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2020年02月13日

プラハで暗躍する北朝鮮(二月十日)





 北朝鮮が、チェコで、チェコの大使館を通じて求めているのは、一つには武器、武器とは言っても最新の武器ではなく、北朝鮮では今でも現役で使われている旧ソ連時代の、1940年代に生産が始まった戦車用の部品や、1960年代から70年代にかけて当時のチェコスロバキアが北朝鮮に輸出した戦闘機のパイロットの訓練に使用する練習機の交換部品が中心らしい。経済制裁のおかげで、古いものをだましだまし使用するしかない状況に追い詰められているようだ。
 他にもドローンや、国家元首に対する贈り物になる贅沢品を求めているらしいが、軍需物資だけでなくこれらの品物も経済制裁の禁輸の対象になっている。それでも、以前ドイツ製のリムジンが北朝鮮にあることが世界を驚かせたように、制裁をかいくぐっての北朝鮮への密輸は続いているようだ。ニュースではアメリカの情報機関の分析として、第三国を経由した密輸品は最終的には韓国からロシアに向かう船に乗せられ、航路の途中で船のGPSの装置を切って所在不明にすることで、北朝鮮に運び込まれるという調査結果を伝えていた。その密輸網の一部としてプラハにある北朝鮮大使館が機能しているのである。


 直接大使館が購入することも、北朝鮮に送ることも不可能なので、ダミーの会社を通して購入し、今回は一度エチオピアに輸出し、さらに隣国を経由してアジアへ発送する計画だったと、この件を報道した雑誌の記者がテレビで語っていた。エチオピアから先は取引が阻止されたために、どういうルートになるのか明らかになっていないようだ。最終的には韓国から北朝鮮というルートではあろうけれども。

 チェコテレビではチェコの情報部の人が、チェコで活発に活動しているロシアや中国などの情報部が政治家や企業家に取り入ってチェコに影響を与えたり、情報を引き出したりしようとしているのと違って、北朝鮮は買い物に汲々としていると語っていた。しかも以前と違って、豊富な資金を使って何でも買い放題という状況にはないようだ。抜け道の多い経済制裁ではあるけれども、こんなところにも効果がでているということだろうか。

 実はチェコには、過去に北朝鮮の経済制裁破りの密輸の舞台になったというか、密輸に手を貸した過去があるのである。1999年というからナトー加盟前のことになるだろうか。カザフスタンから北朝鮮に旧ソ連製の戦闘機ミグ、たしか21が大量に輸出され、世界中の耳目を集めたことがある。日本で話題になったかどうかは覚えていないのだが、このとき仲介したのが、チェコのリベレツにあった会社だった。
 当時も北朝鮮への武器の輸出は禁止されていたからカザフスタンが直接北朝鮮に販売することはできなかった。それで、空軍の装備の更新で不要になった戦闘機を民間企業に払い下げたという体裁をとった。その民間企業がチェコの会社で、書類上は戦闘機ではないものにした上で北朝鮮に輸出したらしい。
 その取引の途中で発覚して世界中の注目を集めたため、何回目かの納入の祭には、途中で給油のために輸送機を降ろしたアゼルバイジャンで軍によって差し押さえされたという。最終的にはロシアの圧力で差し押さえが解除され、カザフスタンがチェコ企業に払い下げた戦闘機はすべて北朝鮮に納入されることになった。

 この件で、リベレツの企業にかかわっていた二人のチェコ人が、起訴され裁判が行われていた。それが延々と続いている間に、クラウス大統領が任期の終わりの最後っ屁のように放った恩赦令で起訴が停止され裁判も中止になるはずだった。それがこの二人が恩赦を受けると自分たちの無罪を証明できなくなると裁判の継続を求めたことで話がややこしくなった。
 恩赦は出ているので有罪判決が出てもなかったことにされるという意味不明な裁判で、裁判官もやる気がなかったのか、最終的にはリベレツの会社で行なわれた北朝鮮への密輸が犯罪であることは明らかだが、それを実行したのが起訴された二人かどうかわからないという、これまた意味不明の判決が下りたようだ。ニュースを見た限りでは、有罪だったのか無罪だったのかさえわからなかった。
 北朝鮮がいくら出したかは知らないけど、そのうちの何割かは政治家の手に渡っているのだろうなあ。拝金主義が蔓延していた時代だしね。今は北朝鮮に協力して武器などを密輸するなんてことはないと信じたい。
2020年2月11日24時。









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