新NISAで老後資金1億円(8)
日経マネー特集
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株式投資だけで資産1億円を達成した投資家として、前回に続いて紹介するのはなのなのさん(ハンドルネーム)だ。高配当を前提条件に時流に合ったテーマを掛け合わせて、投資する銘柄を選んでいる。どのように億超えを達成したのか、その経緯を見ていこう。
なのなのさんは投資歴23年の兼業投資家だ。大学生時代のアルバイトで貯めた30万円を元手に2000年から投資を始めた。高配当株投資を主に手掛けて、21年に資産1億円を達成。しかし「初めから投資がうまくいったわけではない」と話す。
実は00〜07年までの投資成績はマイナスだった。「家電メーカーでその後倒産してしまったシントムなど、インターネット掲示板でお薦めされていた銘柄や、とにかくPBR(株価純資産倍率)が低い銘柄を買っていたが、思ったように値上がりしなかった」
複数口座で投資法を実験
そこで08年に「投資法を変えなくてはいけない」と思い立ち、ある実験を始めた。証券口座をいくつか開設し、高配当株、割安(バリュー)株、掲示板やメディアで薦められている株を分けて投資。口座ごとの運用パフォーマンスを比較した。結果、安定して利益を出せるのは高配当株投資だと分かり、投資法をシフトさせた。
現在では配当と株主優待を合わせた「総合利回り」が4%以上であることを前提に、その時々のテーマを組み合わせて銘柄を買うようにしている。足元で最も注目しているのが「高配当×PBR1倍割れ」の銘柄だ。「低PBR銘柄の中には有望な株がまだまだ眠っている」と見る。その他にも「高配当×半導体」や「高配当×インバウンド」などを手掛けている。
「高配当×PBR1倍割れ」の銘柄を選ぶ場合は、直近10年程度の業績を見て買いを判断する。「コロナ禍という特殊要因を除いて、売上高と営業利益がある程度右肩上がりであればいい。基本は中長期で保有するため、業績が大きくぶれていないことが重要」と見る。
売る時の基準も明確だ。株主優待の廃止や減配など、高配当株としての魅力がなくなったらすぐに売却する。株価が上昇して総合利回りが2.5%を下回った場合も徐々に売っていく。「配当利回りがより高い銘柄に乗り換えるチャンスだと考えて、積極的に売るようにしている」と説明する。
高配当株は精神を強くする
1億円達成のコツを聞くと、「自信を持って買った銘柄を強いメンタルで保有すること」と返ってきた。なのなのさんは「普通は保有銘柄の価格が下がると不安になって売ってしまう。だが、高配当株を保有すると、相場が暴落してもある程度の配当金は手に入る。そのため、売らずに保有しようと考えられるようになった。そういったところも高配当株投資のメリットだ」と分析する。
なのなのさんが「高配当×PBR1倍割れ」のテーマで注目する銘柄は、粘着剤などの化学製品を製造する綜研化学と、取扱説明書や修理マニュアルの制作を手掛けるクレステックだ。
「綜研化学は粘着剤製品が中国市場で好調なことなどを背景に、10月26日に24年3月期の業績予想を上方修正した。クレステックは東南アジアなどでの売り上げが大きく、今後の成長期待が高い」
さらに「高配当×造船」として船舶向けの塗料メーカー世界大手の中国塗料にも関心を向ける。
「造船関連銘柄の価格は長期で上昇と下落を繰り返す傾向がある。現在は株価が伸びてきており、あと数年は良い相場が続きそうだ。売り時を間違えないようにしたい」と意気込む。
【連載「新NISAで老後資金1億円」の記事一覧】
(1)老後に必要な資金は1億円 誰でも手が届く2つの理由
(2)橘玲さん「新NISAと生涯現役で時間重視の人生を攻略」
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(田中創太)
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