2008年3月10日未明、ニュージーランドの北島東海岸マヒアビーチの近くに住む保護局員マルカム・スミスさんは、2頭のクジラがざしょう座礁したという知らせを受けました。その場所は、首都ウェリントンの北東500キロほどのところでした。
早速救助にかけつけると、座礁していたのは、コマッコウクジラ(pygmy sperm whale)の親子でした。母親は体長3メートルくらい、子どもは雄クジラでした。スミスさんたちは、何とか母子を救いたいと、クジラを懸命に海へ押し返しました。2度、3度と、何とか海へ戻しても、母子はすぐに海岸に戻ってきてしまいます。スミスさんはクジラの体に海水をかけ続けましたが、2頭ともかなり疲労してきました。こうして1時間半がたち、スミスさんは、クジラたちの苦しみを除いてやるために、人道的な方法で母子のクジラを安楽死させることを考え始めました。
ちょうどその時、1頭のイルカが姿を現しました。地元の人々が「モコ」と名づけているハンドウイルカです。
スミスさんはイルカとクジラが声をかけあっているのに気づきました。モコは、クジラの母子と声を交わしながら、体を並べて200メートルほどいっしょに泳ぎ、親子を砂州の端まで案内し、つぎに、直角に方向をかえ、狭い水路を通り抜けて、母子を海へ連れ出しました。
「こんな話は後にも先にも聞いたことがありません。あれ以来、クジラの母子が戻ってきたという話はきいていません。1頭のイルカが、人間が救えなかったクジラの親子を座礁から救ったのは間違いないことです」とスミスさんは語っています。
現場で救助に立ちあった国立博物館の海洋生物専門家アントンバン・ヘルデンさんも、イルカのモコの救助は「すばらしいものだった」と絶賛。 救助を手伝ったフアニータ・シムズさんも、「すごい体験だった。人生で最良の日だった」と話しています。
いっぽう、クジラを救助した後、イルカのモコは海岸付近に戻って地元住民たちとの遊びに加わったそうです。
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