しかも、ヴィレダ氏とは別のアプローチで若返りの研究に取り組んでいたふたつのチームも同様にPF4にたどりついたことから、研究者らは異なる角度からPF4に焦点を当てた3本の研究を同時に発表となった。
研究によると2014年、ヴィレダ氏は若いマウスの血液から赤血球を除いた血漿(けっしょう)が、年老いたマウスの脳機能を回復させることを発見した。
その後も研究を続けていたヴィレダ氏らは、若い血の血漿には古い血より多くのPF4が含まれることを突き止めたという。
そこで、研究チームがPF4のみを老齢のマウスに投与したところ、若いマウスの血漿を注射した時とほぼ同じ効果が発揮され、老齢のマウスが学習力や記憶力を問うテストで優秀な成績を収めた。
さらに研究チームは、PF4が老化した免疫システムを改善させ、それが脳の炎症を抑えることで認知機能を回復させているのではないかと推測しているという。
ヴィレダ氏の話によると「PF4は免疫系を若々しくさせます。この働きが老化に関連した免疫因子を減少させ、脳の炎症を抑制し、脳の柔軟性を高め、最終的に認知力を向上させるのです。私たちは、人間では70代に相当する生後22カ月のマウスを飼育していますが、PF4はマウスの能力を30代後半から40代前半まで若返らせました」と説明している。
クロトーとは、ギリシア神話に登場する運命の三女神のひとりであるクロートーにちなんで名付けられたホルモンで、カリフォルニア大学のデーナ・デュバル氏は以前、「クロトー」を注射することで年老いたサルの脳が活性化したことを報告したが、クロトー自体は血液脳関門を突破しないため、どうして脳が若返るのかまでは判然としていなかったという。
そこで研究チームが注目したのが、血液中に含まれる因子で、クロトーを投与され認知機能が向上したマウスの血液を分析したデュバル氏らは、クロトーにより血液に含まれる血小板が活性化され、これにより血小板からPF4が放出されることを確認した。
また、運動が心身の健康にいいことはよく知られているが、オーストラリア・クイーンズランド脳研究所のタラ・ウォーカー氏らの研究チームは新しい研究で、運動によりマウスの血液中にPF4が放出され、これが脳細胞の新生を促進させて認知力を改善させることを発見している。
今回の研究によりPF4単体を投入することで運動に匹敵する認知機能改善効果が確認されたことから、このメカニズムには血小板由来のエクセルカインであるCXCL4、つまりPF4が関与していることが確かめられたという。
この成果についてウォーカー氏は、「健康や運動能力に問題がある人、高齢者は運動することができないので、薬理学的介入は重要な研究分野です。私たちは今回、血小板を標的とした治療で神経新生を促進し、認知機能を強化させて、加齢に伴う認知機能低下に対抗できることを確かめました。これは運動の代わりにはならないことに注意が必要ですが、年齢や脳の損傷により運動ができない人の認知機能改善に役立てられる可能性があります」と話している。
少し難しい話だったが、近い未来、お金さえあれば若返りも夢ではなく100才以上長生きできると考えていいだろう。
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