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2023年02月02日

私だけの特捜最前線→71「傷痕・夜明けに叫ぶ男〜情に厚かったがゆえにピンチを招いた高杉刑事」

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西田敏行さん扮する高杉刑事は、特捜最前線の初期に登場する個性豊かな刑事で、キャラクターは唯一無二とも言えます。その主演作の一つ「傷痕・夜明けに叫ぶ男」を紹介します。

ほら吹き老人に翻弄された高杉

高杉刑事は、ひょんなことから知り合った浮浪者の老人(加藤嘉)から「殺人を目撃した」と打ち明けられます。殺されたのは代議士の義理の父親で、老人は代議士が犯人だと言うのです。

老人は「せんみつ(千のうち三つしか本当のことを言わない)」と呼ばれるほら吹き男で、高杉も再三騙されてしまいます。それでも高杉は老人の言葉を信じ、真相を突き止めようと奔走しました。

老人が「代議士の腕に?みついた」と告白したので、高杉は単身代議士宅に乗り込みます。しかし、むりやり服をまくり上げても傷跡は無く、代議士から訴えられるピンチに陥ってしまったのです。

しばらくして、老人が瀕死の重傷を負って病院に担ぎ込まれました。老人は高杉に「今度こそ証拠を残してやった」とつぶやき、そのまま息を引き取ったのです。高杉は老人の最期の言葉を信じ、代議士の元へ向かいます。

代議士の腕を確かめようとした高杉は、側近たちに妨害されます。しかし、神代課長(二谷英明)によって、代議士の腕に残った歯型が見つかりました。それは正真正銘、老人が?みついた跡だったのです。

西田敏行さんと加藤嘉さんの共演

このドラマは、高杉刑事役の 西田敏行さんと老人役の 加藤嘉さんという名優の共演が最大の見どころです。時にコミカルに、時にシリアスに演じる二人のシーンは名場面の連続と言っていいでしょう。

老人には一人息子(平泉征)がおり、大事に持っていた手帳には息子のことばかり書いていました。しかし息子の方は、自分と母親を捨てて浮浪者になってしまった父親を「あんな男」呼ばわりしていたのです。

実は高杉も父親を憎んでいましたが、亡くなってから慕情を寄せるようになっていました。老人の言動や行動に亡き父を見る思いで接し、何度騙されても信じたいという気持ちを持ち続けていたのです。

事件が解決し、老人の墓前に手を合わせる高杉。息子は「すべてが終わったんです」と、まるで厄介払いができたかのように淡々としています。その態度を見て、高杉は遺品の手帳を渡せなくなりました。

老人は高杉を翻弄しながらも、息子のように接し、いつしか二人は心を通い合わせることができたのです。しかし、実の息子とは離反したままで、この世を去った老人・・・辛いラストシーンとなりました。

「情」の人だった高杉刑事

高杉刑事は特捜最前線の中でも 異色の存在でした。西田敏行さんらしさが存分に発揮された見せ場が後半にあります。代議士の逮捕状をめぐる神代課長とのやり取りのシーンです。

代議士を逮捕すべきと主張する高杉に対し、神代は「二度も同じ過ちを繰り返すのか」とたしなめます。しかし高杉は「死んでしまった老人の最期の言葉まで疑うのか」と激しく怒ります。

「俺は人間です。そんな鬼の下では働けません」と啖呵をきる高杉に対し、神代は「刑事だったら理性だけは失うな」と?り飛ばします。他の刑事なら、この一喝で冷静になっていたところでしょう。

ところが高杉は、一転して表情を曇らせ「(老人は)俺の親父にそっくりだったんです」と涙を流します。神代の言う理性よりも、喜怒哀楽がストレートに出る 「情の高杉」ならではの場面と言えるでしょう。

当時売れっ子俳優だった西田さんは、次第に特捜最前線への出演が減っていき、転勤という形で降板します。西田さんの持ち味だった「情」は、おやっさん(船村刑事)が引き継いでくれたと個人的には思っています。


なお、このドラマでは犯人の代議士役で 小林昭二さんが出演しています。言うまでもなく、ウルトラマンのムラマツキャップ、仮面ライダーの立花藤兵衛として一世を風靡した名優ですね。

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プロフィール
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マイケルオズ@フリーランスライター
「特捜最前線」がマイブームになっているオヤジです。リアルタイムの頃は津上刑事より若かったのに、今はおやっさんよりも年長者になりました(苦笑)
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