比例代表制で獲得した議席は、個々の議員ではなく党に属するものだから、離党する場合には議員も辞職するべきだという考えには一理あるようで、議員の中から離党者が出た場合、党の側からこの手主張が出てくることが多い。多いのだけど、実現は確か一度もしていないはずである。チェコ人が一度手に入れた有利な地位を、自分から手放すわけねえだろというのは我が畏友の発言。だから法律で決めなければ絶対に実現しないと続くのだが、チェコに限らず政治家なんて人種が、みずからを縛るような法律の制定に積極的になるわけもなく、現在まで実現していない。
以前からオカムラ党の中央と、モラビア・シレジア地方支部がもめているというニュースは聞いていた。今年に入ってからだったと思うが、モラビア・シレジア地方支部が、党規に違反し続けているということで、解散させられた。この話を聞いたときの感想は、オカムラ党に党規なんかあったんだという失礼極まりないものだったのだけど、モラビア・シレジア地方支部の中心をなしていたのが今回追放された三人の下院議員たちだったのだ。
支部が解散になった後も、三人はオカムラ党の国会議員であり続けていたようだが、ここで党からの追放という手に出たのがなぜなのかはよくわからない。オカムラ氏は、追放された三人のうちの一人について、生活保護を受けている人たちを食い物にする貧困ビジネスに手を出していて、それをやめるように忠告したが、何度言ってもやめようとしないというのを理由としてあげていた。おいおい、そんな奴だとわかっているなら最初から入党させるなよ。入党させても選挙に出させるなよと、思った人は多いだろうと言いたいけど、チェコの政界って何でもありだからなあ。そのうちにゼマン大統領が恩赦を与えたカイーネクなんかも選挙に出たりするんじゃないだろうか。
追放された三人の議員も大人しく追放はされず、自分たちが党の規律に違反するようなことはしていないことを述べた上で、オカムラ党に対する禁断の批判を放った。それは、オカムラ党の党首のオカムラ氏は、名目上の党首に過ぎず実際に党を動かしているのは別の人物だというもので、つまりオカムラ氏は操り人形に過ぎないという批判だった。
これは、かつての旧オカムラ党と言うべきウースビットの時代からまことしやかにささやかれていた噂で、オカムラ氏が党を追われた理由の一つにもなっていたのではなかったか。頻繁に言うことが変わって、発言の整合性が取れていないことも多い理由として、オカムラ氏の意見と影の黒幕の意見が一致していないのが原因じゃないかなんて憶測もあり、チェコではある程度の信憑性を認められている噂である。
しかし、だからと言って、今回の追放された三人の批判、ウースビットを乗っ取った連中の批判に正当性があるかというと、そんなことは全くない。なぜならオカムラ氏の後ろに黒幕がいると批判するだけで、黒幕の名前を出していないからだ。仮にも当のオカムラ党から選挙に出馬し、地方支部の長など党の要職を任され、国会でも党が獲得した何とか委員会の委員長か副委員長に就いていた人たちなのだから、本当に黒幕が存在するのなら、その黒幕の名前は知っていなければおかしい。そして、オカムラ氏を批判する以上に、オカムラ氏の陰で好き勝手やっている黒幕を批判するべきである。
もちろんこれは、オカムラ氏の行動を正当化するものではないし、いかにオカムラ党の候補者の選択がいい加減だったかという事実を改めて見せつけているに過ぎない。資金さえ十分に提供できればオカムラ党の候補者にはなれるのだ。そういえば去年の地方議会選挙でもオカムラ党の候補者の中にでたらめの経歴を書いたという人が何人もいたなあ。他の党も似たり寄ったりの部分がないとは言わないけれどもさ。
社会民主党も元内務大臣のホバネツ氏が、ANOとの連立を維持しようとする執行部の方針に異を唱えて、こちらは離党はせずに、議員を辞任したし、ANOもファルティーネク氏の問題でもめている。とはいえ、現時点で下院の選挙が行われたらANOが勝つというのは変わらないのだろうなあ。今年は投票率が極端に低くなるEU議会の選挙が行われるけど、これもANOが勝つのか、組織票があったほうが有利だから既存の政党が勝つのか、個人的には意外なまともさを見せている海賊党に勝ってもらって、選挙に勝って浮かれないかどうかを確認しておきたいところである。
2019年3月21日15時。
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