UX300eには「version.C」と「version.L」という2つのグレードが存在し、基本性能は同一。
今回は「version.C」のため、ホイールは17インチ。
「スカッフプレートがない」、「パワーウィンドウスイッチの仕上げが質素」(非ヘアライン加工、非クリア塗装)というのが乗降時に感じる「version.L」との違いですが、このあたりは後で部品換装もできま。・・・とはいえ、もともと高額車ですので、私的にはこのあたりの仕様は統一してほしかったと感じます。
装備的には「version,C」のため特に不満はありません。パワーシートや電動チルト/テレスコピック機能、ステアリングヒーター、シートヒーター、シートベンチレーションも備わっているので、季節を問わず快適なドライブを行うことができますし、AUTOモードの「レクサスクライメイトコンシェルジュ」を搭載しているので、空調関係がAUTOで大丈夫なのは他のEV車と比べても「UX300e」の優位点と感じます。
シートに座り、最初に手を触れるのはステアリングかと思います。
ステアリングスイッチは既報の通り、「OK」や「CANCEL」ボタンが押しやすくなって改良されましたが、スイッチ自体の質感やクリック感は今ひとつといったところで、同デザインでも「ES」や「LS」とは差別化されており、残念なところです。
また、ステアリングの本革自体の質感も上質なのですが、「F SPORT」モデルのような穴開きのディンプル加工がされていないこと、ステアリング自体の操舵感が軽めということもあり、スポーティな仕様のお車に乗られている方からすると、操舵性に少し不安に感じるかもしれませんが、この点は程なく慣れるかと思います。
この「UX300e」はとにかく賛否分かれるモデルと思いますが、「良い点」というのは、なんといっても既存の「UX」オーナーのみならず、レクサスのハイブリッドカーにお乗りの方は、 ほとんどの方はなんの違和感もなく、すぐドライブが可能 ということでしょう。
多少異なるのは、シフトレバーの操作のみで、電気自動車特有の「どう操作すればよいのかわからない」という点が一つもありません。
安心してドライブ・所有できるという点では地味ながら重要かと思います。
さて、アクセスを踏み、クルマが動き出すと、テスラ社のEVのような 驚くべき加速はありません 。
とはいえ、レクサスハイブリッドカーのように、 控えめな加速力でもなく 、アクセルの踏み方に応じた加速力を得ることができるので、実に運転しやすいです。そして、途中でエンジンがかかることもないため、ボディやペダルに「振動」を感じないのはとても新鮮な感覚です!
ロードノイズも抑えられていますので、室内はとても静かです。とはいえ、耳が「ツーン」となるほどの無音ではありません。
乗り心地も向上しています。
バッテリーパックを床下に敷き詰めており、重量が増加したことで安定感がでているのと、パフォーマンスダンパーをリヤ側に装備しており、微振動を低減していることと、どっしり感が強まり、路面追従性も向上していると感じました。重量は増加していますが、モーターでの加速力がありますので、「UX250h」に比べて鈍重な点は一切感じられませんでした。
既存の「UX」シリーズとの大きな違いは「坂道」(上り坂)です。
ある程度勾配がある上り坂などでは、多くのハイブリッドカーでは、エンジンがうなりながら、ハイブリッドモーターを併用しながら登っていきますが、BEVの場合はそれがありません。着実にグイグイ登っていくのは新しい感覚です。
また、静粛性は確かに高まっているので、静かになったことにより、逆にさまざまなノイズが聞こえる・・・ということもありません。
なお、信号待ちなどで停止する際の「フォーン」「ヒューン」といった特有の電磁的なサウンドは、小さいながらも残っています。(逆にこれが電気/ハイブリッドカーという感じもしますが・・・)
なお、スピードメーターあたりからよく聞こえてくるような「ジー」や「カチカチ」といった電気的なノイズはほとんど聞こえてきませんので、静粛性にはかなり気をつかったいることがわかりました。
ドライブセレクトモードを「パワーモード」にすると、スピードメーターの色が多少変わるぐらいですが、走りはかなり変わります。
アクセルレスポンスおよび、加速感が明確に良くなりますので、「常時こちらのほうが良い」と感じる方もいらっしゃるでしょう。このモードであれば、明確に「UX250h」との動力さを感じ、ネーミングの「UX300e」というのは伊達ではないことが感じられます。
ただし、停止時からのアクセル操作ではノーマルモードよりも急加速しがちなので、助手席や後席に乗客を乗せる場合、発進時はノーマルモードの方がスマートなドライブができると思います。
全般的には、エンジン振動がまったくない、コーナリング時に低重心感が感じられるという点で、 「UX250h」の上位機種 という感じが伝わってきます。
反面、今一つと感じたところは、シートのホールド性の低さです。
ボンネット内にエンジンを搭載しておらず、鼻先が軽いので、コーナリングは非常に軽快なのですが、それ故に、 ボディの「揺れ」は気になります 。当方が普段乗っているのはFR車ということもありますが、ボディが揺れたあと、シートのホールド性が低いこともあり、体がゆすられがちです。気持ちよくドライブしたい方のために「F SPORT」用のシートがあっても良いと感じました。
また、回生ブレーキの強さの切り替えはいちいち 「Bレンジ」に入れないと調整できない のはちょっと面倒だなと感じました。(パドル操作で現状選択しているものより1段上の効きに調整できるようですが・・・)
スピードメーターの仕様が単純であるのも残念なところです。
EVの先進性を生かして「12.3インチ」などの大型のディスプレイを採用してほしかったと感じます。
「回生ブレーキの強さ」も常時表示はできませんし、坂道などでどれだけエネルギーを回収しているかなどももっと明確に示したほうが実感が出ると思います。全般的に、BEVを所有する方の特性からもう少し情報量が多くても良いのではと感じました。
情報量が多いと感じる方には「クラシックモード」などを準備して、通常モデルのような表示に留めればよいわけですし・・・
なお、回生ブレーキの効き具合を4段階で調整できるのもこのクルマの特徴といえますが、ニッサン・リーフやテスラ社のような強烈な回生ブレーキ性能に切り替える仕様がありませんので、 アクセルのみでの「ワンペダル走行」はできません 。
とにかく、今までのレクサス・ハイブリッドカーに近い操作・乗り味を追求しているのが「UX300e」の特徴と感じました。
さて、いつも試乗コースでの、燃費(電費は「 6.1km /KWh」でした。
電費とは聞き慣れない言葉ですが、スピードメーター左のインフォメーションディスプレイでも「瞬間電費」や「平均電費」という用語が使用されているように、BEVでは一般的な用語のようです。
UX300eの電池容量は 「 54.4kWh 」ですので、単純計算ですと、54.4×6.1= 約330km走行できる計算 になるのでしょう。
特に燃費走行を意識せず、パワーモードも40%程度使用した程度ですが、カタログ上の「WLTCモード」上の「367km」に近い数値かと感じました。
最近建設された大型商業施設などではEV用の充電設備を備えているところも多いですので、「週末の買い物の際に乗った分だけ充電・・・」というような使い方であれば、集合住宅など、自宅に充電設備がなくても十分運用できそうです。
電気自動車につきものの「不安」を抱くことなく、「誰もが普通に乗れるEV」として「UX300e」の存在感意義があると感じました。
今回の試乗を通じた私的なインプレッションとしては、「先進感はまったくないが想像よりも良い仕上り」。
静粛性も高いですし、乗り心地も良い(ただし、凹凸のある部分を走行した場合の振動など、ものすごく良いわけではない)操舵性や加速度も特段の不満はなし(ただし、高速道路で周囲をリードするような走行はできないものと思われます)。振動がなく静かな環境でのドライブは、従来のハイブリッドカーともまた違う魅力がありますね。
しかし、現時点でBEVを購入される層(アーリーアダプター層)をイメージすると、以下の点で「UX300e」は弱点があると感じます。
・ 通常モデルとの「見た目」の差別化がほとんど無い。
外観や内装の差別も僅少だが、例えば、キー(スマートキー、カードキー)もハイブリッドカーとまったく同一で、「他人と違うものを持つ」という面では魅力が弱い。
・ UX発売から3年を経過しようとしているため、2022年には実施されるだろう「マイナーチェンジ」が気になる 。
「ES300h」に準じたマイナーチェンジを実施してくると想定すると、先進予防安全装備「Lexus Safety System+」のアップデートや、ナビ画面のタッチディスプレイ化は確実。よって、「あと1年待つ」という選択肢は十分ありえる。
・ 他のブランドのBEVのような「先進さ」はほぼゼロ (使い勝手が良いとも言える部分)
日本におけるBEVの現状は、スマートフォンに例えれば2011年頃「 iPhone4S 」が出た直後ぐらいのイメージではないでしょうか?
現状のBEVを選択される方は、特定ブランドの「信者」など献身的なロイヤルカスタマー層に支えられているといっても過言ではないと思いますので、そういった方には、古典的な内燃機関自動車の延長線にある、レクサス「UX300e」が選択肢に入ることはないでしょう。
しかし、誰もが安心してBEVを体感し、高品質なサービスを受けることができる、という点ではこの「UX300e」の存在意義はあると思います。「古さ」と「新しさ」の橋渡し役的なものがこの「UX300e」に求められる役割ではないかと思います。
「LEXUS Electrified」で報じられたレクサスの今度の電動化の方向性に関しては、UX300eではごく一部しか取り入れられておらず、過渡期のクルマであると思いますが、 UXに新たなパワートレーンが追加された という見方をすればよいのかと思います。現状、各自治体などから支給される補助金を考慮すれば「UX250h」を購入される方はぜひ選択肢に入れても良いのではと思います。