クジラを助けようとしたダイバーたちは、何とかクジラをロープから解き放そうと考えました。しかし、それはひどく難しく、また、大変な危険を伴う作業でした。何しろ、ロープがザトウクジラの尾や左側の胸びれに少なくとも4重に巻きついていたのです。もしザトウクジラが巨大な尾を打ちつけたら、ダイバーの命はないと思わなければなりません。いつザトウクジラが尾びれを打ちつけてくるか、誰にも分かりません。
しかしダイバーたちは、カーブのついた特殊なナイフを使って、およそ1時間ロープを切り続けました。いっぽう、そのザトウクジラは不思議な振動音を発しながらダイバーの作業に身を任せ、じっと海に浮かんでいました。
「わたしが口の中に巻きついているロープを切っているとき、そのザトウクジラの目が、私に向かってウインクしたんだ。わたしの人生の中でも、画期的なすばらしい経験だった」と、クジラを助けるために一番始めにクジラに近づいたジェイムズ・モスキトは、そのときの様子を語っています。
クジラは、ロープから解き放たれて自由に動けるようになると、長い胸びれを優雅に動かしながらダイバーたちの周りを円を描いて泳ぎ回りました。そして、自分を救ってくれたダイバー一人一人に泳ぎよって、自分の体をすりつけたそうです。「クジラは、私たちが助けたのが分かったんだ。そして、ありがとうといったのだと思う」とモスキトは語っています。
以上は2005年12月14日に「サンフランシスコ・クロニクル」に掲載された記事の要約です。ザトウクジラはハワイ、オーストラリア、ニュージーランドだけでなく、日本でも、ホエールウオッチングの人気ものです。しかし、日本政府は、南極海の調査捕鯨でザトウクジラ50頭を捕殺する計画を取り消していません。ニュージーランドやオーストラリアなどの強い反対に、捕獲を見合わせているところです。日本政府がつかまえて殺したザトウクジラの肉は、食用に回されます。大海原でザトウクジラの豪快なジャンプを見て感動した人たちは、はたしてザトウクジラの肉を食べたいと思うでしょうか?
コマッコウクジラの親子もイルカの「モコ」にすりすりしてお礼をいったのでしょうか? 「ありがとう」と声をかけたのでしょうか? ちょっと気になりますね。でも、これは、だれにもわかりません。
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