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2019年05月19日
4.基底核疾患のメカニズム?@
最終的には、心の働きの脳内メカニス?ムについて述べていきます。
4.基底核疾患のメカニズム?@
と筋緊張低下・運動増加症Hypotonus-Hyperkinetic syndromes(ハンチントン舞踏病やバリス
ムス)に大別される.
これまでの説明をもとに,
主にパーキンソン病の病態を考察してみよう.
パーキンソン病では,黒質緻密部のドーパミンニューロンが変性・脱落する.
線条体におけるドーパミンの減少は,
直接路の活動低下と
間接路の亢進を誘発し,
基底核からのGABA作
動性出力が増加する[14, 16, 34].
その結果,次に示す様々な運動機能障害や,認知,学習などの高次脳機能,
さらに精神活動や睡眠の障害などが誘発されると考えられる[35].
(1)安静時振戦(Resting tremor)
振戦は4〜6Hzの周波数で安静時に出現することが多い.
手指の振戦は丸薬を丸める動作に似ておりPill rollingと呼ばれる.
振戦に同期して発射するニューロンが
パーキンソン病患者の視床Vim核やパーキンソン病モデル動物の淡蒼球,視床下核で記録されている[36, 37].
ドーパミン減少に伴う基底核内神経回路の活動異常が視床下核と淡蒼球外節での発振現象を誘発し,
その出力が視床—大脳投射系〜皮質脊髄路系や脳幹からの下行路を介して手足の振るえを誘発するのであろ
う.
(2)無動(Akinesia)
無動症はパーキンソン病に見られる随意運動障害の総称として使用される傾向がある.
類語に寡動(Hypokinesia)や動作緩慢(Bradykinesia)がある.
これらは基底核からの抑制出力の亢進により
運動系ループの活動が低下するために誘発される.
動作の開始困難(無動)と動作緩慢は,各々運動準備と運動遂行に関連するサブループの異常により誘発される可能性がある.
前頭前野ループや辺縁系ループの活動低下に伴う意思発動の減少や抑うつ傾向も無動症の一要因である.
仮面様顔貌Mask-like faceや小字症Micrographiaも無動を反映する症状と考えられている.
パーキンソン病では,すくみ足,小刻歩行,歩行速度の減少,歩幅の減少などの歩行障害が高率に出現する[38, 39].
一方,床に横縞模様をつけると患者はスムーズに歩くことができる.
これを逆説性歩行(Kinesie Paradoxale)と呼び,その際外側運動前野の血流が有意に増加することがわ
かった[40].
即ち,歩行障害には運動プログラミングの異常があり,特定の視覚入力が外側運動前野を賦活することにより歩行のプログラムが駆動されて歩き易くなると推測される.
また,ネコを用いた研究により,黒質網様部から歩行誘発領域への抑制出力の増加により,
歩行開始の遅延,歩行速度の減少,歩幅の減少などパーキンソン病と類似する歩行パターンが誘発された[18].
従って歩行障害は,大脳皮質─基底核ループと基底核─脳幹系の双方の異常により誘発されると考え
られる.
【引用文献】
大脳基底核の機能;パーキンソン病との関連において
旭川医科大学 生理学第二講座
高草木 薫
参考文献
14.高草木薫,斉藤和也,幅口竜也 & 杉本純子:大脳基底核による歩行と筋緊張の制御.脳の科学 23 ; 1049
— 1054, 2001.
16.Delong MR : The basal ganglia. In : Principles of neural science, 4th edition, Ed. Kandel ER, Schwartz JH
& Jessell TM, McGraw-Hill Press, Heath Professions Division pp 853-867, 2000.
18.Takakusaki K, Habaguchi T, Ohtinata-Sugimoto J,
Saitoh K & Sakamoto T : Basal ganglia efferents to the brainstem centers controlling postural muscle tone and locomotion ; A new concept for understanding motor disorders in basal ganglia dysfunction. Neurosci : in press.
34.Wichmann T & Delong MR : Functional and pathological models of the basal ganglia Curr Opin Neurobiol 6 : 751— 758, 1996.
35.Brooks DJ : The role of the basal ganglia in motor control : contribution from PET. J Neurol Sci 128 : 1—
13, 1995.
36.Raz A, Vaadia E & Bergman H : Firing patterns and correlations of spontaneous discharge of pallidal neurons in the normal and tremulous 1-methyl-4-phenyl1,2,3,6-tetrahydropyrine vervet model of parkinsonism. J Neurosci 20 : 8859— 8871, 2000.
37.Bergman H, Wichmann T, Karmon B & Delong MR : The primate subthalamic nucleus. II. Neuronal activity in the MPTP model of parkinsonism. J Neurophysiol 72 : 507— 520, 1994.
38.Morris ME, Iansek R, Matyas TA & Summers J : The pathogenesis of gait hypokinesia in Parkinson’s disease. Brain 117 : 1169— 1181, 1994.
39.Pahapill PA & Lozano AM : The pedunculopontine nucleus and Parkinson’s disease. Brain 123 : 1767 —
1783, 2000.
40.Hanakawa T, Katsumi Y, Fukuyama H, Honda M, Hayashi T, Kimura J & Shibasaki H : Mechanisms of
underlying gait disturbance in Parkinson’s disease : a single photon emission computed tomography study.
Bain 122 : 1271— 1281, 1999.
4.基底核疾患のメカニズム?@
と筋緊張低下・運動増加症Hypotonus-Hyperkinetic syndromes(ハンチントン舞踏病やバリス
ムス)に大別される.
これまでの説明をもとに,
主にパーキンソン病の病態を考察してみよう.
パーキンソン病では,黒質緻密部のドーパミンニューロンが変性・脱落する.
線条体におけるドーパミンの減少は,
直接路の活動低下と
間接路の亢進を誘発し,
基底核からのGABA作
動性出力が増加する[14, 16, 34].
その結果,次に示す様々な運動機能障害や,認知,学習などの高次脳機能,
さらに精神活動や睡眠の障害などが誘発されると考えられる[35].
(1)安静時振戦(Resting tremor)
振戦は4〜6Hzの周波数で安静時に出現することが多い.
手指の振戦は丸薬を丸める動作に似ておりPill rollingと呼ばれる.
振戦に同期して発射するニューロンが
パーキンソン病患者の視床Vim核やパーキンソン病モデル動物の淡蒼球,視床下核で記録されている[36, 37].
ドーパミン減少に伴う基底核内神経回路の活動異常が視床下核と淡蒼球外節での発振現象を誘発し,
その出力が視床—大脳投射系〜皮質脊髄路系や脳幹からの下行路を介して手足の振るえを誘発するのであろ
う.
(2)無動(Akinesia)
無動症はパーキンソン病に見られる随意運動障害の総称として使用される傾向がある.
類語に寡動(Hypokinesia)や動作緩慢(Bradykinesia)がある.
これらは基底核からの抑制出力の亢進により
運動系ループの活動が低下するために誘発される.
動作の開始困難(無動)と動作緩慢は,各々運動準備と運動遂行に関連するサブループの異常により誘発される可能性がある.
前頭前野ループや辺縁系ループの活動低下に伴う意思発動の減少や抑うつ傾向も無動症の一要因である.
仮面様顔貌Mask-like faceや小字症Micrographiaも無動を反映する症状と考えられている.
パーキンソン病では,すくみ足,小刻歩行,歩行速度の減少,歩幅の減少などの歩行障害が高率に出現する[38, 39].
一方,床に横縞模様をつけると患者はスムーズに歩くことができる.
これを逆説性歩行(Kinesie Paradoxale)と呼び,その際外側運動前野の血流が有意に増加することがわ
かった[40].
即ち,歩行障害には運動プログラミングの異常があり,特定の視覚入力が外側運動前野を賦活することにより歩行のプログラムが駆動されて歩き易くなると推測される.
また,ネコを用いた研究により,黒質網様部から歩行誘発領域への抑制出力の増加により,
歩行開始の遅延,歩行速度の減少,歩幅の減少などパーキンソン病と類似する歩行パターンが誘発された[18].
従って歩行障害は,大脳皮質─基底核ループと基底核─脳幹系の双方の異常により誘発されると考え
られる.
【引用文献】
大脳基底核の機能;パーキンソン病との関連において
旭川医科大学 生理学第二講座
高草木 薫
参考文献
14.高草木薫,斉藤和也,幅口竜也 & 杉本純子:大脳基底核による歩行と筋緊張の制御.脳の科学 23 ; 1049
— 1054, 2001.
16.Delong MR : The basal ganglia. In : Principles of neural science, 4th edition, Ed. Kandel ER, Schwartz JH
& Jessell TM, McGraw-Hill Press, Heath Professions Division pp 853-867, 2000.
18.Takakusaki K, Habaguchi T, Ohtinata-Sugimoto J,
Saitoh K & Sakamoto T : Basal ganglia efferents to the brainstem centers controlling postural muscle tone and locomotion ; A new concept for understanding motor disorders in basal ganglia dysfunction. Neurosci : in press.
34.Wichmann T & Delong MR : Functional and pathological models of the basal ganglia Curr Opin Neurobiol 6 : 751— 758, 1996.
35.Brooks DJ : The role of the basal ganglia in motor control : contribution from PET. J Neurol Sci 128 : 1—
13, 1995.
36.Raz A, Vaadia E & Bergman H : Firing patterns and correlations of spontaneous discharge of pallidal neurons in the normal and tremulous 1-methyl-4-phenyl1,2,3,6-tetrahydropyrine vervet model of parkinsonism. J Neurosci 20 : 8859— 8871, 2000.
37.Bergman H, Wichmann T, Karmon B & Delong MR : The primate subthalamic nucleus. II. Neuronal activity in the MPTP model of parkinsonism. J Neurophysiol 72 : 507— 520, 1994.
38.Morris ME, Iansek R, Matyas TA & Summers J : The pathogenesis of gait hypokinesia in Parkinson’s disease. Brain 117 : 1169— 1181, 1994.
39.Pahapill PA & Lozano AM : The pedunculopontine nucleus and Parkinson’s disease. Brain 123 : 1767 —
1783, 2000.
40.Hanakawa T, Katsumi Y, Fukuyama H, Honda M, Hayashi T, Kimura J & Shibasaki H : Mechanisms of
underlying gait disturbance in Parkinson’s disease : a single photon emission computed tomography study.
Bain 122 : 1271— 1281, 1999.