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2021年09月24日

driving miss blonde

玄関ロビーに佇むワタシ。

差し込んでくる街灯の明かりが、埃塗れの姿を映し出す。
ふと気づいて、捲れたタイトスカートの裾を直す。

埃に塗れた身体は、あちこちに血も滲んでいる。
よく見ると、上着には、何箇所か裂け目ができている。

徐に、深く呼吸する。
一つだけ残った、上着のボタンを留める。
思った以上に、奴のナイフに掠められている。

ボタンが跳んで開けた、シャツブラウスの前をあわせる。
胸元に紅いbraが覗くが、剥き出しになるわけではない。
外は暗いし構わない、自分に言いきかせる。

それから、フラフラの下肢を引きずるように、再び階段に向かう。
埃に塗れたピンヒールで階段を上る。
一段毎に、ピンヒールが静かなビルに響き渡る。

漸く、踊り場に辿り着く。
壁に凭せ掛けた彼女、両脇を抱えるように引っ張る。
意識のない彼女の身体に、全身が軋む気がする。

なんとか彼女を、踊り場の端に座らせる。
ワタシは、二段下の階段で腰を屈める。
段差を利用して、もう一度、彼女をおんぶする。
動かない彼女の重みがのしかかる、さすがに堪える。

前屈みのまま、階段の壁に手をついて、上着の袖から上半身を滑らせる。
腰まで過ぎると、臀筋に力を加えて壁を押す。
壁にお尻をつけると、背中の彼女の重みを預ける。
その状態で、お尻を横に滑らせる。
タイトスカートのお尻を壁に摺りながら、一段ずつ横歩きで下りていく。
ピンヒールがよろけないよう気をつけながら、ゆっくり階段を下りる。

漸く、フロアに辿りつく。
思わぬ息の荒さに、あらためて呼吸を整える。

背中の彼女を揺するようにして、しっかりとかかえ直す。
玄関ロビーを抜ける。
倒れたままの奴等を残して、ビルを出る。

通りに出た途端、目の前に車が滑り込む。
ワタシが借りた車?なぜ?
疑問にこたえるように助手席のドアが開く。
「乗って、送るわ」
例の、今回の彼のパートナー。

運転席でハンドルを握るブロンドの彼女。

2021年09月25日

co-operation

彼女の言葉に反応できずにいるワタシ。

そんな様子を見て、青い瞳を丸くするブロンドの彼女。
彼女が、運転席を降りて車をまわってくる。

助手席の前で、前屈みのまま、なんとか議員をおんぶしているワタシ。
彼女が、ワタシの背中にまわる。
不意に背中が軽くなり、身体が浮くように感じる。

彼女が、背中から議員を持ち上げて、後部席に乗せている。
その様子を目で追うワタシ。
車の屋根に両手をついて身体を支えている。
なんとか、助手席に身体を沈める。

彼女が、後部席のドアを閉める気配。
カツカツと近づく音を聞いて、彼女の顔がワタシの前に現れる。
そのままワタシに覆いかぶさるようにして、シートベルトを締める。
彼女が助手席のドアを閉めると、車の前をまわって、運転席に乗り込む。

運転席のシートベルトを締める音。
次の瞬間、車がスキッド音を残して発進する。

前を向いたまま、肩で息をしながら彼女に訊く。
「…どういう…こと?」
彼女が、車列を縫うようにハンドルを切りながら応える。
「協力してるのよ、別にいいでしょ」
「…どう…して?」
言葉少なく、呼吸を整えながら、もう一度訊くワタシ。

彼女が、助手席のワタシを一瞥して言う。
「今のあなたには、必要なはずよ、彼も、私達が協力すること、願ってたでしょ」
「…」
応えられずにいるワタシに、彼女が続ける。
「車を変えるから、もう少しの間、頑張って」

気づくと、議員のマンションの駐車場。
黒いSUVの隣にとまる。

彼女が、運転席から降りながら言う。
「ちょっと手伝って」
身体が軋むのを感じながら、助手席から降りる。

彼女が隣のSUVの後部ドアを開けたまま、乗ってきた車の後部席を開ける。
隣あうドアの間に、議員を降ろそうとしている。
彼女と向かい合うように、議員の脇の下に腕を入れて、議員の身体を支える。
議員の身体が、二台の車の間に出る。

支えながら向き合う彼女とワタシ。

2021年09月26日

stiletto heels

彼女がワタシの瞳をとらえる。

無意識にアイコンタクトする。
カウントなしに呼吸が合う。
SUVの少し高い後部席に、二人で議員を持ち上げる。

彼女がSUVの後部席に乗り込んで、シートベルトで議員の身体を固定する。
ワタシはその様子を見ながら、乗ってきた車の後部ドアを、身体を凭せかけるようにして閉める。

彼女がSUVの後部ドアを閉める。
ワタシに向きなおって言う。
「あなたも乗って」
「…」

応える気力もないワタシ。
促されるままに、少し高い助手席に苦労して乗り込む。
彼女が、対照的にキビキビと運転席に乗り込む。

初めて気づいたように訊くワタシ。
「…どこに?」

SUVは、既に駐車場を出ている。
朦朧とする中であらためて訊く。
「…ここ…彼女の…マンション…どこに…行くの?」
「彼女もあなたも、手当てが必要よ」
「…病院に…行くの?」
「彼女を連れて行くと騒ぎになるわ、それに、もっといいところがあるわ」
彼女がウィンクして微笑む。

車は走り続ける。

「起きて、手伝って」
なぜか懐かしさを感じる声に、目が覚める。
いつのまにか、うとうとしていたらしい。

我に返って、軋む身体を助手席から引っ張り出す。
彼女が、後部ドアを開けて、議員の両腕を肩にかけて言う。
「彼女を、私の背中に載せて頂戴」

ワタシは、後部席に頭から突っ込んで、議員の腰を両腕で抱きかかえる。
そのまま車の外の彼女に、議員の身体を預ける。
彼女が、議員をおんぶして歩きはじめる。

後部ドアを閉めるワタシに言う。
「ゆっくりでいいから、ついてきて」
「…」
応える気力もないワタシ。
ズンズン進む彼女のピンヒールを、視線の先にとらえる。

促されるようにピンヒールを踏み出すワタシ。
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