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2021年08月17日
bodyguard with stiletto heels
彼女が臆することなく、きっぱりと応える。
「あなたに用はありません」
言って、歩き出そうとする彼女。
左ハンドルの運転席が開く。
恰幅のいい運転手、兼用心棒?らしい男が降りてくる。
警護という言葉が憚られるような風貌で、彼女の前に立ちはだかる。
もう一度、後部席の政治家?ワタシには政治屋にしかみえない男が言う。
「手荒なことは、したくないんだが」
「あなたにも、あなたの関係する集団にも、私は興味ありません」
彼女が、再度言って一歩踏み出す。
運転手兼用心棒の男が、彼女の腕を掴む。
後部席の男は、笑って見ている。?「はなしなさい」?彼女が、身を捩って逃れようとするが、男の力は容赦ない。
両手で押しのけようとする彼女を、意にも介さない。
スーツケースから手を離すと同時に、ピンヒールトゥの前蹴り。
彼女の身体のカゲから、男の向こう脛に容赦なく極まる。
男が、彼女から手を離す。
彼女が一歩下がる。
ワタシが一歩踏み出す。
丁度、彼女と前後を入れ替わる形になる。
脛をさする男が、ワタシに向かって悪態をつく。
「貴様あ、やられたいのかっ」
スーツを着ても隠せない、用心棒らしい本性が現れる。
間合いを見切るように、身構えるワタシ。
その様子を見て、男が続ける。
「女のくせに、この俺とやろうってのか」
男が言い終わらぬ内に、重心を移動するワタシ。
左脚を軸に右中断の蹴り。
男の左大腿裏に鮮やかに極まる。
男が、堪らず片膝をつく。
「てめえっ」
男が言って、左脚を震わせながら立ち上がる。
反撃に備える。
「手加減はしねえぜっ」
言うと同時に、男が右の拳を飛ばす。
ワタシの顔に迫る拳。
「あなたに用はありません」
言って、歩き出そうとする彼女。
左ハンドルの運転席が開く。
恰幅のいい運転手、兼用心棒?らしい男が降りてくる。
警護という言葉が憚られるような風貌で、彼女の前に立ちはだかる。
もう一度、後部席の政治家?ワタシには政治屋にしかみえない男が言う。
「手荒なことは、したくないんだが」
「あなたにも、あなたの関係する集団にも、私は興味ありません」
彼女が、再度言って一歩踏み出す。
運転手兼用心棒の男が、彼女の腕を掴む。
後部席の男は、笑って見ている。?「はなしなさい」?彼女が、身を捩って逃れようとするが、男の力は容赦ない。
両手で押しのけようとする彼女を、意にも介さない。
スーツケースから手を離すと同時に、ピンヒールトゥの前蹴り。
彼女の身体のカゲから、男の向こう脛に容赦なく極まる。
男が、彼女から手を離す。
彼女が一歩下がる。
ワタシが一歩踏み出す。
丁度、彼女と前後を入れ替わる形になる。
脛をさする男が、ワタシに向かって悪態をつく。
「貴様あ、やられたいのかっ」
スーツを着ても隠せない、用心棒らしい本性が現れる。
間合いを見切るように、身構えるワタシ。
その様子を見て、男が続ける。
「女のくせに、この俺とやろうってのか」
男が言い終わらぬ内に、重心を移動するワタシ。
左脚を軸に右中断の蹴り。
男の左大腿裏に鮮やかに極まる。
男が、堪らず片膝をつく。
「てめえっ」
男が言って、左脚を震わせながら立ち上がる。
反撃に備える。
「手加減はしねえぜっ」
言うと同時に、男が右の拳を飛ばす。
ワタシの顔に迫る拳。
2021年08月18日
stiletto heels with slit
ギリギリで思い切り屈む。
男の拳が、頭の上で空をきる。
そのまま男が前にのめりこむ。
透かさず、男の身体を横に躱して高く跳ぶ。
空中で、大きく腰を捻る。
左の飛び回し蹴り。
深いスリットのおかげで、男の後頭部にきれいに極まる。
男に背を向けるように着地する。
着地したピンヒールでターンする。
男に向き直る。
男が、ゆっくり歩道に倒れこむ。
しばらくは、動けないはず。
男を跨いで後部ドアに詰めよる。
政治屋が、顔を振りながらウィンドゥを上げる。
ドアを試すが、ロックされている。
スモークを貼ったウィンドゥを睨みつける。
「あなた…」
声に振りかえる。
彼女が目を丸くして、ようやく言葉を続ける。
「…あなた、強いのね…」
倒れている男を跨いで、彼女に近づく。
「大丈夫ですか?」
「ええ、なんともないわ」
「警察呼びますか」
一応訊いてみる。
彼女が笑って歩きだす。
「無駄よ、すぐに揉消すわ、寧ろ悪用されるかも」
慌てて、スーツケースを掴むと、彼女を追って横に並んで歩く。
歩きながら思わず訊いている。
「よくあるんですか?」
「今日みたいに強引なのは、はじめてね、いよいよ本気ってことかしら」
笑顔のまま話す彼女の顔を、訝しげに覗き見る。
ワタシの様子に気づいて、彼女が言葉を続ける。
「今は、あなたがいるから」
「…」
「いい人がいるって奨められてよかったわ」
「奨められた?誰に奨められたんですか」
思わず訊いている。
彼女は、それにはこたえず、ウィンクすると不意に手を上げる。
並んで歩く二人の脇に、タクシーが滑りこむ。
後部席のドアが開く。
彼女が運転手に向かって、タクシーの後部を指差す。
運転手が降りてくる。
トランクを開けて、スーツケースに手を伸ばす。
片手で制して断ると、自分でトランクに入れる。
運転手が、ゴム製のネットでスーツケースを覆う。
上から押さえて、がたつかないことを確認すると、トランクを閉める。
彼女に続いて、後部席に乗りこむ。
彼女が運転手に行き先を告げる。
タクシーが、発進する。
後方に小さくなる黒い外車と政治屋。
男の拳が、頭の上で空をきる。
そのまま男が前にのめりこむ。
透かさず、男の身体を横に躱して高く跳ぶ。
空中で、大きく腰を捻る。
左の飛び回し蹴り。
深いスリットのおかげで、男の後頭部にきれいに極まる。
男に背を向けるように着地する。
着地したピンヒールでターンする。
男に向き直る。
男が、ゆっくり歩道に倒れこむ。
しばらくは、動けないはず。
男を跨いで後部ドアに詰めよる。
政治屋が、顔を振りながらウィンドゥを上げる。
ドアを試すが、ロックされている。
スモークを貼ったウィンドゥを睨みつける。
「あなた…」
声に振りかえる。
彼女が目を丸くして、ようやく言葉を続ける。
「…あなた、強いのね…」
倒れている男を跨いで、彼女に近づく。
「大丈夫ですか?」
「ええ、なんともないわ」
「警察呼びますか」
一応訊いてみる。
彼女が笑って歩きだす。
「無駄よ、すぐに揉消すわ、寧ろ悪用されるかも」
慌てて、スーツケースを掴むと、彼女を追って横に並んで歩く。
歩きながら思わず訊いている。
「よくあるんですか?」
「今日みたいに強引なのは、はじめてね、いよいよ本気ってことかしら」
笑顔のまま話す彼女の顔を、訝しげに覗き見る。
ワタシの様子に気づいて、彼女が言葉を続ける。
「今は、あなたがいるから」
「…」
「いい人がいるって奨められてよかったわ」
「奨められた?誰に奨められたんですか」
思わず訊いている。
彼女は、それにはこたえず、ウィンクすると不意に手を上げる。
並んで歩く二人の脇に、タクシーが滑りこむ。
後部席のドアが開く。
彼女が運転手に向かって、タクシーの後部を指差す。
運転手が降りてくる。
トランクを開けて、スーツケースに手を伸ばす。
片手で制して断ると、自分でトランクに入れる。
運転手が、ゴム製のネットでスーツケースを覆う。
上から押さえて、がたつかないことを確認すると、トランクを閉める。
彼女に続いて、後部席に乗りこむ。
彼女が運転手に行き先を告げる。
タクシーが、発進する。
後方に小さくなる黒い外車と政治屋。
2021年08月27日
instant pickles
ドアノブを回す音。
奥の部屋、寝室の扉が開く。
「おはよう」
彼女が言って、バスローブを羽織りながら出てくる。
ワタシはダイニングキッチンで、緑茶を入れながら応える。
「おはようございます」
「あなた、寝てないの?」
昨夜と同じ格好のワタシを見て、彼女が言う。
心配する素振りの彼女に、笑みを浮かべて元気よく応える。
「ええ、お昼寝する方が、今回の仕事はリズムが合いそうですから」
「あなたがよければいいけど、頼んだ私が言うのも妙だけど、無理はしないでね」
そう言う彼女に、カップ&ソーサーに緑茶を注ぎながら応える。
「はい、先生をお送りしたら、やすむつもりです」
言いながら、彼女にカップ&ソーサーを差し出す。
彼女が、鼻を近づけて言う。
「いい香ね、先に洗顔するから、あとでいただくわ」
そのままバスルームに入っていく。
一人佇むワタシは、手にしたソーサーから、緑茶のカップを口に運ぶ。
これはこれでおいしいけど、彼女を送ったら、ウチからいろいろと持ってこようと思う。
冷蔵庫を開けて、ラップをかけたガラス製の小さな器を取り出す。
残っていたミニトマトで作った、即席のピクルス。
まだ浅いとは思うが、朝のお茶うけにはなるだろう。
ラップを外して、ひたひたの漬け汁を、サッとシンクに空ける。
ガラスの底に、うっすらと漬け汁が残ったまま、小鉢をダイニングカウンターに置く。
一つ摘んで、頬張る。
口の中に酸味が広がる。
軽く噛むと、ミニトマトの皮が弾ける。
同時に、浅く漬かったトマトの酸味と甘味が口の中を覆い尽くす。
「ありあわせにしては、悪くないわね」
呟いて、酸味と甘味の残る唇に、緑茶を運ぶ。
渋みとあいまって、穏やかな香が鼻に抜ける。
思わず、一人ほくそ笑む。
彼女がバスルームから出てくる。
「お待たせ」
言いながら、ダイニングカウンターの椅子に座る彼女。
緑茶のカップ&ソーサーを、マットの上に置くワタシに訊いてくる。
「なにこれ?」
「ミニトマトがあったので、昨日のうちにピクルスにしてみました、まだ浅いですが」
彼女が、目を丸くして、ワタシの顔をしげしげと覗きこむ。
奥の部屋、寝室の扉が開く。
「おはよう」
彼女が言って、バスローブを羽織りながら出てくる。
ワタシはダイニングキッチンで、緑茶を入れながら応える。
「おはようございます」
「あなた、寝てないの?」
昨夜と同じ格好のワタシを見て、彼女が言う。
心配する素振りの彼女に、笑みを浮かべて元気よく応える。
「ええ、お昼寝する方が、今回の仕事はリズムが合いそうですから」
「あなたがよければいいけど、頼んだ私が言うのも妙だけど、無理はしないでね」
そう言う彼女に、カップ&ソーサーに緑茶を注ぎながら応える。
「はい、先生をお送りしたら、やすむつもりです」
言いながら、彼女にカップ&ソーサーを差し出す。
彼女が、鼻を近づけて言う。
「いい香ね、先に洗顔するから、あとでいただくわ」
そのままバスルームに入っていく。
一人佇むワタシは、手にしたソーサーから、緑茶のカップを口に運ぶ。
これはこれでおいしいけど、彼女を送ったら、ウチからいろいろと持ってこようと思う。
冷蔵庫を開けて、ラップをかけたガラス製の小さな器を取り出す。
残っていたミニトマトで作った、即席のピクルス。
まだ浅いとは思うが、朝のお茶うけにはなるだろう。
ラップを外して、ひたひたの漬け汁を、サッとシンクに空ける。
ガラスの底に、うっすらと漬け汁が残ったまま、小鉢をダイニングカウンターに置く。
一つ摘んで、頬張る。
口の中に酸味が広がる。
軽く噛むと、ミニトマトの皮が弾ける。
同時に、浅く漬かったトマトの酸味と甘味が口の中を覆い尽くす。
「ありあわせにしては、悪くないわね」
呟いて、酸味と甘味の残る唇に、緑茶を運ぶ。
渋みとあいまって、穏やかな香が鼻に抜ける。
思わず、一人ほくそ笑む。
彼女がバスルームから出てくる。
「お待たせ」
言いながら、ダイニングカウンターの椅子に座る彼女。
緑茶のカップ&ソーサーを、マットの上に置くワタシに訊いてくる。
「なにこれ?」
「ミニトマトがあったので、昨日のうちにピクルスにしてみました、まだ浅いですが」
彼女が、目を丸くして、ワタシの顔をしげしげと覗きこむ。
2021年08月28日
tomato with green-tea
彼女が、即席のトマト漬けを一つ摘む。
顔の前で、一瞬見詰めるが、そのまま一口に頬張る。
忽ち、瞳が丸くなる?気がする。
「なにこれ、おいしい」
「お茶にもあうと思いますよ」
そう言うワタシの言葉に促されるように、彼女がカップを持ち上げて緑茶を含む。
黒目が大きくなるほど?目を見開いて、飲み下す。
自然と微笑んで様子を見ているワタシに、彼女が呟く。
「あなた、なにもの」
自分の疑問が可笑しいのか、直ぐに笑いはじめる。
カップ&ソーサーを持って、カウンターテーブルの彼女の横に座りながら言う。
「朝食は分からなかったので、ひとまず何かと思って」
「ありがとう、これで充分よ、普段はコーヒーか紅茶だけ飲んで、あとは事務所で軽く食べてるから」
そう言うと、続けざまにミニトマトのピクルスを頬張る。
緑茶を飲みながら、彼女が切り出す。
「車を借りるよう言ったから、夕方は、車で迎えにきてもらえるはずよ」
「いいですね、昨日のような面倒を避けるにはいい策です」
「送り迎え以外に使えるところがあれば、好きに使って構わないわ」
「ありがとうございます、夕食の買い物に使わせてもらいます」
「あなたと過していると楽しくなっちゃう、さっ、出かける支度しなくちゃ」
そう言って、まだバスローブ姿の彼女が立ちあがる。
彼女が寝室に消えるのを見送ると、食器を片付けて、ワタシも部屋に向かう。
クローゼットを開けると、上着を取って羽織る。
作り付けの引き出しの上に置いたバッグを取って、肩にかける。
部屋を出ると、リヴィングのソファにかけて、彼女を待つ。
しばらくして、彼女が寝室からでてくる。
まさに、颯爽と登場する。
彼女の先に立って、玄関に向かう。
ピンヒールを履いて、彼女が靴を履くのを待つ。
扉を開けて先に出ると、扉を押さえたまま彼女を待つ。
彼女が外に出ると、預かった合鍵で鍵を締める。
一緒にエレヴェータに向かう。
歩道の車道側にワタシが並んで、歩いて事務所に向かう。
事務所の扉の前。
彼女がカードを翳して、暗証コードを入力する。
ロックが解けると、彼女が扉を開けて入る。
出迎える二人の秘書が、妙な顔をして立っている。
顔の前で、一瞬見詰めるが、そのまま一口に頬張る。
忽ち、瞳が丸くなる?気がする。
「なにこれ、おいしい」
「お茶にもあうと思いますよ」
そう言うワタシの言葉に促されるように、彼女がカップを持ち上げて緑茶を含む。
黒目が大きくなるほど?目を見開いて、飲み下す。
自然と微笑んで様子を見ているワタシに、彼女が呟く。
「あなた、なにもの」
自分の疑問が可笑しいのか、直ぐに笑いはじめる。
カップ&ソーサーを持って、カウンターテーブルの彼女の横に座りながら言う。
「朝食は分からなかったので、ひとまず何かと思って」
「ありがとう、これで充分よ、普段はコーヒーか紅茶だけ飲んで、あとは事務所で軽く食べてるから」
そう言うと、続けざまにミニトマトのピクルスを頬張る。
緑茶を飲みながら、彼女が切り出す。
「車を借りるよう言ったから、夕方は、車で迎えにきてもらえるはずよ」
「いいですね、昨日のような面倒を避けるにはいい策です」
「送り迎え以外に使えるところがあれば、好きに使って構わないわ」
「ありがとうございます、夕食の買い物に使わせてもらいます」
「あなたと過していると楽しくなっちゃう、さっ、出かける支度しなくちゃ」
そう言って、まだバスローブ姿の彼女が立ちあがる。
彼女が寝室に消えるのを見送ると、食器を片付けて、ワタシも部屋に向かう。
クローゼットを開けると、上着を取って羽織る。
作り付けの引き出しの上に置いたバッグを取って、肩にかける。
部屋を出ると、リヴィングのソファにかけて、彼女を待つ。
しばらくして、彼女が寝室からでてくる。
まさに、颯爽と登場する。
彼女の先に立って、玄関に向かう。
ピンヒールを履いて、彼女が靴を履くのを待つ。
扉を開けて先に出ると、扉を押さえたまま彼女を待つ。
彼女が外に出ると、預かった合鍵で鍵を締める。
一緒にエレヴェータに向かう。
歩道の車道側にワタシが並んで、歩いて事務所に向かう。
事務所の扉の前。
彼女がカードを翳して、暗証コードを入力する。
ロックが解けると、彼女が扉を開けて入る。
出迎える二人の秘書が、妙な顔をして立っている。
タグ: green tea
2021年08月29日
salt shake
彼女に続いて、事務所に入る。
と、入口に近い応接セットに、あの政治屋が陣取っている。
その脇に、細身の黒いスーツにサングラスの男が立っている。
男は、ワタシが入っても、ピクリともしない。
その様子に間合いを計ろうとするが、空気に隙がない。
彼女が、秘書に頷いて、政治屋の正面に腰をおろす。
座るやいなや、有無を言わさぬ口調で言う。
「アポイントもなしに、何の用でしょう?心当たりはないですが」
「明日の質問…、どうしてもやるのかね」
「あなたには関係ないことです、私は信じることをやるまでです」
「少し、力を抜いたらどうだね…」
言外に意味を含ませるように、政治屋が応える。
脇に立つ男が、一瞬の動きで、足元の紙袋を応接テーブルに載せる。
「もう少し、いい事務所に移ったらどうかな」
彼女がテーブルには目もくれず、政治屋を睨みつけるようにして言う。
「お帰りください、あなたがたに用はありません」
「そんなことを、言っていいのかな」
「私は、これからも、言いたいことを言いたい相手に言います」
政治屋が諦めたように、立ち上がりながら言う。
「後で泣きついても知らんぞ」
「あなたにだけは頼みませんから、ご心配なく」
彼女の最後の言葉に、政治屋が鼻を鳴らして扉に向かう。
脇の男が扉を押さえる。
相変わらず、動作に隙がない。
サングラスの目元を睨みつけるワタシ。
視線は見えないが、見返されているのを感じる。
互いに動けず、仁王立ちしている。
「おい、帰るぞ」
扉の外で、政治屋の声。
促されるように男が、無駄のない動きで出て行こうとする。
「忘れ物よ」
彼女が、紙袋を指して言う。
男が、素早い動作で紙袋を掴むと、ワタシを一瞥して出て行く。
扉が閉まると彼女が言う。
「もう、朝からやんなっちゃうわね、塩まいといて」
彼女の思わぬトーンに振り返る。
彼女が、苦笑してソファから立ち上がると、奥の部屋に向かう。
女性秘書が、ホントに塩を持って戻ってくる。
扉の外に、二、三度まいて、笑顔を取り戻す。
あらためて挨拶を交して、彼女が奥の部屋に秘書たちと入っていく。
しばらくして、女性秘書が出てくる。
車を手配したことをワタシに伝えて、申し訳なさそうに言う。
「私たちは行けないので、車の受け取りをお願いします」
言いながら、近隣の案内図を広げてレンタカーオフィスの場所を教えてくれる。
このまま帰りに寄れそう、思いながら、二人で広げた地図を覗き込む。
「それじゃ、また夕方に」
そう言って席を立つ。
ピンヒールを響かせて、彼女の事務所をあとにする。
と、入口に近い応接セットに、あの政治屋が陣取っている。
その脇に、細身の黒いスーツにサングラスの男が立っている。
男は、ワタシが入っても、ピクリともしない。
その様子に間合いを計ろうとするが、空気に隙がない。
彼女が、秘書に頷いて、政治屋の正面に腰をおろす。
座るやいなや、有無を言わさぬ口調で言う。
「アポイントもなしに、何の用でしょう?心当たりはないですが」
「明日の質問…、どうしてもやるのかね」
「あなたには関係ないことです、私は信じることをやるまでです」
「少し、力を抜いたらどうだね…」
言外に意味を含ませるように、政治屋が応える。
脇に立つ男が、一瞬の動きで、足元の紙袋を応接テーブルに載せる。
「もう少し、いい事務所に移ったらどうかな」
彼女がテーブルには目もくれず、政治屋を睨みつけるようにして言う。
「お帰りください、あなたがたに用はありません」
「そんなことを、言っていいのかな」
「私は、これからも、言いたいことを言いたい相手に言います」
政治屋が諦めたように、立ち上がりながら言う。
「後で泣きついても知らんぞ」
「あなたにだけは頼みませんから、ご心配なく」
彼女の最後の言葉に、政治屋が鼻を鳴らして扉に向かう。
脇の男が扉を押さえる。
相変わらず、動作に隙がない。
サングラスの目元を睨みつけるワタシ。
視線は見えないが、見返されているのを感じる。
互いに動けず、仁王立ちしている。
「おい、帰るぞ」
扉の外で、政治屋の声。
促されるように男が、無駄のない動きで出て行こうとする。
「忘れ物よ」
彼女が、紙袋を指して言う。
男が、素早い動作で紙袋を掴むと、ワタシを一瞥して出て行く。
扉が閉まると彼女が言う。
「もう、朝からやんなっちゃうわね、塩まいといて」
彼女の思わぬトーンに振り返る。
彼女が、苦笑してソファから立ち上がると、奥の部屋に向かう。
女性秘書が、ホントに塩を持って戻ってくる。
扉の外に、二、三度まいて、笑顔を取り戻す。
あらためて挨拶を交して、彼女が奥の部屋に秘書たちと入っていく。
しばらくして、女性秘書が出てくる。
車を手配したことをワタシに伝えて、申し訳なさそうに言う。
「私たちは行けないので、車の受け取りをお願いします」
言いながら、近隣の案内図を広げてレンタカーオフィスの場所を教えてくれる。
このまま帰りに寄れそう、思いながら、二人で広げた地図を覗き込む。
「それじゃ、また夕方に」
そう言って席を立つ。
ピンヒールを響かせて、彼女の事務所をあとにする。