五月から六月にかけては、あれこれ悩みながらも、どちらかと言えば、接種を避ける方向で考えていたのが、七月に入って方針を転換したのは、チェコ政府の楽観論に反して、国内の接種率がなかなか増えず、このままでは夏休みシーズン開けの九月になっても、規制の全面解除にはなりそうもないことがわかってきたからである。しかも、その規制の対象から、未接種者は除外されないという。つまり接種しないと、今までどおり、職場に出るのにも、レストランで食事をするのにも、陰性の検査結果の提示が必要で、その検査の保険負担も中止すると政府が言い出したのである。
この、スロバキアほどではないけれども、あからさまな接種を済ませた人に対する優遇は、接種を推進するための策なのだろうが、接種は強制ではなく任意であるという前提、もしくは建前に反しているのではないかと批判を受けていた。検査の保険負担の停止は批判を受けて撤回されたけれども、毎週検査を受けに行くのも、在宅勤務をこれ以上継続するのも、断固拒否したいところである。職場への行き帰りを歩くこともなくなり、積み重なった運動不足は洒落にならないところまで来ている。
ワクチン陰謀論を信じられるほど愚かでもないし、ワクチンには効果がないなどと言う気もないが、同時にワクチンの接種さえ済めばすべては解決すると思えるほど能天気でもない。だから、接種を済ませた人を優遇することで接種を推進しようというのは理解はするけれども、注射嫌いとしては不満を感じてしまうのも否定できない。これが母国日本に住んでいるならともかく、自分の意思で外国であるチェコに住まわせてもらっているのだから、その不満は押し殺して国の方針に従うしかない。外国からの小包に一律課税するなんてのとは違って、外国人いじめではないわけだしさ。
結局、ワクチン接種の決断は、在宅勤務が継続することを避けるための方便でしかない。感染したときの重症化の可能性と、ワクチンの副作用のきつさをはかりにかけて、どちらがマシか考えなかったとは言わないが、どっちもどっちという結論にしか至らないので、決定的要因とはならなかった。仕事がら、不特定多数の人と接触する機会はほぼなく、レストランやイベントに出かけたりする趣味もないので、普通に生活していても感染の危険度はそれほど高くないし、ワクチンの副作用も若い人ほどきつい傾向があるということなので、年齢を考えるとそこまでひどいことにはならないことが期待できるのである。
こんな経緯で接種を決めたこともあって、接種を済ませていない人に接種するように勧めるつもりも、避けるように勧めるつもりもない。こんなのは個人的な事情で、どちらがましかを考えた上で決めればいいものである。流石に陰謀論を信じている人に対しては、言いたくなることもあるけれども、そんな人間には近寄らなければいいだけである。幸い、チェコでは接種を拒否する人を非難するような愚かな報道はなく、接種率が上がらないことに対する批判は、政府に向かうことが多い。十分に国民を説得できなかったのが悪いというのである。
ワクチン陰謀論の流布まで政府のせいにするのはどうかと思うが、医療関係者で医学の専門家でありながら陰謀論に組みするような発言を繰り返している人たちは、批判、処罰の対象になっても仕方がないかとは思う。陰謀論を信じるのは勝手だが、医者と言う立場で広めるのは、信じる人も多いだろうしやめて欲しかった。そのせいで接種しないまま規制の完全解除を迎えるという望みが完全に潰えてしまったのである。恨み言の一つも言いたくなる。
七月に入ってすぐの時点で接種を受けることに決めたのだが、実際に申し込んだのは半ば過ぎのことだった。一回目と二回目の接種の間隔が、三週間に戻される可能性があるというニュースを見て、それを待っていたのである。もう一つ、運動不足のせいで腰痛が出ていたのもある。副作用のなかに全身の筋肉、関節が痛むというのがあるというので、体調を整えて痛みがひいてからにしようと考えたのである。
2021年9月4日
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