「浅はかな恋を棄てた日」 


違和感を覆えた瞬間から
背けていた光景は
もうすぐやって来ること

騒ぐ心を抱えたまま
探りながら
無意味な逢瀬にボロボロになり
泣きながら岐路につく日々

そのときは来る
来なければいいのに
自ら引き寄せた
焦燥感にあけくれた後に

見なくてもいいものが
目の前に現れ
神か悪魔か天使がささやく

見なきゃだめ
見るためにある
見るしかない
すべて決める時

そう
目の前に不安の元である
見てはならないものがあり
決定づけるための文字が並ぶ

見なければよかったのか
いいえ
見ないでいても
また
泣きながら帰路につく日々の
繰り返し

私の存在はいつも無意味だった
大事にされることもなかった
大事にされるのは
私ではなかった
ずっと前からの胸騒ぎは
ほとんどその通り

まだ眠りの中の
今は見知らぬ人に
何を訴えようと怒ろうと
確かめることも必要なかった
すべてがばからしく
拘っても
流した涙の分だけみじめになるだけ

だから
私は立ち去った
大きな窓からは朝陽がまぶしく
きれいな空が心に残る
最後の朝にふさわしく
ドアの音が終止符になる


もう一度やさしい言葉が欲しかった
それでも縋って
続けていられるなら
もしやまた笑顔になれるかもと
思い違いが渦巻いた

神か悪魔か天使の声はささやく

元に戻ることなどできないのは
わかっているはす
同じには戻れない
相手ではなく
自分の心が戻れない

それならもう棄てていい

小さな
朧げな恋でした

浅はかな恋は棄ててやった

見知らぬ人は目が覚めて
消えてることにだけ
問いかけるようにベルを鳴らす

そんなことに呆れながら
これでよかった
偉かった

壊れたおもちゃをとっとと棄てて
決めることができて
偉かった

白黒がついたとき
心は軽くなった

気持ちがだんだん楽になる
心を苦しめるなら
元から断てば楽になる

見知らぬ人のことはどうでもいい
私は前に進むだけ

ありがとう
浅はかな恋




posted by 彩沙 at 21:20 | 小説

2024年07月19日

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