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2019年03月16日

動詞の受身追加(三月十四日)





 最初に形容詞の「unavený」は、動詞「unavit」の受身形からできたものだということを書いたが、受身形が受身の意味で使える動詞に関しては、ほぼ問題なく形容詞的に使用することができる。受身の意味云々というのは、受身の形は作ることはできても、実際に受身としては使えそうもない動詞も存在するからである。例えば「chodit(歩いて通う)」なんかは、「chozen」という受身形が想定できるけれども、受身の意味で使える状況は想像もつかない。
 形容詞としても使えるのは便利なのだけど、ときどき形容詞化したものと受身形とどちらを使うのがいいのか悩んでしまうこともある。例えばウィンドウズのコンピューターで、特に指定しなかった場合にダウンロードしたファイルが収まるフォルダは、「sta?ené soubory」である。この「sta?ené」は、「stáhnout」という動詞から作られる受身形「sta?en」が形容詞化したものである。名詞の前だからこの形になるのは当然である。



 ・Tyto soubory jsou u? sta?eny.

 ・Tyto soubory jsou u? sta?ené.

のどちらがいいのか、決め手がない。多分どっちでもいいのだろうけど、外国人としてはできるだけ確信を持った使い方をしたいものである。ということで、そんなときには受身を使うのをやめてしまう。

 ・Tyto soubory jsem u? stáhl.

 同じことをいくつかの方法で表現できて、必要に応じて言い換えられる柔軟性というのは、外国語を使用する上で大切なことである。ただ、この手の言葉を使う上での柔軟性は、外国語能力よりも。母語の運用能力によって左右されるような印象もある。母語に対して鈍感な人間は、外国語においても言葉の使い方に鈍感でできるようにならないのだと、自分が日本語の細かいところにこだわるのがチェコ語の習得に役に立ったと考える人間としては、大きな声で主張しておきたい。ようは英語教育よりも国語教育に力を入れたほうがいいと思うんだけどねえ。日本語もろくに固まっていない小学校から英語の勉強をさせるなんざ、時間の無駄、金の無駄である。

 それから受身形が大切なのは、動詞の名詞化の基礎となるからである。受身形の男性単数形に、長母音「í」をつけてやれば、「〜すること」という意味の名詞ができあがる。この名詞自体は中性名詞となる。「-í」で終わるので、形容詞の男性名詞活動体複数と間違えることもなくはないけど、受身形を勉強するようなところまで来ている学習者であれば、ちょっと考えればどちらなのか理解できるはずである。
 ただし、一部受身形そのままではなく、微妙に形が変わるものもある。それは受身形の作り方自体が例外的なもののことが多いので、厄介ながら一つ一つ覚えていくしかない。いや、全部覚えるのではなく、自分が使いたいものを覚えればいい。これも使わずに済ませようと思えば済ますことはできるのだから。ぱっと今ここで思いつくのが、動詞「p?ijmout」→受身形「p?ijat」→名詞「p?ijetí」である。これは「導入する」という意味の動詞で、チェコがユーロを導入するかどうかの議論がうるさかった時期に盛んに使われていたので覚えてしまった。
 日本語ができるチェコ人が時々やるのが、この動詞を名詞化したものを日本語に訳すときに、動詞の連用形を使うという間違いである。日本語の動詞の連用形による名詞化は、どんな動詞でも一律同じように適用できるものではないのだけど、チェコ語のこの名詞化と同じように考えている人がいるようなのだ。「こと」を使った方が安全なんだけどね。

 ところで、受身形を動詞「být」なしに使うケースがもう一つあった。それは看板などに書かれる禁止を表す表現である。短く強く言い切ることが求められるからか、動詞「být」が省略されることが多いのである。「私有地につき立ち入り禁止」なんてのは、「Soukromý pozemek, vstup zakázán」なんて書いてあるし、「禁煙」は「kou?ení zakázáno」となる。「je」を入れても間違いではないだろうと思うのだが、入っていない場合を見かけることのほうが多い。

 それから、何かに気づいたような場合に、受身形だけ、中性単数の形だけを口に出すこともある。ドアを開けようとして鍵がかかっていて開かなかった場合に「Zam?eno」、買い物に行ったらお店がしまっていた場合に「Zav?eno」なんて感じである。

 またまた予定より長くなったので、もう一つの受身については稿を改める。って一回分になるかな。
2019年3月15日23時。











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