1対象者
チェコでコロナウイルスに対するワクチンの接種が始まったのは昨年末のことだった。当初は医療関係者が優先的に接種されていたが、一月には予約システムが稼動し高齢者への接種が始まった。最初は85歳以上が対象で、その後、接種が進むにつれて年齢制限が下がり、五月末には年齢にかかわらず誰でも接種を受けられるようになった。現在では当初対象ではなかった年齢層、十六歳だったか、十二歳だったかまで対象が広がっている。
一方では職種による優先接種も行われ、医療関係者に続いたのは、軍や警察、消防などの在宅勤務では、国家の運営に支障の出る人たちだった。さらに閉鎖中の学校の再開に向けた努力の一環として、幼稚園、保育園から、大学に至るまでの教育にかかわる人たちにも優先的に接種が行われた。最終的に、毎週二回の検査を必要としたものの、夏休み前に部分的とはいえ学校での授業が再開されたのは、この優先接種のおかげだったと言っていい。
予約システムにおける優先は、高齢者の場合には、生年月日を基に作られている個人番号で年齢を判別していたものと思われるが、職種の場合には、勤務先から入手した特別なコードを入力することで、優先的に接種の日時を予約できるようになっていた。ただし、この優先接種権を活用しなかった人も多いようである。
現在でも完全に高齢者の接種が済んでいないのは、一部には持病の関係で接種できない人もいるようだが、高齢者の間に口コミで広がっているワクチンについての噂が原因らしい。「ワクチンを打ったら死ぬ」という噂が問題になっているというニュースを聞いたときには、人間なんて必ず死ぬのだから、打っても死ぬし打たなくても死ぬというのが正解じゃないかと、しょうもないことを考えてしまった。出歩く機会も減り、家族との接触もない孤独な高齢者は、同世代の友人知人からメールなどで流れてくる情報をそのまま信じてしまう傾向があるという。今後も、この手の噂を信じて、接種を拒否し続ける人たちはいなくならないだろう。
本来は接種を推進する側の医療関係者の中にもワクチン接種を拒否して、ネット上で妄言を垂れ流している人がいるらしい。そのうちの一人が、チェコのオリンピック代表を東京に運ぶ特別機、第一便に乗り込んだ医師で、陽性者を合計で六人出す騒ぎの原因となったのである。チェコのオリンピック委員会も腐敗している点ではIOCと大差ないので、感染症対策には問題なかったという内部調査結果を発表して批判を受けている。
バルセロナオリンピックのカヌー競技で金メダルを取り引退後は医師として働いているルカーシュ・ポレルトもSNSで、お前本当に医学部出たのかと言いたくなるような発言を繰り返して物議を醸していたから、オリンピックにかかわる医者はそういうタイプが多いのかもしれない。それで、一部の医療関係者が、患者と直接接する医療関係者にだけは、主義主張を問わず強制的に接種すべきだと主張しているのだろう。
とまれ、現在チェコでワクチンの接種を受けた人は、人口の50パーセント強というところまで来ている。しかし、最近は接種を希望する人の数が減っており、一日の接種数も一番多かったころの三分の一程度まで減っている。この状況に対して、政府は接種を義務化するつもりはないと言っているが、接種の推進のために、あれこれ接種者を優遇する策を取ろうとしているようである。スロバキアではワクチン接種者を対象にした籤を導入して当選者には賞金を出すなんてことを始めているのだけど、これは真似しないだろうなあ。鳴り物入りで始めた、これもスロバキアの真似のレシート籤も失敗に終わったのかいつの間にか廃止されたし。
2021年8月21日
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