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2019年12月20日

中国のプロパガンダ(十二月十七日)




 この金融機関は、1997年にチェコで設立された後、順調に業績を伸ばし、スロバキアをかわぎりに東方へと進出し、ロシアやカザフスタンを経て、現在ではインドやベトナムなどのアジアにまで活動範囲を広げているらしい。当然世界最大の人口を誇る中国には早々に進出し、現在では重要な拠点となっている。中国でこの手の商売をするということは、共産党政権との良好な関係を築かなければならないと言うわけで……。

 以前カレル大学の学長が、中国と関係の深い企業からの寄付を受け入れようとして批判されているという話を書いた記憶があるが、その会社がこのホームクレジット社だったのである。あのときは、カレル大学に資金を投入することで、現在の中国政府に都合の悪い研究結果の発表をさせないように圧力をかけるとか、逆に都合のいい研究をさせようとしているとか、憶測が飛んでいた。
 ニュースに登場して中国政府のやり口の危険性を説明していたカレル大学の中国研究者も、実はあれこれ評判の宜しくない人物で、どこまで信じていいのか悩ましいところではある。それに大学に資金を提供することで研究の内容を左右しようとしていると非難するということは、逆に言えばチェコでは、いやカレル大学ではそれが可能だということを示してはいまいかなんて皮肉なことを考えてしまった。

 カレル大学の件は、批判が強まったことでホームクレジット社が寄付をやめることを決めて一件落着だったのだが、海賊党がホームクレジット社が、チェコ国内で中国のイメージを高めるためのプロパガンダを行なっている、もしくはプロパガンダに協力しているのではないかとして、国会の場で調査することを主張し始めた。具体的なプロパガンダにつながるイベントなんかも挙げられているのかもしれないが、そこまでは確認していない。
 中国政府なら、中国での営業を認めたり、営業に便宜を図ったりするのと引き換えに、自国で中国のイメージを高めるのに協力するように求めるなんてことをしても全く不思議はない、というか当然やっているだろうと思うのだけど、それがチェコの法律上何かの問題になるのだろうか。共産党の宣伝をしてはいけないなんて法律があったかなあ。あれば共産党は選挙活動もできないはずだよなあ。

 しかし、チェコで中国のイメージを一番高めているといえば、中国資本に買収されて以来、好成績を挙げ続けているスラビア・プラハが一番である。最初は胡散臭そうにしていたファン達も完全に中国傘下であることを受けいているようだし、それを中国のプロパガンダだと批判する人はいるまい。アラブの王族にスラビアを売却するなんて話も出ているけど、スラビアを使った中国のイメージ向上作戦はすでに成功したということかもしれない。
 それに中国のプロパガンダといえば、ゼマン大統領以上に貢献している人も、組織も存在しない。バビシュ内閣も、その前のソボトカ内閣も中国との関係を過度に重視して、中国に対してものすごく配慮してきたけれども、ゼマン大統領の親中ぶりにはかなわない。ゼマン大統領とバビシュ首相には反発する人たちも多いので、この二人が親中派であることで、逆に中国のイメージが悪化している面もあるかもしれない。

 今でこそ中国との関係を見直すことを主張している市民民主党も、TOP09も、政権与党だったときには、中国からの投資に惹かれて、ゼマン大統領や社会民主党ほどではないにしても、中国に対してあれこれ配慮したり譲歩したりしていたわけだから、今回の提案は海賊党にしかできなかったわけだ。国会での調査の結果をうけてチェコが反中に舵を切るとは思えないけど。
 ちなみにホームクレジット社は、チェコ最大の富豪であるケルネル氏の率いるPPFという投資会社の傘下に入っている。PPF社は、90年代の国営企業の民営化をうまく利用して成長した会社のようだ。つまりは、市民民主党と社会民主党が主導したクライアント主義の恩恵を受けて大企業に成長したのである。今でも既存の政党との結びつきは消えていないはずだから、これもまた海賊党にしかできない理由となっている。ANOもやろうと思えば、やれるだろうけど、中国との関係を損ないかねない政策は、政権与党のANOにはできそうもない。

 中国があれこれお金を使って、他所の国の世論を操作しようとしているのは事実だろう。中国だけでなく、アメリカやロシアなど、ほかの国もやっているだろうし。問題は操作されている国がそれを認識しているかどうかである。そうなるとチェコより日本の方が心配だな。
2019年12月17日24時。










タグ: 中国
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