議員の定員は、もちろんそれぞれの地方、市町村で違うが、選挙制度としては、下院の選挙に似ている。大選挙区制で、政党単位での立候補で、各政党は候補者の名簿を作らなければならず、印をつけて支持する候補者を上位に押し上げることもできる。
違うのは選挙の後である。日本では、首長は住民による直接選挙で選出されるため、地方議会の選挙と、首長の選挙は別々のものとして扱われ、議会の選挙があったからといって首長が交替するわけではない。それに対して、チェコの地方公共団体の首長は直接選挙ではなく、総理大臣や、かつての大統領と同じように、間接選挙、つまり議員たちの選挙、いや選挙の前の交渉で選ばれるのである。だから、地方議会の選挙があるたびに首長は交替するし、過半数を獲得した政党がない限り、いくつかの政党で連立を組むことになるので、首長の決定には時間がかかることが多い。また連立与党の中で対立が起きた場合にも、首長の交代劇が起こることがある。
ただし、チェコの地方自治体の首長の選び方は、一点だけ総理大臣の選び方と異なっている。総理大臣の場合には、まず大統領が、原則として下院で一番勢力の大きな政党の党首を指名して、組閣を指示するのである。組閣に失敗したり、成功しても議会で信任を得られなかった場合には、別な人物が指名されたり、下院が解散されて総選挙が行われたりする。
あくまでも原則としてなので、大統領の恣意で下院の第一党の党首以外の人物が指名されることもなくはない。近年だとネチャス内閣が総辞職をした際に、当時の下院の第一党だった市民民主党の新しく選ばれた女性党首ではなく、ゼマン大統領に近いと目されていた人物が国会議員でもないのに、暫定内閣を組織するように指名されたことがある。このときは、組閣後の議会での承認を得ることができずに、正式な内閣として発足する前に、内閣が倒れてしまった。その結果、議会解散で総選挙になったのかな。
それに対して、地方議会の場合には、大統領に当たる役職がないため、首長の選出はあくまで政党間の交渉による。もちろん第一党になった政党が交渉で有利なのは当然だが、政策などで合意に達せず、第二党、第三党が手を結んで首長の座を押さえてしまうこともあるようだ。その後、連立与党内部で対立が生じて、連立解消で、首長の選びなおしなんてこともあるようだし、小さな村なんかだと、議員のなり手、首長のなり手がおらず、選挙をしても立候補する人が出ないために、暫定的に国の管理下に置かれているところもある。
そんな、地方自治体の中には、辞職や首長が選出できないなどのせいで、年に何度も選挙が行われるところ、何度選挙が公布されても立候補者が出ないところがあって、住民たちもうんざりして政治に対する興味を失ってしまっているようだから、いや、でも、これも学校と言えば学校なのか。
秋には行政区分としての地方議会の選挙が行われ新しいオロモウツ地方知事が誕生することになる。市町村の議会は今回はないんじゃなかったかな。オロモウツ地方の知事は、今年の春に、警察の捜査に圧力をかけただったか、賄賂を贈ろうとしたかだったかで摘発されたのだが、無罪を主張して職に居座っている。この件も、今年の夏に政権を揺るがした警察内の組織の再編と関っているらしいのだが、この件についてはいずれ書く機会もあるだろう。
そういえば、数年前にオロモウツ市で行われた日系企業の工場の開所式で通訳をしたときは、市長は上院議員を兼ねていたためプラハで仕事があって欠席、副市長が挨拶をしたんだったか。その副市長がその後、市長になっていたのは、上院議員になった市長が辞職したからだったか、その後の議会の選挙の結果を受けてのことだったか。この二人所属政党が違うから後者かな。
実は、チェコではこの議員の兼職というのが結構多いのだ。国会議員が同時に地元の町の町長だというのは、人口十万を超えるチェコレベルでの大都市では珍しいが、中小都市ではそれほど珍しくもないし、禁止する予定もないようである。一時は、両方の職の給料をもらえるのはおかしいから、片方は返上させようなんて案もあったようだけど、どうなったのかな。公務員が選挙に立候補して、当選したら議員になって、落選の場合は元の仕事を続けるなんて話もあって、日本の潔癖ともいえる選挙制度からすると、それいいのか、と叫びだしたくなることは多かった。最近は、慣れてしまいすぎて特に問題だとも感じられなくなっているのが、ブログのネタ的には問題なのである。オロモウツの市長が上院議員と兼職してたなんて、すっかり忘れていたし。
9月12日17時30分。
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