火口周辺は硫黄臭が立ちこめており、火山灰には硫化物が多く含まれるとみられる。野上健治・東京工業大教授(火山化学)によると、火山灰に水が加わると、成分の硫酸とカルシウムが化学反応を起こして石こうの主成分である硫酸カルシウムに変わる。石こうはぬれているとドロドロに、乾くとセメントのように固まってしまうという。
伊藤英之・岩手県立大教授(火山砂防)は「今回降った火山灰は粒が細かく、かなり粘土質のようだ」と指摘する。遭難者の上に火山灰が降り積もると、全身が粘土に覆われて体温が奪われるといい、一刻も早い救助を訴える。悪天候下での作業は視界が利かず足場も悪いため滑りがちで、くぼみに滞留した火山ガスへの注意も必要という。
大雨の場合、積もった火山灰が斜面に沿って一気に流れ落ちる土石流が起きる危険もある。過去の噴火では、降灰後の雨がたびたび2次災害を起こしてきた。全島民が避難した2000年の三宅島(東京都)噴火では、土石流が何度も住宅地を襲い、被害を拡大した。1977年の有珠山(北海道)噴火では、約1年後に大規模な土石流が発生し温泉街で死者2人、行方不明1人の犠牲を出した。
野上教授は「土石流が起こると下流の川がせき止められ、洪水が起こる可能性がある。火山は複合災害で、降灰があった周辺の地域も警戒が必要だ」と注意を促す。
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