オロモウツ−プラハ間は、高速道路が開通していないため、当時は鉄道と自動車の所要時間が同じぐらいだったが、高速道路を使ったスチューデント・エージェンシーの直行バスが走っていたプラハ−ブルノ間は、バスを使ったほうが遥かに早く、快適でサービスもよかったらしい。値段も安かったのかな。そのため、途中の停車駅を利用する人はともかく、プラハからブルノ、その反対はバスを使う人の方が多かった。
仮にこの高速化が行われる前の時点で、レギオジェットやレオエキスプレスが、参入していたとしたら、現在ほどの成功は収めていなかっただろうことは断言できる。所要時間が大幅に短縮された上で、サービスや乗り心地が改善されたからこそ、鉄道に利用客が戻ってきたのである。
一番最初にペンドリーノの試験運転が行われたのはプラハから北に向かう路線で、なんと各駅停車に使われていた。せいぜい数十キロのスピードで走らせながら本格的な運行に向けて問題点の洗い出しを行っていたのである。同時に導入が予定されていたプラハ−パルドゥビツェ−オロモウツ−オストラバ間では重点的な路線の改修工事が行われていた。老朽化し、また高速走行を前提として敷設されていない路線では、ペンドリーノでも時速100キロをいくらか超える程度の速度しか出せなかったのである。
線路そのものだけでなく。山間部では新たにトンネルを開削して、スピードを極端に落とさなければならなかった区間のカーブを緩やかにしたり、高速運行に向けて安全装置の設置も進められたんだったかな。全線を通じて最高時速160キロで運行できる規格で改修が進められた結果、ペンドリーノが実際に運行を始めた2005年ぐらいの時点では、プラハ−オロモウツ間を特急ECが3時間弱で結ぶところを、ペンドリーノは2時間30分ほどで走っていた。例によって遅れることも多かったけど。その後もあれこれ改修が続けられ、現在では最短で2時間2分と、もうすぐ2時間を切るところまで短縮が進んでいるのである。
路線の改修、高速化によって、ペンドリーノ以外の電車も時間の短縮が進み、停車駅が多い急行でもプラハ−オロモウツ間を、3時間以内、特急は2時間半以内で結んでいる。チェコ鉄道の所有するペンドリーノの数に限りがあるため、日によってはSCペンドリーノが走るべき時間に、普通の特急の機関車と客車を使った特急ICが走ることがある。現在ではペンドリーノでなくても、最高時速160キロで運行できるようになっていて、所要時間は途中の停車駅の数によって左右されると言っていい。ただし、レギオジェットの機関車は最高時速140キロらしく、これがチェコ鉄道の特急より時間がかかることがある理由のようだ。
この最高時速160キロというのは、チェコの鉄道網の整備、高速化の一つの基準になっていて、モラビアだと、ペンドリーノが走る区間以外にも、ポーランドからオストラバを経由してウィーン、ブラチスラバに向かう電車が走るプシェロフ−ブジェツラフ間、ブルノからウィーン、ブラチスラバに向かうブルノ−ブジェツラフ間も、特急、急行は最高時速160キロで走行している。車両によっては車内にモニターがあって、速度表示がされているので、速度を確認することができる。さすがに駅の構内を最高速で走るわけにはいけないから常時160キロというわけではないけど。
この話もうしばらく続きそうである。
2019年1月21日23時10分。
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