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2022年05月07日
慈愛
らしいというか、付き合ってはいるのだが、なぜ五条先生のような人が
俺を見てくれるのか、理由がわからない。
大切にされている、とは思う。
これ以上にないほどに。
幼少からの付き合いで、その延長戦かとも思ったのだがそうでもなく
「愛」らしい。
いつも飄々としている五条先生が、耳まで赤くして「恵が好きだ」と言った時には
驚きを通り越して、影に逃げてしまいそうになった。
逃がさないとばかりに両肩をつかんだ五条先生の熱い手。
怖いくらい澄んだ真剣な瞳。
赤い頬と耳。
いつでも思い出せる。
そんな五条先生がよく言う言葉がある。
「恵が18歳になったら、恵を全部ちょうだい。」
笑顔で言った後、照れて少しうつむき何とも言えない口元をもにょもにょとさせて
でも、幸せそうに言う。
だから俺は、迷うことなく
「はい。」
そう、即答するのだ。
その時が本当に来るのか。
その時俺は五条先生の隣にいることができるのか。
生きているのか。
生きていられるのか、ざらりとした淀みを心にためつつ。
その澄んだ瞳を見返して誓うことはできず、閉じてしまうけれど。
できれば そう であってほしい。
俺は心の隅で願った。
タグ: 五伏