口は禍の門。何げなく言ったことばが災難を招かぬよう、くれぐれもご用心を。
■責任感が強い人、自信家は要注意
「自慢話で人間関係が悪くなった」「上司に言った余計なひと言で大変な目に遭った」「不用意なひと言で職場から総スカンを食った」など、まさに“口は禍の門”。ちょっとした失言の中によもやの落とし穴が潜む。プレジデント10.19号の特集に際し行ったアンケート調査では、職場でうっかりしてしまった失言の体験を寄せてもらった。
失言は、気の緩みから生まれやすいとよく言われる。うれしいことがあると得意げになって自慢したくなるのは人の常。そんなときは周囲からの嫉妬に要注意というわけだ。サービス業に携わるAさん(男性・30歳)は昇進したとき「誰でもなれます」と職階が下になった先輩に言ってしまった。商社勤務のBさん(男性・46歳)は「大型案件が決まったとき、成績が落ちている先輩に自慢し、かんかんに怒られた」。
より深刻な事態を招きかねないのは「自分は仕事ができる」と思い込んでいる自信家や、「会社をよりよくするために自分が先頭に立って」という正義感や責任感が強い人だ。上司に意見を言ったり提案したりする行為が反感を買い、異動や出向、降格、最悪の場合は退職に追い込まれるケースも少なくない。
電気機器メーカーに勤めるCさん(男性・52歳)は上司に対し「その仕事のやり方はおかしい」と批判した。その後の人事考課において「評価が極端に低くなった」という。保険会社勤務のDさん(男性・50歳)は、「会社の金で飲みに行く時間があるなら、まずは企画書に目を通してほしい」と上司に懇願した。だが、前半のひと言は余計だった。結果は、「報復異動」。
「それをやったら会社は終わり。だから社長はバカなんだ」とぶち上げた医薬品メーカー勤務のEさん(男性・40歳)、「あなたはひと言が1時間以上になる。長話だ」と上司に指摘したFさん(男性・50歳)は、「強要されて退職に追い込まれた」。
このほか、上司に進言したら「機嫌が悪くなった」「逆ギレされた」「根に持たれた」というケースは枚挙に暇がない。思ったことをそのまま言葉にしてしまう人は、カドが立たないようにするコミュニケーション術を身につけたい。ほとんどの上司は了見が狭いと心得たほうが無難だろう。
気の置けない仲間との明け透けな会話や周囲へ漏らしたひと言が、大事に至ることもある。大手情報通信会社のGさん(男性・46歳)は「同僚との飲み会で社長や上司の批判をしたら、告げ口され降格」となった。同じく情報通信会社の営業マンHさん(男性・40歳)は取引先で上司の悪口を言ったら、後日「そのお客様を上司とともに接待した際、お客様が冗談まじりに話してしまった」というから油断ならない。
よかれと思って言ったひと言が禍を招くケースもある。カード会社に勤めるIさん(男性・56歳)は、残業続きの上司を気遣い、「あとはわれわれでやりますから、もう退社してください」と進言したら「仲間外しと勘違いされ、その後監視された」。
上司に同調しゴマをすっていれば安全かといえば、そうでもなさそうだ。
「来期の業績は良さそうですねと上司をヨイショしたつもりが、“今期の数字が上がっていないのに来期のことを言うな”とご機嫌斜めだった」(男性・56歳)
馬鹿正直タイプも困りもの。少し考えればわかるところを、うっかりやってしまう。
「上司からの引き継ぎのとき、“それほど難しい仕事ではないから”と言われ、ついそうですねと言ってしまった。気まずくなった」(女性・44歳)
「上司が“他の部署で仕事をしたい者は正直に手を挙げろ”と言ったので自分の能力等を勘案し申し出たら“俺の下では働けないということか”と、担当先を取り上げられるなどいじめられた」(男性・45歳)
■知らないうちに根に持たれる怖さ
セクハラについては、2007年施行の雇用機会均等法改正で事業主にもセクハラ防止や対策に関する体制整備が義務づけられたこともあり、とくに大企業では教育・研修が徹底され、慎重な言動を心がけている人が多いようだ。
アンケートでも「女性の多い職場なので上司以上に注意している」(銀行勤務・男性・52歳)、「セクハラ発言はサラリーマンとして命とりになりかねないため慎重にしている」(男性・39歳)との回答が多かった。とはいえ、うっかり者はまだいる。
「子供は3人いないと非国民だよと、事情があって子供ができない人の前で言い切ってしまった」(男性・42歳)
「やせたら結婚できると女性に言い、泣かせた。女性陣から総スカン」(男性・44歳)
これらは論外としても、女性社員との接し方はとかく難しいようだ。直接の言葉でなくても、告げ口やうわさ話が悲劇をもたらすことがある。
「頑張った女子社員ひとりにだけ食事をご馳走したことでうわさを立てられ、その子も否定しないため、他の女子社員から仕事を拒否され孤立した」(男性・56歳)
「大きな取引を担当させた女性社員と食事をしながら打ち合わせをしていたが、これが苦痛と上司に告げ口され、セクハラの事情聴取を受けた」(男性・49歳)
ここに紹介した例は氷山の一角。言葉を発した瞬間に失言と気づけば、いさぎよく謝るなり、時間を置いて関係を修復することも可能だろう。だが実際には自分の知らないうちに失言となり、相手が根に持ってしまうことが多い。これこそが失言の恐ろしさだ。用心するに越したことはない。
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