ニュートン別冊 ゼロからわかる心理学 から
監修 横田正夫 2019年3月5日発行 ニュートンプレス
人の性格はどうやって決まる?
と言われたことはありますか?
人間の性格はいつ、どのようにして決まるのでしょう。
性格を作る要因としては昔から様々な説が唱えられてきました。
大まかには、遺伝によって生まれながらに決まっているという「生得説」と、
生まれた後に過ごす環境によって性格が形作られるという「経験説」に分かれます。
テャールズ・ダーウィンが提唱した進化論の影響を受けて、
19世紀末から20世紀はじめにかけては、
人間の性格もまた遺伝するという生得説的な考え方が強く支持されました。
このような説を唱えた科学者には、
ダーウィンのいとこであるイギリスのフランシス・ゴルトン(1822〜1911)などがいます。
ゴルトンは、「優れた遺伝子」だけを後世に残すことは目指す「優生学」の創始者でもありました。
彼の学問は、ナチスによる障害者やユダヤ人の大量虐殺を招いた一因ともなったため、
彼が支持した生得説も第二次世界大戦後には下火となり、
経験説が優勢になりました。
現在では、生得説も経験説もそれだけでは「性格の元」を説明することはできず、
性格は遺伝と環境の両方の影響を受けて作られるという
「相互作用説」が広く受け入れられています。
広島大学大学院総合科学研究科の杉浦義典(すぎうら よしのり)准教授によれば、
最近の研究では性格のおよそ50%は環境的要因で作られるという結論になっているといいます。
性格心理学では、このような「性格の成り立ち」を研究するために、
双子を観察する手法がしばしば行われています。
一卵性双生児は1個の受精卵が細胞分裂の途中で2人の胎児として育った双子で、
完全に同じ遺伝子を持っています。
これに対して二卵性双生児は2個の受精卵が母体内で同時に育った双子で、
その遺伝子は普通の兄弟と同じ程度にしか似ていません。
同じ家庭で育った双子であれば環境の影響はほぼ同じと考えられるので、
性格の差を一卵性双生児と二卵性双生児とで比べれば、
性格に遺伝が及ぼす影響だけを抜き出して見積もることができるのです。
さまざまな身体形質、認知能力などに関する双生児相関の表
「進化と人間行動」より (Trivers,1985邦訳p120;Promin,1990,邦訳,p63)
共有環境と非共有環境は追加記入し遺伝率の高い順に並び替えかつABO式血液型を追加
遺伝率が1.0ということは100%遺伝で決定することです。
心理学では、「性格」を指す用語として「人格」、「パーソナリティ」などの
単語も使われる場合があります。
それぞれの単語の意味づけや使い方は研究者によってまちまちで、
統一されているわけではありません。
本章では総称として「性格」という単語を使うことにします。