その朝貢国の一つが、残念ながらわれがチェコなのだけど、チェコのみならず、中国のことを知らないヨーロッパの政治家、企業家達は対等の貿易相手だなんてのんきなことを考えているようだが、かつての経済的な力を持たなかった時期ならともかく、現在の経済大国にまでのし上がってきた中国がそんなことを許すほど殊勝なはずはない。アメリカ、ロシア以外の貿易相手は、朝貢国として位置づけようとしているに決まっているし、アメリカやロシアですら将来的には朝貢国化しようと考えているに違いない。
中華思想における西戎たるヨーロッパにおいて現時点で一番朝貢国に近いチェコでは、中国は中華帝国の本性をあらわにしつつある。その最初の徴候は、すでに三年前に国家主席がチェコを訪問した際の振る舞いに現れていた。在外の都督、もしくは節度使に任命されたトブルディーク氏を通じて、プラハの首席が通る予定の道路に中国国旗のをちりばめ、中国人の祝い屋を雇い、また反中国勢力の抗議運動を押しつぶした。チベットの旗を窓に貼っていたら、警察が来て撤去させられたというのだからトブルディーク在外都督の忠勤振りは共産皇帝には気に入られたことであろう。
このときは、プラハ市に対しても台湾を無視して中国は一つであるという共産中国の中華帝国としての正当性を認めるよう強要しているのだが、今回またまた中国が台湾がらみでチェコに無理難題を押し付けたらしい。詳しい話は覚えていないけれども、国会かどこかで行なわれていた各国の使節を招いての貿易関係の懇親会か何かに、台湾代表が出席していたのが、中国から送り込まれた観察使である大使の気に障ったのか、退出させるようにチェコ側に求め、立場の弱い朝貢国としては拒否もならず、台湾代表を排除することになったのだという。これもまた中国は一つだという、現実を無視した中華帝国の存在を押し付ける政策であろう。
この各国代表との会合を主催していたのは、産業省とでも訳せる役所で、大臣のノバーコバー氏があちこちから批判を受けている。この人、バビシュ内閣で新しく大臣になった人で、これまでも問題発言を連発してあれこれ批判の対象になっているのだけど、十年以上も前から中国に媚を売り続け、中華帝国の朝貢国となることで甘い汁を吸おうと官民一体になって進めてきたこの国に、中華帝国との関係において大臣を批判する権利を有する政治家がどれだけいるかは疑問である。チェコが中国とずぶずぶの関係になったのは、バビシュ政権のなしたことではなく、ただそれまでの路線を踏襲したに過ぎない。批判すべきは大臣よりも中国のはずなんだけど、宗主国の機嫌が悪化するのを恐れて批判できないのである。
仮にこの大臣を批判するのなら、これまで中国との関係を強化しようと主張してきた事実を、自ら批判した上で、朝貢をやめることを主張してからでなければ、同じ穴の狢とか目くそ鼻くそのそしりを免れない。中国に近づき取り込まれるということは、こういうことなのだ。そのうち、チェコ以外のヨーロッパの国も同じように朝貢国にされてしまったことに気づいて後悔することになるだろう。そう考えると、ほかのことはともかく中華共産帝国の覇権を阻止するために正面からの対立を恐れないアメリカのトランプ大統領は評価されてもいいと思うのだけど。中国にこれ以上好き勝手にさせると、世界はとんでもないことになりそうである。
2019年4月1日23時30分。
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