れた。 11 ソドムとゴモラの財産や食糧はすべて奪い去られ、 12 ソドムに住んでいたアブラムの甥ロトも、財産もろとも連れ去られた。
ロトの救出
13 逃げ延びた一人の男がヘブライ人アブラムのもとに来て、そのことを知らせた。アブラムは当時、アモリ人マムレ樫の木の傍らに住んでいた。マムレはエシュコルとアネルの兄弟で、彼らはアブラムと同盟を結んでいた。 14 アブラムは、親族の者が捕虜になったと聞いて、彼の家で生まれた奴隷で、訓練を受けた者三百十八人を召集し、ダンまで追跡した。 15 夜、彼と僕たちは分かれて敵を襲い、ダマスコの北のホバまで追跡した。 16 アブラムはすべての財産を取り返し、親族のロトとその財産、女たちやそのほかの人々も取り戻した。
メルキゼデグの祝福
17 アブラムがケドルラオメルとその味方の王たちを撃ち破って帰って来たとき、ソドムの王はシャベの谷、すなわち王の谷まで彼を出迎えた。 18 いと高き神の祭司であったサレムの王メルキゼデクも、パンとぶどう酒を持って来た。 19 彼はアブラムを祝福して言った。「天地の造り主、いと高き神に アブラムは祝福されますように。 20 敵をあなたの手に渡された いと高き神がたたえられますように。」 アブラムはすべての物の十分の一を彼に贈った。 21 ソドムの王はアブラムに、「人はわたしにお返しください。 しかし、財産はお取りください」と言ったが、 22 アブラムはソドムの王に言った。 「わたしは天地の造り主、いと高き?~、主に手を上げて誓います。 23 あなたの物は、たとえ糸一筋、靴ひも一本でも、決していただきません。 『アブラムを裕福にしたのは、このわたしだ』と、あなたに言われたくありません。 24 わたしは何も要りません。 ただ、若い者たちが食べたものと、わたしと共に戦った人々、すなわち、アネルとエシュコルとマムレの分は別です。 彼らには分け前を取らせてください。
神の約束
15
1 これらのことの後で、主の言葉が幻の中でアブラムに臨んだ。 「恐れるな、アブラムよ。 わたしはあなたの盾である。 あなたの受ける報いは非常に大きいであろう。 2 アブラムは尋ねた。 「わが神、主よ。わたしに何をくださるというのですか。わたしには子供がありません。家を継ぐのはダマスコのエリエゼルです。 3 アブラムは言葉をついだ。「御覧のとおり、あなたはわたしに子孫を与えてくださいませんでしたから、家の僕が跡を継ぐことになっています。」 4 見よ、主の言葉があった。「その者があなたの跡を継ぐのではなく、あなたから生まれる者が跡を継ぐ。」 5 主は彼を外に連れ出して言われた。「天を仰いで、星を数えることができるなら、数えてみるがよい。」 そして言われた。 「あなたの子孫はこのようになる。」 6 アブラムは主を信じた。主はそれを彼の義と認められた。 7 主は言われた。 「わたしはあなたをカルデアのウルから導き出した主である。わたしはあなたにこの土地を与え、それを継がせる。」 8 アブラムは尋ねた。 「わが神、主よ。この土地をわたしが継ぐことを、何によって知ることができましょうか。」 9 主は言われた。 「三歳の雌牛と、三歳の雌山羊と、三歳の雄羊と、山鳩と、鳩の雛とをわたしのもとに持ってきなさい。」 10 アブラムはそれらのものをみな持って来て、真っ二つに切り裂き、それぞれを互いに向かい合わせて置いた。 ただ、鳥は切り裂かなかった。 11 はげ鷹がこれらの死体をねらって降りて来ると、アブラムは追い払った。 12 日が沈みかけたころ、アブラムは深い眠りに襲われた。すると、恐ろしい大いなる暗黒が彼に臨んだ。 13 主はアブラムに言われた。 「よく覚えておくがよい。あなたの子孫は異邦の国で寄留者となり、四百年の間奴隷として仕え、苦しめられるであろう。 14 しかしわたしは、彼らが奴隷として仕えるその国民を裁く。
その後、彼らは多くの財産を携えて脱出するであろう。 15 あなた自身は、長寿を全うして葬られ、安らかに先祖のもとに行く。 16 ここに戻ってくるのは、四代目の者たちである。それまではアモリ人の罪が極みに達しないからである。 17 日が沈み、暗闇に覆われたころ、突然、煙を吐く炉と燃える松明が二つに裂かれた動物の間を通り過ぎた。 18 その日、主はアブラムと契約を結んで言われた。 「あなたの子孫にこの土地を与える。エジプトの川から大河ユーフラテスに至るまで、 19 カイン人、ケナズ人、カドモニ人、 20 ヘト人、ペリジ人、レファイム人、 21 アモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人の土地を与える。」
創世記 契約と割礼
17
1 アブラムが九十九歳になったとき、主はアブラムに現れて言われた。「わたしは全能の神である。あなたはわたしに従って歩み、全き者となりなさい。 2 わたしは、あなたとの間にわたしの契約を立て、あなたをますます増やすであろう。」 3 アブラムはひれ伏した。神は更に、語りかけて言われた。 4 「これがあなたと結ぶわたしの契約である。あなたは多くの国民の父となる。 5 あなたは、もはやアブラムではなく、アブラハムと名乗りなさい。あなたを多くの国民の父とするからである。 6 わたしは、あなたをますます?栄させ、諸国民の父とする。王となる者たちがあなたから出るであろう。 7 わたしは、あなたとの間に、また後に続く子孫との間に契約を立て、それを永遠の契約とする。そして、あなたとあなたの子孫の神となる。 8 わたしは、あなたが滞在しているこのカナンのすべての土地を、あなたとその子孫に、永久の所有地として与える。わたしは彼らの神となる。」 9 神はまた、アブラムに言われた。「だからあなたも、わたしの契約を守りなさい、あなたも後に続く子孫も。 10 あなたたち、およびあなたの後に続く子孫と、わたしとの間で守るべき契約はこれである。すなわち、あなたたちの男子はすべて、割礼を受ける。 11 包皮の部分を切り取りなさい。これが、わたしとあなたたちとの間の契約のしるしとなる。 12 いつの時代でも、あなたたちの男子はすべて、直系の子孫はもちろんのこと、家で生まれた奴隷も、外国人から買い取った奴隷であなたの子孫でない者も皆、生れてから八日目に割礼を受けなければならない。 13 あなたのお家で生まれた奴隷も、買い取った奴隷も、必ず割礼を受けなければならない。それによって、わたしの契約はあなたの体に記されて永遠の契約となる。 14 包皮の部分を切り取らない無割礼の男がいたなら、その人は民の間から断たれる。わたしの契約を破ったからである。」 15 神はアブラムに言われた。「あなたの妻サライは、名前をサライではなく、サラと呼びなさい。 16 わたしは彼女を祝福し、彼女によってあなたに男の子を与えよう。わたしは彼女を祝福し、諸国民の母とする。諸民族の王となる者たちが彼女から出る。」 17 アブラハムひれ伏した。しかし笑って、ひそかに言った。「百歳の男に子供が生まれるだろうか。九十歳のサラに子供が産めるだろうか。」 18 アブラハムは神に言った。「どうか、イシュマエルが御前に生き永らえますように。」 19 神は言われた。「いや、あなたの妻サラがあなたとの間に男の子を産む。その子をイサク(彼は笑う)と名付けなさい。わたしは彼と契約を立て、彼の子孫のために永遠の契約とする。 20 イシュマエルについての願いも聞き入れよう。必ず、わたしは彼を祝福し、大いに子供を増やし繁栄させる。彼は十二人の首長の父となろう。わたしは彼を大いなる国民とする。 21 しかし、わたしの契約は、来年の今ごろ、サラがあなたとの間に産むイサクと立てる。」 22 神はこう語り終えると、アブラハムを離れて昇って行かれた。 23 アブラハムは、息子のイシュマエルをはじめ、家で生まれた奴隷や買い取った奴隷など、自分の家にいる人々のうち、男子を皆集めて、すぐその日に、神が命じられたとおり包皮に割礼を施した。 24 アブラハムが包皮に割礼を受けたのは、九十九歳、 25 息子イシュマエルが包皮に割礼を受けたのは、十三歳であった。 26 アブラハムと息子のイシュマエルは、すぐその日に割礼を受けた。 27 アブラハムの家の男子は、家で生まれた奴隷も外国人から買い取った奴隷も皆、共に割礼を受けた。
創世記 イサクの誕生の予告
18
1 主はマムレの樫の木の所でアブラハムに現れた。暑い真昼に、アブラハムは天幕の入り口に座っていた。 2 目を上げて見ると、三人の人が彼に向って立っていた。アブラハムはすぐに天幕の入り口から走り出て迎え、地にひれ伏して、 3 言った。「お客様、よろしければ、どうか、僕のもとを通り過ぎないでください。 4 水を少々持ってこさせますから、足を洗って、木陰でどうぞひと休みなさってください。 5 何か召し上がるものを調えますので、疲れをいやしてから、お出かけください。せっかく、僕の所の近くをお通りになったのですから。」その人たちは言った。「では、お言葉どおりにしましょう。」 6 アブラハムは急いで天幕に戻り、サラのところに来て言った。「早く、上等の小麦粉を三セアほどこねて、パン菓子をこしらえなさい。」 7 アブラハムは牛の群れのところへ走って行き、柔らかくておいしそうな子牛を選び、召し使いに渡し、急いで料理をさせた。 8 アブラハムは、凝乳、乳、出来立ての子牛の料理などを選び、彼らの前に並べた。そして、彼らが木陰で食事をしている間、そばに立って給仕をした。 9 彼らはアブラハムに尋ねた。「あなたの妻のサラはどこにいますか。」「はい、天幕の中におります」とアブラハムが答えると、 10 彼らの一人が言った。「わたしは来年の今ごろ、必ずここにまた来ますが、そのころには、あなたの妻のサラに男の子が生まれているでしょう。」サラは、すぐ後ろの天幕の入り口で聞いていた。 11 アブラハムもサラも多くの日を重ねて老人になっており、しかもサラは月のものがとうになくっていた。 12 サラはひそかに笑った。自分は年をとり、もはや楽しみがあるはずもなし、主人も年老いているのに、と思ったのである。13 主はアブラハムに言われた。「なぜサラは笑ったのか。なぜ年をとった自分に子供が生まれるはずがないと思ったのだ。 14 主に不可能なことがあろうか。来年の今ごろ、わたしはここに戻ってくる。そのころ、サラには必ず男の子が生まれている。」 15 サラは恐ろしくなり、打ち消して言った。「わたしは笑いませんでした。」主は言われた。「いや、あなたは確かに笑った。」
創世記 ソドムのための執り成し
16 その人たちはそこを立って、ソドムを見下ろす所まで来た。アブラハムも、彼らを見送るために一緒に行った。 17 主は言われた。「わたしが行おうとしていることをアブラハムに隠す必要があろうか。 18 アブラハムは大きな強い国民になり、世界のすべての国民は彼によって祝福に入る。 19 わたしがアブラハムを選んだのは、彼が息子たちとその子孫に、主の道を守り、主に従って正義を行うよう命じて、主がアブラハムに約束したことを成就するためである。 20 主は言われた。「ソドムとゴモラの罪は非常に重い、と訴える叫びが実に大きい。 21 わたしは降って行き、彼らの行跡が、果たして、わたしに届いた叫びのとおりかどうか見て確かめよう。」 22 その人たちは、更にソドムの方に向かったが、アブラハムはなお、主の御前にいた。 23 アブラハムは進み出て言った。「もことにあなたは、正しい者を悪い者と一緒に滅ぼされるのですか。 24 あの町に正しい者が五十人いるとしても、それでも滅ぼし、その五十人の正しい者のために、町をお赦しにはならないのですか。 25 正しい者を悪い者と一緒に殺し、正しい者を悪い者と同じ目に遭わせるようなことを、あなたがなさるはずはございません。全くありえないことです。全世界を裁くお方は、正義を行われるべきではありませんか。」 26 主は言われた。「もしソドムの町に正しい者が五十人いるならば、その者たちのために、町を全部赦そう。」 27 アブラハムは答えた。「塵にすぎないわたしですが、あえて、わが主に申し上げます。 28 もしかすると、五十人の正しい者に五人足りないかもしれません。それでもあなたは、五人たりないために、町のすべてを滅ぼされますか。」主は言われた。「もし、四十五人いれば滅ぼさない。」 29 アブラハムは重ねて言った。「もしかすると、四十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その四十人のためにわたしはそれをしない」 30 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう少し言わせてください。もしかすると、そこには三十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「もし三十人いるならわたしはそれはしない。」 31 アブラハムは言った。「あえて、わが主に申し上げます。もしかすると、二十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その二十人のためにわたしは滅ぼさない。」 32 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう一度だけ言わせてください。もしかすると、十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その十人のためにわたしは滅ぼさない。」 33 主はアブラハムと語り終えると、去って行かれた。アブラハムも自分の住まいに帰った。
創世記 ソドムの滅亡
19
1 二人の御使いが夕方ソドムに着いたとき、ロトはソドムの門の所に座っていた。ロトは彼らを見ると、立ち上って迎え、地にひれ伏して、 2 言った。 「皆様方、どうぞ僕(しもべ)の家に立ち寄り、足を洗ってお泊りください。彼らは言った。「いや、結構です。わたしたちはこの広場で夜を過ごします。」 3 しかし、ロトがぜひにと勧めたので、彼らはロトの所に立ちよることにし、彼の家を訪ねた。ロトは、酵母を入れないパンを焼いて食事を供し、彼らをもてなした。 4 彼らがまだ床に就かないうちに、ソドムの町の男たちが、若者も年寄りもこぞって押しかけ、家を取り囲んで、 5 わめきたてた。 「今夜、お前のところへ来た連中はどこにいる。ここへ連れてこい。なぶりものにしてやるから。」 6 ロトは、戸口の前にたむろしている男たちのところへ出て行き、後ろの戸を閉めて、 7 言った。 「どうか、皆さん、乱暴なことはしないでください。 8 実は、わたしにはまだ嫁がせていない娘が二人おります。皆さんにその娘たちを差し出しますから、好きなようにしてください。ただ、あの方々には何もしないでください。この家の屋根の下に身を寄せていただいたのですから。」 9 男たちは口々に言った。 「そこをどけ」 「こいつはよそ者のくせに、指図などして。」 「さあ、彼らより先に、お前を痛い目に遭わせてやる。」 そして、ロトに詰め寄って体を押しつけ、戸を破ろうとした。 10 二人の客はそのとき、手を伸ばして、ロトを家の中に引き入れて戸を閉め、 11 戸口の前に入る男たちに、老若を問わず、目つぶしを食わせ、戸口を分からなくした。 12 二人の客はロトに言った。 「ほかに、あなたの身内の人がこの町にいますか。あなたの婿や息子や娘などを皆連れてここから逃げなさい。 13 実は、わたしたちはこの町を滅ぼしに来たのす。大きな叫びが主にもとに届いたので、主は、この町を滅ぼすためにわたしたちを遣わされたのです。」 14 ロトは嫁いだ娘たちの婿のところへ行き、「さあ早くここから逃げるのだ。主がこの町を滅ぼされるからだ」と促したが、婿たちは冗談だと思った。 15 夜が明けるころ、御使いたちはロトをせきたてて言った。「さあ早く、あなたの妻とここにいる二人の娘を連れて行きなさい。さもないと、この町に下る罰の巻き添えになって滅ぼされてしまう。」 16 ロトはためらっていた。主は憐れんで、二人の客にロト、妻、二人の娘の手をとらせて町の外へ避難するようにされた。 17 彼らがロトたちを町外れへ連れ出したとき、主は言われた。 「命がけで逃れよ。後ろを振り返ってはいけない。低地のどこにもとどまるな。山へ逃げなさい。さもないと、滅びることになる。」 18 ロトは言った。 「主よ、できません。
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2021年10月06日
創世記 ソドムの滅亡 19-15,19-16
創世記 天地の創造
1
1 初めに、神は天地を創造された。 2 地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、?~の靈が水の面を動いていた。 3 ?~は言われた。「光あれ。」こうして、光があった。 4 ?~は光を見て、良しとされた。?~は光と闇を分け、 5 光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第一の日である。6 ?~は言われた。「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。」 7 ?~は大空を造り、大空の下と大空の上に水を分けさせられた。そのようになった。 8 ?~は大空を天と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第二の日である。 9 ?~は言われた。「天の下の水は一つ所に集まれ。乾いた所が現れよ。」そのようになった。 10 神は乾いた所を地と呼び、水の集まった所を海と呼ばれた。神はこれを見て、良しとされた。 11 神は言われた。「地は草を芽生えさせよ。種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける果樹を、地に芽生えさせよ。」そのようになった。 12 地は草を芽生えさせ、それぞれの種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける木を芽生えさせた。?~はこれを見て、良しとされた。 13 夕べがあり、朝があった。第三の日である。 14 神は言われた。「天の大空に光る物があって、昼と夜を分け、季節のしるし、日や年のしるしとなれ。 15 天の大空に光る物があって、地を照らせ。」そのようになった。 16 ?~は二つの大きな光る物と星を造り、大きな方に昼を治めさせ、小さな方に夜を治めさせられた。 17 ?~はそれらを天の大空に置いて、地を照らさせ、 18 昼と夜を治めさせ、光と闇を分けさせられた。?~はこれを見て、良しとされた。 19 夕べがあり、朝があった。第四の日である。 20 ?~は言われた。「生き物が水の中に群がれ。鳥は地の上、天の大空の面を飛べ。」 21 ?~は水に群がるもの、すなわち大きな怪物、うごめく生き物をそれぞれに、また、翼ある鳥をそれぞれに創造された。?~はこれを見て、良しとされた。 22 ?~はそれらのものを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、海の水に満ちよ。鳥は地の上に増えよ。」 23 夕べがあり、朝があった。第五の日である。 24 ?~は言われた。「地は、それぞれの生き物を産み出せ。家畜、這うもの、地の獣をそれぞれに産み出せ。」そのようになった。 25 ?~はそれぞれの地の獣、それぞれの家畜、それぞれの土を這うものを造られた。?~はこれを見て、良しとされた。 26 ?~は言われた。「我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。そして海の魚、空の鳥、家畜、地の獣、地を這うものすべてを支配させよう。」 27 ?~は御自分にかたどって人を創造された。?~にかたどって創造された。男と女に創造された。28 ?~は彼らを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ。」 29 ?~は言われた。「見よ、全地に生える、種を持つ草と種を持つ実をつける木を、すべてあなたたちに与えよう。それがあなたたちの食べ物となる。 30 地の獣、空の鳥、地を這うものなど、すべて命あるものにはあらゆる青草をたべさせよう。」そのようになった。 31 ?~はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった。夕べがあり、朝があった。第六の日である。
2
1 天地万物は完成された。 2 第七の日に、?~は御自分の仕事を完成され、第七の日に、神は御自分の仕事を離れ、安息なさった。 3 この日に?~はすべての創造の仕事を離れ、安息なさったので、第七の日を?~は祝福し、聖別された。 4 これが天地創造の由来である。主なる?~が地と天を造られたとき、 5 地上には野の木も、野の草も生えていなかった。主なる?~が地上に雨をお送りにならなかったからである。また土を耕す人もいなかった。 6 しかし、水が地下から湧き出て、土の面をすべて潤した。 7 主なる?~は、土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった。 8 主なる?~は、東の方のエデンに園を設け、自ら形づくった人をそこに置かれた。 9 主なる?~は、見るからに好ましく、食べるに良いものをもたらすあらゆる木を地に生えいでさせ、また園の中央には、命の木と善悪の知識の木を生えいでさせられた。 10 エデンから一つの川が流れ出ていた。園を潤し、そこで分かれて、四つの川となっていた。 11 第一の川の名はピションで、金を産出するハビラ地方全域を巡っていた。 12 その金は良質であり、そこではまた、琥珀の類やラピス・ラズリも産出した。 13 第二の川の名はギホンで、クシュ地方全域を巡っていた。 14 第三の川の名はチグリスで、アシュルの東の方を流れており、第四の川の名はユーフラテスであった。 15 主なる?~は人を連れて来て、エデンの園に住まわせ、人がそこを耕し、守るようにされた。 16 主なる?~は人に命じて言われた。「園のすべての木から取って食べなさい。 17 ただし、善悪の知識の木からは、決して食べてはならない。食べると必ず死んでしまう。」 18 主なる?~は言われた。「人が一人でいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう。」 19 主なる?~は、野のあらゆる獣、空のあらゆる鳥を土で形づくり、人のところへ持って来て、人がそれぞれどう呼ぶか見ておられた。人が呼ぶと、それはすべて、生き物の名となった。 20 人はあらゆる家畜、空の鳥、野のあらゆる獣に名を付けたが、自分に合う助ける者は見つけることができなかった。 21 主なる?~はそこで、人を深い眠りに落とされた。人が眠り込むと、あばら骨の一部を抜き取り、その跡を肉でふさがれた。 22 そして、人から抜き取ったあばら骨で女を造り上げられた。主なる?~が彼女を人のところへ連れて来られると、 23 人は言った。「ついに、これこそわたしの骨の骨わたしの肉の肉。これこそ、女(イシャー)と呼ぼう まさに、男(イシュ)から取られたものだから。」 24 こういうわけで、男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる。 25 人と妻は二人とも裸であったが、恥ずかしがりはしなかった。
創世記 蛇の誘惑
3
1 主なる?~が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった。蛇は女に言った。「園のどの木からも食べてはいけない、などと神は言われたのか。」 2 女は蛇に答えた。「わたしたちは園の木の果実を食べてよいのです。 3 でも、園の中央に生えている木の果実だけは、食べてはいけない。触れてもいけない、死んではいけないから、と?~様はおっしゃいました。」 4 蛇は女に言った。「決して死ぬことはない。 5 それを食べると、目が開け、?~のように善悪を知るものとなることを?~はご存じなのだ。」 6 女が見ると、その木はいかにもおいしそうで、目を引き付け、賢くなるように唆していた。女は実を取って食べ、一緒にいた男にも渡したので、彼も食べた。 7 二人の目は開け、自分たちが裸であることを知り、二人はいちじくの葉をつづり合わせ、腰を覆うものとした。 8 その日、風の吹くころ、主なる?~が園の中を歩く音が聞こえてきた。アダムと女が、主なる?~の顔を避けて、園の木の間に隠れると、 9 主なる?~はアダムを呼ばれた。「どこにいるのか」 10 彼は答えた。「あなたの足音が園の中に聞こえたので、恐ろしくなり、隠れております。わたしは裸ですから。」 11 ?~は言われた。「お前が裸であることを誰が告げたのか。取って食べるなと命じた木から食べたのか。」 12 アダムは答えた。「あなたがわたしと共にいるようにしてくださった女が、木から取って与えたので、食べました。」 13 主なる?~は女に向かって言われた。「何ということをしたのか。」女は答えた。「蛇がだましたので、食べてしまいました。」 14 主なる?~は、蛇に向かって言われた。「このようなことをしたお前はあらゆる家畜、あらゆる野の獣の中で呪われるものとなった。お前は、生涯這いまわり、塵を食らう。 15 お前と女、お前の子孫と女の子孫の間にわたしは敵意を置く。彼はお前の頭を砕き お前は彼のかかとを砕く。」 16 ?~は女に向かって言われた。「お前のはらみの苦しみを大きなものにする。お前は、苦しんで子を産む。お前は男を求め 彼はお前を支配する。」 17 ?~はアダムに向かって言われた。「お前は女の声に従い 取って食べるなと命じた木から食べた。お前のゆえに、土は呪われるものとなった。お前は、生涯食べ物を得ようと苦しむ。 18 お前に対して 土は茨とあざみを生えいでさせる 野の草を食べようとするお前に。 19 お前は顔に汗を流してパンを得る 土に返るときまで。お前がそこから取られた土に。塵にすぎないお前は塵に返る。」 20 アダムは女をエバ(命)と名付けた。彼女がすべて命あるものの母となったからである。 21 主なる?~は、アダムと女に皮の衣を作って着せられた。 22 主なる?~は言われた。「人は我々の一人のように、善悪を知る者となった。今は、手を伸ばして命の木からも取って食べ、永遠に生きる者となるおそれがある。」 23 主なる?~は、彼をエデンの園から追い出し、彼に、自分がそこから取られた土を耕させることにされた。 24 こうしてアダムを追放し、命の木に至る道を守るために、エデンの園の東にケルビムと、きらめく剣の炎を置かれた。
創世記 カインとアペル
4
1 さて、アダムは妻エバを知った。彼女は身ごもってカインを産み、「わたしは主によって男子を得た」と言った。 2 彼女はまたその弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。 3 時を経て、カインは土の実りを主のもとに献げ物として持って来た。 4 アベルは羊の群れの中から肥えた初子を持って来た。主はアベルとその献げ物に目を留められたが、 5 カインとその献げ物には目を留められなかった。カインは激しく怒って顔を伏せた。 6 主はカインに言われた。「どうして怒るのか。どうして顔を伏せるのか。 7 もしお前が正しいなら、顔を上げられるはずではないか。正しくないなら、罪は戸口で待ち伏せており、お前を求める。お前はそれを支配せねばならない。」 8 カインが弟アベルに言葉をかけ、二人が野原に着いたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。 9 主はカインに言われた。「お前の弟アベルは、どこにいるのか。」カインは答えた。「知りません。わたしは弟の番人でしょうか。」 10 主は言われた。「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。 11 今、お前は呪われる者となった。お前が流した弟の血を、口を開けて飲み込んだ土よりもなお、呪われる。 12 土を耕しても、土はもはやお前のために作物を産み出すことはない。お前は地上をさまよい、さすらう者となる。」 13 カインは主に言った。「わたしの罪は重すぎて負いきれません。 14 今日、あなたがわたしをこの土地から追放なさり、わたしが御顔から隠されて、地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう。」 15 主はカインに言われた。「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。 16 カインは主の前を去り、エデンの東、ノド(さすらい)の地に住んだ。 17 カインは妻を知った。彼女は身ごもってエノクを産んだ。カインは町を建てていたが、その町を息子の名前にちなんでエノクと名付けた。 18 エノクにはイラドが生まれた。イラドはメフヤエルの父となり、メフヤエルはメトシャエルの父となり、メトシャエルはレメクの父となった。
19 レメクは二人の妻をめとった。一人はアダ、もう一人はツィラと言った。 20 アダはヤバルを産んだ。ヤバルは、家畜を飼い天幕に住む者の先祖となった。 21 その弟はユバルといい、竪琴や笛を奏でる者すべての先祖となった。 22 ツィラもまた、トバル・カインを産んだ。彼は青銅や鉄でさまざまの道具を作る者となった。トバル・カインの妹はナアマといった。 23 さて、レメクは妻に言った。「アダとツィラよ、わが声を聞け。レメクの妻たちよ、わが言葉に耳を傾けよ。わたしは傷の報いに男を殺し 打ち傷の報いに若者を殺す。 24 カインのための復讐が七倍なら レメクのためには七十七倍。」 25 再び、アダムは妻を知った。彼女は男の子を産み、セトと名付けた。カインがアベルを殺したので、?~が彼に代わる子を授け(シャト)られたからである。 26 セトにも男の子が生まれた。彼はその子をエノシュと名付けた。主の御名を呼び始めたのは、この時代のことである。
創世記 アダムの系図
5
1 これはアダムの系図の書である。?~は人を創造された日、?~に似せてこれを造られ、 2 男と女に創造された。創造の日に、彼らを祝福されて、人と名付けられた。 3 アダムは百三十歳になったとき、自分に似た、自分にかたどった男の子をもうけた。アダムはその子をセトと名付けた。 4 アダムは、セトが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 5 アダムは九百三十年生き、そして死んだ。 6 セトは百五歳になったとき、エノシュをもうけた。 7 セトはエノシュが生まれた後八百七年生きて、息子や娘をもうけた。 8 セトは九百十二年生き、そして死んだ。 9 エノシュは九十歳になったとき、ケナンをもうけた。 10 エノシュは、ケナンが生まれた後八百十五年生きて、息子や娘をもうけた。 11 エノシュは九百五年生き、そして死んだ。 12 ケナンは七十歳になったとき、マハラルエルをもうけた。 13 ケナンはマハラルエルが生まれた後八百四十年生きて、息子や娘をもうけた。 14 ケナンは九百十年生き、そして死んだ。 15 マハラルエルは六十五歳になったとき、イエレドをもうけた。 16 マハラルエルは、イエレドが生まれた後八百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 17 マハラルエルは八百九十五年生き、そして死んだ。 18 イエレドは百六十二歳になったとき、エノクをもうけた。 19 イエレドは、エノクが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 20 イエレドは九百六十二年生き、そして死んだ。 21 エノクは六十五歳になったとき、メトシェラもうけた。 22 エノクは、メトシェラが生まれた後、三百年?~と共に歩み、息子や娘をもうけた。 23 エノクは三百六十五年生きた。 24 エノクは?~と共に歩み、?~が取られたのでいなくなった。 25 メトシェラは百八十七歳になったとき、レメクをもうけた。 26 メトシェラは、レメクが生まれた後七百八十二年生きて、息子や娘をもうけた。 27 メトシェラは九百六十九年生き、そして死んだ。 28 レメクは百八十二歳になったとき、男の子をもうけた。 29 彼は、「主の呪いを受けた大地で働く我々の手の苦労を、この子は慰めてくれるだろう」と言って、その子をノア(慰め)と名付けた。 30 レメクは、ノアが生まれた後五百九十五年生きて、息子や娘をもうけた。 31 レメクは七百七十七年生き、そして死んだ。 32 ノアは五百歳になったとき、セム ハム ヤフェトをもうけた。
創世記 洪水
6
1 さて、地上に人が増え始め、娘たちが生まれた。 2 ?~の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、おのおの選んだ者を妻にした。 3 主は言われた。 「わたしの霊は人の中に永久にとどまるべきではない。人は肉にすぎないのだから。」こうして、人の一生は百二十年となった。 4 当時もその後も、地上にはネフィリムがいた。これは、?~の子らが人の娘たちのところに入って産ませた者であり、大昔の名高い英雄たちであった。 5 主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、 6 地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた。 7 主は言われた。 「わたしは人を創造したが、これを地上からぬぐい去ろう。人だけでなく、家畜も這うものも空の鳥も。わたしはこれらを造ったことを後悔する。」 8 しかし、ノアは主の好意を得た。 9 これはノアの物語である。その世代の中で、ノアは?~に従う無垢な人であった。ノアは?~と共に歩んだ。 10 ノアには三人の息子、セム ハム ヤフェトが生まれた。 11 この地は?~の前に堕落し、不法に満ちていた。 12 ?~は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。 13 ?~はノアに言われた。「すべて肉なるものを終わらせる時がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす。 14 あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟には小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。 15 次のようにしてそれを造りなさい。箱舟の長さを三百アンマ、幅を五十アンマ、高さを三十アンマにし、 16 箱舟に明かり取りを造り、上から一アンマにして、それを仕上げなさい。箱舟の側面には戸口を造りなさい。また、一階と二階と三階を造りなさい。 17 見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊をもつ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべてのものは息絶える。 18 わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。 19 また、すべて命あるもの、すべて肉なるものから、二つずつ箱舟に連れて入り、あなたと共に生き延びるようにしなさい。それらは、雄と雌でなければならない。 20 それぞれの鳥、それぞれの家畜、それぞれの地を這うものが、二つずつあなたのところへ来て、生き延びるようにしなさい。 21 更に、食べられる物はすべてあなたのところに集め、あなたと彼らの食料としなさい。」 22 ノアは、すべて?~が命じられたとおりに果たした。
7
1 主はノアに言われた。「さあ、あなたとあなたの家族は皆、箱舟に入りなさい。この世代の中であなただけはわたしに従う人だと、わたしは認めている。 2 あなたは清い動物をすべて七つがい取り、また、清くない動物をすべて一つがいずつ取りなさい 3 空の鳥も七つがい取りなさい。全地の面に子孫が生き続けるように。 4 七日の後、わたしは四十日四十夜地上に雨を降らせ、わたしが造ったすべての生き物を地の面からぬぐい去ることにした。」 5 ノアはすべて主が命じられたとおりにした。 6 ノアが六百歳のとき、洪水が地上に起こり、水が地の上にみなぎった。 7 ノアは妻子や嫁たちと共に洪水を免れようと箱舟に入った。 8 清い動物も清くない動物も、鳥も地を這うものもすべて、 9 二つずつ箱舟のノアのもとに来た。それは?~がノアに命じられたとおりに、雄と雌であった。 10 七日が過ぎて、洪水が地上起こった。 11 ノアの生涯の第六百年、第二の月の十七日、この日、大いなる深淵の源がことごとく裂け、天の窓が開かれた。 12 雨が四十日四十夜地上に降り続いたが、 13 まさにこの日、ノアも、息子のセム、ハム、ヤフェト、ノアの妻、この三人の息子の嫁たちも、箱舟に入った。 14 彼らと共にそれぞれの獣、それぞれの家畜、それぞれの地を這うもの、それぞれの鳥、小鳥や翼のあるものすべて、 15 命の霊をもつ肉なるものは、二つずつノアのもとに来て箱舟に入った。 16 ?~が命じられたとおりに、すべて肉なるものの雄と雌とが来た。主は、ノアの後ろで戸を閉ざされた。 17 洪水は四十日間地上を覆った。水は次第に増して箱舟を押し上げ、箱舟は大地を離れて浮かんだ。 18 水は勢力を増し、地の上に大いにみなぎり、箱舟は水の面を漂った。 19 水はますます勢いを加えて地上にみなぎり、およそ天の下にある高い山はすべて覆われた。 20 水は勢い増して更にその上十五アンマに達し、山々を覆った。 21 地上で動いていた肉なるものはすべて、鳥も家畜も獣も地に群がり這うものも人も、ことごとく息絶えた。 22 乾いた地のすべてのもののうち、その鼻に命の息と霊のあるものはことごとく死んだ。 23 地の面にいた生き物はすべて、人をはじめ、家畜、這うもの、空の鳥に至るまでぬぐい去られた。彼らは大地からぬぐい去られ、ノアと、彼と共に箱舟にいたものだけが残った。 24 水は百五十日の間、地上で勢いを失わなかった。
8
1 神は、ノアと彼と共に箱舟にいたすべての獣とすべての家畜を御心に留め、地の上に風を吹かせられたので、水が減り始めた。 2 また、深淵の源と天の窓が閉じられたので、天からの雨は降りやみ、 3 水は地上からひいて行った。百五十日の後には水が減って、 4 第七の月の十七日に箱舟はアララト山の上に止まった。 5 水はますます減って第十の月になり、第十の月の一日には山々の頂が現れた。 6 四十日たって、ノアは自分が造った箱舟の窓を開き、烏を放した。烏は飛び立ったが、地上の水が乾くのを待って、出たり入ったりした。 8 ノアは鳩を彼のもとから放して、地の面から水がひいたかどうかを確かめようとした。 9 しかし、鳩は止まる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰って来た。水がまだ全地の面を覆っていたからである。ノアは手を差し伸べて鳩を捕らえ、箱舟の自分のもとに戻した。 10 更に七日待って、彼は再び鳩を箱舟から放した。 11 鳩は夕方になってノアのもとに帰って来た。見よ、鳩はくちばしにオリーブの葉をくわえていた。ノアは水が地上からひいたことを知った。 12 彼は更に七日待って、鳩を放した。鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。 13 ノアが六百一歳のとき、最初の月の一日に、地上の水は乾いた。ノアは箱舟の覆いを取り外して眺めた。見よ、地の面は乾いていた。 14 第二の月の二十七日になると、地はすっかり乾いた。 15 神はノアに仰せになった。 「さあ、あなたもあなたの妻も、息子も嫁も、皆一緒に箱舟から出なさい。 17 すべて肉なるもののうちからあなたのもとに来たすべての動物、鳥も家畜も地を這うものも一緒に連れ出し、地に群がり、地上で子を産み、増えるようにしなさい。」 18 そこで、ノアは息子や妻や嫁と共に外へ出た。 19 獣、這うもの、鳥、地に群がるもの、それぞれすべて箱舟から出た。 20 ノアは主のために祭壇を築いた。そしてすべての清い家畜と清い鳥のうちから取り、焼き尽くす捧げ物として祭壇の上にささげた。 21 主は宥めの香りをかいで、御心に言われた。「人に対して大地を呪うことは二度とすまい。人が心に思うことは、幼いときから悪いのだ。わたしは、この度したように生き物をことごとく打つことは、二度とすまい。 22 地の続くかぎり、種蒔きも刈り入れも 寒さも暑さも、夏も冬も 昼も夜も、やむことはない。」
創世記 祝福と契約
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1 ?~はノアと彼の息子たちを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちよ。 2 地のすべての獣と空のすべての鳥は、地を這うすべてのものと海のすべての魚と共に、あなたたちの前に恐れおののき、あなたたちの手にゆだねられる。 3 動いている命あるものは、すべてあなたたちの食糧とするがよい。わたしはこれらすべてのものを、青草と同じようにあなたたちに与える。 4 ただし、肉は命である血を含んだまま食べてはならない。 5 また、あなたたちの命である血が流された場合、わたしは賠償を要求する。いかなる獣からも要求する。人間どうしの血については、人間から人間の命を賠償として要求する。 6 人の血を流す者は 人によって自分の血を流される。人は?~にかたどって造られたからだ。 7 あなたたちは産めよ、増えよ 地に群がり、地に増えよ。」 8 ?~はノアと彼の息子たちに言われた。 9 「わたしは、あなたたちと、そして後に続く子孫と、契約を立てる。 10 あなたたちと共にいるすべての生き物、またあなたたちと共にいる鳥や家畜や地のすべての獣など、箱舟から出たすべてのもののみならず、地のすべての獣と契約を立てる。 11 わたしがあなたたちと契約を立てたならば、二度と洪水によって肉なるものが滅ぼされることはなく、洪水が起こって地を滅ぼすことも決してない。」 12 更に?~は言われた。「あなたたちならびにあなたたちと共にいるすべての生き物と、代々(よよ)とこしえにわたしが立てる契約のしるしはこれである。 13 すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立てた契約のしるしとなる。 14 わたしが地の上に雲を湧き起こらせ、雲の中に虹が現れると、 15 わたしは、わたしとあなたたちならびにすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた契約に心を留める。水が洪水となって、肉なるものをすべて滅ぼすことは決してない。 16 雲の中に虹が現れると、わたしはそれを見て、神と地上のすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた永遠の契約に心をと留める。」 17 ?~はノアに言われた。「これが、わたしと地上のすべて肉なるものとの間にたてた契約のしるしである。」
創世記 ノアと息子たち
18 箱舟から出たノアの息子は、セム、ハム、ヤフェトであった。ハムはカナンの父である。 19 この三人がノアの息子で、全世界の人々は彼らから出て広がったのである。 20 さて、ノアは農夫となり、ぶどう畑を作った。 21 あるとき、ノアはぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。 22 カナンの父ハムは、自分の父の裸を見て、外にいた二人の兄弟に告げた。 23 セムとヤフェトは着物を取って自分たちの肩に掛け、後ろ向きに歩いて行き、父の裸を覆った。二人は顔を背けたままで、父の裸を見なかった。 24 ノアは酔いからさめると、末の息子がしたことを知り、 25 こう言った。「カナンは呪われよ 奴隷の奴隷となり、兄たちに仕えよ。」 26 また言った。「セムの神、主をたたえよ。 カナンはセムの奴隷となれ。
27 神がヤフェトの土地を広げ(ヤフェト) セムの天幕に住まわせ カナンはその奴隷となれ。」 28 ノアは、洪水の後三百五十年生きた。 29 ノアは九百五十歳になって、死んだ。
創世記 ノアの子孫
10
1 ノアの息子、セム、ハム、ヤフェトの系図は次のとおりである。洪水の後、彼らに息子が生まれた。 2 ヤフェトの子孫はゴメル、マゴグ、メディア、ヤワン、トバル、メシェク、ティラスであった。 3 ゴメルの子孫は、アシュケナズ、リファト、トガルマであった。 4 ヤワンの子孫は、エリシャ、タルシシュ、キティム、ロダニムであった。 5 海沿いの国々は、彼らから出て、それぞれの地に、その言語、氏族、民族に従って住むようになった。 6 ハムの子孫は、クシュ、エジプト、プト、カナンであった。 7 クシュの子孫はセバ、ハビラ、サブタ、ラマ、サブテカであり、ラマの子孫はシェバとデダンであった。 8 クシュにはまた、ニムロドが生まれた。ニムロドは地上で最初の勇士となった。 9 彼は、主の御前に勇敢な狩人であり、「主の御前に勇敢な狩人ニムドロのようだ」という言い方がある。 10 彼の王国の主な町は、バベル、ウルク、アッカドであり、それらはすべてシンアルの地にあった。 11 彼はその地方からアッシリに進み、ニネベ、レホボト・イル、カラ、 12 レセンを建てた。レセンはニネベとカラとの間にある、非常に大きな町であった。 13 エジプトにはリディア人、アルミナ人、レハビム人、ナフトヒム人、 14 上エジプト人、カスルヒム人、カフトル人が生まれた。このカフトル人からペリシテ人が出た。
15 カナンには長男シドンとヘト、 16 また、エブス人、アモリ人、ギルガシ人、 17 ヒビ人、アルキ人、シニ人、 18 アルワド人、フェマリ人、ハマト人が生まれた。その後、カナン人の諸氏族が広がった。 19 カナン人の領土は、シドンから南下してゲラルを経てガザまでを含み、更に、ソドム、ゴモラ、アドマ、ツェボイムを経てラシャまでを含んだ。 20 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたハムの子孫である。 21 セムにもまた子供が生まれた。彼はエベルのすべての子孫の先祖であり、ヤフェトの兄であった。 22 セムの子孫はエラム、アシュル、アルパクシャド、ルド、アラムであった。 23 アラムの子孫は、ウツ、フル、ゲテル、マシュであった。 24 アルパクシャドにはシェラが生まれ、シェラにはエベルが生まれた。 25 エベルには二人の息子が生まれた。ひとりの名は、その時代に土地が分けられた(パラグ)ので、ペレグといい、その兄弟はヨクタンといった。 26 ヨクタンには、アルモダド、シェレフ、ハツァルマベト、イエラ、 27 ハドラム、ウザル、ディクラ、 28 オバル、アビマエル、シェバ、 29 オフィル、ハビラ、ヨバブが生まれた。これらは皆、ヨクタンの息子であった。 30 彼らはメシャからセファルに至る東の高原地帯に住んでいた。 31 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたセムの子孫である。 32 ノアの子孫である諸氏族を、民族ごとの系図にまとめると以上のようになる。地上の諸民族は洪水の後、彼らから分かれ出た。
創世記 バベルの塔
11
1 世界中は同じ言葉を使って、同じように話していた。 2 東の方から移動してきた人々は、シンアルの地に平野を見つけ、そこに住み着いた。 3 彼らは、「れんがを作り、それをよく焼こう」と話し合った。石の代わりにれんがを、しっくいの代わりにアスファルトを用いた。 4 彼らは、「さあ 天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。 5 主は降って来て、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、 6 言われた。「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。 7 我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」 8 主は彼らをそこから全地に散らされたので、彼らはこの町の建設をやめた。 9 こういうわけで、この町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ、また、主がそこから彼らを全地に散らされたからである。
創世記 セムの系図
10 セムの系図は次のとおりである。セムが百歳になったとき、アルバクシャドが生まれた。それは洪水の二年後のことであった。 11 セムは、アルパクシャドが生まれた後五百年生きて、息子や娘をもうけた。 12 アルパクシャドが三十五歳になったとき、シェラが生まれた。 13 アルパクシャドは、シェラが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 14 シェラが三十歳になったとき、エベルが生まれた。 15 シェラは、エベルが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 16 エベルが三十四歳になったとき、ぺレグが生まれた。 17 エベルは、ぺレグが生まれた後四百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 18 ぺレグが三十歳になったとき、レウが生まれた。 19 ぺレグは、レウが生まれた後二百九年生きて、息子や娘をもうけた。 20 レウが三十二歳になったとき、セルグが生まれた。 21 レウは、セルグが生まれた後二百七年生きて、息子や娘をもうけた。 22 セルグ三十歳なったとき、ナホルが生まれた。 23 セルグは、ナホルが生まれた後二百年生きて、息子や娘をもうけた。 24 ナホルが二十九歳になったとき、テラが生まれた。 25 ナホルは、テラが生まれた後百十九年生きて、息子や娘をもうけた。 26 テラが七十歳になったとき、アブラム、ナホル、ハランが生まれた。
創世記 テラの系図
27 テラの系図は次のとおりである。テラにはアブラム、ナホル、ハランが生まれた。ハランにはロトが生まれた。 28 ハランは父のテラより先に、故郷カルデアのウルで死んだ。 29 アブラムとナホルはそれぞれ妻をめとった。アブラムの妻の名はサライ、ナホルの妻の妻の名はミルカといった。ミルカはハランの娘である。ハランはミルカとイスカの父であった。 30 サライは不妊の女で、子供ができなかった。 31 テラは、息子アブラムと、ハランの息子で自分の孫であるロト、および息子アブラムの妻で自分の嫁であるサライを連れて、カルデアのウルを出発し、カナン地方に向った。彼らはハランまで来ると、そこにとどまった。 32 テラは二百五年の生涯を終えて、ハランで死んだ。
創世記 アブラムの召命と移住
12
1 主はアブラムに言われた。「あなたは生まれ故郷 父の家を離れて わたしが示す地に行きなさい 2 わたしはあなたを大いなる国民にし あなたを祝福し あなたに名を高める 祝福の源となるように 3 あなたを祝福する人をわたしは祝福し あなたを呪う者をわたしは呪う。 地上の氏族はすべて あなたによって祝福に入る。」 4 アブラムは 主の言葉に従って旅立った。ロトも共に行った。アブラムは、ハランを出発したとき七十五歳であった。 5 アブラムは妻のサライ、甥のロトを連れ、蓄えた財産をすべて携え、ハランで加わった人々と共にカナン地方へ向かって出発し、カナン地方入った。 6 アブラムはその地を通り、シケムの聖所、モレの樫の木まで来た。当時、その地方にはカナン人が住んでいた。 7 主はアブラムに現れて、言われた。「あなたの子孫のこの地を与える」アブラムは、彼に現れた主のために、そこに祭壇を築いた。 8 アブラムは、そこからベテルの東の山へ移り、西にベテル、東にアイを望む所に天幕を張って、そこにも主のために祭壇を築き、主の御名を呼んだ。 9 アブラムは更に旅を続け、ネゲブ地方に移った。
創世記 エジプト滞在
10 その地方に飢饉があった。 アブラムは、その地方の飢饉がひどかったので、エジプトに下り、そこに滞在することにした。 11 エジプトに入ろうしたとき、妻サライに言った。 「あなたが美しいのを、わたしはよく知っている。 12 エジプト人があなたを見たら、『この女はあの男の妻だ』と言って、わたしを殺し、あなたを生かしておくにちがいない。 13 どうか、わたしの妹だ、と言ってください。 そうすれば、わたしはあなたのゆえに幸いになり、あなたのお陰で命も助かるだろう。」 14 アブラムがエジプトに入ると、エジプト人はサライを見て、大変美しいと思った。 15 ファラオの家臣たちも彼女を見て、ファラオに彼女のことを褒めたので、サライはファラオの宮廷に召し入れられた 16 アブラムも彼女のゆえに幸いを受け、羊の群れ、牛の群れ、ろば、男女の奴隷、雌ろば、らくだなどを与えられた。 17 ところが主は、アブラムの妻サライのことで、ファラオと宮廷の人々を恐ろしい病気にかからせた。 18 ファラオはアブラムを呼び寄せて言った。 「あなたはわたしに何ということをしたのか。 なぜ、あの婦人は自分の妻だと、言わなかったのか。 19 なぜ、『わたしの妹です』などと言ったのか。 だからこそ、わたしの妻として召し入れたのだ。 さあ、あなたの妻を連れて、立ち去ってもらいたい。 20 ファラオは家来たちに命じて、アブラムを、その妻とすべての持ち物と共に送り出させた。
創世記 ロトとの別れ
13
1 アブラムは、妻と共に、すべての持ち物を携え、エジプトを出て再びネゲブ地方へ上った。ロトも一緒であった。 2 アブラムは非常に多くの家畜や金銀を持っていた。 3 ネゲブ地方から更に、ベテルに向って旅を続け、ベテルとアイとの間の、以前に天幕を張った所まで来た。 4 そこは、彼が最初に祭壇を築いて、主の御名を呼んだ場所であった。 5 アブラムと共に旅をしていたロトもまた、羊や牛の群れを飼い、たくさんの天幕を持っていた。 6 その土地は、彼らが一緒に住むには十分ではなかった。 彼らの財産が多すぎたから、一緒に住むことができなかったのである。 7 アブラムの家畜を飼う者たちと、ロトの家畜を飼うものたちとの間に争いが起きた。 そのころ、その地方にはカナン人もペリジ人も住んでいた。 8 アブラムはロトに言った。 「わたしたちは親類どうしだ。わたしとあなたの間ではもちろん、お互いの羊飼いの間でも争うのはやめよう。 9 あなたの前には幾らでも土地があるのだから、ここで別れようではないか。 あなたが左に行くなら、わたしは右に行こう。 あなたが右に行くなら、わたしは左に行こう。」 10 ロトが目を上げて眺めると、ヨルダン川流域の低地一帯は、 主がソドムとゴモラを滅ぼす前であったので、ツォアルに至るまで、主の園のように、エジプトの国のように、見渡すかぎりよく潤っていた。 11 ロトはヨルダン川流域の低地一帯を選んで、東へ移って行った。こうして彼らは、左右に別れた。 12 アブラムはカナン地方に住み、ロトは低地の町々に住んだが、彼はソドムまで天幕を移した。 13 ソドムの住民は邪悪で、主に対して多くの罪を犯していた。 14 主は、ロトが別れて行った後、アブラムに言われた。「さあ、目を上げて、あなたがいる場所から東西南北を見渡しなさい。 15 見えるかぎりの土地をすべて、わたしは永久にあなたとあなたの子孫に与える。 16 あなたの子孫を大地の砂粒のようにする。大地の砂粒が数えきれないように、あなたの子孫も数えきれないであろう。 17 さあ、この土地を縦横に歩き回るがよい。わたしはそれをあなたに与えるから。」 18 アブラムは天幕を移し、ヘブロンにあるマムレの樫の木のところに来て住み、そこに主のために祭壇を築いた。
王との戦い
14
1 シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨク、エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアルが、 2 ソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アドマの王シンアブ、ツェボイムの王シェムエベル、ベラ、すなわちツオワルの王と戦ったとき、 3 これら五人の王は皆、シディムの谷、すなわち塩の海で同盟を結んだ。 4 彼らは十二年間ケドルラオメルに支配されていたが、十三年目に背いたのである。 5 十四年目に、ケドルラオメルとその味方の王たちが来て、アシュテロト・カルナイムでレファイム人を、ハムでズジム人を、シャベ・キルヤタイムでエミル人を、 6 セイルの山地でフリ人人を撃ち、荒れ野に近いエル・バランまで進んだ。 7 彼らは転進して、エン・ミシュパト、すなわちカデシュに向かい、アマレク人の全領土とハツェツオン・タマルに住むアモリ人を撃った。 8 そこで、ソドムの王、ゴモラの王、アドマの王、ツェボイムの王、ベラすなわちツォアルの王は兵を繰り出し、シディムの谷で彼らと戦おうと陣を敷いた。 9 エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアル、シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨクの四人の王に対して、これら五人の王が戦いを挑んだのである。 10 シディムの谷には至るところに天然アスファルトの穴があった。ソドムとゴモラの王は逃げるとき、その穴に落ちた。残りの王は山へ逃れた。 11 ソドムとゴモラの財産や食糧はすべて奪い去られ、 12 ソドムに住んでいたアブラムの甥ロトも、財産もろとも連れ去られた。
ロトの救出
13 逃げ延びた一人の男がヘブライ人アブラムのもとに来て、そのことを知らせた。アブラムは当時、アモリ人マムレ樫の木の傍らに住んでいた。マムレはエシュコルとアネルの兄弟で、彼らはアブラムと同盟を結んでいた。 14 アブラムは、親族の者が捕虜になったと聞いて、彼の家で生まれた奴隷で、訓練を受けた者三百十八人を召集し、ダンまで追跡した。 15 夜、彼と僕たちは分かれて敵を襲い、ダマスコの北のホバまで追跡した。 16 アブラムはすべての財産を取り返し、親族のロトとその財産、女たちやそのほかの人々も取り戻した。
メルキゼデグの祝福
17 アブラムがケドルラオメルとその味方の王たちを撃ち破って帰って来たとき、ソドムの王はシャベの谷、すなわち王の谷まで彼を出迎えた。 18 いと高き神の祭司であったサレムの王メルキゼデクも、パンとぶどう酒を持って来た。 19 彼はアブラムを祝福して言った。「天地の造り主、いと高き神に アブラムは祝福されますように。 20 敵をあなたの手に渡された いと高き神がたたえられますように。」 アブラムはすべての物の十分の一を彼に贈った。 21 ソドムの王はアブラムに、「人はわたしにお返しください。 しかし、財産はお取りください」と言ったが、 22 アブラムはソドムの王に言った。 「わたしは天地の造り主、いと高き?~、主に手を上げて誓います。 23 あなたの物は、たとえ糸一筋、靴ひも一本でも、決していただきません。 『アブラムを裕福にしたのは、このわたしだ』と、あなたに言われたくありません。 24 わたしは何も要りません。 ただ、若い者たちが食べたものと、わたしと共に戦った人々、すなわち、アネルとエシュコルとマムレの分は別です。 彼らには分け前を取らせてください。
創世記 契約と割礼
17
1 アブラムが九十九歳になったとき、主はアブラムに現れて言われた。「わたしは全能の神である。あなたはわたしに従って歩み、全き者となりなさい。 2 わたしは、あなたとの間にわたしの契約を立て、あなたをますます増やすであろう。」 3 アブラムはひれ伏した。神は更に、語りかけて言われた。 4 「これがあなたと結ぶわたしの契約である。あなたは多くの国民の父となる。 5 あなたは、もはやアブラムではなく、アブラハムと名乗りなさい。あなたを多くの国民の父とするからである。 6 わたしは、あなたをますます?栄させ、諸国民の父とする。王となる者たちがあなたから出るであろう。 7 わたしは、あなたとの間に、また後に続く子孫との間に契約を立て、それを永遠の契約とする。そして、あなたとあなたの子孫の神となる。 8 わたしは、あなたが滞在しているこのカナンのすべての土地を、あなたとその子孫に、永久の所有地として与える。わたしは彼らの神となる。」 9 神はまた、アブラムに言われた。「だからあなたも、わたしの契約を守りなさい、あなたも後に続く子孫も。 10 あなたたち、およびあなたの後に続く子孫と、わたしとの間で守るべき契約はこれである。すなわち、あなたたちの男子はすべて、割礼を受ける。 11 包皮の部分を切り取りなさい。これが、わたしとあなたたちとの間の契約のしるしとなる。 12 いつの時代でも、あなたたちの男子はすべて、直系の子孫はもちろんのこと、家で生まれた奴隷も、外国人から買い取った奴隷であなたの子孫でない者も皆、生れてから八日目に割礼を受けなければならない。 13 あなたのお家で生まれた奴隷も、買い取った奴隷も、必ず割礼を受けなければならない。それによって、わたしの契約はあなたの体に記されて永遠の契約となる。 14 包皮の部分を切り取らない無割礼の男がいたなら、その人は民の間から断たれる。わたしの契約を破ったからである。」 15 神はアブラムに言われた。「あなたの妻サライは、名前をサライではなく、サラと呼びなさい。 16 わたしは彼女を祝福し、彼女によってあなたに男の子を与えよう。わたしは彼女を祝福し、諸国民の母とする。諸民族の王となる者たちが彼女から出る。」 17 アブラハムひれ伏した。しかし笑って、ひそかに言った。「百歳の男に子供が生まれるだろうか。九十歳のサラに子供が産めるだろうか。」 18 アブラハムは神に言った。「どうか、イシュマエルが御前に生き永らえますように。」 19 神は言われた。「いや、あなたの妻サラがあなたとの間に男の子を産む。その子をイサク(彼は笑う)と名付けなさい。わたしは彼と契約を立て、彼の子孫のために永遠の契約とする。 20 イシュマエルについての願いも聞き入れよう。必ず、わたしは彼を祝福し、大いに子供を増やし繁栄させる。彼は十二人の首長の父となろう。わたしは彼を大いなる国民とする。 21 しかし、わたしの契約は、来年の今ごろ、サラがあなたとの間に産むイサクと立てる。」 22 神はこう語り終えると、アブラハムを離れて昇って行かれた。 23 アブラハムは、息子のイシュマエルをはじめ、家で生まれた奴隷や買い取った奴隷など、自分の家にいる人々のうち、男子を皆集めて、すぐその日に、神が命じられたとおり包皮に割礼を施した。 24 アブラハムが包皮に割礼を受けたのは、九十九歳、 25 息子イシュマエルが包皮に割礼を受けたのは、十三歳であった。 26 アブラハムと息子のイシュマエルは、すぐその日に割礼を受けた。 27 アブラハムの家の男子は、家で生まれた奴隷も外国人から買い取った奴隷も皆、共に割礼を受けた。
創世記 イサクの誕生の予告
18
1 主はマムレの樫の木の所でアブラハムに現れた。暑い真昼に、アブラハムは天幕の入り口に座っていた。 2 目を上げて見ると、三人の人が彼に向って立っていた。アブラハムはすぐに天幕の入り口から走り出て迎え、地にひれ伏して、 3 言った。「お客様、よろしければ、どうか、僕のもとを通り過ぎないでください。 4 水を少々持ってこさせますから、足を洗って、木陰でどうぞひと休みなさってください。 5 何か召し上がるものを調えますので、疲れをいやしてから、お出かけください。せっかく、僕の所の近くをお通りになったのですから。」その人たちは言った。「では、お言葉どおりにしましょう。」 6 アブラハムは急いで天幕に戻り、サラのところに来て言った。「早く、上等の小麦粉を三セアほどこねて、パン菓子をこしらえなさい。」 7 アブラハムは牛の群れのところへ走って行き、柔らかくておいしそうな子牛を選び、召し使いに渡し、急いで料理をさせた。 8 アブラハムは、凝乳、乳、出来立ての子牛の料理などを選び、彼らの前に並べた。そして、彼らが木陰で食事をしている間、そばに立って給仕をした。 9 彼らはアブラハムに尋ねた。「あなたの妻のサラはどこにいますか。」「はい、天幕の中におります」とアブラハムが答えると、 10 彼らの一人が言った。「わたしは来年の今ごろ、必ずここにまた来ますが、そのころには、あなたの妻のサラに男の子が生まれているでしょう。」サラは、すぐ後ろの天幕の入り口で聞いていた。 11 アブラハムもサラも多くの日を重ねて老人になっており、しかもサラは月のものがとうになくっていた。 12 サラはひそかに笑った。自分は年をとり、もはや楽しみがあるはずもなし、主人も年老いているのに、と思ったのである。13 主はアブラハムに言われた。「なぜサラは笑ったのか。なぜ年をとった自分に子供が生まれるはずがないと思ったのだ。 14 主に不可能なことがあろうか。来年の今ごろ、わたしはここに戻ってくる。そのころ、サラには必ず男の子が生まれている。」 15 サラは恐ろしくなり、打ち消して言った。「わたしは笑いませんでした。」主は言われた。「いや、あなたは確かに笑った。」
創世記 ソドムのための執り成し
16 その人たちはそこを立って、ソドムを見下ろす所まで来た。アブラハムも、彼らを見送るために一緒に行った。 17 主は言われた。「わたしが行おうとしていることをアブラハムに隠す必要があろうか。 18 アブラハムは大きな強い国民になり、世界のすべての国民は彼によって祝福に入る。 19 わたしがアブラハムを選んだのは、彼が息子たちとその子孫に、主の道を守り、主に従って正義を行うよう命じて、主がアブラハムに約束したことを成就するためである。 20 主は言われた。「ソドムとゴモラの罪は非常に重い、と訴える叫びが実に大きい。 21 わたしは降って行き、彼らの行跡が、果たして、わたしに届いた叫びのとおりかどうか見て確かめよう。」 22 その人たちは、更にソドムの方に向かったが、アブラハムはなお、主の御前にいた。 23 アブラハムは進み出て言った。「もことにあなたは、正しい者を悪い者と一緒に滅ぼされるのですか。 24 あの町に正しい者が五十人いるとしても、それでも滅ぼし、その五十人の正しい者のために、町をお赦しにはならないのですか。 25 正しい者を悪い者と一緒に殺し、正しい者を悪い者と同じ目に遭わせるようなことを、あなたがなさるはずはございません。全くありえないことです。全世界を裁くお方は、正義を行われるべきではありませんか。」 26 主は言われた。「もしソドムの町に正しい者が五十人いるならば、その者たちのために、町を全部赦そう。」 27 アブラハムは答えた。「塵にすぎないわたしですが、あえて、わが主に申し上げます。 28 もしかすると、五十人の正しい者に五人足りないかもしれません。それでもあなたは、五人たりないために、町のすべてを滅ぼされますか。」主は言われた。「もし、四十五人いれば滅ぼさない。」 29 アブラハムは重ねて言った。「もしかすると、四十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その四十人のためにわたしはそれをしない」 30 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう少し言わせてください。もしかすると、そこには三十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「もし三十人いるならわたしはそれはしない。」 31 アブラハムは言った。「あえて、わが主に申し上げます。もしかすると、二十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その二十人のためにわたしは滅ぼさない。」 32 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう一度だけ言わせてください。もしかすると、十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その十人のためにわたしは滅ぼさない。」 33 主はアブラハムと語り終えると、去って行かれた。アブラハムも自分の住まいに帰った。
創世記 ソドムの滅亡
19
1 二人の御使いが夕方ソドムに着いたとき、ロトはソドムの門の所に座っていた。ロトは彼らを見ると、立ち上って迎え、地にひれ伏して、 2 言った。 「皆様方、どうぞ僕(しもべ)の家に立ち寄り、足を洗ってお泊りください。彼らは言った。「いや、結構です。わたしたちはこの広場で夜を過ごします。」 3 しかし、ロトがぜひにと勧めたので、彼らはロトの所に立ちよることにし、彼の家を訪ねた。ロトは、酵母を入れないパンを焼いて食事を供し、彼らをもてなした。 4 彼らがまだ床に就かないうちに、ソドムの町の男たちが、若者も年寄りもこぞって押しかけ、家を取り囲んで、 5 わめきたてた。 「今夜、お前のところへ来た連中はどこにいる。ここへ連れてこい。なぶりものにしてやるから。」 6 ロトは、戸口の前にたむろしている男たちのところへ出て行き、後ろの戸を閉めて、 7 言った。 「どうか、皆さん、乱暴なことはしないでください。 8 実は、わたしにはまだ嫁がせていない娘が二人おります。皆さんにその娘たちを差し出しますから、好きなようにしてください。ただ、あの方々には何もしないでください。この家の屋根の下に身を寄せていただいたのですから。」 9 男たちは口々に言った。 「そこをどけ」 「こいつはよそ者のくせに、指図などして。」 「さあ、彼らより先に、お前を痛い目に遭わせてやる。」 そして、ロトに詰め寄って体を押しつけ、戸を破ろうとした。 10 二人の客はそのとき、手を伸ばして、ロトを家の中に引き入れて戸を閉め、 11 戸口の前に入る男たちに、老若を問わず、目つぶしを食わせ、戸口を分からなくした。 12 二人の客はロトに言った。 「ほかに、あなたの身内の人がこの町にいますか。あなたの婿や息子や娘などを皆連れてここから逃げなさい。 13 実は、わたしたちはこの町を滅ぼしに来たのす。大きな叫びが主にもとに届いたので、主は、この町を滅ぼすためにわたしたちを遣わされたのです。」 14 ロトは嫁いだ娘たちの婿のところへ行き、「さあ早くここから逃げるのだ。主がこの町を滅ぼされるからだ」と促したが、婿たちは冗談だと思った。 15 夜が明けるころ、御使いたちはロトをせきたてて言った。「さあ早く、あなたの妻とここにいる二人の娘を連れて行きなさい。さもないと、この町に下る罰の巻き添えになって滅ぼされてしまう。」 16 ロトはためらっていた。主は憐れんで、二人の客にロト、妻、二人の娘の手をとらせて町の外へ避難するようにされた。
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1 初めに、神は天地を創造された。 2 地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、?~の靈が水の面を動いていた。 3 ?~は言われた。「光あれ。」こうして、光があった。 4 ?~は光を見て、良しとされた。?~は光と闇を分け、 5 光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第一の日である。6 ?~は言われた。「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。」 7 ?~は大空を造り、大空の下と大空の上に水を分けさせられた。そのようになった。 8 ?~は大空を天と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第二の日である。 9 ?~は言われた。「天の下の水は一つ所に集まれ。乾いた所が現れよ。」そのようになった。 10 神は乾いた所を地と呼び、水の集まった所を海と呼ばれた。神はこれを見て、良しとされた。 11 神は言われた。「地は草を芽生えさせよ。種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける果樹を、地に芽生えさせよ。」そのようになった。 12 地は草を芽生えさせ、それぞれの種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける木を芽生えさせた。?~はこれを見て、良しとされた。 13 夕べがあり、朝があった。第三の日である。 14 神は言われた。「天の大空に光る物があって、昼と夜を分け、季節のしるし、日や年のしるしとなれ。 15 天の大空に光る物があって、地を照らせ。」そのようになった。 16 ?~は二つの大きな光る物と星を造り、大きな方に昼を治めさせ、小さな方に夜を治めさせられた。 17 ?~はそれらを天の大空に置いて、地を照らさせ、 18 昼と夜を治めさせ、光と闇を分けさせられた。?~はこれを見て、良しとされた。 19 夕べがあり、朝があった。第四の日である。 20 ?~は言われた。「生き物が水の中に群がれ。鳥は地の上、天の大空の面を飛べ。」 21 ?~は水に群がるもの、すなわち大きな怪物、うごめく生き物をそれぞれに、また、翼ある鳥をそれぞれに創造された。?~はこれを見て、良しとされた。 22 ?~はそれらのものを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、海の水に満ちよ。鳥は地の上に増えよ。」 23 夕べがあり、朝があった。第五の日である。 24 ?~は言われた。「地は、それぞれの生き物を産み出せ。家畜、這うもの、地の獣をそれぞれに産み出せ。」そのようになった。 25 ?~はそれぞれの地の獣、それぞれの家畜、それぞれの土を這うものを造られた。?~はこれを見て、良しとされた。 26 ?~は言われた。「我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。そして海の魚、空の鳥、家畜、地の獣、地を這うものすべてを支配させよう。」 27 ?~は御自分にかたどって人を創造された。?~にかたどって創造された。男と女に創造された。28 ?~は彼らを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ。」 29 ?~は言われた。「見よ、全地に生える、種を持つ草と種を持つ実をつける木を、すべてあなたたちに与えよう。それがあなたたちの食べ物となる。 30 地の獣、空の鳥、地を這うものなど、すべて命あるものにはあらゆる青草をたべさせよう。」そのようになった。 31 ?~はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった。夕べがあり、朝があった。第六の日である。
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1 天地万物は完成された。 2 第七の日に、?~は御自分の仕事を完成され、第七の日に、神は御自分の仕事を離れ、安息なさった。 3 この日に?~はすべての創造の仕事を離れ、安息なさったので、第七の日を?~は祝福し、聖別された。 4 これが天地創造の由来である。主なる?~が地と天を造られたとき、 5 地上には野の木も、野の草も生えていなかった。主なる?~が地上に雨をお送りにならなかったからである。また土を耕す人もいなかった。 6 しかし、水が地下から湧き出て、土の面をすべて潤した。 7 主なる?~は、土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった。 8 主なる?~は、東の方のエデンに園を設け、自ら形づくった人をそこに置かれた。 9 主なる?~は、見るからに好ましく、食べるに良いものをもたらすあらゆる木を地に生えいでさせ、また園の中央には、命の木と善悪の知識の木を生えいでさせられた。 10 エデンから一つの川が流れ出ていた。園を潤し、そこで分かれて、四つの川となっていた。 11 第一の川の名はピションで、金を産出するハビラ地方全域を巡っていた。 12 その金は良質であり、そこではまた、琥珀の類やラピス・ラズリも産出した。 13 第二の川の名はギホンで、クシュ地方全域を巡っていた。 14 第三の川の名はチグリスで、アシュルの東の方を流れており、第四の川の名はユーフラテスであった。 15 主なる?~は人を連れて来て、エデンの園に住まわせ、人がそこを耕し、守るようにされた。 16 主なる?~は人に命じて言われた。「園のすべての木から取って食べなさい。 17 ただし、善悪の知識の木からは、決して食べてはならない。食べると必ず死んでしまう。」 18 主なる?~は言われた。「人が一人でいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう。」 19 主なる?~は、野のあらゆる獣、空のあらゆる鳥を土で形づくり、人のところへ持って来て、人がそれぞれどう呼ぶか見ておられた。人が呼ぶと、それはすべて、生き物の名となった。 20 人はあらゆる家畜、空の鳥、野のあらゆる獣に名を付けたが、自分に合う助ける者は見つけることができなかった。 21 主なる?~はそこで、人を深い眠りに落とされた。人が眠り込むと、あばら骨の一部を抜き取り、その跡を肉でふさがれた。 22 そして、人から抜き取ったあばら骨で女を造り上げられた。主なる?~が彼女を人のところへ連れて来られると、 23 人は言った。「ついに、これこそわたしの骨の骨わたしの肉の肉。これこそ、女(イシャー)と呼ぼう まさに、男(イシュ)から取られたものだから。」 24 こういうわけで、男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる。 25 人と妻は二人とも裸であったが、恥ずかしがりはしなかった。
創世記 蛇の誘惑
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1 主なる?~が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった。蛇は女に言った。「園のどの木からも食べてはいけない、などと神は言われたのか。」 2 女は蛇に答えた。「わたしたちは園の木の果実を食べてよいのです。 3 でも、園の中央に生えている木の果実だけは、食べてはいけない。触れてもいけない、死んではいけないから、と?~様はおっしゃいました。」 4 蛇は女に言った。「決して死ぬことはない。 5 それを食べると、目が開け、?~のように善悪を知るものとなることを?~はご存じなのだ。」 6 女が見ると、その木はいかにもおいしそうで、目を引き付け、賢くなるように唆していた。女は実を取って食べ、一緒にいた男にも渡したので、彼も食べた。 7 二人の目は開け、自分たちが裸であることを知り、二人はいちじくの葉をつづり合わせ、腰を覆うものとした。 8 その日、風の吹くころ、主なる?~が園の中を歩く音が聞こえてきた。アダムと女が、主なる?~の顔を避けて、園の木の間に隠れると、 9 主なる?~はアダムを呼ばれた。「どこにいるのか」 10 彼は答えた。「あなたの足音が園の中に聞こえたので、恐ろしくなり、隠れております。わたしは裸ですから。」 11 ?~は言われた。「お前が裸であることを誰が告げたのか。取って食べるなと命じた木から食べたのか。」 12 アダムは答えた。「あなたがわたしと共にいるようにしてくださった女が、木から取って与えたので、食べました。」 13 主なる?~は女に向かって言われた。「何ということをしたのか。」女は答えた。「蛇がだましたので、食べてしまいました。」 14 主なる?~は、蛇に向かって言われた。「このようなことをしたお前はあらゆる家畜、あらゆる野の獣の中で呪われるものとなった。お前は、生涯這いまわり、塵を食らう。 15 お前と女、お前の子孫と女の子孫の間にわたしは敵意を置く。彼はお前の頭を砕き お前は彼のかかとを砕く。」 16 ?~は女に向かって言われた。「お前のはらみの苦しみを大きなものにする。お前は、苦しんで子を産む。お前は男を求め 彼はお前を支配する。」 17 ?~はアダムに向かって言われた。「お前は女の声に従い 取って食べるなと命じた木から食べた。お前のゆえに、土は呪われるものとなった。お前は、生涯食べ物を得ようと苦しむ。 18 お前に対して 土は茨とあざみを生えいでさせる 野の草を食べようとするお前に。 19 お前は顔に汗を流してパンを得る 土に返るときまで。お前がそこから取られた土に。塵にすぎないお前は塵に返る。」 20 アダムは女をエバ(命)と名付けた。彼女がすべて命あるものの母となったからである。 21 主なる?~は、アダムと女に皮の衣を作って着せられた。 22 主なる?~は言われた。「人は我々の一人のように、善悪を知る者となった。今は、手を伸ばして命の木からも取って食べ、永遠に生きる者となるおそれがある。」 23 主なる?~は、彼をエデンの園から追い出し、彼に、自分がそこから取られた土を耕させることにされた。 24 こうしてアダムを追放し、命の木に至る道を守るために、エデンの園の東にケルビムと、きらめく剣の炎を置かれた。
創世記 カインとアペル
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1 さて、アダムは妻エバを知った。彼女は身ごもってカインを産み、「わたしは主によって男子を得た」と言った。 2 彼女はまたその弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。 3 時を経て、カインは土の実りを主のもとに献げ物として持って来た。 4 アベルは羊の群れの中から肥えた初子を持って来た。主はアベルとその献げ物に目を留められたが、 5 カインとその献げ物には目を留められなかった。カインは激しく怒って顔を伏せた。 6 主はカインに言われた。「どうして怒るのか。どうして顔を伏せるのか。 7 もしお前が正しいなら、顔を上げられるはずではないか。正しくないなら、罪は戸口で待ち伏せており、お前を求める。お前はそれを支配せねばならない。」 8 カインが弟アベルに言葉をかけ、二人が野原に着いたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。 9 主はカインに言われた。「お前の弟アベルは、どこにいるのか。」カインは答えた。「知りません。わたしは弟の番人でしょうか。」 10 主は言われた。「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。 11 今、お前は呪われる者となった。お前が流した弟の血を、口を開けて飲み込んだ土よりもなお、呪われる。 12 土を耕しても、土はもはやお前のために作物を産み出すことはない。お前は地上をさまよい、さすらう者となる。」 13 カインは主に言った。「わたしの罪は重すぎて負いきれません。 14 今日、あなたがわたしをこの土地から追放なさり、わたしが御顔から隠されて、地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう。」 15 主はカインに言われた。「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。 16 カインは主の前を去り、エデンの東、ノド(さすらい)の地に住んだ。 17 カインは妻を知った。彼女は身ごもってエノクを産んだ。カインは町を建てていたが、その町を息子の名前にちなんでエノクと名付けた。 18 エノクにはイラドが生まれた。イラドはメフヤエルの父となり、メフヤエルはメトシャエルの父となり、メトシャエルはレメクの父となった。
19 レメクは二人の妻をめとった。一人はアダ、もう一人はツィラと言った。 20 アダはヤバルを産んだ。ヤバルは、家畜を飼い天幕に住む者の先祖となった。 21 その弟はユバルといい、竪琴や笛を奏でる者すべての先祖となった。 22 ツィラもまた、トバル・カインを産んだ。彼は青銅や鉄でさまざまの道具を作る者となった。トバル・カインの妹はナアマといった。 23 さて、レメクは妻に言った。「アダとツィラよ、わが声を聞け。レメクの妻たちよ、わが言葉に耳を傾けよ。わたしは傷の報いに男を殺し 打ち傷の報いに若者を殺す。 24 カインのための復讐が七倍なら レメクのためには七十七倍。」 25 再び、アダムは妻を知った。彼女は男の子を産み、セトと名付けた。カインがアベルを殺したので、?~が彼に代わる子を授け(シャト)られたからである。 26 セトにも男の子が生まれた。彼はその子をエノシュと名付けた。主の御名を呼び始めたのは、この時代のことである。
創世記 アダムの系図
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1 これはアダムの系図の書である。?~は人を創造された日、?~に似せてこれを造られ、 2 男と女に創造された。創造の日に、彼らを祝福されて、人と名付けられた。 3 アダムは百三十歳になったとき、自分に似た、自分にかたどった男の子をもうけた。アダムはその子をセトと名付けた。 4 アダムは、セトが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 5 アダムは九百三十年生き、そして死んだ。 6 セトは百五歳になったとき、エノシュをもうけた。 7 セトはエノシュが生まれた後八百七年生きて、息子や娘をもうけた。 8 セトは九百十二年生き、そして死んだ。 9 エノシュは九十歳になったとき、ケナンをもうけた。 10 エノシュは、ケナンが生まれた後八百十五年生きて、息子や娘をもうけた。 11 エノシュは九百五年生き、そして死んだ。 12 ケナンは七十歳になったとき、マハラルエルをもうけた。 13 ケナンはマハラルエルが生まれた後八百四十年生きて、息子や娘をもうけた。 14 ケナンは九百十年生き、そして死んだ。 15 マハラルエルは六十五歳になったとき、イエレドをもうけた。 16 マハラルエルは、イエレドが生まれた後八百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 17 マハラルエルは八百九十五年生き、そして死んだ。 18 イエレドは百六十二歳になったとき、エノクをもうけた。 19 イエレドは、エノクが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 20 イエレドは九百六十二年生き、そして死んだ。 21 エノクは六十五歳になったとき、メトシェラもうけた。 22 エノクは、メトシェラが生まれた後、三百年?~と共に歩み、息子や娘をもうけた。 23 エノクは三百六十五年生きた。 24 エノクは?~と共に歩み、?~が取られたのでいなくなった。 25 メトシェラは百八十七歳になったとき、レメクをもうけた。 26 メトシェラは、レメクが生まれた後七百八十二年生きて、息子や娘をもうけた。 27 メトシェラは九百六十九年生き、そして死んだ。 28 レメクは百八十二歳になったとき、男の子をもうけた。 29 彼は、「主の呪いを受けた大地で働く我々の手の苦労を、この子は慰めてくれるだろう」と言って、その子をノア(慰め)と名付けた。 30 レメクは、ノアが生まれた後五百九十五年生きて、息子や娘をもうけた。 31 レメクは七百七十七年生き、そして死んだ。 32 ノアは五百歳になったとき、セム ハム ヤフェトをもうけた。
創世記 洪水
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1 さて、地上に人が増え始め、娘たちが生まれた。 2 ?~の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、おのおの選んだ者を妻にした。 3 主は言われた。 「わたしの霊は人の中に永久にとどまるべきではない。人は肉にすぎないのだから。」こうして、人の一生は百二十年となった。 4 当時もその後も、地上にはネフィリムがいた。これは、?~の子らが人の娘たちのところに入って産ませた者であり、大昔の名高い英雄たちであった。 5 主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、 6 地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた。 7 主は言われた。 「わたしは人を創造したが、これを地上からぬぐい去ろう。人だけでなく、家畜も這うものも空の鳥も。わたしはこれらを造ったことを後悔する。」 8 しかし、ノアは主の好意を得た。 9 これはノアの物語である。その世代の中で、ノアは?~に従う無垢な人であった。ノアは?~と共に歩んだ。 10 ノアには三人の息子、セム ハム ヤフェトが生まれた。 11 この地は?~の前に堕落し、不法に満ちていた。 12 ?~は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。 13 ?~はノアに言われた。「すべて肉なるものを終わらせる時がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす。 14 あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟には小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。 15 次のようにしてそれを造りなさい。箱舟の長さを三百アンマ、幅を五十アンマ、高さを三十アンマにし、 16 箱舟に明かり取りを造り、上から一アンマにして、それを仕上げなさい。箱舟の側面には戸口を造りなさい。また、一階と二階と三階を造りなさい。 17 見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊をもつ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべてのものは息絶える。 18 わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。 19 また、すべて命あるもの、すべて肉なるものから、二つずつ箱舟に連れて入り、あなたと共に生き延びるようにしなさい。それらは、雄と雌でなければならない。 20 それぞれの鳥、それぞれの家畜、それぞれの地を這うものが、二つずつあなたのところへ来て、生き延びるようにしなさい。 21 更に、食べられる物はすべてあなたのところに集め、あなたと彼らの食料としなさい。」 22 ノアは、すべて?~が命じられたとおりに果たした。
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1 主はノアに言われた。「さあ、あなたとあなたの家族は皆、箱舟に入りなさい。この世代の中であなただけはわたしに従う人だと、わたしは認めている。 2 あなたは清い動物をすべて七つがい取り、また、清くない動物をすべて一つがいずつ取りなさい 3 空の鳥も七つがい取りなさい。全地の面に子孫が生き続けるように。 4 七日の後、わたしは四十日四十夜地上に雨を降らせ、わたしが造ったすべての生き物を地の面からぬぐい去ることにした。」 5 ノアはすべて主が命じられたとおりにした。 6 ノアが六百歳のとき、洪水が地上に起こり、水が地の上にみなぎった。 7 ノアは妻子や嫁たちと共に洪水を免れようと箱舟に入った。 8 清い動物も清くない動物も、鳥も地を這うものもすべて、 9 二つずつ箱舟のノアのもとに来た。それは?~がノアに命じられたとおりに、雄と雌であった。 10 七日が過ぎて、洪水が地上起こった。 11 ノアの生涯の第六百年、第二の月の十七日、この日、大いなる深淵の源がことごとく裂け、天の窓が開かれた。 12 雨が四十日四十夜地上に降り続いたが、 13 まさにこの日、ノアも、息子のセム、ハム、ヤフェト、ノアの妻、この三人の息子の嫁たちも、箱舟に入った。 14 彼らと共にそれぞれの獣、それぞれの家畜、それぞれの地を這うもの、それぞれの鳥、小鳥や翼のあるものすべて、 15 命の霊をもつ肉なるものは、二つずつノアのもとに来て箱舟に入った。 16 ?~が命じられたとおりに、すべて肉なるものの雄と雌とが来た。主は、ノアの後ろで戸を閉ざされた。 17 洪水は四十日間地上を覆った。水は次第に増して箱舟を押し上げ、箱舟は大地を離れて浮かんだ。 18 水は勢力を増し、地の上に大いにみなぎり、箱舟は水の面を漂った。 19 水はますます勢いを加えて地上にみなぎり、およそ天の下にある高い山はすべて覆われた。 20 水は勢い増して更にその上十五アンマに達し、山々を覆った。 21 地上で動いていた肉なるものはすべて、鳥も家畜も獣も地に群がり這うものも人も、ことごとく息絶えた。 22 乾いた地のすべてのもののうち、その鼻に命の息と霊のあるものはことごとく死んだ。 23 地の面にいた生き物はすべて、人をはじめ、家畜、這うもの、空の鳥に至るまでぬぐい去られた。彼らは大地からぬぐい去られ、ノアと、彼と共に箱舟にいたものだけが残った。 24 水は百五十日の間、地上で勢いを失わなかった。
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1 神は、ノアと彼と共に箱舟にいたすべての獣とすべての家畜を御心に留め、地の上に風を吹かせられたので、水が減り始めた。 2 また、深淵の源と天の窓が閉じられたので、天からの雨は降りやみ、 3 水は地上からひいて行った。百五十日の後には水が減って、 4 第七の月の十七日に箱舟はアララト山の上に止まった。 5 水はますます減って第十の月になり、第十の月の一日には山々の頂が現れた。 6 四十日たって、ノアは自分が造った箱舟の窓を開き、烏を放した。烏は飛び立ったが、地上の水が乾くのを待って、出たり入ったりした。 8 ノアは鳩を彼のもとから放して、地の面から水がひいたかどうかを確かめようとした。 9 しかし、鳩は止まる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰って来た。水がまだ全地の面を覆っていたからである。ノアは手を差し伸べて鳩を捕らえ、箱舟の自分のもとに戻した。 10 更に七日待って、彼は再び鳩を箱舟から放した。 11 鳩は夕方になってノアのもとに帰って来た。見よ、鳩はくちばしにオリーブの葉をくわえていた。ノアは水が地上からひいたことを知った。 12 彼は更に七日待って、鳩を放した。鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。 13 ノアが六百一歳のとき、最初の月の一日に、地上の水は乾いた。ノアは箱舟の覆いを取り外して眺めた。見よ、地の面は乾いていた。 14 第二の月の二十七日になると、地はすっかり乾いた。 15 神はノアに仰せになった。 「さあ、あなたもあなたの妻も、息子も嫁も、皆一緒に箱舟から出なさい。 17 すべて肉なるもののうちからあなたのもとに来たすべての動物、鳥も家畜も地を這うものも一緒に連れ出し、地に群がり、地上で子を産み、増えるようにしなさい。」 18 そこで、ノアは息子や妻や嫁と共に外へ出た。 19 獣、這うもの、鳥、地に群がるもの、それぞれすべて箱舟から出た。 20 ノアは主のために祭壇を築いた。そしてすべての清い家畜と清い鳥のうちから取り、焼き尽くす捧げ物として祭壇の上にささげた。 21 主は宥めの香りをかいで、御心に言われた。「人に対して大地を呪うことは二度とすまい。人が心に思うことは、幼いときから悪いのだ。わたしは、この度したように生き物をことごとく打つことは、二度とすまい。 22 地の続くかぎり、種蒔きも刈り入れも 寒さも暑さも、夏も冬も 昼も夜も、やむことはない。」
創世記 祝福と契約
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1 ?~はノアと彼の息子たちを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちよ。 2 地のすべての獣と空のすべての鳥は、地を這うすべてのものと海のすべての魚と共に、あなたたちの前に恐れおののき、あなたたちの手にゆだねられる。 3 動いている命あるものは、すべてあなたたちの食糧とするがよい。わたしはこれらすべてのものを、青草と同じようにあなたたちに与える。 4 ただし、肉は命である血を含んだまま食べてはならない。 5 また、あなたたちの命である血が流された場合、わたしは賠償を要求する。いかなる獣からも要求する。人間どうしの血については、人間から人間の命を賠償として要求する。 6 人の血を流す者は 人によって自分の血を流される。人は?~にかたどって造られたからだ。 7 あなたたちは産めよ、増えよ 地に群がり、地に増えよ。」 8 ?~はノアと彼の息子たちに言われた。 9 「わたしは、あなたたちと、そして後に続く子孫と、契約を立てる。 10 あなたたちと共にいるすべての生き物、またあなたたちと共にいる鳥や家畜や地のすべての獣など、箱舟から出たすべてのもののみならず、地のすべての獣と契約を立てる。 11 わたしがあなたたちと契約を立てたならば、二度と洪水によって肉なるものが滅ぼされることはなく、洪水が起こって地を滅ぼすことも決してない。」 12 更に?~は言われた。「あなたたちならびにあなたたちと共にいるすべての生き物と、代々(よよ)とこしえにわたしが立てる契約のしるしはこれである。 13 すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立てた契約のしるしとなる。 14 わたしが地の上に雲を湧き起こらせ、雲の中に虹が現れると、 15 わたしは、わたしとあなたたちならびにすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた契約に心を留める。水が洪水となって、肉なるものをすべて滅ぼすことは決してない。 16 雲の中に虹が現れると、わたしはそれを見て、神と地上のすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた永遠の契約に心をと留める。」 17 ?~はノアに言われた。「これが、わたしと地上のすべて肉なるものとの間にたてた契約のしるしである。」
創世記 ノアと息子たち
18 箱舟から出たノアの息子は、セム、ハム、ヤフェトであった。ハムはカナンの父である。 19 この三人がノアの息子で、全世界の人々は彼らから出て広がったのである。 20 さて、ノアは農夫となり、ぶどう畑を作った。 21 あるとき、ノアはぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。 22 カナンの父ハムは、自分の父の裸を見て、外にいた二人の兄弟に告げた。 23 セムとヤフェトは着物を取って自分たちの肩に掛け、後ろ向きに歩いて行き、父の裸を覆った。二人は顔を背けたままで、父の裸を見なかった。 24 ノアは酔いからさめると、末の息子がしたことを知り、 25 こう言った。「カナンは呪われよ 奴隷の奴隷となり、兄たちに仕えよ。」 26 また言った。「セムの神、主をたたえよ。 カナンはセムの奴隷となれ。
27 神がヤフェトの土地を広げ(ヤフェト) セムの天幕に住まわせ カナンはその奴隷となれ。」 28 ノアは、洪水の後三百五十年生きた。 29 ノアは九百五十歳になって、死んだ。
創世記 ノアの子孫
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1 ノアの息子、セム、ハム、ヤフェトの系図は次のとおりである。洪水の後、彼らに息子が生まれた。 2 ヤフェトの子孫はゴメル、マゴグ、メディア、ヤワン、トバル、メシェク、ティラスであった。 3 ゴメルの子孫は、アシュケナズ、リファト、トガルマであった。 4 ヤワンの子孫は、エリシャ、タルシシュ、キティム、ロダニムであった。 5 海沿いの国々は、彼らから出て、それぞれの地に、その言語、氏族、民族に従って住むようになった。 6 ハムの子孫は、クシュ、エジプト、プト、カナンであった。 7 クシュの子孫はセバ、ハビラ、サブタ、ラマ、サブテカであり、ラマの子孫はシェバとデダンであった。 8 クシュにはまた、ニムロドが生まれた。ニムロドは地上で最初の勇士となった。 9 彼は、主の御前に勇敢な狩人であり、「主の御前に勇敢な狩人ニムドロのようだ」という言い方がある。 10 彼の王国の主な町は、バベル、ウルク、アッカドであり、それらはすべてシンアルの地にあった。 11 彼はその地方からアッシリに進み、ニネベ、レホボト・イル、カラ、 12 レセンを建てた。レセンはニネベとカラとの間にある、非常に大きな町であった。 13 エジプトにはリディア人、アルミナ人、レハビム人、ナフトヒム人、 14 上エジプト人、カスルヒム人、カフトル人が生まれた。このカフトル人からペリシテ人が出た。
15 カナンには長男シドンとヘト、 16 また、エブス人、アモリ人、ギルガシ人、 17 ヒビ人、アルキ人、シニ人、 18 アルワド人、フェマリ人、ハマト人が生まれた。その後、カナン人の諸氏族が広がった。 19 カナン人の領土は、シドンから南下してゲラルを経てガザまでを含み、更に、ソドム、ゴモラ、アドマ、ツェボイムを経てラシャまでを含んだ。 20 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたハムの子孫である。 21 セムにもまた子供が生まれた。彼はエベルのすべての子孫の先祖であり、ヤフェトの兄であった。 22 セムの子孫はエラム、アシュル、アルパクシャド、ルド、アラムであった。 23 アラムの子孫は、ウツ、フル、ゲテル、マシュであった。 24 アルパクシャドにはシェラが生まれ、シェラにはエベルが生まれた。 25 エベルには二人の息子が生まれた。ひとりの名は、その時代に土地が分けられた(パラグ)ので、ペレグといい、その兄弟はヨクタンといった。 26 ヨクタンには、アルモダド、シェレフ、ハツァルマベト、イエラ、 27 ハドラム、ウザル、ディクラ、 28 オバル、アビマエル、シェバ、 29 オフィル、ハビラ、ヨバブが生まれた。これらは皆、ヨクタンの息子であった。 30 彼らはメシャからセファルに至る東の高原地帯に住んでいた。 31 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたセムの子孫である。 32 ノアの子孫である諸氏族を、民族ごとの系図にまとめると以上のようになる。地上の諸民族は洪水の後、彼らから分かれ出た。
創世記 バベルの塔
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1 世界中は同じ言葉を使って、同じように話していた。 2 東の方から移動してきた人々は、シンアルの地に平野を見つけ、そこに住み着いた。 3 彼らは、「れんがを作り、それをよく焼こう」と話し合った。石の代わりにれんがを、しっくいの代わりにアスファルトを用いた。 4 彼らは、「さあ 天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。 5 主は降って来て、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、 6 言われた。「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。 7 我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」 8 主は彼らをそこから全地に散らされたので、彼らはこの町の建設をやめた。 9 こういうわけで、この町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ、また、主がそこから彼らを全地に散らされたからである。
創世記 セムの系図
10 セムの系図は次のとおりである。セムが百歳になったとき、アルバクシャドが生まれた。それは洪水の二年後のことであった。 11 セムは、アルパクシャドが生まれた後五百年生きて、息子や娘をもうけた。 12 アルパクシャドが三十五歳になったとき、シェラが生まれた。 13 アルパクシャドは、シェラが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 14 シェラが三十歳になったとき、エベルが生まれた。 15 シェラは、エベルが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 16 エベルが三十四歳になったとき、ぺレグが生まれた。 17 エベルは、ぺレグが生まれた後四百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 18 ぺレグが三十歳になったとき、レウが生まれた。 19 ぺレグは、レウが生まれた後二百九年生きて、息子や娘をもうけた。 20 レウが三十二歳になったとき、セルグが生まれた。 21 レウは、セルグが生まれた後二百七年生きて、息子や娘をもうけた。 22 セルグ三十歳なったとき、ナホルが生まれた。 23 セルグは、ナホルが生まれた後二百年生きて、息子や娘をもうけた。 24 ナホルが二十九歳になったとき、テラが生まれた。 25 ナホルは、テラが生まれた後百十九年生きて、息子や娘をもうけた。 26 テラが七十歳になったとき、アブラム、ナホル、ハランが生まれた。
創世記 テラの系図
27 テラの系図は次のとおりである。テラにはアブラム、ナホル、ハランが生まれた。ハランにはロトが生まれた。 28 ハランは父のテラより先に、故郷カルデアのウルで死んだ。 29 アブラムとナホルはそれぞれ妻をめとった。アブラムの妻の名はサライ、ナホルの妻の妻の名はミルカといった。ミルカはハランの娘である。ハランはミルカとイスカの父であった。 30 サライは不妊の女で、子供ができなかった。 31 テラは、息子アブラムと、ハランの息子で自分の孫であるロト、および息子アブラムの妻で自分の嫁であるサライを連れて、カルデアのウルを出発し、カナン地方に向った。彼らはハランまで来ると、そこにとどまった。 32 テラは二百五年の生涯を終えて、ハランで死んだ。
創世記 アブラムの召命と移住
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1 主はアブラムに言われた。「あなたは生まれ故郷 父の家を離れて わたしが示す地に行きなさい 2 わたしはあなたを大いなる国民にし あなたを祝福し あなたに名を高める 祝福の源となるように 3 あなたを祝福する人をわたしは祝福し あなたを呪う者をわたしは呪う。 地上の氏族はすべて あなたによって祝福に入る。」 4 アブラムは 主の言葉に従って旅立った。ロトも共に行った。アブラムは、ハランを出発したとき七十五歳であった。 5 アブラムは妻のサライ、甥のロトを連れ、蓄えた財産をすべて携え、ハランで加わった人々と共にカナン地方へ向かって出発し、カナン地方入った。 6 アブラムはその地を通り、シケムの聖所、モレの樫の木まで来た。当時、その地方にはカナン人が住んでいた。 7 主はアブラムに現れて、言われた。「あなたの子孫のこの地を与える」アブラムは、彼に現れた主のために、そこに祭壇を築いた。 8 アブラムは、そこからベテルの東の山へ移り、西にベテル、東にアイを望む所に天幕を張って、そこにも主のために祭壇を築き、主の御名を呼んだ。 9 アブラムは更に旅を続け、ネゲブ地方に移った。
創世記 エジプト滞在
10 その地方に飢饉があった。 アブラムは、その地方の飢饉がひどかったので、エジプトに下り、そこに滞在することにした。 11 エジプトに入ろうしたとき、妻サライに言った。 「あなたが美しいのを、わたしはよく知っている。 12 エジプト人があなたを見たら、『この女はあの男の妻だ』と言って、わたしを殺し、あなたを生かしておくにちがいない。 13 どうか、わたしの妹だ、と言ってください。 そうすれば、わたしはあなたのゆえに幸いになり、あなたのお陰で命も助かるだろう。」 14 アブラムがエジプトに入ると、エジプト人はサライを見て、大変美しいと思った。 15 ファラオの家臣たちも彼女を見て、ファラオに彼女のことを褒めたので、サライはファラオの宮廷に召し入れられた 16 アブラムも彼女のゆえに幸いを受け、羊の群れ、牛の群れ、ろば、男女の奴隷、雌ろば、らくだなどを与えられた。 17 ところが主は、アブラムの妻サライのことで、ファラオと宮廷の人々を恐ろしい病気にかからせた。 18 ファラオはアブラムを呼び寄せて言った。 「あなたはわたしに何ということをしたのか。 なぜ、あの婦人は自分の妻だと、言わなかったのか。 19 なぜ、『わたしの妹です』などと言ったのか。 だからこそ、わたしの妻として召し入れたのだ。 さあ、あなたの妻を連れて、立ち去ってもらいたい。 20 ファラオは家来たちに命じて、アブラムを、その妻とすべての持ち物と共に送り出させた。
創世記 ロトとの別れ
13
1 アブラムは、妻と共に、すべての持ち物を携え、エジプトを出て再びネゲブ地方へ上った。ロトも一緒であった。 2 アブラムは非常に多くの家畜や金銀を持っていた。 3 ネゲブ地方から更に、ベテルに向って旅を続け、ベテルとアイとの間の、以前に天幕を張った所まで来た。 4 そこは、彼が最初に祭壇を築いて、主の御名を呼んだ場所であった。 5 アブラムと共に旅をしていたロトもまた、羊や牛の群れを飼い、たくさんの天幕を持っていた。 6 その土地は、彼らが一緒に住むには十分ではなかった。 彼らの財産が多すぎたから、一緒に住むことができなかったのである。 7 アブラムの家畜を飼う者たちと、ロトの家畜を飼うものたちとの間に争いが起きた。 そのころ、その地方にはカナン人もペリジ人も住んでいた。 8 アブラムはロトに言った。 「わたしたちは親類どうしだ。わたしとあなたの間ではもちろん、お互いの羊飼いの間でも争うのはやめよう。 9 あなたの前には幾らでも土地があるのだから、ここで別れようではないか。 あなたが左に行くなら、わたしは右に行こう。 あなたが右に行くなら、わたしは左に行こう。」 10 ロトが目を上げて眺めると、ヨルダン川流域の低地一帯は、 主がソドムとゴモラを滅ぼす前であったので、ツォアルに至るまで、主の園のように、エジプトの国のように、見渡すかぎりよく潤っていた。 11 ロトはヨルダン川流域の低地一帯を選んで、東へ移って行った。こうして彼らは、左右に別れた。 12 アブラムはカナン地方に住み、ロトは低地の町々に住んだが、彼はソドムまで天幕を移した。 13 ソドムの住民は邪悪で、主に対して多くの罪を犯していた。 14 主は、ロトが別れて行った後、アブラムに言われた。「さあ、目を上げて、あなたがいる場所から東西南北を見渡しなさい。 15 見えるかぎりの土地をすべて、わたしは永久にあなたとあなたの子孫に与える。 16 あなたの子孫を大地の砂粒のようにする。大地の砂粒が数えきれないように、あなたの子孫も数えきれないであろう。 17 さあ、この土地を縦横に歩き回るがよい。わたしはそれをあなたに与えるから。」 18 アブラムは天幕を移し、ヘブロンにあるマムレの樫の木のところに来て住み、そこに主のために祭壇を築いた。
王との戦い
14
1 シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨク、エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアルが、 2 ソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アドマの王シンアブ、ツェボイムの王シェムエベル、ベラ、すなわちツオワルの王と戦ったとき、 3 これら五人の王は皆、シディムの谷、すなわち塩の海で同盟を結んだ。 4 彼らは十二年間ケドルラオメルに支配されていたが、十三年目に背いたのである。 5 十四年目に、ケドルラオメルとその味方の王たちが来て、アシュテロト・カルナイムでレファイム人を、ハムでズジム人を、シャベ・キルヤタイムでエミル人を、 6 セイルの山地でフリ人人を撃ち、荒れ野に近いエル・バランまで進んだ。 7 彼らは転進して、エン・ミシュパト、すなわちカデシュに向かい、アマレク人の全領土とハツェツオン・タマルに住むアモリ人を撃った。 8 そこで、ソドムの王、ゴモラの王、アドマの王、ツェボイムの王、ベラすなわちツォアルの王は兵を繰り出し、シディムの谷で彼らと戦おうと陣を敷いた。 9 エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアル、シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨクの四人の王に対して、これら五人の王が戦いを挑んだのである。 10 シディムの谷には至るところに天然アスファルトの穴があった。ソドムとゴモラの王は逃げるとき、その穴に落ちた。残りの王は山へ逃れた。 11 ソドムとゴモラの財産や食糧はすべて奪い去られ、 12 ソドムに住んでいたアブラムの甥ロトも、財産もろとも連れ去られた。
ロトの救出
13 逃げ延びた一人の男がヘブライ人アブラムのもとに来て、そのことを知らせた。アブラムは当時、アモリ人マムレ樫の木の傍らに住んでいた。マムレはエシュコルとアネルの兄弟で、彼らはアブラムと同盟を結んでいた。 14 アブラムは、親族の者が捕虜になったと聞いて、彼の家で生まれた奴隷で、訓練を受けた者三百十八人を召集し、ダンまで追跡した。 15 夜、彼と僕たちは分かれて敵を襲い、ダマスコの北のホバまで追跡した。 16 アブラムはすべての財産を取り返し、親族のロトとその財産、女たちやそのほかの人々も取り戻した。
メルキゼデグの祝福
17 アブラムがケドルラオメルとその味方の王たちを撃ち破って帰って来たとき、ソドムの王はシャベの谷、すなわち王の谷まで彼を出迎えた。 18 いと高き神の祭司であったサレムの王メルキゼデクも、パンとぶどう酒を持って来た。 19 彼はアブラムを祝福して言った。「天地の造り主、いと高き神に アブラムは祝福されますように。 20 敵をあなたの手に渡された いと高き神がたたえられますように。」 アブラムはすべての物の十分の一を彼に贈った。 21 ソドムの王はアブラムに、「人はわたしにお返しください。 しかし、財産はお取りください」と言ったが、 22 アブラムはソドムの王に言った。 「わたしは天地の造り主、いと高き?~、主に手を上げて誓います。 23 あなたの物は、たとえ糸一筋、靴ひも一本でも、決していただきません。 『アブラムを裕福にしたのは、このわたしだ』と、あなたに言われたくありません。 24 わたしは何も要りません。 ただ、若い者たちが食べたものと、わたしと共に戦った人々、すなわち、アネルとエシュコルとマムレの分は別です。 彼らには分け前を取らせてください。
創世記 契約と割礼
17
1 アブラムが九十九歳になったとき、主はアブラムに現れて言われた。「わたしは全能の神である。あなたはわたしに従って歩み、全き者となりなさい。 2 わたしは、あなたとの間にわたしの契約を立て、あなたをますます増やすであろう。」 3 アブラムはひれ伏した。神は更に、語りかけて言われた。 4 「これがあなたと結ぶわたしの契約である。あなたは多くの国民の父となる。 5 あなたは、もはやアブラムではなく、アブラハムと名乗りなさい。あなたを多くの国民の父とするからである。 6 わたしは、あなたをますます?栄させ、諸国民の父とする。王となる者たちがあなたから出るであろう。 7 わたしは、あなたとの間に、また後に続く子孫との間に契約を立て、それを永遠の契約とする。そして、あなたとあなたの子孫の神となる。 8 わたしは、あなたが滞在しているこのカナンのすべての土地を、あなたとその子孫に、永久の所有地として与える。わたしは彼らの神となる。」 9 神はまた、アブラムに言われた。「だからあなたも、わたしの契約を守りなさい、あなたも後に続く子孫も。 10 あなたたち、およびあなたの後に続く子孫と、わたしとの間で守るべき契約はこれである。すなわち、あなたたちの男子はすべて、割礼を受ける。 11 包皮の部分を切り取りなさい。これが、わたしとあなたたちとの間の契約のしるしとなる。 12 いつの時代でも、あなたたちの男子はすべて、直系の子孫はもちろんのこと、家で生まれた奴隷も、外国人から買い取った奴隷であなたの子孫でない者も皆、生れてから八日目に割礼を受けなければならない。 13 あなたのお家で生まれた奴隷も、買い取った奴隷も、必ず割礼を受けなければならない。それによって、わたしの契約はあなたの体に記されて永遠の契約となる。 14 包皮の部分を切り取らない無割礼の男がいたなら、その人は民の間から断たれる。わたしの契約を破ったからである。」 15 神はアブラムに言われた。「あなたの妻サライは、名前をサライではなく、サラと呼びなさい。 16 わたしは彼女を祝福し、彼女によってあなたに男の子を与えよう。わたしは彼女を祝福し、諸国民の母とする。諸民族の王となる者たちが彼女から出る。」 17 アブラハムひれ伏した。しかし笑って、ひそかに言った。「百歳の男に子供が生まれるだろうか。九十歳のサラに子供が産めるだろうか。」 18 アブラハムは神に言った。「どうか、イシュマエルが御前に生き永らえますように。」 19 神は言われた。「いや、あなたの妻サラがあなたとの間に男の子を産む。その子をイサク(彼は笑う)と名付けなさい。わたしは彼と契約を立て、彼の子孫のために永遠の契約とする。 20 イシュマエルについての願いも聞き入れよう。必ず、わたしは彼を祝福し、大いに子供を増やし繁栄させる。彼は十二人の首長の父となろう。わたしは彼を大いなる国民とする。 21 しかし、わたしの契約は、来年の今ごろ、サラがあなたとの間に産むイサクと立てる。」 22 神はこう語り終えると、アブラハムを離れて昇って行かれた。 23 アブラハムは、息子のイシュマエルをはじめ、家で生まれた奴隷や買い取った奴隷など、自分の家にいる人々のうち、男子を皆集めて、すぐその日に、神が命じられたとおり包皮に割礼を施した。 24 アブラハムが包皮に割礼を受けたのは、九十九歳、 25 息子イシュマエルが包皮に割礼を受けたのは、十三歳であった。 26 アブラハムと息子のイシュマエルは、すぐその日に割礼を受けた。 27 アブラハムの家の男子は、家で生まれた奴隷も外国人から買い取った奴隷も皆、共に割礼を受けた。
創世記 イサクの誕生の予告
18
1 主はマムレの樫の木の所でアブラハムに現れた。暑い真昼に、アブラハムは天幕の入り口に座っていた。 2 目を上げて見ると、三人の人が彼に向って立っていた。アブラハムはすぐに天幕の入り口から走り出て迎え、地にひれ伏して、 3 言った。「お客様、よろしければ、どうか、僕のもとを通り過ぎないでください。 4 水を少々持ってこさせますから、足を洗って、木陰でどうぞひと休みなさってください。 5 何か召し上がるものを調えますので、疲れをいやしてから、お出かけください。せっかく、僕の所の近くをお通りになったのですから。」その人たちは言った。「では、お言葉どおりにしましょう。」 6 アブラハムは急いで天幕に戻り、サラのところに来て言った。「早く、上等の小麦粉を三セアほどこねて、パン菓子をこしらえなさい。」 7 アブラハムは牛の群れのところへ走って行き、柔らかくておいしそうな子牛を選び、召し使いに渡し、急いで料理をさせた。 8 アブラハムは、凝乳、乳、出来立ての子牛の料理などを選び、彼らの前に並べた。そして、彼らが木陰で食事をしている間、そばに立って給仕をした。 9 彼らはアブラハムに尋ねた。「あなたの妻のサラはどこにいますか。」「はい、天幕の中におります」とアブラハムが答えると、 10 彼らの一人が言った。「わたしは来年の今ごろ、必ずここにまた来ますが、そのころには、あなたの妻のサラに男の子が生まれているでしょう。」サラは、すぐ後ろの天幕の入り口で聞いていた。 11 アブラハムもサラも多くの日を重ねて老人になっており、しかもサラは月のものがとうになくっていた。 12 サラはひそかに笑った。自分は年をとり、もはや楽しみがあるはずもなし、主人も年老いているのに、と思ったのである。13 主はアブラハムに言われた。「なぜサラは笑ったのか。なぜ年をとった自分に子供が生まれるはずがないと思ったのだ。 14 主に不可能なことがあろうか。来年の今ごろ、わたしはここに戻ってくる。そのころ、サラには必ず男の子が生まれている。」 15 サラは恐ろしくなり、打ち消して言った。「わたしは笑いませんでした。」主は言われた。「いや、あなたは確かに笑った。」
創世記 ソドムのための執り成し
16 その人たちはそこを立って、ソドムを見下ろす所まで来た。アブラハムも、彼らを見送るために一緒に行った。 17 主は言われた。「わたしが行おうとしていることをアブラハムに隠す必要があろうか。 18 アブラハムは大きな強い国民になり、世界のすべての国民は彼によって祝福に入る。 19 わたしがアブラハムを選んだのは、彼が息子たちとその子孫に、主の道を守り、主に従って正義を行うよう命じて、主がアブラハムに約束したことを成就するためである。 20 主は言われた。「ソドムとゴモラの罪は非常に重い、と訴える叫びが実に大きい。 21 わたしは降って行き、彼らの行跡が、果たして、わたしに届いた叫びのとおりかどうか見て確かめよう。」 22 その人たちは、更にソドムの方に向かったが、アブラハムはなお、主の御前にいた。 23 アブラハムは進み出て言った。「もことにあなたは、正しい者を悪い者と一緒に滅ぼされるのですか。 24 あの町に正しい者が五十人いるとしても、それでも滅ぼし、その五十人の正しい者のために、町をお赦しにはならないのですか。 25 正しい者を悪い者と一緒に殺し、正しい者を悪い者と同じ目に遭わせるようなことを、あなたがなさるはずはございません。全くありえないことです。全世界を裁くお方は、正義を行われるべきではありませんか。」 26 主は言われた。「もしソドムの町に正しい者が五十人いるならば、その者たちのために、町を全部赦そう。」 27 アブラハムは答えた。「塵にすぎないわたしですが、あえて、わが主に申し上げます。 28 もしかすると、五十人の正しい者に五人足りないかもしれません。それでもあなたは、五人たりないために、町のすべてを滅ぼされますか。」主は言われた。「もし、四十五人いれば滅ぼさない。」 29 アブラハムは重ねて言った。「もしかすると、四十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その四十人のためにわたしはそれをしない」 30 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう少し言わせてください。もしかすると、そこには三十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「もし三十人いるならわたしはそれはしない。」 31 アブラハムは言った。「あえて、わが主に申し上げます。もしかすると、二十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その二十人のためにわたしは滅ぼさない。」 32 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう一度だけ言わせてください。もしかすると、十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その十人のためにわたしは滅ぼさない。」 33 主はアブラハムと語り終えると、去って行かれた。アブラハムも自分の住まいに帰った。
創世記 ソドムの滅亡
19
1 二人の御使いが夕方ソドムに着いたとき、ロトはソドムの門の所に座っていた。ロトは彼らを見ると、立ち上って迎え、地にひれ伏して、 2 言った。 「皆様方、どうぞ僕(しもべ)の家に立ち寄り、足を洗ってお泊りください。彼らは言った。「いや、結構です。わたしたちはこの広場で夜を過ごします。」 3 しかし、ロトがぜひにと勧めたので、彼らはロトの所に立ちよることにし、彼の家を訪ねた。ロトは、酵母を入れないパンを焼いて食事を供し、彼らをもてなした。 4 彼らがまだ床に就かないうちに、ソドムの町の男たちが、若者も年寄りもこぞって押しかけ、家を取り囲んで、 5 わめきたてた。 「今夜、お前のところへ来た連中はどこにいる。ここへ連れてこい。なぶりものにしてやるから。」 6 ロトは、戸口の前にたむろしている男たちのところへ出て行き、後ろの戸を閉めて、 7 言った。 「どうか、皆さん、乱暴なことはしないでください。 8 実は、わたしにはまだ嫁がせていない娘が二人おります。皆さんにその娘たちを差し出しますから、好きなようにしてください。ただ、あの方々には何もしないでください。この家の屋根の下に身を寄せていただいたのですから。」 9 男たちは口々に言った。 「そこをどけ」 「こいつはよそ者のくせに、指図などして。」 「さあ、彼らより先に、お前を痛い目に遭わせてやる。」 そして、ロトに詰め寄って体を押しつけ、戸を破ろうとした。 10 二人の客はそのとき、手を伸ばして、ロトを家の中に引き入れて戸を閉め、 11 戸口の前に入る男たちに、老若を問わず、目つぶしを食わせ、戸口を分からなくした。 12 二人の客はロトに言った。 「ほかに、あなたの身内の人がこの町にいますか。あなたの婿や息子や娘などを皆連れてここから逃げなさい。 13 実は、わたしたちはこの町を滅ぼしに来たのす。大きな叫びが主にもとに届いたので、主は、この町を滅ぼすためにわたしたちを遣わされたのです。」 14 ロトは嫁いだ娘たちの婿のところへ行き、「さあ早くここから逃げるのだ。主がこの町を滅ぼされるからだ」と促したが、婿たちは冗談だと思った。 15 夜が明けるころ、御使いたちはロトをせきたてて言った。「さあ早く、あなたの妻とここにいる二人の娘を連れて行きなさい。さもないと、この町に下る罰の巻き添えになって滅ぼされてしまう。」 16 ロトはためらっていた。主は憐れんで、二人の客にロト、妻、二人の娘の手をとらせて町の外へ避難するようにされた。
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2021年10月05日
創世記 ソドムの滅亡 19-13、19-14
創世記 天地の創造
1
1 初めに、神は天地を創造された。 2 地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、?~の靈が水の面を動いていた。 3 ?~は言われた。「光あれ。」こうして、光があった。 4 ?~は光を見て、良しとされた。?~は光と闇を分け、 5 光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第一の日である。6 ?~は言われた。「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。」 7 ?~は大空を造り、大空の下と大空の上に水を分けさせられた。そのようになった。 8 ?~は大空を天と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第二の日である。 9 ?~は言われた。「天の下の水は一つ所に集まれ。乾いた所が現れよ。」そのようになった。 10 神は乾いた所を地と呼び、水の集まった所を海と呼ばれた。神はこれを見て、良しとされた。 11 神は言われた。「地は草を芽生えさせよ。種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける果樹を、地に芽生えさせよ。」そのようになった。 12 地は草を芽生えさせ、それぞれの種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける木を芽生えさせた。?~はこれを見て、良しとされた。 13 夕べがあり、朝があった。第三の日である。 14 神は言われた。「天の大空に光る物があって、昼と夜を分け、季節のしるし、日や年のしるしとなれ。 15 天の大空に光る物があって、地を照らせ。」そのようになった。 16 ?~は二つの大きな光る物と星を造り、大きな方に昼を治めさせ、小さな方に夜を治めさせられた。 17 ?~はそれらを天の大空に置いて、地を照らさせ、 18 昼と夜を治めさせ、光と闇を分けさせられた。?~はこれを見て、良しとされた。 19 夕べがあり、朝があった。第四の日である。 20 ?~は言われた。「生き物が水の中に群がれ。鳥は地の上、天の大空の面を飛べ。」 21 ?~は水に群がるもの、すなわち大きな怪物、うごめく生き物をそれぞれに、また、翼ある鳥をそれぞれに創造された。?~はこれを見て、良しとされた。 22 ?~はそれらのものを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、海の水に満ちよ。鳥は地の上に増えよ。」 23 夕べがあり、朝があった。第五の日である。 24 ?~は言われた。「地は、それぞれの生き物を産み出せ。家畜、這うもの、地の獣をそれぞれに産み出せ。」そのようになった。 25 ?~はそれぞれの地の獣、それぞれの家畜、それぞれの土を這うものを造られた。?~はこれを見て、良しとされた。 26 ?~は言われた。「我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。そして海の魚、空の鳥、家畜、地の獣、地を這うものすべてを支配させよう。」 27 ?~は御自分にかたどって人を創造された。?~にかたどって創造された。男と女に創造された。28 ?~は彼らを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ。」 29 ?~は言われた。「見よ、全地に生える、種を持つ草と種を持つ実をつける木を、すべてあなたたちに与えよう。それがあなたたちの食べ物となる。 30 地の獣、空の鳥、地を這うものなど、すべて命あるものにはあらゆる青草をたべさせよう。」そのようになった。 31 ?~はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった。夕べがあり、朝があった。第六の日である。
2
1 天地万物は完成された。 2 第七の日に、?~は御自分の仕事を完成され、第七の日に、神は御自分の仕事を離れ、安息なさった。 3 この日に?~はすべての創造の仕事を離れ、安息なさったので、第七の日を?~は祝福し、聖別された。 4 これが天地創造の由来である。主なる?~が地と天を造られたとき、 5 地上には野の木も、野の草も生えていなかった。主なる?~が地上に雨をお送りにならなかったからである。また土を耕す人もいなかった。 6 しかし、水が地下から湧き出て、土の面をすべて潤した。 7 主なる?~は、土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった。 8 主なる?~は、東の方のエデンに園を設け、自ら形づくった人をそこに置かれた。 9 主なる?~は、見るからに好ましく、食べるに良いものをもたらすあらゆる木を地に生えいでさせ、また園の中央には、命の木と善悪の知識の木を生えいでさせられた。 10 エデンから一つの川が流れ出ていた。園を潤し、そこで分かれて、四つの川となっていた。 11 第一の川の名はピションで、金を産出するハビラ地方全域を巡っていた。 12 その金は良質であり、そこではまた、琥珀の類やラピス・ラズリも産出した。 13 第二の川の名はギホンで、クシュ地方全域を巡っていた。 14 第三の川の名はチグリスで、アシュルの東の方を流れており、第四の川の名はユーフラテスであった。 15 主なる?~は人を連れて来て、エデンの園に住まわせ、人がそこを耕し、守るようにされた。 16 主なる?~は人に命じて言われた。「園のすべての木から取って食べなさい。 17 ただし、善悪の知識の木からは、決して食べてはならない。食べると必ず死んでしまう。」 18 主なる?~は言われた。「人が一人でいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう。」 19 主なる?~は、野のあらゆる獣、空のあらゆる鳥を土で形づくり、人のところへ持って来て、人がそれぞれどう呼ぶか見ておられた。人が呼ぶと、それはすべて、生き物の名となった。 20 人はあらゆる家畜、空の鳥、野のあらゆる獣に名を付けたが、自分に合う助ける者は見つけることができなかった。 21 主なる?~はそこで、人を深い眠りに落とされた。人が眠り込むと、あばら骨の一部を抜き取り、その跡を肉でふさがれた。 22 そして、人から抜き取ったあばら骨で女を造り上げられた。主なる?~が彼女を人のところへ連れて来られると、 23 人は言った。「ついに、これこそわたしの骨の骨わたしの肉の肉。これこそ、女(イシャー)と呼ぼう まさに、男(イシュ)から取られたものだから。」 24 こういうわけで、男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる。 25 人と妻は二人とも裸であったが、恥ずかしがりはしなかった。
創世記 蛇の誘惑
3
1 主なる?~が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった。蛇は女に言った。「園のどの木からも食べてはいけない、などと神は言われたのか。」 2 女は蛇に答えた。「わたしたちは園の木の果実を食べてよいのです。 3 でも、園の中央に生えている木の果実だけは、食べてはいけない。触れてもいけない、死んではいけないから、と?~様はおっしゃいました。」 4 蛇は女に言った。「決して死ぬことはない。 5 それを食べると、目が開け、?~のように善悪を知るものとなることを?~はご存じなのだ。」 6 女が見ると、その木はいかにもおいしそうで、目を引き付け、賢くなるように唆していた。女は実を取って食べ、一緒にいた男にも渡したので、彼も食べた。 7 二人の目は開け、自分たちが裸であることを知り、二人はいちじくの葉をつづり合わせ、腰を覆うものとした。 8 その日、風の吹くころ、主なる?~が園の中を歩く音が聞こえてきた。アダムと女が、主なる?~の顔を避けて、園の木の間に隠れると、 9 主なる?~はアダムを呼ばれた。「どこにいるのか」 10 彼は答えた。「あなたの足音が園の中に聞こえたので、恐ろしくなり、隠れております。わたしは裸ですから。」 11 ?~は言われた。「お前が裸であることを誰が告げたのか。取って食べるなと命じた木から食べたのか。」 12 アダムは答えた。「あなたがわたしと共にいるようにしてくださった女が、木から取って与えたので、食べました。」 13 主なる?~は女に向かって言われた。「何ということをしたのか。」女は答えた。「蛇がだましたので、食べてしまいました。」 14 主なる?~は、蛇に向かって言われた。「このようなことをしたお前はあらゆる家畜、あらゆる野の獣の中で呪われるものとなった。お前は、生涯這いまわり、塵を食らう。 15 お前と女、お前の子孫と女の子孫の間にわたしは敵意を置く。彼はお前の頭を砕き お前は彼のかかとを砕く。」 16 ?~は女に向かって言われた。「お前のはらみの苦しみを大きなものにする。お前は、苦しんで子を産む。お前は男を求め 彼はお前を支配する。」 17 ?~はアダムに向かって言われた。「お前は女の声に従い 取って食べるなと命じた木から食べた。お前のゆえに、土は呪われるものとなった。お前は、生涯食べ物を得ようと苦しむ。 18 お前に対して 土は茨とあざみを生えいでさせる 野の草を食べようとするお前に。 19 お前は顔に汗を流してパンを得る 土に返るときまで。お前がそこから取られた土に。塵にすぎないお前は塵に返る。」 20 アダムは女をエバ(命)と名付けた。彼女がすべて命あるものの母となったからである。 21 主なる?~は、アダムと女に皮の衣を作って着せられた。 22 主なる?~は言われた。「人は我々の一人のように、善悪を知る者となった。今は、手を伸ばして命の木からも取って食べ、永遠に生きる者となるおそれがある。」 23 主なる?~は、彼をエデンの園から追い出し、彼に、自分がそこから取られた土を耕させることにされた。 24 こうしてアダムを追放し、命の木に至る道を守るために、エデンの園の東にケルビムと、きらめく剣の炎を置かれた。
創世記 カインとアペル
4
1 さて、アダムは妻エバを知った。彼女は身ごもってカインを産み、「わたしは主によって男子を得た」と言った。 2 彼女はまたその弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。 3 時を経て、カインは土の実りを主のもとに献げ物として持って来た。 4 アベルは羊の群れの中から肥えた初子を持って来た。主はアベルとその献げ物に目を留められたが、 5 カインとその献げ物には目を留められなかった。カインは激しく怒って顔を伏せた。 6 主はカインに言われた。「どうして怒るのか。どうして顔を伏せるのか。 7 もしお前が正しいなら、顔を上げられるはずではないか。正しくないなら、罪は戸口で待ち伏せており、お前を求める。お前はそれを支配せねばならない。」 8 カインが弟アベルに言葉をかけ、二人が野原に着いたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。 9 主はカインに言われた。「お前の弟アベルは、どこにいるのか。」カインは答えた。「知りません。わたしは弟の番人でしょうか。」 10 主は言われた。「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。 11 今、お前は呪われる者となった。お前が流した弟の血を、口を開けて飲み込んだ土よりもなお、呪われる。 12 土を耕しても、土はもはやお前のために作物を産み出すことはない。お前は地上をさまよい、さすらう者となる。」 13 カインは主に言った。「わたしの罪は重すぎて負いきれません。 14 今日、あなたがわたしをこの土地から追放なさり、わたしが御顔から隠されて、地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう。」 15 主はカインに言われた。「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。 16 カインは主の前を去り、エデンの東、ノド(さすらい)の地に住んだ。 17 カインは妻を知った。彼女は身ごもってエノクを産んだ。カインは町を建てていたが、その町を息子の名前にちなんでエノクと名付けた。 18 エノクにはイラドが生まれた。イラドはメフヤエルの父となり、メフヤエルはメトシャエルの父となり、メトシャエルはレメクの父となった。
19 レメクは二人の妻をめとった。一人はアダ、もう一人はツィラと言った。 20 アダはヤバルを産んだ。ヤバルは、家畜を飼い天幕に住む者の先祖となった。 21 その弟はユバルといい、竪琴や笛を奏でる者すべての先祖となった。 22 ツィラもまた、トバル・カインを産んだ。彼は青銅や鉄でさまざまの道具を作る者となった。トバル・カインの妹はナアマといった。 23 さて、レメクは妻に言った。「アダとツィラよ、わが声を聞け。レメクの妻たちよ、わが言葉に耳を傾けよ。わたしは傷の報いに男を殺し 打ち傷の報いに若者を殺す。 24 カインのための復讐が七倍なら レメクのためには七十七倍。」 25 再び、アダムは妻を知った。彼女は男の子を産み、セトと名付けた。カインがアベルを殺したので、?~が彼に代わる子を授け(シャト)られたからである。 26 セトにも男の子が生まれた。彼はその子をエノシュと名付けた。主の御名を呼び始めたのは、この時代のことである。
創世記 アダムの系図
5
1 これはアダムの系図の書である。?~は人を創造された日、?~に似せてこれを造られ、 2 男と女に創造された。創造の日に、彼らを祝福されて、人と名付けられた。 3 アダムは百三十歳になったとき、自分に似た、自分にかたどった男の子をもうけた。アダムはその子をセトと名付けた。 4 アダムは、セトが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 5 アダムは九百三十年生き、そして死んだ。 6 セトは百五歳になったとき、エノシュをもうけた。 7 セトはエノシュが生まれた後八百七年生きて、息子や娘をもうけた。 8 セトは九百十二年生き、そして死んだ。 9 エノシュは九十歳になったとき、ケナンをもうけた。 10 エノシュは、ケナンが生まれた後八百十五年生きて、息子や娘をもうけた。 11 エノシュは九百五年生き、そして死んだ。 12 ケナンは七十歳になったとき、マハラルエルをもうけた。 13 ケナンはマハラルエルが生まれた後八百四十年生きて、息子や娘をもうけた。 14 ケナンは九百十年生き、そして死んだ。 15 マハラルエルは六十五歳になったとき、イエレドをもうけた。 16 マハラルエルは、イエレドが生まれた後八百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 17 マハラルエルは八百九十五年生き、そして死んだ。 18 イエレドは百六十二歳になったとき、エノクをもうけた。 19 イエレドは、エノクが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 20 イエレドは九百六十二年生き、そして死んだ。 21 エノクは六十五歳になったとき、メトシェラもうけた。 22 エノクは、メトシェラが生まれた後、三百年?~と共に歩み、息子や娘をもうけた。 23 エノクは三百六十五年生きた。 24 エノクは?~と共に歩み、?~が取られたのでいなくなった。 25 メトシェラは百八十七歳になったとき、レメクをもうけた。 26 メトシェラは、レメクが生まれた後七百八十二年生きて、息子や娘をもうけた。 27 メトシェラは九百六十九年生き、そして死んだ。 28 レメクは百八十二歳になったとき、男の子をもうけた。 29 彼は、「主の呪いを受けた大地で働く我々の手の苦労を、この子は慰めてくれるだろう」と言って、その子をノア(慰め)と名付けた。 30 レメクは、ノアが生まれた後五百九十五年生きて、息子や娘をもうけた。 31 レメクは七百七十七年生き、そして死んだ。 32 ノアは五百歳になったとき、セム ハム ヤフェトをもうけた。
創世記 洪水
6
1 さて、地上に人が増え始め、娘たちが生まれた。 2 ?~の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、おのおの選んだ者を妻にした。 3 主は言われた。 「わたしの霊は人の中に永久にとどまるべきではない。人は肉にすぎないのだから。」こうして、人の一生は百二十年となった。 4 当時もその後も、地上にはネフィリムがいた。これは、?~の子らが人の娘たちのところに入って産ませた者であり、大昔の名高い英雄たちであった。 5 主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、 6 地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた。 7 主は言われた。 「わたしは人を創造したが、これを地上からぬぐい去ろう。人だけでなく、家畜も這うものも空の鳥も。わたしはこれらを造ったことを後悔する。」 8 しかし、ノアは主の好意を得た。 9 これはノアの物語である。その世代の中で、ノアは?~に従う無垢な人であった。ノアは?~と共に歩んだ。 10 ノアには三人の息子、セム ハム ヤフェトが生まれた。 11 この地は?~の前に堕落し、不法に満ちていた。 12 ?~は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。 13 ?~はノアに言われた。「すべて肉なるものを終わらせる時がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす。 14 あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟には小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。 15 次のようにしてそれを造りなさい。箱舟の長さを三百アンマ、幅を五十アンマ、高さを三十アンマにし、 16 箱舟に明かり取りを造り、上から一アンマにして、それを仕上げなさい。箱舟の側面には戸口を造りなさい。また、一階と二階と三階を造りなさい。 17 見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊をもつ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべてのものは息絶える。 18 わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。 19 また、すべて命あるもの、すべて肉なるものから、二つずつ箱舟に連れて入り、あなたと共に生き延びるようにしなさい。それらは、雄と雌でなければならない。 20 それぞれの鳥、それぞれの家畜、それぞれの地を這うものが、二つずつあなたのところへ来て、生き延びるようにしなさい。 21 更に、食べられる物はすべてあなたのところに集め、あなたと彼らの食料としなさい。」 22 ノアは、すべて?~が命じられたとおりに果たした。
7
1 主はノアに言われた。「さあ、あなたとあなたの家族は皆、箱舟に入りなさい。この世代の中であなただけはわたしに従う人だと、わたしは認めている。 2 あなたは清い動物をすべて七つがい取り、また、清くない動物をすべて一つがいずつ取りなさい 3 空の鳥も七つがい取りなさい。全地の面に子孫が生き続けるように。 4 七日の後、わたしは四十日四十夜地上に雨を降らせ、わたしが造ったすべての生き物を地の面からぬぐい去ることにした。」 5 ノアはすべて主が命じられたとおりにした。 6 ノアが六百歳のとき、洪水が地上に起こり、水が地の上にみなぎった。 7 ノアは妻子や嫁たちと共に洪水を免れようと箱舟に入った。 8 清い動物も清くない動物も、鳥も地を這うものもすべて、 9 二つずつ箱舟のノアのもとに来た。それは?~がノアに命じられたとおりに、雄と雌であった。 10 七日が過ぎて、洪水が地上起こった。 11 ノアの生涯の第六百年、第二の月の十七日、この日、大いなる深淵の源がことごとく裂け、天の窓が開かれた。 12 雨が四十日四十夜地上に降り続いたが、 13 まさにこの日、ノアも、息子のセム、ハム、ヤフェト、ノアの妻、この三人の息子の嫁たちも、箱舟に入った。 14 彼らと共にそれぞれの獣、それぞれの家畜、それぞれの地を這うもの、それぞれの鳥、小鳥や翼のあるものすべて、 15 命の霊をもつ肉なるものは、二つずつノアのもとに来て箱舟に入った。 16 ?~が命じられたとおりに、すべて肉なるものの雄と雌とが来た。主は、ノアの後ろで戸を閉ざされた。 17 洪水は四十日間地上を覆った。水は次第に増して箱舟を押し上げ、箱舟は大地を離れて浮かんだ。 18 水は勢力を増し、地の上に大いにみなぎり、箱舟は水の面を漂った。 19 水はますます勢いを加えて地上にみなぎり、およそ天の下にある高い山はすべて覆われた。 20 水は勢い増して更にその上十五アンマに達し、山々を覆った。 21 地上で動いていた肉なるものはすべて、鳥も家畜も獣も地に群がり這うものも人も、ことごとく息絶えた。 22 乾いた地のすべてのもののうち、その鼻に命の息と霊のあるものはことごとく死んだ。 23 地の面にいた生き物はすべて、人をはじめ、家畜、這うもの、空の鳥に至るまでぬぐい去られた。彼らは大地からぬぐい去られ、ノアと、彼と共に箱舟にいたものだけが残った。 24 水は百五十日の間、地上で勢いを失わなかった。
8
1 神は、ノアと彼と共に箱舟にいたすべての獣とすべての家畜を御心に留め、地の上に風を吹かせられたので、水が減り始めた。 2 また、深淵の源と天の窓が閉じられたので、天からの雨は降りやみ、 3 水は地上からひいて行った。百五十日の後には水が減って、 4 第七の月の十七日に箱舟はアララト山の上に止まった。 5 水はますます減って第十の月になり、第十の月の一日には山々の頂が現れた。 6 四十日たって、ノアは自分が造った箱舟の窓を開き、烏を放した。烏は飛び立ったが、地上の水が乾くのを待って、出たり入ったりした。 8 ノアは鳩を彼のもとから放して、地の面から水がひいたかどうかを確かめようとした。 9 しかし、鳩は止まる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰って来た。水がまだ全地の面を覆っていたからである。ノアは手を差し伸べて鳩を捕らえ、箱舟の自分のもとに戻した。 10 更に七日待って、彼は再び鳩を箱舟から放した。 11 鳩は夕方になってノアのもとに帰って来た。見よ、鳩はくちばしにオリーブの葉をくわえていた。ノアは水が地上からひいたことを知った。 12 彼は更に七日待って、鳩を放した。鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。 13 ノアが六百一歳のとき、最初の月の一日に、地上の水は乾いた。ノアは箱舟の覆いを取り外して眺めた。見よ、地の面は乾いていた。 14 第二の月の二十七日になると、地はすっかり乾いた。 15 神はノアに仰せになった。 「さあ、あなたもあなたの妻も、息子も嫁も、皆一緒に箱舟から出なさい。 17 すべて肉なるもののうちからあなたのもとに来たすべての動物、鳥も家畜も地を這うものも一緒に連れ出し、地に群がり、地上で子を産み、増えるようにしなさい。」 18 そこで、ノアは息子や妻や嫁と共に外へ出た。 19 獣、這うもの、鳥、地に群がるもの、それぞれすべて箱舟から出た。 20 ノアは主のために祭壇を築いた。そしてすべての清い家畜と清い鳥のうちから取り、焼き尽くす捧げ物として祭壇の上にささげた。 21 主は宥めの香りをかいで、御心に言われた。「人に対して大地を呪うことは二度とすまい。人が心に思うことは、幼いときから悪いのだ。わたしは、この度したように生き物をことごとく打つことは、二度とすまい。 22 地の続くかぎり、種蒔きも刈り入れも 寒さも暑さも、夏も冬も 昼も夜も、やむことはない。」
創世記 祝福と契約
9
1 ?~はノアと彼の息子たちを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちよ。 2 地のすべての獣と空のすべての鳥は、地を這うすべてのものと海のすべての魚と共に、あなたたちの前に恐れおののき、あなたたちの手にゆだねられる。 3 動いている命あるものは、すべてあなたたちの食糧とするがよい。わたしはこれらすべてのものを、青草と同じようにあなたたちに与える。 4 ただし、肉は命である血を含んだまま食べてはならない。 5 また、あなたたちの命である血が流された場合、わたしは賠償を要求する。いかなる獣からも要求する。人間どうしの血については、人間から人間の命を賠償として要求する。 6 人の血を流す者は 人によって自分の血を流される。人は?~にかたどって造られたからだ。 7 あなたたちは産めよ、増えよ 地に群がり、地に増えよ。」 8 ?~はノアと彼の息子たちに言われた。 9 「わたしは、あなたたちと、そして後に続く子孫と、契約を立てる。 10 あなたたちと共にいるすべての生き物、またあなたたちと共にいる鳥や家畜や地のすべての獣など、箱舟から出たすべてのもののみならず、地のすべての獣と契約を立てる。 11 わたしがあなたたちと契約を立てたならば、二度と洪水によって肉なるものが滅ぼされることはなく、洪水が起こって地を滅ぼすことも決してない。」 12 更に?~は言われた。「あなたたちならびにあなたたちと共にいるすべての生き物と、代々(よよ)とこしえにわたしが立てる契約のしるしはこれである。 13 すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立てた契約のしるしとなる。 14 わたしが地の上に雲を湧き起こらせ、雲の中に虹が現れると、 15 わたしは、わたしとあなたたちならびにすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた契約に心を留める。水が洪水となって、肉なるものをすべて滅ぼすことは決してない。 16 雲の中に虹が現れると、わたしはそれを見て、神と地上のすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた永遠の契約に心をと留める。」 17 ?~はノアに言われた。「これが、わたしと地上のすべて肉なるものとの間にたてた契約のしるしである。」
創世記 ノアと息子たち
18 箱舟から出たノアの息子は、セム、ハム、ヤフェトであった。ハムはカナンの父である。 19 この三人がノアの息子で、全世界の人々は彼らから出て広がったのである。 20 さて、ノアは農夫となり、ぶどう畑を作った。 21 あるとき、ノアはぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。 22 カナンの父ハムは、自分の父の裸を見て、外にいた二人の兄弟に告げた。 23 セムとヤフェトは着物を取って自分たちの肩に掛け、後ろ向きに歩いて行き、父の裸を覆った。二人は顔を背けたままで、父の裸を見なかった。 24 ノアは酔いからさめると、末の息子がしたことを知り、 25 こう言った。「カナンは呪われよ 奴隷の奴隷となり、兄たちに仕えよ。」 26 また言った。「セムの神、主をたたえよ。 カナンはセムの奴隷となれ。
27 神がヤフェトの土地を広げ(ヤフェト) セムの天幕に住まわせ カナンはその奴隷となれ。」 28 ノアは、洪水の後三百五十年生きた。 29 ノアは九百五十歳になって、死んだ。
創世記 ノアの子孫
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1 ノアの息子、セム、ハム、ヤフェトの系図は次のとおりである。洪水の後、彼らに息子が生まれた。 2 ヤフェトの子孫はゴメル、マゴグ、メディア、ヤワン、トバル、メシェク、ティラスであった。 3 ゴメルの子孫は、アシュケナズ、リファト、トガルマであった。 4 ヤワンの子孫は、エリシャ、タルシシュ、キティム、ロダニムであった。 5 海沿いの国々は、彼らから出て、それぞれの地に、その言語、氏族、民族に従って住むようになった。 6 ハムの子孫は、クシュ、エジプト、プト、カナンであった。 7 クシュの子孫はセバ、ハビラ、サブタ、ラマ、サブテカであり、ラマの子孫はシェバとデダンであった。 8 クシュにはまた、ニムロドが生まれた。ニムロドは地上で最初の勇士となった。 9 彼は、主の御前に勇敢な狩人であり、「主の御前に勇敢な狩人ニムドロのようだ」という言い方がある。 10 彼の王国の主な町は、バベル、ウルク、アッカドであり、それらはすべてシンアルの地にあった。 11 彼はその地方からアッシリに進み、ニネベ、レホボト・イル、カラ、 12 レセンを建てた。レセンはニネベとカラとの間にある、非常に大きな町であった。 13 エジプトにはリディア人、アルミナ人、レハビム人、ナフトヒム人、 14 上エジプト人、カスルヒム人、カフトル人が生まれた。このカフトル人からペリシテ人が出た。
15 カナンには長男シドンとヘト、 16 また、エブス人、アモリ人、ギルガシ人、 17 ヒビ人、アルキ人、シニ人、 18 アルワド人、フェマリ人、ハマト人が生まれた。その後、カナン人の諸氏族が広がった。 19 カナン人の領土は、シドンから南下してゲラルを経てガザまでを含み、更に、ソドム、ゴモラ、アドマ、ツェボイムを経てラシャまでを含んだ。 20 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたハムの子孫である。 21 セムにもまた子供が生まれた。彼はエベルのすべての子孫の先祖であり、ヤフェトの兄であった。 22 セムの子孫はエラム、アシュル、アルパクシャド、ルド、アラムであった。 23 アラムの子孫は、ウツ、フル、ゲテル、マシュであった。 24 アルパクシャドにはシェラが生まれ、シェラにはエベルが生まれた。 25 エベルには二人の息子が生まれた。ひとりの名は、その時代に土地が分けられた(パラグ)ので、ペレグといい、その兄弟はヨクタンといった。 26 ヨクタンには、アルモダド、シェレフ、ハツァルマベト、イエラ、 27 ハドラム、ウザル、ディクラ、 28 オバル、アビマエル、シェバ、 29 オフィル、ハビラ、ヨバブが生まれた。これらは皆、ヨクタンの息子であった。 30 彼らはメシャからセファルに至る東の高原地帯に住んでいた。 31 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたセムの子孫である。 32 ノアの子孫である諸氏族を、民族ごとの系図にまとめると以上のようになる。地上の諸民族は洪水の後、彼らから分かれ出た。
創世記 バベルの塔
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1 世界中は同じ言葉を使って、同じように話していた。 2 東の方から移動してきた人々は、シンアルの地に平野を見つけ、そこに住み着いた。 3 彼らは、「れんがを作り、それをよく焼こう」と話し合った。石の代わりにれんがを、しっくいの代わりにアスファルトを用いた。 4 彼らは、「さあ 天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。 5 主は降って来て、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、 6 言われた。「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。 7 我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」 8 主は彼らをそこから全地に散らされたので、彼らはこの町の建設をやめた。 9 こういうわけで、この町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ、また、主がそこから彼らを全地に散らされたからである。
創世記 セムの系図
10 セムの系図は次のとおりである。セムが百歳になったとき、アルバクシャドが生まれた。それは洪水の二年後のことであった。 11 セムは、アルパクシャドが生まれた後五百年生きて、息子や娘をもうけた。 12 アルパクシャドが三十五歳になったとき、シェラが生まれた。 13 アルパクシャドは、シェラが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 14 シェラが三十歳になったとき、エベルが生まれた。 15 シェラは、エベルが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 16 エベルが三十四歳になったとき、ぺレグが生まれた。 17 エベルは、ぺレグが生まれた後四百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 18 ぺレグが三十歳になったとき、レウが生まれた。 19 ぺレグは、レウが生まれた後二百九年生きて、息子や娘をもうけた。 20 レウが三十二歳になったとき、セルグが生まれた。 21 レウは、セルグが生まれた後二百七年生きて、息子や娘をもうけた。 22 セルグ三十歳なったとき、ナホルが生まれた。 23 セルグは、ナホルが生まれた後二百年生きて、息子や娘をもうけた。 24 ナホルが二十九歳になったとき、テラが生まれた。 25 ナホルは、テラが生まれた後百十九年生きて、息子や娘をもうけた。 26 テラが七十歳になったとき、アブラム、ナホル、ハランが生まれた。
創世記 テラの系図
27 テラの系図は次のとおりである。テラにはアブラム、ナホル、ハランが生まれた。ハランにはロトが生まれた。 28 ハランは父のテラより先に、故郷カルデアのウルで死んだ。 29 アブラムとナホルはそれぞれ妻をめとった。アブラムの妻の名はサライ、ナホルの妻の妻の名はミルカといった。ミルカはハランの娘である。ハランはミルカとイスカの父であった。 30 サライは不妊の女で、子供ができなかった。 31 テラは、息子アブラムと、ハランの息子で自分の孫であるロト、および息子アブラムの妻で自分の嫁であるサライを連れて、カルデアのウルを出発し、カナン地方に向った。彼らはハランまで来ると、そこにとどまった。 32 テラは二百五年の生涯を終えて、ハランで死んだ。
創世記 アブラムの召命と移住
12
1 主はアブラムに言われた。「あなたは生まれ故郷 父の家を離れて わたしが示す地に行きなさい 2 わたしはあなたを大いなる国民にし あなたを祝福し あなたに名を高める 祝福の源となるように 3 あなたを祝福する人をわたしは祝福し あなたを呪う者をわたしは呪う。 地上の氏族はすべて あなたによって祝福に入る。」 4 アブラムは 主の言葉に従って旅立った。ロトも共に行った。アブラムは、ハランを出発したとき七十五歳であった。 5 アブラムは妻のサライ、甥のロトを連れ、蓄えた財産をすべて携え、ハランで加わった人々と共にカナン地方へ向かって出発し、カナン地方入った。 6 アブラムはその地を通り、シケムの聖所、モレの樫の木まで来た。当時、その地方にはカナン人が住んでいた。 7 主はアブラムに現れて、言われた。「あなたの子孫のこの地を与える」アブラムは、彼に現れた主のために、そこに祭壇を築いた。 8 アブラムは、そこからベテルの東の山へ移り、西にベテル、東にアイを望む所に天幕を張って、そこにも主のために祭壇を築き、主の御名を呼んだ。 9 アブラムは更に旅を続け、ネゲブ地方に移った。
創世記 エジプト滞在
10 その地方に飢饉があった。 アブラムは、その地方の飢饉がひどかったので、エジプトに下り、そこに滞在することにした。 11 エジプトに入ろうしたとき、妻サライに言った。 「あなたが美しいのを、わたしはよく知っている。 12 エジプト人があなたを見たら、『この女はあの男の妻だ』と言って、わたしを殺し、あなたを生かしておくにちがいない。 13 どうか、わたしの妹だ、と言ってください。 そうすれば、わたしはあなたのゆえに幸いになり、あなたのお陰で命も助かるだろう。」 14 アブラムがエジプトに入ると、エジプト人はサライを見て、大変美しいと思った。 15 ファラオの家臣たちも彼女を見て、ファラオに彼女のことを褒めたので、サライはファラオの宮廷に召し入れられた 16 アブラムも彼女のゆえに幸いを受け、羊の群れ、牛の群れ、ろば、男女の奴隷、雌ろば、らくだなどを与えられた。 17 ところが主は、アブラムの妻サライのことで、ファラオと宮廷の人々を恐ろしい病気にかからせた。 18 ファラオはアブラムを呼び寄せて言った。 「あなたはわたしに何ということをしたのか。 なぜ、あの婦人は自分の妻だと、言わなかったのか。 19 なぜ、『わたしの妹です』などと言ったのか。 だからこそ、わたしの妻として召し入れたのだ。 さあ、あなたの妻を連れて、立ち去ってもらいたい。 20 ファラオは家来たちに命じて、アブラムを、その妻とすべての持ち物と共に送り出させた。
創世記 ロトとの別れ
13
1 アブラムは、妻と共に、すべての持ち物を携え、エジプトを出て再びネゲブ地方へ上った。ロトも一緒であった。 2 アブラムは非常に多くの家畜や金銀を持っていた。 3 ネゲブ地方から更に、ベテルに向って旅を続け、ベテルとアイとの間の、以前に天幕を張った所まで来た。 4 そこは、彼が最初に祭壇を築いて、主の御名を呼んだ場所であった。 5 アブラムと共に旅をしていたロトもまた、羊や牛の群れを飼い、たくさんの天幕を持っていた。 6 その土地は、彼らが一緒に住むには十分ではなかった。 彼らの財産が多すぎたから、一緒に住むことができなかったのである。 7 アブラムの家畜を飼う者たちと、ロトの家畜を飼うものたちとの間に争いが起きた。 そのころ、その地方にはカナン人もペリジ人も住んでいた。 8 アブラムはロトに言った。 「わたしたちは親類どうしだ。わたしとあなたの間ではもちろん、お互いの羊飼いの間でも争うのはやめよう。 9 あなたの前には幾らでも土地があるのだから、ここで別れようではないか。 あなたが左に行くなら、わたしは右に行こう。 あなたが右に行くなら、わたしは左に行こう。」 10 ロトが目を上げて眺めると、ヨルダン川流域の低地一帯は、 主がソドムとゴモラを滅ぼす前であったので、ツォアルに至るまで、主の園のように、エジプトの国のように、見渡すかぎりよく潤っていた。 11 ロトはヨルダン川流域の低地一帯を選んで、東へ移って行った。こうして彼らは、左右に別れた。 12 アブラムはカナン地方に住み、ロトは低地の町々に住んだが、彼はソドムまで天幕を移した。 13 ソドムの住民は邪悪で、主に対して多くの罪を犯していた。 14 主は、ロトが別れて行った後、アブラムに言われた。「さあ、目を上げて、あなたがいる場所から東西南北を見渡しなさい。 15 見えるかぎりの土地をすべて、わたしは永久にあなたとあなたの子孫に与える。 16 あなたの子孫を大地の砂粒のようにする。大地の砂粒が数えきれないように、あなたの子孫も数えきれないであろう。 17 さあ、この土地を縦横に歩き回るがよい。わたしはそれをあなたに与えるから。」 18 アブラムは天幕を移し、ヘブロンにあるマムレの樫の木のところに来て住み、そこに主のために祭壇を築いた。
王との戦い
14
1 シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨク、エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアルが、 2 ソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アドマの王シンアブ、ツェボイムの王シェムエベル、ベラ、すなわちツオワルの王と戦ったとき、 3 これら五人の王は皆、シディムの谷、すなわち塩の海で同盟を結んだ。 4 彼らは十二年間ケドルラオメルに支配されていたが、十三年目に背いたのである。 5 十四年目に、ケドルラオメルとその味方の王たちが来て、アシュテロト・カルナイムでレファイム人を、ハムでズジム人を、シャベ・キルヤタイムでエミル人を、 6 セイルの山地でフリ人人を撃ち、荒れ野に近いエル・バランまで進んだ。 7 彼らは転進して、エン・ミシュパト、すなわちカデシュに向かい、アマレク人の全領土とハツェツオン・タマルに住むアモリ人を撃った。 8 そこで、ソドムの王、ゴモラの王、アドマの王、ツェボイムの王、ベラすなわちツォアルの王は兵を繰り出し、シディムの谷で彼らと戦おうと陣を敷いた。 9 エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアル、シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨクの四人の王に対して、これら五人の王が戦いを挑んだのである。 10 シディムの谷には至るところに天然アスファルトの穴があった。ソドムとゴモラの王は逃げるとき、その穴に落ちた。残りの王は山へ逃れた。 11 ソドムとゴモラの財産や食糧はすべて奪い去られ、 12 ソドムに住んでいたアブラムの甥ロトも、財産もろとも連れ去られた。
ロトの救出
13 逃げ延びた一人の男がヘブライ人アブラムのもとに来て、そのことを知らせた。アブラムは当時、アモリ人マムレ樫の木の傍らに住んでいた。マムレはエシュコルとアネルの兄弟で、彼らはアブラムと同盟を結んでいた。 14 アブラムは、親族の者が捕虜になったと聞いて、彼の家で生まれた奴隷で、訓練を受けた者三百十八人を召集し、ダンまで追跡した。 15 夜、彼と僕たちは分かれて敵を襲い、ダマスコの北のホバまで追跡した。 16 アブラムはすべての財産を取り返し、親族のロトとその財産、女たちやそのほかの人々も取り戻した。
創世記 契約と割礼
17
1 アブラムが九十九歳になったとき、主はアブラムに現れて言われた。「わたしは全能の神である。あなたはわたしに従って歩み、全き者となりなさい。 2 わたしは、あなたとの間にわたしの契約を立て、あなたをますます増やすであろう。」 3 アブラムはひれ伏した。神は更に、語りかけて言われた。 4 「これがあなたと結ぶわたしの契約である。あなたは多くの国民の父となる。 5 あなたは、もはやアブラムではなく、アブラハムと名乗りなさい。あなたを多くの国民の父とするからである。 6 わたしは、あなたをますます?栄させ、諸国民の父とする。王となる者たちがあなたから出るであろう。 7 わたしは、あなたとの間に、また後に続く子孫との間に契約を立て、それを永遠の契約とする。そして、あなたとあなたの子孫の神となる。 8 わたしは、あなたが滞在しているこのカナンのすべての土地を、あなたとその子孫に、永久の所有地として与える。わたしは彼らの神となる。」 9 神はまた、アブラムに言われた。「だからあなたも、わたしの契約を守りなさい、あなたも後に続く子孫も。 10 あなたたち、およびあなたの後に続く子孫と、わたしとの間で守るべき契約はこれである。すなわち、あなたたちの男子はすべて、割礼を受ける。 11 包皮の部分を切り取りなさい。これが、わたしとあなたたちとの間の契約のしるしとなる。 12 いつの時代でも、あなたたちの男子はすべて、直系の子孫はもちろんのこと、家で生まれた奴隷も、外国人から買い取った奴隷であなたの子孫でない者も皆、生れてから八日目に割礼を受けなければならない。 13 あなたのお家で生まれた奴隷も、買い取った奴隷も、必ず割礼を受けなければならない。それによって、わたしの契約はあなたの体に記されて永遠の契約となる。 14 包皮の部分を切り取らない無割礼の男がいたなら、その人は民の間から断たれる。わたしの契約を破ったからである。」 15 神はアブラムに言われた。「あなたの妻サライは、名前をサライではなく、サラと呼びなさい。 16 わたしは彼女を祝福し、彼女によってあなたに男の子を与えよう。わたしは彼女を祝福し、諸国民の母とする。諸民族の王となる者たちが彼女から出る。」 17 アブラハムひれ伏した。しかし笑って、ひそかに言った。「百歳の男に子供が生まれるだろうか。九十歳のサラに子供が産めるだろうか。」 18 アブラハムは神に言った。「どうか、イシュマエルが御前に生き永らえますように。」 19 神は言われた。「いや、あなたの妻サラがあなたとの間に男の子を産む。その子をイサク(彼は笑う)と名付けなさい。わたしは彼と契約を立て、彼の子孫のために永遠の契約とする。 20 イシュマエルについての願いも聞き入れよう。必ず、わたしは彼を祝福し、大いに子供を増やし繁栄させる。彼は十二人の首長の父となろう。わたしは彼を大いなる国民とする。 21 しかし、わたしの契約は、来年の今ごろ、サラがあなたとの間に産むイサクと立てる。」 22 神はこう語り終えると、アブラハムを離れて昇って行かれた。 23 アブラハムは、息子のイシュマエルをはじめ、家で生まれた奴隷や買い取った奴隷など、自分の家にいる人々のうち、男子を皆集めて、すぐその日に、神が命じられたとおり包皮に割礼を施した。 24 アブラハムが包皮に割礼を受けたのは、九十九歳、 25 息子イシュマエルが包皮に割礼を受けたのは、十三歳であった。 26 アブラハムと息子のイシュマエルは、すぐその日に割礼を受けた。 27 アブラハムの家の男子は、家で生まれた奴隷も外国人から買い取った奴隷も皆、共に割礼を受けた。
創世記 イサクの誕生の予告
18
1 主はマムレの樫の木の所でアブラハムに現れた。暑い真昼に、アブラハムは天幕の入り口に座っていた。 2 目を上げて見ると、三人の人が彼に向って立っていた。アブラハムはすぐに天幕の入り口から走り出て迎え、地にひれ伏して、 3 言った。「お客様、よろしければ、どうか、僕のもとを通り過ぎないでください。 4 水を少々持ってこさせますから、足を洗って、木陰でどうぞひと休みなさってください。 5 何か召し上がるものを調えますので、疲れをいやしてから、お出かけください。せっかく、僕の所の近くをお通りになったのですから。」その人たちは言った。「では、お言葉どおりにしましょう。」 6 アブラハムは急いで天幕に戻り、サラのところに来て言った。「早く、上等の小麦粉を三セアほどこねて、パン菓子をこしらえなさい。」 7 アブラハムは牛の群れのところへ走って行き、柔らかくておいしそうな子牛を選び、召し使いに渡し、急いで料理をさせた。 8 アブラハムは、凝乳、乳、出来立ての子牛の料理などを選び、彼らの前に並べた。そして、彼らが木陰で食事をしている間、そばに立って給仕をした。 9 彼らはアブラハムに尋ねた。「あなたの妻のサラはどこにいますか。」「はい、天幕の中におります」とアブラハムが答えると、 10 彼らの一人が言った。「わたしは来年の今ごろ、必ずここにまた来ますが、そのころには、あなたの妻のサラに男の子が生まれているでしょう。」サラは、すぐ後ろの天幕の入り口で聞いていた。 11 アブラハムもサラも多くの日を重ねて老人になっており、しかもサラは月のものがとうになくっていた。 12 サラはひそかに笑った。自分は年をとり、もはや楽しみがあるはずもなし、主人も年老いているのに、と思ったのである。13 主はアブラハムに言われた。「なぜサラは笑ったのか。なぜ年をとった自分に子供が生まれるはずがないと思ったのだ。 14 主に不可能なことがあろうか。来年の今ごろ、わたしはここに戻ってくる。そのころ、サラには必ず男の子が生まれている。」 15 サラは恐ろしくなり、打ち消して言った。「わたしは笑いませんでした。」主は言われた。「いや、あなたは確かに笑った。」
創世記 ソドムのための執り成し
16 その人たちはそこを立って、ソドムを見下ろす所まで来た。アブラハムも、彼らを見送るために一緒に行った。 17 主は言われた。「わたしが行おうとしていることをアブラハムに隠す必要があろうか。 18 アブラハムは大きな強い国民になり、世界のすべての国民は彼によって祝福に入る。 19 わたしがアブラハムを選んだのは、彼が息子たちとその子孫に、主の道を守り、主に従って正義を行うよう命じて、主がアブラハムに約束したことを成就するためである。 20 主は言われた。「ソドムとゴモラの罪は非常に重い、と訴える叫びが実に大きい。 21 わたしは降って行き、彼らの行跡が、果たして、わたしに届いた叫びのとおりかどうか見て確かめよう。」 22 その人たちは、更にソドムの方に向かったが、アブラハムはなお、主の御前にいた。 23 アブラハムは進み出て言った。「もことにあなたは、正しい者を悪い者と一緒に滅ぼされるのですか。 24 あの町に正しい者が五十人いるとしても、それでも滅ぼし、その五十人の正しい者のために、町をお赦しにはならないのですか。 25 正しい者を悪い者と一緒に殺し、正しい者を悪い者と同じ目に遭わせるようなことを、あなたがなさるはずはございません。全くありえないことです。全世界を裁くお方は、正義を行われるべきではありませんか。」 26 主は言われた。「もしソドムの町に正しい者が五十人いるならば、その者たちのために、町を全部赦そう。」 27 アブラハムは答えた。「塵にすぎないわたしですが、あえて、わが主に申し上げます。 28 もしかすると、五十人の正しい者に五人足りないかもしれません。それでもあなたは、五人たりないために、町のすべてを滅ぼされますか。」主は言われた。「もし、四十五人いれば滅ぼさない。」 29 アブラハムは重ねて言った。「もしかすると、四十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その四十人のためにわたしはそれをしない」 30 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう少し言わせてください。もしかすると、そこには三十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「もし三十人いるならわたしはそれはしない。」 31 アブラハムは言った。「あえて、わが主に申し上げます。もしかすると、二十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その二十人のためにわたしは滅ぼさない。」 32 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう一度だけ言わせてください。もしかすると、十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その十人のためにわたしは滅ぼさない。」 33 主はアブラハムと語り終えると、去って行かれた。アブラハムも自分の住まいに帰った。
創世記 ソドムの滅亡
19
1 二人の御使いが夕方ソドムに着いたとき、ロトはソドムの門の所に座っていた。ロトは彼らを見ると、立ち上って迎え、地にひれ伏して、 2 言った。 「皆様方、どうぞ僕(しもべ)の家に立ち寄り、足を洗ってお泊りください。彼らは言った。「いや、結構です。わたしたちはこの広場で夜を過ごします。」 3 しかし、ロトがぜひにと勧めたので、彼らはロトの所に立ちよることにし、彼の家を訪ねた。ロトは、酵母を入れないパンを焼いて食事を供し、彼らをもてなした。 4 彼らがまだ床に就かないうちに、ソドムの町の男たちが、若者も年寄りもこぞって押しかけ、家を取り囲んで、 5 わめきたてた。 「今夜、お前のところへ来た連中はどこにいる。ここへ連れてこい。なぶりものにしてやるから。」 6 ロトは、戸口の前にたむろしている男たちのところへ出て行き、後ろの戸を閉めて、 7 言った。 「どうか、皆さん、乱暴なことはしないでください。 8 実は、わたしにはまだ嫁がせていない娘が二人おります。皆さんにその娘たちを差し出しますから、好きなようにしてください。ただ、あの方々には何もしないでください。この家の屋根の下に身を寄せていただいたのですから。」 9 男たちは口々に言った。 「そこをどけ」 「こいつはよそ者のくせに、指図などして。」 「さあ、彼らより先に、お前を痛い目に遭わせてやる。」 そして、ロトに詰め寄って体を押しつけ、戸を破ろうとした。 10 二人の客はそのとき、手を伸ばして、ロトを家の中に引き入れて戸を閉め、 11 戸口の前に入る男たちに、老若を問わず、目つぶしを食わせ、戸口を分からなくした。 12 二人の客はロトに言った。 「ほかに、あなたの身内の人がこの町にいますか。あなたの婿や息子や娘などを皆連れてここから逃げなさい。 13 実は、わたしたちはこの町を滅ぼしに来たのす。大きな叫びが主にもとに届いたので、主は、この町を滅ぼすためにわたしたちを遣わされたのです。」 14 ロトは嫁いだ娘たちの婿のところへ行き、「さあ早くここから逃げるのだ。主がこの町を滅ぼされるからだ」と促したが、婿たちは冗談だと思った。
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1
1 初めに、神は天地を創造された。 2 地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、?~の靈が水の面を動いていた。 3 ?~は言われた。「光あれ。」こうして、光があった。 4 ?~は光を見て、良しとされた。?~は光と闇を分け、 5 光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第一の日である。6 ?~は言われた。「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。」 7 ?~は大空を造り、大空の下と大空の上に水を分けさせられた。そのようになった。 8 ?~は大空を天と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第二の日である。 9 ?~は言われた。「天の下の水は一つ所に集まれ。乾いた所が現れよ。」そのようになった。 10 神は乾いた所を地と呼び、水の集まった所を海と呼ばれた。神はこれを見て、良しとされた。 11 神は言われた。「地は草を芽生えさせよ。種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける果樹を、地に芽生えさせよ。」そのようになった。 12 地は草を芽生えさせ、それぞれの種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける木を芽生えさせた。?~はこれを見て、良しとされた。 13 夕べがあり、朝があった。第三の日である。 14 神は言われた。「天の大空に光る物があって、昼と夜を分け、季節のしるし、日や年のしるしとなれ。 15 天の大空に光る物があって、地を照らせ。」そのようになった。 16 ?~は二つの大きな光る物と星を造り、大きな方に昼を治めさせ、小さな方に夜を治めさせられた。 17 ?~はそれらを天の大空に置いて、地を照らさせ、 18 昼と夜を治めさせ、光と闇を分けさせられた。?~はこれを見て、良しとされた。 19 夕べがあり、朝があった。第四の日である。 20 ?~は言われた。「生き物が水の中に群がれ。鳥は地の上、天の大空の面を飛べ。」 21 ?~は水に群がるもの、すなわち大きな怪物、うごめく生き物をそれぞれに、また、翼ある鳥をそれぞれに創造された。?~はこれを見て、良しとされた。 22 ?~はそれらのものを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、海の水に満ちよ。鳥は地の上に増えよ。」 23 夕べがあり、朝があった。第五の日である。 24 ?~は言われた。「地は、それぞれの生き物を産み出せ。家畜、這うもの、地の獣をそれぞれに産み出せ。」そのようになった。 25 ?~はそれぞれの地の獣、それぞれの家畜、それぞれの土を這うものを造られた。?~はこれを見て、良しとされた。 26 ?~は言われた。「我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。そして海の魚、空の鳥、家畜、地の獣、地を這うものすべてを支配させよう。」 27 ?~は御自分にかたどって人を創造された。?~にかたどって創造された。男と女に創造された。28 ?~は彼らを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ。」 29 ?~は言われた。「見よ、全地に生える、種を持つ草と種を持つ実をつける木を、すべてあなたたちに与えよう。それがあなたたちの食べ物となる。 30 地の獣、空の鳥、地を這うものなど、すべて命あるものにはあらゆる青草をたべさせよう。」そのようになった。 31 ?~はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった。夕べがあり、朝があった。第六の日である。
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1 天地万物は完成された。 2 第七の日に、?~は御自分の仕事を完成され、第七の日に、神は御自分の仕事を離れ、安息なさった。 3 この日に?~はすべての創造の仕事を離れ、安息なさったので、第七の日を?~は祝福し、聖別された。 4 これが天地創造の由来である。主なる?~が地と天を造られたとき、 5 地上には野の木も、野の草も生えていなかった。主なる?~が地上に雨をお送りにならなかったからである。また土を耕す人もいなかった。 6 しかし、水が地下から湧き出て、土の面をすべて潤した。 7 主なる?~は、土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった。 8 主なる?~は、東の方のエデンに園を設け、自ら形づくった人をそこに置かれた。 9 主なる?~は、見るからに好ましく、食べるに良いものをもたらすあらゆる木を地に生えいでさせ、また園の中央には、命の木と善悪の知識の木を生えいでさせられた。 10 エデンから一つの川が流れ出ていた。園を潤し、そこで分かれて、四つの川となっていた。 11 第一の川の名はピションで、金を産出するハビラ地方全域を巡っていた。 12 その金は良質であり、そこではまた、琥珀の類やラピス・ラズリも産出した。 13 第二の川の名はギホンで、クシュ地方全域を巡っていた。 14 第三の川の名はチグリスで、アシュルの東の方を流れており、第四の川の名はユーフラテスであった。 15 主なる?~は人を連れて来て、エデンの園に住まわせ、人がそこを耕し、守るようにされた。 16 主なる?~は人に命じて言われた。「園のすべての木から取って食べなさい。 17 ただし、善悪の知識の木からは、決して食べてはならない。食べると必ず死んでしまう。」 18 主なる?~は言われた。「人が一人でいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう。」 19 主なる?~は、野のあらゆる獣、空のあらゆる鳥を土で形づくり、人のところへ持って来て、人がそれぞれどう呼ぶか見ておられた。人が呼ぶと、それはすべて、生き物の名となった。 20 人はあらゆる家畜、空の鳥、野のあらゆる獣に名を付けたが、自分に合う助ける者は見つけることができなかった。 21 主なる?~はそこで、人を深い眠りに落とされた。人が眠り込むと、あばら骨の一部を抜き取り、その跡を肉でふさがれた。 22 そして、人から抜き取ったあばら骨で女を造り上げられた。主なる?~が彼女を人のところへ連れて来られると、 23 人は言った。「ついに、これこそわたしの骨の骨わたしの肉の肉。これこそ、女(イシャー)と呼ぼう まさに、男(イシュ)から取られたものだから。」 24 こういうわけで、男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる。 25 人と妻は二人とも裸であったが、恥ずかしがりはしなかった。
創世記 蛇の誘惑
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1 主なる?~が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった。蛇は女に言った。「園のどの木からも食べてはいけない、などと神は言われたのか。」 2 女は蛇に答えた。「わたしたちは園の木の果実を食べてよいのです。 3 でも、園の中央に生えている木の果実だけは、食べてはいけない。触れてもいけない、死んではいけないから、と?~様はおっしゃいました。」 4 蛇は女に言った。「決して死ぬことはない。 5 それを食べると、目が開け、?~のように善悪を知るものとなることを?~はご存じなのだ。」 6 女が見ると、その木はいかにもおいしそうで、目を引き付け、賢くなるように唆していた。女は実を取って食べ、一緒にいた男にも渡したので、彼も食べた。 7 二人の目は開け、自分たちが裸であることを知り、二人はいちじくの葉をつづり合わせ、腰を覆うものとした。 8 その日、風の吹くころ、主なる?~が園の中を歩く音が聞こえてきた。アダムと女が、主なる?~の顔を避けて、園の木の間に隠れると、 9 主なる?~はアダムを呼ばれた。「どこにいるのか」 10 彼は答えた。「あなたの足音が園の中に聞こえたので、恐ろしくなり、隠れております。わたしは裸ですから。」 11 ?~は言われた。「お前が裸であることを誰が告げたのか。取って食べるなと命じた木から食べたのか。」 12 アダムは答えた。「あなたがわたしと共にいるようにしてくださった女が、木から取って与えたので、食べました。」 13 主なる?~は女に向かって言われた。「何ということをしたのか。」女は答えた。「蛇がだましたので、食べてしまいました。」 14 主なる?~は、蛇に向かって言われた。「このようなことをしたお前はあらゆる家畜、あらゆる野の獣の中で呪われるものとなった。お前は、生涯這いまわり、塵を食らう。 15 お前と女、お前の子孫と女の子孫の間にわたしは敵意を置く。彼はお前の頭を砕き お前は彼のかかとを砕く。」 16 ?~は女に向かって言われた。「お前のはらみの苦しみを大きなものにする。お前は、苦しんで子を産む。お前は男を求め 彼はお前を支配する。」 17 ?~はアダムに向かって言われた。「お前は女の声に従い 取って食べるなと命じた木から食べた。お前のゆえに、土は呪われるものとなった。お前は、生涯食べ物を得ようと苦しむ。 18 お前に対して 土は茨とあざみを生えいでさせる 野の草を食べようとするお前に。 19 お前は顔に汗を流してパンを得る 土に返るときまで。お前がそこから取られた土に。塵にすぎないお前は塵に返る。」 20 アダムは女をエバ(命)と名付けた。彼女がすべて命あるものの母となったからである。 21 主なる?~は、アダムと女に皮の衣を作って着せられた。 22 主なる?~は言われた。「人は我々の一人のように、善悪を知る者となった。今は、手を伸ばして命の木からも取って食べ、永遠に生きる者となるおそれがある。」 23 主なる?~は、彼をエデンの園から追い出し、彼に、自分がそこから取られた土を耕させることにされた。 24 こうしてアダムを追放し、命の木に至る道を守るために、エデンの園の東にケルビムと、きらめく剣の炎を置かれた。
創世記 カインとアペル
4
1 さて、アダムは妻エバを知った。彼女は身ごもってカインを産み、「わたしは主によって男子を得た」と言った。 2 彼女はまたその弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。 3 時を経て、カインは土の実りを主のもとに献げ物として持って来た。 4 アベルは羊の群れの中から肥えた初子を持って来た。主はアベルとその献げ物に目を留められたが、 5 カインとその献げ物には目を留められなかった。カインは激しく怒って顔を伏せた。 6 主はカインに言われた。「どうして怒るのか。どうして顔を伏せるのか。 7 もしお前が正しいなら、顔を上げられるはずではないか。正しくないなら、罪は戸口で待ち伏せており、お前を求める。お前はそれを支配せねばならない。」 8 カインが弟アベルに言葉をかけ、二人が野原に着いたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。 9 主はカインに言われた。「お前の弟アベルは、どこにいるのか。」カインは答えた。「知りません。わたしは弟の番人でしょうか。」 10 主は言われた。「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。 11 今、お前は呪われる者となった。お前が流した弟の血を、口を開けて飲み込んだ土よりもなお、呪われる。 12 土を耕しても、土はもはやお前のために作物を産み出すことはない。お前は地上をさまよい、さすらう者となる。」 13 カインは主に言った。「わたしの罪は重すぎて負いきれません。 14 今日、あなたがわたしをこの土地から追放なさり、わたしが御顔から隠されて、地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう。」 15 主はカインに言われた。「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。 16 カインは主の前を去り、エデンの東、ノド(さすらい)の地に住んだ。 17 カインは妻を知った。彼女は身ごもってエノクを産んだ。カインは町を建てていたが、その町を息子の名前にちなんでエノクと名付けた。 18 エノクにはイラドが生まれた。イラドはメフヤエルの父となり、メフヤエルはメトシャエルの父となり、メトシャエルはレメクの父となった。
19 レメクは二人の妻をめとった。一人はアダ、もう一人はツィラと言った。 20 アダはヤバルを産んだ。ヤバルは、家畜を飼い天幕に住む者の先祖となった。 21 その弟はユバルといい、竪琴や笛を奏でる者すべての先祖となった。 22 ツィラもまた、トバル・カインを産んだ。彼は青銅や鉄でさまざまの道具を作る者となった。トバル・カインの妹はナアマといった。 23 さて、レメクは妻に言った。「アダとツィラよ、わが声を聞け。レメクの妻たちよ、わが言葉に耳を傾けよ。わたしは傷の報いに男を殺し 打ち傷の報いに若者を殺す。 24 カインのための復讐が七倍なら レメクのためには七十七倍。」 25 再び、アダムは妻を知った。彼女は男の子を産み、セトと名付けた。カインがアベルを殺したので、?~が彼に代わる子を授け(シャト)られたからである。 26 セトにも男の子が生まれた。彼はその子をエノシュと名付けた。主の御名を呼び始めたのは、この時代のことである。
創世記 アダムの系図
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1 これはアダムの系図の書である。?~は人を創造された日、?~に似せてこれを造られ、 2 男と女に創造された。創造の日に、彼らを祝福されて、人と名付けられた。 3 アダムは百三十歳になったとき、自分に似た、自分にかたどった男の子をもうけた。アダムはその子をセトと名付けた。 4 アダムは、セトが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 5 アダムは九百三十年生き、そして死んだ。 6 セトは百五歳になったとき、エノシュをもうけた。 7 セトはエノシュが生まれた後八百七年生きて、息子や娘をもうけた。 8 セトは九百十二年生き、そして死んだ。 9 エノシュは九十歳になったとき、ケナンをもうけた。 10 エノシュは、ケナンが生まれた後八百十五年生きて、息子や娘をもうけた。 11 エノシュは九百五年生き、そして死んだ。 12 ケナンは七十歳になったとき、マハラルエルをもうけた。 13 ケナンはマハラルエルが生まれた後八百四十年生きて、息子や娘をもうけた。 14 ケナンは九百十年生き、そして死んだ。 15 マハラルエルは六十五歳になったとき、イエレドをもうけた。 16 マハラルエルは、イエレドが生まれた後八百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 17 マハラルエルは八百九十五年生き、そして死んだ。 18 イエレドは百六十二歳になったとき、エノクをもうけた。 19 イエレドは、エノクが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。 20 イエレドは九百六十二年生き、そして死んだ。 21 エノクは六十五歳になったとき、メトシェラもうけた。 22 エノクは、メトシェラが生まれた後、三百年?~と共に歩み、息子や娘をもうけた。 23 エノクは三百六十五年生きた。 24 エノクは?~と共に歩み、?~が取られたのでいなくなった。 25 メトシェラは百八十七歳になったとき、レメクをもうけた。 26 メトシェラは、レメクが生まれた後七百八十二年生きて、息子や娘をもうけた。 27 メトシェラは九百六十九年生き、そして死んだ。 28 レメクは百八十二歳になったとき、男の子をもうけた。 29 彼は、「主の呪いを受けた大地で働く我々の手の苦労を、この子は慰めてくれるだろう」と言って、その子をノア(慰め)と名付けた。 30 レメクは、ノアが生まれた後五百九十五年生きて、息子や娘をもうけた。 31 レメクは七百七十七年生き、そして死んだ。 32 ノアは五百歳になったとき、セム ハム ヤフェトをもうけた。
創世記 洪水
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1 さて、地上に人が増え始め、娘たちが生まれた。 2 ?~の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、おのおの選んだ者を妻にした。 3 主は言われた。 「わたしの霊は人の中に永久にとどまるべきではない。人は肉にすぎないのだから。」こうして、人の一生は百二十年となった。 4 当時もその後も、地上にはネフィリムがいた。これは、?~の子らが人の娘たちのところに入って産ませた者であり、大昔の名高い英雄たちであった。 5 主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、 6 地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた。 7 主は言われた。 「わたしは人を創造したが、これを地上からぬぐい去ろう。人だけでなく、家畜も這うものも空の鳥も。わたしはこれらを造ったことを後悔する。」 8 しかし、ノアは主の好意を得た。 9 これはノアの物語である。その世代の中で、ノアは?~に従う無垢な人であった。ノアは?~と共に歩んだ。 10 ノアには三人の息子、セム ハム ヤフェトが生まれた。 11 この地は?~の前に堕落し、不法に満ちていた。 12 ?~は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。 13 ?~はノアに言われた。「すべて肉なるものを終わらせる時がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす。 14 あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟には小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。 15 次のようにしてそれを造りなさい。箱舟の長さを三百アンマ、幅を五十アンマ、高さを三十アンマにし、 16 箱舟に明かり取りを造り、上から一アンマにして、それを仕上げなさい。箱舟の側面には戸口を造りなさい。また、一階と二階と三階を造りなさい。 17 見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊をもつ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべてのものは息絶える。 18 わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。 19 また、すべて命あるもの、すべて肉なるものから、二つずつ箱舟に連れて入り、あなたと共に生き延びるようにしなさい。それらは、雄と雌でなければならない。 20 それぞれの鳥、それぞれの家畜、それぞれの地を這うものが、二つずつあなたのところへ来て、生き延びるようにしなさい。 21 更に、食べられる物はすべてあなたのところに集め、あなたと彼らの食料としなさい。」 22 ノアは、すべて?~が命じられたとおりに果たした。
7
1 主はノアに言われた。「さあ、あなたとあなたの家族は皆、箱舟に入りなさい。この世代の中であなただけはわたしに従う人だと、わたしは認めている。 2 あなたは清い動物をすべて七つがい取り、また、清くない動物をすべて一つがいずつ取りなさい 3 空の鳥も七つがい取りなさい。全地の面に子孫が生き続けるように。 4 七日の後、わたしは四十日四十夜地上に雨を降らせ、わたしが造ったすべての生き物を地の面からぬぐい去ることにした。」 5 ノアはすべて主が命じられたとおりにした。 6 ノアが六百歳のとき、洪水が地上に起こり、水が地の上にみなぎった。 7 ノアは妻子や嫁たちと共に洪水を免れようと箱舟に入った。 8 清い動物も清くない動物も、鳥も地を這うものもすべて、 9 二つずつ箱舟のノアのもとに来た。それは?~がノアに命じられたとおりに、雄と雌であった。 10 七日が過ぎて、洪水が地上起こった。 11 ノアの生涯の第六百年、第二の月の十七日、この日、大いなる深淵の源がことごとく裂け、天の窓が開かれた。 12 雨が四十日四十夜地上に降り続いたが、 13 まさにこの日、ノアも、息子のセム、ハム、ヤフェト、ノアの妻、この三人の息子の嫁たちも、箱舟に入った。 14 彼らと共にそれぞれの獣、それぞれの家畜、それぞれの地を這うもの、それぞれの鳥、小鳥や翼のあるものすべて、 15 命の霊をもつ肉なるものは、二つずつノアのもとに来て箱舟に入った。 16 ?~が命じられたとおりに、すべて肉なるものの雄と雌とが来た。主は、ノアの後ろで戸を閉ざされた。 17 洪水は四十日間地上を覆った。水は次第に増して箱舟を押し上げ、箱舟は大地を離れて浮かんだ。 18 水は勢力を増し、地の上に大いにみなぎり、箱舟は水の面を漂った。 19 水はますます勢いを加えて地上にみなぎり、およそ天の下にある高い山はすべて覆われた。 20 水は勢い増して更にその上十五アンマに達し、山々を覆った。 21 地上で動いていた肉なるものはすべて、鳥も家畜も獣も地に群がり這うものも人も、ことごとく息絶えた。 22 乾いた地のすべてのもののうち、その鼻に命の息と霊のあるものはことごとく死んだ。 23 地の面にいた生き物はすべて、人をはじめ、家畜、這うもの、空の鳥に至るまでぬぐい去られた。彼らは大地からぬぐい去られ、ノアと、彼と共に箱舟にいたものだけが残った。 24 水は百五十日の間、地上で勢いを失わなかった。
8
1 神は、ノアと彼と共に箱舟にいたすべての獣とすべての家畜を御心に留め、地の上に風を吹かせられたので、水が減り始めた。 2 また、深淵の源と天の窓が閉じられたので、天からの雨は降りやみ、 3 水は地上からひいて行った。百五十日の後には水が減って、 4 第七の月の十七日に箱舟はアララト山の上に止まった。 5 水はますます減って第十の月になり、第十の月の一日には山々の頂が現れた。 6 四十日たって、ノアは自分が造った箱舟の窓を開き、烏を放した。烏は飛び立ったが、地上の水が乾くのを待って、出たり入ったりした。 8 ノアは鳩を彼のもとから放して、地の面から水がひいたかどうかを確かめようとした。 9 しかし、鳩は止まる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰って来た。水がまだ全地の面を覆っていたからである。ノアは手を差し伸べて鳩を捕らえ、箱舟の自分のもとに戻した。 10 更に七日待って、彼は再び鳩を箱舟から放した。 11 鳩は夕方になってノアのもとに帰って来た。見よ、鳩はくちばしにオリーブの葉をくわえていた。ノアは水が地上からひいたことを知った。 12 彼は更に七日待って、鳩を放した。鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。 13 ノアが六百一歳のとき、最初の月の一日に、地上の水は乾いた。ノアは箱舟の覆いを取り外して眺めた。見よ、地の面は乾いていた。 14 第二の月の二十七日になると、地はすっかり乾いた。 15 神はノアに仰せになった。 「さあ、あなたもあなたの妻も、息子も嫁も、皆一緒に箱舟から出なさい。 17 すべて肉なるもののうちからあなたのもとに来たすべての動物、鳥も家畜も地を這うものも一緒に連れ出し、地に群がり、地上で子を産み、増えるようにしなさい。」 18 そこで、ノアは息子や妻や嫁と共に外へ出た。 19 獣、這うもの、鳥、地に群がるもの、それぞれすべて箱舟から出た。 20 ノアは主のために祭壇を築いた。そしてすべての清い家畜と清い鳥のうちから取り、焼き尽くす捧げ物として祭壇の上にささげた。 21 主は宥めの香りをかいで、御心に言われた。「人に対して大地を呪うことは二度とすまい。人が心に思うことは、幼いときから悪いのだ。わたしは、この度したように生き物をことごとく打つことは、二度とすまい。 22 地の続くかぎり、種蒔きも刈り入れも 寒さも暑さも、夏も冬も 昼も夜も、やむことはない。」
創世記 祝福と契約
9
1 ?~はノアと彼の息子たちを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちよ。 2 地のすべての獣と空のすべての鳥は、地を這うすべてのものと海のすべての魚と共に、あなたたちの前に恐れおののき、あなたたちの手にゆだねられる。 3 動いている命あるものは、すべてあなたたちの食糧とするがよい。わたしはこれらすべてのものを、青草と同じようにあなたたちに与える。 4 ただし、肉は命である血を含んだまま食べてはならない。 5 また、あなたたちの命である血が流された場合、わたしは賠償を要求する。いかなる獣からも要求する。人間どうしの血については、人間から人間の命を賠償として要求する。 6 人の血を流す者は 人によって自分の血を流される。人は?~にかたどって造られたからだ。 7 あなたたちは産めよ、増えよ 地に群がり、地に増えよ。」 8 ?~はノアと彼の息子たちに言われた。 9 「わたしは、あなたたちと、そして後に続く子孫と、契約を立てる。 10 あなたたちと共にいるすべての生き物、またあなたたちと共にいる鳥や家畜や地のすべての獣など、箱舟から出たすべてのもののみならず、地のすべての獣と契約を立てる。 11 わたしがあなたたちと契約を立てたならば、二度と洪水によって肉なるものが滅ぼされることはなく、洪水が起こって地を滅ぼすことも決してない。」 12 更に?~は言われた。「あなたたちならびにあなたたちと共にいるすべての生き物と、代々(よよ)とこしえにわたしが立てる契約のしるしはこれである。 13 すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立てた契約のしるしとなる。 14 わたしが地の上に雲を湧き起こらせ、雲の中に虹が現れると、 15 わたしは、わたしとあなたたちならびにすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた契約に心を留める。水が洪水となって、肉なるものをすべて滅ぼすことは決してない。 16 雲の中に虹が現れると、わたしはそれを見て、神と地上のすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた永遠の契約に心をと留める。」 17 ?~はノアに言われた。「これが、わたしと地上のすべて肉なるものとの間にたてた契約のしるしである。」
創世記 ノアと息子たち
18 箱舟から出たノアの息子は、セム、ハム、ヤフェトであった。ハムはカナンの父である。 19 この三人がノアの息子で、全世界の人々は彼らから出て広がったのである。 20 さて、ノアは農夫となり、ぶどう畑を作った。 21 あるとき、ノアはぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。 22 カナンの父ハムは、自分の父の裸を見て、外にいた二人の兄弟に告げた。 23 セムとヤフェトは着物を取って自分たちの肩に掛け、後ろ向きに歩いて行き、父の裸を覆った。二人は顔を背けたままで、父の裸を見なかった。 24 ノアは酔いからさめると、末の息子がしたことを知り、 25 こう言った。「カナンは呪われよ 奴隷の奴隷となり、兄たちに仕えよ。」 26 また言った。「セムの神、主をたたえよ。 カナンはセムの奴隷となれ。
27 神がヤフェトの土地を広げ(ヤフェト) セムの天幕に住まわせ カナンはその奴隷となれ。」 28 ノアは、洪水の後三百五十年生きた。 29 ノアは九百五十歳になって、死んだ。
創世記 ノアの子孫
10
1 ノアの息子、セム、ハム、ヤフェトの系図は次のとおりである。洪水の後、彼らに息子が生まれた。 2 ヤフェトの子孫はゴメル、マゴグ、メディア、ヤワン、トバル、メシェク、ティラスであった。 3 ゴメルの子孫は、アシュケナズ、リファト、トガルマであった。 4 ヤワンの子孫は、エリシャ、タルシシュ、キティム、ロダニムであった。 5 海沿いの国々は、彼らから出て、それぞれの地に、その言語、氏族、民族に従って住むようになった。 6 ハムの子孫は、クシュ、エジプト、プト、カナンであった。 7 クシュの子孫はセバ、ハビラ、サブタ、ラマ、サブテカであり、ラマの子孫はシェバとデダンであった。 8 クシュにはまた、ニムロドが生まれた。ニムロドは地上で最初の勇士となった。 9 彼は、主の御前に勇敢な狩人であり、「主の御前に勇敢な狩人ニムドロのようだ」という言い方がある。 10 彼の王国の主な町は、バベル、ウルク、アッカドであり、それらはすべてシンアルの地にあった。 11 彼はその地方からアッシリに進み、ニネベ、レホボト・イル、カラ、 12 レセンを建てた。レセンはニネベとカラとの間にある、非常に大きな町であった。 13 エジプトにはリディア人、アルミナ人、レハビム人、ナフトヒム人、 14 上エジプト人、カスルヒム人、カフトル人が生まれた。このカフトル人からペリシテ人が出た。
15 カナンには長男シドンとヘト、 16 また、エブス人、アモリ人、ギルガシ人、 17 ヒビ人、アルキ人、シニ人、 18 アルワド人、フェマリ人、ハマト人が生まれた。その後、カナン人の諸氏族が広がった。 19 カナン人の領土は、シドンから南下してゲラルを経てガザまでを含み、更に、ソドム、ゴモラ、アドマ、ツェボイムを経てラシャまでを含んだ。 20 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたハムの子孫である。 21 セムにもまた子供が生まれた。彼はエベルのすべての子孫の先祖であり、ヤフェトの兄であった。 22 セムの子孫はエラム、アシュル、アルパクシャド、ルド、アラムであった。 23 アラムの子孫は、ウツ、フル、ゲテル、マシュであった。 24 アルパクシャドにはシェラが生まれ、シェラにはエベルが生まれた。 25 エベルには二人の息子が生まれた。ひとりの名は、その時代に土地が分けられた(パラグ)ので、ペレグといい、その兄弟はヨクタンといった。 26 ヨクタンには、アルモダド、シェレフ、ハツァルマベト、イエラ、 27 ハドラム、ウザル、ディクラ、 28 オバル、アビマエル、シェバ、 29 オフィル、ハビラ、ヨバブが生まれた。これらは皆、ヨクタンの息子であった。 30 彼らはメシャからセファルに至る東の高原地帯に住んでいた。 31 これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたセムの子孫である。 32 ノアの子孫である諸氏族を、民族ごとの系図にまとめると以上のようになる。地上の諸民族は洪水の後、彼らから分かれ出た。
創世記 バベルの塔
11
1 世界中は同じ言葉を使って、同じように話していた。 2 東の方から移動してきた人々は、シンアルの地に平野を見つけ、そこに住み着いた。 3 彼らは、「れんがを作り、それをよく焼こう」と話し合った。石の代わりにれんがを、しっくいの代わりにアスファルトを用いた。 4 彼らは、「さあ 天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。 5 主は降って来て、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、 6 言われた。「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。 7 我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」 8 主は彼らをそこから全地に散らされたので、彼らはこの町の建設をやめた。 9 こういうわけで、この町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ、また、主がそこから彼らを全地に散らされたからである。
創世記 セムの系図
10 セムの系図は次のとおりである。セムが百歳になったとき、アルバクシャドが生まれた。それは洪水の二年後のことであった。 11 セムは、アルパクシャドが生まれた後五百年生きて、息子や娘をもうけた。 12 アルパクシャドが三十五歳になったとき、シェラが生まれた。 13 アルパクシャドは、シェラが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 14 シェラが三十歳になったとき、エベルが生まれた。 15 シェラは、エベルが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。 16 エベルが三十四歳になったとき、ぺレグが生まれた。 17 エベルは、ぺレグが生まれた後四百三十年生きて、息子や娘をもうけた。 18 ぺレグが三十歳になったとき、レウが生まれた。 19 ぺレグは、レウが生まれた後二百九年生きて、息子や娘をもうけた。 20 レウが三十二歳になったとき、セルグが生まれた。 21 レウは、セルグが生まれた後二百七年生きて、息子や娘をもうけた。 22 セルグ三十歳なったとき、ナホルが生まれた。 23 セルグは、ナホルが生まれた後二百年生きて、息子や娘をもうけた。 24 ナホルが二十九歳になったとき、テラが生まれた。 25 ナホルは、テラが生まれた後百十九年生きて、息子や娘をもうけた。 26 テラが七十歳になったとき、アブラム、ナホル、ハランが生まれた。
創世記 テラの系図
27 テラの系図は次のとおりである。テラにはアブラム、ナホル、ハランが生まれた。ハランにはロトが生まれた。 28 ハランは父のテラより先に、故郷カルデアのウルで死んだ。 29 アブラムとナホルはそれぞれ妻をめとった。アブラムの妻の名はサライ、ナホルの妻の妻の名はミルカといった。ミルカはハランの娘である。ハランはミルカとイスカの父であった。 30 サライは不妊の女で、子供ができなかった。 31 テラは、息子アブラムと、ハランの息子で自分の孫であるロト、および息子アブラムの妻で自分の嫁であるサライを連れて、カルデアのウルを出発し、カナン地方に向った。彼らはハランまで来ると、そこにとどまった。 32 テラは二百五年の生涯を終えて、ハランで死んだ。
創世記 アブラムの召命と移住
12
1 主はアブラムに言われた。「あなたは生まれ故郷 父の家を離れて わたしが示す地に行きなさい 2 わたしはあなたを大いなる国民にし あなたを祝福し あなたに名を高める 祝福の源となるように 3 あなたを祝福する人をわたしは祝福し あなたを呪う者をわたしは呪う。 地上の氏族はすべて あなたによって祝福に入る。」 4 アブラムは 主の言葉に従って旅立った。ロトも共に行った。アブラムは、ハランを出発したとき七十五歳であった。 5 アブラムは妻のサライ、甥のロトを連れ、蓄えた財産をすべて携え、ハランで加わった人々と共にカナン地方へ向かって出発し、カナン地方入った。 6 アブラムはその地を通り、シケムの聖所、モレの樫の木まで来た。当時、その地方にはカナン人が住んでいた。 7 主はアブラムに現れて、言われた。「あなたの子孫のこの地を与える」アブラムは、彼に現れた主のために、そこに祭壇を築いた。 8 アブラムは、そこからベテルの東の山へ移り、西にベテル、東にアイを望む所に天幕を張って、そこにも主のために祭壇を築き、主の御名を呼んだ。 9 アブラムは更に旅を続け、ネゲブ地方に移った。
創世記 エジプト滞在
10 その地方に飢饉があった。 アブラムは、その地方の飢饉がひどかったので、エジプトに下り、そこに滞在することにした。 11 エジプトに入ろうしたとき、妻サライに言った。 「あなたが美しいのを、わたしはよく知っている。 12 エジプト人があなたを見たら、『この女はあの男の妻だ』と言って、わたしを殺し、あなたを生かしておくにちがいない。 13 どうか、わたしの妹だ、と言ってください。 そうすれば、わたしはあなたのゆえに幸いになり、あなたのお陰で命も助かるだろう。」 14 アブラムがエジプトに入ると、エジプト人はサライを見て、大変美しいと思った。 15 ファラオの家臣たちも彼女を見て、ファラオに彼女のことを褒めたので、サライはファラオの宮廷に召し入れられた 16 アブラムも彼女のゆえに幸いを受け、羊の群れ、牛の群れ、ろば、男女の奴隷、雌ろば、らくだなどを与えられた。 17 ところが主は、アブラムの妻サライのことで、ファラオと宮廷の人々を恐ろしい病気にかからせた。 18 ファラオはアブラムを呼び寄せて言った。 「あなたはわたしに何ということをしたのか。 なぜ、あの婦人は自分の妻だと、言わなかったのか。 19 なぜ、『わたしの妹です』などと言ったのか。 だからこそ、わたしの妻として召し入れたのだ。 さあ、あなたの妻を連れて、立ち去ってもらいたい。 20 ファラオは家来たちに命じて、アブラムを、その妻とすべての持ち物と共に送り出させた。
創世記 ロトとの別れ
13
1 アブラムは、妻と共に、すべての持ち物を携え、エジプトを出て再びネゲブ地方へ上った。ロトも一緒であった。 2 アブラムは非常に多くの家畜や金銀を持っていた。 3 ネゲブ地方から更に、ベテルに向って旅を続け、ベテルとアイとの間の、以前に天幕を張った所まで来た。 4 そこは、彼が最初に祭壇を築いて、主の御名を呼んだ場所であった。 5 アブラムと共に旅をしていたロトもまた、羊や牛の群れを飼い、たくさんの天幕を持っていた。 6 その土地は、彼らが一緒に住むには十分ではなかった。 彼らの財産が多すぎたから、一緒に住むことができなかったのである。 7 アブラムの家畜を飼う者たちと、ロトの家畜を飼うものたちとの間に争いが起きた。 そのころ、その地方にはカナン人もペリジ人も住んでいた。 8 アブラムはロトに言った。 「わたしたちは親類どうしだ。わたしとあなたの間ではもちろん、お互いの羊飼いの間でも争うのはやめよう。 9 あなたの前には幾らでも土地があるのだから、ここで別れようではないか。 あなたが左に行くなら、わたしは右に行こう。 あなたが右に行くなら、わたしは左に行こう。」 10 ロトが目を上げて眺めると、ヨルダン川流域の低地一帯は、 主がソドムとゴモラを滅ぼす前であったので、ツォアルに至るまで、主の園のように、エジプトの国のように、見渡すかぎりよく潤っていた。 11 ロトはヨルダン川流域の低地一帯を選んで、東へ移って行った。こうして彼らは、左右に別れた。 12 アブラムはカナン地方に住み、ロトは低地の町々に住んだが、彼はソドムまで天幕を移した。 13 ソドムの住民は邪悪で、主に対して多くの罪を犯していた。 14 主は、ロトが別れて行った後、アブラムに言われた。「さあ、目を上げて、あなたがいる場所から東西南北を見渡しなさい。 15 見えるかぎりの土地をすべて、わたしは永久にあなたとあなたの子孫に与える。 16 あなたの子孫を大地の砂粒のようにする。大地の砂粒が数えきれないように、あなたの子孫も数えきれないであろう。 17 さあ、この土地を縦横に歩き回るがよい。わたしはそれをあなたに与えるから。」 18 アブラムは天幕を移し、ヘブロンにあるマムレの樫の木のところに来て住み、そこに主のために祭壇を築いた。
王との戦い
14
1 シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨク、エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアルが、 2 ソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アドマの王シンアブ、ツェボイムの王シェムエベル、ベラ、すなわちツオワルの王と戦ったとき、 3 これら五人の王は皆、シディムの谷、すなわち塩の海で同盟を結んだ。 4 彼らは十二年間ケドルラオメルに支配されていたが、十三年目に背いたのである。 5 十四年目に、ケドルラオメルとその味方の王たちが来て、アシュテロト・カルナイムでレファイム人を、ハムでズジム人を、シャベ・キルヤタイムでエミル人を、 6 セイルの山地でフリ人人を撃ち、荒れ野に近いエル・バランまで進んだ。 7 彼らは転進して、エン・ミシュパト、すなわちカデシュに向かい、アマレク人の全領土とハツェツオン・タマルに住むアモリ人を撃った。 8 そこで、ソドムの王、ゴモラの王、アドマの王、ツェボイムの王、ベラすなわちツォアルの王は兵を繰り出し、シディムの谷で彼らと戦おうと陣を敷いた。 9 エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアル、シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨクの四人の王に対して、これら五人の王が戦いを挑んだのである。 10 シディムの谷には至るところに天然アスファルトの穴があった。ソドムとゴモラの王は逃げるとき、その穴に落ちた。残りの王は山へ逃れた。 11 ソドムとゴモラの財産や食糧はすべて奪い去られ、 12 ソドムに住んでいたアブラムの甥ロトも、財産もろとも連れ去られた。
ロトの救出
13 逃げ延びた一人の男がヘブライ人アブラムのもとに来て、そのことを知らせた。アブラムは当時、アモリ人マムレ樫の木の傍らに住んでいた。マムレはエシュコルとアネルの兄弟で、彼らはアブラムと同盟を結んでいた。 14 アブラムは、親族の者が捕虜になったと聞いて、彼の家で生まれた奴隷で、訓練を受けた者三百十八人を召集し、ダンまで追跡した。 15 夜、彼と僕たちは分かれて敵を襲い、ダマスコの北のホバまで追跡した。 16 アブラムはすべての財産を取り返し、親族のロトとその財産、女たちやそのほかの人々も取り戻した。
創世記 契約と割礼
17
1 アブラムが九十九歳になったとき、主はアブラムに現れて言われた。「わたしは全能の神である。あなたはわたしに従って歩み、全き者となりなさい。 2 わたしは、あなたとの間にわたしの契約を立て、あなたをますます増やすであろう。」 3 アブラムはひれ伏した。神は更に、語りかけて言われた。 4 「これがあなたと結ぶわたしの契約である。あなたは多くの国民の父となる。 5 あなたは、もはやアブラムではなく、アブラハムと名乗りなさい。あなたを多くの国民の父とするからである。 6 わたしは、あなたをますます?栄させ、諸国民の父とする。王となる者たちがあなたから出るであろう。 7 わたしは、あなたとの間に、また後に続く子孫との間に契約を立て、それを永遠の契約とする。そして、あなたとあなたの子孫の神となる。 8 わたしは、あなたが滞在しているこのカナンのすべての土地を、あなたとその子孫に、永久の所有地として与える。わたしは彼らの神となる。」 9 神はまた、アブラムに言われた。「だからあなたも、わたしの契約を守りなさい、あなたも後に続く子孫も。 10 あなたたち、およびあなたの後に続く子孫と、わたしとの間で守るべき契約はこれである。すなわち、あなたたちの男子はすべて、割礼を受ける。 11 包皮の部分を切り取りなさい。これが、わたしとあなたたちとの間の契約のしるしとなる。 12 いつの時代でも、あなたたちの男子はすべて、直系の子孫はもちろんのこと、家で生まれた奴隷も、外国人から買い取った奴隷であなたの子孫でない者も皆、生れてから八日目に割礼を受けなければならない。 13 あなたのお家で生まれた奴隷も、買い取った奴隷も、必ず割礼を受けなければならない。それによって、わたしの契約はあなたの体に記されて永遠の契約となる。 14 包皮の部分を切り取らない無割礼の男がいたなら、その人は民の間から断たれる。わたしの契約を破ったからである。」 15 神はアブラムに言われた。「あなたの妻サライは、名前をサライではなく、サラと呼びなさい。 16 わたしは彼女を祝福し、彼女によってあなたに男の子を与えよう。わたしは彼女を祝福し、諸国民の母とする。諸民族の王となる者たちが彼女から出る。」 17 アブラハムひれ伏した。しかし笑って、ひそかに言った。「百歳の男に子供が生まれるだろうか。九十歳のサラに子供が産めるだろうか。」 18 アブラハムは神に言った。「どうか、イシュマエルが御前に生き永らえますように。」 19 神は言われた。「いや、あなたの妻サラがあなたとの間に男の子を産む。その子をイサク(彼は笑う)と名付けなさい。わたしは彼と契約を立て、彼の子孫のために永遠の契約とする。 20 イシュマエルについての願いも聞き入れよう。必ず、わたしは彼を祝福し、大いに子供を増やし繁栄させる。彼は十二人の首長の父となろう。わたしは彼を大いなる国民とする。 21 しかし、わたしの契約は、来年の今ごろ、サラがあなたとの間に産むイサクと立てる。」 22 神はこう語り終えると、アブラハムを離れて昇って行かれた。 23 アブラハムは、息子のイシュマエルをはじめ、家で生まれた奴隷や買い取った奴隷など、自分の家にいる人々のうち、男子を皆集めて、すぐその日に、神が命じられたとおり包皮に割礼を施した。 24 アブラハムが包皮に割礼を受けたのは、九十九歳、 25 息子イシュマエルが包皮に割礼を受けたのは、十三歳であった。 26 アブラハムと息子のイシュマエルは、すぐその日に割礼を受けた。 27 アブラハムの家の男子は、家で生まれた奴隷も外国人から買い取った奴隷も皆、共に割礼を受けた。
創世記 イサクの誕生の予告
18
1 主はマムレの樫の木の所でアブラハムに現れた。暑い真昼に、アブラハムは天幕の入り口に座っていた。 2 目を上げて見ると、三人の人が彼に向って立っていた。アブラハムはすぐに天幕の入り口から走り出て迎え、地にひれ伏して、 3 言った。「お客様、よろしければ、どうか、僕のもとを通り過ぎないでください。 4 水を少々持ってこさせますから、足を洗って、木陰でどうぞひと休みなさってください。 5 何か召し上がるものを調えますので、疲れをいやしてから、お出かけください。せっかく、僕の所の近くをお通りになったのですから。」その人たちは言った。「では、お言葉どおりにしましょう。」 6 アブラハムは急いで天幕に戻り、サラのところに来て言った。「早く、上等の小麦粉を三セアほどこねて、パン菓子をこしらえなさい。」 7 アブラハムは牛の群れのところへ走って行き、柔らかくておいしそうな子牛を選び、召し使いに渡し、急いで料理をさせた。 8 アブラハムは、凝乳、乳、出来立ての子牛の料理などを選び、彼らの前に並べた。そして、彼らが木陰で食事をしている間、そばに立って給仕をした。 9 彼らはアブラハムに尋ねた。「あなたの妻のサラはどこにいますか。」「はい、天幕の中におります」とアブラハムが答えると、 10 彼らの一人が言った。「わたしは来年の今ごろ、必ずここにまた来ますが、そのころには、あなたの妻のサラに男の子が生まれているでしょう。」サラは、すぐ後ろの天幕の入り口で聞いていた。 11 アブラハムもサラも多くの日を重ねて老人になっており、しかもサラは月のものがとうになくっていた。 12 サラはひそかに笑った。自分は年をとり、もはや楽しみがあるはずもなし、主人も年老いているのに、と思ったのである。13 主はアブラハムに言われた。「なぜサラは笑ったのか。なぜ年をとった自分に子供が生まれるはずがないと思ったのだ。 14 主に不可能なことがあろうか。来年の今ごろ、わたしはここに戻ってくる。そのころ、サラには必ず男の子が生まれている。」 15 サラは恐ろしくなり、打ち消して言った。「わたしは笑いませんでした。」主は言われた。「いや、あなたは確かに笑った。」
創世記 ソドムのための執り成し
16 その人たちはそこを立って、ソドムを見下ろす所まで来た。アブラハムも、彼らを見送るために一緒に行った。 17 主は言われた。「わたしが行おうとしていることをアブラハムに隠す必要があろうか。 18 アブラハムは大きな強い国民になり、世界のすべての国民は彼によって祝福に入る。 19 わたしがアブラハムを選んだのは、彼が息子たちとその子孫に、主の道を守り、主に従って正義を行うよう命じて、主がアブラハムに約束したことを成就するためである。 20 主は言われた。「ソドムとゴモラの罪は非常に重い、と訴える叫びが実に大きい。 21 わたしは降って行き、彼らの行跡が、果たして、わたしに届いた叫びのとおりかどうか見て確かめよう。」 22 その人たちは、更にソドムの方に向かったが、アブラハムはなお、主の御前にいた。 23 アブラハムは進み出て言った。「もことにあなたは、正しい者を悪い者と一緒に滅ぼされるのですか。 24 あの町に正しい者が五十人いるとしても、それでも滅ぼし、その五十人の正しい者のために、町をお赦しにはならないのですか。 25 正しい者を悪い者と一緒に殺し、正しい者を悪い者と同じ目に遭わせるようなことを、あなたがなさるはずはございません。全くありえないことです。全世界を裁くお方は、正義を行われるべきではありませんか。」 26 主は言われた。「もしソドムの町に正しい者が五十人いるならば、その者たちのために、町を全部赦そう。」 27 アブラハムは答えた。「塵にすぎないわたしですが、あえて、わが主に申し上げます。 28 もしかすると、五十人の正しい者に五人足りないかもしれません。それでもあなたは、五人たりないために、町のすべてを滅ぼされますか。」主は言われた。「もし、四十五人いれば滅ぼさない。」 29 アブラハムは重ねて言った。「もしかすると、四十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その四十人のためにわたしはそれをしない」 30 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう少し言わせてください。もしかすると、そこには三十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「もし三十人いるならわたしはそれはしない。」 31 アブラハムは言った。「あえて、わが主に申し上げます。もしかすると、二十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その二十人のためにわたしは滅ぼさない。」 32 アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう一度だけ言わせてください。もしかすると、十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その十人のためにわたしは滅ぼさない。」 33 主はアブラハムと語り終えると、去って行かれた。アブラハムも自分の住まいに帰った。
創世記 ソドムの滅亡
19
1 二人の御使いが夕方ソドムに着いたとき、ロトはソドムの門の所に座っていた。ロトは彼らを見ると、立ち上って迎え、地にひれ伏して、 2 言った。 「皆様方、どうぞ僕(しもべ)の家に立ち寄り、足を洗ってお泊りください。彼らは言った。「いや、結構です。わたしたちはこの広場で夜を過ごします。」 3 しかし、ロトがぜひにと勧めたので、彼らはロトの所に立ちよることにし、彼の家を訪ねた。ロトは、酵母を入れないパンを焼いて食事を供し、彼らをもてなした。 4 彼らがまだ床に就かないうちに、ソドムの町の男たちが、若者も年寄りもこぞって押しかけ、家を取り囲んで、 5 わめきたてた。 「今夜、お前のところへ来た連中はどこにいる。ここへ連れてこい。なぶりものにしてやるから。」 6 ロトは、戸口の前にたむろしている男たちのところへ出て行き、後ろの戸を閉めて、 7 言った。 「どうか、皆さん、乱暴なことはしないでください。 8 実は、わたしにはまだ嫁がせていない娘が二人おります。皆さんにその娘たちを差し出しますから、好きなようにしてください。ただ、あの方々には何もしないでください。この家の屋根の下に身を寄せていただいたのですから。」 9 男たちは口々に言った。 「そこをどけ」 「こいつはよそ者のくせに、指図などして。」 「さあ、彼らより先に、お前を痛い目に遭わせてやる。」 そして、ロトに詰め寄って体を押しつけ、戸を破ろうとした。 10 二人の客はそのとき、手を伸ばして、ロトを家の中に引き入れて戸を閉め、 11 戸口の前に入る男たちに、老若を問わず、目つぶしを食わせ、戸口を分からなくした。 12 二人の客はロトに言った。 「ほかに、あなたの身内の人がこの町にいますか。あなたの婿や息子や娘などを皆連れてここから逃げなさい。 13 実は、わたしたちはこの町を滅ぼしに来たのす。大きな叫びが主にもとに届いたので、主は、この町を滅ぼすためにわたしたちを遣わされたのです。」 14 ロトは嫁いだ娘たちの婿のところへ行き、「さあ早くここから逃げるのだ。主がこの町を滅ぼされるからだ」と促したが、婿たちは冗談だと思った。
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