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護衛艦さざなみが台湾海峡を航行する、チャンネルダッシュがついに行われました。
しかし2024年7月の護衛艦すずつき領海侵犯は、位置失念が原因となりました。
図1 護衛艦すずつき
引用wiki
精強な海自がそんなミスするはずが無い!と思うけど、結構根深い問題です。
やはりインド洋派遣以来練度が下がり続けているのか?
(前回記事):『 ロシア海軍オケアン2024演習をどう見るか? 』
\こちらもご参考にPR!/
(1)位置確認は船乗りの基本!
船乗りは自分の位置を把握して航行するのが、基本中の基本レベルの話です。
図2 船舶航行
引用URL:https://www.kaiho.mlit.go.jp/info/books/report2002/chapter2/images/02_01.gif
道路を渡るときは横断歩道を渡るくらい基本であり、韓国海軍を笑えない位にヤバい話です。
(関連記事):『 韓国レーダー照射を技術的視点から首謀者の推測へ! 』
1.1 頭より先に船を走らせるな!
船乗りならば徹底的に仕込まれる基本として、自分の位置を確認して航行するのが作法です。
図3 位置情報
引用URL:https://cf.kazi-online.com/public/4552a6f4-927c-49cb-a8fd-65cb6a5b188b.jpg
今回公表された内容は、自艦の位置情報を確認せずに航行してしまったとのことです。
問答無用で、船乗り失格と言えるレベルです。
1.2 司令部からの通信で初めて領海侵犯を知る!
さらに救いがたいのが、陸上基地からの通報で初めて艦長が領海侵犯を把握した事態です。
図4 CIC
引用URL:https://pbs.twimg.com/media/D8HT2U9UwAE0fTy?format=jpg&name=large
艦橋もCICも、一体何をやってたんじゃい!と怒りがこみ上げます。
ただいろいろ重なると、ろくでもないミスが平気で発生します。
1.3 思いあたる節が一杯だなあ!!
自分の現職時代を思い起こすと、結構いろんな複合要素が思い浮かびます。
指揮判断を下す艦長に、大事な情報が届かないことがCICには意外とあります。
さらにGPSの使い方や、通信設定などいろいろミスが重なった結果かな?
図5 警戒監視
引用URL:http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2002/photo/frame/ap143024.htm
艦長交代2か月で、中国海軍監視に派出する運用の問題もあるでしょう。
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感想(1件)
(2)艦長は適切な分散管理監督をできていたか?!
護衛艦勤務をして、CWCコンセプトが意外と民間分野に理解されていないことに気付くことがあります。
図6 艦長席
引用URL:https://www.mod.go.jp/pco/gunma/pco_news/oota/images/o220416-6.jpg
今の時代は、艦長が全部命令指揮するというわけじゃないのが理解されていません。
2.1 権限委任と拒否権の複合戦(CWC)コンセプト
時たま話に出て来るCWCについてですが、簡単に言うと、
CWC=ドクトリン×指揮官の意図(考え)×権限委任×指揮官の拒否権
こんな感じです。
哨戒長など各種指揮官に、ある程度の権限委任をして艦全体の指揮を分散管理します。
攻撃・船務・機関・航空各指揮官は、指揮官の意図に合うように行動します。
図7 哨戒長
引用URL:https://i.ytimg.com/vi/9Wb03kMKE-8/hqdefault.jpg
(関連記事):『 海上自衛隊船務士だって仕事してるもん!なんにもせんむ士じゃない! 』
関連記事でも書きましたが、哨戒長が全般指揮を取り艦長が監督をします。
このCWCコンセプトを理解しないと、護衛艦すずつきの事件を見誤ります。
2.2 艦長の意図は徹底されたか?位置確認は報告されたか?
各種報道を読むに、すずつき艦長は事件当時にCICにて指揮していたと思われます。
この時、艦橋の航行指揮官とCICとの間で指揮官の意図が周知されていたか?が問題です。
図8 艦橋
引用URL:https://lh5.googleusercontent.com/proxy/DZ4I1TA0pINEl4QS6Q5ZETuJtvITwWosVd2tI5u7fB8n_bAmTgZ_wUyGWX60Og85W5C261o74T3N2gaiTz2E7-7UDgTCEsRQaB0jHdf-TGJxIE8E
護衛艦「いなづま」座礁のように、艦橋とCICの意思疎通がうまくいかないことがあります。
艦長がちゃんと意図を徹底して、修正する必要があります。
さらに監視任務にあったということで、自艦位置情報を正確に把握できていたか?
艦橋の副直士官や、CICの態勢図でチェックして、位置把握が出来ていたか?
もしロストポジションしてたなら、指揮官に報告できる空気があったか?
意外と艦長に、重要情報が報告されていないことが結構あります。
『だれかが報告するだろう・データーで艦長も確認してるだろう』
完全な現場猫も真っ青な、事故要素満載です。
図9 艦長指揮
引用URL:https://pbs.twimg.com/media/D8HTzQAU0AE15cK?format=jpg&name=large
意外とCICの艦長席って、必要な情報がすぐ手元に出るわけじゃないんですよね。
取得情報を整理統合して、見やすくしたものがLSDに表示されています。
艦橋又はCICが位置情報を取り間違えると、艦長が気付くのが遅れます。
2.3 艦長と士官・乗員の意思疎通が出来ていたか?
意外と見落としがちですが、艦長と乗員の意思疎通がうまくいっていたかも問題です。
艦長が交代してまだ2か月の時に、事件が発生しています。
図10 士官室
引用URL:https://pbs.twimg.com/media/Ea238IuUMAAR76b?format=png&name=240x240
艦長次第で、意外と士官室レベルで意思疎通が困難になる艦艇が存在します。
事件後すぐに艦長が更迭となったのも、意外と人間関係が原因かもしれませんね?
(衝突座礁事故の後でも、少しの間は艦長は現職に止め置かれる)
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(3)GPSの使い方も検証が必要だな!
留意が必要なのは、航法器材としてのGPSの使い方です。
図11 船舶GPS
引用URL:https://www.jha.or.jp/jp/shop/products/newpec/newpec_manual/manual/html/png/navi01_3.png
GPSに頼りすぎて、肝心な時に使えなくなったのかもしれません。
3.1 ロラン航法世代にはGPSを信用できない。
今の若い世代だと、GPSは当たり前で精度が高いモノと信じ切っているかもしれません。
ワイらのような ロラン・デッカ航法 で育った世代は、ど〜もGPSをいまいち信用できないんですよね。
図12 LORAN
引用URL:https://kotobank.jp/image/dictionary/nipponica/media/81306024012741.jpg
2000年まで、GPSはSA(選択的利用性)機能により精度がわざとずれていたんですから!
図13 SA解除
引用URL:https://www.enri.go.jp/jp/research/organization/nav/library/images/gps_sa/gps_sa_img01.png
米国は2007年以降SAによるGPS精度悪化を行わない、と宣言しましたがど〜だかね?
最近は中国沿岸部のGPS精度が、けっこう悪くなっているとの話を聞きます。
3.2 中国のGPS妨害も留意した方がいい
2022年以降、中国福建省(台湾の対岸)を中心にGPS妨害が激しくなっているという分析があります。
図14 GPS妨害
引用URL:https://www.gpsworld.com/wp-content/uploads/2024/05/Fig41080x525-1024x498.jpg
南沙諸島の人工島には、GPS妨害機器と思われるものが設置されています。
ロシアのクラスハ4に相当する電子戦装備を、中国を保有している可能性も十分あります。
図15 中国陸軍電子戦機器(南沙諸島配備器材?)
引用URL:https://www.armadainternational.com/wp-content/uploads/2022/03/Chinese-EW-Drill-Peoples-Daily-696x464.jpg
今後も電子戦には、留意が必要でしょう!
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