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2019年05月27日

脳脊髄液ってご存知ですか?

最終的には、心の働きの脳内メカニス?ムについて述べていきます。

脳脊髄液ってご存知ですか?

脳脊髄液の産生循環吸収.jpg

成人脳では,脳脊髄液
140 ml に対して脳間質液は 280 ml も存在する.

脳間質液の組織動態は,近年,少しずつ解明され,病的状態における意義も考察されるようになった 1)2).
脳には,リンパ組織はないが,細胞間質液は活発に産生され,
脳病変の多くに炎症や免疫反応が関与している.

このような事実から,間質液すなわちリンパ液の排液機構が,
他臓器とことなるシステムで存在すると考えられる.

そして,以下に記述する脳動脈周囲の血管周囲腔(perivascular space)が
機能的にリンパ管に相当すると考えられている 1).

脳毛細血管内皮細胞の基底膜と星状膠細胞の間には,血管周皮細胞が散在し,
細動脈レベルになると中膜平滑筋細胞に置換される.

星状膠細胞との間には柔膜(leptomeninges)が介在して
血管内皮細胞基底膜との間に血管周囲腔を形成する 3).

血管周囲腔には,厚さ約 150 nm の基底膜が豊富にあり,
灰白質細胞間隙が約 20 nm,白質線維間隙が約 80 nm であることを考慮すると,
脳代謝産物をふくんだ間質液の流通路としては,充分に機能すると考えられる.
脳表では,軟膜が柔膜に融合し,くも膜下腔では,動脈の外膜を柔膜が被っている 3).

血管周囲腔には,骨髄由来マクロファージに属する血管周囲細胞(perivascular cell)が常在し,
恒常性の維持や免疫担当細胞の役割をする可能性が示唆されている 4).

脳灰白質にアルブミンを微量低速注入すると,
毛細血管基底膜から動脈の血管周囲腔に選択的に分布し,
最終的には頸部リンパ節に到達する 2).

したがって,脳間質液がリンパ節に排出されるという点で,
他臓器のリンパ排液と機能的に相同であり,
脳リンパ排液(brain lymphatic drainage)という概念が成立する 1).

脳リンパ排液の方向と駆動力について考察する際,以下の事実がある.
?@脳実質内にトレーサーを注入すると脳脊髄液中よりも,脳底部の動脈周囲により多く集積する.
?Aトレーサー分子量の大きさに関係なく,同じ速度で頸部リンパ節に到達する 2).
?Bリンパ流は,心拍動がないと発生せず,かつ,血圧と心拍数の増加に依存して早くなる.
?Cヒトの βアミロイドタンパク(Aβ)は,毛細血管から脳表の動脈周囲腔に選択的に蓄積し,静脈周囲には存在しない 1).
?D脳動脈の拍動流および血管壁の拍動性収縮は,細動脈にいたると減衰し,毛細血管から静脈側の血流は定速流である.

以上の事より,リンパ流の方向は,血流方向とは逆であると推定されている 1).



吸収路は,脳表の毛細血管,頭蓋内くも膜顆粒,脳神経や脊髄神経周囲静脈洞のくも膜顆粒,嗅神経に沿って頸部リンパ節にいたるリンパ経路などがある.

(参考文献)
髄液と間質液の吸収機序:近年の知見に基づいた新しい仮説(臨床神経 2014;54:1187-1189)
木多 眞也 福井県立病院脳神経外科
文  献
1)Weller RO, Djuanda E, Yow HY, et al. Lymphatic drainage of the brain and the pathophysiology of neurological disease. Acta Neuropathol 2009;117:1-14.
2)Cserr HF, Knopf PM. Cervical lymphatics, the blood-brain barrier and the immunoreactivity of the brain: A new view. Immunol Today 1992;13:507-512.
3)Zhang ET, Inman CB, Weller RO. Interrelationships of the pia mater and the perivascular (Virchow-Robin) spaces in the human cerebrum. J Anat 1990;170:111-123.
4)Kida S, Steart PV, Zhang ET, et al. Perivascular cells act as scavengers in the cerebral perivascular spaces and remain distinct from pericytes, microglia and macrophages. Acta Neuropathol 1993;85:646-652.
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タナカマツヘイ
総合診療科 医学博士 元外科学会専門医指導医、元消化器外科学会専門医指導医、元消化器外科化学療法認定医、元消化器内視鏡学会専門医、日本医師会産業医、病理学会剖検医
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