宿願を果たしたというほど重いものでもないけれども、実際に読んでみての感想は、正直、期待外れだった。欠けている部分があるせいか、こちらが平将門の乱について細部まで知らないせいか、最初から最後まで、視点が定まらないというか、全体的にぼやけた印象が消えなかった。部分部分には興味深いエピソードがあるのだけど、それらが全体として結びついていないのである。
軍記物というと、血沸き肉躍るじゃないけど、手に汗握るような合戦の描写を期待するのが、『将門記』にはそんな場面はほとんどない。将門自身の描かれ方も、英雄なのか敵役なのかどっちつかずのところがあって、読書の醍醐味である感情移入もしづらい。これなら、『将門記』そのものを読むよりは、『将門記』を題材にして後世作られた作品を読むほうがはるかにいい。
最後につけたしとして書いておくとすれば、この前の『徒然草』あたりから顕著になった原文と、現代語訳、頭注が分量の関係でずれてしまって同じページにないという問題に苦しめられたことだろうか。いちいちページを行きつ戻りつして確認する気にもなれなかったし、頭注を確認してみたら、別の前の注を参照するようにと書かれていてげんなりしたこともある。この辺が、めくるだけでいい紙の書籍のほうが優れているところだろう。
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