非常事態宣言によって、国会での審議も簡略化されている部分もあるらしいし、普段以上に、政府案は通りやすく、野党案は否決されやすくなっている。だからこそ、野党側も非常事態宣言の必要性は認めながら、政府が延長を求めるたびに制限を課そうとして抵抗するのである。チェコの政治家は非常事態宣言の持つ意味がわかっていて、与党はそれを悪用しようとし、野党はそれを防ごうとしているのである。
翻って日本の状況を見ると、野党が非常事態宣言=緊急事態宣言を求めて騒ぐという異常な事態になっていたようだ。報道を通してみる限り、マスコミも含めて、宣言さえ出れば人出が減って感染の拡大も収まると考えていたとしか思えず、その不見識ぶりには頭を抱えるしかない。非常事態宣言は、簡単に言えば憲法の効力を部分的に停止するためのもので、これがあるから本来は憲法で認められている国民の権利、移動の自由、学問の自由などを制限することができるのである。
だから緊急事態宣言だけを出しても、具体的な国民の自由を制限する法令を出さなければ状況が変わるはずなどないのである。それに例の学術会議の問題で学問の自由が云々と叫んでいた連中が緊急事態宣言を求めるというのは矛盾でしかないことに気づけないのだろうか。小中高校を休校に追い込み。大学の対面授業を禁止するという明らかな学問の自由の侵害を可能にするのが緊急事態宣言なのである。学問の自由がそんなに大切なら、感染症如きを原因に簡単に侵害を許すなよ。チェコでさえ、日本よりもはるかにひどい感染状況の中でも、文部省はあらゆる手を使って学校での授業の再開を求めて厚生省と交渉しているのにさ。
春の学校の閉鎖自体にもぎりぎりまで抵抗したし、勉強する習慣をつけなければいけない小学校の1、2年生に関しては、犬システムの危険度が5の段階でも教室での授業を再開させた。受験を控えている学年、つまり最終学年の授業も近いうちに再開される予定である。大学に関してはそれぞれの大学にある程度任されているけど、残念ながらほとんどすべての大学がオンラインでの授業になっている。ただ、非常事態宣言を利用してオンラインでの課程が認可されていない大学でも、オンライン授業、試験を可能にする法律を通している。
話を戻そう。予定調和なチェコの国会で、問題になっている法案がある。すでに可決されたのか、審議中なのか、よくわからないのだけど、非常事態宣言を利用してドサクサまぎれに略式の審議で可決しようとしているのは間違いなさそうだ。このチェコの農業、食品産業を守るためと称する法案は、別名アグロフェルト支援法案とも呼ばれているが、国内のスーパーマーケットなどの食品販売店に、販売する食品の50パーセント以上をチェコ原産のものにすることを義務付けるもので、将来的には75パーセントにまで拡大することを計画しているという。
加盟国間の移動の自由とか、単一市場とかいうEUの理念の根幹をなす部分に真っ向からけんかを売っているようなこの法案を提出したのはオカムラ党らしい。反EUを党是とするだけに、EUの理念に反するような法案を出しても不思議はないのだが、同時にバビシュ首相の経営していた(名目上は手は離れていることになっている)アグロフェルト社が農業、食品産業を中心にしていることから、EUの助成金がもらえなくなりそうなアグロフェルト社を救済するための法案じゃないかとも疑われているのである。
同時に、チェコ原産というのをどのように規定するのかも、どのようにチェックするのかも判然としない法案で、EUからの禁止命令が出なかったとしても実行不能の法律になるのは街がいないと思われている。EUの規定では、コーヒーや紅茶などチェコでは作れないものに限らず、原料をチェコに持ち込んでパッケージングしただけのものでも、チェコ産と表示できることになっているから、いくらでも詐欺的な手法でチェコ産の食品の割合を増やせそうである。
農業団体などでもチェコの農業を支援したいというのはありがたいけど、ほかにやりようがあるだろうという批判が出ている。これまでも農務省などの主導でさまざまなチェコ産であることを示す表示の使用が導入されたけど、どれもこれも運用が中途半端なのと、種類が多すぎるのとで、あまり成果は挙がっていないようである。この法律が成立しても同じことになりそうな気がする。
個人的には、食品よりも、服とか、靴なんかにチェコで縫製されたという表示を、製品の中を見なくてもわかるような表示を義務付けてほしいとは思う。同じような製品だったらチェコものを選びたいし、バテャのオンラインショップのように表示されていると非常に嬉しい。チェコの産業を支援したいという気持ちはないわけではないのだ。
2021年1月24日22時30分
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