当時NECの一体型デスクトップPC"Lavie"が、画面全体がスピーカーとなっている特長を売りにしていた時代。デモで流れていた映像が、カラヤン/ベルリンフィルのM. Ravel "Bolero"、Ricky Martinの"The Cup of Life"、そしてHerbie Hancockの"Cantaloupe Island"だった。この"Cantaloupe Island"が気に入って"One Night with Bluenote"のDVDを購入、Jazzの面白さを知ることとなった。
Jazzについては、スタジオ録音よりも、スリリングなライブ映像がビシビシ来た。そこからDVDをいくつか購入する流れとなり、George Bensonの"Absolutely Live"もその中で購入した一枚だ。もう完全に脂の乗り切った一番いい時期のGeorge Bensonのライブで、Herbie HancockやMilt Jackson、Sonny Rollins、Michel Petrucciani等々購入したDVDどれも良かったんだけれど、いちばん何度も見たのはこのGeorge Bensonの"Absolutely Live"だった。
音楽として素晴らしいのはもちろん、観客との一体感という点でズバ抜けていたのが大きなポイントだ。その曲目のなかでいちばん魅力的だったのが"Breezin'"だ。どちらかというとGeorge Bensonは暑苦しい部類に入るアーティストだと思うのだけれど、このライブの"Breezin'"ほど涼しいパフォーマンスはない。
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CD版オリジナルの"Breezin'"も悪くないけれど、やっぱりこのライブ盤の演奏がいちばん好きだ。
"Live at Montreux 1986"もかなり良くて、少し若いものの、技術的には頂点を極めていたGeorge Bensonの超絶技巧が見られる。その中で最も気に入っているのが"Take Five"だ。そもそもこの曲はDave Brubeckのオリジナルが好きで、正直この曲でこれ以上の演奏はないと思っているのだけれど、"Live at Montreux 1986"で演奏された"Take Five"はいろんな意味で味わい深い。
超絶技巧なギターにしびれるのはもちろん、渡辺貞夫がサックスで参加していて、このソロがある意味衝撃的だった。
それまで、日本人のジャズ・アーティストに対してあまり良いイメージを持っていなくて、そもそもの「音」に「心」が足りていない、あるいはついていけていないという印象が強かった。
だから、良い演奏を聴いても「日本人にしては」という但し書き付きにとどまっていたのだけれど、この"Take Five"での渡辺貞夫のソロは、冒頭でびりびりっと来た。「あ、これはすごい」と、一瞬でそれまでの先入観が吹き飛んだ。日本人にもこんな音が出せるんだ、と感動した。
残念ながら、この日の調子が今ひとつだったのか、途中で息切れして、最後はGeorge Bensonに「おい、早く代われよ」とソロを終了させられてしまっているのだけれど、このライブに参加できるほどの実力を感じたのは事実だ。
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蛇足になるけれど、このGeorge Bensonが小さく見えてしまう映像がある。
詳細は知らないけれど、たぶんアメリカのTVショーで、BB Kingの"Rock Me Baby"にEric Claptonとともにゲスト出演したものだ。BB Kingがいわゆる「大御所」で、共演するにふさわしいアーティストとして選ばれたんだろう。
まるで桑田佳祐のステージにゲストとして呼ばれた桜井和寿とスガシカオみたいな感じだ。いや、三人とも同列と言えばそうなんだけれど、やっぱり中央に位置するアーティストのオーラがすご過ぎて、残り二人の「大物」が小さく見えてしまうのだ。こういうのも面白い。
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