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2018年12月15日

医学部「不正」入試について(十二月十日)





 また、医学部の入試以上に批判されるべき不公平な入試を認め導入を推進してきたのは文部省である。80年代の終わりには、すでに大学受験における推薦入試というものが、かなりいびつなものになっていたが、指定校推薦にしても、自己推薦にしても、少なくとも田舎の公立高校の人間から見れば不公平極まりないものだった。大学合格者の数を稼ぎたい高校にしてみれば、推薦入試で合格させるのは、学力優秀な学生ではなく、一般受験では合格の見込めない大学進学を希望する学生の方が都合がいい。ということで、真面目に勉強して好成績を維持していた学生、本来推薦されるべき学生には推薦は回ってこなかったのである。どういう事情で大学が指定校に指定するのかも不明だったし、推薦入試なんて怒りの対象でしかなかった。
 それに、私立大学には、付属校枠というものが存在していた(多分今もあるはず)。高校の成績上位者は推薦で受験なしで合格し、それよりも下の学生は優先入試と称して、入試の際にある程度下駄を履かせるという制度で、その下駄の高さが寄付金の額によって変わるなんて生臭い話もあった。その結果、普通に入試を受けたのでは合格できないような学生が、何人も、いや何十人も合格していたのである。こちらはまだ、附属の私立高校に高い学費を払ったという実績があるから、許せなくもなかったけど、不公平感がなかったわけではない。スポーツ推薦で体育学部以外のスポーツとは何ら関係のない学部に入れるのも、変な話といえば変な話である。


 こんなことを書いたからと言って、推薦入試そのものを批判するつもりはない。ただ、今回の医学部の入試「不正」に対する批判を見ていると、先に批判されるべきは他にもあるだろうと思ってしまうのである。この医学部の入試を批判する前に、大学入試全体を俯瞰した上で、批判しないと意味のない批判のための批判になってしまう。入試というものが、私学であれば特に、100%「公正」だと評価されるものである必要はないし、100%公正な入試などありえないというのが、一連の報道を見た上での感想である。共通一次の理科で試験後に、結果に基づいて点数の補正を行うような不正が行われた恨みは忘れられない。

 そもそも、これも袋叩きに遭っている愛媛県の獣医学部誘致にしても、地元の獣医師の数が足りないから獣医学部を誘致して地元の子を入学させて卒業後も地元で仕事をしてもらおうというのが、誘致に向かうきっかけだったはずである。補助金を出してまで、もしくは土地の取得で優遇してまで大学を誘致するのは、地元の子供たちをある程度優先的に取ってもらえるという期待があるからだろうし、それがなければ公費を私企業である私立大学に対して支出することもできまい。
 そう考えると、地方の医科大学は、私立大学であれ、地方医療を支える人材を輩出することを期待されているのだから、地元出身で、地元に残る可能性の高い学生を優先的に合格させるのも当然だと言える。いや、そういう配慮をしなかったら、地元の自治体からは大きな反発が出るのではないだろうか。そういう事例が、医学部に限らず、なかったのかどうか、調査して報道してくれるマスコミは、大学叩くことしか考えていないだろうから、ないだろうなあ。

 医学部の入試で男子学生が優先的に合格にされていたというのは、弁護しにくいけれども、一応男性医師の数を確保したい現場の要請という言い訳は用意されているわけである。現在の日本の医療制度を支えるためには仕方がなかったのというのが正しいのであれば、医療現場の医師の過重勤務や、無報酬勤務の問題を放置してきたマスコミや政治家に対しても批判の矛先が向かなければならない。
 現在の日本の医療制度の歪みが目に見える形で端的に表れたのが、今回の入試「不正」だと言えるのだから、医療制度の歪みをただすことなく、入試だけ変更した場合に、医療制度全体が破綻する恐れはないのだろうかと心配になる。その辺まで分析して報道するようなマスコミは……。入試を管轄する文部省は、医療制度がどうなろうと知ったこっちゃないだろうしさ。この問題について厚生省の見解を聞いてみたいものである。

 またまた本題に入る前に分量が尽きてしまった。本題についてはまた明日。
2018年12月10日22時15分。





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