チェコに来て、二年目ぐらいだっただろうか、友人の一人が上院の選挙があるから週末は実家に帰ると言っていたので、全国で選挙が行われるのだと思っていた。金曜日の夜にたまたま会った別の、オロモウツ出身ではない知人に、選挙に行かなくていいのかと聞いたら、うちの辺りでは選挙ないもんという答えが返ってきた。へっである。
最初は一人目の友人の実家のある地方だけで行われた補欠選挙だったのかなと納得しかけたのだが、よくよく調べてみたら、チェコの上院の選挙は、二年に一回、チェコ国内の三分の一の地域で行われるものだった。これではわかりにくいか。
上院議員の選挙は、チェコ国内を81の選挙区に分けて行われる。この81の選挙区が、それぞれ27選挙区からなる三つのグループに分けられており、それぞれのグループの任期が二年ずつずれた形で設定されているのだ。だから、チェコでは二年に一度、全国の三分の一、27の選挙区で上院議員の選挙が行われる。同じプラハ市内でも、選挙があるところとないところがあるので、全国で展開される下院の選挙運動ほどの盛り上がりはない。
不思議に思ったのは、上院が誕生した最初の選挙はどうしたのだろうかということだ。二年おきに三分の一ずつ、任期六年で選挙をしていったのかとも考えたが、現実は違った。それに、今後2016年、2018年、2020年に改選を迎えるグループ分けをどうしたのかという点も疑問である。一回目はどうしたかはともかく、決める際に隣接する選挙区が同じ時に改選を迎えないように配慮をするなんてことがあったのだろうか。
あれこれ調べてわかったのは(間違っているかもしれないけど)、初めて上院の選挙が行われたときに、任期が二年、四年、六年に分けられていたらしい。そして、どの選挙区の任期が何年になるかは、抽選で決められたという話を聞いた。抽選とはいっても、それぞれのグループの選挙区の所在に大きなばらつきがないことを考えると、まずチェコ全国を、隣接する三つの選挙区ごとに分割して、その三つの中で、どの任期になるかの抽選をしたのかもしれない。
選挙そのものは、小選挙区制、つまり一つの選挙区から選出される議員は一人だけである。下院の選挙が政党、政治団体単位の立候補であるため個人が無所属で立候補することは難しいが、上院のほうは、候補者個人が立候補するので、所属政党はなくてもいいし、政党の推薦を受けるだけにしてもかまわない。現実には政党所属者が多いわけだが。
そして、一回目の選挙で過半数を得た候補者が出ない限り、一週間後に改めて決選投票が行われる。一回目の選挙で一位と二位になった候補者だけが、第二回投票に進めるのである。間の一週間を使って、一回目で落選が決まった候補の支持を取り付けるなんてこともできるので、理論上は一回目で勝った候補者が必ず決選投票で勝つというわけでもないのだが、結果がひっくり返ることはほとんどないような気がする。一回目の投票は、他の選挙と一緒にやることもあるので行くが、上院だけで行われる二回目の投票は面倒くさいから行かないという有権者も多いようである。
そんなこんなで投票率も低いため、上院は、革命後の設置の当初から、不要論がなくならない。この辺も日本の参議院と同じである。ただ、かつては設立当初の上院の議長を務めたピットハルト氏のような上院ならではの、政党に所属していても政党色の薄い議員たちのおかげで、一定以上の存在感を発揮してきた。それが近年は、下院議員になる前の腰掛として上院に立候補するような政党所属の議員が増えて、上院の独自性が薄れているような印象を受ける。90年代、もしくは2000年年代初頭から誇りをもって上院議員であり続けている人たちの口から、上院議員の質の低下を嘆く声が聞こえてくるのは、何とも言い難いものがある。
さて、今年は十月だったか十一月だったかに上院の選挙が行われるため、各地で選挙運動が始ろうとしている。でも、オロモウツではあまり活発な活動をしていないようだから、今年は改選されないのかな。いや、まだ本格化していないので目に入ってこないだけという可能性もあるか。選挙権はなくても、結果は気になるのである。
9月12日16時。
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