このように「アンチエイジング」という言葉に対する一般の方の理解度は、「若返り」とか「年を取らない」というものが多いようです。ところが、「アンチエイジング」という言葉の意味は、実はそうではないのです。其れを説明するためにそもそも「エイジング」に意味を説明する必要があります。
「エイジング」という言葉は、英語でageingと書きます。アメリカ式表示だとagingになります。
ageには「年を取る」という意味があります。ing動詞の進行形に表示形式です。したがって、agingとは「年を取っていく、歳を加える」つまり、加齢するという意味です。
エイジングの意味を高齢化とみなすこともありますが、個人が年を加えることが「加齢」であり、社会において高齢の人の割合が大きくなることが社会の「高齢化」だと理解ください。
エイジングの本質は「時間とともに対象物の性質が変化すること」です。これを「経年変化」と言います。
対象は人に限りません。建築物やプラントなどの物も対象になります。
ところが、エイジングという言葉は、これまでどちらかというと「マイナス」の側面が強調されてきました。例えば、石油化学プラントや発電プラントは、長年稼働すると回転部が摩耗し、配管などの部材の材料が変化してもろくなります。これは機械設備のエイジングで「経年劣化」と呼ばれ、しばしば事故に原因となるため、可能限り避けたいマイナスの対象とされてきました。
しかし、、エイジングには当然「プラス」の側面もあります。 例えば、バイオリンやギターなど木管楽器のおけるエイジングがそうです。これらの楽器では、制作当初は期の中に水分が残っているため、音の響きがあまりよくありません。しかし、年数を経ると、この水分が徐々に抜け、楽器の表面に塗ってあるニス類がなじんできます。この過程をエイジングと呼ぶのですが、上手な弾き手が弾き込むと、その楽器は『良い音」でなるようになります。ストラデイバリウスのような名器は、楽器そのもので名器になったのではありません。名演奏家に弾き込まれることで、良い音色でなるようになるのです。
しかし私たちの社会では、人のエイジング、つまり、加齢という現象を対象やその時期の違い別々の概念で呼んでいます。例えば、子どもから成人になる時期だと「成長」と呼ぶ一方、成人から老人になる時期だと「老化」と呼んでいます。
私たちの体はおよそ60兆個の細胞でできており、100億個の細胞が毎日死に、代わりに新しい細胞が生まれているといわれています。この細胞の交代は、私たちの体で細胞分裂、細胞分化、細胞死という過程が繰り返されているためです。この過程は私たちが生きている限り継続されます。
そして、この過程を通じて私たちの体は昨日や形態が変化していきます。このため、この世に生まれる前の受精した瞬間からあの世にいくまで、私たちの体は、生きてる限り変化し続けるわけです。つまり、エイジングとは「生き続けること」のほかなりません。そこで先に挙げた「アンチエイジング」の意味を見ましょう。
アンチ(anti-)というのは英語で否定を意味する接頭語です。したがって、anti-ageingとは生き続けることの否定、つまり死ぬことという意味になります。「アンチエイジング」が若返るという意味だと思っていた方は今日から認識を改めてください。
さて、なぜ「アンチエイジング」などという言葉が世に出たのでしょうか。この言葉は西洋、特にアメリカからきた言葉です。西洋には18世紀の産業革命以降、人間を制路機械のように見なす価値観が根強くあります。機械は時間がたつとさび付いたり、部品が壊れたりして老朽化していきます。人間は細かい機会の塊のようなものなので、機械と同じように時間がたつと、体のあちこちに不都合が出て、老朽化していく。こうゆう見方が根強いのです。 このため、人間も年を取ると、あたかも機械と同じようにさび付いて老朽化し、その社会的価値が下がっていくとみなすわけです。だから、歳をとることは良くないことだとして、それを食い止める(実際は食い止められないが)薬やサプリメント、医療技術を「アンチエイジング商品」とうたって大々的に宣伝しているのです。
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