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2018年10月11日
終末期に必要 だが保険外使用
終末期に必要 だが保険外使用
第41回:終末期を支える5つの薬剤
佐々木 隆史 ( ささき たかふみ ) 氏
京都家庭医療学センター 医療生協 こうせい駅前診療所 所長
終末期を過ごす形態は、大きく分けて4種類あると思います。
入院医療では、
一般病棟か緩和ケア病棟か。
在宅医療では、
自宅か施設か。
緩和ケア病棟やDPC病棟は包括医療費なので、
呼吸困難に対するオプソ内服や口腔内分泌に対するアトロピン点眼薬など、日本では保険外使用になっているため
下記に述べるような医薬品が比較的使いやすい環境です。
一方、在宅の看取りに関しては、ケア提供者の経験や熱意が大きく影響します。
家族にとっては初めての体験ばかりなので、現状に対する不安よりも、
見えない今後に対する不安が大きいことが多いです。
こうした点で、実際に身内を自宅で看取ったことのある家族は、大きな力になります。
これからの時代は、政策的に施設看取りが求められている印象です。
非DPC病棟や在宅医療でも、終末期医療に対する薬が
「保険外使用だから」と使いにくい状況が改善されることを望みます。
以下、Am Fam Physician.3月15日号1)より
終末期に関わる症状は、
急性症状を治療するよりも予防するほうが容易であることが多いため、
症状を予防する対策を立てるべきである。
嚥下機能が低下してきたら、
薬剤は舌下や皮下、直腸坐薬に切り替える。
薬は少量から開始し、目的の効果が出るまで増量すべきである。
適切な症状コントロールにより、終末期を安静にかつ尊厳を持って、快適に過ごすことができる。
疼痛は、最期の1ヵ月頃に50%程度の人に現れる。
身体的な痛みだけでなく、精神的、社会的、スピリチュアル面も考慮に入れるべきである。
オピオイドは終末期の呼吸困難感や痛みを緩和に用いられる
(Evidence rating B:オピオイドを呼吸困難に使用すべき)。
せん妄は治療しうる病態により起こることもあり、その病態を特定して治療可能なら治療すべきである。
せん妄に対しては、ハロペリドールやリスペリドンが効果的である(Evidence rating C)。
嘔気・嘔吐に対しては、原因に即した薬物治療が行われるべきである。
予期できる嘔気に対してはベンゾジアゼピンが効果的で、
とくにオンダンセトロンは化学療法や放射線治療に伴う嘔気に対し効果的であり、
消化管通過障害による嘔気にはデキサメサゾンやハロペリドールを使用すべき
(Evidence rating B)であるが、
オクトレオチド酢酸塩の効果は限定的である。
便秘は痛みや吐き気、不安感、せん妄を引き起こすので、
便秘の予防は終末期ケアのとても大切な部分であり、
緩下剤を大腸刺激性下剤と併用して使うのが望ましい。
熱を下げることは、患者の要望とケアの目標に基づいて行うべきである。
口腔内の唾液分泌があると、呼吸する時に呼吸音が大きくなることがあり、死期喘鳴といわれる終末期によくみられる症状である。
このことを事前に伝えておくと、家族や介護者の不安は軽減する。
また、抗コリン薬は口腔内の分泌を緩やかにするといわれているが、質の高い研究はない。
アトロピン点眼薬は、口腔気道分泌液を抑えることができる(Evidence rating C)。
終末期を支える代表的な5つの薬剤を以下に挙げる。
焦燥感や嘔気を抑えるハロペリドールの舌下
熱を下げるアセトアミノフェンの坐薬
不安を抑えるロラゼパムの舌下
痛みや呼吸困難を抑えるモルヒネの舌下
口腔内分泌を抑えるアトロピン点眼薬の舌下
※Evidence rating B=inconsistent or limited quality patient-oriented evidence、Evidence rating C=consensus, disease-oriented evidence, usual practice, expert opinion, or case series.
※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。
参考文献
1) Albert RH. “End-of-Life Care: Managing Common Symptoms” Am Fam Physician. 2017 Mar 15;95:356-361.
第41回:終末期を支える5つの薬剤
佐々木 隆史 ( ささき たかふみ ) 氏
京都家庭医療学センター 医療生協 こうせい駅前診療所 所長
終末期を過ごす形態は、大きく分けて4種類あると思います。
入院医療では、
一般病棟か緩和ケア病棟か。
在宅医療では、
自宅か施設か。
緩和ケア病棟やDPC病棟は包括医療費なので、
呼吸困難に対するオプソ内服や口腔内分泌に対するアトロピン点眼薬など、日本では保険外使用になっているため
下記に述べるような医薬品が比較的使いやすい環境です。
一方、在宅の看取りに関しては、ケア提供者の経験や熱意が大きく影響します。
家族にとっては初めての体験ばかりなので、現状に対する不安よりも、
見えない今後に対する不安が大きいことが多いです。
こうした点で、実際に身内を自宅で看取ったことのある家族は、大きな力になります。
これからの時代は、政策的に施設看取りが求められている印象です。
非DPC病棟や在宅医療でも、終末期医療に対する薬が
「保険外使用だから」と使いにくい状況が改善されることを望みます。
以下、Am Fam Physician.3月15日号1)より
終末期に関わる症状は、
急性症状を治療するよりも予防するほうが容易であることが多いため、
症状を予防する対策を立てるべきである。
嚥下機能が低下してきたら、
薬剤は舌下や皮下、直腸坐薬に切り替える。
薬は少量から開始し、目的の効果が出るまで増量すべきである。
適切な症状コントロールにより、終末期を安静にかつ尊厳を持って、快適に過ごすことができる。
疼痛は、最期の1ヵ月頃に50%程度の人に現れる。
身体的な痛みだけでなく、精神的、社会的、スピリチュアル面も考慮に入れるべきである。
オピオイドは終末期の呼吸困難感や痛みを緩和に用いられる
(Evidence rating B:オピオイドを呼吸困難に使用すべき)。
せん妄は治療しうる病態により起こることもあり、その病態を特定して治療可能なら治療すべきである。
せん妄に対しては、ハロペリドールやリスペリドンが効果的である(Evidence rating C)。
嘔気・嘔吐に対しては、原因に即した薬物治療が行われるべきである。
予期できる嘔気に対してはベンゾジアゼピンが効果的で、
とくにオンダンセトロンは化学療法や放射線治療に伴う嘔気に対し効果的であり、
消化管通過障害による嘔気にはデキサメサゾンやハロペリドールを使用すべき
(Evidence rating B)であるが、
オクトレオチド酢酸塩の効果は限定的である。
便秘は痛みや吐き気、不安感、せん妄を引き起こすので、
便秘の予防は終末期ケアのとても大切な部分であり、
緩下剤を大腸刺激性下剤と併用して使うのが望ましい。
熱を下げることは、患者の要望とケアの目標に基づいて行うべきである。
口腔内の唾液分泌があると、呼吸する時に呼吸音が大きくなることがあり、死期喘鳴といわれる終末期によくみられる症状である。
このことを事前に伝えておくと、家族や介護者の不安は軽減する。
また、抗コリン薬は口腔内の分泌を緩やかにするといわれているが、質の高い研究はない。
アトロピン点眼薬は、口腔気道分泌液を抑えることができる(Evidence rating C)。
終末期を支える代表的な5つの薬剤を以下に挙げる。
焦燥感や嘔気を抑えるハロペリドールの舌下
熱を下げるアセトアミノフェンの坐薬
不安を抑えるロラゼパムの舌下
痛みや呼吸困難を抑えるモルヒネの舌下
口腔内分泌を抑えるアトロピン点眼薬の舌下
※Evidence rating B=inconsistent or limited quality patient-oriented evidence、Evidence rating C=consensus, disease-oriented evidence, usual practice, expert opinion, or case series.
※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。
参考文献
1) Albert RH. “End-of-Life Care: Managing Common Symptoms” Am Fam Physician. 2017 Mar 15;95:356-361.