南モラビアにあるうちのの実家も多分にもれず、庭の奥にメンドリを数羽飼っている。鳥小屋の周囲は柵で区切られているので、その中では自由に動き回り、悪食のニワトリたちは、与えられる餌だけでなく、そこにあって食べられるものは、草でも木の葉でも何でも餌にしている。そんな健康な生活を送っているニワトリたちが毎日タマゴを産むため、食べるのが追いつかないこともあるらしい。二匹いる犬たちにおやつ代わりに毎日一つずつ食べさせているらしいけど。
その恩恵を我々も受けていて、毎回訪問するたびにたくさんのタマゴをもらってオロモウツに戻ってくる。本当に健康的な生活をしているニワトリの産んだタマゴは、スーパーマーケットなどの市販のものと比べると、はるかに黄身の色が濃く味も濃厚である。
では、飼っているニワトリはどこで手に入れるのかというと、業者が年に何回か町に売りにくるらしい。事前に価格表と何月何日の何時に販売を行うというビラをまいておいて、一日にいくつもの町を回って行商のようなことをしているようだ。ニワトリはヒヨコから少し育って羽の生え変わったぐらいのものが一羽400円ぐらいで手に入るので、何年かに一度、タマゴを産めなくなったらつぶして肉にして、新しいのを購入するのだという。
もう、数年前になるだろうか、いや、もっと前かもしれないが、タマゴの値段がなぜか高騰したことがある。自宅でニワトリを飼っている人にとっては他人事だったが、都市部に住んでいるタマゴ好きのチェコ人にとっては重大な問題だったらしい。そんなに好きなら多少高くても、毎日のビールを一杯減らして買えよとか、食べる回数を減らせよとか考えてしまうのだが、手に入れにくいとなると、なおさら手に入れたくなるというのは、チェコ人も同じらしい。
そんな都市部に住むタマゴ依存症の人たちが目をつけたのが、ニワトリの移動販売所だった。都市部では販売はしていないので、どこからか販売の行なわれる場所の情報を入手して、一羽か二羽購入するために行列を作っていたのだ。
しかし、一軒家ではなく、マンション、アパートのような集合住宅に住んでいる人が多いので、購入されたニワトリたちは、狭いベランダに置かれた小さな鳥かごの中に押し込められて飼われることが多かったようだ。
さて、このほとんど身動きも取れない状態でかごに押し込められて、ひどいときには日中直射日光にさわされたニワトリたちが、どのぐらい生命をつなぐことができ、どのぐらいのタマゴを飼い主にもたらしたのだろうか。ニワトリを買い求める姿はニュースになっても、購入後のニワトリについてはニュースにならなかったし、知人のなかにはベランダでニワトリを飼うような人はいなかったので、よくわからない。
ただ、ベランダにタマゴを取りに行くというのを想像すると、なかなか楽しそうだと思う一方で、ベランダで取れたタマゴといわれたら、あんまり食べたくないような気もするのである。
7月3日19時。
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