横浜市から「保育園落選」の通知を受けたという、あるツイッターユーザーのつぶやきが話題を集めている。
「横浜市では待機児童のことを保留児童っていう。だから待機児童はゼロ」——そんなつぶやきに続き、「喧嘩売られているのか」との憤りを投稿したところ、賛同が相次いだ。「保留児童」と「待機児童」のわかりにくさと、待機児童問題をめぐる横浜市の「現実」が背景にある。
待機児童ゼロを2013年に達成
そのツイッターユーザーは17年1月31日にこうつぶやいた。
「横浜市から保育園落選の通知と一緒に『横浜市では待機児童のことを保留児童っていうんやで。だから待機児童はゼロなんやで』という文書が送られてきた。これは喧嘩売られてるんだろうか」
横浜市こども青年局に、このツイートのことを聞くと、落選通知書を送る際には、待機児童と保留児童の違いを説明しており、両者が同じとは書いていない、という回答だった。
しかし、このツイートには、
「驚愕の事実だな」
「明らかにおかしい」
と共感するツイートが相次いだ。
こうした反応が相次ぐ背景には、「保留児童」という言葉になじみ薄く、待機児童との違いが分かりにくいことがある。全国の自治体で用いられる指標だが、報道で目にする機会は「待機児童」の方が多い。
横浜市こども青年局によると、「保留児童」の定義は「市の認可施設に入所できなかった児童」。つまり、認可保育施設の利用申請者のうち、実際の利用者を差し引いた数で、このツイッターの投稿者のような「落選者」の数となる。
だが、待機児童は、ここからさらに引き算をする。差し引くのは、(1)近所に通える施設があるのに特定の施設のみを希望した、(2)市の認可外施設に入った、(3)親が自宅で求職活動中、(4)親が育休取得中、という児童の数だ。本当は認可保育園に入れたいが、落選などで違う選択した親のこどもは、待機児童ではなく保留児童となるわけだ。
横浜市は待機児童対策に積極的な自治体として知られ、2013年4月に「待機児童ゼロ」を達成した。待機児童数はその後、一時的に増えたものの、20人(14年4月)、8人(15年4月)、7人(16年4月)と、年々減っており、限りなくゼロに近い。
その一方で、保留児童数は16年4月の時点で3117人と、15年4月からおよそ600人も増加している。当然、潜在的な不満を持つ親の数も増えることなる。
入所需要に保育園新設が追いつかない
横浜市の担当者は保留児童数が増え続ける理由をこう説明する。
「認可施設の利用申請者数が、保育施設の新設数をはるかに上回るスピードで増えています。もちろん、多くのお子さまに入所していただけるよう、マンション建設が多い地域で集中的に保育施設を新設したり、定員を増やしたりしてはいますが...」
実際、保育施設の新設により、横浜市は毎年1000人から2000人の申請者を吸収している。一方、申請者は半月ごとにおよそ4000人のペースで増えており、需要増に供給が追いついていない。市は今後も、港北区、神奈川区、鶴見区の北部3区を中心に申請者が増え続ける、とみる。
こうした事情は、待機児童数がひとけた台で推移していることだけを見ても分からない。
認可保育園に入れたい親の実感からすれば、待機児童と保留児童の「区別」はあまり意味がなく、冒頭のツイッター投稿者やそれに賛同する人が多いとみられる。
市民から「待機と保留の区別がわかりにくい」という声は寄せられていないのかと質問すると、市の担当者は「それはあまり聞きませんね」と答えていた。
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