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2017年02月10日

光化学スモッグ(二月七日)





 80年代には、当時読んでいた科学雑誌のおかげでいっぱしの環境論者のつもりでいた人間にとって、スモッグといえば光化学スモッグで、太陽の光が当たることによって反応が起こり人間に有害な物質が生成されるというのは、ある意味常識だった。ただ、九州の田舎では、光化学スモッグがどんなものなのか実体験する機会はなかったし、東京に出てからも公害対策が進んでいたこともあって、光化学スモッグにさらされるということはなかったと思う。
 東京の空気は汚いと思いはしても慣れてしまうものだし、せいぜい、東京湾や鎌倉の海辺に出かけたときに、東京出身の人たちが潮の香とか言っている悪臭に吐き気を押さえるのが大変だったぐらいである。九州の海で育った人間には、東京近辺の悪臭を放つ海に入るのは無理だった。あんな海で泳いだら病気になると思うんだけど、気にならないのかなあ。


 そして、ドイツなどのヨーロッパでは、酸性雨といういわば硫酸の雨が降ることで森林破壊が進み、河川や湖などの酸性化が進み、魚の住める環境ではなくなっているなんて話を読んだのだった。「NOX」とか、わけの分からないままに使っていたのもこの頃である。ただ、こんなことに興味を持っていながら、カーソンの画期的作品である『沈黙の春』の存在は知らなかったのだから、田舎で手に入る情報というのは、限定的で偏っているのである。それも大学は東京に行くぞと決意した理由の一つだった。
 東京に出てよかったと思うことの一つに、本が探しやすくなったというのがある。新刊本屋でも、古書店でも品ぞろえが桁違いで、田舎に住んでいたら存在すら知らないままに、もしくは存在は知っていても入手するすべもないままに終わったであろう本を大量に手に入れることができた。東京に出ていなかったら、ここまで活字中毒者にはなっていなかっただろうと考えると、どっちがよかったのかねと思わなくもないのだが、自分にとって素晴らしい作品に出合えたときの感動は何事にも代えがたいものがある。

 作品名は思い出せないのだが、光瀬龍のジュブナイルで学校全体で乾布摩擦をする場面が出てきて、主人公がこんなことをしても光化学スモッグに負けない体になれるとは思えないなんて述懐するシーンがあったのを思い出す。次々に同級生が光化学スモッグのせいで病気になって学校に出てこなくなる中で、肺を鍛えるためと称して学校で乾布摩擦をしているという文脈だっただろうか。
 九州の田舎の学校でも乾布摩擦をさせられたことはある。あれは健康のためという話ではあったけれども、乾布摩擦が健康とどうつながるのかいまいちわからないままにやっていた。光化学スモッグ対策だったとは、光瀬龍の作品を読むまでは思いもしなかった。
 他にも大気汚染で普通に呼吸することができなくなったために、酸素が配給制になっている社会というのも出てきた。ドーム都市なんてのも、ドームの内部だけは空気を清浄に維持するためだっただろうか。いやこの辺は宇宙に進出した人類の姿だったかもしれない。光瀬龍の小説は濃密なイメージが作品から切り離されて記憶に残っているため、どの作品のどの場面にどんな文脈で登場してきたのか思い出せないことがままある。

 近年、中国で排出された有害物質が偏西風に乗って日本に到達し、光化学スモッグが発生することがあるらしい。迷惑この上ない国である。日本は東の果てにあるおかげで他国に迷惑をかけずに済んだだけと言えばその通りなのだけど。

 さて、この話で光瀬龍に無理やりつなげてしまったのには理由がある。一昨日記念すべきコメント第一号を頂き、それが半年ほど前に光瀬龍について書いた記事へのコメントだったのだ。管理ページでコメントがあるという表示は、これまでもなくはなかったのだが、英語の意味不明のものだったり、宣伝のために自動で記入されるようなものだったりで、承認などせずに抹消してしまっていた。
 初めてのちゃんとしたコメントは、当然承認して、返事をしようと思ったのだけど、管理ページからどうやってやればいいのか全くわからない。ブログの記事の下のコメント蘭から書くしかないのだろうか。よくわからないので、光瀬龍の記事にいただいたコメントへのお礼の意味もこめて、光瀬龍についても書いてみたけどちょっと強引過ぎたか。ま、何事も修行の一つということで。
2月8日13時。







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