一見すると、老舗のホテル。
当然、彼の所属する組織の配下。
出迎えるのは、組織の職員か雇われた同類の者たち。
その中のリストランテ。
入口で案内係に問われる。
彼との約束の旨を伝える。
「こちらへどうぞ」
案内係の女性が、先に立って誘導する。
黙ってついていく。
彼女が、奥まった席の一つで立ち止まると、椅子を一つ引く。
礼を言って腰掛ける。
女性が会釈して下がる。
何の話が聞けるかしら。
一人思っていると、悔しいが、まさに颯爽と彼が視界に映りこむ。
「やぁ、待ったかい」
言いながら座る彼。
全部分かってるくせに、どこかで見てたでしょ、と思いながらも応える。
「今来たところよ」
静かに近づいてくるウェイターに、彼が言う。
「頼んであるものを」
ウェイターが、一礼して下がっていく。
入れ替わるように、ソムリエらしき男性がボトルを抱えて彼の横に立つ。
ラベルを見て彼が頷くと、男性が徐にオープナーを取り出す。
ボトルを開ける手際のよさに、思わず見惚れる。
彼のグラスに一口分注がれる。
彼がグラスを傾け、口に含んで頷く。
男性がワタシのグラスに白ワインを注ぐ。
続いて彼のグラスを満たす。
氷を入れたワインクーラーにボトルを入れて下がる。
彼がグラスを持って、青い瞳でワタシを促す。
やむなく付き合う。
二人、同時にワイングラスを掲げる。
「乾杯!」
思わず言うワタシ。
「ナニに?」
苦笑する彼が続ける。
「そうだな、今も変わらぬ君に、乾杯」
騙されないわよと思いながら再び煌かせるwineカラー。
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