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2019年09月06日

コウノトリの巣事件その後(九月四日)





 このバビシュ氏が政界に入る前の詐欺的な経済活動に関する疑惑への対応に失敗した社会民主党のソボトカ内閣は、支持率を急速に落とし、その後の下院の総選挙で社会民主党は壊滅的は敗北を喫したのだった。その結果、バビシュ政権が誕生したのだから、「コウノトリの巣」疑惑を報道したマスコミの思惑は外れたと言ってもいいのかもしれない。マスコミと既存の政党が寄ってたかって袋叩きにしようとしたおかげで、バビシュ氏は弾圧される立場を手に入れることができたのである。
 しかし、その後、警察の捜査が行われ、警察が立件して起訴するべきだという結論を検察に送ったのは、バビシュ氏にとってはうれしいことではなかっただろう。起訴されても有罪になっても首相を辞めることはないと主張するバビシュ氏だけど、そんな厄介ごとはないほうがいいに決まっている。それが、今年の春ぐらいのことで、ようやく検察の担当者が結論を出した。


 他の政党も、共産党とオカムラ党を除けば、この結論にふまんたらたらなのは見え見えだが、現時点で検察の担当者を直接非難することは避けているようだ。ただ警察の決定を否定した理由、根拠を説明する責任があると主張している。その説明に不備があれば批判するということなのだろう。

 検察側でも、予想外の結論だったからか、この担当者の結論が正しいのかどうか、上司にあたる人物が確認するとか言い出した。この手続きに関してはANOが就任させた法務大臣のベネショバー氏が、理解できないと批判している。それは、担当者が結論を出す際には、検察の長官も含めた上司たちとも相談をしたうえで、出しているはずなのに、それを相談された人物が再チェックするのはおかしくないかということらしい。普通の事件であればそんなことしないのになんてことも言っていたかな。

 この事件は普通の事件ではなく、現職の首相の関わる重大な事件だから、検察側が慎重になろうとするのはよくわかるのだが、そのやり口があからさまに反ベネショバー、反バビシュだったりすると、最終的に起訴されることになったとしても手順の不備を批判されることになりかねない。すでに以前から、決定が起訴であれ、不起訴であれ、政治的な決定だと批判されるのは明らかだったから、担当者も大変だっただろう。
 ちなみに、担当者が決定とともに提出した証拠などの書類は、全部で20万ページにも上り、チェックする訳の人が期限までに読み通すのは不可能な分量らしい。チェックする人も大変である。どっちの結論を出すにしても、批判されるのは決まっているし。とまれ、現時点では有罪判決を受けた首相が刑務所で執務するという、ちょっと見てみたい状況は遠くなった。

 ただし、不起訴が決定したとしても、「コウノトリの巣」に関するバビシュ首相の疑惑は、これでお仕舞ではない。以前も紹介した「バビシュ息子誘拐事件」は、警察の話では現在スイスの警察の捜査結果待ちらしいので、今後また大事になる可能性もなくはない。それに今回知ったのだが、バビシュ氏が経営していたアグロフェルト社に、「コウノトリの巣」社に膨大な額の実態のない広告費を支払うことで、脱税したのではないかという疑惑があるらしい。

 それから、EUも「コウノトリの巣」事件に関しては独自に調査をして結論を出すと言っているので、チェコでは不起訴で終わっても、EUからクレームがつく可能性はかなり高い。その場合、チェコ側がどういう対処をしなければならないのかはよくわからない。いずれにしてもバビシュ首相の助成金をめぐる疑惑が、EU内でのチェコの立場を悪くしているのは間違いない。
 だから、反バビシュの動きもわからなくはないのだけど、問題はバビシュ後を任せられそうな、汚職と関係のない有能な政治家がほとんど存在しないことである。個人的には海賊党が政界の荒波にもまれて、本来の意味で政権担当能力を得るまでのつなぎとしてはバビシュ首相でいいんじゃないかとも思う。意外とまともな海賊党に対する不満は、まとも過ぎることで、海賊党ってアナーキーじゃなかったのと言いたくなる。このままだと既存政党の悪影響を受けてつまんない政党に堕してしまう危惧もなくはないんだよなあ。

 やっぱ、俳優のスビェラークに、ヤーラ・ツィムルマンの名前で、ツィムルマン的な思想の許に首相をやってもらうのが一番のような気がしてきた。以前は大統領で何とかなりそうだったけど、現状だと首相じゃないとどうにもならなさそうである。なんかまた迷走してしまった。
2019年9月4日22時30分。









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