題名は「 ?ivot a neoby?ejná dobrodru?ství vojáka Ivana ?onkina (兵士イバン・チョンキンの人生と尋常ならざる冒険)」というもので、どことなく「シュベイク」を思わせる。シュベイクが第一次世界大戦なら、こちらは第二次世界大戦を舞台にした話で、ソ連万歳の戦争映画に対するパロディだという。テレビで放送されたのを見たことがないので、何とも言えないのだけど、第二次世界大戦中のロシアの村を舞台にしたソ連映画のパロディというのは、個人的にはあまり興味をひかれない。
その後、十年以上のときを経て、フラバル原作の「英国王給仕人に乾杯!」が2006年に制作される。待望のメンツルの新作、しかもフラバル原作ということで、前評判も高く、公開後の専門家の評価も高かった。チェコ版のアカデミー賞である「チェスキー・レフ」映画賞でも、同年の最優秀映画として表彰を受けている。
これでフラバル原作のメンツル作品は、短編を除けば五編ということになる。個人的には、最初の二作「厳重に監視された列車」と「つながれたヒバリ」の評価が一番高い。フラバル、メンツル、ネツカーシュの組み合わせは最高である。ただ、放送回数が多くて、放送されているとついつい見てしまうと言う意味では「剃髪式」が一番とも言える。饒舌な上に大声のペピンがうるさすぎてわけがわからなくなるのだけど、ペピンが静かになったらこの映画の魅力が減ってしまいそうなのが困りモノ。
メンツル最後の作品は2013年に制作された「ドンシャイニ」という作品。今回調べるまで存在すら知らなかった。当時ニュースや宣伝で見た可能性はあるけれども、記憶に残るほどのインパクトは残らなかったということだろう。
メンツルは、自作の映画に役者としてしばしば登場することでも知られているが、それとは別に、俳優としてもさまざまな映画に出演している。早くは、1964年の伝説的なミュージカル映画「Kdyby tisíc klarinet?(千のクラリネットがあったら)」に出ているようだ。この映画は、劇団信号のイジー・スヒーとイジー・シュリトルが書いた舞台ミュージカルを映画化したものらしい。今見ると出演者が、カレル・ゴット、バルデマル・マトゥシュカという二大歌手を筆頭に、ハナ・へゲロバー、エバ・ピラトバーなんかも出ていて驚きである。昔見たときにはモノクロの荒れた画面で、ゴット以外はよくわからなかったけどさ。メンツルがいたのにも気づかなかった。
多くはこの作品のように端役での出演だが、主役を演じた作品もある。一つはビェラ・ヒティロバーの1976年の作品「Hra o jablko(林檎ゲーム)」で、もう一つは、ユライ・ヘルツが、ヨゼフ・ネスバドバのSF短編「吸血鬼株式会社」を映画化した「フェラトゥの吸血鬼」という1981年の作品。どちらも「ノバー・ブルナ」に属する監督で、監督仲間から役者としても高く評価されていたことを示していると考えていいのだろうか。
監督としての作品の減った90年代も、役者としてはさまざまな作品に出演しているが、チェコ初の民放であるノバが制作した二作目のテレビドラマ「Hospoda(飲み屋)」に出ているのを見たときには、役者としても活躍していることを知らなかっただけに驚いた。この番組、最初に放送されたのは1996年から97年にかけてで、まだこちらには来ていなかったが、チェコのテレビ局は過去の作品を頻繁に再放送するので、目にする機会は結構ある。ノバ制作のコメディ・ドラマは集中して見たことはないけど。
ズデニェク・スビェラークは、メンツルの最晩年について、(恐らく闘病で)辛そうな様子が見ていられなかったと語り、死は苦しみからの解放という意味では一種の救いだったようにも思えると付け加えた。メンツルよりも二歳年上の自分についてはそろそろ順番が回ってくるんじゃないかと思うとスビェラークらしいことも言っていた。残酷な時間の流れの前には、人間というものはあまりにも無力であるなんてことを、訃報を聞くたびに考えてしまう。
2020年9月10日23時。
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