スーパーマーケットの広告じゃないんです!



加藤優という子に関しては、
学校全体が無条件で歓迎してるわけじゃないんです。
現に、事が起きたら、
教育委員会の裁定に押し付けたいと、
進言して来てる人もいるわけですから。

誰ですかその先生は。

今は、その名前を言う段階ではないでしょう。

いやあの、話し合いたいんです。

坂本先生、
ひとりで抱え込むなと今、校長先生も仰ったばかりじゃありませんか。

はい。ひとりで出来るとは思っておりません。
爆弾を抱え込んだようなもんだと思っています。
だからこそ話し合いをしたいんです。

そんな時間があるとお思いですか。
それよりもですね、
その爆弾が爆発した時の事を考えておく事の方が、
私には大事なんです。

教頭先生!

何ですか坂本先生。

爆発した時はどう考える、おつもりなんですか。

被害は少ない方がよろしい。
家庭裁判所だって教育委員会だって、
これはもう教育の限界を超えた事だと言えばですね。

冗談じゃありませんよ!

坂本先生!

すいません。
しかし、教育の、限界とは、
一体どんな境界線で、何色で引かれ、
高さはどのくらいあるんですか教えてください。

だからつまり、
我々の教育現場においてですね、
もうこれはどうしようもないと判定した場合の事ですよ。

誰が、判定できるんですか。

本校の決定機関である職員会議です。

ああ、そうですか。
しかし、それはプロのやるこっちゃありませんね。ええ。
教育の限界を超えたなんてそんな他人事みたいに。
教師は教育の現場にいるんです!
教師は教育の現場にいるんです!
まして教育のプロなんです!

それで給料もらっとるんです。
それを、んな限界を超えたなんて、
んんな甘ったれた事を言って良いんでしょうか。

しかしね、家庭の問題にまでは口は出せませんよ。
そして主なる原因は家庭にあるんですから。

いえ、 いいえ!
教師は、こと教育に関しては 家庭にだって口を出して良いんです!

私はね、二学期も半ば越えた今、
現実の問題を言ってるんですよ!

校長先生、
ゆうべ、これを、繰り返し繰り返し僕は読みました。
今朝、3年の先生方にどう協力を仰ぐかという事で、
これを繰り返し読みました。
学校要覧です。
これにはこんな風に、書かれております。
生徒一人一人の生命と人権を尊重し、
それぞれの能力、適性に応じて伸ばす。
常に誠実と愛情を持って生徒に接し、
その個性と適性の発見に努め、
豊かな創造性を持った人間の育成を目指して、努力する。
桜中学の学校教育目標です。
僕は、今こそ、素朴にこの精神で取り組む他、
道は無いと思っています。

それは学校教育の理想です。

でも 理想とは絵に描いた餅じゃない筈です!
目指すべき峰に掲げられた一本の旗だと、僕は思っています。
これは、 スーパーマーケットの広告じゃないんです!
んな、山が高いからっつって、登りもしない内から、
それじゃ一体 なんのための学校ですか!
学校経営というお二人の立場は、良く分かります。
しかし、 加藤は蜜柑じゃないんです!
前に、米倉先生が言ってました。
腐った蜜柑が一個あると、箱の蜜柑がみんな腐ってしまう。
だから、腐った蜜柑は、早めに放り出す、
これが、荒谷二中の、論理です。
しかし、 人間つらい目にあって、あっちこっちぶつけてさぁ!
そら、 風通し悪くなってどっか腐っていきますよ!
でも、 人間の精神が腐り切る等という事は絶対にないんです!
はっきり言って、僕も自信がありません!
しかし、3年の先生方も、協力して下さると仰ってます。
お願いです!最後までやらせてください!

分かりました。

ありがとうございます!ははっ。

けど教頭として一言いっておきます。
問題が起きた時は、担任教師として坂本先生の評価に繋がりますからね。

その代わり、その時は、この学校要覧から、
飾りだけの文章は、文句は、取っ払って下さい。

考えておきましょう。
今度は私も、腹を括り直さなければいけないようですね。

はい。


posted by くさよ at 11:50| Comment(0) | TrackBack(0) | ???

1980年11月07日

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