うつ病や睡眠障害などの
「こころの病気」が社会に広まってきていると言われています。
わが国の精神疾患の患者数は、増加傾向にあります。
特に、気分障害や神経症障害(不安障害、強迫性障害)など、
ストレスが原因で発症する精神疾患が増えています。
昔は、都心部から離れた限られた場所に
精神科病院を作り、
患者はそこに入院させるという方針が積極的に取られていました。
しかし、患者の病気を直して社会復帰させるという
長期的な目標を考えた時、
患者を隔離しておくことは
良い方向には働きません。
平成16年、わが国では、
患者が地元で暮らし、
総合病院や診療所で通院治療を受けながら、
病気を直していけるように
対策を変換しました。
具体的には、医師が診療所などを開業しやすくなるよう、
診療報酬を改定したのです。
これにより、これまで精神科の病院がなかった
都心部や患者の地元にも診療所ができ、
患者が通院しやすい環境ができました。
こうした流れの中で、
特に気分障害、神経症性障害などの
入院患者数の割合は、
通院患者数の割合よりも
ずっと少なくなりました。
精神科、精神神経科、心療内科、神経内科(脳神経内科)の違い
『精神科・精神神経科』
統合失調症(精神分裂病)、認知症、てんかんや、うつ病、神経症性障害などの病気を診ています。
『神経内科(脳神経内科)』
パーキンソン病や脳梗塞、認知症、てんかん、手足の麻痺やふるえなど、
脳や脊髄、神経、筋肉の病気を診ます。
脳神経外科が、脳神経疾患をメスで治そうとする(観血的治療)科なら、
神経内科(脳神経内科)は薬で治そうとする科です。
『心療内科』
本来は「こころ」が原因で「からだ」に症状を引き起こす
いわゆる「心身症」が主な治療対象です。
精神とこころを扱う診療科として、一番新しくできた診療科です。
九州大学の池見酉次郎教授が日本に戦後、導入しました。
医学部に「心療内科」が講座としてある医学部は少なく、
心身症を扱う科が「心療内科」だという認識が世間に広がり、
精神科・精神神経科に入局した先生が、
開業する際に『心療内科』の診療科名を掲げることが多くなってきました。
クリニック、病院、センターの違い
精神科診療所(クリニック)
入院用のベッドを持たないところ
(19床以下のベッドを備えているところが例外的にあります)
うつ病、不安障害、認知症、統合失調症など、精神科の様々な病気を診ています
精神科病院
20床以上のベッドを持っており、入院できるところです。
病院によっては、救急医療(普通の救急ではなく、警察がらみのことが多いです)や
子供・依存症などの専門的な医療を行っているところもあります。
総合的な病院の精神科
たくさんの診療科をもつ総合的な病院で、精神科の診療も行っています。
体と精神の病気を一緒に診てもらいたい場合などに役立ちます。
保健所(保健センター)
各地域にある保健所(保健センター)は、
こころの問題を含め、
さまざまな病気や生活の問題の相談に乗ってくれます。
精神科の受診が必要なのかどうかわからないときや、
患者の家族や知人が相談したいときなどに気軽に相談できます。
精神保健福祉センター
こころの問題に関わる専門的な相談を受け付けています。
「アルコールや薬物依存」、「引きこもり」、「発達障害」、
「認知症」など、専門的な相談にも対応できます。
「こころの健康センター」などと呼ばれている場合もあります。
各都道府県と政令指定都市に1ヶ所以上設置されています。
【参考文献】
ニュートン別冊 精神科医が語る 精神の病気
心の病気の原因と対策が、この1冊でよくわかる!
監修 仮屋暢聡 株式会社ニュートンプレス 2019年4月5日発行