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2019年11月19日

今日のできごと(十一月十七日)




 この様子はチェコテレビのニュースチャンネルで中継されていて、要所要所で、30年前のデモに参加した人たちのインタビューなんかも流れていた。面白かったのは、同じデモの参加者でも、この30年の時の流れを反映してか、現状に対する評価があれこれ分かれていたことだ。ハベル大統領を頭に戴いた市民フォーラム自体が、雑多な考えを持つ人々の寄せ集めみたいな感じで、共産党の退陣が決定的になるとすでに内部で権力争いが始まったというから、政治家とか官僚とかいう人種は、社会体制を問わず変わらないのだと言いたくなる。

 もちろん、1989年の11月17日に学生デモが起こった理由である、1939年の犠牲者オプレタルなど学生達の追悼のためにろうそくを持ち寄った人たちも多かった。80年前は、この日に、チェコの大学が、ヒトラーの命令によって、すべて閉鎖されることになったのである。だからというわけでもないのだろうが、国立の大学では、「占領的ストライキ」と銘打って、大学の建物を学生たちが占拠するというイベントを行っていた。
 これは、80年前、30年前の出来事を振り返るためのものでもあったようだが、もう一つの理由としては、特にプラハのカレル大学の場合には、現在の大学の指導部に対する抗議という意味も大きい。カレル大学の学長は、ゼマン大統領とは距離を置いているようだが、大統領と同様に、中国シンパのところがあって、中国と関係の深い企業から、資金を受け入れようとしたことで批判されている。
 中国に都合の悪い研究ができなくなったり、できても発表できななくなるんじゃないかなんてことで批判されていた。ただ、今のチェコでチベット万歳以外に中国に都合の悪い研究なんてしている人はいるのかね。いはするだろうけど、そんな奇特な人は、何らかの方法で発表の場を見つけるんじゃないかなあ。研究のためのお金を増やそうとして、私企業との協定に走った短絡さ批判されても、研究者の側も、金だけもらって圧力には負けないという矜持があってもいい気がする。

 ビロード革命関係のイベントとなると、民主主義について語る人が多いのだけど、チェコも日本と同じで、民主主義を自分たちの都合のいいものにしてしまうことが多い。バビシュ氏は、自分は選挙で選ばれた国会議員によってえらばれた首相なのだから、民主主義的に選ばれた首相だと主張し、反バビシュ側はANOの選挙での勝利をポピュリズムによるもので民主主義の敗北だとする。上院の選挙でANOが惨敗したときは、バビシュ氏は他党が反バビシュで団結した結果で民主主義的ではないと非難し、反バビシュ側は民主主義の勝利だと自画自賛する。
 状況は日本も同じようなもので、特に右も左も支持していない人間からすると、どちら側の主張を聞いてもうんざりさせられてしまう。目糞鼻糞ここにきわまれりである。それよりも気になるのは、民主主義そのもの、もしくは民主主義という言葉に夢を見すぎじゃないかということで、民主主義がすべてを解決すると思い込んでいるようにも感じられる。民主主義が正しく機能すればなんてことを言う人もいるけど、これまで「正しく」機能したことなどあるのか。それに、上に挙げた発言を考えると、すべての人にとって「正しい」民主主義が存在するとも思えない。

 現在のヨーロッパ型の民主主義の最大の問題は、異なる意見に対する非寛容性だろう、これはヨーロッパ的民主主義がキリスト教的価値観に発する以上当然の欠点だともいえるけれども、「民主主義」的な議論の目的が、話し合ってよりよい結論を出すことではなく、勝つことになってしまっていることも原因の一つである。その結果、議論は自分の意見をテープレコーダーのように繰り返すか、相手の発言の揚げ足をとってささいなことを批判し合うだけに終わる。
 世界で最も民主的だったはずのワイマール憲法下のドイツがヒトラーとナチスに権力を与えたことや、市民革命を経て民主的に運営されていたはずのヨーロッパ諸国が帝国主義の下にアジア、アフリカを蹂躙し植民地にした過去も忘れてはなるまい。蛮行はキリスト教の名の下だけでなく、民主主義の美名のもとにも行われたのである。そして、やらかしたほうは過去のこととして忘れていても、やられたほうはなかなか忘れない。旧ソ連圏の国や北朝鮮が、国名に民主主義という言葉を使っていたのもあるしなあ。

 好き勝手に民主主義を連呼するのに少々うんざりして、こんならちもない文章を書いてしまった。またまた途中から看板に偽りありである。
2019年11月18日20時。










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