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2019年01月27日

チェコ鉄道事情最終回(正月廿五日)




 料金の差の分、サービスに差があるのかどうかは知らないが、売り切れになっていることがままあるのは、レオ・エクスプレスのプレミアムのサービスに満足して、この値段でも繰り返し利用する客がいるからであろう。席数が少ないから、早い者勝ち状態になっているのかもしれない。

 このレギオジェットとレオエクスプレスの参入は、チェコ鉄道との乗客の奪い合いの側面がなかったとは言わないが、少なくともプラハ−オロモウツ間においては、相乗効果で鉄道の利用客自体が増えているために、チェコ鉄道の利用客も増加したのではないかと考えている。その証拠としては、プラハ−オロモウツ間を走るチェコ鉄道の特急、急行の数が、私鉄参入以前と比べて増えていることを挙げておこう。
 以前は、夕方以降の便はほとんどなく、プラハに夕方飛行機で到着した場合に、オロモウツまで戻って来られるかどうか心配になることも多かったのだが、午後7時以降でも、寝台の夜行列車を除いて8本走っている。これなら飛行機でプラハの空港に入るのにあまり時間を気にしなくてもよさそうだ。オロモウツ到着が12時過ぎになる便はできれば使いたくないけど、あるのは安心である。日本にいた頃は、終電で帰宅が1時過ぎなんてよくあることだったけど、チェコに来てからは考えられないことである。

 とまれ、簡単にまとめておくと、プラハからオロモウツを経てオストラバなどに向かう路線に関しては、チェコ鉄道と私鉄二社との競争がいい方向に向かっている。限られた乗客を奪い合うというよりはそれぞれの特性を生かして、ひたすら安さを求める客層から贅沢を求める客層まで、鉄道の利用客を増やしているという印象である。
 オロモウツから、もしくはオロモウツまでの利用であればあまり関係はないのだが、さらに遠くに向かう人たちにとっては、電車始発、終点の設定も重要になる。以前もチェコ鉄道のプラハ発の急行はいくつかの町を終点にしていたが、レギオジェットの参入以来、プラハ発の終点となる駅が増えている。その結果、直通で行ける場所が増えて、利便性が向上した。一度は採算が取れないとして廃止されたものが復活したりもしているようだ。これも利用客が増えて採算性が高まったおかげであろう。

 競争といえば、チェコ鉄道が気になる動きを見せている。最初に気づいたのは、プラハとブルノを結ぶ便についてなのだが、レイル・ジェットという名前がつけられた電車が走るようになっていた。それは、「ガラーン」や「グスタフ・マーラー」のような個々の特急につけられた名前ではなく、ペンドリーノのような特急のカテゴリーの名称のようで、時刻表や駅の掲示板に表示される電車番号も「rj」で始まる。最初に見たときにはチェコ鉄道の電車ではなくレギオジェットのものかと思ったのだが、レギオの電車番号は「RJ」と大文字で始まるのである。
 もう一つは、地方都市と地方都市を結ぶ急行に新しく導入された車両に書かれた名前である。地方によっていろいろあるのだが、すべて「レギオ」+動物の名前となっている。レギオ・シャーク、レギオ・パンサー、レギオ・エレファントなどなど。「レギオ」が地方という意味の「レギオン」から取られているのは明らかだけれども、レイル・ジェットと合わせて考えると、チェコ鉄道のレギオジェット対策じゃないかという気がしてくる。レギオ・ジェットとチェコ鉄道がつながっているような印象を与えようとしているとかいうのは考えすぎだろうか。そのうち、レギオ・ライオンとか、ライオン・エクスプレスなんて、レオ・エクスプレス対策っぽい名前の電車も走るかもしれない。

 このシリーズのきっかけとなった記事に出ていたチェコ鉄道のコメントで値下げ競争の激化を懸念していたのは、私鉄と同居する路線においてではなく、運行に補助金の出る地方の路線の運行権の入札についてではないかという気もする。これは鉄道だけではなく、バスに関しても行なわれていて、簡単に言えば助成金を請求する額が一番低い会社が選ばれるのだが、採算の取れない額で入札する業者があるらしいのだ。先日もどこかの地方で落札して運行を開始しておきながら、バス会社が現在の助成金の額では採算が取れないとか言い出したというニュースが流れた。チェコ鉄道では採算割れするような額での入札はできないだろうし……。

 長く書いているうちに、当初の目的がわからなくなってしまって、迷走してしまった感があるけれども、これでお仕舞い。書こうと思っていたことは他にもあるのだけど忘れてしまった。
2019年1月26日23時。









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