昔は、ホテル・シグマという古びた、共産主義の時代を思わせる外観のホテルだったのだが、数年前に全面的な改築が行われ、見た目はものすごく改善された。そして名前も クラリオン・コングレス・ホテル に変わってしまった。ただ、建築途中の様子を見ていた限りでは、内装はともかく建物自体は日本人の目からするとびっくりするような方法で建てられていた。おそらく一部屋単位の大きさのコンテナのような直方体のブロックを積み重ねて行っていたのだ。外壁にあたる前面と奥の面は空いていたから、建物の向こう側が筒抜けに見えるという奇妙な状態になっていた。
駅前の背の高いビルの建設の際にも思ったのだが、地震が頻繁に起こるというのは建築に際して、大きな制約になっているのである。このホテルも隣の背の高い建物も、チェコの誇る集合住宅パネラークも、おそらく日本では耐震性の欠如によって建築に許可が下りないだろう。他のホテルも郊外の背の高いものは似たり寄ったりの建て方なのだろうが、建築の過程を見てしまったこのホテルに泊まるのは、泊まる必要はないけど、ためらってしまう。
以前は、メインの背の高い建物の裏には、長期滞在用の安宿があったのだが、改築によって廃止され、イベント会場みたいなものになったのかな。どんなイベントが行なわれているかは知らないけど、改築が済んですぐの年か、その次の年かには、自転車レースのチェック・サイクリング・トゥールの出場全チームの宿泊する宿になっていたから、開幕のセレモニーかなんかが、このイベント会場で行なわれたんじゃなかったか。そのときにあるチームの機材の盗難事件が発生したからか、現在では各チームでいろいろなホテルに宿泊しているようである。
せっかく、きれいに改築したのだけど、どうにもこうにも昔の古いチェコのホテル、よくない意味で共産主義時代のホテルのイメージが付きまとう、ちょっと残念なホテルなのである。オロモウツのある意味威信をかけた自転車イベントで盗難事件が起こったのもそうだけど、知人が宿泊したときに、予約したのよりもカテゴリーが下の部屋に入れられそうになったといって怒っていたことがある。おそらくオーバーブッキングで同じランクの部屋が足りなくなったのだろうが、そこで下のランクの部屋に入れようとするところが、困り者なのである。
知人は、日本人だから多少無理を言っても黙って引き下がるだろうと、なめているのが気に入らないとごねまくって、予約した部屋よりも上の部屋に変えさせたと言っていた。そこまでするかと思わなくもないけど、世界中をあちこち回った経験のある人なので、日本人ならという、足元を見たなめた態度を取られた経験も多く、腹に据えかねるものがあったのだろう。こういうところで、ちゃんとした対応を取っていれば、次も使ってもらえるだろうに、知人はこんなホテル二度と泊まらないと宣言していた。
この辺の対応に旧時代の名残を感じてしまって、どうも他人に勧める気になれない。交通の便はいいし、建物も新しくなって、人気が出てもおかしくないはずなのだけど、いまいちぱっとしないのは、こういうところに問題があるのである。ホテル・シグマ時代の方が、概観と中身があっていたから、印象がよかったんじゃないかと思ってしまう。もちろん、このホテルを利用した人がみんな不満を感じているというわけではない。たまたま知り合いがそうだったというだけの話である。ただ、こういうのは一事が万事というところがあるからなあ。
以前利用したときに、客がぜんぜん入っていなくてこれで大丈夫なのだろうかと心配になったレストランも含めて、NHホテルに対抗しようとして、全然対抗できていないという印象を持ってしまった。数あるオロモウツのホテルの中でも、ちょっと先が心配なホテルである。
2019年2月11日22時30分。
タグ: ホテル
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