【パリ賀有勇】フランス南部のリゾート地・ニースで14日午後10時半(日本時間15日午前5時半)ごろ、フランス革命記念日を祝う花火の見物に集まっていた群衆にトラック1台が突っ込んだ。カズヌーブ内相によると、子どもを含む84人が死亡し、18人が重傷を負った。運転手は警察当局に射殺された。地元メディアは、車内からニース在住でチュニジア出身の31歳の男の身分証が見つかったと報じた。犯行声明などは出ていないが、バルス首相はツイッターで「テロ攻撃を受けた」としてテロと断定。仏当局の対テロ部門が捜査に着手した。
オランド大統領は15日未明に声明を発表。「故意に多数を殺傷しており、テロの性質を帯びていることを否定できない。自由の象徴である日にフランスが攻撃を受けた」と述べ、国民に連帯を呼びかけた。また、昨年11月のパリ同時多発テロを受けて出していた非常事態宣言をさらに3カ月延長すると明らかにした。
現場はニース中心部に近い地中海沿いの大通り「プロムナード・デザングレ(英国人の遊歩道)」。AFP通信などによると、トラックは相当なスピードでジグザグ走行しながら約2キロにわたって群衆をなぎ倒した。負傷者も多数出ている。目撃証言によると、運転手は発砲もしていた。車内からは銃や爆発物、手投げ弾が見つかった。車内から身分証が見つかった男はフランスとチュニジアの二重国籍だという。実行犯は1人だったとみられる。
オランド大統領は15日に大統領府で緊急の国防会議を開く。会議後、ニースの現場を訪れる予定だ。事件の背景は明らかでないが、大統領は「仏全土がイスラム過激派によるテロの脅威にさらされている」と強調。「シリアやイラクでの活動を強化する」と述べ、過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦に注力する考えを示唆した。
オバマ米大統領は14日、「罪のない民間人が数十人死傷した。テロ攻撃と見られる行為を最も強い言葉で非難する」との声明を発表。トゥスク欧州理事会常任議長(EU大統領)は「欧州は仏国民・政府と団結し、暴力と憎悪に立ち向かう」と述べた。英国のメイ首相も首相官邸の報道官を通じ「私たちの思いは、フランスの祝賀の日に起きた惨事に見舞われた人とともにある」との声明を出した。
フランスでは昨年11月、パリ中心部と郊外で劇場や飲食店を標的とした同時多発テロが起き130人が死亡。ISが犯行声明を出した。フランスではこの事件以降、非常事態宣言が出されていたが、オランド大統領は14日に今月末での解除の意向を明らかにしたばかりだった。
ニースは地中海に面した世界的に人気のある保養地。多数の観光客らが巻き込まれた可能性がある。菅義偉官房長官は15日午前の記者会見で、「現時点で邦人の被害は確認されていない」と述べた。政府は在マルセイユ総領事館に現地連絡室を設置し、領事をニースに派遣して情報収集している。
…フランス革命記念日…
パリ市民が1789年7月14日、圧政の象徴となっていたバスチーユ監獄を襲撃・破壊し、フランス革命の発端となったことに由来する。革命は絶対王制を廃止して共和制を確立。記念日は国民にとって「自由・平等・博愛」を祝う特別な祝日となっている。パレードなどの祝賀行事のほか、各地でダンスパーティーや花火大会などさまざまなイベントが催される。日本では「パリ祭」とも呼ばれる。
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