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2017年04月26日

プラハ行き2(四月廿三日)





 森を抜けるとハナー地方北部の肥沃な農耕地帯が広がる。小麦畑だろうとは思うが、リトベルのビール工場が近いことを考えると大麦かもしれない。冬が終わったばかりでまだ大きくなっているわけではないから、いや大きくなっていたとしても素人の目には、小麦だか大麦だかなんてのはわかりゃすまい。
 リトベルに近づくと、左手前方に工場が見えてくる。スパゲッティなどのパスタを生産している工場で、アドリアナというブランド名で販売しているのかな。リトベルの近くには、チーズのグランモラビアの工場もあるはずなのだけど、パスタの工場と一緒にあるのか、別の車窓からは見えない場所にあるのかよくわからない。住所からいうとそんなに離れていないと思うのだけど。とまれ、こんな農耕地帯の真ん中に工場を建てたということは、地元の農産物を原料として使っていると思いたいところである。


 ふと窓から見ると駅のホームがぬれていた。窓に雨が降りかかっていなかったので、降りそうで降らない状態が続いているのかと思ったら、いつの間にか降り出していたようだ。よく見ると白いものがちらついているようにも見えて、憂鬱な気分になる。プラハの人ごみのなで、雪に降られたくはない。

 ザーブジェフを出ると、ペンドリーノ導入の際の路線改修の一環で増えたトンネルをいくつも抜けることになる。早起きして体調が悪いせいなのか、トンネルに入ると耳がツンとなって不快である。電車の機密性の問題なのかもしれない。一回なら特に文句もないのだけど、トンネルに入るたびに繰り返されるのには閉口した。前回プラハに行ったときには、ここまでひどくはなかったと思うのだけど。
 トンネルとトンネルの間で出会う谷川を見ると、いつもより水量が豊かに見えた。せせらぎが電車の中にまで聞こえてきそうな勢いで水が流れていく。山地といってもこの辺りはそれほど標高が高いわけではないので、雪は残っていないが、
 チェスカー・トシェボバーは、町自体はそれほど大きくないのだけど、プラハからモラビアに向かう電車が、ブルノ方面と、オロモウツ方面に分岐する要衝の駅である。だから、地方の中心都市にしか停まらないペンドリーノを除くと、すべての特急が停車する。ここから南に向かうとブルノである。

 時々、ウィーンからオロモウツに来る人が、運が悪いとブジェツラフで、北に向かうオロモウツに直行する電車に乗り換えるのではなく、ウィーンからブルノを通ってチェスカー・トシェボバーまで直通する電車に乗せられて、チェスカー・トシェボバーでオロモウツ行きの電車に乗り換えるというルートで来ることがある。
 時間帯によっては、電車の接続を探すページで、そういうルートが出てくるのだけど、電車に乗っている時間も長くなるし、追加料金を取られることにもなるので、一度ブジェツラフで下車して、オロモウツ行きの電車を待ったほうがはるかにましである。待ち時間が長くなるようだったら、あんまり大したものはないけれども、町を散歩してもいいわけだし、荷物が多くて散歩できないのなら、駅の近くの飲み屋でチェコに入って最初の一杯を飲むのも悪くない。ただ最近行っていないので、飲み屋があるかどうかは何ともいえないのだけど。
 ブジェツラフの駅は、チェスカー・トシェボバーもそうだけど、交通の要衝になっているわりには、駅舎の改修が進んでおらず、売店などの施設もあまり整っておらず、駅で時間をつぶすのはなかなか大変である。国境の町だけあって両替所はちゃんとしてたか。

 チェスカー・トシェボバーを越えると次第に山が減りボヘミアの台地へと入っていく。オロモウツ近辺は平地と言いたくなるのだけど、このあたりのプラハからパルドビツェを越えてモラビアとのきょうかいちあ広がる平らな土地は、平地と言うよりもなぜか台地と言いたくなる。その台地に入ると電車が頻繁にスピードを落とし、しばしば停車駅でないところで停まるようになった。今週線路の改修工事が何箇所かで行われていて、遅れる電車が続出しているようである。
 パルドビツェを越えてコリーンの駅を通ったときには、かつて週一で通訳の仕事をしに着ていたときのことを思い出して懐かしさを感じた。あのころは毎週一回、五時台の電車でオロモウツを出ていたのだった。通過する電車の中から見るコリーンの駅は、あのころから大きく換わったようには見えず、トヨタの進出が決まったときに、あれこれ約束されたことが、なかなか実行に移されないという話を当時耳にしたのを思い出した。チェコの役所のやることなんてそんなものである。

 結局プラハ到着は、二十分ほど遅れ、本日の集合時間には一時間近く遅れることになってしまった。ただ、行ったはいいけどあんまりやることもなくて、こんなことならもう一本後の電車に乗ればよかったぜと後悔してしまった。ブルノから来た人も、電車もバスも大幅に遅れて予定よりも遅れていたしさ。

 何のためにプラハくんだりまで出かけたかについては、また今度。紀行文を気取って見てもこうなるあたり、われながら救いがたい。この前の原稿を書いていたから、風景を見ている余裕なんてなかったし、帰りは真っ暗闇の中だったので、景色なんか見えず風景描写なんてできなかった。窓から見た風景をそのまま書くってのを今度は試してみようかね。
4月24日23時。


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