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2022年09月29日

私だけの特捜最前線→54「撃つ女!〜サイドストーリーが本編になっていく演出の見事さ」

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第309話「撃つ女!」は、裁判所の前で被告の男を拳銃で撃ち殺す女性(島かおり)と、それを止めようとして間に合わなかったおやっさんこと船村刑事(大滝秀治)という、衝撃のシーンで始まります。

倒置法を用いることで強烈なインパクトを与え、視聴者に「なぜ、この女性が殺人に及んだのか」「女性がどうやって拳銃を手に入れたのか」という理由を、ドラマの中でたどってもらおうとの演出です。

偶然、拳銃を手に入れた女

警官が拳銃を奪われるという事件が発生し、容疑者と思われる男をマークするため、特命課はマンションを張り込みます。男の部屋の隣に引っ越してきたのが女性で、船村は捜査への協力を依頼するのです。

女性は、事件で使われる拳銃に異様な関心を持っており、とくに残りの弾数をしきりに気にしていました。船村は次第に、女性に対して違和感を覚えますが、事件と直接関係がないため、深追いはしませんでした。

やがて犯人は、部屋に戻ってきたところを逮捕されますが、拳銃は持っていません。船村の違和感は、次第に「嫌な予感」に変わり、さらに女性の身辺を調べていくうちに「確信」へと変わっていくのです。

女性は、犯人が拳銃を隠すところを偶然目撃して拳銃を入手し、殺された娘の復讐をするために、被告の男を狙っていました。すべての謎が解けたとき、ドラマは冒頭の銃撃のシーンへと移っていくのでした。

女は意図して殺人を犯した

女性が銃撃したところで終わらないのが 特捜最前線というドラマの醍醐味です。取調室で女性は、拳銃が手に入ったことを「神様って、この世にいるんだなと思いました」と、晴れ晴れとした表情で語ります。

橘刑事は「それは違う」と否定し、船村も「法律は人間が理性を守るための約束事なんだ」と諭します。しかし女性は「その約束事が間違っていたら!」と語気を強めます。船村には返す言葉もありません。

神代課長から「殺意の有無」を聞き出すよう促された船村は、もう一度女性と向き合います。「自分のやったことがわかっていたのか?」との問いかけに、女性は「殺してやろうと思った」と言い切ったのでした。

被告の男は、裁判で無罪もしくは情状酌量される可能性がありました。それを許せなかった女性が犯した殺人は、確信犯だけに重罪に問われます。この不条理こそが、ドラマの真の見せどころだったのです。


女性役を演じた 島かおりさんは、ドラマ前半の感情を押し殺したような姿、拳銃を奪って被告を射殺する時の鬼気迫る表情、そして取調室でのどこか満足そうな笑みと、見事に演じ分けています。

おやっさんこと 大滝秀治さんが、いつもどおり感情むき出しな「動」の演技ならば、島さんは「静」の演技。サイドストーリーをいつの間にか本編に持っていく演出も素晴らしく、特捜の中でも名作の一つと言えるでしょう。

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マイケルオズ@フリーランスライター
「特捜最前線」がマイブームになっているオヤジです。リアルタイムの頃は津上刑事より若かったのに、今はおやっさんよりも年長者になりました(苦笑)
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