ハイテク株アナリストが考える新NISAの使い方(2)−新NISAを使ったハイテク系投資信託・ETF、個別株への投資の考え方−
●2024年から新NISAが始まる。ハイテクグロース株への投資に新NISAをどのように使えばよいか、再度考えてみた。新NISAは非課税投資枠の大幅増加、制度の恒久化、非課税投資枠が一杯になったときでも売却すれば簿価ベースで翌年から枠が復活することなど、投資に成功した時に資産形成しやすい制度になっている。日本の生活者の実情にあった制度といえよう。
●新NISAは長期投資、短期投資ともに個別株投資にも使いやすい制度である。1株から買えるアメリカのハイテク株だけでなく、日本のハイテク株も「かぶミニ」(単元未満株取引)を使って考えてみたい。
毎週金曜日午後掲載
1.新NISAの概要(おさらい)
今回の楽天証券投資WEEKLYは、来年2024年からスタートする新NISAについて書きます。2023年10月6日付け楽天証券投資WEEKLY「ハイテク株アナリストが考える新NISAの使い方−ハイテクグロース株への投資に新NISAをどう使いこなすか−」の2回目です。アメリカや日本のハイテクグロース株(半導体関連、IT、AI関連など)に投資する際に、新NISAをどう使いこなすかというテーマです。前回と重複する部分もありますが、私の見方、考え方を示したいと思います。
なお、ここで述べることは、あくまでもアナリストとしての私の見解です。楽天証券が配信している他のレポート、説明と違う点があるかもしれませんが、その場合は、一アナリストの独立した見解であると解釈してください。
まず、新NISAの概要を見ます。
表1 新NISAの内容
出所:楽天証券
現行NISAと比較した時の新NISAの大きな特徴は次の通りです。
投資して利益を得た場合の売却益、配当に対する課税がなく、非課税保有限度額が全体で1,800万円、このうち成長株枠で1,200万円(いずれも簿価ベース)と大きい(海外株式や海外ETF等に投資して配当金を得た場合、NISA口座では日本では非課税だが、アメリカ株式、ETFの配当の場合はアメリカで10%課税される。アメリカ株、アメリカETFの売却益に対してはアメリカで課税されず、日本でも新NISA枠では課税されない)。
年間の投資枠も積立枠120万円、成長投資枠240万円、合計360万円と日本の平均的な家計所得と貯蓄に対して大きい。
恒久制度であり、投資期間に期限がない。
成長投資枠では個別株(日本株、外国株)への投資が可能で、単元未満株投資(楽天証券の場合は「かぶミニ」)もできる。投資信託、ETF(上場投資信託)にも投資できる。
投資枠がいっぱいになったとしても、買付額ベース(簿価ベース)で360万円分を売却すれば、翌年は360万円分の投資が可能になる。
いったん投資をやめて投資した銘柄を全て売却した場合は、翌年から年間最大360万円の枠で投資を再開できる。
現行NISAと新NISAは別枠扱いになるので、併用できる。
積立投資枠、成長投資枠で投資できる投資信託、ETFは指定される。
このように見ていくと、新NISAの最大の特徴は売却益に対する非課税枠が大きいこと、恒久制度であること、いったん投資をやめて持ち株を全て売却した場合でも(枠が一杯の時に売却した場合は)翌年から投資を再開できることなどです。総合的に考えると、日本の生活者が置かれている状況に寄り添った、良い制度であると言えます。
2.ハイテクグロース株投資におけるアメリカ株の重要性
ハイテクグロース株投資にとってアメリカ株は重要です。ハイテクグロース企業(例えば半導体関連株、IT関連株など)のトップ企業はアメリカ企業が圧倒的に多いです。半導体デバイスのトップは今はインテルですが、来年はエヌビディアになると思われます。半導体製造装置の世界トップはアプライド・マテリアルズ、ITではGAFAMの5社がインターネット、ネット通販、SNS、ITなどの各分野で圧倒的な地位を持っています。
また、ハイテクグロース株の成長株の条件は、グローバルに活動しているかどうかですが、アメリカにはグローバル市場で大きな実績を上げてきた企業が多いです。アメリカで生まれた半導体関連企業、IT・インターネット企業の多くは、個人消費、企業の設備投資ともに世界で最も厚みのあるアメリカ市場でしっかりと力を蓄え、速やかに世界展開して急成長へ向かうことが多いです。自社に海外展開する力が不十分な場合は、コンサルタントが手法を伝授したり、投資銀行、投資ファンドなどが、人材や海外展開のための買収先を紹介します。コンサルタントにしろ、投資銀行や投資ファンドにしろ、腕の立つ専門家や会社の料金、手数料は高いので、これらの支援を受ける場合はおのずと収益志向になります。
一方で、これはアメリカ経済の大きな特徴ですが、経済の新陳代謝が極めて大きいため、10〜20年単位でみると、特定のセクターの主力企業が変わっていることがよくあります。前回のレポートでも書きましたが、20年前の世界の半導体セクターのスターはインテルでした。今はエヌビディアでしょう。私の業績予想が大きく間違わなければ、2024年に世界の半導体セクターのトップ企業はエヌビディアになると思われます。しかし、今後5年間はトップを維持できても、10年後、20年後はわかりません。エヌビディアが10年以上半導体デバイスセクターのトップを維持することはできないと言っているのではなく、10年以上の長期で成長企業を考えるときには、不確定要素が多すぎて予想できないということです。
そのため、アメリカのハイテクグロース株に投資する場合には、アナリストレポートやストラテジストレポートを参考にするとともに、自分でも勉強し、投資手法も工夫したほうがよいと思います。例えば、ハイテク系インデックス投信・ETFへの長期投資を行うとともに、ハイテク個別株への1年以内の短期投資または、1〜2年程度の比較的短い長期投資を並行して行うという組み合わせです。短期の回転売買を勧めるつもりはありませんが、1〜2年に1〜2回程度自分の投資先を再検討して、自分が入れ替えるべきと判断した銘柄を入れ替えることは、勉強する機会が増えるというメリットがあります。
3.日本株も重要です
ハイテクグロース株では日本株にも魅力があります。日本のハイテク市場にはアメリカほど激しい競争、激しい新陳代謝はありません。一度勝ち組になれば、投資資金と人材を集めて勝ち組であり続けることができます。前述のように、アメリカではそうはいきません。少子高齢化が進み衰退する日本で勝ち組になっても投資対象としては不十分ですが、世界市場で活躍する会社が日本の株式市場にあると、勝ち組としての評価を獲得し続けることができると思われます。
例えば、半導体製造装置や半導体素材の場合は、長年の競争と技術革新の結果、世界市場で上位1〜3位の会社が大きな優位性を保ち続けるケースが多いです。そして、そのような会社が日本の株式市場にあると、他の日本株に比べてPERや株価の上昇率の面で高い評価を得ることができると思われます。半導体製造装置・計測器メーカーのレーザーテック、東京エレクトロン、アドバンテスト、ディスコなどがその好例だと思います。
ただし、市場が巨大である一方で栄枯盛衰が激しい先端半導体デバイスメーカーは日本にはほぼありません。この分野に投資する場合は、アメリカのエヌビディア、AMD、インテル、アーム・ホールディングス、台湾のTSMC等に投資することになります。ただし、最近ソシオネクストが特注型ロジック半導体の事業で一桁ナノ台に進出してきたので、日本でも変化はあると思われます。
また、アメリカ株は1株から投資できるため、数千円から数万円の資金から株式投資を始めることができます。日本株の場合は、単元株制度によって通常は100株単位でなければ売買できませんが、楽天証券の「かぶミニ」(単元未満株取引)を使えば1銘柄当たりの投資金額を低くすることができます。
4.新NISA成長投資枠の対象投資信託、ETF
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