第二次世界大戦後の1948年に、チェコスロバキアとポーランドの日刊紙の主催で始まったこのレースは、プラハ−ワルシャワという両国の首都を結ぶルートを走っていた。途中から東ドイツがレースの運営に参加するようになり、多少の例外はあるが、三国の首都を結んで走る二週間ほどのステージレースとして定着した。ツール・ド・フランスにならって、毎年コースが変更されたようで、ザーボット・ミールが通過するというのは、その町の人々にとっては一大イベントだったという。
旧東側諸国で行なわれていたレースなので、参加者はみな共産圏の選手かと思っていたら、実はそんなことはなく、優勝者だけを見ても、既に1950年代から、デンマーク、イギリス、フランスなどの選手も並んでいるから、本当の意味で国際色の豊かなレースだったようだ。ただし、プラハの春以後の正常化の時代になると、西側の優勝者は消える。ちなみに1986年には、四月末にチェルノブイリの原子力発電所で事故が起こった直後の五月初めに、ウクライナのキエフからのスタートを、ろくな情報もないまま強要されたらしい。
ザーボット・ミールの直接の後継というわけではないが、2010年からオロモウツを中心に、チェコ最大のステージレースとして八月に開催されているのが、チェック・サイクリング・トゥールである。最初はあまり目立たない形でスタートしたのは、オロモウツハーフマラソンと同じで、レースが終わった後にその存在を知った。
それが、昨年はカテゴリーが上がったのか、UCIワールドチームのクイックステップが参加することになり、最終日は現地から生中継が行なわれた。クイックステップは、オーナーがチェコ人で、シュティバルやバコチというチェコ人の有力選手を揃えている縁で、招待を受けたらしい。レオポルト・ケーニックが移籍したチーム・スカイや、クロイツィグルが所属するティンコフとも交渉したらしいけれども、今後の検討と言うことで招待を受けてもらうことはできなかったらしい。まあチェコの片隅で始まったばかりのステージレースに、一チームとはいえ、トップカテゴリーのチームを招待できたのだから、大成功と言ってもいいだろう。
出場しないチームに所属するチェコ人の有力選手を集めたチェコのナショナルチームも組織され、ケーニックも、ツール・ド・フランスの疲れを押して出場していた。一番印象的だったのは、ケーニックのお父さんが、自宅のあるチェスカー・トシェボバーから、オロモウツ近くのドラニまで自転車で自走してきたという話だったけど。
そのチェック・サイクリング・トゥールが、今年も八月十一日から十四日までの予定で開催される。去年の時点では、今年はオロモウツ地方を離れてフリーデク・ミーステクで第一ステージが開幕するという話もあったのだけど、その後情報が出てこないのでよくわからない。あまり更新されていないホームページで確認したらUCIのヨーロッパツアーの2.1というカテゴリーになるらしいけど、そう言われてもよくわからん。
参加チームは、UCIワールドチームでは、去年のクイックステップに加えて、イタリアのランプレ・メリダが決定しているようだ。スカイとティンコフとも交渉中というニュースが三月ごろに聞こえてきたのだが、その後どうなったのだろうか。チェコ選手権で優勝したクロイツィグルは、ツール・ド・フランスに加えて、ブエルタにも出ると言っていたから難しそうだ。ケーニックは、オリンピックが終わってすぐになるのか。
それから日本のアイサンチームの参加も決定しているようだ。どうも自動車部品メーカーであるアイサンのチェコ法人がチェック・サイクリング・トゥールとザーボット・ミールU23のスポンサーになったのが縁らしい。これがきっかけで、日本チームの参加が増えたりは、しないだろうなあ。
7月9日19時。
【このカテゴリーの最新記事】
- no image
- no image
- no image
- no image
- no image