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2019年07月01日

子育てをする母親が抱える心の問題とは

最終的には、心の働きの脳内メカニス?ムについて述べていきます。

ニュートン別冊 ゼロからわかる心理学 知れば知るほど面白い!心と行動の科学  から
 監修 横田正夫 2019年3月5日発行 ニュートンプレス

発達の心理学


子育てをする母親が抱える心の問題とは


精神的にも非常に不安定になりやすくなります。

妊娠した女性は約10ヶ月の間に、
つわりや様々な変調を経験しながら出産へと至ります。

そして出産後は体調が万全でないまま、
24時間乳児の世話をすることになります。

また仕事を休み、
家にいる時間が長くなるなど
社会との関わり方が大きく変わるため、
特に産後は孤独感を抱えやすくなります。

以前は、母親になることが大変なのは当たり前であり、
弱音を履くものではないという風潮がありました。

そのため、出産前後の母親のメンタルケアについては
あまり注意が払われてこなかったと言えます。

しかし「産後うつ」になる女性は、
先進国では10〜15%にのぼることが明らかになっています。
これは一般的女性がうつになるよりも高い割合です。

また産後うつ以外にも、
「双極性障害(躁うつ病)」や
「不安障害」、
「統合失調症」
などになることもあります。

さらに、産前の女性は定期的に健診に通うこともあり、
相談相手が見つからず行きづまってしまうということは少ないと
考えられるものの、
「産前うつ」になる人は
産後うつにより多いのではないかと考えられています。

また、産前うつになった場合は、
産後うつにもなるリスクが高いとされています。

なお、「マタニティーブルー」と呼ばれる現象はうつとは区別されています。

マタニティーブルーは一般的に産後数日から1週間の間に現れ、
不安や緊張感、
不眠、
食欲不振、
わけもなく涙が出る
といった症状を示します。

日本では出産後の女性の約25%、
アメリカでは約60%がマタニティーブルーになるというデータもあります。

突然の変化のため、
本人も周りも動揺するかもしれませんが、
たいてい数日で終わり、
産後の生活に大きな支障をきたすことはありません。

詳しい理由はわかっていませんが、
出産後のホルモンバランスが急激に変化するため
とも言われます。

子供が可愛く思えないと悩む人も

また、育児において子供が可愛く思えないという
悩みを持つ人がいることも明らかになっています。

「以前は抑うつ的になっているため、
そう感じやすいと考えられていましたが、
実はそうでない可能性もあります」
と名古屋大学心の発達支援研究実践センターの
金子一志(かねこ ひとし)教授は言います。

親と子供の絆は、
基本的のお互いの働きかけによって
強まっていくと考えられます。

発達心理学では、
幼児期までの子供と養育者との間に
形成される情緒的な結びつきを
「愛着」と言います。

そして、子供から養育者に働きかける愛着行動は
「アタッチメント」
と呼ばれています。

親に対して微笑みかけたり、
危険を感じると泣いて親を呼んだりするものが
それに当たります。

一方、親が子供にもつ愛着は
「ボンディング」
と呼ばれます。

親が子供を可愛く思えない状態は
ボンディング障害と呼ばれ、うつとは区別されます。

ボンディング障害があると、
親子の絆を深めることができず、
また将来虐待などのつながる可能性もあります。

絆づくりは、親と子供の相互作用によって出来上がるものなので、
子供の気質にも左右されることがあります。
いつもニコニコしている子供や
素直にアタッチメントの行動を取らない子供、
気むずかしい子供など、
子供の性格は様々です。

互いの働きかけがうまく噛み合わなければ、
絆づくりに支障をきたす要因になることもありえます。

「子育てにまつわる不安があったとしても
『生まれれば何とかなる』言われます。
これは基本的には間違っていません。
ですが大変さの中身は
親子のよって様々です。
支援が必要かどうかは個別に判断していく必要があります
(金子教授)。

なお、母親の胸元で新生児と直接肌を触れ合わせる
「早期母子接触(カンガルーケア) カンカ?ルーケア.jpg

が出産現場で広がっています。

これは、母親の産後うつの防止に良いことがわかっています。
新生児と直接触れ合うことで、
ホルモンの一種である
オキシトシン
が放出されることにより、
母親のストレスが低下するためではないか
と考えられています。

この早期母子接触は、
ボンディング障害の予防にも効果があるとみられています。

なお出生直後の新生児は新しい環境に慣れる最中のため体調が不安定です。
また母親も痛みや疲労で注意力が下がっています。

そのため安全と判断された場合に飲み実施し、
またその際は見守りの体制を整えることが大切です。

出産前から支援ルートとつながることが大切

出産後の女性は的規定な診察もなくなり、
社会との接点が少なくなりがちです。

そのため、精神的な問題が発生しても、
見つけることが難しくなります。
しかしそこで放置しておくと、
ますます悪化してしまわないとも限りません。

そのため、出産前からの切れ目のない支援が重要になります。
そこで、妊娠、出産から子育てまで
に関することをまとめて相談できる
「子育て世代包括支援センター」
が各地に作られるなど、
行政の取り組みが進められています。

日本では妊娠がわかった時点で
妊娠届けを提出するため、
出産前の女性は相談窓口を知ることができ、
また保健師や助産師による出産後の全ての母親への
訪問も行われることから、
比較的支援しやすい状況だといいます。

課題としては、自治体ごとの取り組みの差をなくすことや、
サポート側がより多様な状況に対応できるような技術を蓄積することだといいます。

近年は母親の置かれる状況も多様化しています。
低出生体重児(出産時に2500g未満)の増加や
出産年齢の上昇、
不妊治療、
障害を抱えながらの出産
も増えており、悩みも一様ではありません。

一方で核家族化や近所づきあいの減少などにより、
相談する相手が身近にいないことも
問題になっています。

また父親の育児参加も増えつつあることから、
父親の産後うつについても研究が始まっているところです。

出産は喜ばしい出来事ですが、
精神的に不安定になりやすい時期でもあります。

誰でも産後うつなどになる可能性があることや、
精神的な不調が生じても相談できる窓口があることを知っておくことで、
妊娠や子育ての期間を安心して過ごすことができるでしょう。

また、親が心身の健康を保ってこそ
子供の世話もできると考え、
大変な時は周りの人に頼り、
家事代行などのサービスも柔軟に利用したいものです。

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タナカマツヘイ
総合診療科 医学博士 元外科学会専門医指導医、元消化器外科学会専門医指導医、元消化器外科化学療法認定医、元消化器内視鏡学会専門医、日本医師会産業医、病理学会剖検医
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